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真言教法ハ一一ノ声字 ノ言各一一ノ句義 ノ成立二各曇具馳リ無辺ノ義 歴 トモ劫ヲ難 窮尽 又 ノ字二具馳リ三ノ義づ 所 謂声ト字ト実篳 と説かれ 真言教法は それぞれの声字 言名 句義 成立に無辺の義を有し 時を重ねても究め尽すことができないと説き さらに 一一の字に声と字と実相の三つの義があるとす

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(1)

印 度 學 佛 教 學 研 究 第 六 十 四 巻 第 二 号   平 成 二 卜 八 年 三 月

宙 」』、

  現 実 世 界 で 語 ら れ る 言 葉 が 、 実 相 、 つ ま

絶 対 世 界 に 属 す る

源 的 な 言 葉 と

な つ な が り を 持 つ と い

え は 、 こ れ                

 

   

 

   

 

   

 

( 1 ) ま で の

学 の 研 究 に よ り 明 ら か に さ れ て

た 。 コ ト バ を 単 に

現 や

も し く は 意 思

達 の 手 段 と し て で は な く 、 存 在 の 根

と み な す 思 想 は 、

の 東 西 を 問 わ

、 古 く か ら 哲 学 、 宗 教 の 分 野 に お い て 幅 広

認 め ら れ る 。 西

の 形 而 上 学 に お い て は 、 人 々 の 話 す 「 こ と ば 」 を

ロ ゴ ス (

^ 色 に よ つ て 真 理 は 把 握 で

る と 考 え 、 そ の

は 思 想 上 の 核 と な っ て い た 。   ま た イ ス ラ ー ム の

秘 主 義 の 研

者 で あ る 井 筒

は 、 本 源

在 で あ る 法 身 を 絶

分 節 の

在 と 定 義 し 、 コ ト バ に よ っ て 「

」 か ら 「

」 へ の 転 換 が 始 ま

、 絶 対 無 分 節

で あ る 法 身 の

己 分 節 が 進 み 、 一

万 有 ま で 展 開 し て い く と し た 。

は 以

、 弘 法 大 師 空

の 言 語 観 を 示

『 声 字 実 相

』 、 『

』 、 『 文 鏡 秘 府 論 』 に

さ れ る 「 名 」 を 取 り 上 げ 、 著 作 中 に 使 用 さ れ る そ の 用 例 に つ い て の

察 を

っ た 。   空 海 は 、 『 大 日 経 』 の 「 言 名 成 立 」 の 偈 を 敷 衍 し て 、 「

の 根 本 は 法

を 根 源 と す る 」 と し て い る 。 つ ま

、 法 身 そ の も の で あ る 響 き や

源 と し て そ の

き や

に 対 す る

識 の 働 き と し て の 「 名 づ

」 が 起 こ り 、

筒 氏 の 言 葉 を 借 り る な ら 、

分 節 の 存 在 で あ る

き や

を 分 節 化 す る 役 割 を 果 た す の が 「 名 」 で あ る と し た 。 さ ら に 、 空 海 は そ の 認 識 の 働 き で あ る 「

づ け 」 の 起 点 は 阿 の

で あ り 、 字 母 で あ る

字 で あ る と し た 。   空

の 言

の キ ー ワ ー ド で あ る

と い

語 の 用 例 は 、 『 声

』 、 『 吽

』 以 外 に も 、 空 海 晩

と さ れ る 『 十

心 論 』 や 「 秘 蔵 宝 鑰 』 の 第 十 住 心 、 そ し て 『 般 若 心 経 秘 鍵 』 に み ら れ る 。   本 稿 で は 、 特 に 『 秘 蔵 宝 鑰 』 の

よ り 、 言 語 に 関 す る

述 を

り 上 げ 、 空 海 の 言 語

を 考

し た い 。   『 秘 蔵 宝

』 の 第 十

心 に は 、

(2)

