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全国災害曝露人口を用いた将来における災害リスク分析

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Academic year: 2021

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(1)公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集 Vol.56 No.1, 2021 年 4 月 Journal of the City Planning Institute of Japan, Vol.56 No.1, April, 2021. 全国災害曝露人口を用いた将来における災害リスク分析 Analysis of Future Disaster Risk based on Population Exposure to Disasters 松中亮治*・大庭哲治**・米田光佑*** Ryoji Matsunaka*, Tetsuharu Oba**, Kousuke Yoneta*** In this study, focusing four disasters such as tsunami, earthquake, flood, landslide, we estimated current and future population exposure to each disaster. Moreover, we also estimated population exposure in two population migration scenarios, one with more concentrated population to the three major metropolitan areas and one with more dispersed population to local areas. As a result, we showed that the disaster risk for all four disasters cannot be reduced when the population is concentrated to the three major metropolitan areas, even if after considering the damage level of the destination of population migration. On the other hand, we also showed that the disaster risk for all four disasters can be reduced when population is dispersed to local areas. Keywords: Disaster Risk Analysis, Future Population Exposure, Population Concentration, Three Major Metropolitan Areas 災害リスク分析,将来曝露人口,人口集中,三大都市圏. 1. はじめに 近年の異常気象により台風や局所的大雨が頻発しており, 洪水や土砂災害の危険性が高まりつつあると考えられる. また,2011 年 3 月に発生した東日本大震災では東北地方太 平洋沖地震とそれに伴う津波で,併せて死者 18,131 人,行 方不明者 2,829 人という甚大な被害がもたらされた1). こうした自然災害(Natural Disaster)は,地震や大雨とい った自然現象(Natural Hazard)である誘因が,その土地が 持つ災害に対する脆弱性である地形や地盤条件などの自然 素因,ならびに,都市の人口集積などの社会素因に作用し て発生するものであるが,自然災害の誘因となる自然現象 の発生確率や災害に対する脆弱性は,地域によって大きく 異なっている.なかでも,社会素因の一つである人口分布 に関しては, 現在わが国では人口減少が続いているものの, 人口減少は全国で一律に生じているわけではなく,都市部 へ人口が流入し,三大都市圏の人口シェアの上昇は今後も 続く見通しである2). また, 将来の全国における人口分布は, 今後取られる各種政策によっても大きく変化する可能性が ある. 従って,こうした将来における人口分布の変化を考慮し た上で,今後,全国的な国土計画を立てる際や,地方自治 体が個別の防災計画を立てる際に極めて重要な基礎的資料 となる災害リスクを分析することには非常に大きな意義が あるといえる. そこで,本研究では,全国を対象として,人々に甚大な 被害をもたらすと考えられる,津波・地震・洪水・土砂災 害について,災害リスクを現す指標として現在ならびに将 来時点の曝露人口を推計し,どういった地域において曝露 人口の割合が現在と比較して増加するのかを詳細に明らか にする.さらに,三大都市圏への人口のさらなる集中が見 込まれることから,現在,将来人口推計で予測されている * 正会員 ** 正会員 *** 非会員. 人口分布が,さらに三大都市圏に集中する場合と,地方に 分散する場合の 2 つの人口分布シナリオについて曝露人口 を推計することで,人口集中度合いによる災害リスクの違 いを定量的に明らかにすることを目的とする.. 2. 既往研究のレビューと本研究の特徴 災害リスクとしての災害曝露人口を全国的に推計した研 究として,日本全国を対象として,地震・洪水・土砂災害 に関し,将来人口推計を用いて現在と将来の災害曝露人口 を都道府県ごとに推計し,人口減少率と災害リスクに応じ た防災投資, 土地利用の必要性を説いた池永ら3)の研究が挙 げられる.また,松中ら4)は土地利用・DID・都市計画上の 区分を用いて日本全国を分類し,過去と現在の 2 時点につ いて,池永らと同じ三災害に関して災害曝露人口を推計し ており,三大都市圏においては,市街化区域の方が市街化 調整区域より曝露人口の割合が高い一方で,三大都市圏以 外では,市街化調整区域の方が曝露人口の割合が高いこと を明らかにしている. 上記の三災害のうち地震に関しては,曝露人口について これまで多くの研究が蓄積されている.例えば,能島ら5) は地震調査研究推進本部による確率論的地震動予測地図の 基礎データとして用いられる全地震活動モデルをもとに, 震度曝露人口(PEX: Population Exposure to Seismic Intensity,) を推計している.加えて,地震発生確率との関係を表す P-PEX 関係,また,それに基づく地震リスクカーブを用い て地震のリスク評価を行っている.また,鈴木ら6)は,首都 直下地震に対して震度・PL 値・標高のデータを用いて,曝 露人口を算出し,総合的にみて最も災害の危険性が高いと 考えられる地域に住む人口を算出し,同災害において莫大 な避難者が発生する可能性を指摘している.そして,大原7). 京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻(Kyoto University) 京都大学経営管理大学院(Kyoto University) 株式会社ヴァリューズ(VALUES, Inc.) - 73 -.

