• 検索結果がありません。

市販のミニトマトF1品種とその後代F2を利用してメンデルの法則を体験する

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "市販のミニトマトF1品種とその後代F2を利用してメンデルの法則を体験する"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

研 究 論 文

市販のミニトマト

F

1

品種とその後代

F

2

を利用して

メンデルの法則を体験する

猿舘 みのり

1)2)

・白井 賢太朗

1)3)

・秋田 薫

4)

・馬場 健一郎

4)

渡邉 学

1)

・中西 啓

1)

・由比 進

1) 1)岩手大学農学部附属寒冷フィールドサイエンス教育研究センター滝沢農場・2)株式会社グリーンメッセージ・ 3)自然養鶏場 春夏秋冬・4)京都府立南陽高等学校

Sarudate, M., Shirai, K., Akita, K., Baba, K., Watanabe, M., Nakanishi, A. and Yui, S. (2020) Experience Mendel’s laws using commercial cherry tomato F1 cultivars and their F2 progenies. Jpn. J. Biol. Educ. 62(1): 2–11. As cultivated tomatoes are autogamous (self-fertilizing) plants, we had cultivated commercial cherry tomato F1 cultivars ‘Orenji Kyaroru (Sakata Seed Co.), Aiko (Sakata Seed Co.) and Tyinkar Beru (Nanto Seed Co.)’ then got self-pollinated F2 seeds from the harvested fruits. We have cultivated 104, 70 and 41 F2 generation individuals respectively with 10.5 cm diameter small pots. In these F2 individuals, we observed clear genetically segregated characters of leaf colors with growth degree, flesh colors, pericarp colors. Especially in the case of ‘Orenji Kyaroru F2’, it showed three Mendel’s laws, i.e. the law of dominance, segregation and independence. We conclude that commercial cherry tomato F1 cultivars are good teaching materials for genetics because you cultivate them and can easily get F2 seeds which enable to cultivate sufficient quantity of individuals to observe genetic phenomena. In scientific course of a high school, they cultivated ‘Orenji Kyaroru F2’ and successfully observed genetic segregations. A survey by questionnaire showed that they have become more interested in genetics and understood Mendel’s laws more deeply. It is an advantage to use commercial cherry tomato F1 cultivars because you don’t need to cross or hybridize which is somewhat complicated procedure. Another advantage is that we can observe genetic segregation of leaf colors easily within two or three weeks after sowing. At the same time, it is a great disadvantage that we cannot use the parents of the F1 cultivars because they are never allowed to be taken out from the seed companies.

Key words: education, genetics, inheritance, teaching material, tomato

Author for correspondence: Susumu YUI, Iwate University, Takizawa, Iwate 020-0611, Japan

Ⅰ はじめに

遺伝は生命現象の本質であり,生物学だけでなく品種 改良など実用面の基礎にもなる重要な現象である.一方 で,生物の授業において遺伝の単元は内容が抽象的で理 解が難しいと言われている.遺伝の授業においては印刷 物の図表を利用する場面がほとんどであり,実物の観察 を授業に取り入れている例は少ない.そのため現象を実 感することが難しく,理解の程度によっては「遺伝は苦 手」と捉える生徒が一定数いると考えられている(森本 1994).この問題を解決するためには,遺伝現象を身近 に体験できる教材の開発が必要である.これまで遺伝現 象の観察にはメンデルのエンドウマメを始めキイロショ ウジョウバエ,シロイヌナズナなどが使用されている他, 様々な動植物を教材に用いることが提案されてきた(池 田・山口 1991,小池ら 2011,向・日詰 2013,安川・ 井上 2015).Williams & Hill(1986)は,ファストプ ランツと呼ばれるハクサイ,コマツナ,カブ等と同種の Brassica rapa L.に属する実験・遺伝教材用植物を開発 し,その種子は日本でも市販されている(ファストプラ ンツジャパン 2020).片山・佐野(2011)はファスト プランツについて,約 40 日で 1 世代が完了すること, 小型で栽培が容易であること,雑種第一代(F1)や雑種 第二代(F2)の種子を簡単に入手できること,などの長 所を列挙している.その一方,西野・前田(2011)は 中学校理科教師と生徒への調査から,ファストプランツ は全く知られていないため,親しみを持ちにくい教材で あることを指摘している.このように,遺伝の規則性を 見出すための教材の検討が数多く行われてきたが,それ ぞれに解決すべき点があって実際の教育現場への導入例 は少ない.より多くの人・教員・生徒が身近に体験でき る教材が開発されれば,遺伝への理解と興味の向上に繋 [連絡先]〒 020-0611 岩手県滝沢市巣子 1552 岩手大学附属寒冷 FSC 滝沢農場 由比 進 E-mail: yuis@iwate-u.ac.jp

(2)

