企業会計原則修正案の問題点
龍家勇一郎
目次
一︑序葦
二︑継続性の原則について
三︑引当金について
四︑その他の資本剰余金について
五︑P損益計算書について
六︑商法と会計の調整方向について 以上
一 序 章
企業会計審議会︵会長黒沢活教授︶第一部会︵部会長番場嘉一郎教授︶は︑本年二月に部会を開催し︑証取法監査
と商法改正案における商法監査との実質的一元化を図るため︑企業会計原則及び財務諸表規則と商法及び計算書類
経 営 と 経 済
七 O
規則との調整が行われることになった︒第一部会は︑小委員会及び研究会を設けて検討を進め︑さる八月五日に開催
された小委員会に大蔵省証券局幹事試案としての﹁企業会計原則法注解修正案﹂及び企業会計原則注解修正案﹂が提
出された︒今後この修正案について小委員会においても検討をする予定であるが︑取り敢えず事務局の試案のままで
発表され︑各方面の批判を仰ぎ︑今後の参考としたい腹づもりのようである︒そして︑企業会計原則及び注解の修正案
が固まれば︑それに基づいて︑財務諸表規則と計算書類規則を改正して両者の一致を図り︑さらに商法の計算規定の改
正を要するものがあれば︑所要の商法改正で要望意見をとりまとめることとなるのである︒今回の発表された修正案の
うちで︑主な修正事項は︑ 一般原則の中の継続性の原則︑重要性の原則等︑損益計算書原則の中で︑利益剰余金計算
書の廃止し︑これに代って現行の損益計算書に特別損益の計算区分を附加すること等︑貸借対照表原則の中で﹁繰延
勘定﹂を﹁繰延資産﹂としたこと︑引当金については︑企業会計原則としては︑負債性引当金に限るものとし︑商法
二八七条の二の引当金については︑貸借対照表上は︑負債の部と資本の部の中聞に特別引当金の部を設けて︑記載す
ることにした点︑その他の資本剰余金は貸借対表に科目を設けて記載する場合には︑その他の剰余金の区分に記載す
る等多くの修正事項を発表している︒筆者としては︑従来からこの商法と会計との接点の研究に興味を有し︑すでに
﹁経営と経済﹂において﹁商法会計規定改正に関する一考察﹂
( 昭
和 三
五 ・
二 ・
二 九
) ︑
﹁ 引
当 金
に つ
い て
﹂
( 昭
和 七
﹁改正商法における引当金規定とその問題点﹂ (昭和三八・一・一二一)︑について発表している
から︑今回の修正案に関して︑現在よりは︑よくなる方向への修正だと思うし︑賛成し得る点も多々あるが︑同意し
兼ねる点もあるので︑研究会のメンバーの人達が︑大きな問題として取り上げられたという継続性の原則︑引当金︑
その他の資本剰余金︑損益計算書と商法と会計のあるべき調整の方向について意見を述べることとする︒
継続性の原則について
今回の企業会計原則(注解も含めて)修正案における継続性の原則は︑現行の第二項﹁正当な理由によって会計処
これを財務諸表に注記しなければならない︒﹂という規定が削除さ
れたことが重要な修正である︒その代りに﹁注解三﹂が設けられ﹁企業会計上継続性が問題とされるのは︑処理され 理の原則又は手続に重要な変更を加えたときは︑
るべき一つの会計事項について正当と認められる二つ以上の会計処理の原則又は手続が存する場合である︒
このような場合に︑企業が任意に選択した会計処理の原則及び手続を毎期継続して適用しないと︑会計事実にな
んらの変化がないにもか﹀わらず︑算出された利益額に変動を生ずる乙とになる︒乙の結果︑財務諸表の期間比較を
困難ならしめ︑企業の財務内容についての判断を誤らしめる乙とになる︒従っていったん採用した会計処理の原則又
は手続について変更が行なわれた場合には︑変更が行われた期以降︑相当期聞について︑変更が行なわれた旨︑及び
その変更が財務諸表に与える影響を注記すべきである︒﹂と︒
このように︑今回の修正案は︑会計処理の原則及び手続きについて継続的適用が行なわれることを原則とするが︑
これについて変更が行なわれた場合には︑所要の注記によって︑比較可能性を確保すべきであるという趣旨となる︑
修正案としては︑ このような趣旨における継続性の原則を商法が﹁本法に定めのないものについては︑ 一般に公正妥
当と認められる企業会計の基準によるものとする︒﹂という規定を置くことによっで包括的に受け入れる乙とを期待
しているのである︒
今回の修正案において継続性の原則は︑その適用がや b 緩和されている印象がある︒従来の一般原則五の継続性の
原則の前段をさらに強める意味で︑後段の規定が設けられたのであるが︑ この﹁正当の理由﹂が解釈上統一できない
企 業
会 計
原 則