(2) 公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集 Vol.56 No.1, 2021 年 4 月 Journal of the City Planning Institute of Japan, Vol.56 No.1, April, 2021. は内閣府の 「南海トラフの巨大地震のモデル検討会」 の10m メッシュによる津波高および浸水域等の推計結果を修正し て用い,2040 年の推計人口と重ねることで曝露人口を推計 し,高齢化率等との関係を分析し今後の対策を検討してい る. さらに, 土木学会では平成 29 年度会長特別委員会として 「レジリエンスの確保に関する技術検討委員会」 を設置し, 「国難」 をもたらしうる巨大災害への対策を検討している. 同委員会による「国難」をもたらす巨大災害対策について の技術検討報告書8)において, 甚大な被害となりうる南海ト ラフ地震,首都直下地震による地震・津波と,各種の高潮・ 洪水に関する人的被害,経済被害,財政的被害を推計する とともに,強靭なインフラ投資をすることによる減災効果 を算出し,東京一極集中緩和や,防災機能を重視したイン フラ整備が必要であることを示している. そして,Swiss Re9)は世界の 616 の都市圏において,地震・ 嵐・高潮・津波・洪水が発生した際に潜在的に影響を受け 得る人口を推計している.地震・津波に関しては東京・横 浜,大阪・神戸,名古屋が,洪水に関しては東京・横浜が 影響を受け得る人口が上位 10 位以内であるとの結果を示 している.また,越村ら10)はインド洋のプレート境界に沿 って発生しうるマグニチュード 9 クラスの巨大地震を想定 して津波シミュレーションを実施した後,その結果と,都 市の夜間における光の分布や沿岸の人口統計データとを統 合し,津波曝露人口を算出している. このように,地震の震度曝露人口を中心とした,災害曝 露人口に関する研究蓄積は進んでいるものの,現在と将来 における曝露人口を津波の曝露人口も含めて全国的に詳細 に分析した研究はみられない.さらに,人々に甚大な被害 をもたらすと考えられる,津波・地震・洪水・土砂災害の 四災害全てを対象とし,将来の大都市圏への人口集中度合 いによる災害リスクの違いについて定量的に分析したもの もない. 以上の点を踏まえた上で,本研究の特徴を以下に示す. ・ 現在と将来における曝露人口を,都市圏別・都市計画 上の地域区分別に算出することにより,どの地域にお いて曝露人口の割合が増加するかを全国的に分析し ている点. ・ 三大都市圏に人口が集中する場合と,逆に地方に分散 する場合について,災害リスクがどのように異なるか を定量的に明らかにしている点. ・ 地震・洪水・土砂災害に加えて,特定の地震に対して ではなく,各地域における最大クラスの津波の浸水深 のデータを用いて,津波に関する曝露人口を全国的に 推計している点.. 深データを用いることで,全国的に共通した一定の基準を 設ける.具体的には,各都道府県で異なる基準や計算方法 で設定されている津波浸水想定,又は,特定の津波に対す る浸水シミュレーションおよび実測に基づく浸水深データ から,本研究で使用する津波浸水深データを選択する.各 都道府県について,実際に使用した津波浸水深データの一 覧を表 1 に示すとともに, 以下にその詳細について述べる. 津波浸水想定は, 「津波防災地域づくりに関する法律(平. 3. 災害ハザードに関するデータベースの構築 (1) 津波に関するデータ 津波に関するデータとして,本研究では,全国を対象と した分析である点に鑑み,特定の地震に起因する津波では なく,各地域において想定される最大クラスの津波の浸水. - 74 -. 表1 津波浸水深として用いたデータ 都道府県名 北海道(日本海側). 使用したデータ 国土数値情報ダウンロードサービス. 北海道(オホーツク海側) 北海道防災情報津波浸水結果GISデータ 青森. 国土数値情報ダウンロードサービス. 秋田. 津波浸水想定の画像データの画像解析により作成 東日本大震災復興支援調査アーカイブ. 岩手 山形 宮城 福島 茨城 千葉 東京 神奈川. 東北太平洋沖地震の津波の浸水メッシュデータ 県より提供の津波浸水想定ポリゴンデータ 東日本大震災復興支援調査アーカイブ 東北太平洋沖地震の津波の浸水メッシュデータ 東日本大震災復興支援調査アーカイブ 東北太平洋沖地震の津波の浸水メッシュデータ 国土数値情報ダウンロードサービス 南海トラフの巨大地震モデル検討会 津波浸水深データ 南海トラフの巨大地震モデル検討会 津波浸水深データ 国土数値情報ダウンロードサービス. 新潟. 県より提供の津波浸水想定ポリゴンデータ. 富山. 津波浸水想定の画像データの画像解析により作成. 石川. 国土数値情報ダウンロードサービス. 岐阜. 国土数値情報ダウンロードサービス. 静岡. 国土数値情報ダウンロードサービス. 愛知. 県より提供の津波浸水想定ポリゴンデータ. 福井. 県より提供の津波浸水想定ポリゴンデータ. 三重. 国土数値情報ダウンロードサービス. 京都. 国土数値情報ダウンロードサービス. 大阪. 国土数値情報ダウンロードサービス. 和歌山 兵庫(日本海側) 兵庫(瀬戸内海側). 和歌山県 防災GISデータ ひょうごオープンデータカタログ 最大浸水深データ 国土数値情報ダウンロードサービス. 鳥取. 県より提供の津波浸水想定ポリゴンデータ. 岡山. 県より提供の津波浸水想定ポリゴンデータ. 島根. 国土数値情報ダウンロードサービス. 広島. 国土数値情報ダウンロードサービス. 山口. 県より提供の津波浸水想定ポリゴンデータ. 香川. 県より提供の津波浸水想定ポリゴンデータ. 徳島. 国土数値情報ダウンロードサービス. 高知. 国土数値情報ダウンロードサービス. 愛媛. 国土数値情報ダウンロードサービス. 福岡. 国土数値情報ダウンロードサービス. 大分. 国土数値情報ダウンロードサービス. 佐賀. 県より提供の津波浸水想定ポリゴンデータ. 長崎. 国土数値情報ダウンロードサービス. 熊本. 国土数値情報ダウンロードサービス. 宮崎. 国土数値情報ダウンロードサービス. 鹿児島. 国土数値情報ダウンロードサービス. 沖縄. 国土数値情報ダウンロードサービス.