  真 言 教 法 ハ 一 一 ノ 声 字

ノ 言 各 一 一 ノ 句 義

ノ 成 立 二 各 曇 具 馳 リ 無 辺 ノ   義 → 。 歴 ” ト モ 劫 ヲ 難 ⊃ 窮 尽 → 。 又

ノ 字 二 具 馳 リ 三 ノ 義 づ 。 所 ” 謂 声 ト 字 ト 実

・ ・ と 説 か れ 、 真 言

そ れ ぞ れ の 声 字 、 言 名 、

義 、 成 立 に 無 辺 の 義 を

し 、

を 重 ね て も 究 め 尽 す こ と が で き な い と 説 き 、 さ ら に 、 一 一 の

に 声 と 字 と

の 三 つ の

が あ る と す る 。   こ の よ

に 、

字 、 言 名 、

義 、 成 立 の そ れ ぞ れ が 無 辺 の 意 味 を

つ こ と が 示 さ れ る が こ れ ら の 語 句 の ひ と 固 ま り で の 使 用 は 、 『

』 に し か 見 ら れ

、 空 海 の

の 中 で も 特

の あ る 記 述 で

る 。 ま た 、 文 字 そ の

の に

、 実

の 三 つ の 意

を 持 た せ る

も 、

の 空

の 著 作 に 説 か れ

、 興

い 。 こ れ ら の 思

い か な る 典 拠 に 依 る の で あ ろ

か 。   空

の 言 語 に 関 す る 論 述 の 典 拠 は 、 『 大 日 経 』 具

品 の 「

                    ( 3 ) 正

の 真 言

 

成 立 の 相 」 の

に あ り 、 こ の 偈 は 「

は 言 と

と あ ら か じ め

し た 記 号 ( 名 字 ) と で も っ て

示 す る 」 と

さ れ る 。 つ ま り 、 真

は 、 不 可 視 で あ る

に 名 づ け を し 、 そ の

に 対 し て あ ら か じ め 決 め ら れ て い る 可 視 的 な

理 を 示 す と い

イ ン ド 言 語 哲 学 に お け る 言 葉 と

に 関

る 言

約 で あ る 。   こ の 偈 に よ れ は 、 真

は 、

、 つ ま

き や 声 が 基 軸 と な       空 海 の 言 語 観 ( 松   長 ) り そ の 響 き 、 声 そ の も の と 、 響 き 、

を 分 節 化 し た 名 と 、 そ の 名 に 相 応

る あ ら か じ め 決 め ら れ た 文 字 で も っ て 示

と さ れ る 。   こ の 『 大 日 経 』 に 説 か れ る 言

立 の 言

観 か ら 、 先 ほ ど の 『

蔵 宝 鑰 』 の 声

、 言 名 、

立 の

を 考

す れ ば 、 コ 一 の 声 字 で あ る 一 一 の 言 名 と 、 一 一 の

で あ る 一 一 の 成 立 に

々 無 辺 の

を 具 せ り 」 と

で き る 。 本 源 的 な 声 で あ る

言 と 字 母 で

る 字 の 基 盤 と な る 言

に 対 す る 名 づ け ( 言 名 ) や 、

字 が 重 な っ て で き た

、 つ ま

の 基 盤 と な る 言 語

に よ っ て 生 じ た 文 字 ( 成 立 ) に は 、 無 辺 の 意 味 を

む と す る 。   こ れ は 、 空 海 が 『 大 日 経 』 の

語 に 関

る 記 述 を 踏 ま え て 、

の 言 語 に

す る 考 え

を 示 す 一 例 で あ る 。 し か し な が ら 、 空

は 自 身 の

語 に 関

る 論 を 進 め る に あ た り 「 声 字 」 と い

現 を 数

使

用 し て お り 、 そ の

は 『 大 日 経 』 の

書 で あ る 『 大 日 経 疏 』 に も 求 め ら れ る 。   で は 、 空 海 は

身 の 言 語 に 対 す る 態

を い か な る 論 拠 に 基 づ い て 構

し た の で あ ろ

か 。  

回 の

で は 、 密 教 の 言 語 観 の 基

と な る 『 大 日 経 』 、 お よ び 、 そ の 注 釈

で あ る 『 大 日 経 疏 』 の 言 語 論 を 示 す 記 述 を

り 上

、 空

の 言 語 に 関 す る

え の 特 徴 を 考 察 し た い 。   『 大 日 経 』 具

品 の 言 語 に 関 す る

は 、 冒 頭 の 以 下 の 文 で                                           = 二 一

537

(3)

