身体障害をもつ印刷技術者の就労実態
一アロジェクトの評価を目指して一 轟
職業指導研究室 佃 直 毅
(昭和48年10.月29日受理)
その一期生は,就職後1年6ケ月を経過したことにな
P プロジェクトの背景 る。
東京都用賀技能開発学院は,昭和44年4月に,身体障 東京都心身障害者福祉センターは,身障法に定める身 害者福祉法にもとつく収容授産施設として開設されたも 体障害者更生相談所の判定業務として・この訓練生の入 ので,東京都におけるシビルミニマム達成のたゆの中期 所選考}三当っているが・その際行なわれた評価が,はた 計画の一環事業でもあった。当施設は,オフセット・活 して妥当性のあるものであったかどうか,一応のゴール 版・製本という3っの部門で,3年間という一定の期間 を達成した時期に,このプロジェクトの評価を行ない・
を設けて入所訓練を行ない,これら業種の初級水準以上 職能評価。訓練・就労の場にフィード・バックすること の技能者にまで養成した上で,社会復帰を行なうという を目的に追跡実能調査を行なった。
当時の身体障害者授産施設としてはかなり思いきった訓 ここで,プロジェクトの評価をするということは・と 練プロジェクトであった。 りも直さず,プロジェクトのプロセスの評価をするとい
当学院に入所した揚合,最初の6ケ月間は,理論や基 うことであって,都福祉センターでの職能評価から,就
本実技と並行して,社会人としての人間形成を早期に完 職し,定着(何らかの職業の分野で,自分のところを見 ● ● ●
成させるべく,生活指導や一般学科を中心にカリキュラ つけることができたかどうか)するまでの一連の経過を ムが構成されている。残りの2年6ケ月は・実際に印刷 合んだものと理解している。したがって・追跡実能調査 の注文を受け,生産活動を通して印刷技術を身につける の内容も・以上の観点に立って,次のように構成されて
という・応用実技訓練に重点をおいた構成になってい いる。
る。また,印刷技術の面では,当学院の運営委員の構成 (1)東京都心身障害者福祉センターでの職能評価と・ 1)メンバーとなっている印刷工業組合からの技術者派遣を 学院での技能評価の関係
中心とする協力も,技能水準を高める上で見逃せないも (2}学院修了後の就労の実態
のであった。 (3》このプロジェクトに乗らなかったもの(入所辞退 っまり,当学院は,他の収容授産施設と違って,以下 者および入所不適格者)のその後の生活実態 の特色を有する施設であるといえる。 (4)中途退所者の実態と,就労したがその後退職した
(1)実際の生産活動を通じて訓練を受ける施設であ ものの実態
る。 なお,本稿においては,これらの調査結果の中から,
ω かなり高いレペルの技能付与を目的とする施設で 学院を修了後,就職し・現職を継続している者17名の就 ある。 労実態を中心に,身体障害者の就労可否条件を明らかに
(、}最新の機轍備鹸肌て訓練を実施している施 することと,プ・ジェクトの評価を行なうことに目的を 設である。 設定した。
(4)印刷工業組合との協力により,技術者派遣と,最
@ 皿 調査方法 新の技術。市場に関する情報を得ることの可能な施
設である。 本調査研究の資徽集の方法は,以下の勘である・
ω入所時における東京都心身障害者福祉センターで 1【 調査の目的 の評価記録
東京都用賀技能開発学院が,開設後4年余を経た現在 (2)学院での技能評定記録
(3)就職者,自営者および雇用主に対する訪門調査 じて入所した者が2名あるが・本調査は,プロジェクト
(4)否入所・中途退所者,退職者,自営廃業者等につ のプロセスを重視する立場から・対象外とした。
いては,封書により質門紙発送 表1は,障害原因と障害部位の両面からみた対象者像
㈲上のω〜ωの方法で資料の得られなかった者につ である。この他,修了者に聴覚障害者1名・視覚障害者 いては,電話その他の方法により,その後の経過を 1名がいる。また,中途退所者で聴覚障害者1名があっ 聴取した。 た。これら・3名を加えた数が,プロジェクトの参加総 数で65名となる。
v 調査対象
このプロジェクトに関係した者全員,66名を調査対象 V 結果と考察
とした。内訳は,入所者52名,否入所13名である。 入所から調査の暁点まで,4年余の年月を経ているた なお,東京都心身障害者福祉センター以外の機関を通 め,結果をみると,対象者の進路は非常に多肢にわたっ
ている。表2は,このプロジェクトの経過と表1 対象者の障害区分
人数を示たものである。%は,修了者35名に
\募籠i片 \ \ 障
イ置 \ 上肢