(3) 公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集 Vol.56 No.1, 2021 年 4 月 Journal of the City Planning Institute of Japan, Vol.56 No.1, April, 2021. 成 23 年法律第 123 号) 」第 8 条第 1 項に基づき,想定され る最大クラスの津波に対して設定されている11).海に面す る 39 都道府県のうち,23 都道府県は国土数値情報12)にお いて津波浸水想定の浸水深ごとのポリゴンデータが公開さ れている.また,岐阜県に関しても,国土数値情報に津波 浸水想定データが公開されている.これは,海岸に比較的 近い海津市付近に設定されたものであり,本研究でも津波 浸水想定データとして使用することとした. 国土数値情報において公開されていない都道府県に関し ては,以下の方法で津波浸水想定の浸水深データを入手, 又は作成することとした. 国土数値情報ダウンロードサービスの兵庫県の津波浸水 想定のデータは瀬戸内海側のみのデータであったため,日 本海側のデータについては,ひょうごオープンデータカタ ログ13)からダウンロードした津波浸水想定最大浸水深デー タを用いた.北海道に関しても同様に,オホーツク海,太 平洋側の津波浸水想定に関するデータは,北海道防災情報 津波浸水結果 GIS データ14)において公開されているものを 用いた. 和歌山県の津波浸水想定は,(1)南海トラフ巨大地震によ る浸水想定(発生確率は極めて低いが,仮に発生すれば被 害が甚大となるものと定義)と,(2)東海・東南海・南海 3 連動地震による浸水想定(約 100 年周期で発生する,頻度 が比較的高く,先ず対策が必要なものと定義)の 2 つの津 波浸水想定が公開されている15)が,本研究では最大クラス の津波として前者を用いることとした. 富山県・秋田県に関しては,各県で公開されている津波 浸水想定の画像データ16)17)から浸水深ポリンゴンデータを 作成した.具体的には,まず GIS ソフト上でダウンロード した画像データの位置合わせ(ジオリファレンス)を行っ た上で,これらの画像データでは,浸水深ごとに地図の色 分けがなされているため,最尤法分類ツールを用いて画像 解析を行った.その後,出力される分類済みラスターデー タをポリゴンデータに変換して用いた. 山形県・新潟県・福井県・愛知県・鳥取県・岡山県・山 口県・香川県・佐賀県に関しては,国土数値情報において は津波の浸水深に関するデータが公開されていないが,各 県に問い合わせることで津波浸水想定の浸水深別のポリゴ ンデータ,又はポイントデータの提供を受けた.ポイント データに関しては,まず各ポイント 1 つのみを重心とする ピクセルを持つラスターデータに変換する.そして,その ラスターデータを浸水深によって分類し,その後ポリゴン データに変換して用いた. 東京都,千葉県に関しては,最大クラスの津波として, 南海トラフの巨大地震モデル検討会18)により公表されてい る,津波断層モデル津波浸水深データを用いた.本研究で は,使用する津波断層モデルとして,断層の大すべり域, 超大すべり域が 1 箇所であり,それらが「駿河湾~紀伊半 島沖」に発生するとするケース 1(堤防破堤)を用いた. 岩手県,宮城県,福島県に関しては,最大クラスの津波. として東北太平洋沖地震による津波を採用し,東日本大震 災復興支援調査アーカイブ19)による東北太平洋沖地震によ る津波の浸水メッシュデータを用いた. (2) 地震に関するデータ 地震に関するデータは地震調査研究推進本部20)において 公開されている確率的地震動予測地図を用いた.このデー タは, 「一定の期間内に,ある地点が,ある大きさ以上の揺 れに見舞われる確率」を示している.本研究では,2018 年 版の「すべての地震を含む・平均ケース」のデータを用い ることとし,このデータのうち,50 年以内における発生確 率が 39%の震度の分布のデータ(再現確率約 100 年)を使 用した. (3) 洪水に関するデータ 洪水に関するデータは,国土数値情報 12)において公開さ れている浸水想定区域データを用いた.このデータには, 河川管理者が作成した浸水想定区域図のポリゴンデータが 河川別,浸水深別に収録されている.複数の河川に対する 浸水想定区域が重複している地域に関しては,浸水深が最 も大きいものをその部分の浸水深とした.ただし,浸水想 定の再現期間については,河川ごとにばらつきがある点に は留意する必要がある. (4) 土砂災害に関するデータ 土砂災害に関するデータは,国土数値情報 12)において公 開されている土砂災害危険箇所のデータを用いた.このデ ータには,多種の土砂災害・雪崩に関する 11 種類の危険箇 所の範囲が示されている.本研究では,ポリゴンデータと して公開されている土石流・崖崩れ・地すべりの各危険箇 所・区域データを用いることとした.具体的には, 「土石流 危険渓流」 ・ 「土石流危険区域」 ・ 「急斜面地崩壊危険箇所」 ・ 「急斜面地崩壊危険区域」 ・ 「地すべり危険箇所」 ・ 「地すべ り危険区域」 の 6 種類の土砂災害危険箇所データを用いた.. 4. 災害曝露人口の経年変化分析 (1) 四災害に対する全国の災害曝露人口の経年変化分析 本研究では,人口データとして,国土数値情報 12)におい て公開されている,500m メッシュ別将来推計人口(2017 年国政局推計)を用いることとし,2010 年の人口メッシュ データならびに 2045 年の将来人口推計メッシュデータを, 3.で構築した災害ハザードに関するポリンゴンデータを用 いて按分することによって各災害の曝露人口を算出した. 具体的には,各メッシュについて,各災害ハザードに関す るポリゴンデータに含まれる面積を算出し,メッシュ全体 の面積に占める割合に応じて,メッシュ人口を割り振るこ とで,曝露人口を計算する.なお,本研究では,将来を想 定した分析においても現在の災害ハザードに基づいたデー タを用いているため,ある災害の所定のレベルに曝される. - 75 -.

(4) 公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集 Vol.56 No.1, 2021 年 4 月 Journal of the City Planning Institute of Japan, Vol.56 No.1, April, 2021. 範囲は変化しないことに留意する必要がある.温暖化によ る異常気象によって洪水の危険性が今後増していく可能性 があり,今後さらなる検討が求められる.. 四災害に対する 2010 年と 2045 年における曝露人口が全 人口に占める割合の経年的変化を図 1 に, 2010 年から 2045 年の間の全人口に占める曝露人口割合の増減率を図 2 にそ 1.1 1.002. 0.997. 0.986. 1.0 曝露人口の増減. 0.900. 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5. 2m以上. 浸水. 1‐2m. 浸水なし. 津波. 津波 1.1. 1.057. 1.050. 0.991. 1.0. 0.978. 曝露人口の増減. 0.901. 0.9. 0.766. 0.8 0.7 0.6 0.5 震度7. 震度6強. 震度6弱. 震度5強. 震度5弱. 震度4以下. 地震. 地震 1.1. 1.030. 1.027. 1.027. 0.989. 1.0 曝露人口の増減. 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 2m以上. 1‐2m. 洪水. 浸水. 洪水. 浸水なし. 1.1 1.008 1.0 0.9. 0.835. 0.8 0.7 0.6 0.5. 危険区域内. 危険区域外. 土砂災害. 土砂災害 図 1 曝露人口の全人口に占める割合の変化. 図 2 全人口に占める曝露人口割合の増減. - 76 -.

