柱ほぞ=0.25kNm×2÷1.945m×2=0.514 kN 柱長さ(=壁高さ)=1.945m、柱 2 本 顕し貫=0.08kNm×2÷1.945m×2+0.21kNm×2÷1.945m=0.380 kN 壁高さ=1.945m、貫 3 本 総和=3.046+0.514+0.380=3.94 kN 算定された設計用復元力特性を図5 の包絡線と重ねて図 8 に示す。設計用復元力は、繰り返し加力の 2 回 目あるいは3 回目の包絡線の近くを示しており、実験結果をほぼ再現できていると言える。
MEIJI-R-1 MEIJI-R-2 MEIJI-R-3
MEIJI-K-1 MEIJI-K-2 MEIJI-K-3
図8 設計用復元力特性との比較(実線:設計用復元力、破線:実験結果) 4.まとめ 岐阜県重要有形民俗文化財加子母明治座の主要な耐震要素である「顕しの貫がある土壁」の実大面内せん 断加力実験を行い、文献1)で提案されている設計用復元力特性との比較を行った結果、以下のことが明らか になった。 (1) 実験の結果、両面顕し貫試験体(MEIJI-R、顕し貫 3 段)の復元力は片面顕し貫(MEIJI-K、顕し貫 2 段) のものよりおよそ貫1 本分大きい。つまり、設計用復元力の差(貫 1 本分)に近い。 (2) 提案されている設計法に基づいて算出した復元力特性は、実験結果と比べてほぼ同等である。 以上から、「顕しの貫がある土壁」の復元力特性は、土壁(柱-土台、柱-桁の長ほぞを含む)に貫と柱の 仕口におけるモーメント抵抗を加算することができる。「顕しの貫がある土壁」は、多くの伝統構法木造建 物で用いられており、これらの建築物の耐震性能評価において、ここで得られた復元力特性を適用し得るこ とは大いに意義がある。 謝辞 本実験は、明治座耐震改修検討委員会のもとに実施した。実験の実施ならびにデータ整理などについ て、鳥取環境大学環境情報学部建築・環境デザイン学科の上杉周平君、長尾隼君、および鳥取環境大学環境 学部の羽生明来君、渡部菜央君らの協力を得た。 注) 本論文は文献 3)に加筆修正したものである。 参考文献 1) 「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験」検討委員会:詳細設計法(案),2014 年 2) 棚橋秀光・大岡優・伊津野和行・鈴木祥之:伝統的構法の楔をもつ仕口のめり込みメカニズム,歴史都市防災論文 集 Vol. 7,2013 年 7 月,pp.97-104. 3) 中治弘行・鈴木祥之:顕し貫のある全面土塗り壁の復元力特性.日本建築学会近畿支部研究報告集,2015 年 6 月 (投稿中) 荷重 N 1 見かけの変形角 UDG 荷重 N 1 見かけの変形角 UDG 荷重 N 1 見かけの変形角 UDG 荷重 N 1 見かけの変形角 UDG 荷重 N 1 見かけの変形角 UDG 荷重 N 1 見かけの変形角 UDG 歴史都市防災論文集 Vol. 9(2015年7月) 【論文】
高山町家の構造的特長を生かした耐震補強設計法の開発
Development of Seismic Reinforcement Design Method for Traditional Wooden Houses
by Taking Advantage of Structural Features in Takayama Area
佐藤英佑
1・向坊恭介
2・鈴木祥之
3Eisuke Sato, Kyosuke Mukaibo and Yoshiyuki Suzuki
1立命館大学客員研究員, 衣笠総合研究機構(〒525-8577 滋賀県草津市野路東1-1-1)
Visiting Researcher, Ritsumeikan University, Kinugasa Research Organization 2木四郎建築設計室(〒605-0811 京都市東山区小松町 148-1)
Staff, Kishirou Architectural Design
3立命館大学教授, 衣笠総合研究機構(〒525-8577 滋賀県草津市野路東1-1-1) Professor, Ritsumeikan University, Kinugasa Research Organization
In Takayama City, a large number of traditional wooden houses still exist and make regionally distinctive townscape. They are called “Takayama-machiya”. To clarify structural features of Takayama-machiya houses, structural detailed investigations were carried out. Based on the investigations, it is pointed out that traditional wooden houses have some problems on seismic performance and need some reinforcements. Therefore, it is necessary to establish a seismic reinforcement design method suitable for Takayama-machiya houses. In this paper, a case study of seismic reinforcement design is conducted for a typical two-storied Takayama-machiya. The proposed seismic reinforcement design method is useful and reasonable by taking advantage of structural features on traditional wooden houses.
