Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
№23:三叉神経節ニューロンの象牙芽細胞機械刺激誘
発性内向き電流の解析
Author(s)
佐藤, 正樹; 木村, 麻記; 小島, 佑貴; 東川, 明日香;
西山, 明宏; 塩崎, 雄大; 佐藤, 涼一; 重藤, 玲子; 隝
田, みゆき; 小倉, 一宏; 望月, 浩幸; 新谷, 明則; 佐
藤, 亨; 澁川, 義幸; 田﨑, 雅和
Journal
歯科学報, 115(5): 482-482
URL
http://hdl.handle.net/10130/3877
Right
目的:象牙質表面に加わる様々な侵害刺激は,象牙 細管を満たす象牙細管内液の移動を介して象牙芽細 胞の細胞膜を伸展・変形させる。象牙芽細胞への機 械 刺 激 は, mechano-sensitive transient receptor potential(TRP)チャネルを活性化する。Mecha-no-sensitive TRP チャネル活性化により流入した Ca2+ は,pannexin-1チャネルを開口させ,歯髄分 布ニューロンに対し ATP を放出する。放出された ATP は三叉神経節(TG)ニューロンのイオンチャ ネル型 ATP 受容体(P2X3)を活性化させるこ とで,象牙芽細胞と TG ニューロン間における AT-P を伝達物質とする感覚信号伝達が生じる(odon-toblast hydrodynamic receptor theory)。本研究で は象牙芽細胞TG ニューロンの感覚情報連絡の詳 細をさらに明らかにするため,象牙芽細胞機械刺激 によって誘発される TG ニューロン内向き電流を解 析した。 方法:新生児ウィスターラットの切歯から歯髄スラ イス標本を作製し象牙芽細胞を得た。TG ニューロ ンは急性単離して初代培養を行った。両者から象牙 芽細胞-TG ニュー ロ ン 共 培 養 系 を 作 成 し た。TG ニューロンは象牙芽細胞と区別するため,DiIC18 ⑶による蛍光染色を行った。象牙芽細胞は標準細胞 外液を満たしたガラス微小管を用いて直接機械刺激 を行い,その際の誘発性細胞膜イオン電流を whole -cell patch-clamp 法を用いて TG ニューロンから記 録した。 結 果:象 牙 芽 細 胞 を 直 接 機 械 刺 激 す る と,TG ニューロンから誘発性内向き電流が記録された。こ の誘発性内向き電流は本細胞刺激開始と解除の両方 で記録された。誘発性内向き電流は,細胞直径25 μm 以上の大型 TG ニューロンでは一過性電流とし て 記 録 さ れ た。一 方 直 径25μm 未 満 の 小 型 TG ニューロンでは持続的内向き電流として記録され た。 考察:直接機械刺激により象牙芽細胞から放出され た神経伝達物質が,TG ニューロンに発現する受容 体を活性化して誘発性内向き電流を発生させること が示された。先行研究と併せて,象牙芽細胞-TG ニューロン間の伝達物質は ATP であることが示唆 された。 目的:メルケル細胞は表皮基底に存在し,神経終末 が付着する球形ないし卵円形の細胞である。1875年 ドイツの解剖学者 Friedrich Sigmund Merkel が光 学顕微鏡下に同細胞を発見したことからその名がつ けられた。メルケル細胞は圧覚受容器として働くと 考えられてきたが,その受容機構の詳細は不明で あった。近年,遅順応性圧覚受容器であるメルケル 細胞への低浸透圧溶液を用いた細胞膜伸展刺激受容 と TRP channels の関与が明 ら か に さ れ た(Soya et al, Cell Calcium, 2014)。し か し,直 接 的 な 機 械 刺激に対する受容機構は未知のまま残されている。 そこで,メルケル細胞に対する直接機械刺激の応答 を細胞内遊離 Ca2+ 濃度([Ca2+ ]i)を指標に検討し た。 方法:メルケル細胞は,本細胞の蛍光マーカーであ るキナクリンを24時間前に投与したゴールデンハム スター(35週齢)の頬粘膜小体から急性単離し た。メルケル細胞はキナクリン蛍光陽性細胞として 同定した。メルケル細胞単離後,細胞外液の中で 120分間静置することでディッシュへの接着をうな がした(5%CO2,95%Air,37℃)。キナクリン蛍 光陽性メルケル細胞に対し,微小ガラス管を用いて 細胞膜の直上から直接機械刺激を与え,メルケル細 胞自身と,近接するメルケル細胞および上皮細胞か ら蛍光プローブ fura2を用い[Ca2+ ]iを計測した。 [Ca2+ ]iは二波長(340nm/380nm)の励起に対する 蛍光(510nm)の蛍光強度比として測定した。ま た,全ての記録終了時に高 K+溶液を投与した。 結果および考察:単離メルケル細胞に直接機械刺激 を与 え る と,[Ca2+ ]iは 刺 激 強 度 依 存 的 に 増 加 し た。連続機械刺激を行っても[Ca2+ ]iの増加は脱感 作を示さなかった。これらの結果は,メルケル細胞 が直接機械刺激を受容していることを示唆してい る。今後,メルケル細胞−神経終末複合体における 化学的伝達物質の詳細を検討予定である。