• 検索結果がありません。

2018 年度と 2019 年度の比較

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "2018 年度と 2019 年度の比較"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

原著

初年次教育科目「基礎ゼミ」が学生の学び評価に及ぼす効果:

2018 年度と 2019 年度の比較

The Effects of a First Year Education Program, 

Elementary Seminar, on Students Self-Evaluation for Learning: 

A Comparison between 2018 and 2019.

瀬 谷 安 弘,中 村 紘 子,須 藤   信 Yasuhiro SEYA, Hiroko NAKAMURA, Makoto SUDO

要  旨

 本研究では,愛知淑徳大学人間情報学部の初年次教育科目「基礎ゼミ」を通じて,目的とする能力・スキルに対す る学生の自己評価が向上するのか,そして年度間での比較からその効果の違いを明らかにすることを目的とした。

2019 年度基礎ゼミにおいて,履修生に対し,履修前・履修後の 2 回にわたり質問紙調査を行った。得られた結果は,

同様な方法で行った 2018 年度調査の結果と併せて解析した。結果は,2018 年度・2019 年度ともに,基礎ゼミの履修 後に,コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力,クリティカルシンキング,論理的思考力,情報検索能力 に対する自己評価が高まることを示した。因子分析およびテキスト分析の結果においても,2018 年度・2019 年度とも に,基礎ゼミ履修後における自己評価の向上を支持する結果が示された。これらの結果は,学修スタートを支援する 初年次教育科目として基礎ゼミが有効であることを示唆する。一方,2018 年度では「学びの理解」や「問題解決」の 因子で得点が履修後に向上したのに対し,2019 年度の調査では履修前後でこれらに差がなかったなど,2018 年度の調 査とは異なる結果も示され,継続的な調査の必要性を示唆している。

キーワード:初年次教育,主体的学修,学士課程教育,自己評価

1.序論

1.1 研究背景

 グローバル化や情報化といった社会の急激な変化,そして現在の少子高齢社会を背景に,将来の予測が困難 な今の時代を生きる若者や学生にとって,今の時代を生き抜く力となりうる大学での学修への期待が高まって いる。同様に,産業界からは,予測困難な社会を生き抜き,原動力となる有為な人材の育成が大学に求められ るようになっている(文部科学省,2012)。このような学生や産業界,さらには国民からの期待に応えるべく,

近年,多くの大学が学士課程教育の改革に取り組んでいる。

 一方,大学進学率の向上に伴い,多様な背景を持つ学生が大学に入学するようになった今日では,大学は,

新入生を大学教育に適応させることを目的とする初年次教育にも力を注ぐ必要がある(文部科学省,2008;山

 愛知淑徳大学人間情報学部

(2)

田,2009)。2008 年の中央教育審議会の答申において(文部科学省,2008),「学士力」,「主体的な学び」,「確 かな学力」など学士課程教育で求められる能力が提示されるとともに,初年次教育の重要性が指摘されている。

この答申において,初年次教育は,「高等学校や他大学からの円滑な移行をはかり,学習および人格的な成長 に向け,大学での学問的・社会的な諸経験を成功させるべく,主に新入生を対象に総合的に作られた教育プロ グラム」あるいは「初年次学生が大学生になることを支援するプログラム」と説明されている。日本の大学で は,初年次教育として「レポート・論文などの文章技法」,「コンピュータを用いた情報処理や通信の基礎技術」,

「プレゼンテーションやディスカッションなどの口頭発表の技法」,「学問や大学教育全般に対する動機付け」,

「論理的思考や問題発見・解決能力の向上」,「図書館の利用・文献検索の方法」などのアカデミックスキル(文 部科学省,2008)や時間管理法や就職支援,人間関係,コミュニティ活動といった大学生活の基本的スキルな どが重視されている(山田,2009)。

 愛知淑徳大学人間情報学部では,2014 年度より初年次教育科目として「基礎ゼミ」が必修科目として開講 されている。この科目は,「図書館オリエンテーション」,「効果的プレゼンテーション」,「クリティカルシン キング」,「中間レポート・個人面談」,「グループ演習」,「最終レポート」から構成され,大学での学修に必要 な基礎的スキルの向上を狙った課題で構成されている(國分・山川・牧・村主・森・親松,2015)。また,愛 知淑徳大学ではアドバイザーと呼ばれる担任制度を採用しており,アドバイザーが基礎ゼミを担当している。

