翻 学 雑.(J.Japan.S66.・Ho丘.・s6L)44(1):66-721ユ97δ1二 ・ ヤ・
.球 根 アイ
リス の生 育,・開 花 に 及 ぼ す 光
お・よ び 貯 蔵 養 分 の:影 響 ぐ
ド ン 」 ・ 佐 野 『 』'泰 、、 、.・(信 州 大 学 農 学 部)Effect of Light
and Storage
Nutrition
on the
Growth
and
Flowering
in Iris `Wedgwood'
Yasushi
SANG
Faculty of Agriculture,
Shinshu
University, ma,
Nagano
Summary
The author intended to examine the effect of light intensity
and stored
supply of
bulbs on the growth and flowering of iris `Wedgwood'.
When the light intensity
during the forcing period was limited to even 28 percent
of the sunlight
at noon of fine days in November at Shinshu University,
ma district
(29, 000 lux), all the plants grown from 25-30 g bulbs which had been cooled at 8°C
for 45 days flowered.
With smaller bulbs and/or with a shorter cooling period,
the
percentage
of flowering decreased under the limited sunlight
intensity.
When plants were
defoliated
1, 2, 3 or 6 leaves,
the percentage
of flowering
decreased
scarcely in the plants with 1 and 2 leaves defoliated,
and decreased slightly
in those with 3 and 6 leaves defoliated ., comparing: with intact plants.
There was
no difference in thee number of days to flowering among them.
The length of flower
stalk and the weight of the top rather increased
in the plants with 1, 2 and 3 leaves
defoliated
as °compared; with those in intact plants.
On the other hand,
the weight
of newly formed bulblets decreased in the defoliated plants as compared with intact
plants and the greater
number of leaves defoliated,
the smaller the weight of newly
formed bulblets.
In order to examine the effect of scales of bulbs on flowering,
bulbs of 25-30 g
cooled at 8°C for 45 days were planted
with their
scales removed.
The flowering
percentage
of these plants decreased to about a half of that of intact plants,
and also
the length of flower :stalk ' decreased though the number of days to flowering hardly
differed from that of the intact plants.
In the plants grown from bulbs of various weights,
the flowering
percentage
and
number of days to flowering were little different between the plants grown from 25
-30 g bulbs and those from 15-20 g bulbs
, both obtained from the same district in
Japan.
On the other hand, there were remarkable
differences
in the percentage
of
flower- ing, number
of days to flowering and height
of plant,
among the plants
grown
from bulbs of the same weight
but obtained
from warm,
cool and cold
climate districts
in Japan:
Dry weight
of plants
and the contents of starch,
total sugar
and nitrogen in
mother bulbs were examined during growth
with the plants grown
from the bulbs
treated with low temperature
and gibberellin,
with low temperature
only and without
any treatment
but stored at 20°C before planting,
respectively.
These examinations
revealed
that dry weight
and the contents
of starch,
total sugar
and nitrogen
decreased rapidly in those treated only with low temperature,
decreased more rapidly
in those treated
with low temperature
and gibberellin,
and decreased slowly in those
without any treatment
but stored at 20°C until planting,
respectively.
On the other
1974年6月3日 受 理
佐 野:球 根 ア イ リス の生 育,開 花 に及 ぼ す光 お よび貯 蔵 養 分 の影 響 67
hand,
dry weight and the contents of the substances
in the top increased
rapidly
in the plants grown from bulbs treated
with low temperature
and gibberellin,
and
increased slowly in those grown from bulbs without
any treatment.
In the plants
grown from bulbs treated with low temperature
and gibberellin
and those treated
with low temperature
only, the time of flowering concurredd with the time of
exhaus-tion of the storage substances
in mother bulbs to be empty.
From the results obtained above, it may be concluded that the materials for
flower-ing of iris `Wedgwood' are provided mainly by the mother bulb, not from
photosy-nthesis dui`ing the growing
period, when the size of mother bulb is relatively
large
enough and the top growth is supported by smooth supply of storage substances
from
mother bulb.
These considerations
suggest,
therefore , that iris `Wedgwood' may
scarcely produce blasting flowers, even if the light intensity
was relatively low
dur-ing the growdur-ing period of the plant in , Japan.
