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Title
改良型バイオネーターを用いた骨格性上顎前突症例の
Ⅰ期治療報告
Author(s)
小林, 弘史; 戸嶋, 翼; 嶋田, 勝也; 森川, 泰紀; 末石,
研二; 西井, 康
Journal
歯科学報, 120(1): 79-89
URL
http://doi.org/10.15041/tdcgakuho.120.79
Right
Description
緒 言 骨格性上顎前突症例は,上顎骨が前突しているこ とよりも,下顎骨が後退していることに起因してい る場合が多い1−4) 。顎骨の成長コントロールを行う Ⅰ期治療では,機能的矯正装置を用いた下顎骨の前 方成長を促す治療をしばしば行う。その際には,下 顎骨の成長スパートの判定や下顎骨の成長を妨げる 様々な因子の排除を行うことが重要である5,6) 。 歯列の排列は,唇側からの頰唇圧と舌側からの舌 圧とのバランス,いわゆるバクシネーターメカニズ ムにより決定されることは広く知られており7,8) ,骨 格性上顎前突症例では下唇圧が通常よりも強いこと が報告されている9) 。このように機能障害によって 形態異常は引き起こされるが,一方で形態異常が機 能障害を誘発することもあり,不正咬合の改善に は,形態と機能の双方の改善が望まれる10,11) 。 様々な機能的矯正装置の中で,形態と機能の双方 を改善できる装置として Fränkel 装置が選択され ることが多いが,装置の製作や臨床上の取り扱いが 難しい装置でもある。そこで Teuscher は,下唇圧 の排除機構を組み入れた改良型バイオネーター(図 1)12)を考案した。この装置は,機能的矯正装置と して作用しながら下唇圧の排除と過大な overjet に よる下唇の上顎前歯の内側への巻き込みを防止する 効果があり,形態と機能の改善が行われるよう改良 されている。 今回著者らは,骨格性上顎前突と診断されたⅠ期
臨床報告
改良型バイオネーターを用いた骨格性上顎前突症例のⅠ期治療報告
小林弘史
1)戸嶋 翼
2)嶋田勝也
3)森川泰紀
2)末石研二
2)西井 康
2) 1) 山梨県,2) 東京歯科大学歯科矯正学講座,3) 東京都 抄録:今回報告する2症例は,初診時年齢13歳10か月の男子(症例1)と6歳8か月の女児(症例2)で, 上顎前突を主訴に来院した。両症例とも過大な overjet とそれに伴う下唇のくわえ込み,下唇の翻転等 の形態と機能の異常を認めた。検査の結果,下顎後退型の骨格性上顎前突と診断した。症例1は上下顎とも永久歯列となっており,Dolico facial pattern であった。症例2は上下顎前歯部 に叢生のある混合歯列で,Brachy facial pattern であった。治療方針として,下唇圧の排除機構を組み 入れた改良型バイオネーターを用いて下顎前方成長を促すⅠ期治療を行った。両症例ともⅠ期治療終了 後には,下顎骨の前方成長によって過大な overjet や下唇のくわえ込み等の改善がなされ,形態と機能 の双方の改善が行われた。Ⅰ期治療における成長コントロールが効果的に行われることによって,良好 な側貌プロファイルの獲得や正常な口腔周囲機能の獲得に有用であることが示された。 キーワード:改良型バイオネーター,下顎後退型上顎前 突,Ⅰ期治療 (2019年11月8日受付,2020年1月24日受理) http : //doi.org/10.15041/tdcgakuho.120.79 連絡先:〒407‐0015 山梨県韮崎市若宮1−2−50 韮崎市民交流センターニコリ3F ニッコリ矯正歯科クリニック 小林弘史 図1 改良型バイオネーター 79 ― 79 ―
治療に対して,改良型バイオネーターを使用し良好 な治療結果を得た。そこで改良型バイオネーターを 使用した2症例を基に,矯正歯科臨床における有用 性について考察したので報告する。なお,この報告 にあたり患者とその保護者の承諾を得ている。 症例 1 1.診査および診断 患者は初診時年齢13歳10か月の男子で,上顎前突 を主訴として来院した。現病歴として上顎前突は永 久歯萌出時から気になり始め,本人や家族も徐々に ひどくなっていると感じていた。またかかりつけ歯 科医にも指摘されていたため当院を受診した。既往 歴として,慢性鼻炎,上顎洞炎にて近医の耳鼻科に 通院している。家族歴に特記事項はない。顔貌所見 として側貌は convex type を示し,口唇閉鎖時に はオトガイ部の緊張と下唇の翻転が認められる(図 2)。口腔内所見として上下顎ともに永久歯列と なっている。臼歯関係は両側ともⅡ級,overjet9 mm,overbite4mm で あ る(図3,4)。機 能 的 問 題として,口呼吸,咬下唇癖と両側顎関節にクリッ ク音を認めた。口蓋扁桃の肥大がみられたが,いび き等の症状はない。特記すべきは上顎歯列弓幅径が 大きく,上下顎小臼歯部の歯列弓幅径の不一致を認 める。そのため,小臼歯部では上下顎の咬頭同士が 接触し,上顎の小臼歯舌側咬頭には咬耗がみられ る。 パノラマエックス線写真(図5)では上下顎両側に 形成中の第三大臼歯を認めるものの,異常所見はみ 図2 症例1 初診時の顔貌写真 図3 症例1 初診時の口腔内写真 図4 症例1 初診時の模型 小林,他:改良型バイオネーターを用いたⅠ期治療報告 80 ― 80 ―