Keywords : Traditional wooden houses, seismic reinforcement method, seismic performance, Takayama-machiya 1.はじめに 岐阜県高山市は、重要伝統建造物保存地区に指定されている三町および下二之町大新町をはじめ市内に伝 統構法木造建築物が多く現存している。これら建築物は地域特有の町並み景観を形成するとともに歴史的・ 文化財として高い価値があり、保存継承することは重要である。このような観点から詳細な構造調査を実施 した結果、多くの建築物では耐震安全性、耐久性などの問題を抱えており、劣化した木部補修を含む耐震改 修が急務とされた。そこで、高山市独自の高山市伝統構法木造建築物耐震化マニュアル1)が作成された。 現在、木造建築物は在来工法などを対象とした壁量計算による耐力重視の耐震設計や耐震補強がなされる 場合が多い。一方、伝統構法による木造建築物は高い変形性能を有しており、この変形性能を生かした耐震 設計、耐震補強が合理的であり、かつ有効である。そのため、伝統構法木造建築物が本来有している高い変 形性能を生かした限界耐力計算による耐震設計・耐震補強設計マニュアル2)があるが、設計用復元力や地震 応答計算など計算を容易にするために簡略化しており、高山町家特有の構造的特長を考慮できない。 本論文では、限界耐力計算を改良した近似応答計算による耐震性能評価法を導入することで各層の応答値 の精度を高め、高山町家が持つ構造的特長モデル化し、耐震性能を精度よく評価可能とする耐震補強設計法 を開発した。ここでは、高山町家として典型的な一列型町家を対象にして、多雪区域である高山市の積雪荷 重を考慮するとともに、1 階と 2 階の応答変位のバランスや偏心率を改善する耐震補強設計の事例を示す。 2.高山町家の意匠的・構造的特長 高山町家は切妻造り平入りの総二階建てで、屋根は金属板葺きで屋根勾配は緩く、軒の出は深く前面に板
止めを備え、一階正面は、一般的に入り口の大戸や出格子付きの腰付障子が設けられ、上部に出の小さい小 庇を付ける。2 階の柱間には板連子又は板格子をはめ、一部を顕し貫付きの土壁とする。このような町家が 街路沿いに建ち並ぶことで町並みに統一感のある外観構成となっており、景観的価値を生みだしている。 平面形状での特徴として「どじ(通り土間)」と言われる玄関から裏へと土間が通り、その「どじ」に沿 って部屋が正面から裏へ 1 列に配置する一列型、2 列配置の二列型、数は少ないが 3 列の三列型もある。2 階は吹抜を挟み、みせ2 階と奥座敷が設けられている。 中央部の「おえ」、「だいどこ」「どじ」の上の小屋組を顕しにした吹き抜けの大空間にして、高窓か ら光を取り入れ、柱や梁等の豪壮かつ整然とした構造美を見せる(写真 1)。建築意匠的および建築技術的 な建築的価値は、外観よりもむしろ内部の吹き抜けの大空間にあり、町家の立面意匠を残すことは景観保 存上重要であるが、この吹き抜け大空間を残すことも大きな意義がある。 構造的には、高山町家は通り沿いに連なり、隣家との距離がほとんどないため、張り間方向の妻壁は概ね 全面壁である。一方、けた行方向には、2 階吹き抜け空間の周囲以外には壁などの耐震要素が少なく、特に 1 階には壁がほとんどない耐震上の弱点を有している。主要な耐震要素は、伝統的な土壁や板壁と差鴨居、 貫など柱-横架材であり、筋かいなどの斜材は使われていない。 土壁の構造的特徴として、小舞は竹ではなく、ススキが大半であるが、一般的な竹小舞仕様とは耐 震性能はほとんど変わらないことが実験で確認されている3)。 屋内の間仕切り壁では、両面中塗り仕上げ、もしくは聚楽風 の上塗り仕上げで、壁厚は 55mm~65mm である。外壁(妻 壁)では、妻壁の外壁側は裏返しや中塗りなどをせず外装材 だけであることが多い、壁厚は40mm~50mm 程度である。 2 階正面や 2 階吹き抜け空間の周囲などには、貫が土壁の 下地材としてではなく、顕しで用いられており(写真 1)、 これは高山市の伝統構法木造建築物の意匠上の特徴のひとつ と言える。顕しの貫は厚さ30mm、せい 115mm~120mm 程 度である。貫の厚さが 30mm あるので、柱を貫通する通し貫 である場合には、復元力が期待できる。 土壁と板壁を複合した特徴的な壁が、「どじ」の外壁側の 壁に多く見られる(写真 2)。板壁単体の使用例はほとんど 無く、写真 2 のように土壁(垂れ壁)の下部に板壁(腰壁) となる複合壁である。板壁は薄板を使用しており、構造上の 耐力はない。