緒 言 前 報(11)に お い て 球 根 ア イ リス の 生 育,開 花 に 及 ぼ す 球 根 の低 温 処 理,生 育 温 度 な らび に ジ ペ レ リン処 理 の影 響 につ い て 報 告 した が,オ ラ ソ ダな どに お い て は生 育 中 の 半 が 開花 に 大 き く影 響 す る とい わ れ て お り・ ζれ は ま た牛 龍 威 も関 係 す る とい わ れ で い る(・ ・2鵡9)・ 日本 で は光 の影 響 に つ い て は ほ とん;ど研 究 さ れ て お ら ず,こ の点 牝 較 的 光 の 強げい 日本 に お け る反 応 を 知 る必 要
が ある・歎
これ と騨
して生育・:開
花におけ る同イ
ヒ養
分 の役割を1球 根の貯蘇養分 との関係において明 らかに
してお くこ:とも必 要 であ る.本 実 験 に お い て は これ らめ 点 を 明 らか 仁 す る 目的 で,.生 育,開 花 に 及 ぼ す しや 光 め 影 響,摘 葉,り ん 片 は く皮 お よび 球 根 の 大 き さの 影 響 を み る と と もに,生 育 中 に お け る養 分 の消 長 を 調 べ た. 材 料 お よ び 方 法実験に恥 た晶種はいずれ も`ウ博 粥;ド 播 冷
:る.生 育 中 め 日射 量 の影 響 を み るた め,1967年 新 潟 県産 の15-r20竃 球 お よび25∼309球 を 用 い て実 験 を 行 な つ 、: 'た.8月12日 よ り15∼209球 は.8。C30日 お よび45旧 L・ の,25∼309球 は8。C45日 の低 温 処 理 を 行 な つ た の ち,r そ れ ぞれ の低 温 処 理 が 終 了 した9月11日 お よ び9月26 旧 に箱 植 えに してガ ラ ス室 内に お いた.し や 光 処 理 は11 月2日 よ り寒 冷 しや を 用 い て行 な い,無 処 琿 区(A),白 寒 冷 しや1枚 区(B)お よび 黒 寒 冷・しや1枚 区(C)の3区 と した.処 理 開始 時 に お け る各 区 の照 度 ぽ,晴 天 正 午 の 戸 外 の照 度29,0001ux'k対 し,A区 のガ ラス 室 内 で は ユ9,0001ux;・B区 で は10,0001ux,C区 で は8,0001戯 で あつ て,戸 外 の照 度 を100と した 場 合 め 各 区 の 比 数 は 凶A区66;B区34 ,C区28で あ る♂ つ ぎに 摘 葉 が 生 育, 開花 に 及ぼ す 影 響 を み る 実 験 では,1968年 新 潟 県 産 の 15∼209球 を 用 い,9月15日 よ り13。C45日 間 の 低 温 処 理 を 行 なつ た のち;9月29日 に 箱 植 え に して ガ ラス 室 に 』お 二いた.処 理 は 植 物 体 の生 長 に と もな つ て 、10月20日 お よび11月5旧 の.2回 に わ た り,・第1葉 か ら数 え て1枚, :3枚 ,3枚 お タび6稼(し よ う葉 を 除 く全 葉)1摘 除 を 行 な つ た. また 球 根 マ)貯蔵 養 分 り影 響 を み るた め,1967年 新 潟 県 産 ρ25∼ 昌09球 を用 い ・8℃45日 間 ㊧ 低 温 卑 理 を 行 な つ た φ ち ・;りん 牒 敢 を は 彼 して 植 え 働 ・ガ ラ ス 室 内 た お い た.『対 照 区 と し て無 は く皮 の 完 全 球 を 用 い た ほ か,摘 葉1枚 区 を 加 え た. .さ らに球 根 の 大 ぎ さ の影 響 を み るた 囲 ・1967年 瞬 地(福 岡 県)産 の25㌣309球, 冷 涼 地(新 潟 県)産 の}25∼3・9球 瓢 び ・5ん2・9球 な らび に 寒 冷 地(長 野 県)産 の15う一209球 を用 い,8月 12旧 よ り.10。C35日 間 の低 温 処 理 を行 な つ た・の ち,.9月 P16日 に 箱 植 え に して 加 温 ガ ラ ス 室 に お き,そ あ 後 の 生 育,.開:花を 調 査 した. .つ ぎに 生 育 中 ρ 養 分 ㊧ 消 長 を み ーるた め・1968年 新=潟県 卸 平 搬49晦 用 い ・ 脚47一 日間低 拠 駆 ・同低 渥 処 琿 後190血9μ ジ ベ ヒ リ、ソ 溶 港.2q時 間 浸 灘 廼理 区 お ・よび20。ρ471日 間 処 理 区 の.3区 を 設 け,9・月30・日に ガラ樫 内に同時噸 け付けてその知 成分の消璋 諒