られない。側貌頭部エックス線規格写真分析(表1) より骨格系では SNA85°,SNB76°,ANB9°,Na-sion Prep. to Pt. A 0mm,NaSNA85°,SNB76°,ANB9°,Na-sion Prep. to Pog −18mm また FMA36°,GonialAngle136°と下顎後 退型の骨格性上顎前突であり,Dolico facial pattern の 傾 向 を 示 し て い る。ま た,歯 系 に お い て は, U1 to FH120°,IMPA95°,L1 to APO3.5mm と下顎前歯歯軸は標準的だが上顎前歯歯軸の唇側傾 斜を認めた。 以上のことから,上顎前歯唇側傾斜を伴う下顎後 退型骨格性上顎前突と診断した。 2.治療計画 初診時身長は160cm で男子として平均的な成長 を経ており,今後まだ下顎の前方成長が期待できる 年齢であることや上顎歯列弓幅径が大きく下顎の成 長を阻害する要因が少ないこと,咬下唇癖の既往も あることから改良型バイオネーターを使用したⅠ期 治 療 を 行 う こ と と し た。注 意 す べ き 点 と し て, Dolico facial pattern の傾向があるため,現在の咬 合高径を維持し下顎骨の後下方への回転を防ぐよう バイオネーターの咬合面を削合せずに作製した。 3.治療経過 下顎の成長余地はまだ残されているとはいえ,早 期にⅠ期治療の介入が必要であったために,診断後 すみやかに改良型バイオネーターの使用を行った。 一か月毎の来院時に Coffin のスプリングと唇側線 を調整しながら,上下顎歯列の側方拡大と上顎前歯 の舌側傾斜を行った。装置使用開始後10か月で,両 側臼歯関係Ⅰ級を獲得したため資料を採取した。資 料採取時の身長は165cm であった。 4.治療結果 Ⅰ期治療終了時の顔貌所見として,口唇閉鎖時の オトガイ部の緊張は消失し下唇の翻転もみられなく な っ た(図6)。口 腔 内 所 見 で は 臼 歯 関 係Ⅰ級, overjet4mm,overbite2mm となった(図7,8)。 幅径については,上下顎ともにわずかに拡大され幅 径は一致した。また咬頭同士の接触は改善され,咬 下唇癖と顎関節クリック音は消失していた。 パノラマエックス線写真(図9)では歯根や歯槽骨 表1 症例1 治療前の側貌頭部エックス線規格写真分析 計測項目 Norm S.D. 初診時 骨格系 SNA 81.5±4 85 SNB 77±4 76 ANB 6.5 9 Facial Axis 86±3 82 FMA 34±4 36 Gonial angle 131±6 136 Nasion Prep. to Pt.A 1±2 0 Nasion Prep. to Pog −3.5±2 −18
歯系 U1 to FH 111.5±5 120 IMPA 95±6 95 L1 to APO 3±1.5 3.5 Interincisal angle 119±7 109 Harvold-McNamara 分析 Maxillary length 100 Mandibular length 121 Lower anterior facial height 79 図5 症例1 初診時のパノラマエックス線写真
図6 症例1 Ⅰ期治療後の顔貌写真
歯科学報 Vol.120,No.1(2020) 81
への影響等はみられない。側貌頭部エックス線規格 写 真 分 析(表2)で は 骨 格 系 に お い て,SNA85°, SNB79°,ANB6°,Nasion Prep. to Pt.A0mm, Nasion Prep. to Pog−13.5mm また FMA35°と下 顎の前方成長がみられ ANB は改善している。また わずかに下顎骨の反時計回りの回転がみられ,注意 すべき下顎の後下方への回転を抑えることができ た。 歯系においては,U1 to FH 114°,IMPA 99°, L1 to APO7mm と上顎前歯の舌側傾斜と下顎前 歯の唇側傾斜がみられたが,治療後の上下顎前歯の 歯軸は標準値内である。 表2 症例1 治療前後の側貌頭部エックス線規格写真分析 計測項目 Norm S.D. 初診時Ⅰ期治療 終了時 骨格系 SNA 81.5±4 85 85 SNB 77±4 76 79 ANB 6.5 9 6 Facial Axis 86±3 82 83 FMA 34±4 36 35 Gonial angle 131±6 136 138 Nasion Prep. to Pt.A 1±2 0 0 Nasion Prep. to Pog −3.5±2 −18 −13.5
