水 田 善 次 郎
The Facts in Social Life of Adults with Down s Syndrome
by Zenjiro MIZUTA
研 究 目 的
われわれは昭和40年より長崎市内およびその周辺に居住し,ダウン症児をもつ親たちを集 め,ダウン症児の研究に取り組んできた1)2)3)4)5)6)。集まりは月に一回であったが,親たちは このような悩みをもっているものは自分一人ではなかったことを知り,明るさをとりもどし てこられた。しかし,何分にも0才から3,4才までの乳幼児をもつ親ばかりだったので,
この子らが将来どのように成長していくのかについては皆目予測がたたず,その不安,心配 を拭いさることまではできなかったようである。その後,ダウン症児(者)をもつ親の会で ある小鳩会長崎支部が結成され,現在は100名を越す集団へと発展し,子どもたちの年令も
0才から20才までと広がった。そこで現在,幼いダウン症児をもつ親たちはわが子の将来ま でもある程度は見通すことができるようになり,以前の親たちよりも一層明るく,生き生き とした生活を送っておられるように思う。また,昭和40年に3,4才だった子どもたちはす でに養護学校高等部を卒業し,社会に巣立っていった。
そこで,われわれはダウン症者の社会生活のあるべき姿を検討するとともに,ダウン症児 のためにモデルを明らかにしたい。さらに,ダウン斯々の社会生活の面からダウン症児の教 育・指導のあり方も検討するためにダウン痴者の実態を調査研究することにした。
研 究 方 法
小鳩会が都道府県単位で支部分会を結成しつつあるが,既に結成し終っている36の支部長 に次の1および皿についてのお願いを申し出た7)。
1 次の①②③を調査して, 月 日までにご教示いただきたい。
① 貴県内で福祉施設に入所しておられるダウン症者について,貴県内の公立,私立の精 神薄弱者の福祉施設が何か所あり,それぞれどこに(所在地)あるかなどを調べていた だき,別紙⑬一①の表にご記入の上返送して下さい。(貴県の中央児童相談所あるいは 県の障害福祉課にお尋ねになられたらよいと思います。)
② 貴県内で福祉施設に入所しておられないダウン症者は何人いらっしゃるかを調べてい ただき,別紙⑬一②一④,⑧一②一@,⑧一②一◎の表にご記入の上返送下さい。(こ ぼと会のみなさん方にはもちろんのこと,特殊学級・養護学校の先生方や「手をつなぐ 親の会」等へもたずねていただき,出来る限りご教示下さい。)
112 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第28号
④
◎
⑳
③貴支部内のダウン症児(者)で死亡された方がおられましたならば,別紙⑬一③の表 に記入して下さい。
皿 貴殿からのご報告ご教示に従いまして,当方より直接それぞれの施設や企業主や家庭に 別紙④の調査用紙を送り,ダウン症者の生活のようすを記入していただくようにお願する つもりです。
⑬一①福祉施設及びその施設に入所しておられるダウン症者の数について 自宅から一般職場(企業)へ通勤しておられるダウン丁丁について
自宅から訓練所,福祉作業所,会でつくっている作業所などへ通勤しておられるダ ウン症者について
家庭で親と一緒に生活しておられるダウン二者について
施 設 名 施 設 の 所 在地 繊の代表者名}囎酬ズウ壌
(中 略)
⑬一②一④ 自宅から一般職場(企業)へ通勤しておられるダウン症者について
氏 矧企業名降業主i 企 業 主, 住 所
(中 略)
⑬一②一@ 自宅から訓練所,福祉作業所,会でつくっている作業所などへ通勤しておられるダ ウン症者について
ダウン症者砥矧 訓練所・作業所名 i代表者名1 そ の 所 在 地
(中i 略)
⑬一②一⑳ 家庭で親と一緒に生活しておられるダウン症者について
氏 名1保護者名 住 所
(中 略)
⑬一③
N・・眸別1死亡鯛 死 因 備 考
(中 略)
※ 備考には,長わずらいの後死亡された場合の時には一(長),突然死亡された場合には一(突)
の印と,その他国記事頃をご記入さい。
ところが,Table 1に示すような17の支部長より報告を得ることができた。
そこで,報告を得た14の支部(当方のいろいろな手ちがいにより札幌と青森と沖縄を除い た)のダウン症者621名を対象に「ダウン症者の生活の実態調査」のための調査用紙を送り 回答を求めた。そして437名のダウン治者についての調査用紙を回収することができた。し たがって,回収率69.4%である。
なお,精神薄弱者の福祉施設への入所者の場合にはその施設長宛に,一般企業に通勤して いる者の場合は社長宛に,訓練:所や福祉作業所に通っている者の場合は所長宛に,家庭で両 親と一緒に生活している者の場合は両親宛に調査用紙を送った。statUS(以下stと表わす)