た.乾 物 重 の測 定 は1植物 体 を 『110。ρ に3q分 簡 お い た の 』ぢ60。Cで 恒 量 た な る ま で乾 燥 じだ 》 糖 め定 量 庶 風 乾 試 料19を と り,80%ア ル コ ール を 加 え て80。Cで40分 間 抽 出 を 行 な い ∫ 除 タ ンパ クを 行 濠 づ だ の ち,塩 酸 で加 永 分 解 し,ベ ル トラ ソ法 に よ 一り全 糖 を定 量 した.ま た上 記 の 抽 出 残 さを 塩 酸 で60分 間 加 永 分 鯉 しで デ シプ シ と捷 量 を 行 な つ だ'全 窒 素 の定 量 は 風 乾 試 料1曾 を 用 姻 ぞ セ ミ ミク 冒 ケル ダ ・一ル 法 に よっ た.ジ., 匹'1∵ 幽＼ ∴ ＼ 実 験 結 果' 日射 量 を 制 限 し セ生 育,u開 花 に 及 ぼ す 影 響 を み た 結 果 は 第1表 に 示 ず とお りで あ る.閑 花 率 は 低 温 勾5日 処 理 1め25-」309球 で は い ず れ め しや 光 区 で も1QO%で あ つ た.15∼209球 め 場 合,し や 光A区 お よびB区 で は ユ00噛 %開 花 した が,C区 では9ブ.2%で あ つ た ∴ 痴 ヒ低 温9068 園 芸 学 会'雑 誌 日処 運 区 の15∼209球 で は しや 光A区 で β24%,B区 ・で94.4%C区 で77.1%と な つ た.到 花 日.数に 低 温 処 理 ・日数 の違 い に よる差 は あつ た が,し や 光 処理 に よ る差 は 明確 な も の で は な かつ 準 ・た だB区 に事 いて や や お く1 れ る傾 向 が み られた.葉 数 も.しや 光 に よ る影 響 は み られ な か つ た が,葉 長 お よび花 茎 長 は,し や 光A区 に く らべ 、て'B・ ρ 両 一しや 米 区 で 明 らか に大 ぎ くな つた ・「 つ ぎに 摘 葉 を 行 な つ て生 育,開 花 に 及 ぼ す影 響 を み た 結 果 は 第2表 に 示 す とお りで あ る.摘 葉 を 行 な わ な:い対 ・照 区 の 開 花 率 が50%と 低 い が ,摘 葉1枚 区お よび2枚 1区は い ず れ も ・47.1%で,対 照 区 ど ほ と ん ど 差 は み ら れ な い.し か し摘 葉3枚 区 と6枚 区 は と もに38.9%と や や 低 くな う た.到 花 日数 に は ほ ξん ど差 は認 め られ な か つ た.し か し花 茎 長 は 対 照 区 に く らべ て 摘葉 区 の ほ う が 大 き く,摘 葉2枚 区 が 最 大 で あ つ た ほ か,摘 葉6枚 区: で も対 照 区 よ り大 ぎか つ た.根 を 除 く全 重 は 摘葉 数 が 多 くな るに 従 つ て減 少 した.そ の うち 地 上 部 重 は摘 葉6枚 区を 除 い て,摘 葉 区が い ず れ も対 照 区 よ り重 くな つ てい た.一 方 母 球 重 に はほ とん ど差 は み られ な か つ た が,新 球 重 は摘 葉 数 が 多 くな る に従 つ て減 少 した 、 りん 片葉 摘 除 が生 育,開 花 に及 ぼ す 影 響 を み た 結 果 ば 第3表 に示 す とお りで あ る.対 照 区,i摘 葉1枚 区 と も
Table 1. Effect of light intensity on the growth and flowering of iris `Wedg wood'.
Table 2. Effect of defoliation on the growth and flowering of iris `Wedg wood'.