片下肢 片上下肢 両下肢 上肢片下肢 両1両 下 肢 片 上 肢
四肢 体幹
計 %
対する比率を示している。
@プロジェクト参加総数65名中,入所した者 ヘ52名で,うち終了までこぎっけた者は35名 ナある。これは,ス所者全体の67.3%にあた
脳 終了 1 1 2
8口
り,残り30.8%にあたる16名は,何らかの理 Rで修了に到らなかった者である。入所者の 讐 中途゙所
ヨー ㎜一一『 一『㎜一
@1 }−一一@1 一一@一
一一■一醒一
一1@2 22 35.5 約%が中途退所者で占めたという事実は,障
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一一}_一一』一一_一 1
一 一
冒一一一一@4 一__ 害者が生活し易いように設備等十分配慮され脳脳 潔滑
ヌ鴇障外害傷 終了_ 一一
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鼈鼈 一一
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1.3.
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施設であるということを考えれば,やや不満 ォな結果である。これは,予測不可能な事態 フためということもあるが,当学院が障害者 ノ様々な面で有利な条件を備えているとい
一一一一一終
Fr 一』 一一一 一}一一一一一『一L う前提に立って,入所選考の評価にあたった
途退
梶@一一
}罰一 P 一『一一 1.3
め・体力的・性格的な問題にっいて,限界
̲を低くおさえたことにも関係している。
所せず 一一一} } 一r かしながら,これら障害者に対し,出来う
了 限り,精密な職業能力の評価を行なうこと
髄
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ウ
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1 .7 は
かならずしも適切でなく・むしろ有害無 2)益である場合が多いとさえいわれることも真実で
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終 ) ゆる場合に,ある程度の評価の必要な
エス中 一退所
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1 .9 こ
は,誰しも認めることで,はたしてどの程度 ワでの評価が適切であるのか,その範囲はい ソがいに決められないものである。障害
終 技能訓練という面については・少なくと
中 退所
鼈鼈齠?鰍
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1 .3 も
LOの「障害者の職業リハビリテーショ 3)ンの基本原則」に述べられているように・ω就業
N齢にあるか・それに近いこと。ただ
/31・}1・i2・1・i・1171316211・・ 訓練終了時には,就労のために高齢すぎ
/481a21・a・13&71・・6・國・宅・48い・・}/ こと。(2)訓練の終了時には,仕事に対して身 フ的・精神的諸能力が身につくか,つく
一{
は訓練継続中のもの 見込みのあること。(3)訓練の終了時には就業
表2 プロジェクトの経過と人数
選考 修了…一一一48・6の現状
一}
←印刷会社勤務(4&6%)
入 修 就 (17)
所 了 職
(52) (35) (23)
一一』一一
@(3) ←印刷会社間転職(8・6%)
一』一
1
(3) ←他業転職(8.9%)
(5) ←自営継続(14.3%)
』_____冒_
(1)一一一_ ←自営から他業へ転業(2・9%)
(1)−7〒一一 ←自営休業(2.9%)
(4) ←授産施設で印刷(11.4%)
…一 一
i1) ←授産施設で他職従事(2・9%)
(1) ←訓練継続
(2) ←印刷業従事 中途退所 (3) ←他業従事
(16) 』
(11) ←在宅その他
心一
入 (5) ←就 労
所
せ (2) ←施 設
ず
(13)
(6) ←在宅その他
できるという合理的な見通しがあること。という3点の 修了時の結果では,オフセット・活版の間に目立った 原則を評価しうるものでなければなるまい。 差は見られない。オフセット部門で,転職者が2名いる 終了者35名中・就職・自営・もしくは施設にあいて印 が,いつれも同一分野での移動に対し,活版では,就職,