修 正
案 の
問 題
点
七
経 営 と 経 済
七
ことや︑またどのような場合をいうのか︑その内容が不明瞭であることから︑後段の規定は削除され︑それに代って
注解三の規定︑すなわち﹁いったん採用した会計処理の原則又は手続について変更が行われた場合には︑変更が行な
われた期以降相当の期間について︑変更が行なわれた旨及びその変更が財務諸表に与える影響を注記すべきである︒﹂
という規定が設けられたのである︒又商法上継続性の原則に関する規定がなく︑不明瞭である︒従って現段階におい
ては︑企業に継続性の原則を尊重させるためには︑変更に関する注記の内容を充実して︑変更が行なわれた期以降︑
相当期間について︑変更が行なわれた旨及びその変更が財務諸表に与える影響額を注記すべきであるし︑公認会計士
の監査報告書に重大な変更を指摘させる方向に進むべきである︒今回の修正案にはこのような意図があったように思
‑ わ
れ る
︒
今日の企業会計原則においては︑ その期間損益計算における費用︑収益の期間限定方法について︑ その唯一絶対的な
方法が認められない限り︑ 一般に是認しうるものとして数種の方法をそこに示している口その上で︑ そのいずれか一
つの方法を選択適用する段階では︑
由な判断で企業の選択した方法は︑ これを企業の自由判断に任すという形で幅を認めている︒しかし︑ 一たびその自
これを毎期継続的に適用しみだりにこれを変更して他の方法への選択︑適用を厳
に排除するということを要求している︒これは︑・そのいずれをとるかによって期間利益は大きく追ってくるので︑
もし︑継続性の原則が守られずに︑期間毎に会計処理の原則や手続を変更する場合は︑企業の期間利益の比較を通し
て知りうる企業の状況をも不明にする︒その上︑企業の利益操作にも用いられる恐れがあるからである︒このよう
に継続性の原則は︑期間比較性を保つための要請でもあるので︑
る ︒
その意味で期間比較性を重視することは当然であ
しかし︑会計の一般原則としての継続性の原則は︑期間的比較性(ヨュ o
品 片 山 ]
O の
B H
) ω
S E
広三のみを要請してい ]
る会計原則ではなく︑首尾一貫性を要請するものであり︑真実性を保証する重要な原別である︒山下教授もいわれる
ように ﹁企業会計の相対的真実性とは︑企業会計の内容としての期間損益計算の相対的真実性を意味する︒そこに
可能な範囲での企業会計の内容的真実性を要求する真実性の原則がとり上げられ︑その相対的真実性を保証するもの
であるが︑今回の修正案(注解三を含めて)からは︑ この真実性の要請をとりあげた個所は見付からないのは遺感で
あ る ο
継続性の原則を考えるとき︑実質的に企業の損益に影響する﹁実質的継続性﹂又は﹁内容の継続性﹂の問題もある
が︑流動︑固定の分類基準や項目名称︑配列︑様式等主として形式に関する﹁形式的継続性﹂の問題もある筈であ
﹁形式的継続﹂を守らなければ︑明瞭性を害 L ︑比較可能性も破壊し︑比較観察をも全く不可能ならしめること る ︒
になる︒今回の修正案では︑ この面も忘れられているので検討せられることを望むものである︒開くと乙ろによれば
大企業のうちでは︑継続性の原則の形式的な非弾力的な運用を望まないものが︑かなりあるというが︑太企業の利益
のために︑合理的な妥当性を有する﹁形式的継続性﹂を排除することは一考を要する問題と思われる︒
継続性の原則に関して︑最後に商法に﹁本法に定めのないものについては︑ 一般に公正妥当と認められる企業会計 の基準によるものとする﹂という包括的規定を設ける乙との可否に関する問題がーある D
お よ
そ ︑
一つの企業の財務諸
去を公表するという場合に︑その計算方法を明らかにし︑恋意的に変更して利益を操作してはいけないということ
l 土
一つの会計上の常識であり︑法律的にいえば一つの条理である︒じかしこのような抽象的な規定を商法にもち込
むとなると︑その基準に従わないものは︑すべて違法となり︑民事上︑刑事上の責任が間われることとなる︒又ある
論者は﹁商法に取り入れる場合︑包括的に一般に公正と認められる企業会計の基準による︒としたときには︑直接に
は継続性の原則をも含めて一般原則というのは入らない︒ただ個別の会計基準をとり入れるにあたって︑それらの基
企業会計原則修正案の問題点
,
七
経 営 と 経 済
七 四
本原理というか︑解釈指針というか︑要するに企業会計の考え方をとり入れたという乙とにならないでしょうか﹂
と︒又一般に公正妥当と認められる企業会計の基準という場合︑単に企業会計原則のみでなく︑広く学界︑業界等に