それ故,基礎ゼミを通じて,アドバイザーは学生の学修態度や動機付けなどを早期から把握し,学修や大学生 活における問題の発見や,キャリアプランへのアドバイスなどのサポートを行うことができる。

 國分ら(2015)は,初年次教育科目としての基礎ゼミの効果を定量的に検討するための調査を行い,基礎ゼ ミが学生の能動的学習方法の習得に一定の効果があることを報告した。この調査では,履修前(第 1 回目の授 業)と履修後(第 15 回目の授業)に,Table  1 に示す 1̲1 から 1̲10 までの 10 項目と大学の授業に対する期 待や不安などの自由記述項目から構成されたアンケートを行った。その結果,学修習慣(1̲2)や主体的学修 に関わる項目(1̲3 や 1̲4)では,履修前よりも後において自己評価が低下したが,コミュニケーションスキ ル(項目 1̲9)や論理的思考(1̲10)では自己評価が向上した。中村・瀬谷・林・佐藤・岡部(2019)は,開 講から 5 年が経過した節目にあたる 2018 年度の基礎ゼミにおいて,あらためてその効果を客観的・定量的に 調査した。この調査では,國分ら(2015)で用いた 10 項目の質問項目(問 1)と自由記述に加え,Table 1 に 示す 2̲1 から 2̲11 までの 11 項目(問 2)を加えたアンケートを,履修前と履修後に実施した。追加された項 目は,基礎ゼミの目的とする知識・能力が獲得されたかを問う項目および学修に対する不安や自己効力感を問 う項目であった。調査の結果,基礎ゼミの履修後に履修前よりも大学での学びの理解や問題解決スキル,協働 学修スキルに対する自己評価が向上することが明らかになった。

 先行研究の結果は,いずれも本学部で開発・開講されている基礎ゼミが学生の学修スタートを支援する初年 次教育科目として有効であることを示唆している。特に,中村ら(2019)は,より直接的にスキルや能力への 自己評価を問う質問項目を追加するとともに,因子分析やテキスト解析などの詳細な分析を追加することで,

基礎ゼミの有効性をより具体的・構造的に明らかにしている。ただし,初年次教育科目の効果の測定は継続的 に行われるべきであり,また調査の結果を実施年度間で比較し,基礎ゼミの効果の年度間の差異を通じて,履 修者である学生の大学での学びに対する自己評価の変化を明らかにすることは,基礎ゼミのさらなる改善を考 える上で極めて重要である。

1.2 調査の目的

 本研究では,初年次教育としての基礎ゼミの効果の継続的調査,および学生の学びへの自己評価の変化を検 討することを目的とする。本調査では,中村ら(2019)で用いられたアンケートを基礎ゼミの履修前と履修後 で実施し,本科目が目的とする能力・スキルに対する学生の自己評価が向上するのかを検討するとともに,得 られたデータを 2018 年度調査データと併せて解析し,年度間での効果の違いを明らかにする。

(3)

2.方法

2.1 調査対象者

 愛知淑徳大学で基礎ゼミを履修する 1 年生 203 名を対象に調査を行った。履修前調査の回答者は 201 名,履 修後調査の回答者は 192 名であった。

2.2 調査時期

 履修前調査は基礎ゼミの第 1 回の授業時(2019 年 4 月 12 日〜 4 月 18 日),履修後調査は第 15 回の授業時

(2019 年 7 月 25 日〜 8 月 7 日)に実施した1)

2.3 調査手続き

 履修前・履修後調査ともに,基礎ゼミの授業時間内に集団形式の質問紙調査を実施した。調査の説明と質問 紙の配布・回収は基礎ゼミの担当教員が行った。

2.4 質問紙の構成と質問項目

 質問紙の構成と質問項目は 2018 年度の調査(中村ら,2019)と同一とした(Table 1)。問 1 は國分ら(2015)