刷関係職種に従事する者は29名で,修了者の82・8%にあ 自営授産施設それぞれの分野で,他職種への転職があら たる。この結果は,プロジェクトの目的を一応満足させ われている。オフセットの方が・職務内容からみて,より
るものと解してよかろう。 身体障害者になじみやすいといわれていることからも納 訓練終了者のうち,W/C(車椅子),松葉杖・ステツ 得できる。活版部門の全ての職種が,困難性濃厚というわ キ等補装具を使用する者は14名であった。車椅子使用者 けではないが,たとえば,オフセット部門に含まれる写 については,企業への就職者は0で,就労の形態は全て 植では,文選・植字・製版までが,座位の姿勢で,しか
自営である。車椅子使用者の就労は,都市改造を含めて もほとんど移動の必要がなく行なえることに比較して,
社会の物理的阻害要因をもっとも深刻に受けていること 活版の文選1つをとりあげても,組版の箱を所持して,
がうかがえる。 鉛の活字を求めて移動しなければならない。このことは 修了者を部門別にみると3表の通りである。 活版がオフセットに増して体力を要する職務をより多く
包含していることの象微的な例であろう。表3修了時の進路とその後の動静
第2表で紹介したように・学院を修了後,
一准 就 職 自 営 授産施設 計
一般企業に A職し,継続しているものは17名であったが,以下これ
一オセ
@ ツ 10転2 3 3 16
らの人達の就労の実態に考察を加える。
¥3は,17名の就職者が・どの程度の規模の企業で就
フト (28.6%) (8.6%) (8.6%) (45.8%)
副(瓢i
4櫟1(11.4%) 2他1i5.7%)
18
i51.4%)
労しているかを調査した結果であるが・従業員規模19人 ネ下の小企業および個人経営の場で就労しているもの8 名で,全体の約半数を占めている。また従業員規模20〜
製本 1
i2.8%)
0 0 1
i2,8%) 299人の中小企業に就職している者は7人で,前者と合
わせれば,全体の88.2%を占めることになる。これは,
計 23
i65.7%) 7
i20.0%) 5
i14.3%)} 35
i1GO%) 過去の身体障害者に関する就労実態調査に共通して得ら
4)
黷トいる現象であり・筆者が,昭和46年に行なった調査 表4 事業所の規模と障害者雇用の経験
従業員数 1〜19人 20〜299人 300人〜 計
雇用経験
企業釧蝋緻 企業釧麟撚 企業数 就職者数 「驪ニ数i就職者数 1
2 2 4 6 1 2 7 10
有 (16.9%) (11.8%) (33.3%) (35.3彩) (8.3%) (11.8%) (58.3%) (58.8%)
__一 一 一 一 『冒 一一
無 4
i33.3%)
6
i35.3%) 1
i8.3%) 1
i5.9%) 0 0 5
i41.6%) 7 i41.2%)
6 8 5 7 1 2 12 17
計 (50.0%) (47.1%) (41.7%) (41.2%) (8.3%) (11.8%) (100%) (100%)
においても,心身障害者を雇用している企業390社のう いう流れの中では,この傾向はますます助長されること ち,約90%が従業員500人以下の規模であった。 になる。
これらの結果は,障害者に対する関心の低さというこ 次に・身体障害者雇用経験の有無という観熱からみれ ともあるが,従業員規模の大きい企業は,雇用管理が計 ば,今まで障害者を雇用した経験がなかったという企業 画的であるため,主として新規学卒者によって増員と欠 は,41.6%であった。
員の補充を図っていることによる。特に印刷関連企業 表5は,現在の賃金額と,初任給との差額の関係をあ は,中小冷細企業において,需要の多くがまかなわれて らわしたものである。賃金分布は・おおむね4万〜6万
いるという特長があり,今後ともこの傾向はかわらない に集中しているが,昭和46年に,社団法人障害者雇用促 5)
と思われる。加えて,印刷界が,重印刷から軽印刷へと 進協会が行なった就労者の実態調査とさほど変わった点
表5 初任給との差額
〜40,000 〜45,000 〜50,000 〜55,000 〜60,000 〜65,000 %
・ 1 1・ } i l(5}9)
・−5… 12 1 1・ I I I(317.6)
〜・q…1・ i l8°°1°° (、i.2)
一・5…l I l i 唇8°1 1(2鼠4)
一2¢…、 l l i l i° 1(5}9)
舎数釧 ・i31娼 315i・1・7
% i5gl・τ612a・1・乳6 2軌4 ε9 1・・