ごとの回収率は次の通りである。
st①(福祉施設に入所しているダウン症者)=379/538×100=70・4%
st②(一一般企業に勤務しているダウン症者)=3/9×100=33.7%
st③(訓練所や福祉作業所に通っているダウン症者)39/50×100諏70。8%
st④(家庭で両親と一緒に生活しているダウン症者)19/33×100=57.6%
つまりダウン三者の社会生活についての調査用紙(別紙④)は次の通りであり,その内容 はF.基礎資料につついて現在の生活の状況として,A.生活習慣について, B.集団生活へ の参加について,C.仕事の状況について, D施設外で働いている者についてE.楽しみの 状況について,G.生活力についてH.親の理解についての領域によって構成されている。
114 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第28号
Table.1調査の状況
②一④ ②一@ ②一⑳ ③
会支部 施訪数 収容
メ数
ダウ 盗
望≧×100収
♂回計 ♂1♀i計 3回計 ♂園計
帯 広 函 館 北 見 旭 川 釧 路 福 島 石 川 富 山 福 井 徳 島 愛 媛 山 口 北九州 宮 崎 長 崎
4 5 5 2 3 6 3 2 1 10 7 16 2 5 21
278 400 239 100 151 450 212 140 50620 462 1050 100 559 1145
16 25 18 10 17 30 21 10 2 39 42 119 16 46 127
5.8%
6.3 7.5 10,0 11.3 6.7 9.9 7.1 4.0 6.3 9.1 11.3 16.0 8.2 11.1
0 0 0 1 0 2 0 0 0 1 1 0 1 0 3
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
0 0 0 1 0 2 0 0 0 1 1 0 1 0 3
0 5 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0
0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 4 0
0 1 5 2 0 0 0 0 1 2 14 7 0 0 0 0 0 0 5 1 0 0 0 0 19 3 0 1 6 2
0 0 0 0 0 5 0 0 0 2 1 0 0 2 4
1 1 2 0 0 1 0 1 2 1 12 0
11 11 11 11
6 4
ユ
0 2 0 0 1 0 0 1 1 1 0 0 0 0
2 0 3 1 1 1 0 1 2 1 1 0 0 2 4 小 計 92i595615381 9・・lg団gl i5・1 133i i19
札 幌 青 森 沖 縄
11 17 5
482 957 270
40 45 54
8.3 4.7 20.0
0 0 0
0 0 0
0 0 0
12 0
6 0
18 0 15
0 0 0
0 0 0
0 0 0
12 0 0
8 0 0
20 0 0
合訓・2517665[6771 8・81g}・1g1 1831 i331 139
F.基 礎 資 料
F−1 F−2 F−3 F−4
F−5
F−6 F−7
F−8
氏 名(
生年月日 性 別 最終学歴
イ.中学校普通学級 ロ.中学校特殊学級 ハ.養護学校中学十 二・養護学校高等部 ホ.そ の 他 (
最終の知能検査の結果
) 例(山田太郎→○田○郎)
昭和 年 月 日生
男女(いずれかに○印を)
(該当するものに○印を)
)}…
(イ.
IQ(知能指数)=(
又はMA(精神年令)=(
入所(園)年月日 昭和
年 月に卒業
わかる ロ.わからない ) )昭和 年 月実施
)昭和年月実施
年 月 日
学校卒業から現在の施設入所・職場に就職までの生活の変遷 自 昭和
(
至 昭和 自 昭和
(
至 昭和 自 昭和
(
至 昭和 年 年 年 年 年 年
月(
月(
月(
月(
月(
月(
本人の長所及び短所 長 所 (
短 所 (
)
)
)
)
)
)
)
)
A)生活 習 慣 A−1
A−2 A−3 A−4 A−5 A−6 A−7 A−8 A−9 A−10 A−11 A−12 A−13 A−14 A−15 A−16 A−17 A−18 A−19
現在の生活の状況
自分から起きる………・………・……・………
自分でフトソの始末をする…・………・……・………
「はし」で食べることができる・……… … ………
洋服を正しく着ることができる……… ………
洋服をハンガーなどにかける……… ● …………
よごれた洋服を処置する・……… ………
下着類は洗濯する…………・……・・……… … .……
ロッカーはきれいに使う・………・……・…………