板壁部の内部は裏返しのない土壁の場合もみら れるが、貫のみや貫・小舞下地のみで土壁はないものが多い。 主要な仕口接合部は、解体材および現地調査、地元の棟梁から の聞き取りによれば、通し貫、小根ほぞ込み栓打ちまたは追入小 根ほぞ車知栓打ち、長ほぞなどである。 3.高山町家の耐震診断・耐震補強事例 高山町家として一般的な一列型町家である宮地家住宅(高山市 指定有形文化財)(写真3)の耐震診断、耐震補強設計の事例を 示す。耐震性能の評価法として、限界耐力計算を改良した近似応 答計算を用いて、高山町家の構造的特長を生かし、多雪区域であ る高山市の積雪荷重を考慮して耐震診断、耐震補強設計を行う。 3.1 耐震診断 (1) 構造概要 図1に現況の構造平面図を示し、図2に構造軸組図を示す。金属 板葺き切妻平入りの2階建てで、X方向(けた行方向)約11m×Y 写真1 大きな吹き抜け空間と顕しの 貫を有する土壁(宮地家) 写真2 土壁と板壁を複合した特徴的 な壁(宮地家) 写真3 宮地家住宅の外観
方向(張り間方向)約6.1mの一列型の町家である。 平面図および軸組図には各階の主たる構造要素である壁の仕様および各構面の構造要素とみなす横架材お よび柱ほぞ位置を示す。当該建築物はX方向両妻面に全面壁が配置されているが、Y方向の構造要素が少な い。表1に構造階高および床面積を示し、表2に地震応答計算に用いる建築物重量を示す。各層の重量は建築 物重量を図3に示す領域で配分した。2階の構造階高は軒高の平均とした。固定荷重Gは当該建築物での実測 調査、日本建築学会荷重指針4)、建築基準法(以降、建基法)施行令第84条などに基づいて実況に応じて単 位重量を設定した。積載荷重Pは建基法施行令第85条に従い、単位重量600N/mm2とした。積雪荷重Sは建基 法施行令第86条に従い、垂直積雪量120cm、単位重量30N/cm/mm2とし、地震時の積雪荷重は0.35Sとした。 a) 1 階平面 b) 2 階平面 図1 構造平面図(現況) W2 W2 W2 W2 W2 W2 W2 W2 W2 W2 W2 W2 W2 W1 W1 W1 HW (h= 1111) NW (h = 45 0) W1 NW W2 W1 W1 NW NW NW NW NW (h= 450) 吹抜 145×150 100×100 115×115 115×115 2770 3640 1818 1363 1363 614 0 960 153 0 182 0 183 0 1385 1385 1820 1820 1818 1817 909 DN 1 2 3 4 5 い ろ は に 140×140 140×140 140×140 140×140 100×100 140×140 120×120 (細く加⼯) W1:全⾯⼟壁(t=60) W2:全⾯⼟壁(t=30) HW:⼟壁垂壁(t=60)SW:⼟壁腰壁(t=60) NW:⾮構造壁 Y(けた⾏⽅向) X(張り間⽅向) NW NW W2 W2 W2 W2 W2 W2 W2 W2 W2 W2 W2 NW NW 614 0 249 0 182 0 183 0 153 0 960 1385 1385 1820 1820 1818 1817 909 943 い ろ は に 1 2 3 4 5 140×140 140×140 140×140 140×140 柱⼨法表記無:120×120 ○:通し柱 145×150 150×150 910 140×140 100×100 115×115 100×100 通り路地 外どじ 内どじ みせ おえ 奥の間 押⼊ 床脇 床の間 みせ2階 廊下 座敷 い ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 23 50 16 50 20 50 13 59 30 0 1820 2490 1530 960 1830 6140 【軸組図 1通り】 ろ は に い ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 23 50 16 50 20 50 21 36 30 0 1820 2490 1580 910 1830 6140 【軸組図 2通り】 ろ は に い ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 23 50 16 50 20 50 19 51 30 0 1820 2490 1580 910 1830 6140 【軸組図 5通り】 ろ は に 45 0 顕し貫90×30 い ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 