熊本大学学術リポジトリ
鋼構造物の変形性能・エネルギー吸収能力の評価基 準に関する一考察
著者 小川, 厚治
雑誌名 部材の耐力劣化域を考慮に入れた鋼骨組の耐震安全
性評価基準に関する研究
ページ 25‑33
発行年 1996‑03
URL http://hdl.handle.net/2298/9768
鋼構造物の変形性能・エネルギー吸収能力の評価基準に関する-考察
いる。しかし、復元力特性の形状が地震応答に及ぼす影 響をどのように反映した値として、これらの変形能力が 定義されているかは暖味である。
筆者らは既に、1自由度系の正負2方向への損傷分配則 を提案している'3)。この損傷分配則を用いれば、明確に 構造物の変形性能・エネルギー吸収能力を定義できるこ とを示すのが本研究の目的である。本論では、第3分枝 に耐力劣化域をもつTri-linear型の復元力特性の1質点系 構造物を対象に、最大耐力点までの硬化勾配、最大耐力 点までの変形量、最大耐力点以降の劣化勾配の3つを考 慮した構造物の変形性能・エネルギー吸収能力の評価式 を提案する。本論の評価式によるエネルギー吸収能力よ り地動による入力エネルギーが小さければ、同じ弾性限 強度をもつ完全弾塑性系より最大応答変位および残留塑 性変形共に小さくなることが期待できる。このような意 味で、本論の評価式による値は、完全弾塑性系より良好 な地震応答`性状を示す上限値として定義したものであ 序
1.
鋼栂造物の履歴挙動は、耐震設計では想定しない領 域まで硬化を続けるものl)から弾性限=最大耐力で脆性 的に破壊するもの2)まで、更には、降伏後も安定した耐 力を保持した後破断によって急激に耐力を喪失すろも の3)、最大耐力以後非常に緩やかな耐力低下を続けるも の⑪、最大耐力以後急激な耐力低下を起こすがその後は 安定した耐力を保持するものs)など様々であり、その変 形性能・エネルギー吸収能力を評価することは容易で
はない。
現在の耐震理論は、G・WHousenerの研究6,7)に基礎を おくものであり、完全弾塑性の復元力特性をもつ構造 物を対象に、構造物を構成要素の変形能力と構造物の エネルギー吸収能力の関係を定量化する研究は多く行 われてきた8.9)。過去に定義されている変形能力10.11.12)
と呼ばれる尺度は、少なくとも暗黙のうちに、等価な 完全弾塑性系の変形能力を表すものとして用いられて
本騰文の一部は日本建築学会大会学術鱒演梗概集,1996.,に発表の予定である。
-25-
り、構造物の地震応答を直接反映した値になっている。
乃桿”含("バー雌,噸)
角=吃
〃p-<〃p,,,のとき、
臥臺'+合い
に=T1
mp-三〃p、のとき、
乃一川+含(いも噸)
に=T2
[4]弾性振動エネルギーEj+具は、
Ei+E、=Eymm(ら+2ルー2)
(4.b)
2.考察対象とその損傷分配則
本論では、図1に示すように単調載荷時の荷重P-変形 U関係が第3分枝に負勾配をもつTri-Iinear型の1自由系を 対象とし、その繰り返し載荷時の履歴特性は、図2に示 すように1方向の塑性挙動が逆方向の履歴の影響を受け ないと仮定する。なお、本論では以後、図1,2にも示し ているように、荷重Pおよび変形Uは、初期弾性限強度
Rおよび初期弾性限変位Uvを基準値とする無次元量p,
〃で扱っている。
(4.c)
(4..)