こぼさずきれいに食べる・…………・……●………
入浴を好む…………・……・・………
風呂で上手に身体を洗う ………・…・・………
爪をきれいにする…・……… ……… ……
身体や顔,手足の清潔に気を配る ・………・………●……
歯をみがく ……・………・……・………
髪を洗うことができる・………・…・………… ●……●
お化粧をする……・………・…●………….… … …………
月経の始末ができる…・………・・………・・…・…
偏食の有無(民有)
1 どんなもの(
夜尿く夢解(1週間に何回( ) 〉
い か 時 た つ な ま
も り 々 に
[ I l l
全 然
1
f
1
)
B)集団生活への参加
B−1 B−2 B−3 B−4 B−5 B−6 B−7 B−8 B−9 B−10 B−11 B−12 B−13 B−14 B−15 B−16
友達との接触を好む……・………・…・………
自分のものと他人のものとの区別ができる………
施設や職場のきまりに従って行動する……・…………・・
挨拶をする………・…・・………
集団遊びの仲間にはいる・…………・……・………
遊びのルールに従って行動する…………・…・…・………
けんかをする………・……・…・……… … …………
ファイトがある・………・………・…………・・……・………
進んで他人に働きかける・…・………・………
競争心がある…・………・・………
友だちの数( )名 異性の友だちの有無(有 無 ) 異性への関心の度合(強 弱 )
遊び仲間の数(数人と 特定の人と 孤立)
遊びの種類(
自由時間の過ごし方 (
B−17 休目の過ごし方
(
C)仕事の状況
C−1 仕事の有無 (イ.一定の作業をしている
い か 時 た 三 つ な ま
も り 々 に 然
1 1 [ l l
ロ.作業は殆んどしていない)
)
)
C−2
)
1→(C−2へ進む)
仕事をしている場所 (イ.施設内で 1→C−3へ進む)
L>(E−1へ進む)
ロ.施設外で)
1→D−1へ進む)
116 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第28号
C−3
C−4 C−5 C−6 C−7 C−8 C−9 C−10 C−11 C−12 C−13 C−14 C−15 C−16
作業(労働)の種類(農耕,縫製など具体的に記入)
(イ)主にしているもの( ) (ロ)そ の 他( )
賃金の有無 (イ.もらっている ロ.もらっていない)
1→(C−5へ進む) 1→(C−7へ進む)
賃金の支給方法 (イ.月ぎめ ロ.不定期 ハ.その他( ))
賃金の額 (月の平均 円)
作業(労働)の時間 (1日平均 時間)
作業のようす (イ.ひとりでする作業 ロ.仲間とする作業)
L>(C−10へ進む) 1→(C−9へ進む)
仲間と協力の程度 (イ.協力する ロ,時々協力する ハ.協力しない)
作業の仕方 (イ.ひとりで出来る ロ.時々介助がいる ハ.常に介助がいる)
道具の使用 (イ.道具を使っての作業 ロ.道具は不要)
【→(C−12へ進む) i→(C−13へ進む)
どんな道具を使っているか
( ) 道具の扱い方 (イ.うまく使える ロ.ぎごちない ハ.介助が必要)
作業態度A (イ.常にまじめ ロ.時々はめをはずす ハ,ふざけて仕事にならない)
作業態度B (イ.仕事への取りくみはよろこんでする ロ,普通 ハ.不平が多い)
作業の接続時間( )時間位は集中して働ける 1→(E−1へ進む)
D) 施設外(たとえぽ,施設から会社などへ出かけて)で働いている者について
D−1 D−2 D−3 D−4 D−5 D−6 D−7 D−8 D−9 D−10 D−11 D−12 D−13 D−14 D−15 D−16 D−17
勤務先(名称) ( ) 勤務先の従業員数 ( )名
勤務先に本人以外の障害者が (イ.い る ロ・いない)
1→(D−4へ進む) 1→(D−5へ進む)
障害者の数 ( )名
仕事の内容は ( )
賃金の受給方法(イ.日給 ロ.月給 ハ.その他( ))
職場適応訓練費の有無
(イ.受けたが期限が終った ロ.受けている ハ.受けたことはない)
収入金額 (月平均 円)
勤務時間 ( )時から( )時まで ( 勤務年数 昭和 年 月から勤務
勤務態度 (イ.働き方はまじめ ロ・普 通 ハ・
〃 (イ.仕事への取り組みはよろこんでする 仕事の能率 (イ.製品の失敗がない ロ.時々失敗する 〃 (イ.仕事ははやい ロ.普通 ハ.おそい)
人間関係 (イ.同僚とうまくいっている ロ.普 通 〃 (イ.上司とうまくいっている ロ.普 通 現在の勤務に至るまでに転職の経験及びその理由
)時間労働 不まじめ)
ロ.普通ハ.不平が多い)
ハ.失敗が多い)
ハ.いやがられる)
ハ.いやがられる)
勤 務 先
1.
2.
3.