空 海 の 言 語 観 ( 松   長 ) 始 ま る 。   爾 時 毘 盧 遮 那 世 尊 与 朴 一 切 諸 仏 一

ン ク 共 集 会 シ テ 各 宣 「 説 シ タ モ ゥ 一   切 ノ 声 聞 縁 覚 菩 薩 三 昧 道 ヨ 。 時 二 仏 入 コ タ モ ゥ 於 一 切 如 来 ノ 】 体 速 疾 力 三   昧. 〜 。 於 け 是 二 世 尊 復 タ 告 泣 ア 執 金 剛 菩 薩. 喜 ロ ク 我 レ 昔 坐 ⊃ 道 場. 〜 降 」   伏 ス 於 四 魔 → 。 以 3 大 勤 勇 ノ 声 9 、 除 つ 衆 生 ノ 怖 畏 → 。 是 時 梵 天 等 、 心   喜 デ 共 二 称 説 ス 。 由 け 此 二 諸 世 間、 号 シ ア 名 砂 大 勤 勇 → 。 我 覚 コ 本 不 生 →   出 コ 過 シ 語 言 道 9 諸 過 ヲ 得 一 解 脱 掃 コ ヲ 、 遠 コ 離 、 リ 於 因 縁 づ 。 知 ヨ 空 ハ   等 謀 虚 空 唱 、 如 つ 二 実 相 り 智 ヲ 生 ズ 。 已 二 離   一 切 ノ 暗 → 第 一 実 ニ シ テ 無   垢 ナ リ 。 諸 趣 ハ 唯 ダ 想 ト 名 ノ ミ 、 仏 ノ 相 モ 亦 復 タ 然 リ 。 此 ノ 第 一 実 際 ノ 以 評 ノ 加                                           ぢ     持 力 → 故 二 、 為 け メ ニ 度 』 ン ガ 於 世 間 づ 而 モ 以 … 」 文 字 → 説 ク ナ リ 。  

薩 乗 の 三

道 に お い て は 、

り の 境 地 は 語 言 に よ っ て は 説 け な い も の の 、 法 身 毘 盧 遮 那 の 加 持 力 に よ っ て 示 さ れ た 世 問 流 通 の 文 字 に よ っ て 悟 り の

地 を 示 す と す る 。   『 大 日 経 』 で は 、 語 言 と い

用 語 は 、 そ の 他 、 「

心 品 」 、 「 具

品 」 、 「 秘 密

羅 品 」 に 計 六 回 説 か れ 、 い

れ も 語 言

を 出 過 し た

と は 区 別 さ れ 、 世 間 に 流 通

る 言 語 と し て 示 さ れ る 。   『 大 日 経 』 に お け る 声 字 の 用 例 は 、 巻 七 持 誦 法 則 品 第 四 の 一 か 所 の み で あ る 。   声 ノ 真 実 ノ 義、 諸 法 本 ヨ リ 無 け 生 。 ル . 、 於 け 中 二 正 二 観 察 ス 。 皆 ナ 従 コ                         ら     此 ノ 心 一 起 リ 、 声 字 ハ 如 ⊃ 花 鬘 → 。   『 大 日 経 』 の 巻 七 は 、

加 さ れ た 儀 軌 で あ る 。 た だ し 、 『 大 日 経 』 巻 七 は チ ベ ッ ト 訳 が 存 在 し な い た め 、 『 大 日 経 』 に 一 四 お け る