公表された会計諸原則が含まれることになり︑法規上種々の困難な問題が生ずるおそれがある︒
いずれにしても商法上に上述した包括的規定を設けることについては︑実務上かなり考察すべき問題点があるよう
に 思
わ れ
る ︒
( 註 ご
会計学一般理論山下勝治著(一三四頁)
( 註
二 )
企業会計原則の修正方向座談会記事(企業会計幻巻叩号)
企業会計原則修正案の若干問題木内住市稿(企業会計幻巻 U 号 )
( 註
一 ニ
)
引 当 金
l 乙
て 〉
て
今回の修正案(注解を含めて)における引当金は︑次の三つに分解して説明することができる︒
ー︑企業会計上の負債性引当金の考え方及びその範囲を﹁注解げ﹂において明らかにしたことである︒そしてこれ
らの引当金は︑法律上は債務に属するものといえるとし︑引当計上を強制したこと︒
﹁注解口﹂負債性引当金について(貸借対照表原則四の白の A の 3 項及び B の 2
項 )
将来において︑特定の費用たる支出又は収益の控除が確実に起こると予想され︑当該支出の原因となる事実が当期
その年度の負担に属す
ると合理的に見積もられる金額を損益計算書に計上するとともに︑貸借対照表には引当金として計上しなければな においてすでに存在しており︑当該支出の金額が合理的に見積ることができる場合には︑
ら な
い ︒
製品保証引当金︑売上剖一民引当金︑景品質引当金︑ 返品調整引当金︑賞与引当金︑修繕引当金︑ 工事補償引当
金︑損害賠償引当金︑事業税引当金︑退職給与引当金等がこれに該当する︒これらの引当金は︑負債性引当金とよ
ばれるが︑法律上の観点からは︑債務であるといえる︒すなわち︑負債性引当金は見積負債であり︑将来支払義務
の生ずる債務の見積額である︒退職給与引当金は︑労働協約等に基づく従業員に対する債務であるが︑製品保証引
当金は︑債務者が特定していない債務である︒又修繕引当金は︑将来︑当然に行なわれる修繕作業には支出がとも
なうので︑広義においては︑不特定人に対する債務といえる︒
負債性引当金は︑金額は未確定であるが︑その発生は︑確実な債務であるから︑ 乙れに偶発債務を含めてはならな
2 ︑これに関連して︑現行注解において﹁引当金﹂については︑ ﹁注解日﹂において︑貸借対照表上は負債の部と
資本の部の中聞に﹁特定引当金﹂の部を設けて記載することとしたこと︒そして︑商法二八七条の二の規定に基づ
く引当金を繰り入れ又は取崩したときは︑その繰入額又は取崩額は当期純利益の次の科目を設けて記載し︑当期未
処分利益の算定項目として取り扱う︒なお︑商法第二八七条の規定に基づく引当金の残高については︑貸借対照表
の負債の部の次に特定引当金の部を設けて記載する
と
従 来
︑
﹁企業会計原則﹂が引当金の概念規定をせず︑その﹁注解日﹂において﹁引当金には評価勘定に属するものと
負債的性格をもつものとの区別があるが︑後者については︑流動負債に属するものと固定負債に属するものとを区別
する必要がある︒﹂とし︑その例として
4 i
納税引当金︑修繕引当金の・ように将来における特定の支出に対する引当額が比較的短期間に使用される'見込のも
企 業
会 計
原 則
修 正
案 の
問 題
点
七
五
経 営 と 経 済
七 六
のは流動負債に属するものとし
つ 白
れているものは︑固定負債に属するものとする︒ 退職給与引当金︑船舶等の特別修繕引当金のように︑相当の長期間を経て実際に支出が行なわれる乙とが予定さ
としていたものが︑今回の修正案では︑
債性引当金のみに限定した考えを示したことである︒このように︑損益法的思考からみて︑理論的に正当と考えられ ﹁注解口﹂でその概念規定をし︑引当金項目から評価性引当金を除外し︑負
るもののみに限定したのであり︑引当金の性格を純化したものである︒このことは︑筆者も︑先きの論攻で引当金の
( 註
1 )
純化を主張したものとして︑大いに賛成である︒その限りにおいて﹁修正案﹂は︑問題はないのであるが︑問題点は
商法第二八七条の二に規定されている︑いわゆる﹁特定引当金﹂を(注解円以)において︑貸借対照表上は︑負債の部
の次に記載を認めたことである︒これは︑すでに述べた修正案の引当金概念の規定からすれば︑当然に本来的な引当
金として解されるものでなく︑計上利益算出後の計算になるものであることを確認したものであって︑結局︑利益性
( 注
2 )
引当金となってしまう︒その具体例としては︑番場教授もいわれるように棚卸資産の評価に際して︑価格変動準備金