次式で近似する。
(5)
戸
〃p 3.分配則による予測結果の性状
前節の損傷分布則による予測例を用いて、Tri-linear型 の復元力特性をもつ1自由度系の応答性状を検討する。
ここで解析対象としたのは、図3に示すようなTri-linear 型で、第3分枝は常に(〃,p)=(4,1)を通るT2=-0.2 の直線で、第2分枝勾配と第3分枝勾配の交点の変位皿、
を1.5~5.5の範囲で変化きている。
三s{I
図2履歴モデル 図1単調載荷時この系について、文献13)で提案した損傷分配則を以
下に列記しておく。
[1]地動による全入力エネルギーE,は復元力特性に依存 しない量であり、次式で与えられるとする。
E,=Ei+E`+E,=`,五J(1)
ここで、Eiは運動エネルギーであり、Eeは弾性歪エネ ルギー、E,’は塑性変形による吸収エネルギーである。
また、Evは初期弾性限歪エネルギーであり、次式で表
される。
,E1-PWv/2 (2)
[2]地動による全入力エネルギーE,の1/4が、まず1方向 の塑性変形によって吸収きれるものとする。本論では 以後、この初期塑'性変形が生じる方向を正側と呼ぶ。
[3]その後の入力エネルギーは正負2方向の塑性変形で吸 収きれるが、正負2方向の累積塑性変形倍率"p+ルー
の増分間には次の関係がある。
。",+_('一角)ルーS (3)
。Ⅲp-(1-に)乃二5
ここで、乃十,乃一は、その時点での正負の弾性限強度
であり、T+,TLは塑`性化後の剛性比であって、累積塑 性変形倍率皿p+,恥に応じて次式で表される。
〃p+<〃伽のとき、
月F1+丁二Lテ了い (4.a)
ローγ1
〃p+zzJpmのとき、
1.
図3解析モデル
入力エネルギーe,が5,7,9,11,13,15の各場合につい て、予測結果の残留塑性率`"pを図4に、最大塑性率
"pmaxを図5にそれぞれ実線で示す。なお、図4,5の(O図
に示すBrが15の場合については、〃、が1.8~4.6程度の範 囲でしか予測結果を示していないのは、これ以外の範囲 では倒壊すると予測されるためであり、Brが17の場合は Ulmの値にかかわらずすべて倒壊すると予測される。図 4,5中には、完全弾塑性系についての予測結果も鎖線で 示している。本損傷分配則によれば、完全弾塑性型の系
の最大塑性率"pmaxと残留塑性率ごZIPは等しくなる。
図4,5の◆印は、Tri-linear型の系の内で残留塑性率e"p が最小となる系を示している。この◆印で示した系で は、損傷が正負2方向に最も一様化して配分きれ、その
結果、残留塑性率ご"pが小さくなっている。図5による と、◆印で示した系の最大塑性率DJpmaxは、必ずしも各
図の最小値とはなっていないが、少なくとも各図の最小 値に非常に近い値となっている。以上のように、◆印の
-26‐
543210
萌加旧岨m0
屋
e`4pl--------r--------0 ̄ ̄ ̄ ̄--- ̄1-- ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄--------L-------J--------」--------
一一一一一一一一F--------0------- ̄可一一一一一一一一
こ手三三二1-行
51.52.53.54.55.51.52.5
(b)e,=7 (c)e,=93.54.55.5
(a)e,=5 ⑩86420 、86420
543210
2.53.545
(e)e,=13 図4残留塑`性率
5.51.52.53.54.55.5
(be,=15 1.52.53.54.55.51.5
(d)e,=11
5055
■■2210
酌加田川㈹0
1.52.53.54.55.51.52.5
(b)e,=7
3.54.55.5
(c)e,=9 1.52.53.54.55.5
(a)e,=5 皿86420 皿86420
543210
2.5
(e)
図5
3.54.5
Br=13 最大塑性率
5.51.52.53.54.55.5
(f)e,=15 1.52.53.54.55.51.5
(。)e,=11
系は、各入力エネルギーe,に応じて最も良好な応答性状した完全弾塑`性型の予測値より残留塑性率`"p、最大塑 を呈するという意味で最善の復元力特性を示すものであ性率"pmax共に大きくなっていることから、ここで対象 る。図4,5によると、このときの"、の値はe,が大きくなとした復元力特性は"噸の値によらず、Clが13未満のエ ろにしたがって増大する傾向が認められる。したがつネルギー吸収能力しか期待できないことがわかる。
