子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成と実践分析(IV) : 小学校4年「菊づくりに生きる沖縄の人々」を事例として
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(2) 64. そして,菊を通して,沖縄の気候やあたたかい地方の気. にかけて,本土の市場においては菊の出荷の端境期にあ. 候を生かした生活の様子に関心を育てることをねらいと. たり,春の彼岸にも重なることから,その需要はめざま しく増加していった。. した。 関心,意欲の評価においても,これまでに開発してき. このような沖縄の菊づくりを,地域での菊づくりと比. た研究手法を,いっそう磨くとともに,新しい試みも行っ. 較した際には,子どもは意欲的に沖縄特有の条件をさぐ. た。. ろうとするであろう。. (岩田一彦). 以上のように,今日沖縄で飛躍的な成功を見せた小菊. 2.授業構成の実際 2.1教材解釈 子どもたちは,これまでの社会科学習において,地域. 栽培であるが,ほんの20年程前までは,沖縄での花づく. 社会における様々な事象は,過去・現在にわたって人々 の願いを実現させるために営まれていることを学んでき. 培に取り組んだ上聞氏は,試行錯誤の末に,小菊づくり. J-* ∫-°. また,地域社会は,単独として存在するものではなく, 国内の他地域とも結びついて成り立っていることに気づ き始めている。そして,子どもたちの関心は,次第に身 近な地域社会だけではなく,距離的に離れた他地域へも 問いの芽が膨らんできている。こうした時期に,本単元 でとりあげる素材としての「沖縄の菊づくり」は,次の 観点で適したものであるといえる。 まず,菊は,子どもたちが生活している地域において も生産さているものであることから,菊づくりに関する 情報が得やすいことが挙げられる。 例えば,地域における栽培方法,開花時期,生産量, 菊まつりの様子などである。 このことは,子どもが菊に関する自らの問いを解決し ていく上で,調べ活動が自分たちの地域とのかかわりで 学べるという利点がある。そして,他地域である沖縄と の菊づくりの違いをっかむことによって,その理由を追 求する必然性が生まれる。 次に,素材としての菊が沖縄の自然的・社会的条件を 学ぶのに適しているからである。 現在沖縄の農作物の中で重要なウェイト占め,全国一 の生産量を誇るのが小菊栽培である。 平成5年現在,国内における沖縄小菊市場占有率は, 1月(50%), 2月(70%), 3月(90%), 4月(55%) である。また,昭和55年頃の生産量は,沖縄県全体で2 千万本足らずであったが,昭和60年(1億5千万本) ,平 成元年(1億8千万本) ,平成5年(2億3千万本)にも至っ ている。 この沖縄の菊づくりが増加した主な要因は,冬でも15. りはほとんどその有効性を認められなかった。 最も早くから沖縄の気候風土に適した花きの試験的栽 が非常に高い評価を得るにいたったという。 現在にあっては沖縄全土で普及した菊生産であるが, それと共に新たな課題も生まれている。 まず,労働力確保の問題である。菊の苗づくりから出 荷までには,多くの人手を必要とする。菊づくりを始め たころには,家族,親類縁者だけでも問にあった。しか し,飛躍的に栽培面積が増えた今日にあっては,限られ た労働力の中でいかに分業化を図るのかが課題となって いる。 さらに,多くの花きを出荷するためには,大量輸送手 段の確立を図る必要がある。海を隔てて遠く離れた県外 の市場へ出荷するためには航空機と船舶に頼らざるを得 ない。しかし,航空機では輸送容量が少ないことや船舶 では輸送日数がかかることなど,鮮度が問われる花きだ けに大きな課題といえる。 こうした課題に対して沖縄県では,沖縄県花き生産組 合を設立し,組織的に生産性の向上や輸送力確保に取り 組んでいる。 そこで, 「沖縄の菊づくり」の学習過程を設計するに あたっては,沖縄での菊づくりに直接触れにくいことか ら,地域の菊づくりと比較して学べるように共通課題の 系列を考えることにした。 まず,主な沖縄の農産物について調べさせ,自分たち の地域では見られないさとうきびやパイナップルが作ら れていることをつかませる。 しかし,それらの生産量が年々減少している事実から, 沖縄の特産物であるはずのさとうきびやパイナップルが なぜ減っているのかを問いとして持たせたい。これにつ いて,子どもは外国産との競合や品質,生産価格から考. 度以上という温暖な気象条件を生かした露地,無加温ハ. えるであろう。そして,それにもかかわらず,唯一大き な伸びを示している沖縄の菊づくりを事実として提示す. ウスによる切花類の栽培が容易なことがあげられる。. ることによって,子どもは,なぜ沖縄の菊が増加してい. つまり,沖縄以外の地域では,冬季に育成するために ハウス内を加温し,生産しなければならないが,沖縄で. るのかを問いとして深めていくであろう。また,同時に 地域での菊づくりと比較しながら調べていく中で,沖縄. は暖房費が不必要なことから,低い生産コストにより冬. 特有の菊づくりが大きく増加している理由を考えさせて. 季の花き栽培が可能なことである。. いきたい。. そして,こうして作られた菊は, 12月から5月ころ. さらに,現在の沖縄の菊づくりにおける労働力と輸送.