相当額だけは︑低評価を認めるとか︑固定資産の償却に関して︑税法上認められる特別償却の範囲までは会計理論と
してはオーバーな減価償却を認める︒貸倒引当金にしても︑取立不能見込額を上回る部分を損失に備えたものと考え
るというように︑商法は保守的な見地から会計理論的には︑純粋費用でないものを︑費用と認めるのだ︒それが特定
引当金という姿をとって︑貸借対照表の貸方に出るのだと理解すべきだとしている︒
上述のように︑特定引当金は︑今回の修正案の取り扱いのうえからみて︑会計理論にかなったものではないので︑
特定引当金の会計処理を裏づける乙とはむづかしいことである︒これは︑特定引当金の会計処理と会計理論とは明白
に背反しているというところにその原因がある︒法の規定としては︑その規定の内容に則した論理がなくとも︑その
規定の設定されるべき理由が︑説示されることによって成立しうるわけである︒例えば︑輸出の振興とか︑資本の充
実とか︑というような経済政策的な論理を掲げることによって︑特別償却や特定引当金などを法の規定の上に制度化
するということは可能であるし︑また︑それが現実に行なわれているわけである口しかし︑ その制度が負担公平の原
則に反するとか︑公正妥当なものでないという非難が行なわれると︑その法の規定の内容となっている特別償却や特
定引当金についての論理が設定され︑合理化せしめられ︑裏付けられなければならないことになる︒
企業会計原則というものは︑会計理論のなかから摘出され︑会計学説の支持や批判に耐えて存在し︑また︑明日の
( 注
3 )
姿を求めて行くものであるが︑会計理論そのものではなく︑会計学上の主張そのものでもない︒また︑大企業の利益
擁護にかたまって︑その大義名分を失ってもいけないし︑法令追随主義におちいってもならないものである︒ある論者
もいうように︑企業会計原則は二つの面がある︒ 一つは︑会計に関する規範として︑すべての企業が︑.その会計を処理
するに際して守らなければならないものであり︑他の一つは企業会計のいはば︑ 理想像というべきべきもので︑最も
理想的な会計の処理に関する理論である︒すなわち︑企業会計原則は規範性と理想的性格とを混在しているものであ
る︒企業会計原則は正しい会計理論にしたがわ・なければならない︒そして会計実践は正しく設定された企業会計原則
によって導かれなければならないものである︒しかるに今回の修正案にみる特定引当金はそれ自体の論理によるので
なくして︑その会計処理上の取り扱いによって︑企業会計原則のうえでの合理化が企図されているのである︒しか
し︑会計的論理と会計的処理とは一体のものであるから︑依然として︑その処理上の困難は解決せられがたい︒この
修正案が商法第
287 条の 2 の引当金の取扱いについて︑大変苦心されたことは認められるし︑またこの提案されて
いる修正によって︑現在より改良されるだろうと思うのであるが︑公正妥当を欠くと思われ︑特定引当金は︑できる
企 業 会 計 原 則 修 正 案 の 問 題 点
, 七
七
経 営 と 経 済
七 J ¥ 、
だけ早い機会に商法からこの規定を削除してもらう方向に進めるべきと思われる︒
( 注
1 )
引当金勘定について 龍家勇一郎稿(経営と経済第四冊九 O
号 )
( 注
2 )
企 業
会 計
原 則
修 正
方 向
座談会記事(番場教授発言︑企業会計幻巻叩号)
( 注
3 )
会 計
原 則
と 商
法 税
法
忠 佐 市 著 ( 二
O 頁
)
四
そ の 他 の 資 本 剰 余 金 の 取 扱 い に つ い て
今まで︑企業会計原則では貸借対照表における資本項目の記載に関し︑ これらを資本金と剰余金とに分け︑さらに
剰余金を資本剰余金と利益剰余金とに︑その発生源泉によって︑分類した上で︑両者を区別して記載する方法をとっ
ていた︒このような記載方法は︑資本と利益の区別︑資本取引から生じた資本剰余金と損益取引から生じた利益剰余
金は峻別すべきであるという正当な会計理論に従ったものであった︒
財務諸表規則も︑ このような企業会計原則の考え方を殆んどそのまま採用し︑ その第五十九条で﹁資本は︑資本
金︑資本剰余金及び利益剰余金または欠損金に分類して記載しなければならない﹂とし︑資本の部を三つの中区分に
分かつべきものとしている︒
ところが︑法務省による計算書類規則は︑企業会計原則や財務諸表規則のような資本項目の記載方法を採用せず︑
資本の部を資本金︑法定準備金︑剰余金または欠損金なる三つの部に区分し︑資本項目をこの区分に従って記載すべ