(5) 公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集 Vol.56 No.1, 2021 年 4 月 Journal of the City Planning Institute of Japan, Vol.56 No.1, April, 2021. れぞれ示す.全人口に占める曝露人口割合の増減は,2045 年の曝露人口割合を,2010 年の曝露人口割合で除すことに よって求めており, 各値が 1 より大きければ 2010 年よりも 2045 年の曝露人口の全人口に占める割合が増加すること を意味し,1 より小さければ 2010 年よりも 2045 年の曝露 人口の割合が減少することを意味する. なお, 本研究では, 気象庁が公開している津波の浸水深と被害の関係21)を参考 に,木造家屋の被害の様相の変化に合わせ,津波の浸水深 区分を,浸水深が 2m 以上,浸水深が 1m 以上であり 2m 未 満, 浸水深が存在するが浸水深が1m未満の3区分とした. また,洪水に関しても,津波と同様の区分とした.図中に おいては,判読性の観点から,津波と洪水の浸水深が 1m 以上であり 2m 未満である区分を 1-2m,浸水深が存在する が浸水深が 1m 未満である区分を浸水と表記している. 津波のすべての浸水深における曝露人口を合計すると, 図 1 に示すように,2010 年で全人口の 5.93%,2045 年で 5.71%であり,減少傾向にあることが分かる.図 2 に示す ように,より被害の大きくなりやすい浸水深 2 m 以上の曝 露人口の割合はより大きく減少し,総じて津波の災害リス クは低下傾向にあるとの結果となった. 地震に関しては,図 1 に示すように,より甚大な被害を もたらし得る震度 7,震度 6 強,震度 6 弱を合計した曝露 人口の全人口に占める割合は 52.71%(2010 年)→55.41% (2045 年)と増加している.また,図 2 に示すように,震 度 7 の曝露人口の割合はわずかに減少しているものの,震 度 6 強・6 弱の曝露人口割合は約 5~6%増加しており,地 震に対して危険なエリアに居住する人口の割合は増加傾向 にあることがわかる.南海トラフの巨大地震が発生する可 能性が高まっている太平洋側の地域に人口の流入が起きや すい大都市が多いことが要因の 1 つとして挙げられる. 次に,洪水に関しては,全ての浸水深における曝露人口 を合計すると,図 1 に示すように,曝露人口の全人口に占 める割合は 28.05%(2010 年)から 28.85%(2045 年)と微 増している.また,図 2 に示すように,すべての浸水深に おいて,曝露人口の全人口に占める割合が増加している. 今後,河川の氾濫の可能性が高い河川沿いの低地に人口が 集中していくことによるものと予想され,より一層の洪水 対策が求められる結果となった. 最後に,土砂災害に関しては,図 1 に示すように危険区 域内の人口の割合は減少する結果となっており,また,図 2 に示すように, 減少率も16.5%と大きな値となっており, 土砂災害のリスクは減少傾向にあると考えられる.. と呼ぶこととした. 図 3 に四災害に対する上記都市圏分類別の全人口に占め る曝露人口割合の増減を示す. 津波に関しては,都市圏外の浸水深 2 m 未満および政令 指定都市圏の浸水深 1 m 未満の曝露人口割合が増加する結 果となったものの,地方都市圏および三大都市圏において は,すべての浸水深について曝露人口割合が減少し,災害 リスクが低下する傾向にあるとの結果となった.三大都市 圏において津波の災害リスクが減少している要因としては, 2010 年現在までにおいて,海沿いの低地の開発が十分に進 んでいる可能性が挙げられる.また,浸水深 2 m 以上の曝 露人口割合は全ての都市圏で減少しており,特に,三大都 市圏については,2010 年比で 0.905 と大きく減少すること が明らかになった. 地震に関しては,三大都市圏において震度 6 強,6 弱の 曝露人口割合が 2010 年で 76.71%,2045 年で 78.04%と,他 の政令指定都市圏(2010 年:22.72%,2045 年:22.92%) , 地方都市圏(2010 年:28.87%,2045 年:29.70%) ,都市圏 外(2010 年:30.43%,2045 年:32.12%)と比較して突出 して高い結果となった.また,図 3 に示すように,都市圏 外において, 震度 7 の曝露人口割合が大きく増加しており, 震度 6 強については都市圏外・地方都市圏・三大都市圏で 割合が増加している.震度 6 弱については,すべての都市 圏,都市圏外において曝露人口割合が増加するとの結果と なった. そして,洪水に関しては,図 3 に示すように,三大都市 圏以外においては,地方都市圏の浸水深 2 m 以上を除き曝 露人口割合が増加するとの結果となった.一方で,三大都 市圏に関しては,曝露人口割合が減少し,災害リスクが低 下する傾向にあるとの結果となった. 松中ら 4)は,三大都市圏以外の都市圏においては,現在 までに農地から転換した市街地が,従来の市街地と比較し て地震・洪水の曝露人口割合が高いこと,三大都市圏にお いては,新たな開発の余地が少なく,また丘陵地で開発が 進んだことから,新旧の市街地において曝露人口割合の大 小は他都市圏と異なる傾向を示すことを明らかにしている. 今後も同様の傾向が続く可能性があり,三大都市圏におい て地震・洪水の曝露人口割合の増加が比較的小さくなって いる要因の一つであると考えられる. 最後に,土砂災害に関しては,図 3 に示すように,どの 都市圏・都市圏外においても曝露人口割合が減少しており, 土砂災害のリスクは低下傾向にあると考えられる.. (2) 都市圏分類による災害曝露人口の経年変化分析 ここでは,平成 15 年の「都市再生ビジョン」22)で設定さ れている 88 都市圏と, それらを分類する際に用いられてい る「三大都市圏」 , 「地方都市圏」 , 「非都市圏」を用いて都 市圏を分類することとし,2010 年までに,政令指定都市と なった市が存在し,三大都市圏に含まれない都市圏を新た に「政令指定都市圏」と分類し, 「非都市圏」を「都市圏外」. (3) 地域区分による災害曝露人口の経年変化分析 都市計画上の地域区分に関しては,国土数値情報 12)にお いて公開されている, ここでは, 公開されている都市地域, 市街化区域,市街化調整区域,その他用途地域のポリゴン データを用いて地域区分による災害曝露人口の経年変化を 分析することとした. 図 4 に四災害に対する都市計画上の地域区分別の全人口. - 77 -.

(6) 公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集 Vol.56 No.1, 2021 年 4 月 Journal of the City Planning Institute of Japan, Vol.56 No.1, April, 2021. 1.2. 1.2 1.1 1.026  0.981  1.006  1.000  1.0. 0.990 . 1.002 . 0.999 . 1.1 1.009  1.000  0.982 . 0.969  0.987  1.002 . 0.960 . 1.012 1.008 1.000. 0.966 1.004. 0.974 . 曝露人口の増減. 曝露人口の増減. 1.0. 0.905 . 0.9. 0.951 0.905. 0.978. 0.976. 1.005. 0.953. 0.919. 0.893. 0.9. 1.000 0.996 1.002. 0.8. 0.8. 0.7. 0.7. 0.6. 0.6. 0.5 市街化区域. 0.5 都市圏外. 地方都市圏. 2m以上. 政令指定都市圏. 浸水. 1‐2m. 市街化調整区域. 浸水なし. 浸水. 1‐2m. 2m以上. 1.169 . 1.3. 1.239. 1.201 1.1. 1.061 1.053  1.030 . 1.0. 0.991  0.954 . 0.959 . 1.1 0.951 . 曝露人口の増減. 0.938 . 1.0. 0.885 . 0.880 . 0.9. 1.061. 1.010 . 1.004  1.000 . 曝露人口の増減. 0.968 . 0.956 . 1.2. 1.045 . 1.060 . 1.033  1.028  1.014 . その他地域. 浸水なし. 津波. 津波 1.2. その他用途地域. 三大都市圏. 0.855 . 0.851 . 1.026. 1.024 1.018. 0.975. 0.985. 0.975. 0.958. 0.923. 0.990 1.035 0.966 0.972. 1.027. 1.033 1.037 0.958. 0.942 0.907. 0.898. 0.9. 0.8. 0.861. 0.835. 0.8 0.696 . 0.7. 0.7 0.6. 0.6. 0.5 0.5 都市圏外. 地方都市圏. 震度7. 震度6強. 震度6弱. 政令指定都市圏. 震度5強. 震度5弱. 市街化区域. 三大都市圏. 震度7. 震度4以下. 市街化調整区域. 震度6強. 震度6弱. 地震. その他用途地域. 震度5強. 震度5弱. その他地域. 震度4以下. 地震. 1.2. 1.2 1.083  1.110 . 1.1. 1.0. 1.055  1.048  1.026  0.995 . 1.1. 1.047 1.063  1.007 . 1.016 1.035  0.994  0.993 . 0.977 . 0.986  0.996  1.005  0.988 . 1.0. 1.009  0.994  0.998  1.003  1.005  1.000  0.989  0.981 . 1.006  0.988  1.005  0.999 . 1.052  0.987 . 曝露人口の増減. 曝露人口の増減. 0.9. 0.9. 0.8. 0.8. 0.7 0.7. 0.6 0.6. 0.5 市街化区域. 0.5 都市圏外. 地方都市圏. 2m以上. 1‐2m. 政令指定都市圏. 浸水. 三大都市圏. 市街化調整区域. 1‐2m. 2m以上. 浸水なし. その他用途地域. 浸水. その他地域. 浸水なし. 洪水. 洪水 1.2. 1.2. 1.1. 1.1 1.014 . 1.007 . 1.009 . 1.003 . 曝露人口の増減. 0.895 . 0.9. 0.872 . 0.865 . 曝露人口の増減. 1.0. 0.891 . 0.923. 1.005. 1.005. 1.002. 1.0. 1.016. 0.910. 0.923. 0.880. 0.9 0.8. 0.8. 0.7. 0.7. 0.6. 0.6. 0.5 0.5. 市街化区域 都市圏外. 地方都市圏. 危険区域内. 政令指定都市圏. 市街化調整区域. その他用途地域. その他地域. 三大都市圏. 危険区域内. 危険区域外. 危険区域外. 土砂災害. 土砂災害 図 3 都市圏別の全人口に占める曝露人口割合の増減. 図 4 地域区分別の全人口に占める曝露人口割合の増減. - 78 -.