佐 野:球 根 アイ リス9)生 育,開 花 に 及 ぼ す 光 お よび 貯 蔵 養 分 の影 響 69 ユ00%開 花 し てい るの に 対 し,り ん 片 葉 は く皮 区 は50% 瀾 花 した に す ぎな か つ た.到 花 日数 は りん 片 葉 は く皮 区 でや や 長 くな つ た が,大 きな差 で は な い.葉 数,葉 長 に は 差 は み られ な か つ た が,花 茎 長 は対 照 区 に 比較 して り ん 片 葉 は く皮 区 は短 くな つた. つ ぎに産 地 お よび大 き さ め異 な る球 根 を 同時 に 低 温 処 理 して ジ そ の後 の生 育,開 花 に及 ぼ す 影 響 を み た 結 果 は 第4表 に示 す とお りで あ る.'開 花 率 は 寒 冷 地 産bも のが 20%で あつ た 以 外 は,い ず れ も80%1以 上 で あ つ た. 到 花 日数 は 暖 地 産 球 根 が 短 く,早 く開 花 した ほ か は 大 差 な か つ た.葉 数 は 暖 地 産 の もの が 少 な く,寒 冷 地 産 の も の はや や 多 い 傾 向 を示 した.最 大 葉 長 は 暖 地産 の もの が 短 か つ た が,他 は 大 差 な か つ た.層花 茎 長 も暖 地産 の もの が 最 も短 く,つ い で 冷 涼 地産 の25ん309球 お よび 向15 .∼209球 で,寒 冷 地 産 の15∼209球 は最 も長 か つ た 」 球 根 植 え付 け後,生 長 に と もな う成 分 の消 長 を み るた ・め ,球 根を13。C低 温処理,130C低 温 処 理 お よび ジベ レ リ ソ処 理,な ・らび に20。C処 理 を 行 なつ た のち,そ れ ぞ れ 植 え付 け てそ の 後 の生 長 を調 べ た 結 果 は 第1図 に示 す とお りで あ る.草 丈 の伸 長 は13。Cお よび ジベ レ リソ処
Table 4. Growth and flowering of iris different districts in Japan,
`W
edgwood' grown from bulbs of various weights and obtained from
Fig.1.Effectofcoolingandgibberellintreatmenton thegrowthandfloweringofiris`Wedgwood'. ○:Co61edat13。Cfor、47days,●:Cooledat13。C anddippedingibberellin ,solutionof,100.mg/1, p:Storedat20ｰCconstant,:Heightofplant, 一 一: .LengthlofHower合talk,↓;MeanHowering date.CoolingofbulbsstartedonAugust14and t耳ebμ1わSw:er宇pl環ntedo耳 串eptemわer30. Fig・2・ 珊ect・f…lingand 、gibbergllintreat血 ・ガ ・n dryweightperplantofiris`Wedgwood'.O Cooledat13。Cfor47day串,●:Coρledat130C anddipped.ingibberellinsolutionof100mg/1 , O:Storedat20ｰCconstant,:Wholeplant, 一 一 一1 ・Top ,一 一 一;Motherbulb,・ … …:Daughter bulbs, .CoolingofbulbsstartedonAugust14and thebulbswereplantedonSeptember30 . Fig.3.Effectofcoolingandgibberellintreatmenton starch:contentperplantof'iri's`Wedgwood'.Des-ignationsarethe忌a血easinFig. .2.r、
70
園 芸 学 会 雑 誌
理 区 で最 大 で,200C処 理 区 は お くれ た.花 茎 の伸 長 も 13。Cお よ び ジ ベ レ リソ処 理 区 で速 く,13。C処 理 区 が こ れ に つ い だ が,13。Cお よび ジ ベ レ リソ処 理 区 で は 伸 長 が 早 く停 止 し,最 終 花 茎長 は短 くな つ た.平 均 開花 日は 13。C区 が12月12日,13。Cお よび ジ ペ レ リソ処 理 区 が 12月8日 で,20。C処 理 区 は1月14日 で あ つ た.こ れ ら 各 区 の生 育 中 の1個 体 当 た り乾 物 重 の 変 化 は 第2図 に示 す とお りで あ る.1個 体 当た り総 重 量:は各 区 と も一 た ん 減 少 した の ち,再 び 増 加 し てい るが,13℃+ジ ベ レ'リソ 処 理 区 で 減 少 が 少 な く,増 加 が 早 い のに 対 し,20。C処 理 区 は 減 少 が 大 ぎ く,そ の後 の増 加 が お くれた.母 球 乾 物 重 の減 少 は13。C十 ジ ベ レ リ ソ処 理 区 が最 も急 速 で, 13。C処 理 区 は これ に つ い だが,20。C区 は ゆ るや か で あ つ た.一 方 地 上 部 乾 物重 の 増 加 は13。Cお よび ジ ベ レ リ ソ処 理 区 で 急 速 で,130C処 理 区 は これ に つ い だ が,20。