で用いられた学習習慣などを尋ねる 10 項目,問 2 は中村ら(2019)で作成した学びへの理解などを尋ねる 11 項目からなり,それぞれ 5 件法で回答を求めた。また,履修前調査では「大学の授業に期待すること」と「大 学の授業で不安に思っていること」,履修後調査では「基礎ゼミを通して成長したこと」と「基礎ゼミ全体の 感想」の自由記述を求めた。

3.結果

 分析には,2018 年度・2019 年度の履修生の回答のうち,履修前・履修後の両方の調査に回答をし,回答に 不備のない 1 年生のデータを対象とした(2018 年度=242 名;2019 年度=185 名)。

3.1 基礎ゼミ履修前・後における学びに対する自己評価

 Table  1 に各年度の履修前・後における自己評価の平均値,標準偏差を示す。基礎ゼミの履修年度と履修 前・後により評価に差があるかを検討するため,問 1,問 2 のそれぞれの質問項目について 2 要因混合計画の 分散分析を行った。

 問 1 の 10 項目で年度と履修前後の交互作用が有意であったのは,1̲3,1̲8,1̲10 であった[1̲3, (1, 425) 4.16,  < .05;1̲8, (1, 425)=6.83,  < .01;1̲10, (1, 425)=7.22,  < .01]。事後比較検定の結果,1̲3 に おいて,2018 年度では履修前の得点が履修後より高かったが[(425)=2.46,  < .05],2019 年度では履修前後 に差は見られなかった。1̲8 において,2018 年度では履修後の得点が履修前より高かったが[(425)=2.91,

 < .01],2019 年度では履修前後に差は見られなかった。1̲10 において,履修前後の差は 2018 年度,2019 年度 ともに有意であり[2018 年度,(425)=7.05,  < .001;2019 年度,(425)=2.60,  < .01],履修後の得点が高かっ た。履修前後の主効果が有意だった項目のうち,履修後の得点が高かったのは 1̲5,1̲6,1̲7 であり[1̲5,  

(1,  425)=3.88,  < .05;1̲6,  (1,  425)=6.18,  < .05;1̲7,  (1,  425)=4.48,  < .002],履修前の得点が 高かったのは 1̲1,1̲2,1̲4 であった[1̲1,  (1,  425)=20.33,  < .001;1̲2,  (1,  425)=17.83,  < .001;

1̲4,  (1,  425)=5.56,  < .01]。1̲9 では履修前後による得点の差は見られなかった。年度の主効果はどの項目

1 )授業の進行の都合により,履修後調査では 11 名に対し 14 回目の授業時に調査が実施された。

(4)

においても見られなかった。

 問 2 の 11 項目で年度と履修前後の交互作用が有意であったのは,2̲1,2̲4,2̲8,2̲9 であった[2̲1,

 (1,  425)=8.23,  < .01;2̲4,  (1,  425)=4.42,  < .05;2̲8,  (1,  425)=5.61,  < .05;2̲9,  (1,  425)=10.53,  < .01]。事後比較検定の結果,2̲1 において,履修前後の差は 2018 年度,2019 年度ともに有 意であり[2018 年度,(425)=8.20, < .001;2019 年度,(425)=3.35, < .001],履修後の得点が高かった。

2̲4 において,履修前後の差は 2018 年度,2019 年度ともに有意であり[2018 年度,(425)=5.96,  < .001;

2019 年度,(425)=2.42,  < .05],履修後の得点が高かった。2̲8 において,2019 年度では履修後の得点が 履修前より高かったが[(425)=2.35, < .05],2018 年度では履修前後に差は見られなかった。2̲9 において,

2018 年度では履修後の得点が履修前より高かったが[(425)=5.24,  < .05],2019 年度では履修前後に差は 見られなかった。履修前後の主効果が有意だったのは,2̲2,2̲6,2̲7,2̲11 であり[2̲2,  (1,  425)=

16.72,  < .001;2̲6,  (1,  425)=72.95,  < .001;2̲7,  (1,  425)=85.34,  < .001;2̲11,  (1,  425)=

11.81,  < .001],いずれも履修後の得点が履修前より高かった。2̲3,2̲5,2̲10 では履修前後による得点の 差は見られなかった。年度の主効果はどの質問においても見られなかった。