(7) 公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集 Vol.56 No.1, 2021 年 4 月 Journal of the City Planning Institute of Japan, Vol.56 No.1, April, 2021. に占める曝露人口割合の増減を示す.なお,その他地域と は,他の 3 区域(市街化区域・市街化調整区域・その他用 途地域)以外の区域を指す. 津波に関しては,市街化調整区域における浸水深 2 m 未 満,ならびに,その他地域における浸水深 1 m 未満の区分 で曝露人口割合は増加するものの,他の地域区分ではいず れも曝露人口割合が減少する結果となった. 地震に関しては,その他用途地域と,その他地域におい て,最も被害が大きる可能性の高い震度 7 の曝露人口割合 が大きく増加する結果となった.また,その他用途地域に おいては,震度 6 強と震度 6 弱の曝露人口割合が減少する 結果となっているが,他の地域区分では何れも曝露人口割 合が増加するとの結果となった. つづいて,洪水に関しては,その他地域において,他区 域と比較して今後大きく曝露人口割合が増加する結果とな った.要因については,比較的開発の進んでいないその他 地域においては 2010 年以降についても, 人口の河川沿いの 低地への集中が依然として続く可能性が挙げられる.その 他地域は曝露人口割合が低くかつ 4 区域のうち最も面積が 広いことから,減災効果の大きい河川や地域を十分検討し た上で効果的な対策から優先して実施していくべきである と考えられる.一方で,市街化区域内では,4.(1)で示した 全国的な傾向とは異なり,すべての浸水深において曝露人 口割合が減少する結果となった.市街化区域は三大都市圏 に属す面積が大きく,(2)の分析における三大都市圏の結果 と似通ったものになったと思われる. 最後に,土砂災害に関しては,すべての区域において曝 露人口割合が減少し災害リスクが低下する傾向にあるとの 結果となった.. 減少させることとし,その際,減少させる人口が三大都市 圏において増加させる人口と一致するように調整した.な お,都市圏の境界にあるメッシュに関しては,メッシュの 人口をそれぞれの都市圏の領域に按分している. 一方,地方に人口が分散するシナリオに関しては,人口 集中の場合と同様,各メッシュの人口に上限値を設け,三 大都市圏全域の人口を三大都市圏以外(都市圏外・地方都 市圏・政令指定都市圏)の市街化区域に移動させることと し, 三大都市圏以外の市街化区域の人口を一律 2045 年の各 メッシュ人口比で 5%増加させ,三大都市圏以外での人口 増加分と一致するよう三大都市圏の人口を一定の割合で減 少させることとした.三大都市圏に人口が集中する場合の 三大都市圏以外において減少させた割合は 3.519%であり, 人口が分散するシナリオに関しては,三大都市圏の人口の 減少させた割合は 1.537%である.. (2) シナリオ分析結果 図 5(1)~(4)に三大都市圏に人口が集中するシナリオと地 方に人口が分散するシナリオ,それぞれについて,現状の 将来人口推計における災害曝露人口との差を示す.なお, 三大都市圏に人口が集中するシナリオの総移動人数は 1,656,291 人,地方分散のシナリオは 847,615 人であった. また,曝露人口の増減に関しては,端数を四捨五入してい る関係上各シナリオの合計が 0 になっていない場合がある. 津波に関しては,最も被害が大きくなる可能性の高い浸 水深 2 m 以上の区分において大きく曝露人口が変化した. 三大都市圏に人口が集中するシナリオにおいて,浸水深 2 m 以上の曝露人口は約 3 万人減少する一方,地方へ分散す るシナリオにおいては,約 2.4 万人増加する結果となって おり,三大都市圏に人口が集中する場合の方が,災害リス クが低下傾向にあるといえる.また,両シナリオとも,浸 5. 三大都市圏へ人口が集中した場合・地方に人口が分散し 水深 1-2 m,浸水の区分においては曝露人口が増加してい た場合の災害リスクシナリオ分析 るが,これは市街化区域内の曝露人口割合が比較的高いこ (1) 人口集中・分散シナリオの設定 とが要因として挙げられる. ここでは,現在の将来人口推計よりも,さらに三大都市 地震に関しては,三大都市圏に人口が集中するシナリオ 圏に人口が集中する場合と,地方により人口が分散する場 において,曝露人口は,震度 7 では約 1.3 万人の減少する 合の二つのシナリオについて災害曝露人口を推計する.た ものの,震度 6 強で約 11.2 万人,震度 6 弱で約 71.8 万人増 だし,特定の場所への過度な人口集中を避けるため,各メ 加するとの結果となっており,三大都市圏に人口が集中す ッシュの 2010 年の人口を上限とし人口が移動するものと ることで,地震の災害リスクは高まる可能性があるといえ した.これは,少なくとも,一度生じていた水準にまでは る.一方で,地方へ人口が分散するシナリオにおいては, 人口の増加は可能であるという仮定に基づく.なお,2045 三大都市圏に人口が集中するシナリオとは逆に,現状の将 年の人口が 2010 年の人口を上回っているメッシュに関し 来人口推計における曝露人口と比較し,震度 6 強,震度 6 ては, 人口の流入は起こらないものとし 2045 年の人口をそ 弱でそれぞれ約 5.0 万人,約 37.0 万人それぞれ減少すると のままメッシュ人口とすることとした. の結果となっており,地方への人口分散により地震の災害 三大都市圏に人口が集中するシナリオにおいては,三大 リスクが低下する可能性があることが示された. 都市圏の市街化区域の各メッシュの人口を,先述の上限値 次に,洪水に関しては,三大都市圏に人口が集中するシ に達しない場合は一律 2045 年の各メッシュ人口比で 5%, ナリオの場合,特に浸水深の大きな区分において曝露人口 上限値に達する場合はその上限値まで,それぞれ増加させ が大きく変化しており,浸水深 2 m 以上において曝露人口 ることとした.一方,三大都市圏以外(都市圏外・地方都 が約 12.8 万人増加している.一方,地方へ人口が分散する 市圏・政令指定都市圏)の人口については,一定の割合で シナリオにおいては,浸水深 2 m 以上の曝露人口は減少す. - 79 -.