て、最善の復元力特性は入力エネルギー量に依存し、必図4,5の□印は、残留塑性率・"pと最大塑性率zJpmaxが ずしも一定したものでないことが分かる。また、入カエ等し<なる限界の値を示している。図4,5の入力エネル ネルギーe,が13,15では、◆印で示した値も、鎖線で示ギーe,が11以下の例には□印は2箇所存在し、この2箇所
-27‐
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〃〃I
間の領域は入力エネルギーe,が犬きくなるにつれて狭く なっていき、入力エネルギーe,が13以上では存在しな
い。この2つの□印の間の領域では、全入力エネルギー
の1Nによって初期正側塑性変形SHPが生じた時点で塑性 靴,は最大となり、その後は、負側の弾性限強度が正
側の弾性限強度より小さいために塑性変形が負側に進行
し、残留塑性率`Ⅸ"は最大塑性率Z4Pmaxより減少する。
一方、この2つの□印の外側の領域では、初期正側塑性
変形`HPが生じた後の塑性変形も、負側より正側の方が
大きく、全入力エネルギーが分配された最終状態で塑性
率HPは最大となり、残留塑性率ごLCPと最大塑性率HPmax
が等しくなる。□印の系では、前節の損傷分配過程[3]
で生じる正負2方向の累積塑性変形倍率が丁度一致して
いる。
図4によると、2つの□印間の領域では残留塑性率ezJP
は直線で示した完全弾塑性系の値より小さくなってい る。また、図5によると、2つの□印間の領域では最大塑
性率HPmaxは概ね一定で完全弾塑性系の値とほとんど一
致している。これらの結果から、2つの□印間の領域 は、各図に対応する入力エネルギーe,以上のエネルギー 吸収能力をもつ皿噸の範囲を表し、□印で示した系は入 力エネルギーe,とエネルギー吸収能力が丁度一致するこ
とを表すと考えた。
以上の考察結果に基づき、本研究では最大塑性率
zdpmaxと初期正側塑性変形`ⅢPが等しくなるときを構造
物の変形能力の限界と考えることにする。次節では、こ の条件の下で塑性変形能力・エネルギー吸収能力の予測 式を提案する。
図6正側劣化域での塑性変形
件から、正側劣化域で期待される塑性変形を算定する。
この条件は、(3),(4)式から次式で表される。
芸r''(M》幽酔),"… (6)
=吾l;|剛魑(wルハュー
ただし、ここで、
TF告,乃薑告
(6)式から次の関係を得る。
『,((鵬十乃恥)w)一途((!÷r曲興)`_l
(7)
(7)式から〃p2の陽な形の解を得ることはできないの
で、(7)式の各項を次式で近似する。
(ph1+乃幽'2)`胄恥`+6脇sい,2+l5Phm4n2u,22
(1+Tル2)6=1+6乃皿p2+157,2脚P22(8)
(8)式に(7)式に代入して整理すると次式を得る。
馳寶昊蒜筆鵠
(9)ただし、正側が劣化を開始した瞬間から正側塑性変形増 分が負側塑性変形増分を上回る場合には、(9)式の分子
が負になる。この場合は、劣化域での塑性変形zJP2は零
とする。すなわち、
鴎,鬘需臺鵠のとさ‘"薑。u・)
4.2劣化域を含めた変形能力
前節では、正側塑性変形が最大耐力点で負側塑性変形 が零の状態を初期状態として、正負2方向の累積塑性変
形の増分量が等しくなるときの累積塑性変形増分zJp2を
求めた。全入力エネルギーの1脚が入力された時点での
初期正側塑性変形SIOPが第2分枝の領域内にあることを 前提とすると、正側累積塑性変形がsWpより増大して最 大耐力点ⅨP、に達するまで、更に皿p,+(=必碗一鯉P)の
累積塑性変形が可能である。この正側累積塑性変形が
zJpl+だけ増大する間に生じる負側累積塑性変形zJp1-
4.エネルギー吸収能力の評価式
ここでは前節の考察結果に基づき、最大塑性率Ⅲpmax が初期正側塑性変形sLJpが等しくなるときの入力エネル
ギーが構造物のエネルギー吸収能力を表すと考え、任意 のTri-linear型の復元力特性をもつ構造物のエネルギー吸 収能力の評価式を導く。ただし、ここでは負側の塑性変 形は第3分枝領域内に入ることはないと仮定する。負側 の塑性変形が劣化勾配をもつ第3分枝内に入れば、硬化 を続けると考える場合より負側の塑性変形は生じ易くな
り`皿p=ごJCPとなるまでの塑性変形・吸収エネルギー量