(3) 子どもの関JL、 ・意欲を育てる社会科授業構成と実践分析(Ⅳ). 力確保の問題を明らかにすることによって,沖縄の菊づ くりの将来像を子どもなりに予測させていきたい。 以上のことから,共通課題として,事実をっかみ情報 を集める段階では「沖縄産情報を集めよう」 ,地域の事 象と比較して調べる段階では「沖縄と社の菊づくりの違 いを見つけよう一沖縄で菊づくりがふえたわけをさぐろ う」 ,広い視野から考える段階では「沖縄の菊の将来を 考えよう」を,それぞれ設定することにした。. 65. 2.2単元の指導 (1)目標 ・社町とは異なる自然条件である沖縄の菊づくりに関 心を持ち,意欲的に調べることができる。 ・沖縄の菊づくりは,冬でも温暖な気候を生かし,本 土の端境期に出荷できるという利点によって発展し ていることを理解することができる。 ・沖縄の自然的・社会的背景をふまえて,これからの 沖縄の菊づくりについて,自分なりの将来像を考え. (2)学習過程(全9時間). ることができる。. 学習活動. 杜と沖縄の菊づ-り の違いを見つけよう. 沖縄で菊づ-りが増 えたわけをさぐろう. 沖 縄 産 情 報 を 集 め よ う. 地 域 の 事 象 と 比 較 し て 調 べ る. 3時間. 情報を集め事実をつかむ. ○沖縄では,どんな農産物が盛んなのか を調べる。 ○沖縄では,なぜ,さとうきびやノヾイナッ プルの生産量が減ってきているのか考 える。 ○沖縄では,菊の生産量が年々増えてい る事実をっかむ。 ○なぜ,沖縄では菊づくりが盛んになっ てきたのか予想し,調べる。. ○上聞さんと社町での菊づくりの違いを 調べる。 ・菊づくりの一年・場所・広さ tfi ffi只 ○上聞さんの菊づくりの工夫について調 べる。. ・水の確保・苗の植え付け時期 ・電照栽培・小菊から大菊 ・出荷時期・出荷方法. ○杜と沖縄の菊づくりはなぜ,こんなに 違うのか予想する. ・菊を出荷する時期の違い ・沖縄では,なぜこんなに菊づくりが増 えてきたのか考える。 ○沖縄の菊づくりのなぞをさぐる。 ・冬でも無加温栽培ができる ・本土の端境期にあたる出荷. 沖縄の菊の将来を 考えよう. 広い視野か\b考える -時間. ○沖縄の菊づくりの問題点を捉える ・輸送方法と輸送量 ・菊生産量増加と値段 ・外国産との競争 ○沖縄の菊づくりは今後どうなるのか予 想する ・増える ・減る・増えたり減ったりする. 教師の働きかけ. 沖縄のイメージから沖縄の主な農産物 について,予想したり調べたりする中 で沖縄の菊が全国1位の生産量を誇っ ていること気づかせる。 沖縄の菊情報を多く集めるための方法 を考えさせ,調べさせる。 誰に,何を聞くのかを明確にさせる。 集めた情報は,交流させる。 地域の菊づくり情報と比較させる。 最初に菊づくりを始めた上聞さんを紹 介する。. 社町と共通している産物である菊は沖 縄と作り方がどう違うか調べさせる。 沖縄と社の菊づくり風景,電照栽培, -ウス栽培,出荷の様子から考えさせ る。 菊づくり農事ごよみから,植え付け時, 出荷時,土づくり時期等社町の菊づく り農家とどこがどのように違うのかを 地域の事象と比較させる。. 沖縄と社の菊づくり農事ごよみを比較 させその違いから予想させる。 「東京中央卸売り市場の月別市場占有 率」から12月∼4月は多くが沖縄の菊 によって占められていることに気づか せる。 「上聞さんの菊づくり」の話から,な ぜ上聞さんが菊づくりに取り組んだの かを知らせ,現在の沖縄の菊づくりが 有利な点を捉えさせる。 上問さんが今悩んでることから,沖縄 の菊づくりの問題について,どうすれ ばよいかを考えさせる。 沖縄の菊づくりは今後どうなるのかに ついて予想させる。 学習してきたことをもとに自分なりの 考えを持たせる。.
(4) 66. 2.3学習指導案(第2次第4時) (1)本時の目標・沖縄では冬でも暖かいという自然的条件を生かし, ・上聞さんが沖縄で初めて菊づくりをした理由につい本土の端境期に出荷できるという利点により菊づく て,意欲的に考えたり調べたりすることができる。りが盛んになってきたことを理解することができる。 (2)本時の展開 学. 習. 活. 動. 1 . 本 時 の 学 習 課 題 を確 認 す る0. 教. 師. の. 働. き. か. け. . 上 聞 さん の 菊 づ く りが 広 ま っ た理 由 につ いて 考 え る こ とを 確 か め る0. 予 想 さ れ る子 ど もの反 応. . 上 聞 さん が 初 め て, 沖 縄 で 菊 づ く り を した わ け は何 だ ろ う0. 共 通 課 題 : 沖 縄 で菊 づ くりが 増 え た わ けを さ ぐろ う. 2 . 上 聞 さん の 菊 づ く りが. . 上 聞 さん が 沖 縄 で 菊 づ く りを さ か ん. 沖縄 全 土 に 広 ま った理. に す るた め に, どの よ うな仲 間 の人 々. 由 につ いて 考 え る0. に働 きか けた の か予 想 す る。. . 社 町 と沖 縄 の年 平 均 気 温 の違 いか ら 冬 の暖 か さを 利用 して 12 月 か ら 6 月 ま で作 れ る こ とに気 づ かせ る0. . パ イ ナ ッ プル や さ と う き び は , 外 国 産 の もの が安 いの で , 作 る人 が 減 つ て き たO. . 冬 で も沖 縄 は 15度 以 上 あ り, 暖 か い の で 花 が 作 れ るか ら0 . 他 の 所 で は秋 に しか 作 れ な い けれ ど, 沖縄 で は冬 で も外 で 作 る こ とが で き る0. . 資 料 と して, 菊 の 月 別 出 荷 額 を 提 示 し, 1 2月 か ら 5 月 に か けて 多 く出 荷. . 5 月 か ら12 月 に 出 荷 す る と あ ま りな いか らよ く も うか る0. され る理 由 は何 か考 え させ る。. 3.. 「上 聞 さ ん の話 」 を読 み, 沖 縄 で菊 づ くりが 増 えた わ けを確 か め る0. . 3 月 に特 に多 くの菊 が 出 荷 さ れ る の は彼 岸 で あ る こ とに気 づ か せ るO. . 3 月 は春 の お彼 岸 で た く さ ん の菊 が 必 要 だ か ら0. . 上 聞 さん か らの手 紙 を 配 布 し, そ こ か ら, なぜ 沖 縄 で は菊 づ く りが 増 え. . や は り, 冬 で も暖 か い気 候 を 生 か し たのだ0. て き たの か 確 か め させ る. . 12 月 か ら 5 月 は沖 縄 で しか 作 れ な い か ら, 高 い値 段 で 売 れ るん だ なO. . 社 町 で は, 冬 に作 る た め に は 多 く暖 房 費 が か か って しま う こ と を 1 か 月. . 冬 に作 る と社 で は 暖 房 費 が 多 く必 要 な ん だ な0. の 灯 油 代 か ら気 づ か せ るO. 4 . 沖 縄 の菊 づ く りの 問題 点 をつ か む○. . 沖 縄 が 本 土 よ り も遠 い こ と に よ る輸 送 上 の 問 題 点 や生 産 性 を 向 上 させ る た め の 問 題 に気 づ か せ る○. . 花 は飛 行 機 で運 ぶ と高 くつ くの と もつ と多 くの菊 を つ く る た め に ど うす る の だ ろ う○. (大西誠一).