がると考えられる. ナス科に属するトマト(Solanum lycopersicum L.) は南米アンデス山地高原地帯およびガラパゴス諸島原産 の野生種が古い時代に北米に渡ってメキシコで栽培化さ れ,その後約 500 年前にヨーロッパへ渡り,現在では 世界第一位の生産額を誇る野菜になっている(橘 1999, 由比訳 2004,由比訳 2020).日本では明治以降に栽培 が広がって品種改良も盛んに行われ(上村 1985,門馬 2001),国内においてもイチゴを抑えて生産額第一位の 野菜である(農水省 2019).池田(1995)は,遺伝教 材への適性を判断する際には,(1)材料の入手,(2) 系統の維持,(3)時間,(4)費用,(5)技術,(6)時期, 以上 6 点を検討する必要を述べている.同様に,柏柳 (1992)は,a.世代交代が早い,b.丈夫で育てやすい, c.入手しやすい,d.季節を問わず使用できる,e.保 存しやすい,f.調べたい形質が早い時期に現れる,g. 一つの対立する形質について観察・実験できる,h.対 立する形質の違いがはっきりしている,i.特別な実験 技術を必要としない,以上 9 点を挙げている.ミニト マトは小学校の生活科の教材に利用されていることから 明らかなように,入手や取り扱いの容易さなど多くの条 件を満たしている.また,個体間の隔離を行わない放任 採種でほぼ 100%自殖後代種子が得られる自殖性植物 で,自殖劣勢の発現が少なく,果実の色や大きさなどに 多様な変異が見られる.加えて,径 10 cm 程度の小さ なポットで栽培観察が可能で,さらには身近で食べられ るなど,遺伝教材への活用が期待されている(由比ら 2010,由比ら 2011).トマトの教材化に関して,向ら (2011)は不完全優性を示す子葉色によってヘテロ個体 を判別・選抜して次世代で分離の法則を観察させる例に ついて,Mam ら(2020)は矮性トマトを教材に用いる 例について論じている. 近年の品種改良の進展に伴い,店頭には色や形の異な る様々なトマトが並んでいる(サカタのタネ 2020,タ キイ種苗 2020).これら市販のトマト品種のうち,種子 カタログや種子袋に「○○交配」と表記されているもの はほぼすべてが F1(一代雑種)品種である.これらを 栽培して実った果実中の種子は自殖した F2世代である ため,これを栽培すれば果実形や果実色に興味深い遺伝 的分離が観察される場合がある.そこで本研究では,市 販のミニトマト F1品種から採種した F2に見られる遺伝 現象を例示し,それを高等学校の授業に取り入れた試み を紹介する.

Ⅱ 材料と方法

1.市販ミニトマト F1品種とその後代F2に見られる 遺伝 (1)実験場所 栽培実験は,岩手大学農学部附属寒冷フィールドサイ エンス教育研究センター滝沢農場(岩手県滝沢市)のガ ラス室および雨よけハウスで行った. (2)供試植物 市販されているミニトマト F1の 3 品種,すなわち果 肉が橙色で球形果実の「オレンジキャロル」(サカタの タネ),果肉が赤色で長卵形果実の「アイコ」(サカタの タネ),同じく果肉が赤色で長卵形果実の「ティンカー ベル」(ナント種苗)を供試した.本報告では,これら 3品種を「F1(元の品種)」と称する. (3)実験期間 2018年 3 月~ 12 月. (4)実験方法 1)ミニトマト F1(元の品種)の栽培と F2種子の採種 2018年 3 月 5 日に F1(元の品種)の種子を 50 cm × 35 cmの育苗用プラスチックトレーに 10 粒程度ずつ条 播きした.培土は三研園芸粒状培土(三研ソイル株式会 社)を約 5 cm の厚さに敷いた.播種と育苗は最低気温 10°C設定のガラス室で行った.本葉が 1 ~ 2 枚展開し た 4 月に各品種 3 個体ずつを,10 L の培土を詰めた 1/2000 aワグネルポット(直径 25 cm,深さ 30 cm, 容量約 15 L)に植え替えて栽培を続け,支柱立て,支 柱への誘引,脇芽かき等トマト栽培の通常管理(板木 2001)を随時行った.栽培に際しては異なる品種の間 に 1 m 程度の株間を確保したが,それ以外には交雑防 止のための隔離操作は行わなかった. 7月 17 日に品種ごとに完熟した果実を選んで収穫し た.果実からの採種は,農山漁村文化協会(2010)を 参考に行った.すなわち,果実内部からゼリー質に包ま れた F2種子を取り出してビーカーに入れ,ラップで密 閉して乾燥を防ぎ発酵(腐敗)させた.数日後にビーカー の内容物を取り出し,これを流水下でよく洗浄してゼ リー質を取り除いた F2種子を得た.さらに,種子伝染 するウィルス病を防除するためにリン酸 3 ナトリウム・ 12水和物(Na3PO4・12H2O)の 10%溶液に 20 分浸漬 した.浸漬後再び流水で洗浄してから新聞紙の上に F2 種子が重ならないように広げ,室内で数日間自然乾燥さ せた.十分に乾燥した F2種子はチャック付きポリ袋に 入れ,冷暗所で保管した. 2)ミニトマト F2世代の栽培と形質調査 採種後間もない 8 月 2 日に「オレンジキャロル F2, アイコ F2,ティンカーベル F2」それぞれについて約 100粒ずつと F1(元の品種)の数粒ずつとを 1)とほ ぼ同様の方法で無加温・窓開放ガラス室において播種・ 育苗した.育苗後は個体数を多く扱うために径 10.5 cm のポリポット(容量 570 mL)へ鉢上げ(移植)した. 栽培管理が可能な上限数を考慮して「オレンジキャロ ル F2」104 個体,「アイコ F2」70 個体,「ティンカーベ ル F2」41 個体,F1(元の品種)の各 3 個体ずつ,合計 224個体について鉢上げを行った.北東北の秋以降の 温度低下は早いため,9 月下旬からは最低気温 10°C に 設定したガラス室内で栽培を行った.調査項目は,F2 集団内の個体によって明らかな遺伝的分離が観察され た葉色および生育程度,完熟時の果肉色,果実形,果 皮色,以上に重点を置いた.また,個体ごとに標準的

(3)