は増大する。このような意味で、構造物の能力を過小評 価する安全側の仮定として、計算を簡略化するためにこ の仮定を設けることにした。
4.1劣化域における塑性変形
まず始めに、図6に示すように正側の塑性変形が耐力 劣化開始点l3pmで、負側の塑性変形が零であるという条 件の下で、本分配則によるその後の正負2方向の累積塑
性変形倍率MP2+,HP2-が等しくLJp2となるという条
-28‐
塑性変形IJP十が生じたときの負側の弾性限強度鹿を導 く。正側に累積塑性変形z4P1が生じた後の負側の弾性限 強度をp,とすると、(12)式と同様に次式が得られる。
ノル’6-月6=p16-1(14)
同様に、その後、正側に累積塑性変形がNp2生じたとき
の負側弾性限強度庖は次式となる。
『!(ぬ`-妬`)薑でZし`-,,`)(1s)
(14),('5)式からp2に関する次式を得る。
〃L二("w)…(脇`-厩`)('`)
一方、(12),(13)式から’2'6は次のようになる。
巧`=(,ハル鴎))‘
=且(〃6-Pb,6)+1(17)T2
+6p,'5(脇-2s)+15p,'4(Ph,-局)2+…
(16)式と(17)式は第2項まで一致している。第3項以降 は、Phi,丹,p,'が第2分枝上の弾性限強度であるので ルー丹=n'であると仮定して、(phi-厩)の-次の項 まで考慮すると、いずれも6Phn5(ルー丹)となる。し たがって、脇=厩=p,'の関係が近似的に成立する範囲 においては(11)式は十分な合理性をもっている。
4.3エネルギー吸収能力の評価式
前項で示した塑性変形を生じた際の吸収エネルギーを
考える。正側の塑性歪エネルギーの総和E'十は次式で表
される。
姜薑…辮肌,鰄恭(……
(18)
負側の塑性歪エネルギーの総和Ep-は次式となる。
書一,鋤L(2…此2M,
+(1+ZT1Z4p2+ph,)Hpm+(2+TlZJp2)皿P2
(19)
また、弾性振動エネルギーEi+Eとは正側の弾性限歪エ
ネルギーを用いて次式で近似する。
苧‐…鶚nM(鋤)
以上の量を用いて全入力エネルギーe,は次式で表され
る。
Br=ep++eP-+BG (21)
一方、全入力エネルギーe,の1/4が入力された時点で
の塑性変形はsUdPであるので、e,/4は次式で表され
る。
(a)'イp1の近似
(b)損傷分配則による結果 図7劣化域を考慮した変形能力
の値の予測は単純ではないが、このとき正側は弾性限耐 力も大きく接線剛性も大きくて正側損傷が最も生じにく い状態にあることを考慮して、負側の累積塑性変形の増
大量l4P1-も正側と同じ皿P,+と仮定する。したがっ
て、本論では図7(a)に示すように正側累積塑性変形倍率
HP+、負側累積塑性変形倍率HP_は次式として、劣化域
を含めた構造物のエネルギー吸収能力を評価することに する。すなわち、
妬+=szJp+IJP1++LJP2+=z《pm+z4P2(11.a)
皿"-=HPl-+Hp2-=脚pm-sz4p+Hp2(11.b)
図7(a)に示すように、負側累積塑性変形ZJP2-とl4pl-
の発生順序は本来逆である。この点を含め、(11)式の近 似の合理性を、以下で若干検討しておく。さて、初期正
側塑性変形sz4pが生じた時点での正側弾性限強度を丹、
損傷分配終了時の弾性限強度を〃とする。一方、負側
累積塑性変形がHp2-生じた時点での負側弾性限強度を pl'、損傷分配終了時の負側弾性限強度を’2'とする。
以上の記号を用いると、(7)式は次のように表される。
『!("`-,,,J)=『2(,,'`-1)(12)
また、zJPl+=zJpl-を仮定しているので、’2'は次式と
なる。
p2'=pl'+(phl-pj(13) すなわち、ここでの変形能力評価式は、正側に(11.a)式
の累積塑性変形Ⅸp+が生じたとき、負側は硬化によって 弾性限強度が’2'まで上昇すると近似して導いている。
2節の損傷分配則を直接用いて、正側に(11.a)式の累菰
-29‐
鎖線で示しているのが、(21)式から得られる本誌におけ るエネルギー吸収能力の算定値である。
図8,9中には、2節の損傷分配則によって求めたTri‐
,inear型構造物の予測値を実線で示し、実線上に×印
で、初期正側塑性変形`IJPと残留残留塑性変形ごHPが等
しいときの値を示している。前節におけるエネルギー吸 収能力の評価式は、この×印でのe,の値を求める近似式 である。この×印で示す損傷分配則による精算値と鎖線 で示す近似値を比べると、第3分枝剛性比T2が大きい