(5) 子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成と実践分析(Ⅳ). 3.授業分析. 表1第2次第4時の授業分析表 発. Q 1 Q 2 Q 3 Q 4. 67. 問. 沖縄で一番最初に菊づ くりを考えた上聞さんは, どのよ うにして60人の仲間を集めていったので しよう0 上聞 さんの話を聞いて農家の人たちはどう思ったので し よう0 本当に儲かるのか という農家の人たちはの質問に上聞さ んはどう答えたのでしよう0 (資料 1 ) 出荷グラフ 上聞さんか らいただいた手紙を読んで, 自分達の考えた ことが正 しかつたか確かめてみましよう0(資料 2 )上聞 さんの 紙. 学. 習. 内. 容. . 自然条件 (暖かい沖縄の気候) .社会条件 本土の端境期 . パイナップル . サ トウキビの衰退 .菊づくりへの迷い .冬に菊があればという消費者の願いと上聞さんの知恵 .社町と沖縄における菊づくりの比較 .上問さんの知恵や生 き方への共感. 表2第2次第4時の授業記録 教師の働きかけ Ql上聞さんはどのようにして60人の仲間を集めていったの でしょうか。. Q2上聞さんの説得を聞いて,農家の人たちは,どう思った のでしょうか。. 蝣・蝣-it:十十コV. ち-I ∴㌧・-I ,!:・・..,. 表1の授業分析表は,教師の発問と子どもの学習内容. Cl他の県で作りにくい時期に作れば儲かる。 C2沖縄がいっぱい作れて,誰も作ってないから今がチャ ンスだ。 C3パイナップルとか野菜を作っているけど,あまり売れ ないから。 C4沖縄の自然の特徴は暖かいから。 C5 -年中出されたらお店の人も助かる。 兵庫県が出荷を終えたら沖縄県が出荷をし,いろいろな 県が儲かるから。 C6沖縄は害虫が多いからやめといたらいい。 C7土地はどうするの? C8空き地とかを使えばいい。 C9農家の人たちは電気代はどうするの? CIOうまく行くかどうか分からない菊にせずに値段の高い サトウキビや畜産にした方がいい。 Cllパイナップルがあまり売れないと言いますが,パイナッ プルや野菜をたくさん作ればいいじゃないですか。 C12電気代とか,肥料とかそういうお金はどうするの。 C13付け足しだけど,肥料とか農薬とか電気代とか土地代 とか全部のお金はどうするのか。 C14儲かるのかって聞きたいと思う。 C15亡くなる人が多ければ菊がよく売れる。 C16葬式もだけど,今年みたいに地震があったら菊がよく売 れる。 C17葬式もやけど今年みたいに地貫があったら,特に売れる。 C18花屋さんに行っても沖縄の菊なんか売ってない「あっ, 沖縄の菊や,珍しい」っていっぱい買うと思う。 C19お正月とかにお墓参りにいく時いろいろな人が買いに 行く。 C20沖縄の菊を出す時は他の県は休む時だから儲かる。 C21沖縄は,兵庫県が休んでる時チャンスだと思って出荷 している。 C22冬で珍しいし,沖縄の花は小さい菊だから珍しいので 売れると思う。 C23お正月に買ういうてもその時だけに売れるだけだから その後は,全然売れなかったらどうするのですか。 C24正月以外は、家に飾っていたらいいと恩います。 C25これ(グラフ)の3ケ月間がほとんど沖縄の菊だから, 他の月に売れなくても儲かっていると恩う。. 「上聞さんはどうやって仲間を説得したか」 (Ql)の問. を整理したものである。子ども達は,上問さんが菊づく. いについて, 「本土の菊生産の端境期に出荷できる」 (C. りを提唱したわけやそれを聞いた農家の人たちの思いを. 1, C2),沖縄の冬が菊づくりに適している(C4),. 予想していくうちに,菊づくりが儲けにつながるのかの. 野菜や果物(パイナップルなど)より新しいものに挑戦. 一点に集約してきた。そして, 「儲かるか」について自. しようとしている(C3),といった具合に,商品とし. 然条件や社会条件などのいくつかの視点で追求していっ たのである。. ての価値,自然条件,新しい農業に挑戦など,上聞さん. 以下,表2の授業記録に沿って分析していく。まず,. えている。つまり農産物の生産には,自然条件が満たさ. が仲間を集めるために説得した方法について多面的に捉.
(6) 68. れていなければならない,出荷したものが消費者のニー ズに合致しなければならないなどの認識があるからこそ の意見である。 これに対して,農家の人々の立場の考えとして, 「土地 はどうするのか」 (C7) 「電気代,農薬代,肥料代など はどうするのか」(C9, C12, C13)「うまくいくかわ からないものに挑戦するより今までの農業を改良した方 がいい」 (CIO, Cll)などの意見が出ている。従来の 農業では経営が悪化し,どの農家も改善への願いを持ち ながらも,菊づくりが本当の問題の解決につながるのか という農家の人々の思いについて多面的に捉えている。 これらの意見の根拠としても,沖縄の農業の抱えている 問題を捉え,改善することの必要性を感じているからで ある。また,農業生産に必要な条件としての土地や経費 の必要性に関する認識があったからである。 さらに,子ども達の追求の視点は「本当に菊づくりは 儲かるのかを上問さんに聞きたい」 (C14)の意見に集 約されてきた。 「菊づくりは本当に儲かるのか」 (Q2)の問いに対し て, 「葬花として使う」 (C15, C16, C17) 「正月用や 墓参り用に使う」 (C19) 「本土の端境期で沖縄産しかな い」 (C20, C21) 「沖縄産の菊は小菊であったり珍しかっ たりする」 (C18, C22)「(グラフを使って) 2月から 4月の3カ月間はほとんど沖縄の菊だからよく売れてい る」(C25)と発言している。これらは,菊の用途,他 地域で生産することの難しさ,菊の特徴(小菊)など看 関連させて「冬にも,菊の需要があり,沖縄のような暖 かい地域で生産が可能であり,だからこそ儲かる」とい う認識がえられていった。 以上,教師の問いとそれに対する子どもの発言内容を 分析した結果,経費,栽培管理,土地確保,保守派の思 いなど様々な根拠を持ちながら,沖縄の菊づくりが儲か るだろうと予想をまとめることができた。これは,教師 が上聞さんの説得内容と農家の人たちの思いを関連させ て授業を構成したことと,これまでの学習で子ども達が 沖縄の自然条件や出荷に関わる社会条件などへの認識を 深めていたことに起因する。さらに,教師が自分達の地 域の菊づくりとの比較をさせることによって,子ども達 は,沖縄の自然条件が菊づくりに適していることに対す る認識を深めるとともに,菊づくりを提唱し,実現させ た上聞さんの知恵や生き方に共感することができた。 課題としては,上聞さんの手紙を読んで検証していっ た段階で,子ども達の感想を話し合う時間を十分保証で きていれば,自然条件や社会条件などいろいろな視点で 総合的に判断した上聞さんのすばらしさや説得時におけ る上聞さんの熱意の大きさにも気づかせることができた と考える。 (堂本大明,吉田典之,進藤憲司). 4.子どもの評価 4.1関心の評価 関心の評価については,従前と同じく「沖縄の人々の くらしについて,特に(さらに)調べてみたいことがあ れば書いて下さい」というテストを小単元ごとに実施し, その回答を分析することにより行った。