年 月〜 年 月 理 由
D−18 D−19
給料の処理の仕方
(イ.自分で処理する ロ.職員の指導の要あり ハ.職員にまかせる)
処理の内容A (イ.ほとんど自分で使う ロ.貯金が主 ハ.親元に送る)
1→(D−20へ進む) 1→(E−1へ進む)
D−20 処理の内容B (イ.計画的に使う ロ.普 通 ハ・
D−21 処理の内容C (イ.食べもの ロ.日常品 ・\娯楽
E)楽しみの状況 E−1
E−2 E−3 E−4 E−5 E−6 E−7 E−8 E−9 E−10 E−11 E−12 E−13
ひとりで遊ぶことに………・…・…・・…………・……・……
仲間と遊ぶことに………・…・…・・……・…………・………
手伝いをすることに……・………・・………・・………・……
仕事をすることに……… …・…・…・……… …… ………
会社に出勤することに……… …・………●…
外出することに…………・…・・…・………・・…………
買い物をすることに………
電話をかけることに………・………….………9……
電話がかかってくることに………・・……・………
手紙をかくことに………・…………・……・・……・・
手紙がくることに…………・・…・…・○………・………
面会があることに………・……・………・………
休暇で帰ることに……… ……… ● ……… … ……
無計画に使う)
二.その他)
非 か 常 な に り
l I
普 少 全 通 し 然
【 【 i
G)生 G−1 G−2 G−3 G−4 G−5 G−6 G−7 G−8 G−9 G−10 G−11
活 力
少しの指導で乗り物の利用ができる………
ちょっとしたケガの手当ができる……・………・…・……
名前がいえる・……… …●………….…●… …………
名前が書ける……… ..…… ………… …………
住所がいえる……… .…… …………ψ…………
自宅へ電話をかけることができる………
家族の名前が言える………・・…・………・・…・…
簡単なお金の両替えがわかる・………・・…………
つり銭の計算ができる………・…・……・…………・…・…・
小価な買い物がひとりでできる………
時計が読める……… ….……… ………●●…………
い か 時 た 全 つ な ま も り 々 に 然
l l l i l
1 1
H)親 の H−1 H−2 H−3 H−4 H−5
理解
親の子どもへの理解 (イ.よ い ロ.普 通 ハ.理解なし)
面会の状況 (イ.折にふれ来る ロ.時々来る ハ・殆ど来ない)
子どもへの関心 (イ.幸福を願っている ロ・ほっとしている ハ・あづけっぱなし)
休暇の時の帰宅の歓迎 (イ.常 に ロ.時 々 ハ.な し)
帰宅時の過ごさせ方
(イ.本人の生活拡大に配慮している ロ.家の中での生活が多い)
ご多忙の中,ご協力ありがとうございました 調査期間 自 昭和55年4月, 至 昭和55年7月
118 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第28号
結果ならびに考察
1 ダウン症者の年令分布
ダウン症者の年令分布はTable 2およびFig 1に示す通りである。とくに, Fig 1に おいて,15回忌ら18才までは上昇し,18才から29才まではその人数が25人前後で安定した分 布を示している。しかし,30才から下降がはじまり,34才で第一の断層が,38才で第二のそ れが,つづいて49才で第三の断層がみられる。第一の断層は戦後まもなく生まれた子どもた ちであるが,彼らが学二期に達した頃から全国に精神薄弱児の収容施設ができはじめ,教 育がなされるようになってきたことによるものと考えられる。第二第三の断層については
f 32 30 28 26 24 22 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2
f
筆
♂
,●,
1 1 1
ρ
『
蔑
、
ヤ
〜
1
へ
ll
男 女
、
1516171819202122232425262728293031323334353637383940414243444546474849505152535455565758596061626364
Fig.1 Table.2 ダウン症者の年令分布
ダウン症者の年令分布
♂ ♀ 計
年 令
f % f % f %
15 〜 19 20 〜 24 25 〜 29 30 〜 34 ε5 〜 39 40 〜
43 81 61 40 14 10
17.3 32.5 24.5 16.1 5.6 4.0
31 54 55 32 8 8
16.5 28.7 29.3 17.0 4.3 4.3