(耐力劣化が緩やかな)ときには近似値は精算値より大 きくなり、第3分枝剛性比T2が小さい(劣化勾配が急
な)ときには近似値が精算値より小さくなる傾向が認め られる。
第3分枝剛性比T2が大きいときには、(9)式から得られ る劣化域での累積塑性変形z4P2が大きくなり、(24)式に よる初期正側塑性変形sUJPは最大耐力点での塑性変形 z4pmより大きくなる。このとき、前節の近似では、最大 耐力点での塑性変形ZIP、と初期正側塑性変形s皿Pとの差
"p,=Hpm-szJPが負として機械的に計算を行ってい る。一方、損傷分配則によれば、初期正側塑性変形ん が最大耐力点での塑性変形U4Pmを超えると、2節[3]に示
した正負2方向への損傷分配過程の最初の時点で、正側 弾性限強度が最大耐力ph,を下回っているために、前節 の近似より正側塑性変形が生じやすくなる。これが、第
3分枝剛性比T2が大きいときに近似値が精算値より大き
くなる主な原因である。
第3分枝剛性比T2が小さいときには、いずれにしても 劣化域におけるエネルギー吸収をほとんど期待しない結
果となるが、前節の近似では、正側累積塑性変形が`IJP から最大耐力点での塑性変形HP、に増大する間に、正負
2方向の塑性変形の増大量は同じとしている。損傷分配 則によると、この間、正側弾性限強度の方が負側より大 きいので、負側累積塑性変形は正側累積塑性変形よりか なり大きくなる。精算値の方が負側で吸収するエネル ギー量が大きくなるのが、近似値が精算値より小さくな る主な原因である。
前節で求めた評価式による値は、以上に述べたような 傾向の誤差をもつが、図8,9に示すように、損傷分配則
による精算値の概ね良好な近似となっている。
さて、図8,9によると、●印で示す完全弾塑性型の系
の残留塑性率GMPや最大塑性率zJpmaxは入力エネルギー 2,と概ね線形関係を保ちながら増大している。Tri-1inear 型の応答値も入力エネルギーClが小さい範囲では入力エ ネルギーe,と概ね線形関係を保ちながら増大し、このよ うな入カエネル雫一e,の範囲ではTri-linear型の系の方が 完全弾塑性型よりも残留塑性率`HP、最大塑性率皿…共
に小さい値を示すことが認められるが、それより入力エ
ネルギーe,が大きくなると、残留塑性率eUJpと最大塑性 e,/4=(2+7MPMP(22)
以上の(18)~(22)式を整理すると、szJPに関する次式を
える。
AsHp2+ZBJHp-C=O (23)
ただし、
A=3丁,
B=4+PhD+T1Hp2
c=(Tl十M世2)腿,22÷2(MM)+'脇,
+2('+MMル"…』
(23)式から初期正側塑性変形`皿,は次式となる。
,腿,=c'(B+V面冒T7Tで)(24)
(24)式によるsz4pを(21)式または(22)式に代入することに
よりエネルギー吸収能力e,が求められる。
5.地震応答解析結果と予測値との比較
前節で提案したエネルギー吸収能力の評価式による結 果を応答解析結果とを比較する。解析に用いた復元力特 性のパラメータは、第2分枝剛性比Tlを01,0.2の2種、
第2分枝勾配と第3分枝勾配の交点の無次元化変位04mを 2,4の2種、第3分枝剛性比T2を-0.05,‐0.1,‐0.2の3種と
する。この計12種類の荷重‐変形関係の構造物について 検討した。応答解析に用いた入力地震波形は、表1の12 種であり、適当に増幅して入力エネルギーe,が特定の値 のときの結果を得ている。なお、構造物の固有周期はす べて1秒、粘性減衰定数はOO1としている。
入力エネルギーe『と残留塑性率GHPの関係を図8に、
入力エネルギーe,と最大塑性率zJpmaxの関係を図,に示
す。これらの図で、□印で示しているのはTri-Imear型の 復元力特性をもつ系の12種類の地震外乱に対する応答値 の平均値で、●印で示しているのは完全弾塑性型の復元 力特性をもつ系の応答値の平均値である。ただし、Tri‐
linear型については12種類の応答値のうち、どれか1つで も倒壊した場合は平均値は示していない。また、図中に
表1入力外乱
3,位o・’94m
l■1uJf
、釦uf
n-Ug別
】已囲k函u「
-30-
晶夫hn割【摩 継続時間 E1cen位o、1940.N-s 341.7Eal 53.73sec.