(8) 公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集 Vol.56 No.1, 2021 年 4 月 Journal of the City Planning Institute of Japan, Vol.56 No.1, April, 2021. 図 5(1) 災害曝露人口の増減(津波,左:三大都市圏集中・右:地方分散). 図 5(2) 災害曝露人口の増減(地震,左:三大都市圏集中・右:地方分散). 図 5(3) 災害曝露人口の増減(洪水,左:三大都市圏集中・右:地方分散). 図 5(4) 災害曝露人口の増減(土砂災害,左:三大都市圏集中・右:地方分散) るが,浸水深 1 m 未満の区分において同程度の人数で曝露 人口が増加することに注意が必要である. 最後に,土砂災害に関しては,三大都市圏に人口が集中 するシナリオにおいて大きく曝露人口が減少し,逆に,地. 方に人口が分散する場合,曝露人口が増加する結果となっ た. 以上のように,三大都市圏に人口が集中する場合,津波 や土砂災害において,曝露人口が減少し災害リスクが低下. - 80 -.

(9) 公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集 Vol.56 No.1, 2021 年 4 月 Journal of the City Planning Institute of Japan, Vol.56 No.1, April, 2021. する可能性があるものの, これらの曝露人口減少数は約 3.0 ~6.8 万人となっており, 地震における震度 6 弱以上や洪水 の浸水深 1 m 以上の曝露人口増加数と比較すると小さな値 となっている.一方,地方に人口が分散する場合,津波や 土砂災害の曝露人口が増加するものの,これらの増加数は 多くても数万人に留まっており,地震における震度 6 弱以 上の曝露人口が 40 万人以上減少することと比較するとか なり小さな値であるといえる.. なお,移動元に関しては 5.1 節の設定方法と同様である. なお,移動させる総人数は,5.(2)における三大都市圏に 人口が集中するシナリオと同じ 1,656,291 人とし,5.(2)と同 様に移動先の人口に関しては,2010 年の人口を上限とした. また,移動元の人口に関しても,5.(2)と同様に,総移動人 数と一致するように一定割合で減少させた.. (4) 被害レベルを考慮したシナリオ分析結果 図 6(1)~(4)に三大都市圏に人口が集中するシナリオと地 方に分散するシナリオそれぞれについて,被害レベルの低 (3) 移動先の被害レベルを考慮したシナリオの設定 い場所に誘導した場合の現状の将来人口推計における曝露 (2)の分析においては,各地域内において一律の割合で 人口との差を示す. 人口が移動した場合,三大都市圏に人口が集中する場合に 津波,洪水,土砂災害に関しては.被害レベルを考慮し おいても,地方に分散する場合においても,災害の種類に ない場合に曝露人口が増加した地方へ人口が分散する場合 よって曝露人口の増減は異なるとの結果となった.こうし の津波,三大都市圏に人口が集中する場合の地震・洪水も たことから,人口移動の際には,人口移動先の被害レベル 含め,両シナリオともに曝露人口が大幅に減少する傾向に を考慮した適切な誘導が必要であると考えられる. そこで, あるとの結果となった.これは,移動先の被害レベルを考 ここでは,人口を三大都市圏に集中,または,地方へ分散 慮し人口の移動を誘導することで曝露人口を大きく減らし させる場合それぞれについて,人口を移動させる際に被害 得る可能性があることを示している. レベルの低い場所に優先的に誘導した場合の曝露人口を推 津波に関しては,被害レベルを考慮しない場合,地方に 計することとする.なお,移動元の被害レベルの高低につ 人口が分散するシナリオにおいて,災害リスクが増加する いては,ここでは考慮していない. 傾向にあったが,被害レベルを考慮した場合,曝露人口が 本研究では, 人口の移動先の優先順位を決定するために, 減少し,災害リスクが低下する傾向にあるとの結果となっ 比較的被害を受けやすい木造家屋における被害を基準とし て,各災害の浸水深と震度の区分ごとに,想定される被害 ており,被害レベルを考慮して移動先を誘導することによ の度合いを表す被害レベルを設定する.これは人的被害を 考える上で,人々が住居に滞在中に被災する場合が少なく 表 2 被害レベルの定義 なく,住居の倒壊の有無により人命が守られるかどうかが 被害レベル 木造家屋における被害 大きく左右されると考えられるためである. 1 内部に損害が生じる 表 2 に本研究で用いる被害レベルの定義を示す.気象庁 2 家屋自体の部分的破壊が生じる が公開している津波の浸水深と被害の関係 21),気象庁震度 3 家屋自体の流出,倒壊が多くなる 階級関連解説表23)を参考に,1~4 の 4 段階の被害レベルを 4 家屋自体の流出,倒壊がさらに多くなる 定義した.そしてその定義と合致するように,各災害にお ける浸水深,震度ごとの被害レベルをそれぞれ設定した. 表 3 各災害の被害レベルの設定 設定した被害レベルを表 3 に示す.なお,土砂災害危険箇 地震 被害レベル 津波 被害レベル 洪水 被害レベル 所データに関しては,具体的にどの程度の被害を想定して 震度4 以下 0 0-1m 1 0-1m 1 いる区域であるかの記載がないため,土砂災害危険箇所内 震度5 弱 1 1-2m 2 1-2m 2 には人口を流入させないものとした.また,洪水の被害レ 震度5 強 1 2m 以上 3.5 2m 以上 3.5 ベルは津波と同じであるとし,津波と洪水の浸水深 2 m 以 震度6 弱 2 上の区分に関しては,地震における震度 6 強,震度 7 の両 震度6 強 3 区分に相当する被害をもたらし得ることから,被害レベル 震度7 4 を 3.5 と定義した. そして,実際に人口を移動させる優先順位を決定する際 には, 各災害の被害レベルを合計した値を用いることとし, 表 4 人口移動先の優先順位決定方法 合計値が小さい場所から優先的に移動させていくものとし 規則 決定方法 た.被害レベルの合計が同じ値となる場合については,表 1. 各被害レベルの値の最大値が最も小さい場所 2. 規則 1.において最大値が同じ場合,残り 2 種の被害レベル 4 に示す方法に従って優先順位を決定した. の値が小さい場所 上記の人口移動先の優先順位に従い,三大都市圏に人口 3. 規則 1.2.で決定できない場合,被害レベルの最も大きい災 が集中する場合と,地方に人口が分散する場合について, 害の種類が津波である場所,次いで地震である場所の順に 各メッシュの将来人口を設定した.具体的には,移動先に 優先する 関し,上記で定めた順番に人口を流入させていくものとす 4. 規則 1.~3.で決定できない場合,2 番目に被害レベルが大 る. 上限に達するまで人口を流入させ, 上限に達した場合, きい災害の種類が津波である場所,次いで地震である場所 次の優先順位の領域に人口を流入させることを繰り返す. の順に優先する. - 81 -.