74 135 116 72 22 18
16.9 30.9 26.5 16.5 5.0 4.1
計 24gl …1 188 ・…i 437t 99.9
0〜4才の死亡しやすい時期を経過したダゥソ三者は30才以上生存可能となるが,50才以 上まで生存する人は少ないといわれていることを示しているようだ8)9)。次に57才(大正11 年10月一)の女性一人と,64才(大正4年12下生)の男性一人が健在であることを見出した。
Table 3はダウン訳者のst別の年令分布を示し, Table 4はst別の男女比を示したも のである。なお,st①は福祉施設入所者であり,st②は家庭から一般企業へ通勤している 者であり,st③は家庭から訓練所や福祉作業所に通っている者であり,st④は家庭で両親
と一緒に生活しているものである。つまり,st①は親元を離れた施設が生活の基点である のに対して,st②③④は家庭を生活の基点にしているものである。 Table 3によると,
st②③④のものはst①に比べ若い者で占められている。これは障害をもつ者と共に生きた いという家族が最近多くなってきたということである。すなわち,「障害者と共に生きる社 会を」ということに障害者をもつ家族にして今やっと目覚めて来た証拠だと思う。
Table 4はst①において女性の人数が男性のそれより有意に少ないことを示している。
このことは他の精神薄弱者についても全く同じことがいえるし,女の子を手放して何かされ はしないだろうかという女の子に対する親の不安・心配によるものだと思う。ところが,st
①に女性が少なければ当然その分だけst②③④に女性の人数が多くなり,全体としては男 女の構成比が均等化されなけれぽならないはずである。 しかし,今回の調査ではtota1に おいても男性の数が女性の数よりかなり多い。このことは,もともとダウン症(児)者は男 性が女性に比べて多いということではなく,家庭にいるダウン症者の実態把握が非常に困難 であるということを示していると思う。小鳩会の支部分会も発足して日が浅く,その上幼い
Table.3 ダウン症者のstatus別の年令分布
年 令
】5 〜 19 20 〜 24 25 〜 29 30 〜 34 35 〜 39 40 〜
計
st.1
f %
57 108 108 64 22 17
15.2 28.7 28。7 17.0 5.9 4.5
3761…
st.2
f %
2 1 0 0 0 0
3 66.7 33.3
100
st.3
fl%
10 19 4 6 0 0
25.6 48.7 10.3 15.4
st.4 f
5 7 4 2 0 1
計
26.3 36.8 21.2 10.5
5.3
74 135 116 72 22 18
39巨・・1・gi1・・【437
16.9 30.9 26.5 16.5 5.0 4.1
99。9
Table。4 ダウン二者のstatus別の男女の比
st.1 st.2 st.3 st.4 計
性別 f % 引% f %
fi%
f %δ
♀
217 57.7 159 42.3
3 0
100 0
21 53.8 18 46.2
8 11
42.1 249 57.9 188
57.0 43.0
計i3761…13【1・・1391・・ 1gl…i437【…
120 長1碕大学教育学部教育科学研究報告 第28号
ダウン症児をもつ親の集りが主であることも手伝って実態把握が十分になされ得なかったよ うにも思われる。
H ダウン症者の教育
今回の調査時点でのダウン症者の最終学歴はTable 5の通りである。すなわち,中学校 の普通学級卒が2.3%,特殊学級卒が16.7%,学園(施設で義務教育を受けた者)卒が10.1
%,養護学校の中学部卒が19.2%で義務教育を受けたものは48.3%になる。養護学校の高等 胃筋はわずかに7.3%である。一方,小中学校教育過程を中途退学した者が6.4%,未就学者 およびそれに類似する者が38.0%である。
Table・5 ダウン演者の最終学歴
♂ ♀ 計
最終学歴 f % f % f %
普 中 5 2.0 5 2.7 10 2.3
特 中 39 15.7 34 18.1 73 16.7 養 中 51 20.5 33 17.6 84 19.2 学 園 21 8.4 23 12.2 44 10.1 養 高 21 8.4 11 5.9 32 7.3 中 退 13 5.2 15 8.0 28 6.4 未 就 学 52 20.9 34 18.1 86 19.7 そ の 他 47 18.9 33 17.6 80 18.3
計 24gl… 188 100 43■ …
