博 士 ( 医 学 ) 佐 藤 実
学 位論文 題名
Diastolic Potentials in Verapamil‑Sensitive Ventricular Tachycardia : True Potentials or Bystanders of the Reentry Circuits ?
(ベラパミル感受性心室頻拍における拡張期電位は り エ ン ト リ ー 回 路 を 反 映 し て い る の か )
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
要旨
【背 景】 高 周波 カテ ー テル アブ レ ーシ ョン は 房室 結節 回 帰性 頻拍 、 副伝 導路症候群 、心房粗動などの ヒ室 性頻 拍 の治 療に 有 効で あり 、 治療 の第 ー‑靆Rとな っ てい る。 ま た同 様に、特発 性心室頻拍や基礎
´凵 英患 に 合併 した 持 続出L室頻 拍の 治 療に も用 い られ、特に右 室流出路起源の心室 頻拍に対するこの 治療 のィ 写 用性 が多 数 報告 され ている。近年、12誘導ふ電図で右 脚ブロック・左軸偏 位を示し、その停 止にverapamilの 有効 な特 発 性心 室頻 拍 に対 し、 高 周波カテーテ ルアブレーションが 有効との成績が報 告 さ れ 、 カ テ ー テ ル アブ レ ーシ ョン の 成功 因子 と して 、心 内 ´幗 で記 録 され る拡 張 期電 位の 意 義が 検討されている。
【目 的】 我々は右脚 ブロック・左軸偏 位を示し、verapamilに感受 性を有する´瀧髱劇 角において、心室 頻拍 中に 心 室内 マッ ピ ング で記 録される拡張期 電位(dp)が、この 心室頻拍のりエント リー回路における 緩徐伝導部位を反 映する電位であるか 否かを検討し7こ。
【カ法】対象:電 気生理学轡熾を1j7したverapamilに慮縵性を有 する´L丶室頻拍患者18例(年齢:1〜6 才、男性16例、女 性2例)。
電 気生 理 学的 検査 と ´幽 マッ ピ ング :infonnedconsentを 得 た後 、空 腹 かつ 非鎮 静 决態 で電 気生理 学的 検査 お よび 高周 波 カテ ーテ ル アブ レー シ ョン を施 行 した 。全 て の抗 不整脈薬は 検査の72時間前に 中止 され た6極 の 電區 カテ ー テノ レ刪SCI社 製 、7Fr)を 経皮 的 に右 鎖r骨 下静脈より 挿入し、右房と右 室の電気牽1は(ぺーシンク つおよぴ電位記録のため、カテーテル先端を透視下で右室の心尖部に配置した。
また 、4極 の電 薩 カテ ーテ ル (USCI社 製、6Fr) は右大腿静脈から 挿入され、ヒス束電 位を記録するため 三尖 弁の 上 部に 配置 さ れた 。心 室 内マ ッピ ン グと カテ ー テル アブ レ ーシ ョン 用 に、 長さ4mmの ラージ チップ霤陋を持つ4極カテー テノレ(Webmr社製、7Fr)カミ右大腿 動脈より挿入され、左室内に配置された 右室およひ左室か らプログラム朿憐や を行い、´嶐麹頃 拍を誘発した。心 室頻拍中に心室内マッピングを 行い、心室内最早 期興奮部位の決定お よびdpの記録を行 った。
ま た、6例で 心 室頻 拍中 にvem剛11ilを静 注 し、 頻拍周 期、心室波ヅ洳とdpの時間(V一dp時間)、dp とV波の時 間(dpV時間)の変化を観察 した。
体:表面と心内´ 心電図はの11nico耐er8M14(日本電気三栄社:製)を使用し100mm/Secの用細速度でそ録
― 160 ‑
した。
★ プ ロ グ ラ ム 繭 臓 ; :(1) 早 期 瓢瞰 法(8〜10拍 の 基 本周 期 で ぺ ー シ ング し た 後 、 その 周 期 よ り 觚 ヽ m瑚 ―l撒 す る 方 法 で 、 巒 瑚 を 10〜 20msecず Nrii‑る 。 劉 蜩 期 は 600msecお よ び500msecで 、 単 発 期 外 ij激 、2i蝴 外 牽l瞰を 行 う 。 )(2) 頻 回 牽 憫艦 ( 自 己 の 調 律 よ り 若 干 速 し ヽ 一 定 の 周 期 で ぺ ー シ ン グ し 、 そ の 周 期 を 徐 々 に 短 く す る 方 法 ) 高 周 波 カテー テルア プレ ーショ ン:高 周波発 生装置 にはHATT 200S(Osypka社製) を用い 、カテ ーテ ノレ先 端の ラージ チップ 諺睦と 左肩 甲骨下 に置い た対極 板間で30ー35W、30秒 問の 高周波通電を施行し た。
【結果 】全 例でプ ログラ ム莉瞰 によ り右脚 ブロッ ク・左 軸偏位 を示 す心室 頻拍が 再現r生をもって誘発 され、 かっ ぺーシ ングに より停 止が 可能で あった。また、誘発された´嶐萱頃拍はverapamilの静注によ り停止 した 。