○オフセット ●活 版 △製 本
はない。しいていえば・雇用促進協会の行なった調査の 印刷会社勤続者17名の賃金の変動と技能度を示したの 方が,分布の幅が広いが,これは,年令の分布と,勤続 が表7である。ここで技能度とは,学院終了の時点で,
年数によるものであろう。 各種目の訓練担当者が技能の目標に対する到達程度を1 第6表が雇用促進協会の行なった印刷関係職種の賃金 〜10の段階で評価したものである。10評価を受けたもの 分布である。 は3年の訓練を通して,設定された目標まで到達できた
表6 印刷関係職種の給与実態
〜2万円 1 12万〜 3万円
3万〜
S万円 4万〜
T万円 5万〜
U万円 6万〜
逍怏 7万円
ネ上 不明 計
従業者数 0 1 20 13
、618 [
3
。16・(名) i
印刷関係
比 率 0 1.6 32.8 21.3 26.3 13.1 4.9 0 100(%)
ことを示し・ 就職した場合でも印刷界で印刷技術者とし さらに表8によって技能度と賃金レベルのカイニ乗検
て認められることが前提である。5の評価を受けたもの 定を行なったところ,評価8以上の者と評価7以下の者 は・他職種での分野で就職は可能かもしれないが,印刷 との問には,a5%の有意水準で有意な関係にあること 技術者として認められないレベルの者と解される。 が明らかにされた。
表7によるかぎり,印刷会社に勤続している者は,評 っついて・希望賃金と現実賃金の一致度を見ると,両 価6がわずか1名で,16名は評価7以上である。つまり 者が一致していた者4名,希望賃金より初任給の方が 評価6の1名は例外と見るべきで,印脳関連職業の分野 低った者1名・12名は希望賃金よりも,実際に受給した で技術者として就職するためには,目標の70%以上達成 初任給の方が高かった。希望賃金よりも初任給が上回る
していることが条件となる。この結果は,今後の指導計 という例は,健常者の間では見られない現象である。こ 画の目やすとして,有効な指標である。 のような結果を招いた理由の1っは,過去の生活経験か
賃金水準からみると,現在の賃金額が55,000円以上の ら,自己の能力を過少に評価することによって,現実と 者は,全て8以上の評価を受けており,企業の側からも のまさつをさけ,欲求不満に落ち入ることを防いできた 印刷技術者として,いちおうの評価は受けたものと理解 からである。もう一っの理由は,自己の能力を現実的に できる。 吟味するための機会にめぐまれなかったことであろう。
技能度の評価は・標準化された尺度によるものではな 施設持有の文化的背景と社会関係が,現実社会に対して いが・この結果からみるかぎり,評価の妥当性は高いと 敏感に反応することを防たげて来たという事実をもう一 いえる。 度深く堀り下げてみる必要がある。
表7 賃金の変動と技能度 と本人の行なった評価にずれがあれば・お互いに不満足
● ●
3 4 5 6万 な感唐を生むことになり・解雇や転職に結びつく可能性 が大きい。
争 (7}
表9 作業面における評価
×一一 ■ 腎 一 鱒 ・ 冒 ・ 一, 噸一 ● 幽 一 ・ o
(6)
ρ ・ ・ 一 虚 ・ 骨 司 ■ 幽 ■ − o贋一 帰
(7〕軸 隔 暫
雇用主 期待していたレベルに比して
x(7>
x… 。一・
本人 より良い十 相当十 『 より悪い
(91
メ・・… 一 (8) 1
十 1 1
〔8) レ自 (5.9%)
)(・・・。・・
べ分 ルで
σ)
に予
苟ェ
± 1 10
i59.8%) 1
Xp.・・一・一一 ● ● 幽 ・ 一 一 署 〇 一 量 ● 富 畠 ■ (8)
しし
, 曽 ● ● ・ ● − r 一 一 ■ 薗 一 9 − ● 〔8) てた
一 0 1 1
x−… 一一・ 一…一(9)
(5.9%)
憐・
(忌)
表9で斜線の部分は,両者の評価が一致している場合
メ・・ (10)
で,17名中12名の70・6%にあたる。もっともずれの大き
(10 ● ●
いのは・印を付した1名で・本人は非常に作業能力が高
(8)
・ ・ ● ● 昌 o いと自己評価しているのに対して・雇用者側は,当初予
zしたよりも,
(1① かなり作業能力が低いと評価している。
@ このケースについては,追指導によって,(10) ずれの調整が
● ●
必要である。
鷲 ……一一一一噸 () 表10は,対人関係に対する本人と・雇用主の意識であ
希望賃金初任給現賃金 曜技能度 る。今まで,障害者の就労間題について多くの調査研究
が行なわれてきたが・そのいつれもが職場適応における 6)