訳 の

の 原 語 が い か な る も の で あ る の か は 定 か で は な い 。   ま た 、 『 大 日 経 』 に お い て 語 言 と い

用 語 は 、 チ ベ ッ ト 語 で は σ。 。 ・ 鼠 で は な く 、 け の 三   で 現 実 世 界 で の 言

を 意 味

る 。   『 大 日 経 』 で は 言 葉 の 問 題 は 、 主 と し て イ ン ド に お け る

来 よ り の 言 語

を 示 す 「 言 名 成 立 」 の 偈 が 含 ま れ る 「 入 曼

羅 具 縁 品

二 之

」 に 於 い て 取 り 上 げ ら れ て い る 。 「 具 縁 品 」 で は 成 諌 ル 等 止 覚

切 知 者、 一 切 見 者 、 出 コ 興 シ 于 ワ 世 、 而 モ 自一 ワ 此 ノ 法 言 リ 。 説 誹 種 種 道 →

4 種 種 ノ 楽 欲 卜 、 種 種 ノ 諸 ノ 衆 生 ノ 心 く 、 以 … 4 種 種 ノ 句 種 種 ノ 文 、 種 種 ノ 随 方 ノ 語 言 、 種 種 ノ 諸 趣 ノ 音 声 う 。 而 モ 以 身 加 持 略 ル 「 ヲ 説 譎 タ モ ゥ 真 言 道 つ 。 秘 密 主 、 云 何 ン カ 如 来 ノ 真 言 道 、 謂 ク 加 コ 持 ス ル ナ リ 此 ノ 書 写 ノ 文 字 → 。 秘 密 主 、 如 来 ハ 無 量 百 千 倶 胝 那 多 劫 二 、 積 ゴ 集 シ タ モ ゥ 修 行 ノ 真 実 諦 ノ 語 → 。 ( 中 略 ) 秘 密 主 以 け 要 ヲ 言 い 之 ヲ 、 諸 如 来 ノ 】 切 知 . 智 ト 、 一 切 如 来 . 自 福 智

自 願 智 力 ト 、 一

界 . 加 持 力. ア モ ッ 一 ア 、 随 ゴ 順 ノ 衆 生 く 如 , 其 ノ 種 類 → 、 開 ゴ 示 シ タ モ ゥ 真 言 教 法 → 。 と 説 き 、

な る 語 言 、 音

し 、 さ ら に 語 言 、 音

の み な ら

写 の

を 加 持 し 、

生 に 随 順 し て 世 間 で 語 ら れ る 声 、 文

に よ っ て 示 さ れ る の が

で あ る と

し て い る 。   以 上 の よ う に 、 『 大 日 経 』 で は 、 イ ン ド 文 化 の 流 れ を 汲 み 、 音

を 拠

と し て

源 的 な 真 理 を

持 力 に よ

(4)

化 し 、 さ ら に 、 書

字 を 加

る こ と に よ り 、 真 言 道 を

生 に 示 す と い

、 こ の 後 に

か れ る 二 十 九 字 門 に つ な が る

釈 が 見 ら れ る 。   『 大 日 経

』 で は 、 そ の よ

な 『 大 日

』 の 立

を 声 字 と い

使

用 し 、 さ ら に 発 展 さ せ る 。 『 大 日 経 疏 』 で は 、 声 字 の 用 例 は 全

で 十 七 か

認 め

る が そ の 大 部

が 、 「 入 曼 荼 羅 具

品 第 二 之

」 の

釈 部 分 で あ る 。   『 大 日 経 』 「 云 何

法 教 」 に

す る 『

日 経 疏 』 注 釈 で は 、 経 二 云 ク 。 秘 密 主 云 何 ン ヵ 真 言 法 教 者 ト ハ 即 チ 謂 ク 阿 字 門 等 ナ リ 。 是 レ 真 言 ノ 教 相 ナ リ 。 雖 称 モ 相 ハ 不 レ 異 レ 体 二 体 ハ 不 レ 異 レ 相 二 、 相 ハ

ス 造 作 ノ 修 成. 〜 、 不 う 可 レ 示 レ 人 二 、 而 モ 能 ク 不 レ 離 二 解 脱 9 現. 作 畝 声 字 → 。 一 一 声 字 ハ 即 チ 是 レ 入 ユ 法 界 く 門 ノ 故 二 、 得 レ 名 ヲ 為 畝

言 法 教 → 也 。 至 四 論 二 真 言 法 教 ハ 、 応 に 遍 コ 一 切 随 方 諸 趣 ノ 名 の ケ ニ 言 ノ 。 但 シ 以 野 如 来 出 世 之 迹 ハ       ン                                                                 ア   始 励 ヲ 于 一 天 竺 三 伝 法 者 ハ 且 ク 約 7 梵 文. 〜 作 コ 一 途 → 明 似 義 ヲ 耳 。 と 記 さ れ 、 『 大 日

』 「 謂 阿

門 一 切

」 注 釈 で は 、 以 下 の よ

に 記 さ れ る 。 に

す る   経 二 云 ク 。 謂 ク 阿 字 門 一 切 諸 法 本 不 生 故 者 ト ハ 。 阿 字 是 レ 一 切 法 教 之   本 ナ リ 。 凡 ソ 最 初 二 開 眇 ロ ヲ 之 音 二 皆 ナ 有 コ 阿 声 の 若 シ 離 嶺 阿 声 → 則 チ 無 セ   切 言 説 』 故 二 為 コ 衆 声 之 母 → 。 凡 ソ 三 界 語 言 皆 ナ 依 ユ 於 名 弓 。 而 モ 名 ハ 依 ユ                                 お     於 字 く 。 故 二 悉 曇 阿 字 ヲ 。 亦 タ 為 コ 衆 字 之 母 → 。   『 大 日 経 』 で は