結果は以下の通 りである。なお,子どもの回答は表3を参照されたい。 (1)プリテストでの関心の所在 ほとんどが沖縄の一般的イメージ(きれいな海・暖か い気候)に基づく関心となっているが,料理(食べ物) への関心が高いのも特徴である。問いの形式は, 「どの ように」が中心であり, 「なぜ」は3事例に留まる。 (2)第1次終了後テストでの関心の育ち 第1次の学習内容(認識の深まり)を反映して,沖縄 の農家,とりわけ菊づくりに関する問いが増えている。 また,探求的な問いが増える( 「なぜ」は13事例)とと もに,農家の人の具体的な苦労・工夫に関する問いも増 えている(8事例)。他方,プリテストと同じレベルの 問いがまだかなり見られる(11事例) 。それだけ,個人 的な関心へのこだわりが強いと言えるだろう。 (3)第2次終了後テストでの関心の育ち 第2次までの学習の成果(認識の深まり)を反映して, 菊づくりに問いが焦点化されており,個人的関心へのこ だわりは後退している。特に菊づくり(方法,現状,将 来,利益等)に関わる異体的な問いが20事例に増えている。 しかし,まだなぜ沖縄で菊づくりが盛んになったのか (上聞さんの説得の方法も含めて)が理解できていない 者が7名,沖縄の暖かさを利用した菊づくりの特色が理 解できていない者が5名おり,必ずしも全員の関心が育っ たとは言い難い面もある。 (4)ボステストでの関心の育ち 関心の育ちの中では,とくに広がりの面が評価される。 これまでに菊づくりを中心に沖縄の農業を学んだ子ども たちは,沖縄の小学生や町役場の人と手紙をやり取りし たり,お土産をもらったりすることを通して,沖輝の人々 の日常の暮らしへの関心が広がっていったと考えられる。 具体的には,沖縄の家の造り,料理,言葉,遊びなどに 関する問いが延べ20事例に達したことに現れている。 だが,関心の深まりという点では,問題が残った。菊 づくりに直接関わる問いは6事例であるが,すべて第2 次終了までに出ているべき問いであり,学習内容を踏ま えて,さらに関心が深まったとは考えにくい。 「菊づく り」という主題そのものが,子どもにとって,それほど の好奇心を呼び起こさないものであったのかも知れない。 また,沖縄への関心は育ったと評価することができる が,はたしてそれが「暖かい土地のくらし」への関心と とらえられるかどうか,認識内容との関連で吟味するこ とが必要であろう。 (原田智仁).
(7) 子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成と実践分析(Ⅳ). 69. 表3関心の評価のためのテスト回答 児童. プリテス ト. 1. どんな生活をしているか0. 2. 生活. 3 4. 第 1次終了後テスト. -. 第 2 次終了後テスト. ポス トテスト. なぜ沖縄の人は菊を作 りはじめた のか さとうきびはなぜよくうれている のか0. 沖縄の菊は他の県とどういう所が ちが つの ー か0 どうやって60人あっめたのかO. 沖;鞄の天ねんきなんぶつ. 今ビス ノ なくらしをしているか0. もつとはかに花づくりのくふうを していないのかO. 兵庫と沖縄の菊のちがいをまだわ からないので吉 田ベてみたいO. 5. どのようにくらしているか, + そのきもち。 夏のくらし. 6. 雪はちょっとだけでもふるかO. ひようごでもおきなわみたいにつ くれる のつくりかた。 さとうきびは沖縄の名物みたいな 物なのに, グラフを見たらちくさ んより少ないのはなぜかO もつとくわしく沖縄のくらしをし らベていきたいQ ことばとか, お どりとか, 名物とか知りたい0 沖縄の上聞さんはなぜ虫をとるし かけをせんたいにしないのかO. 沖縄の人は家でどんなことをして いるのか, どんな物を使っている のかを調へたいO 上聞さんの小さいときのこと0. 7. 雨はよくふるのか0. 8. 沖縄はあついのか。. 9. どういうくらしをしているか0. 10. 7中縄はなぜラ 毎がきれいかO. わかい人はなぜ畜産にいくのか。. ll 12. (ありません) ちょっとでも雪はふるかO. さとうきび (白紙). 13. (なしで- す). 14. あそび. 15. いまの人口. 16. 石垣島のサンゴはどうして 作 られたのか0. 17. 沖縄のぎようじ. 18. 沖縄のき 毎にいるいろんな魚, 沖縄にいる虫, 沖縄の人口. 19. 物のかちがどのくらいなのか0. 20. 食生活と遊びを しらペたい0. 21. 沖縄はなぜあたたかいのか0. 22. どんな仕事をしたり, どんなあ そぴがあるかとか, いっぱい0. 23. (いろいろあるからかけない). 24. (ない). 25. どんな家で, どうやって冬をこ すのか0. 26. 沖縄の食べ物は, どれだけかわつ たものがあるか0. 27. 食べ物もことを言 問ベてみたい0. 28. こたつをつかうか0. 29. (ベつに). 30. (ベつに). 31 32. さとうきびのかりとり方 鉄道はなぜないのかO I*-'長いのか0 夏はtlよせ きくは▼一たば何円O サ トウキビはどうしてだんだん滅 つてきているのか0 パイナップル はでだL がよかったのに, どうし ておちたのか0 菊の売 り上げはどういうりゆうで あがってきているのかO. 沖縄の特産品を作って生活してい る人たちについて, いつごろどん な物を作っているかなと。 どうやって」 ニ 問さλ ノ はのうかの人 たちをせつとくしてきくづくりを したのかO 今の菊の売り上げはじゆんちよう に上がっているのか。 沖縄の にな 人々は たのかなぜキク作りに夢中 I- つし 0 サ トウキビが最初におきなわで作 られたのはいつか0 (予想) 150年 くL, い別と恩つ0 上聞さんは何と言って菊作りをす る たちをあっめたのか どうしてちくさんがおおいのか。 もつとくわしく沖縄のくらしを勉 強したい0 (さとうきびは冬どう いうふ うに育てるか, パイナツプ ルはなぜ年々減っているかなと) 沖縄の菊作りは4 ・5 - 6 ・7 月 が休み, 兵庫は4 ・5 ・6 ・7 月 がうえつけだけど, 沖縄の菊作 り の休みの問は, 菊はどこから送ら れてくるのか0 沖縄ではなにを食べているのか0 沖縄のきくと兵庫のきくは, 形や 色が同じか0 どうして沖縄はあたたかいのかO くらしのコトを中心に学習したい. どんな仕事をしているのか, 調べ てみたい0 (なし). パイナップルはどこに送られてい るのか0. 33. 料理, 万言と共通語. 34 沖縄の人のくらしについて "ー■■ 35 食べている物とか沖縄の言葉. 義兵孟美指 摘. スイカは1 年に何こぐらいできる のか0. 37. なぜ海がきれいか0. 糟. 昭和55年∼平成 5 年まで, だんだ ん菊が多くなっているのか0. 子どもたちの遊び. おきなわのめいぷっとかまだある のか, とくにおかしとか0. おきなわはおいしいおか しがある の加O. 