な果実を 1 個収穫し,萼片(ヘタ)を外して写真撮影 を行った. 2.「オレンジキャロル F2」種子を遺伝教材に用いた 高校授業での実践 (1)実験場所 京都府立南陽高等学校サイエンスリサーチ科の 2 年 生 6 名が,探究活動の授業「サイエンスⅡ」を利用して, 実験に取り組んだ.栽培実験は,理科室の人工気象器お よび校舎の軒下(屋外)で行った. (2)供試植物 前述の岩手大学における実験で,市販のミニトマト F1(元の品種)「オレンジキャロル」から採種した後代 系統「オレンジキャロル F2」を用いた. (3)実験期間 2019年 4 月~ 8 月. (4)実験方法 2019年 4 月 11 日に F2種子(一晩,吸水させた種子) をポリポット(直径 7.5 cm,深さ 6.5 cm)に深さ 5 mm程度にて,2 粒ずつ播いた.培土はバーク堆肥含有 培土(国華園)を使用し,ポットは全部で 20 個準備した. 播種後は 25°C に設定した人工気象器に入れ,発芽まで は暗条件で,発芽後は一日あたり 12 時間 45 分の日長 で管理した.5 月 24 日に本葉が 1 ~ 2 枚展開している ことを確認し,発芽した 29 個体のうち 18 個体について, 屋外のプランター(縦 72 cm,横 46 cm,深さ 25 cm, 容量約 40 L)に,1 つのプランターあたり 6 株の苗を 植えた.栽培期間中,支柱立て,支柱への誘引,脇芽か き等の管理を随時行った.7 月中旬から 8 月中旬に完熟 した果実を収穫した. 形質調査は,葉色,生育程度,果肉色,果実重,果汁 の糖度,について行った.糖度測定には,ポケット糖度 計 PAL-S(株式会社アタゴ)を用いた. 実験終了後,参加した高校 2 年生 6 名に,図 1 に示 したアンケートを行った.

Ⅲ 結果

1.市販ミニトマト F1品種とその後代F2に見られる 遺伝 北東北の 3 月に播種を行ったため育苗中のガラス室 内の最低気温は一時的に設定を下回る 5°C 程度になる こともあったが,おおむね順調に生育した.鉢上げ後も 順調に生育・着果して播種後 4 ヵ月の 7 月には F1果実 の収穫に至った.容量 15 L の比較的大きいポットで栽 培したため,数百~千粒以上の F2種子を得ることがで きた. 引き続いて 8 月に播種を行った 3 種類の F2系統のう ち,「オレンジキャロル F2」では,播種後 2 週以降に生 育旺盛な緑色の個体(以下,緑)と小型で淡緑色の個体 (以下,淡緑)の 2 種類の出現が確認された.両者は図 2 に示したように,容易に識別できる形質であった(図 2 の写真は,別の実験において播種・栽培したもの). その数は全 104 個体のうち,緑 86 個体,淡緑 18 個体 であった.播種から約 3 ヵ月の 11 月に収穫に至った「オ レンジキャロル F2」完熟時の果肉色については,全 104個体が赤 24 個体,橙 57 個体,黄 23 個体に分離し た(図 3).その際,一部の個体で果肉色判定が難しい 図1 高等学校の授業において「オレンジキャロル F2」の栽培 を行った後のアンケート 図2 「オレンジキャロル F2」における葉色と生育程度の遺伝 的分離.左:小型で淡緑色の個体 右:生育旺盛で緑色の個体. 2018.10.29播種  2018.12.6 撮影.

(4)

場合があったが,果皮を取り除くことによってほぼ確実 に果肉を 3 色に区別することができた.さらに,未熟 果実の色,果実の大きさ,葉幅,葉長についても遺伝的 分離と考えられる変異が観察されたが(データ略),上 記 2 形質のような明確な質的分離を示すものではなく, 連続的な量的変異であった. 「アイコ F2」では,様々な果実形が観察された(図 4). 元の F1品種「アイコ」の果実と同じ長卵形のほか,「オ レンジキャロル」のような球形,果実の尻部分が尖った 卵形,唐辛子のような細長型などの連続的な分離が見ら れた. 「ティンカーベル F2」においても連続的な分離を示す 様々な果実形が出現し,「アイコ F2」より果実先端が尖 る個体も見受けられた(データ略).また,果皮色につ いては橙色と透明の質的な分離が観察された(図 5). この果皮色は全 41 個体のうち,橙色 33 個体,透明 8 個体であった. 2.「オレンジキャロル F2」種子を遺伝教材に用いた 高校授業での実践 高等学校における「オレンジキャロル F2」の栽培実 験においても,葉色と生育(淡緑で小型あるいは緑で旺 盛)および完熟時の果肉色(黄または赤)に分離が観察 された他,果肉色と果実重あるいは糖度の間に相関が見 出され,これは遺伝的な連鎖である可能性があった.こ れらの結果をとりまとめて,実験を行った高校生達が「京 都サイエンスフェスタ」にて「オレンジキャロル(ミニ トマト)F2の栽培研究」ポスター発表を行った(図 6). 実験終了後の同高校サイエンスリサーチ科 2 年生 6 名 に対して,「この活動に取り組む前と後との,あなたに ついて教えてください」の質問を行い,遺伝現象への興 味とメンデルの法則(優性,分離,独立)についての理 図3 「オレンジキャロル F2」における果肉色の遺伝的分離(104 個体中,赤 24 個体,橙 57 個体,黄 23 個体) 図4 「アイコ F1(上段)」とその自殖後代「アイコ F2(下 2 段)」 に見られる果実形の連続的・量的な遺伝的分離 図5 「ティンカーベル」F2における果皮色の遺伝的分離(41 個体中,橙色 33 個体,透明 8 個体) 図6 京都府立南陽高等学校による「京都サイエンスフェスタ」 発表ポスター

(5)

解を調べた.その結果,生徒の興味や理解が高まったこ とが示された(表 1).