E1centro、1940.E-W 210 lEal 53.47sec.
Taft,1952.N-s 1527Eal 54 36sec Taft、1952.E-W 175g2al 5438sec Hachinohe、1968.N-s 225o2al 35 Hachinohe、1968.E-W 182 ,貝al 35 99sec Sendai、1962. 57SEal 13 Sendai、1962.E-W 47s2al 14 18sec TohokuUniv.、1978.N-s 258 Z2al 40 94sec TohokuUniv.、1978.E-W 2026Eal 40 94sec Tbkvo、1956.N-s 74OEal 11 38sec Osaka1963.E-W 25O2al 1498sec
率HPmaxのいずれの応答値も急激に増大し、完全弾塑性
型の応答値より大きくなる。本論では、TIi-lmear型の系 のエネルギー吸収能力をTYi-1ineaI型の系の方が完全弾塑 性型よりも良好な地震応答を示す入力エネルギーGIの限 界値と定義しており、図8,9において●印と□印が交差 する交点での入力エネルギーe,の値である。一点鎖線で 示す本誌による評価式の値は、●印と□印の交点の良好 な近似となっており、どの系についても概ね鎖線で示し
た入力エネルギーClより小さい範囲では、Tri-linear型の
応答値は完全弾塑性型の応答値よりも小さい値を示して おり、逆に、鎖線で示したe,より大きい範囲では、Tri‐
linear型の応答値は完全弾塑性型の応答値よりも大きく なっている。
構造物のエネルギー吸収能力の評価法については、序 でも述べたように既に多くの提案がある。最後に、この ような既往の評価法による値と本論の結果を比較する。
既往の評価法としては、塑性変形能力の限界を[a]最大耐 力点、[b]最大耐力の95%に耐力低下する点、[c]初期弾
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図8残留塑性率
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性限強度まで耐力低下する点、とする3種類の方法を考 える。ただし、いずれの方法においても正負2方向の塑 性変形は等しく、エネルギー吸収能力は塑性変形による 吸収エネルギーと限界点での弾性限歪エネルギーの和と
して表されるものとする。
さて、[a]の最大耐力点を塑性変形の限界とすると、エ ネルギー吸収能力αGIは次式となる。
。e,=2(1+Phu)皿pm+2,2 (25)
[b]の最大耐力の95%に耐力低下する点を塑性変形の限界 とすると、エネルギー吸収能力be'は次式となる。
..,-2(川川,噸-],臨半+(…)’
(26)
[c]の初期弾性限強度まで耐力低下する点を塑性変形の限 界とすると、エネルギー吸収能力c2,は次式となる。
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図9最大塑性率
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(25)~(27)式で求めたエネルギー吸収能力を図8,9に細 線で示している。なお、(9)図には(27)式によるエネル ギー吸収能力celを示していないが、(9)図ではCe,=23で
ある。
図8,9によると、エネルギー吸収能力αelは、Tri-1mear 型の系の応答値が入力エネルギーBrと線形関係をもつ限 界値と概ね対応しているが、第3分枝剛性比が大きなTri‐
linear型では、(25)式によるaelよりかなり大きな入力エ ネルギーe,の範囲まで、Tri-nnear型の系の応答値が完全
弾塑性型より小さくなっている。劣化域でのエネルギー 吸収を全く考慮していないので、劣化勾配が緩やかな構 造物のエネルギー吸収能力を過小に評価する傾向が強く 現われている。