今はもうやさいを菊がぬいている か, 知 りたいO なぜ, 沖縄では長きくをつくるの カ 、 なんで沖縄と兵庫は菊の植えつけ や菊の出荷がずれているかO 菊の生産がくはこれからもふえて いくのか。. (白紙) 菊とちくさんの生産丑は, 今はど うなってているのか 沖租の方言はどんなのかO かわつたことばや○○のことをもつ とどんどんしらペfこいO (意味不明) 沖縄の人は, 菊のどこがいいのか0 ちくさんは, なぜそんなにうれる のか 沖縄の食い物を調べたい0. (白紙) きくづくりは畑をいっぱいとるか ら をふやして うかるのか はかの花きは, どんなのを沖縄で 作っているかロ せがひくいとなぜ売 り物にならfj= 沖縄産の動物はどんなのがいるの いのかO かO 作るときにひりようをまかないと .沖縄の方言 作れないか0 沖縄はどうして暑いのか0 どうし 菊のねだんは, 何円か0 てさとうを使ったおかしが多いの か0. どの県に, 一番多 く出荷している か0. ちんすこう. 黒ざとう以外の沖縛 の名産品のことや観光地などのこ とを知りたし. グラフJZJ 外のもの でふえてきている物を知りたいと 妄 買う 漁業をして生活している人たちに ついてQ. 何日ぐらいでそだつか。. なせ, うるきせつがずれているか0. 沖縄だけの遊びを調べたいO. 沖縄だけの遊び. 上聞さ 説とくする時 どんなんはみ 号 をんなを lきったのか このあときく作 りをする人は. ふ えるのかへるのかO. 沖縄の人々は夏はどうしてすごし ているか さとうきびは山に作っているのに, なぜあんなにいっぱい作れるのか0. 令, 菊はどのくらい生産されてい る㍉ 、 ケ 、 なぜ沖縄で菊づ くりがさかんにな つたかがあまりわからないから, そのことをもつとしらベたい0 昔はのう薬や紙にのりがついてい るものがないのに, どうやってが い虫をふせいでいたんですか0. 今の沖縄の人のくらしはどうなつ ているのか まだよく沖縄のことがはっきりし ていないので, もつとくわしくし りたい0 そういうふうな仕事をして, どん な家にどんなふうにすんでいるの か0. なぜ菊作 りがさかんになったか0 もつとくわしく調べたい。. パイナップルの外匡ー 産がふえた今, どうやって沖縄の農業が進むかO. 60人の人が今まだ菊をやっている のカ、 お金は, どれだけもらえるのかO. れきしをしる0. 上問さんは何と言 って沖縄の人た ちをせ つとくしたのかQ 沖縄の人 たちは菊づくりについてどういう ことを上聞さんに聞きたいか0. なんできく作 りのじきがうまくず れているのか0 なぜ沖縄で菊づ くりがさかんにな つたのかが,まだ かb ん0 き 乍りがさかんになったこと0 (1、 の人はどんな生活をしてい 尋旗 と絆 宴芸至甑 県. 吉0いる農. でも作 っているのか0 きく作 りでのひみつをもつとしら. 讃岩雄. ベ .い - Oて上聞さんはもつといっぱ I どうし い作ろうといっていて, 西山さん 悪路 畠左夏喜粥 E O. 沖縄の方言, 言糞 孟E、 λ嘉E 1完侶. 36. 豊. 上聞さ人ノ の′ J、 さいときのこと0. 沖縄の料I翌. 沖組の食べ物が調べてみたいO. 沖組のくらしのことO 農業のことしかやらなかったのでー o IO こ 、 h ない 沖縄の人はどんな生活をしている かをしらベたい0 家のやねは本当に低いのか0. きく作りでのひみつをもつとしら ベ 一い久々の方言 沖盛の. 甥. 妄て雪害㌫畠荒0 0)気温は最高. とん つているか, そのまんまか0 禦錆 畜産のこと. 畠も)(これからどうなるか,.
(8) 70. 4.2意欲の評価 (1)意欲の定義と意欲評価の課題 これまで本継続研究では, 「意欲」を《子どもが問題 の解決のために,積極的に調べ,考えている状態》と規 定してきた。今回は,このような定義を一歩すすめて, 《子どもが社会事象についての研究活動を積極的・持続 的に行っている状態》と規定し直すことにする。このよ うに「意欲」を規定し直すのは,従来の定義では,例え ば「問題を発見する」といった研究活動が評価対象にな らないおそれがあるからである。また,本来「意欲」に は,活動に着手する際の「やってやろう」という積極性 の側面だけでなく,活動を「やりぬこう」とする持続性 の側面があるからである。 4) 社会科授業で行われる《社会事象についての研究活 動》には,一般に以下のような活動があるといえよう。 5) (ア)見学・調査により事実的データを収集する活動, 資料から事実的データを読みとる活動。 (イ)事実的データから一般的抽象的な概念を作りあ げる活動。 (ウ)問題を発見する,仮説を設定する,解決策を提 案する活動。 (ェ)学習の成果を絵や劇などで表現する活動。 社会科授業において,子どもがこれらの諸活動を積極 的・持続的に行っているかどうかを検討することが,意 欲評価の課題となろう。 (2)意欲評価の材料 (1)で述べたような意欲評価を行うためには,授業 において子どもに(7)-Wの諸活動を実際に行わせること が必要である。そして,評価を客観的に行うためには, それらの諸活動を教師が観察して記録したり,子ども自 身に活動の成果を記録させることが必要である。このよ うにして活動やその成果を記録したもの/記録させたも のが意欲評価の材料となる。 本研究では,ほぼ毎時間,子どもに研究活動の成果を プリントに記録させていった。プリントは,各時間の主 要な活動についての指示・問いを項目に分けて記し,千 どもにその項目ごとに活動の成果を書き込ませる形式と なっている。ここでは,このプリントの記述を評価の材 料として使用する。 (3)意欲評価の基準 指導要録に示される観点( 「関心・意欲・態度」 「思 考・判断」 「技能・表現」 「知識・理解」 )をそれぞれ独 立した評価項目として設定することには,次のような難 しさが伴う。例えば,提示された資料(グラフ)から子 どもが丹念に事実的データを読みとっている場合,それ を, 「意欲」的な研究活動の現れとして解釈することも, 「資料活用技能が高い」と解釈することも可能である。 同様に,学習問題について子どもが多様な仮説を設定し. ている場合,それを「意欲」的な研究活動の現れとして 解釈することも, 「思考力(仮説設定能力)が高い」と 解釈することも可能である。 あくまでも指導要録に示される4つの観点を独立した 評価項目として設定するのであれば,他の項目と重複し ない,その項目独自の評価基準が必要となる。 「意欲」 の場合,特に「恩考・判断」 「技能・表現」と重複しな いように,その評価基準を設定することが求められる。 本研究では,例えば次のように「意欲」評価の基準を 設定する。資料から事実的デ-夕を読みとる活動の場合 には, 「資料から正確に事実的データを読みとれたか」 を「技能・表現」の評価基準とし, 「どれくらい多くの 事実的データを読みとれたか」を「意欲」の評価基準と する。事実的データから一般的抽象的な概念を作りあげ る活動の場合には, 「事実的データを整合的に解釈でき たか」を「思考・判断」の評価基準とし, 「どれくらい 多くの概念を作りあげることができたか」を「意欲」の 評価基準とする。仮説を設定する活動の場合には, 「大 胆な仮説を設定できたか」 「緻密な仮説を設定できたか」 を「思考・判断」の評価基準とし, 「どれくらい多くの 仮説を設定できたか」を「意欲」の評価基準とする。学 習の成果を表現する活動の場合には, 「イラスト,比職 などを使った個性的な表現ができたか」を「技能・表現」 の評価基準とし, 「どれくらい多くの表現ができたか」 を「意欲」の評価基準とする。