Ⅳ 考察

1.市販ミニトマト F1品種とその後代F2に見られる 遺伝 「オレンジキャロル F2」の葉色について,調査した 104個体の中に緑 86 個体と淡緑 18 個体が出現したが (図 2),この出現個体数の分離比が 3:1 であると仮定 した χ2検定を行ったところ,仮定と一致する確率(0.05 < p < 0.10)が得られ,メンデルの「優性の法則」と「分 離の法則」を確認することができた(表 2).今回は淡 緑の個体が少なめであったが,淡緑個体は生育が遅いた め淘汰されやすい可能性があり,深播きを避けるなど良 好に発芽する条件設定が重要である.さらに果肉色につ いては,同じく 104 個体の中に赤 24 個体,橙 57 個体, 黄 23 個体が出現し,分離比が 1:2:1 であると仮定し た χ2検定で 0.50 < p < 0.75 が得られ,不完全優性の分 離であることが確認された(表 3).また,上記の 2 形 質が異なる染色体上に座乗すると仮定した理論分離比の (緑・橙):(緑・黄):(緑・赤):(淡緑:橙):(淡緑・黄): (淡緑・赤)= 6:3:3:2:1:1 に対して χ2検定を行っ た結果は 0.25 < p < 0.50 であった(表 4).今回の供試 個体数は 104 個体と必ずしも十分な数ではなかったが, 葉色と果肉色には「独立の法則」が成り立つ可能性が高 いと考えられた. 「オレンジキャロル F2」に見られる緑個体と淡緑個体 は生育程度=植物体の大きさも異なり,土を詰めたイチ ゴパックに数 10 粒播種して 25°C 前後の適温下で栽培 すれば,播種後 2 ~ 3 週間で確実に判別できる.この 方法は,学校の授業実験にそのまま利用することができ る.果肉色に関しては,昼 - 夜温が 25-18°C 程度の適 温下で栽培すると播種から約 3 ヶ月で着色し,遺伝的 分離が容易に確認できる.果肉色は葉色より時間がかか るものの,植物を観察しつつ最後に食べる楽しみを抱き ながら育てる遺伝教材になり得る. なお,南陽高等学校における実験や岩手大学の追加で 行った実験では,「オレンジキャロル F2」集団内で果肉 が黄色の個体と橙色の個体とを判別できない場合があっ た.これらはいずれも着色が高温下で行われていた.一 方,本報告の 1.では着色は 10 ~ 12 月の気温 10 ~ 25°C程度のガラス室内で進んでいた.トマト果実の着 色は,主にカロテノイド系色素によって行われる.赤色 はリコペン,黄色はキサントフィルや β-カロテンの含 有量に依存しており,これらの組み合わせによって果肉 色が決まる.また,トマト果実の着色におけるカロテノ イド色素の生成には,温度と光が深く関係している.ト マトの赤い色素であるリコペンの生成は 19 ~ 24°C で 促進され,10°C 以下および 30°C 以上では生成が抑制 される.また,黄色や橙色の色素である β-カロテンは 8 ~ 35°C と生成温度の幅が広く,リコぺンと異なって 30°C以上でも生成される(高橋・中山 1962).加えて β-カロテンとキサントフィルは,温度の他に光量が多い ほど生成量が増加する(高橋・中山 1959).本報告 1. の「オレンジキャロル F2」は,北東北の冷涼で日照量 も少なくなっていく 10 ~ 12 月が着色期であったため, β-カロテンおよびキサントフィルの生成量が少なく,果 肉が黄色の表現型が見られたと考えられる.反対に,追 加で行った実験と南陽高校の実験は夏期に栽培が行わ れ,着色期の気温がリコペンや β-カロテンが生成され やすい範囲であり,日照時間も十分であったことからカ ロテノイド色素の生成が活発に行われ,遺伝子型では黄 色果肉の個体が橙色の発現を示したのではないかと推測 される.今後,「オレンジキャロル F2」の果肉色の遺伝 的分離を観察する際に安定した結果を得るためには,気 温や日照の条件を明らかにしておく必要がある.一方で, この現象は遺伝と環境の相互作用を示す好例と捉えるこ ともできる.すなわち,登熟期の温度によって果肉色が b) メンデルの法則(優性、分離、独立)についての理解. よく理解 している している理解 あまり理解 していない まったく理解 していない 【取り組みの前】 0 4 2 0 【取り組みの後】 3 3 0 0 【前後の変化】a (+2ランク:1人)(+1ランク:3人)(変わらず:2人) a :ウィルコクソンの検定によって 5% 水準で有意差あり a) 遺伝現象への興味はどうですか. とてもある ある あまりない まったくない 【取り組みの前】 0 2 3 1 【取り組みの後】 2 3 1 0 【前後の変化】a (+2ランク:1人)(+1ランク:4人)(変わらず:1人) a :ウィルコクソンの検定によって 5% 水準で有意差あり 表1 「オレンジキャロル F2」栽培実験に関するアンケートの 結果 表 現 型 緑 淡緑 F2の理論分離比 3 1 F2期待値(n=104) 78 26 観 測 値 86 18 χ2 値 0.82 2.46 χ2値の合計 3.28 自由度(階級-1) 1 p 値 0.05 < p < 0.1 表2 「オレンジキャロル F2」の葉色に見られる優性の遺伝 表 現 型 赤 橙 黄 F2の理論分離比 1 2 1 F2期待値(n=104) 26 52 26 観察値 24 57 23 χ2 値 0.15 0.48 0.35 χ2値の合計 0.98 自由度(階級-1) 2 p 値 0.5 < p < 0.75 表3 「オレンジキャロル F2」の果肉色に見られる不完全優性 の遺伝

(6)