dpの 記 録 とverapamilに 対 す る 反 応 : 左 脚 後 枝 領 域 の 広し 齟 でdpが 記 録 さ れ た 。ま た 、6例 にお いて、 ´嶐 室頻拍 中にverapamilを5〜10mg静注 したと ころ、 頻拍 周期は365土53msecから490土65msec、 V‑dp H寺問 は315土30msecか ら368土30msec、dp‑VH寺問 は50土27msecから123土36msec^と いずれ も 有 意 に 延 長 し た や く0.01) が 、 体 : 表 ´ い 電 図 で のQT時 間 は 変 化 し な か っ た 。 dpと左 臈瞰とJい 室波のi己 録:全 ての 患者で´い室波の直前に、左脚のPurkine繃孫隹の電位と思われ る左脚 電位 屯B) が記 録され た。12人 の患 者でLBの 前にdpが記録 された 。
dpの 伽t瑚mm跚t現象 : マ ッ ピン グカテ ーテル の遠 位電薩 と近位 ;霤睦 でdpが 同時に 記録さ れた3例 で、遠 位電 随から 頻拍周 期より やや 早い周 期で卿 目束l黻を 行った ところ 、dpが ぺーシ ング周期に追従 し、dpのenむ面nment現象を 示した 。
高 周 波 カ テ ーテ ル ア ブ レ ーシ ョ ン : 再 早期 興 奮 部 位、dpが単独 で記録 され る部位 、LBが単 独で 記 録 され る 部位 でのカ テーテ ルアブ レー ション で心室 頻拍を 治癒 するこ とはで きなか った。 しか し、dp とLBが 同 時 に 記録 さ れ た12例 に お い て 、同 部 位 で の カテー テルア ブレー ショ ンは全 例で成 功した 。 近 位電 極 と 遠 位 電極 でdpとLBが 同時 に記録 された1例 では、 高周波 通電後 、´ い室頻 拍が停 止し、 洞 調 律に 戻 っ た 時 に、dpとLBの 間 で 心 室 頻拍 が 停 止 す る所見 が得ら れた。 カテ ーテル アブレ ーショ ン を 施行 し た12例で は 合 併 症 も無 く 、 そ の 後も 無 投 薬 で あ るが 、 心 室 頻 拍の 再 発 を 認 めて い な い 。
【討議 、結 論】こ の´い 室頻拍 の機 序は、 プログラム床I撒により再現性を持って誘発停止が可能であっ たこと よル リエン トリー 竹頻拍 と考 えられ る。´ い室頻 拍中に 心室波に先行してdpが記録されたが、こ のdpは 体 表 ´ 幗で のT波 を 反映 す る 電 位 やア ー チ フ ァ クト の 可 能 陸 が ある 。 心 室 頻 拍中 にveq珈 仙 を 静注 す る と 、 頻拍 周 期 が 延 長 する に っ れ てV司p時 間 、dpV時 間 はと も に 延 長した が、QT時 間は 変 化 しな か った 。この ことか ら、dpはT渡やア ーチフ ァクト を反映 する のでは なく、 この頻 拍にf鞨連 し た電位 であ り、か つVerapamilに感 受性を 持つ 部位を 反映し た電位 であ ること が推察 される。しかし、
dpは り エ ン ト リ ー 回 路 の 恤derで あ る 可能r生 は 否 定で き な い 。3例 にdpのenn面nment現 象を 認 め たが、 これ は、ぺ ーシン グ牽l瞰が りエン トリ ー回路 を順行 性に旋 回してdp記録 音隴ま で伝播したこと を 示し 、dpが この り エ ン ト リー 回路 に関連 した 電f立 であ ること を示唆 する。 また 、dpとLBが 同時 に 記 録さ れ る12症 例で、 全例 、dpとLBの 同時 記£黐 :陀で のみカ テー テルア ブレー ション が成功 して い る こと か ら 、LBと 同 時 に 記 録さ れ るdpのみ が 、 こ の りエン トリー 回路の 必須 な構成 部位を 反映す る 電 位で あ る と 考 えら れ る 。dpとLBが 同 時に 記 録 さ れ る部位 でカテ ーテル アブ レーシ ョンを 施行し た 際 、dpとLBの間で ´嶐 塾壌討 白が停 止する 所見 が得ら れたが 、これ はdpとLBの間で りエ ントリ ー回路 が 舶折 さ れた ことを 示し、LBはり エント リー回 路の出 口近 傍の電 位であ ると考 えら れる。 以上の こと
―161− ―
を考 え合 わせる と、dpはverapamilに感 受性を 持つ部 位を反 映し 、さら にりエ ントリ ー回路の重要な構 成t9‑BttLを 反映す る電 位であ ること から、このりエントリー性頻拍を維ボ南鞆ける笥粒、すなわち緩徐 伝導 部位 を直接 反映す る電位 であ ると推 察され る。
― 162−
学 位 論 文 審 査 の 要 旨
学位論文題名
Diastolic Potentials in Verapamil‑Sensitive Ventricular Tachycardia : True Potentials or Bystanders of the Reentry Circuits ?