ダウン症者の学歴を年令別に分析したものがFig 2である。まず年令が増すに伴って中 途退学者や未就学者および未記入者が増大している。第二に,25才から29才までのものに中 学校の普通学白岡業者がみられる。これは当時特殊学級が充分設置されていなかったことを 物語っている。第三に,年令が若くなるにつれて養護学校の中学部卒業者および高等二二業 者が急激に増大してきている。今後この傾向はさらに顕著になることと思われる。これらの
ことがらはまさに特殊教育の歴史そのものを反映しているように思われる。
次に,statusのちがいによって学歴にちがいがみられるのではないだろうか。それらの関 係を分析し,図示したものがFig 3である。 st②は対象者がわずか3名であるが,その全 員が養護学校の高等部卒業者である。st③は中学校特殊学級卒業者が1/3,養護学校の高等 部卒業者が1/3,残りの1/3の1/3つまり1/9が養護学校の中学部卒業者であり,1/9が学園で
の中学卒業者であり,残り1/9が未就学者である。st④とst①は共に未就学者が4割強い るという点で共通している。しかし,st④は残りの6割は高等部卒業者と中学校の特殊学級 卒業者と養護学校中学部卒業者で大体3等分されているのに対して,st①は特殊学級卒業者
と養護学校の中学部卒業者と学園卒業者が大部分であるが,中途退学者もいれば,ほんの わずかではあるが高等部卒業者や中学校の普通学級卒業者もいるといったバラエティに富
んでいる。
15〜19
20〜24
25〜29
30〜34
35〜39
40〜
特 中
養 中
底掌中未未
二三高園退字入
蓉
欝磯銚
糞簸聾獣瀞
・
普 中 蕪1
い、
▼
糠受;驚
ユ騰
p譲峯
謡鋳
c、説羅
灘:灘
・!{軸耽
灘鎌ミ灘1麟難 ゚撚灘騨,灘弾灘1…聡蝋藤
Fig.2年令と学歴との関係
st2
st3
st4
st1
普特 心懸学中心就学と未記入 中中 中 高園退
Fig.3Statusと学歴との関係
撮 ダウン症者の社会生活 (1)ダウン症者の生活習慣
ダウン悪者の生活習慣の形成状況を性 別,st別,年令別,学歴別に分析したもの がTable 6である。これらの数値は「いつ も」に対する評価を5点,「かなり」一4 点,「時々」一3点,「たまに」一2点,
「全然」一1点として処理したものであ り,以下同じ方法によるものである。生 活習慣はすべての機関で十分に指導される ので,他の領域に比べよく身についている 領域である。:Fig 4はst別に分析した生 活習慣の形成状況である。st②はわずか に3名であるが,さすがにすべての項目に わたって生活習慣ができあがっている。反 面,st①, st③およびst④においては
もう一歩の努力が必要である。 「ロッカー はきれいに使う」 「よごれた洋服を正しく 処置する」 「身体や顔,手足の清潔に気を 配る」 「爪をきれいにする」など,いい意 味でのおしゃれの習慣がとくに身について いないようである。家庭で両親と一緒に生 活しているst④においてはそれらの遅れ が著しい。それは系統だった習慣づけの甘 さと友人の行動を見る機会にめぐまれない ためと思われる。
生活習慣の各項目を年令との関係で図示 したのがFig 5である。 Fig 5が示すよ うに,ほとんどの項目が横ばいの傾向にあ り,一度身についた習慣は年令が増して も崩れないことがわかるQ 「歯をみがく」
「髪を洗う」 「風呂で上手に身体を洗う」
「洋服をハンガーなどにかける」 「よごれ た洋服を正しく処置する」 「下着類は洗濯 する」の6項目は30代後半から下降の傾向 9あるが統計的に有意な差は認められな
いo
122 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第28号
全 然
た ま
に
時
々 か な り
い つ も
生 活 習 慣 (1> (2) (3) (4) (5>
「はし1で食べることができる 噺 亀冒仰7瞥驚。㍗セ 鵠蹴・・ ・・騨●協 3 覧・筆 ・・雌・ 隔雫 2・・
自分でフトンの始末をする ・嘩瞬9隔,酵壽匙㌔・。=献爵し。・響3。武」試合逸鴫鞠♂.・畿○
人浴を好む ●・、・ ・●・ 噂・・,^6層・・5げ亀・。・り ・・●辱}・・魑・ゼ・亀{・
こぼさずきれいに食べる ・、.・・●騰、・噂・・●・・ ε「… メ・艶 辱3・ρ7●・ド悔 3
洋服を正しく着ることができる ㍗●.・孝・・.・ボ乙.・げr・賦辱・.唱・… .、♂・・・し●縄轟亀。… ,腫
歯をみがく .. ひ3.層.轄3F、・・の●… ^呂・謄●・・り戯 自分から起きる 朝 驚諮 ・甲・○拠・{亀噛読,,■・・.3.亀旨・髄凸・電.