言 教 法 を 衆 生 に 随 順 し て 世 間 で 語 ら れ る

に よ っ て

源 的 真 理 を

で あ る と

る が 、 『

日 空 海 の 言 語 観 ( 松   長 ) 経 疏 』 で は 、 阿 字 門 を 挙 げ 、

る 阿 字 の 相 で あ る 声 字 は 、 一 切 の 随

諸 趣 の 言 の

づ け に 基 づ く と い う 。 こ の よ

に 、 不 可 視 で あ る 声 に 基 づ

』 の 立 場 を 示 し つ つ も 、 可

的 な 文 字 の 最 初 に 位

る 阿

に 重 き を 置 き

門 に よ っ て

り に 至 る の が 真 言

で あ る と し て い る 。   さ ら に 、 『

日 経 』 の 言 名

立 の

に 示 さ れ て い る 「 名 」 に 関 し て 、 『 大 日 経 疏 』 で は 、 「 三

言 は み な

に 依 る 。 し か も 名 は 字 に

る 」 と い

立 場 を

す 。 こ こ で は 、 名 づ け に よ り 世 間 流 通 の

言 が 顕 か に な る と い

成 立 」 の 流 れ は 示 す も の の 、 「 名 は 字 に 依 る 」 と 記 さ れ る こ と か ら 、 「 名 づ

ら れ た 本 源 的

在 が 、

に よ っ て 目 に

と し て 顕

す る 」 こ と が 述 べ ら れ て い る 。 つ ま り 、 『

日 経 疏 』 で は 、 可 視 的 な 文 字 を 論 の 中 心 に 置 き 、

在 を 示 そ う と す る 傾 向 が 認 め ら れ る 。   以 上 の よ

に 、 『

日 経 疏 』 で は 、 可 視 的 な

を 悟 り へ 至 る 門 と 位 置 づ け 、

と は 「 阿

門 」 で あ る と 明 言 し 、 論 を 進 め る と こ ろ に 、 『 大 日 経 疏 』 の

の 特 徴 が あ る と い え る 。 そ の 一 因 と し て 、 中 国

そ の も の が 不 可 視 な

よ り

、 実 在

る も の 、 つ ま

的 な

字 に 物

源 を 求 め た こ と も 指 摘 で き る 。   し か し な が ら 、 『 大 日

疏 』 で は 、 「

」 を 用 い て 、

と 同

に 、 阿

が 悟 り に 至 る 門 と す る 立

を と る も の の 、

母 を 一 五 一

539

(5)

空 海 の 言 語 観 ( 松   長 )

源 的 な 言 葉 に 位 置

け る と こ ろ に ま で は 至 っ て お ら ず 、 基

的 に は 「

日 経 』 の 言 語

に 沿 っ て い る と い え る 。   空

は 、 言

立 の 名 の 用 例 に

し て 、 『 声 字 実 相 義 』 に 於 い て 、 こ の 『 大 日

疏 』 の

を 敷 衍 し て 説 明 を 加 え て い る 。 且 ク 梵 本 ノ 初 ノ 阿 字 ハ 開 け ロ ヲ 呼 フ 時 二 。 有 コ 阿 ノ 声 一 即 チ 是 レ 声 ナ リ 。 阿 ノ 声                       ワ 呼 了