きことを定めている(同規則︑第三十四条)︑すなわち︑商法規定にもとづく法定準備金が主要視されており︑資本
準備金と利益準備金との分別記載が要求されている︒ (同規則第三十五条)
し か
し ︑
乙こで両規則上に見られる最大の問題は剰余金の概念上の差異並びに金額的にも相違するということであ
る︒すなわち︑計算書類による剰余金の金額は︑法定準備金と再評価積立金の合計額だけ︑財務諸表規則による剰余
金より少ないのである︒
このような記載方法の差異は︑その根本的な考え方の相違に基づくものであるととは勿論︑その調整についても早
くから議論されていたとたろである口この難問を解決すべく公表されたのが︑今回の企業会計原則修正案である︒修
正案によると﹁資本は︑資本金に属するものと︑剰余金に属するものとに区別される︒剰余金は︑資本準備金︑利益
準備金︑及びその他の剰余金に区分して記載しなければならない︒株式発行差金︑無額面株式の払込剰余金︑減資差
益及び合併差益は資本準備金として表示する口その他の剰余金の区分には︑任意積立金及び当期未処分利益を記載す
﹁注解児﹂において︑剰余金について︑(貸借対照表原則四の臼)述べ︑剰余金は次のように資 る︒﹂と︑更らに︑
本剰余金と利益剰余金に分れるとし︑ ω 資本剰余金は︑株式発行差金︑無額面株式の払込剰余金︑減資差益︑合併差
益︑再評価積立金等︒ ω 利益剰余金は︑利益を泌泉とする剰余金︒としている︒そして企業会計審議会第一部会小委
員会の幹事の説明によると︑修正案においても︑資本刑判余金の概念は︑資本準備金及び再評価積立金の範囲よりも広
これは再評価積立金等を意味すると思う)資本準 いものであるという考え方は︑従来どおり保持したが(筆者注︑
金︑又は再評価積立金に該当しない資本剰余金を貸借対照表に科目を設けて記載する場合には︑その他の剰余金の区
分に記載されることになる︒と
このように修正案による資本項目が︑資本金︑資本準備金︑利益準備金︑その他の剰余金に分けて記載されるとと
は︑従来の企業会計原則のとっていた︑資本金︑剰余金なる区分の設定を否定したことを意味している︑特に﹁その
他の資本剰余金﹂についての取扱いに大きい疑問がもたれる︒企業会計原則修正案による﹁注解 2 ﹂ に よ れ ば ︑
商
企 業
会 計
原 則
修 正
案 の
問 題
点
七 九
経 営 と 経 済
; ¥ O
法上資本準備金とに認められる資本剰余金は限定されている︒したがって資本準備金に該当しない︑いわゆる﹁﹁そ
の他の資本剰余︑金﹂は損益計算上収益項目として処理されることは止むを得ない﹂とされている︒この解釈は︑会計
理論上認め難い難点をもっている︒現行の財務諸表規則第六三条が︑﹁その他の資本剰余金﹂を貸借対照表の資本の
部に記載すべきことを定め︑山資本準備金(商法第二八八条の二に規定する資本準備金)凶再評価積立金(資産再評
価 法
第 一
O 二条に規定する再評価積立金をいう)問前二号以外の資本剰余金で株主総会の承認を得て積み立てたも
の﹂としている︒そして財務諸表取扱要領第一三六において︑規則第六三条第三号に規定する前二項以外の資本剰余
金は︑資本補てんを目的とする財産贈与︑債務免除等による剰余金︑政府若しくは地方公共団体等の建設助成金︑若
しくは補助金︑貨幣価値変動に基づいて発生した保険差益等︒をいうとなっている︒しかるに︑今回の修正案は︑
﹁その他の資本剰余金﹂の貸借対照表記載につき︑なんら触れていないのである︒のみならず︑資本剰余金の概念
は︑資本準備金及び再評価積立金の範囲より広いものであるとするならば︑注解等で例示すべきではなかろうか︒勿
論商法では︑すでに述べたように﹁その他の資本剰余金﹂なるものを資本準備金とすることは︑認めてないのである
が︑これを﹁注解 2 ﹂ の ω にあるように損益計算書に収益として計上し︑当期利益に含ませねばならないということ
は︑何等商法の規定するところではない︒収益計上は一つの解釈にすぎないからである︒
今回の修正案にも述べられているように︑もし﹁その他の資本剰余金﹂が国庫補助金等のように認められるものが
あるとするならば ﹁その他の資本剰余金﹂は貸借対照表上︑資本の部の﹁剰余金﹂の区分に﹁資本剰余金﹂として
記載することが正当であると考える︒このことは会計学徒として︑資本と利益の区別を主張するものとして︑当然主
張すべきものだからである︒資本剰余金なる概念を存続させながら︑
﹁その他の剰余金﹂なる科目の下に︑任意積立金や︑当期未処分利益と同列に記載することは︑無理といわな ﹁その他の資本剰余金﹂を収益計上も止むなし