C 処 理 区 は ゆ る や か で あ つ た.新 球 の 乾 物 重 の 増 加 も同'じ 順 で あ つ た.母 球 に お け るデ ソ プ ソ含 量 の減 少 は 第3図 に示 す とお りで,乾 物 重 の変 化 と 同 じ傾 向 を 示 し,地 上 部 に お け る含 量 もほ ぼ 同 じ傾 向 を 示 した が,そ の量 は わ ず か で あ つ た.全 糖 の含 量 は第4図 に示 す とお りで,デ ソ プ ソ含 量 の変 化 と ほ ぼ 同 じ傾 向 を示 した.1個 体 当た りの全 窒 素 含 量 は第5図 に示 す とお りで あ る.母 球 に お け る 全 窒 素 含量 の減 少 は13。Cお よび ジ ベ レ リソ処 理 区, 13。C処 理 区,20。C処 理 区 の 順:に早 かつ た が,地 上 部 に お け る全 窒 素 含 量 の 増 加 は 母 球 に お け る 減 少 と は 逆 に 13。Cお よび ジ ベ レ リソ処 理 区 で 最 も早 く,13。C処 理 区 が これ に つ ぎ,20。C処 理 区 は 最 もお くれ た. 考 察 日本 でに 球 根 ア イ リス の促 成 栽 培 に お い て 光 の 量 が 問 題 とされ る こ とは ほ と ん どない.し か し オ ラ ソダ に お い ては:,`ウ エ ジ ウ ッ ド'は`イ ソペ レー タ ー'ほ どで は な いが 光 の不 足 が 座 止 の原 因 に な る とい わ れ(1,8),と く に低 温 処 理 日数 の少 な い場 合 や,植 え付 け 時 の 球 根 が 小 さ い場 合 に は,開 花 に よ り多 くの光 が 必 要 であ る こ とが 示 さ れ て い る(2).Kamerbeek(4)は15。C∼18。Cで 座 止 が か な り多 い が,温 度 が 上 昇 す る と光 の必 要 最 低 量 が 急 速 に 高 くな る とい う.R伽ger(9)も 光 の 不 足 は座 止 を 増 加 し,と くに 開 花40日 ∼50日 前 に お い て敏 感 で あ る と述 べ てい る.本 実 験 では`ウ エ ジ ウ ッ ド'で11月 か ら1月 に か け て しや 光 に よつ て相 対 的 な照 度 を戸 外 の 約28%に ま で制 限 し て栽 培 を 行 な つ た の で あ るが,低 温45日 処 理 の25∼309球 お よび 巧 ∼209球 は 強 い し や 光 下 で もほ とん ど100%開 花 し,た だ15∼209球 の 30日 低 温 処 理 区 で 強 い しや 光 区 の 開 花 率 が77.1%に 低 下 した 程 度 で あつ た.こ れ は本 実 験 に 用 い た 程 度 の 大 き さ の球 根 で あ れば 貯 蔵 養 分 が 十 分 であ る ので,生 育 中 の 光 合 成 に よ る 同化 養 分 を あ ま り必 要 と しな い た め と思 わ れ る.し た がつ て この程 度 の大 き さ の球 根 を 用 い る 限 り,日 本 に お い て は か な り促 成 温 度 を 高 くし て も,冬 の 低 照 度 が 問題 とな る こ とは まず な い と考 え ら れ る.光:量 の 制 限 は む しろ 葉 長,花 茎 長 を 伸 ば す効 果 がみ ら れた. 光 量 制 限 が 座 止 の 原 因 とな らな い の は,生 育 中 の光 合 成 産 物 が 直 接 開 花 に 影 響 す る こ とが 少 な い た め で は な い か と考 え られ るが,こ の 点 を 確 か め るた め に摘 葉試 験 を 行 な つ た.そ の結 果,摘 葉 に よつ て開 花 率 は 多 少 低 下 し た が,花 茎 長 は 逆 に 大 き くな つ た.こ れ は 葉 の 生 長 の た め に 使 わ れ る球 根 の貯 蔵 養 分 が,摘 葉 に よつ て花 茎 の伸 長 のほ うへ 回 さ れた た め で は な いか と思 わ れ る.摘 葉 に よつ て光 合 成 量 は減 少 して い る と思 わ れ るが,地 上 部 重 は摘 葉3枚 まで はむ しろ増 加 してお り,結 局 新 球 重 量 の 増 加 が み られ な か つ た.こ の 点Wassink(12)が 自然 光 を12%に 制 限 した場 合,葉 や茎 の 乾物 重 はほ とん ど影 響 を 受 け な い が,球 根 の 乾 物 重 が大 きな影 響 を受 け る と 報 告 して い る結 果 と似 て い る.こ の こ とは 花茎 伸 長 に は 貯 蔵 養 分 が 使 わ れ,生 育 中 光 合 成 に よつ て生 産 さ れ る物 質 の多 くは 貯 蔵 養 分 とな つ て新 球 に 貯 え られ,翌 年 の生 育 に使 わ れ る こ とを示 す もの と推 定 さ れ る.し た が つ て Fig. 4. Effect of total soluble Designationscooling and gibberellin treatment on sugar content of iris `Wedgwood'. are the same as in Fig. 2.
Fig. 5. Effect of cooling and total nitrogen content of ignations are the same as
gibberellin treatment on iris `Wedgwood'.