歯系 U1 to FH 111.5±5 120 114 IMPA 95±6 95 99 L1 to APO 3±1.5 3.5 7 Interincisal angle 119±7 109 111 Harvold-McNamara 分析 Maxillary length 100 100 Mandibular length 121 129 Lower anterior facial height 79 80.5 図9 症例1 Ⅰ期治療後のパノラマエックス線写真 図8 症例1 Ⅰ期治療後の模型 図7 症例1 Ⅰ期治療後の口腔内写真 小林,他:改良型バイオネーターを用いたⅠ期治療報告 82 ― 82 ―
治療前後の重ね合わせ(図10)では,Condylion か ら Pt. A ま で の 中 顔 面 の 奥 行 き を 示 す Maxillary length は100mm と 変 化 は な く,Condylion か ら Gnathion ま で の 下 顎 骨 の 長 さ を 示 す Mandibular length で は121mm か ら129mm に 変 化 し て お り (Harvold-McNamara 分析13,14)),顎顔面の自然成長 に加え改良型バイオネーターの効果と思われる下顎 の旺盛な前方成長がみられる(表3)。上顎前歯の舌 側傾斜と下顎の前方成長によって上下唇の突出感は 減少し,側貌プロファイルの改善もみられた。 症例 2 1.診査および診断 患者は初診時年齢6歳8か月の女児で,上顎前突 と叢生を主訴に来院した。現病歴として上顎前突と 叢生は,前歯部永久歯の萌出時に気がついたとのこ とだった。保護者が今後の歯列を心配し当院を受診 した。既往歴に特記事項はない。家族歴として父親 は叢生の診断により抜歯を伴う矯正治療を経験して おり,母親は上顎前突であった。顔貌所見として側 貌は convex type を示し,口唇閉鎖時にはオトガ イ部の緊張と下唇の翻転がみられる(図11)。口腔内 表3 症例1 治療前後の Harvold-McNamara 分析の比較 実線:術前 破線:術後 A B C MAXILLARY LENGTH (MM) MANDIBULAR LENGTH (MM) LOWER ANTERIOR FACIAL HEIGHT(MM) 91 114‐118 70‐74 92 117‐120 71‐75 93 119‐122 72‐76 94 121‐124 72‐76 95 122‐125 73‐77 96 125‐127 74‐78 97 126‐129 75‐79 98 128‐131 75‐79 99 129‐132 76‐80 100 130‐133 77‐81 101 131‐134 78‐82 102 135‐137 79‐83 103 136‐139 79‐83 104 137‐140 80‐84 105 138‐141 81‐85 図10 症例1 側貌頭部エックス線規格写真の重ね合わせ 黒線:初診時 赤線:Ⅰ期治療終了時 図11 症例2 初診時の顔貌写真 歯科学報 Vol.120,No.1(2020) 83 ― 83 ―
所見として Hellman の歯齢ⅡC の混合歯列で,臼 歯関係は両側ともⅡ級,overjet7mm,overbite4 mm である(図12,13)。過蓋咬合のために上顎前歯 部口蓋歯肉に下顎前歯が接触しており,歯肉には圧 痕と発赤を認める。上下顎前歯はすでに叢生となっ ており,後続永久歯の萌出スペースは不足してい る。機能的問題として咬爪癖がある。 パノラマエックス線写真(図14)では,異常所見は みられない。側貌頭部エックス線規格写真分析(表 4)で は 骨 格 系 に お い て,SNA80°,SNB74°, 表4 症例2 治療前の側貌頭部エックス線規格写真分析 計測項目 Norm S.D. 初診時 骨格系 SNA 81±3 80 SNB 76±3 74 ANB 4.5 6 Facial Axis 86±3 85 FMA 32±2 27 Gonial angle 129±5 122 Nasion Prep. to Pt.A 1±2 −2 Nasion Prep. to Pog −7±2 −13