髪を洗うことができる り ● ,ず覧、 ・.マ・,8・一 ・
風呂で上手に身体を洗う =. サ凄し●3◎=・. 、る,馳£・・関しの満・嵐茎
洋服をハンガーなどにかける } ●ρP● 脳∴仙●、.・ 縄L、・ 1.ぜ、い
ロッカーはきれいにっかう げr 叱誰 ^。戚 α睦 ● 堺
よごれた洋服を正しく処置する 廻る噛●・・の .鞭。。噛ρ赫
身体や顔・手足の清潔に気を配る ,● ● 4 ・ 鮮〜・・ 轟 鴨・.7・℃
爪をきれいにする 3●・9f ● ・亀 、・冒・ じ
下着類は洗濯する も 貿 ・・「ちイ・・・
月経の始末ができる 噌・ 冊・「軌・亀・ず裏戸巳「.5告・郵 ま.身篭
お・化粧をする 〔コ
」闘
一st①
Fig.4 Status別による生活習慣 (2)ダウン症者の集団生活への参加の状況
ダウン症者の集団生活への参加の状況はどうだろう。その状況を性別,st.別,年令別,
学歴別に分析したものがTable 7である。 st.別に集団生活への参加能力を図示したものが Fig.6である。 Fig.6にみられるように, st.②およびst.③とst.④およびst.①との間に ほとんどの項目において有意な差が認められた。前者は「かなり」な程度まで発達している のに対して後者は「時々」の程度までである。また,「ファイトがある」「競争心がある」
「進んで他人に働きかける」の3項目においては前者が「時々」の程度であるのに対して後
Table.6 性別, st別,年令別,学歴別による生活習慣
項目番号 Total δ 9 St① St② St③ St④ 115〜19・・一・・125−2gl・・一34、35−391・・一
2特中 3養中 4養高 5未就6未記
A−3 4.77 4.77 4.78 4.76 5.0 4.90 4.74 14.92 4.72 483 1465 4.82 4.61 }4.90 4.81 4.84 4.75 4.53
2 4.39 4.43 4.34 4.47 4.33 4.03 3.58 4.45 4.28 4.60 4.28 4.09 4.39 4.9014.60 4.62 4.45 4.21 4.22 10 4.34 4.03 4.38 4.34 4.67 4.10 4.58 4.23 4.38 4.43 4.25 4.09 4.39
、.、。}
4.38 4.36 4.56 4.24 4.36 9 4.31 4.35 4.27 4.29 5.0 4.54 4.37
1、.5。
4.30 4.35 4.15 4.05 4.50 4.80 4.62 4.44 4.66 4.18 3.97 4 4.20 4.11 4.33 4.17 5.0 4.44 4.25 14.35 4.25 4.30 3.97 3.77 4.06 4,801 4.48 4.35 4.85 3.99 3.92 14 3.98 3.87 4.13 3.95 5.0 4.18 4.11
11・.・5
4.02 4.14 3.86 3.23 3.53 4.50 4.30 4.27 4.34 3.76 3.67 1 31.88 3.98 3.76 3.87 5.0 3.89 4.0 1〔3・77 3.71 4.07 3.96 4.14 3.76 4・50o3.87 3.93 4.03 3.83 3.80
15 3.74 3.75 3.72 3.82 5.0 3.47 2.53 ll 3.82 3.68
39.1
3.72 3.38 3.41 41014.15 413 3.75 341 3.59
11 3.73 3.68 3.79 3.75 5.0 3.92 2.89 3.75 3.80 3.83 3.71 3.23 3.28 1S・201 3.93 4.05 4.10 3.47 3.58 5 3.72 3.68 3.78 3.65 5.0 4.31 3.67 3.68 3.93 3.82 3.56 2.95 3.24 4,4413.97 4.00 4.50 3.38 3.39
8 3.48 3.35 3.64 3.43 5.0 3.68 3.13 3.28 3.57 3.54 3.44 2.81 3.71 3.89 117.59
3.87 4.エ0 3.26 3.06 6 3.21 3.14 3.31 3.20 4.67 3.51 2.72 3.20 3.16 3.40 3.27 2.77 2.89 3・60 3.56 3.58 3.58 2.88 3.02 13 3.21 3.15 3.20 3.16 5.0 3.59 3.32 3.15 3.15 3.39 329 2.57 3.33 3.90 3.40 3.38 3.84 2.98 3.09 12 3.01 2.96 3.08 2.96 4.67 3.46 2.94 3.10 2.87 3.18 3.07 2.45 3.06 3.00 3.14 3.28 3.77 2.73 2.91 7 2.84 2.60 3.15 2.96 1.33 1.89 2.41 2.70 2.84 2.97 3.1ア 2.18 2.4正 3.33 2.94 3.71 2.26 2.61 2.38 17 3.87 3.87 3.84 4.59 3.50 4.34 3.70 3.86 3.87 3.43 4.00 3.20 4.06 4.33 4.73 3.67 3.48 16 1.51 1.40 1.45 2.5 1.11 L27 1.33 1.45 1.67 1.45 1.75 1.86 1.25 1.48 1.60 1.65 1.50
5
4
3
2 3
●〜