佐 野:球 根 ア イ リス の 生 育,開 花 に及 ぼ す光 お よび貯:蔵養 分 の影 響 7工 そ の年 の生 育,開 花 に は 球 根 の 貯蔵 養 分 が 大 ぎな 影響 を もつ もの と考 え られ る.こ の 点 を さ らに 明 らか に す るた め ・低 温 処 理 を行 なつ てか ら・ りん 片 葉1枚 を 妹 く皮 し ' て 植 え 付 け た と ころ,開 花 率 は:対照 区 の1/2に 減 少 し, 葉 長 も短 くな つ た.こ とに花 茎 長 は摘 葉 処 理 とは 逆 に, 明 らか に 短 くな つ た.な お低 温 処 理 後 の は く皮 は花 芽 分 化 に ほ とん ど影 響 しな い こ とは さ き に示 した とお りで あ る(10).ま た 大 き さの 異 な る球 根 を用 い セ生 育,開 花 に 及 ぼ す影 響 をみ た ので あ る が,冷 涼 地 産 の15∼209球 と25∼309球 とを くらべ た 結 果 で は15∼209球 の ほ う が わ ず か な が ら高 い 開花 率 を 示 し,到 花 日数 も短 か つ た ほ か,花 茎 長 も長 かつ た.こ れ は,こ の程 度 の大 き さの 球 根 であ れ ば 生 育,開 花 のた め の貯 蔵 養 分 は十 分 で あ る の で差 が み られ な か つ た もの と考 え ら れ る.本 実 験 にお い て は球 根 の大 き さの違 い よ り=も,む しろ 球 根産 地 の違 いに よ る影 響 のほ うが 大 き く現 わ れ て い る点 が 注 目さ れ た. 以上 に述 べ た 光 と同化 養 分 な らび に 球 根 の 貯蔵 養 分 と の 関 係 を さ らに 明確 にす るた め,生 育 中 にお け る炭 水 化 物 を 中 心 と した 成分 の 消長 を調 べ た ・そ の結 果1個 体 当 1たりの乾 物 重 の 消 長 を み る と ,全 植 物 体 で は植 え付 け 後 い つた ん少 し減 少 した の ち,増 加 す る の が み ら れた ・母 球 は植 え付 け 後 減 少 を続 け,一 方 地 上部 は 増 加 して行 く が,開 花 時 期 と母 球 養 分 が 無 くな る時 期 とが ほ ぼ 一 致 し て い る.こ れ は この大 き さ の球 根 で,た また ま開 花 期 と 母 球 養 分 が 無 くな る時 期 とが 一 致 した のか ど うか は わ か ち な い が,地 上 部 の生 長 が母 球 養 分 に 依 存 し て い る こ と が 十 分 うか が わ れ る.し た が つ て母 球 養 分 が無 くなつ た の ちに 開 花 期 が お とず れ る場 合 が あ る とす れ ば,そ れ は 全 面 的 に 生 育 中 の光 合 成 に 依 存 す る か,・そ れ が十 分 で な ・い場 合 には 不 開 花 とな る こ とが 予 想 さ れ る・Hartsema ら(2,3)も ほ ぼ こ れ と同'じ結 果 を 得 てお り,開 花 前 の 補 光 が 開 花率 を 高 め る の に効 果 が あ るの は,ち よ う ど母 球 養 分 が 無 くな る 時期 に これ を補 うか ら で あ る と し て い る.〃また 本 実 験 で低 温 処 理 区,と くに ジ ベ レ リソ処 理 区 め 生 育,開 花 が 促 進 され て い る が,こ の場 合 母 球養 分 の 減 少 が 著 しい.低 温 処 理 が ア イ リス`ウ エ ジ ウ ッ ド'の ア ミラ ーゼ 活 性 を 高 め る こ とが 知 られ てい るが(6),ジ ベ レ リソ も ア ミラ ーゼ な どの酵 素 活 性 を 高 め,デ ソ プ ン の分 解 を促 進 し,糖 含 量 を 高 め る こ とが 知 られ てい る. 球根 ア イ リス の場 合 に も,ジ ベ レ リソ処 理 に よつ て貯 蔵 養 分 の 分解 移 動 が 促進 さ れ,急 速 な花 茎 伸 長 の裏 づ け を して い るの で は な い か と推 測 さ れ る.前 報(11)に お い て,ジ ベ レ リソ処 理 に よつ てわ ず か な が ら開 花 率 が 高 ま る傾 向 が み られ た が,こ れ は この こ とを 裏 づ け てい る も の と思わ れ る.い ず れ に して も球 振 の 貯蔵 養 分 が 地上 部: の生 育 に 大 きな関 係 を もつ て い る こと が うか が わ れ,あ る程 度 以上 の 大 きさ の 球 根 で あ れ ば生 育 中 の光 が 弱 くて も開 花 に 支 障 を もた らす こ とは な い が,球 根 の 低 温 処 理. な ε,何 らゆ の原 因 で貯 蔵 養 分Q分 解 ・移 動 が 地 上 部 の 急 速 な生 長 に と も なわ な い 場 合 に は,開 花 が お く れ た. り,花 茎 長 が 短 くな つ た 、り・,あ るい に 摩 止 す る こ と に も な る もの と思 わ れ る.