名 → 。 表 コ 法 身 ノ 名 字 → ヲ 。   音

と し て の 阿 の

が 、

、 つ ま り

で あ る 字 母 の

の 名 を 生 み 出 し 、 そ の 字 母 を 法

と 説 明 し て い る 。   こ の よ

に 、 空 海 は 『 大 日 経 』 お よ び 、 『 大 日

』 に よ っ て

系 化 さ れ た

源 と す る 声 そ の も の が 生 み 出 す 名 に 関 し て 、 声 に 対

が 生 じ る の と ま さ に 同

に 、 本 源 的 な 文 字 で あ る 字 母 を 生 み 出 し 、 そ れ を 名 字 と

る 立 場 を

し た 。 空 海

作 中 に お

の 用 例 は 、 そ の 大 部 分 が 『 声 字 実 相 義 』 と 『

』 に み ら れ 、 そ の

号 と い う 語

と と も に 記 さ れ る こ と よ り 、 名 字 が 法

づ け の 字 を 顕 す こ と が わ か る 。   名 字 の 用 例 は 、 『 大 日

』 に 二 か 所 、 『 大 日 経 疏 』 に 二 十 か

説 か れ る が 、 い

れ も 名 づ け ら れ た

本 源 的 な 意

を 持 つ に 至 っ て い な い 。  

述 の よ

『 秘

宝 鑰 』 で は 、

源 的 な

理 を 、 声 を 基 一 六 軸 と し 示 す 立 場 で は な

、 字 を 基 軸 に し 、

、 実 相 の 三 つ の 意 義 を 与

て お

、 基 本 的 に は 可 視 的 な 文 字 を 重 視 す る 『 大 日 経

』 の 流 れ を 引 き 継 い で い る と い え る 。   さ ら に 、 空

は 『

』 の コ 】 の 字 」 と い

現 に

な る 文 字 で は な

字 、 つ ま り 法

の 名 づ け の 字 で あ る

字 の

に 代 表 さ れ る 字 母 を

と し た 。 ま た 、 そ の 字 母 に は 、 い ず れ も 本 源

理 を 示 す 、 不 可 視 な 響 き で あ る

と 、 可 視 的 な 文 字 で あ る

母 と が 備 わ っ て お り 、 い ず れ も 実 相 を 顕 現 す こ と を

と こ ろ に 空 海 の 言 語

の 独 自 性 が あ る と い え る 。   以 上 の よ

に 、 空 海 は 、 『 大 日

』 、 『

疏 』 の 言

に 拠 り な が ら も 、

的 な

で あ る

字 と し 、 名 字 を 中 心 と す る

の 言

を 展 開 し て い る 。 つ ま

、 空

は 、

来 イ ン ド

す る

的 な

き 、

す る 信 仰 を 根

と す る 言 語

盤 と し つ つ も 、 中 国 的 な

で あ る 実 存

る も の を よ り 重

る 視 点 に 立 ち 、 『 大 日 経 疏 』 で は 不 十

で あ っ た 可 視 的 な

母 に 本 源 的 な 言 葉 を

め る 立 場 を 自 身 の 著

に 於 い て

立 し た と 言 え よ

1

  言 語 に 関 す る 問 題 は 、 こ れ ま で 多 く の 学 者 に 取 り 上 げ ら れ て き   た 。 詳 し く は 、 拙 稿 「 空 海 著 作 に お け る 「 名 」 の 意 義 に つ い て の   考 察 」 ( 『 密 教 文 化 』 第 二 三 二 号、 二 〇 一 四 年 ) 六 九 ー 七 〇 頁 、   註 (

2

) 〜 (

5

) 参 照 。

(6)

98765432

定 本 弘 全 三 巻 、 一 七 四 頁 。 大 正 一 八 巻、 九 頁 下 二 三 。 大 正 一 八 巻、 九 頁 中 七 〜 二 一 。 大 正 一 入 巻 、 五 二 頁 上 三 〜 五 。 大 正 一 八 巻 、 一 〇 頁 上 一 四 〜 二 四 。 大 正 三 九 巻 、 六 五 一 頁 中 二 一 〜 下 四 。 大 正 三 九 巻 、 六 五 一 頁 下 四 〜 八 。 定 本 弘 全 三 巻 、 三 八 頁 。 〈 参 考 文 献 〉 井 筒 俊 彦 『 意 識 と 本 質 』 ( 岩 波 書 店 一 九 九 一 年 ) 松 長 恵 史 「 空 海 著 作 に お け る 「 名 」 の 意 義 に つ い て の 一 考 察 」   教 文 化 』 第 二 三 二 号 、 二 〇 一 四 年 、 五 五 頁 〜 七 一 頁 ) 〈 キ ー ワ ー ド 〉   空 海 、 言 語 、 名 字     ( 高 野 山 大 学 准 教 授 博 士 空 海 の 言 語 観 ( 松   長 ) ( 『 密 ( 密 教 学 ) ) 新 刊 紹 介 加 藤

 

精 一

 

四 六 版 ・ 一 七 六 頁 ・ 本 体

、 入 ○ ○ 円     大

輪 閣 ・ 二 〇 一 五

三 月 一 七 一

541

参照

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