と し
︑
ければならない口今後再検討せられことを期待するものである︒
五 損 益 計 算 書 に つ い て
財務諸表の体系に関しては︑企業会計原則及び財務諸表規則上の財務諸表体系を商法及び法務省計算規則のそれと
では︑前者の体系は︑貸借対照表︑当期業績主義の損益計算書︑利益剰余金計算書︑剰余金処分計算書︑附属明細表
が存在し︑後者の体系には︑貸借対照表︑包括主義の損益計算書︑利益処分案︑財産目録︑営業報告書なるものが存
在している︒その中で特に問題となるのは損益計算書であって我国会社にとって伝統的な損益計算書は包括主義損益
計算書であり︑当期業績主義損益計算書は︑財務諸表規則による損益計算書として採択され︑昭和二十五年から今日
に至るまで︑有価証券報告書などを提出する上場会社はその作成の経験をもっている︒
今回の修正案では︑企業会計原則及び財務諸表規則の採用しておる当期業績主義の損益計算書をやめ︑包括主義の
損益計算書を採用したことである︒ただその末尾に剰余金計算の区分と云うものを作って︑依然として結合計算書と
これは︑損益計算書に利益剰余 .いう形をとっているが︑損益計算書それ自体が包括主義になったと云える︒しかし︑
金計算書を吸収合併して︑最終の報告金額を﹁当期純利益﹂とするのであるから︑そのように云えるかも知れない
が︑それは真実の意味で正しくない︒そもそも計算書類規則の損益計算書様式は︑経常損益の部と特別損益の部から
成っており︑当期利益としての配当可能利益益の算定に重点をおいているのである︒経常利益の部は企業会計原則に
いう固有の損益計算書のもとにつくられたものである︒又最近では︑企業会計原則も︑財務諸表規則も︑損益計算書
に B 様式として損益計算書と利益剰余金計算書結合計算書の作成を認めており︑当期業主義と包括主義の論争の終止
企 業
会 計
原 則
修 正
案 の
問 題
点
/ ¥
経 営 と 経 済
符を打っているのである︒乙う見てくると当期業績主義と包括主義との論争も終止符を打たれており︑今更包括主義
J ¥
を採用したという如きは︑新鮮味もなく︑企業会計原則を変更する意味をもたないと思われる︒もし︑損益計算書に
おいて両者を統一するならば︑会計理論性の少ない計算書類規則の特別損益の部を変更するよう商法の側に要請すべ
き で は な い か ︒
今回の修正案(注解ロ及び日)による損益計算書の中の特別損益の部は次のような形式になると思う︒
書 算 計
当 期 経 常 利 益 損 益
xxx
損 益 男 リ 特
xxx
前 期 損 益 修 正 益 (+)
xxx
固 定 資 産 売 却 益 (+)
xxx
前 期 損 益 修 正 損
︑ ︑
︐
J
ft¥
xxx xxx
xxx
xxx xxx
特定引当金取崩額 (+)
xxx
特定引当金繰入額 (ー)
xxx xxx
xxx
固 定 資 産 売 却 損 災 害 に よ る 損 失
xxx
税引前当期純利益 等
目的積立金の目的 に従った取崩額 前 期 繰 越 利 益 当 期 未 処 分 利 益
︑ ︑
︐
J
/ ︐ ︑ ︑ (‑)
税 期 純 利 益
(+) (+)
法 人 当 (ー)
この損益計算書の形式によれば︑損益計算書の最終区分が実質的には︑未処分利益剰余金の増減計算区分にあたる
ことになるが︑商法の考え方によれば︑ この区分も損益計算書の一部分と考えざるをえないのではないか︑又この計
算区分の増減額を算入する前の当期純利益は︑中間的な純利益だということになる︒こうした考え方が商法計算規則
に取入れられた場合︑商法計算規則にもとづく貸借対照表上の﹁当期純利益﹂は︑どのような数字が記載されるので
あろうか︒修正案からすれば︑おそらく貸借対照表上には﹁当期未処分利益﹂のみを記載して﹁当期純利益﹂は記載・
されないことになるのではないか︒この場合︑現行商法で貸借対照表のみを公告している現状では︑公告する己との
意味が少ないように思われる︒
更に問題になるのは︑特定引当金の利益剰余金的性格のものを認めた結果︑従来にも増して︑暖昧な性格をもったも
のが特定引当金に繰入れられ︑又その取崩しが自由に行なわれることになる︒このような特定引当金が何故負債性引当
金以外に必要なのか疑問とせざるを得ない︒引当金の項において述べたように︑損益計算書にも︑悪影響を及ぼし︑
企業会計の粉飾にも利用される結果になるのではないか︒その意味からも︑特定引当金は企業会計原則に認めるべき
で は
な い
︒
J....