生 育 中 の 高温 に よつ て 座 止 が 多 く な る の は,花 芽 に対 す る高 温 の直 接 的 な 影 響 を 別 にす れ ば,高 温 に よつ て 花 茎 の伸 長 が 促 進 さ れ るヅ 方,母 球 か らの 養 分 の 供 給 が と もなわ ず,さ らに 呼 吸 に よ る 養 分 の 消 耗 も大 ぎ くな つ て 糖 濃 度 が 低 下 す る こ とが 原 因 とな る の では な い か と考 え られ る.し か し,前 報(11)に 示 した よ うに,.日 本 で は 比 較 的 高 温 で もオ ラ ソ ダ に お け るよ う な 開花 率 の低 下 はみ られ ず,.ま た 本 実 験 で み ら れた よ う に,日 射 量 を 強 く制 限 し て も比 較 的 高 い 開 花 率 を 示 し, さ らに摘 葉 を行 な つ て も開花 率 は【そ れ ほ ど大 き く低 下 し な か つ た.こ の こ とは 日本 に くらべ て オ ラ ソ ダ に お け る 欄 花 率 の 低 下 が 単 に オ ラ ソダ の 冬 季 の 低 光 量:のた め で あ る とい う'ことだ け で は 説 明 出 来 な い こ とを 示 し て い る. 本 実 験 に お いて 同 じ大 き さの 球 根 を 同 一一条 件 で 栽 培 し て も,球 根 の産 地 に よつ て生 育,開 花 に 大 き な差 が あ る の が み ら れた.こ れ ら の こ とか ら推 察 す る と,生 育,・開 花 は結 局母 球 養 分 の 量 の み な ら ず,そ の 分 解 ・移 動 の 速 度,地 上部 の生 長 速 度,あ る い は 呼 吸量 な どの 均 衡 関 係 に よつ て支 配 さ れ,光 合 成 に対 す る依 存 度 も変 わ つ て く る も の とみ られ る.こ の 依 存 度 が 大 き くな る場 合 に は 生 育 中 の光 の:量が 重 要 な 要 因 とな つ て く る で あ ろ う・.した 渉 つ て オ ラ ソ ダに お い て光 の量 が 問 題 とな り1日 本 で ば あ ま り問題 とな らな い のは,r単 に オ ラ ソダ と 日本 の 光 量: の違 い に よる た め だ け で は な く,そ れ 以 外 に も原 因 が あ る とみ な け れ ば な らな い だ ろ う.7た とえ ば 母 球 の 大 き さ が 同 じで あ つ て もそ こに含 まれ る酵 素 の 量:や,温 度 処 理 法 の違 い に よつ て貯 蔵 養 分 の 分 解 ・移 動 の速 度 や 生 長 速 度 に 違 い を 生 ず る こ と も考 え られ る.こ れ ら の こ とは 今 後 産 地 の異 な る球 根 を 用 い て促 成 栽 培 を 行 な う場 合,問 題 とな る も の と思 わ れ る. 摘 要 球 根 ア イ リス`ウ エ ジ ウ ッ ド'の 生 育,開 花 に 及 ぼ す 光 お よび 貯蔵 養 分 の 影 響 を 知 る 目 的 で 実 験 を 行 な つ た. 1.低 温 処 理 を 行 な つ て 植 え 付 け た 球 根 を,寒 冷 しや で 日射 量 を 制 限 し て生 育,開 花 に 及 ぼ す 影 響 を み た と こ ろ,低 温45日 処 理 を 行 な つ た25∼309球 で は:,日 射 量 を 戸 外 の28%に 制 限 し て も100%開 花 し,葉 長, ,花茎
起72
園 芸
学
会 雑
誌
長 は長 くなつ た.ま た 低 温30日 処 理 を 行 なつ た15ん20 9球 で は,・開花 率 ば 日射 量 を28%に 制 限 した 場 合77・1 %に 低 一ドした.し が しいず れ の場 合 も ぴ や 光 に よつ て 1到花 日数 は ほ とん ど影 響 さ れ な かつ た. 2.・ 摘 花 を 行 な つ て,生 育,開 花 に 及 ぼす 影 響 を みた と と ち;摘 葉3枚 以 上 で 開 花率 が少 し低 下 レた.し か し 一到 花 日数 に は ほ とん ど差 は な ぐ,花 茎 長 は摘 葉 に よつ て 善 しろ 長 ぐな つ た.地 上部 重 も摘 葉3枚 以 下 では 対 照 区 よ り重 くな つ た が,新 球 重 は摘 葉 に よつ て減 少 した ∴ ま 低 温処 理 後,植 え付 け 前 に りん片 葉1枚 を は く皮 七 た もの は,「対 照 区 に くらべ て到 花 日数 に は ほ とん ど差 ・は1みら れ な かつ た が,開 花 率 は 対 照 区 の1/2と な り,、花 茎 長 も短 くな:つた.・、 4.・ 同 じ地 方 で生 産 さ.れた15ん209の 球 根 と25㌍30 9の 球 根 で は,』生 育,開 花 に 大 差 は み られ な かつ た が, 伺D大 き さ の球 根 で も球 根 の産 地 が 異 な る場 合 に は 生 育y開 花 に 大 ぎな差 が み ら れ た.. 5ヒ,低 温処 理 を 行 な つ た球 根,低 温 処 理 後 ジベ レ リソ 処 理 を 加 え た球 根,低 温 処 理 を 加 え ない 球 根 を 植 え 付 け て,生 育 中 の乾 物 重,.