遺伝子記号 G:葉色緑 g:葉色淡緑 Y:果肉黄色 R:果肉赤色 遺伝子型:表現型 GG:葉色緑 Gg:葉色緑 gg:葉色淡緑 YY:果肉黄色 YR:果肉橙色 RR:果肉赤色 親系統の遺伝子型 GGYY ggRR ( または GGRR  ggYY ) F1の遺伝子型 GgYR F2の遺伝子型 ♀\♂ GY GR gY gR GY GGYY GGYR GgYY GgYR GR GGYR GGRR GgYR GgRR gY GgYY GgYR ggYY ggYR gR GgYR GgRR ggYR ggRR 表 現 型 緑橙 緑黄 緑赤 淡緑橙 淡緑黄 淡緑赤  F2の理論分離比 6 3 3 2 1 1 F2期待値(n=104) 39 19.5 19.5 13 6.5 6.5 観察値 46 19 21 11 4 3 χ2 値 1.26 0.01 0.12 0.31 0.96 1.88 χ2値の合計 4.54 自由度(階級-1) 5 p 値 0.25 < p < 0.50 表4 「オレンジキャロル F2」の葉色と果肉色に見られる独立遺伝 変化するのであれば,オレンジキャロルの果肉色の遺伝 は適温下で登熟させれば「ホモ型が黄色,ヘテロ型が橙 になる不完全優性」,高温下で登熟させると「ホモ型, ヘテロ型とも橙色になる優性」と判定されることになり, 同じ遺伝子型であっても環境によって発現が変化する実 験と位置付けることも可能であろう. 「ティンカーベル F2」の果皮色について,調査した 41 個体の中に橙 33 個体と透明 8 個体が出現した(図 5). この出現個体数の分離比が 3:1 であると仮定した χ2 定を行ったところ,仮定と一致する確率(0.25 < p < 0.5) が得られた(表 5).これは由比ら(2010)の結果と同 様であり,メンデルの「優性の法則」と「分離の法則」 が成立することが確認された.トマトの外観の果実色は 果肉色と果皮色との組み合わせで決まる(望月 2015). 赤系品種は果肉色が赤く果皮色が橙であることから,外 観の果実色は赤となる.桃色系品種は果肉色が赤,果皮 色は透明(白)であることから,透明の果皮から赤色の 果肉が透けて桃色となる.「ティンカーベル F2」の果肉 色は赤であり,果皮色は橙:透明= 3:1 であったこと から,外観の果実色も赤系個体:桃色系個体= 3:1 であっ た.この結果から,F1品種である「ティンカーベル」 の両親には赤色系統と桃色系統とが使用されていたと推 測される.なお,果皮色の分離は外観だけではやや判定 が難しいこともある.図 5 のように収穫した果実から 果皮をはがせば,間違えることなく判定することができ る. 「アイコ F2,ティンカーベル F2」では球形~細長型ま で様々な果実が観察され,これらは連続的な分離を示す 量的遺伝形質であった(図 4).生物には,教科書で取 り上げられる非連続的・質的な遺伝的分離だけでなく連 続的・量的な分離がしばしば観察されること,加えて F1の果実形がほぼ同じ長卵形の 2 品種であっても後代 F2には異なった果実形の個体が出現する場合があるこ となどは,遺伝をより深く理解するための一助となるこ とであろう. 2.「オレンジキャロル F2」種子を遺伝教材に用いた 高校授業での実践 表1 のアンケート結果に示したように,遺伝への興 味については 6 名中 5 名が,メンデルの法則に対する 理解については同 4 名が向上したと答えており,実験 前と後の結果にはウィルコクソンの検定(石間・橋口 1984)によって 5%水準で有意差が認められた.「1) 今回の活動はどうでしたか?」の質問に対する回答を 表6 に示した.「遺伝の法則を実際に観察できた,トマ トを種子から育てて調査研究した後で食べる楽しみも あった」など,6 名中 5 名が「楽しかった~とても楽し かった」と肯定的な回答であった.表 7 に示した「5) ミニトマトの教材化の有用性は?」との質問に対しての 回答では,「果実や葉の形質の違いが容易に観察できた, 表 現 型 橙 透明 F2の理論分離比 3 1 F2期待値(n=41) 30.75 10.25 観察値 33 8 χ2 値 0.16 0.49 χ2値の合計 0.66 自由度(階級-1) 1 p 値 0.25 < p < 0.5 表5 「ティンカーベル F2」の果皮色に見られる優性の遺伝

(7)

身近な野菜で興味を持ちやすい,簡単に育てられて食べ られる」などの肯定的な意見が 3 名であった.一方で,「メ ンデルの法則が成り立たない場合があった,果実の黄色 と橙色の判別ができなかった」の 2 つの意見は,前述 の果肉色の不完全優性が観察できなかった現象を指して いると考えられる.また,「扱った個体数が少なかった ために正確な分離比を求められなかった」との的確な指 摘もあり,より多数の個体を扱える工夫も必要と考えら れた.さらに,表 8 の質問「11)その他,気づいたこ とがあれば教えてください」等に対する回答には,「もっ と深く探究してみたい,遺伝が苦手だったが理解が進ん だ,遺伝だけでなくいろいろな知識が身に付いた」など, 苦労しながらも実験結果が得られたことに対する満足感 を表明する意見が多かった.中には否定的な文脈で「教 科書に載っているままであった」との意見もあったが, 教科書通りの結果を実際に確認できたことの意義が理解 されればよいと考えられる. 今回は種子の準備が間に合わなかったため F1(元の 品種)である「オレンジキャロル(F1)」を実験に入れ ていなかったこと,さらに F2種子が岩手大学で準備し たものであったこと,以上 2 点は改善すべきと考えて いる.すなわち,自分達で栽培した F1の橙色果実から F2を採種して,それを播いて表現型の遺伝的分離が確 認されれば教育効果はさらに高まると期待される.一方 で,学校の授業に取り入れる実験にはある程度の手軽さ と期間の短さが求められる.上記の方法で F1を栽培し て F2を採種し,これを栽培して遺伝的分離を観察する までには,最短でも半年が必要である.この欠点を補う ため,表 9 に示すような短期間(最低 2 ~ 3 週間,長 くて 3 ~ 4 ヵ月)で遺伝的分離を観察できる方法を考 えた.すなわち,最初の年だけは事前に準備した F2と F1とを播種し,播種後 2 ~ 3 週間で葉色の分離を観察 する.現在の学習指導要領で中学生に求められている一 遺伝子雑種の分離の法則のみを観察するのであれば,こ の段階(葉色の観察のみ)で実験を終了させてもよい. その場合は,図 7 に示したようにイチゴパック程度の 栽培容器で済ませることができる.これは播種後 16 日 目の写真であるが,葉色の分離を確実に観察することが できた.その後 3 ヵ月程度の栽培を続けて F1と F2の完 熟果実の果肉色の分離を観察し,さらに F1の完熟果実 から F2種子を採種する.完熟果実まで観察する場合は, 生育に伴ってイチゴパックから径 10 cm 以上のポット に 1 個体ずつ移植するか,最初からポットやプランター で栽培するのがよい.得られた F2種子は冷蔵庫で保存 し,翌年の生徒は先輩達が採種した材料で F2遺伝的分 離の実験を行う.並行して F1植物を栽培して翌々年の 後輩達のための F2を採種する(以上のサイクルを繰り 返す).大浦(2010)が報告している小学生によるトマ トの品種改良では,食べ物との認識しかなかったトマト 果実からタネ取りをすることによって生命のつながりを 強く意識するようになったことが紹介されている.この 例のように,次世代を採種して後輩に手渡していくこと によって,生命についてより深く学び理解するきっかけ が得られると期待される.