このように,研究活動の いわば質的側面については「思考・判断」 「技能・表現」 として,また,その量的側面については「意欲」として 評価することとする。 (4)意欲評価の実際 ここでは,資料から沖縄と兵庫の菊づくりの違いを読 みとり,まとめる活動を行った第2次第2時のプリント と,既習事項から沖縄の菊づくりの今後について予想す る活動を行った第3次第2時のプリントを評価の材料と して使用する。 ア.第2次第2時における意欲の評価 この授業では,まず,資料1-4 (資料1 :沖縄県/ 兵庫県の菊の生産量の年次別推移[昭和55年∼平成5年] を表した棒グラフ,資料2 :沖縄県名護市上聞さん/兵 庫県社町西山さんの菊づくりの作業ごよみ,資料3 :沖 縄県/兵庫県の月別気温の変化を表した折れ線グラフ, 資料4 :兵庫県の花屋に入荷する花のうちの沖縄産の花 の割合の月別推移を表した帯グラフ)から,沖縄県や兵 庫県(社町)での菊づくりにかかわる事実的データを読 みとる活動が行われた。これは, (1)であげた諸活動の 類型でいえば, (ア)にあたるものである。 資料1-4を丹念に読めば,そこからそれぞれ以下の ような事実的データを読みとることができる。 <資料1> 1-A-ア沖縄県の菊の生産量は,昭和55年.
(9) 子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成と実践分析(IV). 約2,000本, 60年約13,000本,平成元年約18,000本, 2年 約22,000本, 5年約25,000本である。 1-A-イ沖縄県の 菊の生産量は,昭和55年から60年にかけて飛躍的に増加 し,その後も順調に増加している。 1lB-ア兵庫県の 菊の生産量は,昭和60年,平成元, 2, 3, 5年とも7,000 本前後である1-B-イ兵庫県の菊の生産量は,昭和 60年から平成5年までほとんど変化していない。 <資料2-A-ア上聞さんは,沖縄県名護市で菊をっ くっている2-Aイ上聞さんは,毎年8月に菊の植え 付けをし,それから11月まで菊の世話をした後, 12月か ら翌年の3月まで菊を出荷している。 2-B-ア西山さん は,兵庫県社町で菊をつくっている2-B-イ西山さん は,毎年4月に菊の植え付けをし,それから7月まで菊 の世話をした後, 8月から11月まで菊を出荷している。 <資料3> 3-A-ア沖縄県の月平均気温は, 1月約16 皮, 2月約16度, 3月約18度, 4月約20度, 5月約23度, 6月約25度, 7月約28度, 8月約28度, 9月約27度, 10 月約23度, 11月約20度, 12月約18度である。 3-A-イ沖 縄県では月の平均気温が15度以下にはならない3-Bア兵庫県の月平均気温は, 1月約3度, 2月約3度, 3 月約5度, 4月約14度, 5月約18度, 6月約20度, 7月 約28度, 8月約28度, 9月約23度, 10月約20度, 11月約 11度, 12月約5度である。 3-Bイ兵庫県では11月から 4月の平均気温が15度以下になる。なかでも1月と2月 は5度以下となり,冷え込む。 <資料4> 4-ア沖縄産の花が花屋にくるのは, 12月 から6月までである。 4イ沖縄産の菊が花屋にくるの は, 1月から5月までである。 4-ウ花屋にくる花のう ち沖縄産の菊が占める割合は, 1月が約50%, 2月約80 %, 3月約90%, 4月約80%, 5月約50%である。 プリントの記述を見ると,ほぼすべてのデータを読み とっている, 「意欲」の高い子ども(27人中2人)がい る一方で,ほとんど読みとっていない, 「意欲」の低い 子ども(27人中2人)もいる。また,データを読みとっ ていても,それを丹念におさえずに,概括的な言東でま とめている(たとえば,資料4について「沖縄は花屋さ んにいっぱい菊を出している」)子どももいる。このよ うな子どもには,資料から上述したような事実的データ の一つひとつを丹念に読みとらせる指導が必要であると いえよう。 授業では,引き続き,資料から読みとった事実的デー タをまとめて,沖縄で菊づくりがさかんな理由を説明さ せる活動が行われた。これは, (1)であげた諸活動の類 型でいえば, (イ)にあたるものである。 プリントの記述を見ると,回答している子どものほと んど(25人中21人)は,資料1と資料3から読みとった 事実的データを結びっけて, 「沖縄は暖かいから菊づく りがさかんである」としている。このように沖縄で菊づ. 71. くりがさかんな理由を自然的条件だけから説明するのは, 提示された資料から読みとれるデータや発達段階といっ た制約条件を考慮すれば,当然のことといえよう。しか し,資料1から読みとれる,昭和60年に沖縄で菊の生産 量が飛躍的に増加しているという事実的データに着目す ることができれば,そのような自然的条件だけからの説 明では不十分であることがわかるOこのデータに着目さ せる指導がなされれば,沖縄で菊づくりがさかんな理由 を社会的条件から探求する,本時以降の活動をより「意 欲」的に行わせることができたであろう。 ィ.第3次第2時における意欲の評価 この授業では,資料(沖縄県における主要農産物の生 産額の推移[昭和52年∼平成3年]を表した折れ線グラ フ)と既習事項から,沖縄の菊づくりの今後について予 想する活動が行われた。これは, (1)であげた諸活動の 類型でいえば, (ウ)にあたるものである。 プリントには,授業の開始時と終了時における予想と その理由が記述されている。開始時に比べて終了時にお いて理由の数が増えている(異なる視点から理由を述べ ている) , 「意欲」の高い子どもは33人中14人である。 これらの子どものほとんどは,外国産の菊との関係に言 及した新たな理由を提出しており,既習事項から沖縄の 菊づくりの今後を予想するという本時の学習課題に即し た探求活動を積極的・持続的に行っていると評価できる。 反対に,理由の数の増えていない「意欲」の低い子ども の多くは,開始時・終了時とも, 「菊の生産はこれまで 増えてきたのだから今後も増え続ける」 , 「何にしても いっまでも増え続けるということはありえない」といっ た,緻密さに欠けた理由を記述している。授業において, このような子どもの考えを反省させることが,彼らを 「意欲」的にする上で必要であったといえよう。 6) (尾原康光) 4.3知識・理解の評価 (1)絵の分析 プリテスト,ポストテストを比較,分析した結果,顕 著に表れたことは,次のことであった。 沖縄の人々の生活を問うていることから,プリテスト, ポストテストのいずれにもよく「人」が措かれている。 ただし,プリテストに表れた人は,漁業,パイナップル・ サトウキビと人,暑そうにしている人,海で遊ぶ人など が主流である。これは,児童の中にある既成の沖縄のイ メージが直接的に表れたものである. それに対して,ポストテストでは,菊栽培に関わる人 を描いた児童が23人を占めている。また,人が作業する 図として描かれていなくても,別な形で菊栽培について 措いている児童は, 16人である。回答のあったすべての 児童が,何らかの形で菊栽培について描いている。この.