一方、(27)式によるエネルギー吸収能力cetは、劣化域 でのエネルギー吸収を考慮したものであるが、(0,0),(k)
'0)図に示すように、最大耐力と弾性限強度との比Ph,が かなり大きい場合や第3分枝剛性比T2が小さい場合に は、入力エネルギーがCe,に達したときにはTri-Unear型構
造物が倒壊している例も多く生じている。
(26)式によるエネルギー吸収能力be'は、(a),(b),(c)図 に示すような2,,が小さい場合には本論の評価式より大 きな値となり、O),(k),(1)図に示すようなph1が大きい場 合には本論の評価式より小さな値となる傾向が認められ るが、ここで示した復元力特性の範囲では、概ね本論の 評価式による値に近い値となっている。
会学術講演梗概集、1351-1356頁、1989.10
3)秋山宏、桑村仁、山田哲、邸栄政、菊川春三:角形鋼管の終局挙動 に及ぼす製造行程の影響、栂造工学輪文集、Vol38B、399-410頁、
1992.3
4)加藤勉、秋山宏、帯洋一:局部座屈を伴うH形断面部材の変形、日 本建築学会臘文報告集、第257号、49-58頁、1977.7
5)真有侭樽、小川厚治、山成賓、黒羽啓明、北島博文:ウエプ材が座 屈する鋼管トラスばり架榊の終局挙動に関する研究、日本建築学会 大会学術欝演梗概集、1277-1280頁、1,90.10
6)0.W・Housner:Limitdesignofstmc[urestoearthquakes,Proc・of WCEE,1956
7)。W・Housne「:Behaviorofstructuresduringearthquakes,Procof ASCE,EM40pplO9.129019s9.10
8)加露勉、秋山宏:地震時における鋼櫛造せん断型多層骨組の損傷分 布則、日本建築学会騰文報告集、第270号、61-68頁、1978.8 9)井上_朗、小川厚拾、柳原秀和、小野聡子:鋼樽遺骨組構成部材の
必要塑性変形性能に関する考察、日本建築学会近畿支部研究報告 集、205-208頁、1992.6
10)日本建築学会:鋼構造限界状態股叶規準(案)、111-122頁、
1190.2
11)日本建築学会:建築耐震設計における保有耐力と変形性能
(1”O)、261-310頁、1990.10
12)井上-朗:塑性歪履歴を受ける鋼榔造部材の耐震性能判定に関す る-考察、栂造工学瞼文集、VoL41B、621-629頁、1195.3
13)小川厚治、黒羽啓明、待鳥賢治:強鍵をうける1自由度系の正負 2方向の損傷分布に関する研究、日本建築学会櫛造系篭文集、第 481号、117-126頁、1,96.3
6.結論
本研究では、筆者らが既に提案した正負2方向への損 傷分配則に基づいて、最大耐力点までの硬化特性、最大 耐力点までの変形量、最大耐力点以降の劣化勾配の3つ を考慮したエネルギー吸収能力の評価式を提案した。入 力エネルギーが、このエネルギー吸収能力の評価式の値 以下ではTri-Imear型の復元力特性をもつ系の応答値は完 全弾塑性型の復元力特性をもつ系の応答値よりも小さい 値を示し、この値以上ではTri-lmear型の復元力特性をも つ系の応答値は急激に増大する。地震応答解析結果との 比較によって、本論で提案した評価式による値が、完全 弾塑性系と同等またはそれより良好な地震応答性状を示 すTri-lmear型構造物の限界値の近似となっていることを 明らかにしえたと考える。
参考文献
1)勝井達也、桑原進、井上_朗、池潔弘之:角形断面柱・梁接合部パ ネルの力学的性状、日本建築学会大会学術灘漬梗概集、1313-1398 頁、1994.,
2)難波恒夫、藤本盛久、中込忠男、村井正敏、小野潤一郎、西村隆 志:地震力を受ける鋼樽造筋かいの高速載荷賦験、日本建築学会大
-33‐
、--Q、