表8 技能度と賃金水準 人間関係の重要性を指摘している。また,雇用主が採用
5以上 5以下 計
の条件として求める特性として,「人格円満」, 「協調 7)性のあること」等を第一に上げることからも,職場にお
一一 V一一一一一}一一 一 いて人間関係がいかに重要視されているかがわかる。
10 4 0 4
心理的安定と円満な人間関係は,職場適応の必須な条件
9 1 9 1 3 2 12
といっても過言ではない。
8 4 2 6
障害者の一般就労にとって,生産性は一つの大きな阻
76 1}5
路となっている。どんなに正確な仕事をしても,能率を 繧ーないかぎり・十分な賃金の支払いを受けることはで
計 [9 18 117 きない。生産性は,雇用前の適性検査や知能検査によっ
df==1 x2=5.2411 て完全に予測することは不可能で・その本人が,「職場 集団」に対してどのような関係で入り込むか,すなわち 8)
鞄魔フ困難を伴なうであろうが,訓練生が・受注計画 適応するかによって決まるとさえいわれている。生産性 価格の決定,あるいは可能なものはセールスにまで参加 も作業能力以外の要因・つまり,人間関係の良否で大い
してゆくことは,現実吟味を助ける有力な手段となる。 に左右されるのである。
最後に,職場適応について,作業能力と人間関係の面 表10で明らかなように,17名中15名は,本人,雇用主 から考察を進めよう。 共に人間関係上問題がないと判断している。ここで問題
職場適応を評価する指標として,作業面と人間関係に となるのは,両者で対人関係に「問題あり」と回答した 対する雇用主と本人の意識を調べた。 1名(・)についてである。このような人間関係のまずさ ● ■ ●
¥9は作業面についての評価の結果である。この雇用主 は,本人にとってもちろん,企業にとっても,早急に解
表1じ対人関係の評価 後の重要な課題である。
濃}特になし
あ り 計 (4)活版に比ぺ,オフセット部門の方が,職務の上か 轤「って障害者にとってなじみ易さをもっている。㈲就労者の職場規模は,おおむね30人以下の中小・
特にない 15
i88,2%) 0 15
i88.2%) ないしは個人経営規模であった。これは,これまでの障
あ り
一一
@ ・ 「 ・・
i5・9%)1(5・9%)
2 i11.8%)
害者雇用の一般的傾向と変わらない。
@㈲ 障害者に対する賃金の算定基準は,健常者にくら
計 i・6 (94.1%)
1
i5.9%) 17
i100%)
ぺて技能と熟練のレペルに指標のウエイトがおかれてい 驕Bここから,「障害者は技術をもたなければ……」と いう考えが今までの職業問題解決の有力な考えになって 決されなければならない。対人関係のまずさが存在する いたことを物語る。
■ ● ●
栫C組織としての企業は機能し得なくなるからである。 (7)就労可能な技能のレベルは,目標水準の70%とす 就職後,対人関係の問題が生じた時,適切な指導と援 るのが適当である。ただし・この限毘点(cutling Point)
助ができるような追指導の計画と組織が必要であるが, は・労働市場の状況により変化し得るものであるから,
訓練の過程においても,人間関係上の問題の把握と指導 固定化すべきではない・
がなされなければならない。そのためには,次のような (8)賃金の高と技能度には有意な関係のあることが明 場面での行動や態度が,指導の指標として有効である。 らかになった。技能度評価の妥当性を証明する結果であ
(1)職員や他の障害者への反応や関係の仕方。 る。
(2)他人から要請に注意を払う能力や,依頼に対する ω}訓練生の現実吟味を助ける意味で,受注計画・価 反応。 格の決定,セールスまで訓練の範囲を広げることは有効
(3)障害に対する態度。 である。
ω家族関係 (10)最後に,職場適応上,問題をもつ者が少数ではあ
(5)監督や指示に対する態度。 るが指適された。全体的な指導計画の中に,追指導の計
(6)将来に対する希望と不安。 画と組織を位置づけることが望まれる。
○ 要 約 (本論文の一部は日本特殊教育学会第11回大会}二おいて
(1)東京都用賀技能開発学院が4年半前,53人の入所 発表されている。)
によって発足してから,調査の時点で学院当初の目標に
到達できた者は,印刷関係職種で就職し継続している者 参考文献,引用文献
17,自営継続5である。この結果は,学院設立の主旨か 1)佃,安部;用賀技能開発学院の入所判定と印刷適性に らすれば,決して満足なものではない。結果的に16名の ついて,研究報告集(3),東京都心身障害者福祉セ 中途退所者を出したが,大半は健康と精神的安定を理由 ンター,1972.