(10) 72. ことは,多義的拡散的だった児童の沖縄像が,学習内容 に即して集約されたことを示している。 ポストテストに表れた菊栽培に関わる絵を,さらに細 かく見てみると,次のとおりである。. ・農薬をまく人(4人) ・菊を収穫する人(3人) ・菊の種まき,苗植えをする人(2人) ・菊を売る人(2人) ・菊をもっている人(2人) ・菊栽培をもっと続けたいと考えている人(1人) ・菊に害虫がついて困っている人(1人) ・上聞さん(1人) ・菊畑を歩く人(1人) ・電照で菊づくりをする人(1人) ・害虫を捕る人(1人) ・-ウスで菊を作る人(1人) ・水をかける人(1人) ・草を取る人(1人) ・その他(4人) ・生産がのびている菊,またはそのグラフ(6人) ・ 「太陽の花」の箱(3人) ・菊そのもの(3人) ・ビニールハウスのいらない菊づくり(2人) ・開花してしまって売れない菊(2人) ・虫(1人) ・水をやるじょうろ(1人). ・暖房のいらない菊づくり(1人) ・電照(1人) ・暖かい気候でよく育つ菊(1人) (1人). どもは,学習を経て,全員が何らかの形で,沖縄の菊 栽培について,理解することができた。 ②その中でも特に,実際に働く人の姿や異体的な仕事 にふれ, 1年中温暖な気候を利用することや害虫対策 などを始めとして,様々な工夫・苦労を知ることがで きた。 人の営みから工夫・苦労やその背景にあるしくみに 触れさせたいとする授業者の願いに照らして考えれば, おおむね満足できる結果であった。この成果の背景に は,授業者自身が沖縄に行き,写真,ビデオ,を使っ て現場敢材をしたこと,子どもが自らの手で,沖縄各 地に働きかけ,資料を入手したことなどがある。 ③一方,沖縄の菊栽培という広いくくりでは,すべて の子どもに触れさせることができたが,菊栽培のなか のどんな点をこそ学ばせたかったのかということが, やや哩味であった。菊栽培という仕事の内容と子ども の関心対象の予想とを関連させた吟味が必要であった。 ④さらに,授業設計をする際のポイントの一つとして, 地域の素材との比較があった。すなわち,社町の菊栽 培との比較で沖縄の菊栽培を見ることで,その特徴を うきぼりにしたり,学習への関心を高め,意欲的な学 習を喚起することを,ねらったものである。 ポストテストでは,社町との比較で,沖縄の菊栽培 を表した例は2件しかないQただし, 「生産が伸びて いる菊またはそのグラフ」 「 『太陽の花』の箱」 「ビ ニールハウスや暖房のいらない菊づくり」などの絵は, 社町との比較が生きた例である。 (塾のことと関連して,菊栽培のどんな内容に焦点を 当てるのかが,より明確になっていれば,社町とそれ とを比較する際にも,その観点を授業者が意識して, 子どもに関わることができたと考えられる。 (大橋尚人). 具体的な作業や設備が絵に表れていることが分かる。 単に, 「沖縄では菊の栽培が盛んだ」と観念的に理解し ているのではなく,人々が実際に働き,工夫・苦労して いる姿により迫っていることがうかがえる。 ただし,全部で25項目があがっていること,どれか一 つの項目に集中するものがないということから,子ども の捉え方は様々であったということができる。 社町との比較が出ているのは次の2例である。 ・もっと作りたいと思っている沖縄の人と,もうやめ たいと思っている社の人(1人) ・冬暖房不要の沖縄の菊と暖房のいる杜の菊(1人) 地域の素材との比較で沖縄の菊栽培を理解するとい うことに関して,直接ふれたものは少ない。 以上のことから,本実践の成果や反省点としていえる ことは,次の4点である。 ①多義的拡散的で既成のイメージにとらわれていた子. (2)説明文の分析 ここでは,絵につけられた説明文を検討して,子ども の知識・理解と,関心・意欲の育ちを,典型事例を出し ながら検討していく。 ア.知識・理解が質の良い育ち方をし,関JL、・意欲も 育っている例 教師の授業の意図に沿う形で,知識・理解を深め,関 心意欲を順調に育てている子どもが,約4分の1いる。 A君 (単元展開前の説明文) あつい日もおじさんたちはがんばってるぞ。 (絵: サトウキビ畑のおじさん) (単元展開後の説明文) 沖縄では,きくづくりがさかんである。最初は,だ れもが,沖縄できくを作ってもうれるのかとぎ問があっ た。でも上聞さんはほかの県の,冬は,さむいから,.
