O-19
【はじめに】 半側空間無視は単に左側空間を無視する だけではなく,身体認知や生活動作,作業遂行時に阻 害因子となり回復を著しく遅延させる事が考えられる. また,症状を本人が認知する事が難しく,改善状況の 判断が治療者優位となりやすい.今回,重度左半側空 間無視(以下 USN)を呈し身体失認を認めた症例を担 当し,Catherine Bergego Scale(以下 CBS)を用い た評価にて自己と観察の面から本人の障害に対する認 識が高まり,症状の軽減がみられた症例を経験した為 報告する. 【症例紹介】 70歳代男性.右頭頂葉梗塞.発症51日 後より当院回復期病棟へ入棟.初期評価では Brs 左: 上肢Ⅲ,手指Ⅲ,下肢Ⅲ,感覚:中等度鈍麻,CBS: 自己評価5点,観察評価26点,病態失認の程度21点, BIT:通常検査66点,行動検査16点,SCP3点,FIM: 38点.ディマンド:日課である朝の買い物と散歩が できるようになりたい.リハビリ開始より身体認識の 低下を認め,「自分の身体があるようでない」との発 言も聞かれ,食事や更衣場面等においても左側の見落 としや,麻痺側の不使用がみられ動作の誘導や介助を 必要とする場面を頻回に認めたが,CBS の自己評価 では5点と USN の認識に繋がっていなかった.そこ で,PTOTST と連携を図り様々な素材を用いて感覚 入力を図り身体認知及び筋出力を高めつつ,メンタル ローテーションにて身体のイメージを賦活し,模倣に より言語化させさらに身体認知の向上を目的としたア プローチを実施した.また,毎月定期的に CBS にて 評価を行い,観察的側面と自己側面の結果を元に患者 と現状について共有し,病態認識の向上を図った. 【結果】 回復期病棟入棟期間は180日.最終評価は Brs:上肢Ⅴ,手指Ⅳ,下肢Ⅴ.感覚:軽度鈍麻, CBS:自己評価2点,観察評価4点,病態失認の程度 2点,BIT:通常検査116点,行動検査45点,SCP0 点,FIM104点.食事は自立であり,靴を含めた衣服 の着脱も自身にて可能となった.又,初期でみられて いた,自身の身体を否定するような発言はみられず, 日中は同室患者とテレビ鑑賞をして過ごされたり, 「一緒にリハビリ頑張りましょうね」等の声掛けをす る場面もみられたりと,積極的にリハビリに取り組ま れ病状と向き合うような発言へと変化した. 【考察】 USN に対する臨床評価には,BIT による机 上課題を用いることが多い.しかし,半側空間無視を 検査する際,机上課題だけでは,半側無視を特定する ことは難しく,臨床での患者と評価者との認識の乖離 も大きい.今回,BIT に加え CBS を用いた観察によ る評価と,患者自身による自己評価を行うことで,単 に「左側に注意してください」といった声掛けは行 なわなくとも,自身が自己の病態と身体を認知し失わ れた空間に対する気付きが可能となり,病態の認識を 得ることが USN の軽減に繋がった.ADL 場面にお いては,左側の物体の見落し等が改善し FIM にて38 点から104点と大きく改善した要因であると考える. CBS による自己と他者との評価を行う事だけが重要 ではなく,その差異について十分に患者と話し合い, 現状について互いに理解し合う事が重要であると考え る.治療者が一方的に病状を理解し,治療するのでは なく,患者に何が起こっているかを理解してもらい, 評価結果からどのように変化しているかを共有するこ とが治療効果に繋がったと考える. 【倫理的配慮,説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき 対象者に対し,個人情報保護と倫理的配慮に関し文章 にて説明し同意を得た.Catherine Bergego Scale
を用いて患者の病態認知を高める事で
半側空間無視が改善した症例を経験して
○伊藤 恵梨(OT)
特定医療法人成仁会 くまもと成仁病院
キーワード:高次脳機能障害,半側空間無視,身体図式