23 50 16 50 20 50 31 41 30 0 1820 2490 1580 910 1830 6140 【軸組図 4通り】 ろ は に 18 0 11 11 1 ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 2 3 4 5 102.8 23 50 16 50 15 04 40 00 19 41 20 50 13 59 1230 30 0 1385 1385 1820 1820 1818 1817 909943 2770 4544 10954 【軸組図 い通り】 55 04 1 ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 2 3 4 5 102.8 23 50 16 50 15 04 40 00 19 41 20 50 13 59 1230 30 0 1385 1385 1820 1820 1818 1817 909943 2770 4544 10954 【軸組図 ろ通り】 55 04 :⼟壁 :⾮構造壁 1 ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 2 3 4 5 102.8 23 50 16 50 15 04 40 00 19 41 20 50 13 59 1230 30 0 1385 1385 1820 1820 1818 1817 909943 2770 4544 10954 【軸組図 は通り】 55 04 1 ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 2 3 4 5 102.8 23 50 16 50 15 04 40 00 19 41 20 50 13 59 1230 30 0 1385 1385 1820 1820 1818 1817 909943 2770 4544 10954 【軸組図 に通り】 55 04 10 2.6 2.610 10 2.6 10 2.6 図2 構造軸組図(現況)
復元力特性算定に用いる各構造要素の復元力モデルは文献2)に従い求めた。 ① 土壁:両妻側の土壁は裏返し無しの片面塗りのため、壁厚40mmに対し構造要素として有効な壁厚を 30mmとして算定した。なお、に通りの板壁の内部に土壁があるため全面壁として復元力を算定した。X 方向の土壁は壁厚60mmとして復元力を算定した。ろ通り2階の土壁は、左右ともに支持柱が無く、下部 梁の端部の拘束力が小さいと推測されるため、耐震要素とせず、重量のみ加算する(壁厚40mm)。 ② 柱ほぞ:1、5通りの柱ほぞのみ長ほぞ(強軸方向:Y方向)として評価し、その他の柱ほぞは加算しない。 ③ 横架材ほぞ:柱-横架材仕口は、通しほぞ車知栓打ちと仮定して加算する。 ④ 顕し貫:2階4通り-ろ~は通りの土壁面の顕し貫は、土壁内の貫に比べて断面が大きく(30mm×90mm)、 めり込みによる抵抗が期待できる。ろ通り、は通り両端大入れの通し貫として復元力を算定した5)。 図4に復元力特性を示す。X方向Y方向ともに、2層に比べて1層の水平耐力が低く、両方向で1層先行降伏 となる可能性が高く、特にY方向でその傾向が顕著である。 (2) 近似応答計算結果 表3、図5に近似応答計算の結果を示す。クライテリアの検定に用いる損傷限界変形角(稀に発生する地震 動に対する応答許容値)を1/90rad、安全限界変形角(極めて稀に発生する地震動に対する応答許容値)を 1/20rad(積雪時:1/15rad)とした。近似応答計算に用いる入力加速度は平成12年建設省告示1461号の加速度 応答スペクトルを用いた。地盤増幅率は同1457号に基づき設定し、防災科学技術研究所により公開された表 層30mの平均S波速度を基に設定した。高山市伝統建造物群保存地区の表層30mの平均S波速度は約400m/sで 第1種地盤に近く、第1種と第2種の中間の値(第1.5種)とした。地域係数Z = 1.0、調整係数p = 0.85、q = 1.0 とした。近似応答計算は1階の変形を各ステップの基準とし、同ステップにおける2階の変形と剛性が一致す るよう、収斂計算を行った。減衰評価は各階ごとに減衰を求め、モードエネルギーで重みづけをしたモード 減衰で評価した。その際、損傷限界角以下の変形時には履歴吸収エネルギーを0として減衰定数を算定した。 表3中の応答値は、前述図4の復元力特性から建築物の自重による水平力の見かけ上の耐力低下(P-Δ効果に よる耐力低下)を考慮した復元力特性を用いた近似応答計算の結果を示している。