(ベラパミル感受性心室頻拍における拡張期電位は り エ ン ト リ ー 回 路 を 反 映 し て い る の か )
近年、verapamil に感受性を有し、右脚ブロック・左軸偏位を示す心室頻拍(Verapami 卜VT ) の心室内マッピング中に拡張期電位(dp )が記録されると報告されたが、その成因について は明らかでは ない。本研究では、verapamil ‐VT の心室内マッピングで記録されるdp がり エントリー回路の構成部位である緩徐伝導部位を反映した電位であるか否かを検討した。
対象は、VerapamilIVT 患者18 例(男性16 例、女性2 例)である。電気生理学的検査、心 室内マッピングおよび高周波カテーテルアブレーション(Ablation )のため、経皮的に右室心 尖部、三尖弁 上部、左室内に電極カテーテルを配置した。プログラム刺激によりVT を誘 発した後、VT 中に心室内マッピングを行い、最早期興奮部位の決定およびdp の記録を行 った。VT 中に
verapamilを静注し、頻拍周期、心室波(V 波)とdp の時間(V ,dp 時間)、
dpとV 波の時間(dp ‐V 時間)の変化を観察した。VT 中にdp の記録部位でぺーシングを行い、
entrainment
現象を確認した。さらに、マッピングカテーテルの先端電極と左肩甲骨下に置 い た 対 極 板 問 で
25―
30Wの 高 周 波 通 電 を 施 行 し た 。 全 例 で プ ロ グ ラ ム 刺 激 によ り
verapamil一
VTが誘発され、VT 中に15 例で左脚後枝領域にdp が記録された。6 例において、
VT
中に
verapamilを静注したところ、頻拍周期、V ‐dp 時間、dp ‐V 時間は有意に延長した。
V
波から逆行性に伝導したHis 束電位までの時間(VH 時間)は洞調律時のHis 束電位からV 波までの時間(HV 時間)より短かった。全例で
V波の直前に、左脚電位(LB )が記録され、
12
例で
LBの 前に
dpが 記録 さ れた 。3 例で
VT中 にべ ーシ ン グを 行い 、
dpのentrainment 現象を確認し た。最早期興奮部位、dp 単独の記録部位、LB 単独の記録部位でAblation は 不 成功 であ った 。し かし、dp とLB の同時記録部位で
12例全例Ablation は成功した。こ の
VTは 、
VT中の
VH時 間が 洞 調律 時の
HV時 間よ り短いことから、左脚purkinjenetwork にりエントリー回路を有すると考えられる。VT 中のverapamil 静注で頻拍周期、V ‐dp 時間、
‑ 163―
明
秀 顕
秀
慶
口
田 畠
川
安 北
授
授 授
教
教 教
査
査 査
主
副 副
dp‑V
時間が延長したこと、dp のentrainment 現象を認めたことは、dp がこのVT に関連し、
verapamil
に感受性 を持っ電位であることを示唆する。また、dp 単独、LB 単独の記録部位 で
Ablationは成功せず、dp と
LBの同時記録部位 でのみAblation が成功したことから、dp 単独、
LB単独の記録部位はりエントリー回路の 必須な構成部位ではなく、LB と同時に記 録されるdp のみが、必須な構成部位を反映した電位であると考えられる。以上のことから、
LB
と同時に記録されるdp のみがりエントリー回 路の必須な構成部位すなわち緩徐伝導部 位を直接反映した電位であることが証明された。
口頭発表に際し、副査の安田教授からVerapamil‑VT を研究対象とした理由および他の
VT治療に対するこの研究の意義、臨床的背景や 心筋病変とdp との関係、今後の不整脈治 療の展望についての質問がなされた。副査の北 畠教授からこのVT のりエントリー回路が 存在するpurkinenetwork の解剖学的構造、薬物治療も含めた予後、他の特発性心室頻拍と の比較についての質問がなされた。主査の川口教授からdp が記録される部位と頻拍周期の 関係、心筋症と
VerapamillVTとの関連、
Verapamilが有効である機序、他の抗不整脈薬の 有効性についての質問がなされた。申請者は、Verapamil ‐VT の臨床経過・予後に関する報 告、VerapamilIVT におけるdp の報告、不整脈の 外科治療・内科治療の報告、左脚および
purkinjenetworkの解剖学的構造についての報告、他の特発性心室頻拍の機序についての報 告、
VerapamiトVT と基礎心疾患合併例の報告、抗不整脈薬のイオンチャネルに対する作用 機序の報告と自らのデータを引用し、妥当な回答を行った。
本研究は、Verapami ト
VTの心内膜マッピング で記録される種々の
dpのうち、LB と同時 に記録されるdp のみがりエントリー回路の緩徐 伝導部位を反映する電位であることをは じめて証明した。この結果は、Verapami トVT の機序解明および治療に応用されることが期 待される。
審査員一同は、Verapami ト
VTにおける拡張期電位に関する研究成果を高く評価し、申請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。
― 164―