(10) 公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集 Vol.56 No.1, 2021 年 4 月 Journal of the City Planning Institute of Japan, Vol.56 No.1, April, 2021. 図 6(1) 被害レベルを考慮して誘導した場合の災害曝露人口の増減(津波,左:三大都市圏集中・右:地方分散). 図 6(2) 被害レベルを考慮して誘導した場合の災害曝露人口の増減(地震,左:三大都市圏集中・右:地方分散) 600,000 500,000. 曝露人口の増減( 人). 400,000. 322,354 . 300,000 200,000 100,000 0. ‐100,000. ‐65,068 . ‐200,000. ‐105,274 . ‐152,012 . ‐300,000. 2m以上. 1‐2m. 浸水. 浸水なし. 図 6(3) 被害レベルを考慮して誘導した場合の災害曝露人口の増減(洪水,左:三大都市圏集中・右:地方分散). 図6(4) 被害レベルを考慮して誘導した場合の災害曝露人口の増減(土砂災害,左:三大都市圏集中・右:地方分散). - 82 -.

(11) 公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集 Vol.56 No.1, 2021 年 4 月 Journal of the City Planning Institute of Japan, Vol.56 No.1, April, 2021. って,大きな効果がみられる結果となった. 地震に関しては,三大都市圏に人口が集中するシナリオ において,災害リスクを考慮しない場合と比較すると,被 害レベルを考慮した場合,震度 6 弱の曝露人口の大幅な増 加が減少に転じ,一定の改善はみられるものの,震度 5 強 の曝露人口が約 93 万人と大きく増加する結果となった. 移 動人数が約 166 万であることを考えると,その半数以上が 震度 5 強の場所に流入したことになる.これは,各メッシ ュに流入できる人口に上限を設けたことから,三大都市圏 においては, 津波や洪水の浸水深が 1 m 未満であり, かつ, 震度が 4 以下であるメッシュには流入の余地がなく,結果 として,震度 5 以上のメッシュに流入せざるを得なかった ためであると考えられる. 次に,洪水に関しても,三大都市圏に人口が集中するシ ナリオにおいて,被害レベルを考慮しない場合と比較する と,被害レベルを考慮した場合,災害リスクが低下する傾 向に転じており,被害レベルを考慮することによる改善が みられる.また,地方に人口が分散するシナリオにおいて も,顕著な曝露人口の減少がみられる結果となっている. 最後に,土砂災害に関しては,被害レベルを考慮しない 場合,地方に人口が分散するシナリオにおいて災害リスク が増加する傾向にあったが,被害レベルを考慮した場合, 曝露人口が減少し,災害リスクが低下する傾向にあるとの 結果となっている. 以上のことから,被害レベルを考慮して人口の移動を誘 導することによって,大きく災害リスクを低下させる得る 可能性があることが明らかとなった.また,三大都市圏に 人口が集中する場合,被害レベルを考慮して人口の移動を 誘導したとしても,四災害全ての災害リスクを低下させる ことは困難である一方,地方に人口が分散する場合につい ては,被害レベルを考慮して人口の移動を誘導することに よって四災害全ての災害リスクを低下させることが可能で あることを明らかにした. さらに,被害レベルを考慮しないケースと比較し,被害 レベルが 3.5 である津波の浸水深 2m 以上では,集中シナ リオで 13,061 人,分散シナリオで 37,223 人,洪水の浸水深 2m 以上では,集中シナリオで 193,542 人,分散シナリオで 118,748 人の曝露人口が減少することが明らかになった.さ らに,被害レベルが 4 である地震の震度 7 では,集中シナ リオで57 人, 分散シナリオで9,192 人の曝露人口が減少し, 土砂災害では,集中シナリオで 29,187 人,分散シナリオで 47,936 人の曝露人口が減少した.津波,地震,洪水の上記 のような被害レベルに曝された場合,曝された人数に占め る死者の割合も非常に大きくなると想定され,これだけの 人数が上記のような被害レベルに曝されずに済むことは, 国土計画の策定に際しても,有益な知見になるものと推察 される.. 6. 結論. 本研究では,既往研究と異なり,想定される最大クラス の津波による浸水深データという統一された基準に基づい た津波のデータを日本全国で整備した.その上で,津波, 地震,洪水,土砂災害の四災害について,それぞれのハザ ードとメッシュ人口データを重ね合わせることによって, 現在と将来における災害曝露人口を推計し,その経年的変 化を定量的に明らかにした.その結果,津波と土砂災害に ついては,2010 年時点と比較して 2045 年時点の災害リス クは低下する傾向にある一方,地震ならびに洪水に関して は,災害リスクが増加する可能性があることを示した.特 に,地震に関しては,震度 6 強,6 弱の曝露人口割合が約 5 ~6%増加することを明らかにした. 都市圏分類ごとに災害曝露人口の変化をみると,津波に 関しては,最も被害が大きくなると想定される浸水深 2 m 以上の曝露人口割合は全ての都市圏において減少しており, 特に,三大都市圏については,2010 年比で 0.905 と大きく 減少する可能性があることを明らかにした.また,地震に 関しては,三大都市圏において震度 6 強,6 弱の曝露人口 割合が 2010 年で 76.71%,2045 年で 78.04%と他の都市圏と 比較して突出して高い結果となること,また,都市圏外に おいて,震度 7 の曝露人口の割合が大きく増加する可能性 があることを明らかにした.また,洪水に関しては,三大 都市圏において,曝露人口の割合が減少し,災害リスクが 低下する傾向にあることを明らかにした. そして,都市計画上の地域区分による分析では,津波に 関しては,市街化調整区域において浸水深 2 m 未満の曝露 人口が増加傾向にあることを明らかにした.また,地震に 関しては,その他用途地域,ならびに,その他地域におい て,最も被害が大きくなる可能性が高い震度 7 の曝露人口 割合が約 1.20~1.24 倍と大きく増加すると共に,洪水に関 しては,その他地域の曝露人口割合が約 1.05~1.10 倍と他 区域と比較して大きく増加することを明らかにした. さらに,現在の将来人口推計よりも,さらに三大都市圏 に人口が集中する場合,ならびに,地方に人口がより分散 する場合の人口移動シナリオを設定し,四災害について災 害曝露人口の増減を推計した.その結果,被害レベルを考 慮せず各地域内において一律の割合で人口が移動した場合, 三大都市圏に人口が集中する場合においても,地方に分散 する場合においても,災害の種類によって曝露人口の増減 は異なる結果となった.一方で,被害レベルを考慮して人 口の移動先を誘導した場合,大きく災害リスクを低下させ る得る可能性があることを明らかにするとともに,三大都 市圏に人口が集中する場合,仮に被害レベルを考慮した上 で人口の移動を誘導したとしても,四災害全ての災害リス クを低下させることはできないものの,地方に人口が分散 する場合については,被害レベルを考慮して人口の移動を 適切に誘導することによって,四災害全ての曝露人口を減 少させ災害リスクを低下させることが可能であることを明 らかにした.池永ら 3)は本研究における四災害から津波を 除いた三災害について都道府県ごとの曝露人口割合と人口. - 83 -.