X方向、Y方向ともに1階 が大きな応答値を示しており、稀に発生する地震動時にY方向1階が設計クライテリアを大きく上回り、積 図4 復元力特性(現況) 1 ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 2 3 4 5 2F 構造階⾼ 1F 構造階⾼ 2層壁重量算定部分 1層壁重量算定部分 階高[m] 床面積[m2] 備考 2階 1.665 51.57 吹抜け部15.69m2 1階 2.350 71.98 15.45m土間部2 表1 構造階高および床面積 図3 壁重量の振り分け 表2 地震応答計算用建築物重量(現況) a) X方向(張り間方向) b) Y方向(けた行方向) 0 40 80 120 160 200 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 Q(kN) R(rad) 2層 1層 0 40 80 120 160 200 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 Q(kN) R(rad) 2層 1層 積雪無G +P 積雪1.2mG +P+0.35S 2層 66.3 0.0 96.3 66.3 162.6 1層 68.1 30.9 3.3 99.0 102.3 2層+1層 134.4 30.9 99.6 165.3 264.9 固定荷重G (kN) 積載荷重(kN) P 積雪1.2m想定(kN)積雪荷重0.35S 地震応答計算用建物重量(kN)
雪時に層崩壊を生じる恐れがある。極めて稀に発生する地震動時は応答値なしで、倒壊の危険性がある。 3.2 耐震補強の検討 (1) 耐震補強計画概要 図6、7に耐震補強後の構造平面図および構造軸組図を示す。X方向、Y方向ともに耐震補強として乾式土 壁パネルまたは板壁を増設する。乾式土壁パネルは土壁に比べて単位面積重量が小さく、最大耐力以降の荷 重低下が少なく、靱性に優れた耐震要素である6)。当該建築物は土壁が主たる構造要素であり、最大耐力以 降の荷重低下が大きいため、妻面の壁の一部を土壁から乾式土壁パネルに変更した。また、梁桁スパンが大 きく鉛直荷重支持が厳しいと思われる箇所へ柱を増設する。表4に地震応答計算に用いる耐震補強後の建築 図5 近似応答計算結果(現況) 表3 近似応答計算結果(現況) a) X方向(張り間方向) 積雪無 b) Y方向(けた行方向) 積雪無 c) X方向(張り間方向) 積雪1.2m d) Y方向(けた行方向) 積雪1.2m 0 40 80 120 160 200 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 Q(kN) R(rad.) P-Δ考慮 復元力特性 極稀地震動時 稀地震動時 0 40 80 120 160 200 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 Q(kN) R(rad.) P-Δ考慮 復元力特性 極稀地震動時 稀地震動時 0 40 80 120 160 200 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 Q(kN) R(rad.) P-Δ考慮 復元力特性 極稀地震動時 稀地震動時 0 40 80 120 160 200 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 Q(kN) R(rad.) P-Δ考慮 復元力特性 極稀地震動時 稀地震動時 1/ 226 1/ 125 1/ *** 1/ 7.5 1/ 539 1/ 201 1/ *** 1/ 3.5 1/ 190 1/ 105 1/ *** 1/ 30.4 1/ 63 1/ *** 1/ *** 1/ *** 1/ 2183 1/ *** 1/ *** 1/ *** 1/ 49 1/ *** 1/ *** 1/ *** クライテリアの検定 NG NG NG NG ※応答変形角の***は応答値なしを示す (けた行方向) 加速度増幅率Gs 1.69 *** *** *** 1自由度系応答変形角(rad.) 2階応答変形角(rad.) 1階応答変形角(rad.) クライテリアの検定 OK OK NG NG Y方向 等価固有周期Teq(sec.) 1.797 *** *** *** 減衰定数h =heq+h0 (%) 9.19 *** *** *** (張り間方向) 加速度増幅率Gs 1.50 1.69 *** 1.69 1自由度系応答変形角(rad.) 2階応答変形角(rad.) 1階応答変形角(rad.) 方向 P-Δ効果による 付加曲げ成分考慮 稀に発生する地震動時 極めて稀に発生する地震動時 積雪なし 積雪1.2m 積雪なし 積雪1.2m X方向 等価固有周期Teq(sec.) 0.523 0.769 *** 4.634 減衰定数h =heq+h0 (%) 5.00 5.00 *** 15.15