とする者であった。入所時に一応のチエックを受けた結 2)ネイル マツクレオツド;センター;インダストリー 果の事実であるだけに考えさせられることである。 ズについて・R3・高橋三浦訳・東京都衛生局病院
障害者にとって,「チャンスこそ職業的リハビリテー 管理部 1970°
3) Basic Principles of Vocational Rehabilitationションの最大の武器」の考えが,健康・体力の重要性を
of the Desabled, ILO, D.37,1967(Rev.1970).無意識のうちに軽視することになったとも考えられる。
4)佃;企業における心身障害者の雇用計画と雇用上の問高度で精密な技能を要する仕事に従事する者にとって, 9♪ 題点,研究紀要第20号,厚生省社会局更生課編,昭和魁
要求される健康の基準は当然高次なものとなってくるこ
47年度.
とを改めて見直すことが必要である。 5) 身体障害者の雇用実態調査、告一障害者の就業実態と
(2)修了者35名については,82・8%の者が,就労・自 その課題,P.60,社団法人障害者雇用促進協会,社 営・施設等において印刷関係職種に従事しており,この 団法人東京青年会議所,1972.
プロジェクトの目的をいちおう満足せる結果である。 6)Tsukuda, Yamada Abe;AStudy on the Su
(3}職能評価は,「概略の推定」の範囲で行なうこと itability of elevat。r operation for the cerebra1 が適当であるが,その範囲をどこに設定すぺきかは,今 Palsied, Bulletin of the Tokyo Metropolitan
Rehab11itation Center for the Physically and 8)萬成,杉編;産業社会学, P.54,有斐閣双書,昭和 Mentally Handicapped,1973. 42年.
7) 佃,・安部;職業人として求められる能力・性格,態度 9) 馬場;経済成長と国民福祉,P.7,社会福祉研究, No.
について,研究紀要第19号h厚生省社会局更生課編, 4,鉄道弘済会弘済会館,1969.
昭和46年度.
The actual condition survey of printing workers phys童cally handicapped toward a evaluation of the project
NAOKI TSUI(UDA
(FacuIty of Education, Ibaraki University)
Abstract
Tokyo Metropolitan Y6ga Vocational Training Center for the Desabled was established for the purpose of getting competitive employment for the printing workers in April,1968. In spite of the sheltered workshop, it have a Simulating Industry in equipment and method of work.
The survey was conducted to evaluate the print training project for the physically handicapped.
This study describes the actual condition survey of employment and its results. The contents of consideration is as follows;
1) the process of this project.
2) the f圭eld of selective placement and the movements after that.
3)the sca1・・f・p・i・t・h・p and the emp1・ym・nt exp・・i・n・e・f h・ndi,apP,d.
4) the salary leve1. 亀
5)th・・at・・f i…ea・e in・ala・y l・v・1 and a・ki119・ad・.
6) the evaluation of work in printing shop.
7) the evaluation of human relations.
@ ヒ
●