(11) 子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成と実践分析(Ⅳ). 73. 冬はつくれないけど,沖縄県では,冬でもあたたかい. ている事実があっ・た。このことは,極端に違っている. から,冬でもきくがつくれると言ったら,人々は,じゃ. 事実は,知的好奇心を喚起し,関心を高め,学習意欲. やってみようとなって,きく作りが始まりました。. を刺激することを,再確認させた。. (絵:菊の畑) 沖縄県は,パイナップルをいっぱいっくっていると 思われているが沖縄はもう,あまりつくられていない。 なぜかと言うと,外国からおくってくるからだ。だか. ②関心の評価の結果,関心の深まりが問いの焦点化を もたらし,その追求の後には,関心が広まっている事 実が明らかになった。 ③意欲の評価においては,これまでの定義を一部変更. ら沖縄では,あまりつくられていない。 (絵:種まき. した。そして,単元の展開過程と関わらせた「意欲の. をしているところ). 評価基準」を設定して,具体的評価を行った。その結. A君が,学習の結果,事実を押さえてその理由を説明. 莱,子どもの意欲の評価をより緻密にできるようになっ. するという形で,沖縄の説明ができるようになっている ことがよく分かる。 ィ.知識・理解,関心・意欲ともこの単元の学習では育. た。 ④知識・理解の評価では,知識理解の豊かさ,深まり が,関心の焦点化をもたらしたり,関心の広がりをも. たなかった例. たらしたりする関係が,明らかにされた。. 一方では, 9時間の授業後でも,知識・理解も関心・. 一連の継続研究を整理し,関心・意欲の評価方法と授. 意欲もほとんど育てることができなかった子どもがいる。. 業への生かし方を,整理することが,今後の課題として. 37名中数名の子に見られる。. 残っている。. (岩田一彦). B君 (単元展開前の説明文) 沖縄の人たちは,土地を米軍の軍用地として,うば われているため,土地を返してくれと,うったえてい る。 沖縄では熱帯で育っ植物を,うえつけている。沖縄 のほとんどが,畑で, 1番たくさんうえられているの は,さとうきび,そのつぎが,パイナップルです。. <注及び引用文献> 1)岩田一彦他,子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成 と実践分析-3年「社町の桃づくり」を事例として-,学 校教育学研究(兵庫教育大学学校教育研究センター編) , No.5, 1993, pp.143-161. 2)岩田一彦他,子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成 と実践分析(n)一小学校4年「山地の人々のくらし一安. (絵:厳しい気候に耐えるパイナップル). 曇野(穂高町,豊科町)に湧く良質で豊富な水を生かした. (単元展開後の説明文). くらし-」を事例として-,学校教育学研究(兵庫教育大. 沖縄では,上聞さんが,きくをそだてている。きく を植えるには,温かい温度とあかるさで,さくか,さ. 学学校教育研究センタ一編) , No.6, 1994, pp.67-82. 3)岩田一彦他,子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成. かないかきまる。 (絵:菊が咲いたり萎んだりしてい. と実践分析(in)一小学校3年「ひとびとのくらしと商店一. る様子). 買い物を10倍楽しむ方法-」を事例として、,学校教育学. B君の場合には,学習以前の方が,関心も意欲も,知. 研究(兵庫教育大学学校教育研究センター編) , No.7,. 識・理解も,沖縄に対してもっていた。それが,学習以. 1995, pp.81-94.. 後の絵や説明文から判断すると,本単元の学習が,関心. 4)片上宗二,社会科における学習意欲の問題(2),教育科学. も意欲も,喚起することができなかったと判断できる。. 社会科教育No.243, 1983.6, pp.105-106. 5)吉川幸男,評価研究のポイントはどこか,溝上奉,片上宗. 数名いるこのような子どもの指導については,ミクロに 検討していくことが今後の課題である。 (岩田一彦). 二,北俊夫編, 『新しい評価と授業分析のアイデア(社会 科授業を面白くするアイデア大百科,第4巻) 』 ,明治図. 5.結 本研究の成果を概括すると,次の点が明らかになった。. 書1995, pp.9-10. 6)本研究では, 「意欲」を子どもが行う社会的事象について. ①関心、・意欲を育てる授業設計をねらいとして,身近. の研究活動の量的側面に限定してきたけれども,子どもの. な地域に見られる菊づくりを事例として,沖縄の学習. 「意欲」を促進させる指導は,研究活動の質的側面に言及. の展開をはかった。しかし,子どもが必ずしも,菊に. するものでなければならない。つまり,子どもの「意欲」. 関心を持っているとは限らないことが分かり,強い関. を促進するのは, 「できるだけ多くの理由を考えてみましょ. 心を育てることにはつながらなかった。 しかし,サトウキビやパイナップルの生産量が減少. う」といった活動の量的側面に言及する指導ではなく,千 どもから提出された理由が緻密さや大胆さにおいて問題を. しているにもかかわらず,菊の生産量が急激に伸びて. もっていることを指摘する,活動の質的側面に言及する指. いる事実は,子どもの関心を引き,学習意欲を喚起し. 導である。.
(12) 74. Development and Analysis of Social Studies Lesson for Promoting Children's Interest and Volition (IV) : In the Case of "the Life in Warm-Climate Region (the Life in OKINAWA)" in the Fourth Grade Tomohito Harada, Kazuhiko Iwata (Department of Social Science, Hyogo University of Teacher Education, Shimokume, Yashiro, Kat0-gun, Hyogo 673-14, Japan) Yasumitsu Obara (Department of Education, Tottori University, Koyama-cho Minami, Tottori 680, Japan) Seiichi Onishi, Noriyuki Yoshida, Kenji Shindo (Attached Elementary School, Hyogo University of Teacher Education, Yamakumi, Yashiro, Kat0-gun, Hyogo 673-14, Japan) Daimei Doumoto (Yashiro Elementary School, Yashiro Kato-gun, Hyogo 673-14, Japan) Takao Omae (Yoneda Elementary School, Yoneda, Yashiro, Kato-gun, Hyogo 673-14, Japan) Naoto Ohashi (Sanju Elementary school, Suehiro, Miki, Hyogo 673-04, Japan). This study is a continuation of Development and Analysis of Social Studies Lesson for promoting ChiL dren's Interest and Volition ( I) (n) (IH) , which have been made clear that children's interest and volition can promote through enriching children's social cognition, and promoted children's interest and volition can enrich children s social cognition. The purpose of this article are also to develop and analyze social studies lesson for promoting children's interest and volition, and to develop a method that analyze andevaluate social studies lesson from a point of promoting interest and volition. The hypotheses in this study are children's interest and volition can promote through enriching children's social cognition, and promoted children's interest and volition can enricch children's social cognition. Besed on these hypotheses, we developed a lesson of "the Life in Warm-Climate Region (the Life in OKINAWA)" in the fourth grade, and then analyze this lesson and children's understandings, interests and volitions. As a result of this study, it has been made clear that these hypotheses are valid.. Key words: interest and volition, social cognition, social studies lesson, evaluation, the SHIDOUYOUROKU (the course of evaluation) in 1991.
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