歯系 U1 to FH 109±5 119 IMPA 94±6 97 L1 to APO 3±1.5 2 Interincisal angle 124±7 118 Harvold-McNamara 分析 Maxillary length 81 Mandibular length 97 Lower anterior facial height 60 図12 症例2 初診時の口腔内写真 図13 症例2 初診時の模型 図14 症例2 初診時のパノラマエックス線写真 小林,他:改良型バイオネーターを用いたⅠ期治療報告 84 ― 84 ―
ANB6°,Nasion Prep. to Pt. A−2mm,Nasion Prep. to Pog−13mm また FMA27°,GonialAngle 122°で下顎後退型の上顎前突であり,Brachy facial pattern で あ る。ま た,歯 系 に お い て は,U1 to FH 119°,IMPA97°,L1 to APO2mm であり下 顎前歯歯軸は標準的だが上顎前歯歯軸の唇側傾斜を 認めた。 以上のことから,上顎前歯唇側傾斜を伴う下顎後 退型骨格性上顎前突と診断した。 2.治療計画 永久歯萌出スペース不足のため,まずは可撤式拡 大装置にて上下顎歯列弓の側方拡大を行い,永久歯 交換時の叢生に備えることとした。拡大後に改良型 バイオネーターを使用して下顎の前方成長促進を図 り,口唇閉鎖不全の解消と臼歯関係の改善を行う治 療計画とした。Brachy facial pattern のため,バイ
オネーターの咬合面レジンを削合し overbite の改 善も行えるよう計画した。 3.治療経過 上下顎歯列弓拡大のため可撤式拡大装置を6か月 間使用し,その後改良型バイオネーターを使用し た。一か月毎の来院時に Coffin のスプリングと唇 側線を調整しながら上下顎歯列の側方拡大と上顎前 歯の舌側傾斜を行った。バイオネーター使用開始後 11か月で両側臼歯関係Ⅰ級を獲得したため資料を採 取した。 4.治療結果 Ⅰ期治療終了時の顔貌所見として,下唇の翻転が 消失し口唇閉鎖不全は改善した(図15)。口腔内所見 で は 臼 歯 関 係Ⅰ級,overjet3mm,overbite2mm となった(図16,17)。overbite が改 善 さ れ た こ と で,上顎前歯部口蓋歯肉の圧痕や発赤は消失した。 幅径は上顎で5.5mm,下顎で4mm 拡大された。 咬爪癖は患者の意識管理により改善していた。 パノラマエックス線写真(図18)では,永久歯への 交換や歯根,歯槽骨などの異常はみられない。側貌 頭部エックス線規格写真分析(表5)では骨格系にお いて,SNA80°,SNB76°,ANB4°,Nasion Prep. to Pt. A−2mm,Nasion Prep. to Pog−10.5mm また FMA28°と ANB の改善がみられた。 歯系においては,U1 to FH 114°,IMPA98.5°, L1 to APO4mm となり上顎前歯の舌側傾斜と下顎 図15 症例2 Ⅰ期治療後の顔貌写真 図16 症例2 Ⅰ期治療後の口腔内写真 歯科学報 Vol.120,No.1(2020) 85 ― 85 ―
前歯のわずかな唇側傾斜がみられ,治療後の上下顎 前歯の歯軸は標準値内となった。
治療前後の重ね合わせ(図19)では,BA-NA 平面 および FH 平面の自然成長による延長がみられ頭蓋 底や顎 顔 面 の 前 後 径 が 増 大 し て い る。そ の た め ANB や Nasion Prep. における Pt. A や Pog の値に 大きな変化はみられなかったが,実際には Maxil-lary length は81mm から84.5mm に,Mandibular length は97mm か ら105mm に 変 化 し て お り(表 6),前後径における顎顔面のゆるやかな自然成長 がみられる中,下顎骨では著しい成長がみられた。 歯軸の改善と下顎の前方成長によって下唇の翻転は 消失し,側貌プロファイルの改善もみられた。 考 察 今回使用した改良型バイオネーターは,下唇パッ ドが組み込まれたバイオネーターであるが,下唇 パッドについては Fränkel 装置を参考に設計され ている。Fränkel 装置は,歯列に加わる不正な筋圧 を排除し,正常な筋機能を賦活化するよう働く装置 で,Fränkel は,下唇パッドが口唇に力を加えるこ とで感覚入力が中枢神経系に伝達され,異常な筋活 動を取り除き正常な成長発育を促す環境が構築され ると報告している15) 。また Fränkel 装置は FR-1か ら FR-4までの4タイプに分けられ,症状に合わせ て適応される。しかしながらいずれのタイプも設計 が複雑で作製の難易度が高く,特に FR-2は粘膜支 持の装置のため,使用に関する正しい知識が求めら れる16) 。 一方,バイオネーターは Balters によって開発さ れ,最も使用しやすい機能的矯正装置の一つと考え られている。