3.2 基礎ゼミでの学びに対する評価の因子構造と因子得点の比較

 基礎ゼミでの学びに対する評価の構造を検討するため,2018・2019 年度の回答について因子分析を行った。

同一の参加者のデータを反復して分析することによる検定の多重性の問題を避けるため,各年度の参加者をラ ンダムに 2 群に分け,それぞれの事前・事後のデータをカウンターバランスし,一方の群に対して探索的因子 分析,もう一方の群に対し高次因子分析を行った。

Table 1 履修前・履修後における各質問項目の自己評価の平均値・標準偏差および履修の効果の検定結果

2018 年度 2019 年度

履修前 履修後 履修前 履修前 履修後 履修前

後の差 後の差

1̲1  授業についていけるように予習をする 3.19 0.91 2.97 0.95 前>後 3.07 0.85 2.83 0.91 前>後 1̲2  指示されてなくても重要と感じたことはメモや

ノートを取る 3.96 0.70 3.77 0.78 前>後 4.00 0.76 3.85 0.84 前>後 1̲3  興味あることは自分で調べてみる 3.82 0.73 3.71 0.79 前>後 3.83 0.80 3.86 0.75 1̲4  いろいろなことを学ぶのは楽しい 3.91 0.71 3.86 0.76 前>後 4.01 0.78 3.89 0.78 前>後 1̲5  自分なりに計画や目標を立てて勉強する 3.25 0.96 3.39 0.89 前<後 3.17 0.91 3.21 0.92 前<後 1̲6  もっとうまい解き方や別の考え方はないかと考え

3.29 0.92 3.44 0.81 前<後 3.26 0.92 3.36 0.85 前<後 1̲7  難しい課題に取り組むことは面白い 2.73 0.88 2.89 0.90 前<後 2.73 0.97 2.76 1.00 前<後 1̲8  試行錯誤しながら問題を解決することが楽しい 3.18 0.90 3.36 0.88 前<後 3.23 0.94 3.17 0.96 1̲9  グループワークで協力して作業をするのが好きだ 3.16 1.02 3.27 1.05 3.37 1.08 3.36 1.09 1̲10 自分の考えを筋道を立ててうまく伝えることがで

きる 2.70 0.86 3.07 0.85 前<後 2.70 0.92 2.85 0.92 前<後 2̲1  大学で、どのように勉強すれば良いかを理解して

いる 2.68 0.80 3.13 0.78 前<後 2.66 0.80 2.88 0.83 前<後 2̲2  論理的に物事を考えることができる 2.84 0.77 3.08 0.80 前<後 2.94 0.81 3.03 0.81 前<後 2̲3  勉強で、いい成績をとれるだろうと思う 2.63 0.72 2.66 0.78 2.59 0.83 2.55 0.84 2̲4  問題解決に必要な情報を集めることができる 3.12 0.69 3.44 0.73 前<後 3.19 0.77 3.34 0.81 前<後 2̲5  勉強がしっかりできると思う 2.81 0.79 2.82 0.76 2.74 0.86 2.68 0.87 2̲6  グループワークにおいて、メンバーと意見交換が

できる 3.39 0.87 3.75 0.77 前<後 3.45 0.94 3.76 0.88 前<後 2̲7  大勢の前で、自分の意見を伝えることができる 2.93 0.99 3.32 0.93 前<後 2.74 1.12 3.18 1.10 前<後 2̲8  勉強しているとき、不安になる 3.38 0.97 3.33 0.98 3.12 1.06 3.31 1.08 前<後 2̲9  大学で、何を学ぶかを理解している 3.32 0.79 3.59 0.71 前<後 3.48 0.75 3.50 0.77 2̲10 安心して、勉強ができる 3.10 0.79 3.19 0.75 3.09 0.75 3.09 0.90 2̲11 物事を多面的に考えることができる 3.12 0.78 3.26 0.76 前<後 3.16 0.87 3.30 0.84 前<後

(5)