デ ソ プ ソ含 量,糖 含 量 お よ・び 窒 素 含 量 の 消長 を 調 べ た とこ ろ,母 球 貯:蔵養 分 は低 温 お よび ・ジ1ベレ リソ処 理,侭 温 処 理,低 温 処 理 を 加 え な い もの の 順:に早 く消 失 した ・ そ し て前2者 で は 開 花 期 が 母 球養 分 マ)消朱 す る時 期 と州 致 レた ・, ◎ 以 上 ク)結果 よ り・ド球 楳 ア イ リス`ウ エ ジ ウ ッ ド' で は,あ:る 程 度 以上Q大 きさ の 球 根 で あ れ ば 開花 は 像 と 躍 母 球齢 磁?て 勲 ・なわ れ 母 球 養 分 の分 解 ・移 ;動が 地 上 部 の伸 長 に と もな う場 合 に は 生 育 中 の光 合 成 に 稼 存 す る こ とは 少 な く,日 射 量 が 少 な くて も座 止 す る こ ・とは な い もξ)と考 え ら れ る_ 謝'辞 .奉 研 究 を 行 な5に 当 た り,御 指 導 を 賜つ た京 都 六 学 探 本 洋 太 郎 融 授 に 対 し三、.厚・く 寒 謝 の 意 を表 し ま す. 引 用 文 献1, HARTSEMA, A. M. 1961. Influence of tures on flower formation and flowering of bulbous and tuberous plants. RUHLAND ed.
2. 3 4. 5. 6 7• 8 9
Handbuch der Pflanzenphisiologie XVI :
123--167.. Springer-Verlager, Berlin.
and I. LUYTEN. 1961. Snell bloei
van iris "Wedgwood", III A, III B. Proc. K.
ned. Akad. Wet. Ser. C, 64: 600-=-616,
617--629.
, and
. 1962. Snelle bloei
van Hollandse irissen "Imperator" VI.
Licht-behoefte na verschillende
prepareerbehandel-ingen. Proc. K. ned. Akad. Wet. Ser. C, 65:
1-21.
KAMERBEEK,
G. A. 1969. Influence of light
and temperature on flower-bud development
in bulbous irises (Iris cv. `Wedgwood') and
lilies (Lilium cv. `Enchantment'). Acta Hort.
14: 175 (cited from Hort. Abst. 40, 8816).
KATSUMI, M. 1970. Effect of gibberellin A3
on the elongation, x-amylase activity,
reduc-ing sugar content and oxygen-uptake of the
leaf sheath of dwarf maize seedlings. Physiol.
Plant. 23: 1077--1084.
LAAN, G. J. van. 1955. Correlation of enzyme
activity with the early flowering of cured,
precooled bulbs of Iris Tingitana (Wedgwood)
used for forcing. Proc. Amer. Soc. Hort. Sci.
66 : 392--396.
PALEG, L. G. 1965. Physiological effects of
gibberellins. Ann. Rev. Plant Physiol. 16:
291--322.
REES, A. R. 1972. The growth of bulbs. pp.
311. Academic Press, London and New York.
RUNGER,
W.. 1957. Licht and Temperatur im
Zierpflanzenbau. p. 129--130.
Paul Parey,
Berlin.
10.'佐 野 泰1974球 根 ア イ リス の 球 根 の 状 態 と花 芽 分 化 に 及 ぼ す 低 温 効 果 と の 関 係.園 学 雑.42: 333'一一340. 11・ 佐 野 泰1975・ 球 根 ア イ リ ス の 生 育,開 花 に 及 ぼ す 低 温 処 理,生 育 温 度 お よ び ジ ベ レ リ ソ 処 理 の 影 響.園 学i雑.44:59-65.12. WASSINK, E. C. 1969. Effects of light intensity on dry matter production and morphogenesis of Iris "Wedgwood", as compared with diolus and tulip. Meded. Landb. Hogesch. Wageningen, 69: 1-17.