その理由として複雑な技工作業が少な く,咬合の垂直的な調整(咬合の維 持,咬 合 の 挙 上,咬合の圧下)17)を行えるようデザインを選択で きることや,患者にとって使用しやすいこと18,19) が 表5 症例2 治療前後の側貌頭部エックス線規格写真分析 計測項目 Norm S.D. 初診時Ⅰ期治療 終了時 骨格系 SNA 81±3 80 80 SNB 76±3 74 76 ANB 4.5 6 4 Facial Axis 86±3 85 85 FMA 32±2 27 28 Gonial angle 129±5 122 125 Nasion Prep. to Pt.A 1±2 −2 −2 Nasion Prep. to Pog −7±2 −13 −10.5
歯系 U1 to FH 109±5 119 114 IMPA 94±6 97 98.5 L1 to APO 3±1.5 2 4 Interincisal angle 124±7 118 119 Harvold-McNamara 分析 Maxillary length 81 84.5 Mandibular length 97 105 Lower anterior facial height 60 62 図17 症例2 Ⅰ期治療後の模型
図18 症例2 Ⅰ期治療後のパノラマエックス線写真
小林,他:改良型バイオネーターを用いたⅠ期治療報告 86
あげられる。しかしバイオネーターは,Fränkel 装 置のような筋の賦活化を行う機構をもたないため, 直接的な口腔周囲筋の訓練ができないという欠点が ある。 そこで Teuscher は,それらを改善すべく Frän-kel 装置と同様な下唇パッドをバイオネーターに組 み 込 み12) ,バ イ オ ネ ー タ ー の 取 り 扱 い や す さ と Fränkel 装置の筋機能訓練機構を備えた装置へと改 良している。Teuscher の原法では,下唇パッドの 他にヘッドギアチューブを設置し,ヘッドギアによ る効果で上顎の前下方への移動を防ぐよう設計され ている。またバイオネーターの使用に際しては,以 下の条件に一部もしくはすべてに当てはまる下顎後 退型上顎前突に有効と Balters は報告している20) 。 ① 叢生のない歯列 ② 唇側傾斜している上顎前歯 ③ 直立,または良い位置にある下顎前歯 ④ スピーカーブの強い過蓋咬合 ⑤ 上顎前歯歯槽骨の変形を伴う開咬 本症例は,2症例とも過大な overjet という形態 的な不正と,overjet に伴う下唇のくわえ込みや下 唇圧による下唇の翻転という機能的な不正が混在し ている。そのため,形態と機能の双方の改善を目的 に改良型バイオネーターを使用した。2症例ともⅠ 期治療終了後には Mandibular length の増加がみら れ,下顎の前方成長が促進されたと考えられる。さ らに,Mandibular length の増加に伴い,Harvold-McNamara 分析の比率21) は治療後に改善している (表2,4)。また機能的には口唇閉鎖不全の改善が みられ,オトガイ部の緊張も消失した。 症例2では,Balters の条件の多くが合致してい た。そのため前歯部の叢生を側方拡大にて改善した 後,バイオネーターを使用した。この際に臼歯の垂 直的な移動を促すよう装置を設計したことで,過蓋 咬合の改善も行われたと考えられる。患者の年齢を 考慮すると,成長に伴い顎顔面全体の前後径が増加 しているため,治療前後の重ね合わせによる ANB 表6 症例2 治療前後の Harvold-McNamara 分析の比較 実線:術前 破線:術後 A B C MAXILLARY LENGTH (MM) MANDIBULAR LENGTH (MM) LOWER ANTERIOR FACIAL HEIGHT(MM) 75 92‐95 58‐60 76 93‐96 58‐60 77 94‐97 59‐61 78 95‐98 60‐62 79 96‐99 61‐63 80 97‐100 62‐64 81 99‐102 62‐64 82 101‐105 63‐64 83 103‐106 64‐65 84 104‐107 65‐66 85 105‐108 66‐67 86 107‐110 67‐69 87 109‐112 67‐69 図19 症例2 側方頭部エックス線規格写真の 重ね合わせ 黒線:初診時 赤線:Ⅰ期治療終了時 歯科学報 Vol.120,No.1(2020) 87 ― 87 ―