Ⅴ おわりに

本研究によって,市販のミニトマト F1品種から採種 した後代の F2は,遺伝を観察する教材に有効利用でき ることが示された.この方法の最大の利点は,市販品種 自体が交配種=一代雑種(F1)であるため,自殖性植物 であるトマトの場合その果実から種子を得れば,交配作 業を行うことなく F2の遺伝現象を観察できる点である. 本報告と同じように,村田(1990)と小林(1993)は 市販のトウモロコシ F1品種の収穫物を利用して遺伝学 習を行った事例を紹介している.ただし,これらの報告 にも述べられているようにキセニア現象である点に注意 回 答 そ の 理 由 とても楽しかった ・授業で習うだけだった遺伝の法則を,観察 できた. ・研究するだけでなく,収穫して食べる楽しみ もあった. 楽しかった ・一からトマトを作り,収穫まで育てること ができた. ・トマトの成長を確認できた. ・水やりをしてトマトの成長を感じられた. あまり楽しくなかった ・班の方向性が定まっていなかった. 表6 「オレンジキャロル F2」質問項目1)・2)に対する回答 例(要旨) 回 答 そ の 理 由 とても感じる ・果実や葉の色の違いがはっきりとしていて, 観察が容易. ・身近な野菜なので,遺伝学を学ぶにあたって 興味を持ちやすい. 感じる ・簡単に育てることができて,食べられる. 果実色識別が難しい時もあった. あまり感じない ・すべてにおいてメンデルの法則が成り立って いるわけではなかった. ・遺伝の法則が見られたが,数が少なかった ので,教材化は難しい. まったく感じない ・期間が長くとれなかったため,果実の黄色 と橙色の判別ができなかった. 表7 「オレンジキャロル F2」質問項目5)・6)に対する回答 例(要旨) ・他の形質や栽培条件(NPK肥料,生体重と乾物重に分けて調査) などにも取り組みたい. ・メンデルの法則が見られたが,ばらつきをおさえる必要がある. ・遺伝に苦手意識があったが,実際に測定して結果を考えることで 理解が進んだ. ・遺伝学についてだけでなく,その理解に必要な他分野の知識も得る ことができた. ・教科書に載っているままであった. ・ポスター発表のために結果を考察したため,より理解することが できた. ・初めは授業で学んだ知識しかなかったが,自分たちで調べていろんな 知識が身に付いた. ・糖度のわずかな差でも,食べると甘さが違っておもしろかった. ・発表のまとめで,統計処理(t検定)が難しすぎた. 表8 「オレンジキャロル F2」質問項目11)等に対する回答例 (要旨)

(8)

する必要がある. ここまでに示したように,市販の F1品種を遺伝の授 業に使う有用性は明らかであるが,この方法では F1の 両親系統を実験に加えることはできない.それは,品種 育成とその販売を生業にしている種苗会社にとって,F1 品種の親系統は門外不出の何にも代えがたい価値を持つ 財産だからである.このように,遺伝現象の実験に重要 である両親を観察できないことは,市販 F1品種を用い る方法の最大の欠点といえる. 国公立研究機関や民間種苗会社など農業現場で用いら れる実用品種の育成に取り組む機関においては,既存品 種から後代を採種して新たな品種開発に用いることが日 常的に行われている.マスコミではゲノム編集や遺伝子 組み換え等の最新情報がさかんに取り上げられるため, 「品種改良」のほとんどがこれら先端技術で行われてい るとの誤解が社会に広がっていることが懸念される.本 報告のような現象を目にすれば「みじかな材料にメンデ ルがいた(村田 1990)」ことに気づき,古典的ともいえ る遺伝学がいかに品種改良に貢献しているかについての 理解も深まると期待している. 日本には「種苗法」という法律があり,これに基づい て登録された品種には知的所有権が認められる.一例を 挙げると,著名なイチゴ品種である「あまおう」は福岡 県によって品種登録されており(登録名は,福岡 S6 号), 登録後一定の年数の間は許可なく種苗を販売することが 許されない.また,近年はトマトの登録品種について自 家増殖が認められなくなっている(農水省 2020.6,農 山漁村文化協会 2019a,農山漁村文化協会 2019b).あ る品種が登録されているか否かについては,農水省の ホームページ(2020.4)で検索・確認することができる. 一方で,今回の実験に用いた 3 種類のミニトマト F1品 種は,いずれも品種登録されずに販売されている.これ は,本報告でも示したように F2以降では後代の遺伝的 分離によって F1と同じ形質を持つ個体が出現すること はなく,法律で知的所有権を守る必要性が低いためであ る.このように,品種登録されていない品種から後代種 子を得て栽培することに関しては通常種苗法上の問題は ない.ただし,品種登録されていなくても「この品種を 交配や研究目的で利用しないこと」等と明記して販売さ れている品種もある.その場合は本報告のような利用を 避けるべきであろう.