物重量を示す。固定荷重Gは土壁の一部を乾式土壁パネルに変更することにより耐震補強前と比較して建築 物全体で約5%の重量低減となった。 図8に耐震補強後の復元力特性を示す。復元力特性は前述の①~④の耐震補強要素に加えて、下記の要素 の復元力を加算して求めた。 ⑤ 乾式土壁パネルを用いた補強壁:乾式土壁パネルは受け材仕様を基本とし、文献6)で示された実験値に基 づいて復元力を算定する。2階4通りの乾式土壁パネルは顕し貫仕様とし、受け材使用の復元力を75%に低 減することで復元力を算定した。パネル厚さは片面張:26mm、両面張:52mmとした。 ⑥ 補強板壁:補強板壁は、板厚30mmの両面貼り、吸付桟とし、実験値に基づいて復元力を設定する。板壁 の復元力特性は文献1)を基に、壁長さに応じて補正を行った。 図7 構造軸組図(耐震補強) a) 1 階平面 b) 2 階平面 図6 構造平面図(耐震補強) W2 W2 W2 W2 W3s W3s W2 W2 W2 W2 W3s W3s W3s W 3s W1 W1 HW (h= 11 11) SW (h= 45 0) W 3w W 3w W3s W 3w W 3s NW NW NW NW SW (h= 450) 顕し貫とし, 耐⼒を75%で算定 吹抜 2770 3640 1818 1363 1363 614 0 960 153 0 182 0 183 0 1385 1385 1820 1820 1818 1817 909 DN 1 2 3 4 5 い ろ は に 140×140 140×140 140×140 140×140 145×150 140×140 120×120 (細く加⼯) 100×100 115×115 115×115 100×100 W1:全⾯⼟壁(t=60) W2:全⾯⼟壁(t=30) W3s:全⾯乾式⼟壁(⽚⾯) W3w:全⾯乾式⼟壁(両⾯) HW:⼟壁垂壁(t=60) SW:⼟壁腰壁(t=60) WW:板壁 NW:⾮構造壁 Y(けた⾏⽅向) X(張り間⽅向) WW WW W2 W2 W2 W2 W2 W2 W2 W2 W3s W3s W3s WW WW WW W 3w W 3w W 3s W 3w W 3s 614 0 24 90 182 0 183 0 153 0 960 1385 1385 1820 1820 1818 1817 909 943 い ろ は に 1 2 3 4 5 140×140 140×140 140×140 140×140 柱⼨法表記無:120×120 ○:通し柱 145×150 150×150 910 140×140 3332 1212 100×100 115×115 100×100 柱増設 柱増設 柱増設 柱増設 柱増設 通り路地 外どじ 内どじ みせ おえ 奥の間 押⼊ 床脇 床の間 みせ2階 廊下 座敷 1 ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 2 3 4 5 102.8 23 50 16 50 15 04 40 00 19 41 20 50 13 59 1230 30 0 1385 1385 1820 1820 1818 1817 909943 2770 4544 10954 【軸組図 は通り】 55 04 1212 1 ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 2 3 4 5 102.8 23 50 16 50 15 04 40 00 19 41 20 50 13 59 1230 30 0 1385 1385 1820 1820 1818 1817 909943 2770 4544 10954 【軸組図 に通り】 55 04 1 ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 2 3 4 5 10 2.6 102.8 23 50 16 50 15 04 40 00 19 41 20 50 13 59 1230 30 0 1385 1385 1820 1820 1818 1817 909943 2770 4544 10954 【軸組図 い通り】 55 04 