山梨肺癌研究会会誌 14巻1号 2001
肺癌に対する山梨医大新放射線治療システムの紹介
山梨医大放射線科 大西洋 栗山健吾 小宮山貴史
佐野尚樹 舘田良仁 相川良人植木潤子 本杉宇太郎 荒木力
〈要旨〉平成12年、当施設の放射線治療システムが15年ぶりに全面的に更新された。肺 癌に対する新放射線治療システムの特色として以下の3つが挙げられる。1.自走式CT一 体型ライナックの新規製作。2.呼吸同期装置の併用。3.患者自身によるライナックビ ームオンオフの施行。これらの新システムの目的は、呼吸性移動のある肺癌に対して、可 能な限り小さな照射野を設定することにより、正常肺への照射線量を低減し腫瘍線量を増 加させることである。これにより、重症の放射線肺炎を生じることなく腫瘍線量を90Gy 相当まで増加させることが可能であり、肺癌放射線治療成績を大幅に改善できるかもしれ ない1)。 <Key Words>New radiation system, Lung Cancer, Fusion of CT and Linac, Respiratory Contro1 〈本システム開発の動機〉 肺癌の照射でのdose−1imiting toxicityは放射線肺炎であり、一般的には70Gyが上限であ る。しかし、照射野を出来る限り腫瘍に限局した照射を行うと90−100Gyは安全だとい う報告もある2)。ここで、肺癌に対して照射野を出来る限り小さくするためには、以下に 生じるような照射野や腫瘍位置のずれを最小限にする必要がある。 ①シミュレーション時と照射時のターゲットと照射野のずれ:合計5−15mm これは、シミュレーション時と照射時の体位の微妙な差、マーキング位置の皮膚のた るみ、体の内部での臓器位置の移動、人的なセットアップエラーから生じる。 ②呼吸性移動:5−20㎜ ①のずれに対して、CTをとった後同じ寝台でそのまま照射すればこれらの差はゼロにな る。これは、CT一体型ライナックで可能でありCTガントリを自走式にすることで寝台の 移動が最小限となり、設定した照射野の腫瘍に対する再現性がより高精度になる。 ②のずれに対しては、呼吸同期または停止装置の併用によりずれを低減できる。しかし、 この装置の開発には多額の費用が必要であり、一般の施設では使用困難である。そこで、 患者自身を十分教育、練習することによる呼吸停止照射を考案・評価した。この際、外部 からの呼吸停止の声かけでは最適なタイミングで呼吸停止することは困難であるため、患 者自身にライナックビームをオンオフさせるスイッチを製作した。 〈自走式CT一体型ライナック〉(図1) リニアックは三菱製EXL−15DP、 CTはGE社製HiSpeed DX/iで、今回新規に開発し た。位置再現性精度はライナックの諸回転(コリメータ、カウチ、ガントリ)に関わる精 度およびCT側の位置再現性、演算に関わる精度を合計した総合評価が0.5mm以内であ 一22一’F成13年4月1日 る。使用法は、 1. 2, 3. 4. 5. 6, 7. 8, 仮のアイソセンタマーキング、 シミュレーション用CT撮影 FOCUSに画像転送、治療計画 ライナック室でだいたいのアイソセンタ位置合わせ CT撮影、アイソセンタ位置の微調整 a,CT撮影中にガントリー内で微調整 b,カウチ転回後に微調整 ポータルイメージまたはライナックグラフィ撮影 治療計画画像と照合 照射 以上のような流れで行う。この作業に要する時間は照射方法の複雑さによるが、1−2時間 である。 図1 自走式CT一体型ライナック 〈呼吸同期および停止装置〉 肺腫瘍の動きに相関する呼吸モニタリング方法としては、これまで胸囲、腹壁の高さ、 皮膚のたるみ、呼気CO2濃度などのモニタリング対象があるが、肺内部の位置は換気量が 最も正確に相関しているというわれわれの基礎実験を元に、呼吸換気量をモニタリングす る装置を今回新たに開発した。この詳細に関しては別に今回栗山が報告する。 〈患者自身による呼吸停止照射とライナックビームオンオフ〉 患者自身による呼吸停止を教育/練習することにより、まずCTを用いて腫瘍位置の再 現性を検討し、この方法が実際の照射に十分な信頼度をもって利用可能なことを証明し た。また、実際の照射時の再現性を照射時実画像(portal image)を用いて検討した。 一23一
山梨肺癌研究会会誌 14巻1号 2001 この詳細に関しては別に今回植木が報告する。 この方法は非常に単純でどの施設でも可能で高精度な腫瘍位置再現方法である。 更に、この方法を有効に利用するために、患者自身によるライナックビームのオンオフ スイッチを作成した。これにより、患者自身による最適なタイミングでの呼吸停止が可能 であり、また、最大限呼吸停止持続をすることにより、時間的に効率的な照射が可能であ る。照射ビームを患者がオンすることが医療法に抵触する可能性については、実際には放 射線技師がビームオンした範囲の中なので法的な問題はないと考える。 譲 図2 患者自身によるライナックビームオンオフスイッチ 〈当システムの活用法〉 当システムは、高精度な治療計画時位置と呼吸停止位置の再現を可能にするシステムで ある。このシステムの有用な利用方法の一つに、早期肺癌(T1,2NOMO)に対して、1回大 線量(5−10Gy)を10回程度アークまたは多方向から照射する、いわゆる定位照射を行う ことで、外科切除に匹敵する局所制御および生存率が報告されている3)。他施設で呼吸性 移動を抑制するためのフレームを用いて固定している方法もあるが、高額な固定具が必要 であり、また精度は必ずしも高くはない。 当方法は、肺以外でも呼吸性移動のある肝腫瘍や膵腫瘍にも応用可能であり、もちろん 呼吸性移動のない脳腫瘍に対する定位照射(stereotactic lrradiation)も可能である。フ レームで固定する場合は患者への侵襲の問題があるが、当方法では全く非侵襲的でしかも 高精度である。 今後、増加する肺癌患者、特に非侵襲的な治療の必要となる高齢者の肺癌患者に対して 本方法は画期的であり、早期肺癌治療の第1選択となりうると考える。 <文献> 1.Rosenzweig KE, Han ley J, Mah D, et al:The deep lnspira亡lon brea亡h−hold 一24一
平成13年4月1日 technique in the treatment of inoperable non−smaU ce111ung cancer. Int J Radiat Biol Phys 48:81−87,2000. 2.Henning GT:Preliminary re sults of 92.4Gy or more for non−small cell lung cancer. Proceeding of 42nd Annua1 Meeting of ASTRO : abst 242,2000. 3.Uematsu M, Shioda A, Tahara K, et a1:Focal, high dose, and fractionated rn.odified stereotactic radiation therapy for lung carcinoma patients. Cancer 82: 1062−1070,1998. 一25一