3.2.1 探索的因子分析

 各因子数におけるベイズ情報量基準と固有値の減衰情報をもとに(1 因子  BIC=187,固有値=5.78;2 因子  BIC=150,固有値=2.04;3 因子  BIC=272,固有値=1.55;4 因子  BIC=291,固有値=1.34),3 因子構造を 仮定し,最尤法,oblimin 回転による探索的因子分析を行った。因子負荷量の基準を .30 以上とし,因子負荷 量が .30 未満の項目を分析から除外した。Table  2 に,F1 から順に因子負荷量の大きさに基づき質問項目を並 べ替え,各因子での負荷量および共通性(得られた因子によって説明される割合),独自性(得られた因子に よって説明されない割合),複雑性(単純構造の程度の指標)を示す。F1 は「勉強がしっかりできると思う」,

「大学で,どのように勉強すればよいかを理解している」といった項目が高い負荷量を示したことから,学び の理解因子と命名した。F2 は「グループワークにおいて,メンバーと意見交換ができる」といった項目が高 い負荷量を示したことから,グループワーク因子と命名した。F3 は「試行錯誤しながら問題を解決すること が楽しい」といった項目が高い負荷量を示したことから,問題解決因子と命名した。

Table 2 基礎ゼミでの学びに対する自己評価の探索的因子分析結果

因子負荷量

F1 F2 F3 共通性 独自性 複雑性 F1:学びの理解

ù

h=.76

2̲5 勉強がしっかりできると思う

2̲3 勉強で、いい成績をとれるだろうと思う 2̲4 問題解決に必要な情報を集めることができる

2̲1 大学で、どのように勉強すれば良いかを理解している 2̲10 安心して、勉強ができる

1̲1 授業についていけるように予習をする 2̲2 論理的に物事を考えることができる 2̲9 大学で、何を学ぶかを理解している 1̲5 自分なりに計画や目標を立てて勉強する F2:グループワーク

ù

h=.84

2̲6 グループワークにおいて、メンバーと意見交換ができる 2̲7 大勢の前で、自分の意見を伝えることができる

1̲9 グループワークで協力して作業をするのが好きだ 1̲10 自分の考えを筋道を立ててうまく伝えることができる F3:問題解決

ù

h=.76

1̲8 試行錯誤しながら問題を解決することが楽しい 1̲7 難しい課題に取り組むことは面白い

1̲6 もっとうまい解き方や別の考え方はないかと考える 1̲4 いろいろなことを学ぶのは楽しい

.82 .74 .47 .46 .45 .35 .35 .33 .32

―.03 .07

―.14 .15

―.08 .08 .12 .18

―.02

―.03 .23 .00 .03 .01 .19 .02 .19

.88 .75 .68 .64

.03

―.04 .00 .09

―.03

―.03 .07 .16 .05 .07 .22 .17 .13

―.07

―.03 .12 .10

.85 .77 .45 .39

.64 .52 .38 .29 .23 .15 .34 .19 .24 .71 .57 .49 .56 .69 .62 .26 .28

.36 .49 .62 .71 .77 .85 .66 .82 .76 .29 .43 .51 .44 .31 .39 .74 .72

1.00 1.01 1.51 1.25 1.03 1.09 2.30 1.49 1.98 1.02 1.02 1.16 1.16 1.02 1.03 1.13 1.50 寄与

寄与率 説明率

2.63 .16 .37

2.47 .15 .35

2.05 .12 .29 因子間相関 F1

F2

.29 .40 .39

3.2.2 高次因子分析

 因子間相関が高いため,3 因子の高次因子として基礎ゼミでの学びの因子を仮定し,共分散構造分析による 高次因子分析を行った。Figure  1 にその結果を示す。パスの数値は因子負荷量を示す。モデルに十分な適合 度が示されたため(RMSEA=.079,AIC=16250,標準化 RMR=.063),基礎ゼミでの学びの評価について,「学 びの理解」,「グループワーク」,「問題解決」の 3 つの下位因子と「基礎ゼミでの学び」の高次因子からなる構 造が確認された。

(6)

3.2.3 因子得点

 各回答者における,3 つの下位因子,および高次因子の平均値を因子得点とした(Table  3)。基礎ゼミの履 修前・後,および受講年度により,因子得点に差があるかを検討するため,2(年度:2018,2019)2(履修:

前・後)の 2 要因混合計画による分散分析を行った。

 「F1 学びの理解因子」では年度と履修の交互作用が有意であり[  (1, 425)=9.57,  < .01],事後比較検定 の結果,2018 年度は履修後の得点が履修前より高かったが[(425)=5.40,  < .001],2019 年度では履修に よる差は見られなかった。「F2  グループワーク因子」では履修の主効果が有意であり[  (1,  425)=9.57,

 < .01],履修後の得点が高かった。「F3  問題解決因子」では年度と履修の交互作用が有意であり[  (1,  425)=4.06, < .05],事後比較検定の結果,2018 年度は履修後の得点が履修前より高かったが[(425)=2.69,

 < .01],2019 年度では履修による差は見られなかった。高次因子である「基礎ゼミでの学び」では年度と 履修の交互作用が有意であり[  (1,  425)=9.27,  < .01],事後比較検定の結果,2018 年度[(425)=7.17,

 < .001],2019 年度[(425)=2.22,  < .05],ともに履修後の得点が履修前より高かった。

Table 3 履修年度と履修前・後の因子得点の平均値・標準偏差および年度・履修の効果の検定結果

2018 年度  2019 年度

履修前 履修後 履修前 履修前 履修後 履修前

後の差 後の差

F1 学びの理解 2.98 0.50 3.14 0.51 前<後 2.98 0.55 3.00 0.56

F2 グループワーク 3.05 0.78 3.35 0.72 前<後 3.06 0.85 3.29 0.79 前<後 F3 問題解決 3.29 0.64 3.38 0.62 前<後 3.31 0.69 3.29 0.69

HF 基礎ゼミでの学び 3.08 0.48 3.25 0.47 前<後 3.08 0.53 3.15 0.52 前<後

3.2.4 テキスト分析:共起ネットワーク

 自由記述の回答について,中村ら(2019)を参考に KH Coder(Version 3. Alpha. 17g; Higuchi, 2001)によ るテキスト分析を行った。2018 年度調査での自由記述についてはすでに報告されているため,2019 年度調査

Figure 1 基礎ゼミでの学びに対する自己評価の高次因子分析結果

(7)

の自由記述のみを分析対象とした。分析に用いた語は名詞,動詞,形容詞,形容動詞,副詞,感動詞,複合語 とし,各設問に 4 名以上が言及した上位 50 語を採用した。学びの自己評価と自由記述内容の関連を検討する ために「基礎ゼミ全体での学び」の履修前・履修後の因子得点の中央値をもとに,回答者を履修前得点高群

(H)・低群(L),履修後得点高群(H)・低群(L)を組み合わせた 4 群に分け,共起ネットワークを示した。

 Figure  2 は,2019 年度履修前アンケートにおける「授業に期待すること」の共起ネットワークを示す。出 現頻度の高い抽出語では,2018 年度と同一の言葉が多く見受けられ,興味分野の知識や将来に繋がる学びを 期待する記述が見られた。履修前後の得点による回答内容の特徴として,履修前・後ともに得点が高かった HH 群では,大学での学びに期待する回答が見られ,履修前・後ともに得点が低かった LL 群では,楽しく役 立つ授業を期待する回答が見られた。履修前の得点が高く,履修後の得点が低かった HL 群では,パソコンや デザイン等のスキルに期待する回答が見られ,履修前の得点が低く,履修後の得点が高かった LH 群では,資 格取得のための学びや深い学びに期待する回答が見られた。

   Figure  3 は,2019 年度履修前アンケートにおける「授業で不安なこと」の共起ネットワークを示す。2018 年度と同一の言葉が多く見受けられ,単位取得やレポート作成への不安についての記述が見られた。各群の特 徴として,HH 群ではテストや授業内容,HL 群では講義のスピードや課題,LH 群では予習への不安につい ての記述が見られた。LL 群では特になしという記述が見られた。

 Figure  4 は,2019 年度履修後アンケートにおける「基礎ゼミを通して成長したこと」の共起ネットワーク を示す。2018 年度と比べ,「クリティカルシンキング」,「プレゼンテーション」等の言葉が多く見られた。各 群の特徴として,HH 群では根拠を明示することの重要性,LL 群ではレポートの書き方,HL 群では多様な理 解,LH 群では意見の伝え方への成長についての記述が見られた。