1 ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 2 3 4 5 102.8 23 50 16 50 15 04 40 00 19 41 13 59 1230 30 0 1385 1385 1820 1820 1818 1817 909943 2770 4544 10954 【軸組図 ろ通り】 55 04 :⼟壁 :乾式⼟壁 :板壁 :⾮構造壁 い ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 23 50 16 50 20 50 21 36 30 0 1820 2490 1580 910 1830 6140 【軸組図 2通り】 ろ は に 920 910 い ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 23 50 16 50 20 50 13 59 30 0 1820 2490 1530 960 1830 6140 【軸組図 1通り】 ろ は に い ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 23 50 16 50 20 50 19 51 30 0 1820 2490 1580 910 1830 6140 【軸組図 5通り】 ろ は に 920 910 45 0 顕し貫90×30 い ▼最⾼⾼さ ▼軒⾼平均 ▼2FL ▼1FL ▼GL 23 50 16 50 20 50 31 41 30 0 1820 2490 1580 910 1830 6140 【軸組図 4通り】 ろ は に 920 910 18 0 11 11 10 2.6 2.610 10 2.6
⑦ 補強小壁:乾式土壁パネルによる補強を想定するが復元力特性は土壁60mm厚と同等として評価する。 ⑧ 増設柱の柱ほぞ:増設柱のほぞは加算しない。 ⑨ 横架材ほぞ:足固めを取替または増設する箇所は、雇いほぞ車知栓打ちと仮定して加算する。 耐震補強要素の追加により、現況と比較して最大耐力が2~4倍上昇し、最大耐力以降の靱性が向上した。 偏心率は補強前の最大0.24(1階張り間方向)から補強後の最大0.07(2階張り間方向)に改善された。 (2) 近似応答計算結果 表5、図9に近似応答計算の結果を示す。耐震診断と同様、クライテリアの検定に用いる損傷限界変形角 (稀に発生する地震動に対する応答許容値)を1/90rad、安全限界変形角(極めて稀に発生する地震動に対す る応答許容値)を1/20rad(積雪時:1/15rad)とした。耐震要素を追加することにより応答値は各方向、積雪 の有無にかかわらずクライテリアを満足している。また、Y方向の1階に多く耐震補強要素を追加したこと によりX、Y方向の応答のバランスも改善され、1階と2階の応答値のバランスも改善された。既存の耐震要 素の一部を乾式土壁パネル耐震壁とすることで大変形時の靱性を確保し、高山町家の特徴である吹抜け等の 開放的な空間を残した耐震補強を可能とした。 4.おわりに 岐阜県高山市に現存する伝統構法木造建築物である町家について、構造詳細調査によって構造的特長を把 表5 近似応答計算結果(耐震補強) 図8 復元力特性(耐震補強) 表4 地震応答計算用建築物重量(耐震補強) b) Y方向(けた行方向) a) X方向(張り間方向) 0 40 80 120 160 200 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 Q(kN) R(rad) 2層 1層 0 40 80 120 160 200 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 Q(kN) R(rad) 2層 1層 積雪無G +P 積雪1.2mG +P+0.35S 2層 61.9 0.0 96.3 61.9 158.2 1層 65.9 30.9 3.3 96.9 100.2 2層+1層 127.8 30.9 99.6 158.8 258.4 固定荷重G (kN) 積載荷重(kN) P 積雪1.2m想定(kN)積雪荷重0.35S 地震応答計算用建物重量(kN) 1/ 428 1/ 196 1/ 40.3 1/ 27.5 1/ 970 1/ 260 1/ 205.8 1/ 66.1 1/ 364 1/ 175 1/ 32.7 1/ 21.6 1/ 315 1/ 131 1/ 32.1 1/ 26.5 1/ 860 1/ 252 1/ 174.4 1/ 52.3 1/ 263 1/ 107 