ノ¥
商法と会計の調整方向について
上述のように今回の企業会計原則修正案は︑企業会計原則の独自の理論ではなくて︑商法への傾斜︑商法計算書類
規則に傾斜した修正であることが注目される︒これ今回の修正の目的が﹁証取法監査と商法改正案における商法監
査﹂との実質的一元化を図るため︑企業会計原則及び財務諸表規則と商法及び計算書類規則との調整を行うことにあ
るから考えられたものである︒そこで問題はこれら二つの監査を実質的に一元化するために︑どのような方法がある
のか︒そして今度の﹁企業会計原則修正案﹂に示されるような方法が最善の策であるか否かということである︒商法
企 業
会 計
原 則
修 正
案 の
問 題
点
ノ ¥
経 営 と 経 済
J ¥
四
計算規則の体系及び計算書類規則はドイツ型であり証取法︑企業会計原則の体系及び財務諸表規則はアメリカ型であ
る︒乙の両者の調整をはかるということは 一方では商法の指導理念である債権者保護の思想と他方では証取法の目
的とする株主保護の精神とをいかに調和させるかという課題に応えることである︒現在試みられている改正の方向
は︑企業会計原則を大幅に商法規定に接近せしめることによって︑ 乙の問題を解決しようとするものである︒乙の乙
とは︑企業会計原則の本来の性格を不明瞭ならしめ︑企業会計原則をいたずらに商法との調整の手段として軽々しく
扱うことは︑会計学徒としては断じて認める乙とができない態度である︒企業会計原則の修正では企業会計の自己の
論理にもとづくものに限り︑修正すべきもので︑企業会計原則はあくまでも法律制度等に影響されない︑企業会計の
あり方を指導するとともに︑絶えず現実の会計実践の改善のための指針となるものが望ましい︒このことは決して﹁実
践規範﹂としての企業会計に関する規準や準則を別に作ることと矛盾するものでない︒﹁修正案﹂の発表によって︑企
業会計原則は︑企業会計についての﹁指導原理﹂かそれとも﹁実践規範﹂かという企業会計原則の本質に関する問題
をなげかけた︒
戦後のわが国の企業会計について企業会計原則がこれまで︑相当の役割を果し得たのは︑それが現実的に行政ある
いは法令と密接にかかわりあいながら︑なお理論的指導性を保ったことがあげられる︒会計原則修正案があまりにも
法令追随主義におち入り︑あまりにも大会社の利益擁護主義にかたむくことは警戒しなければならない︒商法︑税法
などと企業会計理論また企業の会計方針と企業会計理論との関係は︑そう簡単に調整し得ないのであって︑その結果
として企業会計原則がその理論的指導性を失うことになる危険性をつねに自覚する必要がある︒
おもん見るに企業会計原則の修正案を発表した企業会計審議会はその構成メンバーに会計学者のみでなく関係各官
庁代表︑職業会計士代表︑および経済団体によって代表された経理担当者代表者の意見調整の場になっている乙とか
ら︑他の各種の政府関係審議会と同様に行政に関する政治的交渉の場としての性格を備えている︒そのため会計理論
がそのまま通らないことが多いことはわかる口企業会計原則かその前文﹁企業会計原則の設定について﹂つぎのよう
な
( 1 ) 文
が あ る 企業会計原則は︑企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから︑ 一般に公正妥当と認められたと
ころを要約したものであって︑必ずしも法令によって強制されないでも︑すべての企業がその会計を処理するに当っ
て従わなければならない基準である︒
q L
企業会計原則は︑公認会計士が公認会計士法及び証券取引法に基き︑財務諸表の監査をなす場合において︑従
わなければならない基準となる︒
企業会計原則は将来において︑商法︑税法︑物価統制令等の企業会計に関係のある諸法令が制定︑改廃される
場合において尊重されなければならないものである︒ 円 ︒
こ の
ω は実務を要約して︑あるべき姿として公表されたものである点︑ ω において公認会計士の監査︑
において m w
は︑諸法令の改廃について尊重される点をあげているが︑これは明らかに理論的規範として設定された乙とを示して
いる︒これが昭和二十五年の改正法人税法や昭和二十六年の改正商法の規定に現われ企業会計原則の趣旨が相当程度
反映している︒このことから商法及び税法の改正にあたって︑企業会計原則が指導的役割を果してきたことは明らか
で︑その意味からもわかるように︑理論的規範としての性格をもっている︒乙れが︑昭和三十七年の商法計算規定が
改正された後は︑商法が強行規定たるに鑑み︑企業会計原則を修正しなければならないとして︑実践的規範としての
性格を有するとの見解が生じた︒(昭和三十八年十一月五日企業会計原則の一部修正について)このような見解は︑
昭和四十一年十月の企業会計審議会特別部会から発表された﹁税法と企業会計との調整に関する意見書﹂において︑
企 業
会 計
原 則
修 正
案 の
問 題
点
}
¥ 、
五
経 営 と 経 済
八 .