等 の 変 化 量 は わ ず か で あ っ た が,Mandibular length は 大 き く 増 大 し て い た た め,バ イ オ ネ ー ターによる効果と考えられる。 また症例1のように,すでに永久歯列であった場 合,マルチブラケット装置を用いたⅡ期治療から開 始することが比較的多いと思われる。患者個人の成 長を正確に予測する こ と は 困 難 で あ る も の の, Hellman の歯齢,身長の記録や初潮の発現時期など の身体発育の経過,手根骨出現の有無やその成熟度 といった生理的年齢を評価し,永久歯列であっても ある程度の成長余力があれば,Ⅰ期治療の有効性を 期待できるものと考えられる。また,Dolico facial pattern であったため,下顎の後下方への回転には 十分注意した装置の設計と調整が必要になったが, 下顎の回転にほとんど影響なくⅠ期治療を終えるこ とができた。 結 論 骨格性上顎前突症例の多くは下顎後退型の上顎前 突であり,形態的・機能的な不正を伴っている。適 切な診断によってⅠ期治療で用いる改良型バイオ ネーターは,形態と機能に効果的に作用し骨格性上 顎前突の改善に寄与することが示された。 著者の利益相反:開示すべき利益相反はない。 文 献
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Phase Ⅰ treatment of skeletal Class Ⅱ patient with modified bionator:A case report
Hiroshi KOBAYASHI,Tsubasa TOJIMA,Katsuya SHIMADA
Taiki MORIKAWA,Kenji SUEISHI,Yasushi NISHII
1)Yamanashi,2)Department of Orthodontics, Tokyo Dental College,3)Tokyo
Key words : Modified bionator, Skeletal maxillary protrusion with mandibular retrognathic, Phase I treatment
The two cases reported here involved an adolescent boy(13 years and 10 months of age,case1)and a young girl(6years and8months of age,case2)who visited our hospital with chief complaints of maxillary protrusion.In both cases,abnormalities in form and function were observed,such as excessive overjet and accompanying lower lip sucking and lower lip rotation.Clinical examination supported the diagnosis of skeletal maxillary protrusion with mandibular retrognathism in both patients.The patient in case1had permanent dentition in both jaws and a Dolicofacial pattern.The patient in case2exhibited mixed denti-tion with crowding in the upper and lower anterior teeth and a Brachyfacial pattern.The treatment strat-egy was phase I treatment for promoting mandibular anterior growth using a modified bionator,which in-corporates a mechanism to eliminate lower lip pressure.In both cases,after completion of phase I treat-ment,anterior overgrowth of the mandible improved the excessive overjet and lower lip sucking,thereby improving both form and function.In conclusion,effective growth control in phase I treatment can aid in obtaining good profile and normal perioral function. (The Shikwa Gakuho,120:79−89,2020)
歯科学報 Vol.120,No.1(2020) 89