2
「はし」で食べ 自分でフトンの ることができる 始末をする
152025303540 1il i[ 1 1924293439
10
入浴を好む
152025303540 ilIl I
1924293439
9 4
一〜\〉
こほさすきれい 洋服を正しく着 に食べる ることができる
14
歯をみがく
一訊一一」一」一L一」一占_ _L__L_⊥_噌L一 _一r
1
152025303540
i I I I l I
1924293439
自分から起きる
152025303540
1111}1
1924293439
152025303540
1 1 1 1 1 1
1924293439
152025303540
1 } ! l i l
1924293439
152025303540
1 1 1 1 1 1
1924293439
5
4
3
2
5
4
3
2
15 11 5
髪を洗うことが 風呂で上手に身 洋服をハンガー できる 体を洗う などにかける
152025303540
1 1 1 1 } i
1924293439
8 6 13 12
〜 ロノカーはきれ よこれた洋服を 均体や顔、手足 爪をきれいにする いに使う 処置する の清潔に気を配る
152025303540
[ l l [ l l
1924293439
一」一騨」一占一一一一一 _L_.一」一 ユ52025303540
i l l l I 【
1924293439
ユ52025303540
1 [ l l l I
1924293439
ユ52025303540
1 1 1 } l l
1924293439
ユ52025303540
1 1 1 i l I
1924293439
152025303540
1 1 1 【 1
1924293439
7
下着類は洗濯する 152025303540
111111
1924293439
Fig.5 年令別による生活習慣
124 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第28号
Table.7 性別, st別,年令別,学歴別による集団生活への参加能力
項目番号 TotaI ♂ 孚 St① St② St③ St④ ・15〜1920〜24 25〜2930〜3435〜3940〜 1普中 2特中 3養中 4養高 ・未就菜記入
B−2 3.95 3.83 4.12 3.89 5.0 4.41 4.21 4.18 3.99 4.07 3.78 3.19 3.67 3.90 4.33 4.28 4.58 3.67 3.57
3 3.63 3.55 3.75 3.57 4.67 4.24 3.64 3.83 3.71 3.83 3.24 3.14 3.28 4.00 3.97 3.95 4.23 3.38 3.19 4 3.60 3.56 3.64 3.51 4.33 4.39 3.56 3.90 3.58 3.81 3.30 2.86 3.29 3.50 3.92 3.88 4.25 3.36 3.22 1 3.30 3.22 3.41 3.27 5.0 381 2.63 3.44 3.29 3.40 3.21 3.14 2.65 、3.44 3.61 3.36 3.47 3.19 3.08
5 3.11 3.09 3.14 3.01 5.0 3.95 2.93 13.35 3.17 3.28 2.92 2.43 2.12 3.22 3.65 3.23 3.53 2.87 2.71 6 2.99 2.96 3.03 2.93 5.0 3.65 2.5 3.26 3.13 3.12 2.75 2.24 1.82 3.11 3.50 3.20 3.55 2.74 2.51 8 2.74 2.78 2.70 2.70 4.33 3.39 2.0 2.79 2.74 2.96 2.60 2.38 2.11 2.60 3.24 2.80 3.06 2.52 2.55 10 2.28 2.34 2.20 2.24 2.67 2.82 1.75 2.19 2.25 2.53 2.30 2.05 1.50 2.33 2.54 2.44 2.58 2.10 2.10 9 2.27 2.29 2.25 2.26 3.33 2.58 1.60 2.10 2.22 2.45 2.41 2.15 1.89 2.33 2.40 2.35 2.40 2.15 2.34
7 2.04 1.95 2.16 2.08 1.33 1.86 1.58 1.93 1.94 2.15 2.15 2.00 2.12 1.90 2.15 2.06 1.52 12.05 2.13
集団生活への参加
全 然
(1)
た
ま に
(2)
時 々
(3)
か な
り
(4)
い つ も
(5)
自分のものと他人のものとが区別 できる
施設や職場のきまりに従って行動 する
挨拶をする
ドf:瀕夢.蓋盛唾電覧闇闇i準》ピ・惣{㌦・・㌧も闇闇磐簗『:。 ※
※
乙繍●謝麦::置論.乙・賢㌔〜∴・藍3…慈鞠・簾う8§・ ※
※
〜∴!諮∫三 瓢熔;な寵緊レ量噸叫二・=艦豊逆 ※
※
友達との接触を好む潔 脇四四;}澱
※
集団遊びの仲間にはいる
遊びのルールに従って行動する
≒謝書重r諺・こら撃三。1く聖置: ご: ・.「 ※
※
●驚・載:・・瓶、∫巖・。・・{《 ※
ファイトがある轡∴:留ボ灘
※
競争心がある獣解離 ※
進んで他人にはたらきかける
けんかをする
Fig.6
爆こ 畠・.嶺
. らち角}8
[=コst②
懸st③・…
一st①@st④
Status別による集団生活への参加能力