付記

本研究論文の主要部分は,猿舘(2020)「野菜の有機 質資材および遺伝教材の開発(2019 年度岩手大学大学 院総合科学研究科農学専攻植物生命科学コース修士論 文)」が元になっている.また,白井(2020)「メンデ ルの法則を観察するためのトマト教材系統の開発(2019 年度岩手大学農学部卒業論文)」においても補足的な実 験を行った.

謝辞

ミニトマト F2の実験栽培に取り組んで夏休みの間も 世話を欠かさず,立派なポスター発表をまとめ,さらに は真摯なアンケート回答を寄せてくれた,南陽高等学校 サイエンスリサーチ科 2 年生 6 名の諸氏に,深甚なる 年・月 行 う こ と  実 験 材 料 播種から観察までの時間a  扱う個体数   備  考 【1年目】 4月上旬   播 種 F1(市販のもの) F2(事前に準備) (播種・実験開始) F1:1~5個体 F2:多い方がよい(最低 10 個 体,できれば 50 個体以上) 株間 1 ~ 2cm くらいに密植できる イチゴパックに播種してもよい 4月下旬   葉色の遺伝分離を観察 2~3週間 (平均気温 20 ~ 25℃) ここで終了してもよい (  続  け  て  ,  栽  培  ) 径 10cm 以上のポットに 1 個体ずつ, あるいはプランターに数個体ずつ移植 (最初からポットやプランターでもよい) 7~8月   完熟果肉色の遺伝分離を観察   F1の果実から,F2種子を採種 3~4か月 (平均気温 20 ~ 25℃) F1種子・F2種子とも,翌年の実験用に 乾燥剤を入れた密閉容器で冷蔵庫保存 【2年目】 4月上旬   播 種 F1(市販のもの) F2(前年に採種したもの) (1年目と同じ)   (1年目と同じ) (1年目と同じ) ( 播 種 以 降 は , 1 年 目 と 同 じ ) a : 平均気温 20 ~ 25℃で栽培した時の目安.15℃以上であれば生育するが,観察までの時間は長くなる. 表9 市販のミニトマト F1品種とその後代F2を用いた遺伝的分離実験の時間経過例 図7 イチゴパックで「オレンジキャロル F1」および自殖後代 「オレンジキャロル F2」を栽培した様子(2020.7.21 播種,播 種後 16 日目)

(9)

感謝の念を捧げる.また,本報告をまとめるにあたり, 名古屋市立向陽高等学校の伊藤政夫教諭と慶應義塾普通 部の谷口真也教諭には,生物教育現場からの貴重なご意 見をいただいた.なお,本研究の一部は公益財団法人 日本教育公務員弘済会の本部奨励金を得て実施した.こ こに記して謝意を表する.

文献

池田秀雄(1995)遺伝と変異における教材の開発. SCIRE中学校理科教育実践講座 6 植物の種類と生活, pp.259–262.ニチブン. 池田秀雄・山口章子(1991)植物材料を用いた遺伝の 実験.生物教育 31(1): 40–41. 石間紀男・橋口渉子(1984)分布によらない検定法. 奥野忠一ら『応用統計ハンドブック』pp.68–70.養 賢堂. 板木利隆(2001)カラー版家庭菜園大百科.pp.16–21. 家の光協会. 上村昭二(1985)トマト.清水 茂監修『訂正追補  野菜園芸大事典』pp.878.養賢堂. 柏柳 修(1992)マツバボタンの教材化―観察・実験 を通した「遺伝」の学習―.理科の教育 41(2): 48– 50. 片山雄介・佐野(熊谷)史(2011)教育用モデル植物ファ ストプランツの遺伝教材としての有用性.群馬大学教 育実践研究 28: 71–74. 小林廣司(1993)遺伝教材(ピーターコーン)の実践. 理科の教育 42(10): 711–714. 小池達士・山口峰松・向 平和・日詰雅博(2011)中 学校における生徒が栽培や飼育を楽しみながら行う遺 伝実験の実践報告.愛媛大学教育実践総合センター紀 要 29: 7–8.

Mam, C., Yun, K., Phen, S., Noda, Y., Funai, H., Iwaya-ma, T. and Kato, J. (2020) The use of dwarf tomato cultivar for genetic and physiology study applicable for school education. Int. J. Biol. Educ. 2(1): 15–21. 望月龍也(2015)Ⅵ果実の発育と成熟の生理.トマト 大辞典.pp.143–144.農山漁村文化協会. 門馬信二(2001)トマト.西 貞夫監修『野菜園芸ハ ンドブック』pp.548–570.養賢堂. 森本弘一(1994)心に残る理科授業の傾向.学校教育 研究 5: 1–17. 向 平和・日詰雅博(2013)中学校「遺伝の規則性」 に関する実験教材生物.生物教育 53(3): 119–120. 向 平和・佐藤崇之・大鹿聖公・竹下俊治(2011)不 完全優性の形質を有する植物を用いた遺伝の実験・観 察教材の開発.生物教育 52(3): 77–83. 村田 章(1990)トウモロコシの胚乳(種子)の色を使っ た遺伝の実験.理科教室 33(6): 44–48. 西野秀昭・前田紗綾香(2011)ファストプランツとメ ダカの遺伝教材としてのコラボレーション効果に関す る研究―「遺伝の規則性と遺伝子」単元での「分離の 法則」の授業実践及び教員研修.科学教育研究 35 No.1. 農林水産省(2019)野菜の生産・消費動向レポート平 成 31 年 2 月農林水産省生産局園芸作物課.https:// www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/yasai/attach/pdf/ index-67.pdf(アクセス 2020.4.8) 農林水産省 品種登録ホームページ品種登録データ検 索.http://www.hinshu2.maff.go.jp/vips/cmm/ apCMM110.aspx?MOSS=1(アクセス 2020.4.9) 農林水産省 種苗法の一部を改正する法律案について. https://www.maff.go.jp/j/shokusan/shubyoho.html (アクセス 2020.6.18) 農山漁村文化協会(2010)特集 1 オドロキいっぱい! マイ野菜.食農教育 73: 6–9. 農山漁村文化協会(2019a)種苗法と自家増殖の話.現 代農業 98(2): 78–81. 農山漁村文化協会(2019b)種苗法「農家の自家増殖原 則禁止」に異議あり!現代農業 98(2): 296–299. 大浦佳代(2010)オンリーワンのオリジナル品種をつ くる.食農教育 2010 年 3 月号 : 42–47.http://www. ruralnet.or.jp/syokunou/201003/01_2.html(アクセ ス 2020.6.29) 橘みのり(1999)トマトが野菜になった日.pp.55–90, 223–227.草思社. 高橋敏秋・中山昌明(1959)トマト果実の着色に関す る研究(第 3 報)果実の色素含量に及ぼす光線の影 響について.園芸学研究 28(3): 165–169. 高橋敏秋・中山昌明(1962)トマト果実の着色に関す る研究(第 8 報)色素含量におよぼす貯蔵温度の影響. 園芸学研究 31(4): 325–328.