Figure 2 2019 年度履修前アンケートにおける「授業に期待すること」の共起ネットワーク

2)

2 )共起ネットワークの円の大きさは出現頻度,線の濃さは共起関係の強さを示す。

(8)

Figure 4 2019 年度履修後アンケートにおける「基礎ゼミを通して成長したこと」の共起ネットワーク

Figure 3 2019 年度履修前アンケートにおける「授業で不安なこと」の共起ネットワーク

(9)

 履修後アンケートにおける「基礎ゼミ全体への感想」でも,2018 年度と同一の言葉が多く見受けられ,「楽 しい授業であった」,「グループワークを通して学べた」等の記述が見られた。HH 群では他者の意見が参考に なったという記述,LL 群ではレポートを書く際の参考になったという記述,HL 群では少人数での授業に対 する肯定的な記述,LH 群では難しかったが役に立つ学びであったという記述が見られた。

4.考察

 本調査では,基礎ゼミを通して,本科目が目的とする能力・スキルに対する自己評価が向上するのか,そし て基礎ゼミによる自己評価の効果は年度間で異なるのかを,中村ら(2019)と同じアンケートおよび解析方法 を用い,さらに 2018 年度および 2019 年度の調査結果の比較から,明らかにすることを目的とした。結果は,

2018 年度・2019 年度ともに,類似した結果を示した。具体的には,2014 年度の調査(國分ら,2015)から用 いられている質問項目(問 1)では,予習(1̲1)やノートテイキング(1̲2)といった学修習慣については履 修後での低下が見られた一方で,難しい課題にチャレンジすることへの楽しさや(1̲7),学修の計画や目標を 設定し(1̲5),また別の方法を模索する(1̲6)といった主体的学修や問題解決力に関わる項目,そして自分 の考えを論理的に伝える(1̲10)といった論理的思考力においては,その評価が履修後において向上した。一 方,2018 年度の調査(中村ら,2019)から用いられている質問項目(問 2)では,論理的思考力(2̲2)や情 報検索能力(2̲4),コミュニケーション能力(2̲6),プレゼンテーション能力(2̲7),クリティカルシンキン グ(2̲11)といった能力・スキルへの自己評価が履修後で向上した。以上の結果は,基礎ゼミが大学における 能動的学修スタイルに適応する上で有効であることを示唆する。

 因子分析の結果は,学びに対する自己評価が「学びの理解」,「グループワーク」,「問題解決」3 つの因子に 分かれることを示した。また,高次因子分析の結果は,これらの 3 因子が 1 つの高次因子にまとまることを示 しており,基礎ゼミの学びが 3 つの側面が相互に関連する総合的なものであることを意味している。履修前・

後の因子得点の変化は,基礎ゼミを通して大学での学びに対する自己評価が向上したことを示している。2018 年度・2019 年度ともに,「F1.学びの理解」得点と高次因子である「基礎ゼミでの学び」得点が履修後に向上 しており,やはり基礎ゼミが大学における能動的学修スタイルに適応する上で有効であることを示唆している。

 一方,2018 年度・2019 年度での結果には,違いも示された。例えば,質問項目への評価値では,2018 年度 では「2̲9.大学で,何を学ぶかを理解している」の評価値が履修後で向上したのに対し,2019 年度では履修 前後で差はなかった。また,因子分析の結果でも,2018 年度では「F1.学びの理解」得点と「F3.問題解決」

得点が履修後に向上したのに対し,2019 年度では履修前後で変化しなかった。これらの違いは,学生の質の 変化を反映している可能性がある。2019 年度は人間情報学部開設から 10 年を迎える年であり,その歴史の蓄 積とともに,高校や地域住民への広報活動も充実し,近年,入試偏差値も上昇傾向にある。特に 2019 年度で は,2018 年度と比べて,入学者数が大幅に絞られており,これは 2018 年度調査(中村ら,2019)および 2019 年度調査の対象者の数にも反映されている(2018 年度,265 名;2019 年度,203 名)。一方,旺文社が運営す る「大学受験パスナビ」によれば,2018 年度(2017 年 4 月から 2018 年 3 月までに実施)の一般入試の受験者 数は 1123 名であったのに対し,2019 年度(2018 年 4 月から 2019 年 3 月までに実施)では 1830 名と大幅に増 加した。それ故,2019 年度では高い学力を有する学生が入学していることが推測される。基礎ゼミ開発当初 に想定された学生の学力に対し,現在入学してくる学生の学力が向上しており,結果として,基礎ゼミのカリ キュラムから得られる自己評価の向上効果は,現在の学生においては小さかったのかもしれない。