1/ 26.0 1/ 21.5 0.656 方向 P-Δ効果による 付加曲げ成分考慮 積雪なし 積雪1.2m 積雪なし 積雪1.2m 1.040 稀に発生する地震動時 極めて稀に発生する地震動時 1.69 1自由度系応答変形角(rad.) 2階応答変形角(rad.) 1階応答変形角(rad.) クライテリアの検定 OK OK Y方向 等価固有周期Teq(sec.) 0.441 0.726 0.764 1.056 減衰定数h =heq+h0 (%) 5.00 5.00 11.83 11.86 OK OK OK OK (張り間方向) 2階応答変形角(rad.) 1階応答変形角(rad.) クライテリアの検定 OK OK (けた行方向)加速度増幅率Gs 1.50 1.69 1.69 1.69 1自由度系応答変形角(rad.) X方向 等価固有周期Teq(sec.) 0.379 0.596 減衰定数h =heq+h0 (%) 5.00 5.00 11.43 12.45 加速度増幅率Gs 1.50 1.50 1.54
握した。張り間方向には両側の妻壁が全面的に土壁であり、一方、けた行方向には、2階吹き抜け空間の周 囲以外には壁などの耐震要素が少なく、特に1階には壁がほとんどない。これは京町家など多くの町家と同 様に耐震上の弱点となっている。極めて稀に発生する地震動時には倒壊の危険性がある。 屋根は金属板葺きであり、また土壁の厚さが小さいために、建築物重量は軽いが、多雪区域である高山 市の積雪荷重を考慮した場合と考慮しない場合で、建築物重量は大きく異なる。そのため、耐震補強設計で は、積雪の有無とともに1階と2階の耐力、応答のバランスを改善し、さらに耐震性能が向上するように変形 性能の高い乾式土壁や板壁などの耐震要素を追加・配置した。 中央部の吹き抜けの大空間は高山町家の大きな構造的特長であり、意匠的な特長ともなっているので、耐 震補強では、町家の立面意匠とともに吹き抜け大空間の構造を損なうことのないように配慮した。 本研究で提案した構造的特長を生かした耐震補強設計法は、高山市の重要伝統建造物保存地区などの伝統 構法木造建築物の耐震補強に有用であり、今後、具体的な事例に実装するなど活用するとともに耐震改修の 促進を図る。 謝辞:本研究は、高山市をはじめ高山市伝統構法木造建築物耐震化マニュアル作成検討委員会、飛騨高山伝 統構法木造建築物研究会の支援のもとに実施した。ここに謝意を表する。 参考文献 1) 高山市伝統構法木造建築物耐震化マニュアル作成検討委員会:「高山市伝統構法木造建築物耐震化マニュアル」,2014.3 2) 木造軸組構法建物の耐震設計マニュアル編集委員会:伝統構法を生かす木造耐震設計マニュアル-限界耐力計算による耐 震設計・耐震補強設計法,学芸出版社,2004.3 3) 村石一明・田中邦明・森迫清貴:飛騨高山伝統構法土壁の繰り返し載荷実験,構造工学論文集,Vol.60B,pp.357-362,2014. 3. 4) 日本建築学会:「建築物荷重指針・同解説」,2015.3. 5) 中治弘行・鈴木祥之:顕しの貫がある土壁の復元力特性,第9回歴史都市防災シンポジウムに投稿中 6) 杉山亮太・鈴木祥之・後藤正美・村上博:乾式土壁パネルを用いた木造軸組耐力壁の開発,日本建築学会技術報告集,第24 号,pp.125-130,2006.12. 図9 近似応答計算結果(耐震補強) a) X方向(張り間方向) 積雪無 c) X方向(張り間方向) 積雪1.2m b) Y方向(けた行方向) 積雪無 d) Y方向(けた行方向) 積雪1.2m 0 40 80 120 160 200 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 Q(kN) R(rad.) P-Δ考慮 復元力特性 極稀地震動時 稀地震動時 0 40 80 120 160 200 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 Q(kN) R(rad.) P-Δ考慮 復元力特性 極稀地震動時 稀地震動時 0 40 80 120 160 200 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 Q(kN) R(rad.) P-Δ考慮 復元力特性 極稀地震動時 稀地震動時 0 40 80 120 160 200 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 Q(kN) R(rad.) P-Δ考慮 復元力特性 極稀地震動時 稀地震動時