Williams, P. H. and Hill, C. B. (1986) Rapid-cycling pop-ulations of Brassica. Science 232(4756): 1385–1389. 安川隆司・井上喜博(2015)ショウジョウバエの遺伝

学を利用した「メンデル遺伝の体系的な理解」と「独 立・連鎖・組換えの学習の定着」につなげる教材の開 発.生物教育 55(2): 74–83.

由 比  進( 訳 )(2004) ト マ ト(Long, J. (2000) The Cambridge World History of Food, edited by Kiple, K.F. and Ornelas, K.C.)ケンブリッジ世界の食物史大 百科事典 2,pp.362–371.朝倉書店.

由比 進(訳)(2020)遺伝と育種(van Heusden, S. and Lindhout, P. (2018) Tomatoes 2nd Ed., edited by Heuvelink, E.)トマト 100 トンどりの新技術と理論, pp.37–70.農山漁村文化協会. 由比 進・片岡 園・本城正憲(2010)遺伝教材に適 した栽培植物の選定―トマトの例―.生物教育 51: 9–20. 由比 進・片岡 園・本城正憲(2011)トマトの遺伝 現象と品種改良の学習.生物教育 51(3)(表紙および 表紙裏掲載)

(10)

本文中で参照した資料

ファストプランツジャパン.ファストプランツ.www. fastplants.jp/(アクセス 2020.4.9) サカタのタネ.商品情報「ミニトマト」.https://www. sakataseed.co.jp/product/search/result.php?page=1 (アクセス 2020.4.16) タキイ種苗.タキイネット通販「ミニトマト」.https:// shop.takii.co.jp/product/catalog/kw/ミニトマト(ア クセス 2020.4.16) (受付 2020/8/19:受理 2020/11/5)

市販のミニトマト F

1

品種とその後代 F

2

を利用してメンデルの法則を体験する

猿舘 みのり1)2)・白井 賢太朗1)3)・秋田 薫4)・馬場 健一郎4)・渡邉 学1)・中西 啓1)・由比 進1) 1)岩手大学農学部附属寒冷フィールドサイエンス教育研究センター滝沢農場・2)株式会社グリーンメッセージ・ 3)自然養鶏場 春夏秋冬・4)京都府立南陽高等学校 トマトは自殖性植物であることから,市販のミニトマト F1品種「オレンジキャロル(サカタのタネ),アイコ(サカ タのタネ),ティンカーベル(ナント種苗)」を栽培して収穫した果実から,自家受精(自殖)した F2種子を得た.こ の F2世代を径 10.5 cm の小ポットでそれぞれ 104 個体,70 個体,41 個体栽培したところ,葉色および生育,果肉色, 果皮色など,複数の形質について簡単に識別できる遺伝的分離が認められた.特に「オレンジキャロル F2」ではメン デルの優性の法則,分離の法則,独立の法則のすべてを観察することができた.このように,市販のミニトマト F1品 種を普通に栽培して収穫した果実から種子を得れば,遺伝的分離を観察できる F2種子が交配操作なしで得られる上, 多数個体を栽培して分離を観察することも比較的容易であることが明らかになった.この「オレンジキャロル F2」を 利用した実験に高校生が取り組み,栽培に成功して遺伝的分離を観察することができた.また,実験後のアンケート結 果から,遺伝への興味とメンデルの法則への理解が有意に向上していた.このように,市販のミニトマト F1品種を利 用して遺伝法則を体験する方法は交配操作なしで容易に行える長所があり,「オレンジキャロル F2」についての葉色の 遺伝的分離だけであれば播種後 2 ~ 3 週の短期間で観察することが可能である.一方で,遺伝観察の基本である両親 系統を入手することができないことはこのような手法の問題点であり,限界でもある.

参照

関連したドキュメント

本製品はFCC規則パート15のBクラスデジタルデバイスに対する制限を遵守しているかを

注:一般品についての機種型名は、その部品が最初に使用された機種型名を示します。

本装置は OS のブート方法として、Secure Boot をサポートしています。 Secure Boot とは、UEFI Boot

編﹁新しき命﹂の最後の一節である︒この作品は弥生子が次男︵茂吉

市民的その他のあらゆる分野において、他の 者との平等を基礎として全ての人権及び基本

生活のしづらさを抱えている方に対し、 それ らを解決するために活用する各種の 制度・施 設・機関・設備・資金・物質・

食品 品循 循環 環資 資源 源の の再 再生 生利 利用 用等 等の の促 促進 進に に関 関す する る法 法律 律施 施行 行令 令( (抜 抜す

 Rule F 42は、GISC がその目的を達成し、GISC の会員となるか会員の