 自由記述の全体的な傾向は,國分ら(2015)や中村ら(2019)と一貫する結果であり,履修前の自由記述で は,専門的な知識を学ぶことへの期待や授業・単位・テストへの不安などの記述が見られた。また,履修後の 記述では,発表スキルの向上や意見を伝える能力の成長について多く記述された。履修前後での得点別の結果 も,中村ら(2019)と一貫する結果を示し,履修後で得点が高い学生(HH 群・LH 群)では,特に高校とは

(10)

異なる大学での専門的な学びといった深い学びへの期待についての回答が多く,履修後で得点が低い学生(LL 群・HL 群)では情報スキルや資格といったより具体的な事柄への期待についての記述が多く見られた。また,

前者の学生では,他者を想定した説得や意見を伝えるコミュニケーション力や論理的思考力に関する成長を多 く回答したのに対し,後者では,レポートの書き方などの個人のスキルへの成長を回答した。それ故,初年次 教育の効果を大きくする上では,学生の関心を資格やスキルといった特定の事柄のみならず,より広い視点で 大学での学びや他者とのコミュニケーション,論理的思考へと向けさせるようなカリキュラムが有効であるか もしれない。

 本調査では学生からの自己評価をもとに基礎ゼミの効果を検討したが,実際の能力やスキルを測定していな い。それ故,基礎ゼミが目的とする能力やスキルを実際に向上させているかについては明らかではない。ただ し,学びにおける自己評価の向上は学修やその継続への動機付けになりえること,そして初年次教育科目が高 等学校での学びから大学での学びへの円滑な移行を目的とすることを考慮すれば,基礎ゼミの有効性は十分に 示されたと言えるだろう。

引用文献

Higuchi, K. (2001). KH coder.  .

國分三輝・山川仁子・牧 勝弘・村主朋英・森 博子・親松和浩(2015).主体的な学びの促進を狙った初年次教育科目「基礎 ゼミ」の開発.愛知淑徳大学論集.人間情報学部篇, ,15―27.

文部科学省(2008).中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」.

(2019 年 10 月 18 日)

文部科学省(2012).「予測困難な時代において生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ」.

(2019 年 10 月 18 日)

中村紘子・瀬谷安弘・林 大輔・佐藤朝美・岡部晋典(2019).初年次教育科目「基礎ゼミ」が大学での学びの評価に及ぼす効 果の検討.愛知淑徳大学論集.人間情報学部篇, ,1―10.

旺文社.大学受験パスナビ. .(2019 年 12 月 13 日)

山田礼子(2009).大学における初年次教育の展開―アメリカと日本. , ,157―174.

Figure 4 2019 年度履修後アンケートにおける「基礎ゼミを通して成長したこと」の共起ネットワークFigure 3 2019 年度履修前アンケートにおける「授業で不安なこと」の共起ネットワーク

参照

関連したドキュメント

LF/HF の変化である。本研究で はキャンプの日数が経過するほど 快眠度指数が上昇し、1日目と4 日目を比較すると 9.3 点の差があ った。

北区無電柱化推進計画の対象期間は、平成 31 年(2019 年)度を初年度 とし、2028 年度までの 10

今年度は 2015

 講義後の時点において、性感染症に対する知識をもっと早く習得しておきたかったと思うか、その場

ことの確認を実施するため,2019 年度,2020

(2014年11月)と第15回(2015年6月)の測定結果には約7mm程度の変化

を負担すべきものとされている。 しかしこの態度は,ストラスプール協定が 採用しなかったところである。

2019 火災対応能⼒向上と、彼らを通した地域の防災意識向上を目指しました。 < 2019 年 度 の実 績 > ダッカ市にある