(12) 公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集 Vol.56 No.1, 2021 年 4 月 Journal of the City Planning Institute of Japan, Vol.56 No.1, April, 2021. 減少率を算出し,それぞれの値に応じた防災投資の必要性 を説いている.大都市圏の都道府県においては,人口減少 率が低くかつ曝露人口の割合も高いことから,継続して防 災対策への投資が必要であるとしている.一方で,本研究 においては,三大都市圏の津波の災害リスクは今後低下す る結果となっており,津波の災害リスクを考慮しつつ,対 策が必要な災害の種類に応じ,各地域に適した防災投資を 検討していく必要があると考える.以上の定量的検討結果 は,今後の土地利用計画や国土計画に対して,重要な示唆 を与えていると考える.. 13). 14). 15). 16). 【参考文献】 1) 総務省消防庁,東日本大震災関連情報: https://www.fdma.go.jp/disaster/higashinihon/item/higashinihon001_1 2_03-01_02.pdf(2020年 1月 21日最終閲覧) 2) 総務省:平成 24 年版情報通信白書本文: http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h24/ht ml/nc112130.html(2020 年 1 月 21 日最終閲覧) 3) 池永知史,大原美保:全国を俯瞰した災害リスク曝露 人口分布の分析 ―将来の人口減少を考慮した土地利 用に向けて―,地域安全学会論文集 No.25,p. 45-54, 2015. 4) 松中亮治,大庭哲治,中川大,森倉遼太:全国におけ る土地利用及び土地利用規制と災害リスクとの関連性 に関する経年分析,都市計画学論文集,Vol.53,No.1, p. 19-26,2018. 5) 能島暢呂, 加古涼介, 加藤宏紀:わが国の全地震活 動モデルを用いた震度曝露人口による地震リスク評価 地震工学論文集,第 37 巻(論文),Vol.74,No.4, I_109-I_119,2018. 6) 鈴木進吾,林春男:首都直下地震の曝露指標の算出と その地域的特性に関する研究,地域安全学会論文集 No.10, p. 97-104,2008. 7) 大原美保:南海トラフ沿岸域における将来的な人口変 動を考慮した津波減災戦略に関する検討,土木学会論 文集 A1(構造・地震工学) / 70 巻 4 号, I_710-I_717, 2014. 8) 土木学会会長特別委員会: 「 『国難』をもたらす巨大災 害対策についての技術検討報告書」 : http://committees.jsce.or.jp/chair/node/21(2020年 1月 21日最終 閲覧) 9) Swiss Re(スイス再保険) :Mind the Risk, Aglobal ranking of cities under threat from natural disasters:https:// media.swissre.com/documents/Swiss_Re_Mind_the_risk.pdf(2020 年 1月 21日最終閲覧) 10) 越村俊一,高島正典,鈴木進吾,林春男,今村文彦, 河田恵昭:インド洋における巨大地震津波災害ポテン シャルの評価,海岸工学論文集,Vol.52,p. 1416-1420,2005. 11) 国土交通省:津波浸水想定の設定の手引, https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kaigan/tsunamishinsui_ manual.pdf(2020年 1月 21日最終閲覧) 12) 国土数値情報ダウンロードサービス:. 17). 18). 19). 20). 21). 22). 23). - 84 -. http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/(2020 年 1 月 21 日最終閲覧) ひょうごオープンデータカタログ: http://open-data.pref.hyogo.lg.jp/index.php?key=muu1lclav-80#_80 (2020年 1月 21日最終閲覧) 北海道防災情報津波浸水結果 GISデータ: http://www.bousai-hokkaido.jp/BousaiPublic/html/common/sim_tsun ami/rep/00_gis/00_gis_ichiran.html (2020年 1月 21日最終閲覧) 和歌山県 防災 GISデータ掲載: https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/011400/bousai/gisdata.html (2020年 1月 21日最終閲覧) 富山県 津波浸水想定の公表について: http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1004/kj00017580.html(2020年 1月 21日最終閲覧) 秋田県防災ポータルサイト: https://www.bousai-akita.jp/pages/?article_id=293(2020年 1月 21 日最終閲覧) 南海トラフの巨大地震モデル検討会において検討され た震度分布・浸水域等に係るデータ提供について: http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/model/data_teikyou.html(2020 年 1月 21日最終閲覧) 復興支援調査アーカイブ: http://fukkou.csis.u-tokyo.ac.jp/dataset/list_all(2020 年 1 月 21 日最終閲覧) 国立開発研究法人 防災科学技術研究所:J-SHIS 地震ハ ザードステーション:http://www.j-shis.bosai.go.jp/(2020年 1 月 21日最終閲覧) 気象庁 津波の高さと被害の関係: https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/study-panel/tsunam i-kaizen/08tsunami_keihou_kaizen_siryou3.pdf(2020 年 1 月 21 日最終閲覧) 国土交通省 都市再生ビジョン: http://www.mlit.go.jp/singikai/infra/toushin/images/03/01.pdf (2020 年 1 月 21 日最終閲覧) 気象庁 気象庁震度階級関連解説表: https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/kaisetsu.html (2020 年 1 月 28 日最終閲覧).

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参照

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