ノ¥
明らかにされている︒
このように︑企業会計原則は︑理論的規範としての性格と実践的規範としての性格の両面があるロこれが今回の修
正案では︑現行法令内での実践的な面を規制するという役割をもっ実践的な規範としての性格を強く打出したところ
に問題がある︒未だ不充分とはいえ︑現行の企業会計原則がせっかく社会的制度としての方向に︑前進しているにも
拘らず︑修正案は︑これを私的用具としての企業会計に後退した感を与えるものといえる︒
以上のように︑企業会計原則修正案の線に沿って︑財務諸表規則と計算書類規則とが︑ 一元的に調整された場合に
は 付
企業会計原則自体の性格が不明確なものとなる乙と︒
同
更に︑企業会計原則は事実上︑不要なものとなり実践規範としての意味すら失う可能性が生ずるのでないかと
思 わ
れ る
︒
( 注
1 )
筆者として︑商法と会計の今後あるべき調整の方向として︑先づ全国五十八万社以上ある株式会社を証労取引法の
適用会社とそうでない会社に分けて考える必要がある︒すなわち︑その会社の発行する株式を証券取引所に上場して
いて︑しかも資本の額が一億円以上の株式若しくは社債の売出をした会社でその資本の額が一億円以上であるもの
と︑然らざる会社とに分けて考える必要がある︒
( 注
2 )
このことは先きに発表した論文にも述べたのであるが︑株式会社の財務計算に関する商法現行諸規定は相当な規模
以上の会社に関する限り︑近年大いに進歩したとはいえ︑未だ完全とはいえない状態である︒大規模な公開的な取引
所に上場されている株式会社の計算規定はどうあるべきか︒それが財務諸表規則といかに調整すべきか検討すべき余
地を残している︒
今回の企業会計原則修正案が問題としているところは︑商法と会計との問題という取りあげかたをするよりも︑証
券取引法と商法との問題として取扱う方が適切ではないかと思われるからである︒株式会社の実務担当者として拘束
を受け︑重要視するものは︑商法および計算書類規則と証券取引法および財務諸規則︑監査証明規則とであるからで
ある︒それ故に商法と証券取引法との聞の法制上の調整が先決であると思われる︒
( 注
3 )
商法学者によれば﹁商法の目的は関係主体者間の経済的利益を調整することであり︑伝統的な債権者保護目的の中
に株主保護の思想を若干取り入れることによって商法計算規定を作成している︒これに対して︑証券取引法は投資家
の保護をはかるため︑有価証券の発行及び売買その他の取引を公正ならしめ︑且つ有価証券の流通を円滑ならしめる
ことを目的とするものである︒なお証券取引法は︑商法の定める株主保護規定では不充分な点があるので︑これを補
足することによって証券取引の確実︑円滑︑公正をはかり︑投資家保護の万全を期している︒いわゆる証券取引法は
商法ことに株式会社法の特別法としての性格をもっているものである︒
このように商法と証券取引法の関係は︑商法が普通法の立場にあり︑証券取引法が株式会社法の特別法の地位に立
つものである︒法の適用順序からいえば証券取引法は特別法であるから︑特別法が普通法に優先するから︑企業財産
の評価基準︑貸借対照表能力等について︑証券取引法のなかに商法と異なった規定があれば︑証券取引法の適用を受
ける会社は︑証券取引法の規定に従って︑財産の評価その他の会計処理をなすことを要し︑その限度内において︑商
法の規定の適用が排除されることになる︒また証券取引法のなかに商法の規定と異なった計算規定があれば︑乙の規
定を承けて制定される財務諸表規則も︑証券取引法が委任する範囲内において︑商法に反する規定を設けることがで
( 註 4
)
きる筋合となる︒
しかし︑証券取引法の中で計算に関する実体規定は存在せず︑ただその第一九三条において︑
企業会計原則修正案の問題点 一方で財務諸表の用
八 七
経 営 と 経 済
ー ︑
︑
1 ︑
語様式および作成方法についての形式的要件を省令(財務諸表規則)に委任していると同時に︑他方で財務諸表規則
の実体をなすものとして﹁大蔵大臣が一般に公正妥当と認められるところの﹂ (企業会計原則)によるものとしてい
るに過ぎない D ゆえに︑企栄会計原則は︑法律でない以上︑大蔵省の財務諸表規則は︑商法の実体規定の適用を前提
とすることは当然であると︑いうのが今日の法律解釈上の通説となっているようである︒
以上の解釈は普通法と特別法との位置づけからする法解釈としても当然の帰結かも知れないが︑当然の帰結である
から︑それを前提として規則を改正せねばならないということには︑ならないと思われる︒
現行の証券取引法は︑その計理体系としてアメリカの流れに沿って︑計算の実体規定は企業会計原則に委ねるとい
う方式をとっている︒流動的︑発展的な経済の実体に根をおろし︑絶えず経済の発展に照応せる計理の体系に方向づ
けを与えるものとして企業会計原則の存立の志議があるのである︒このように見ると企業会計原則をその本旨に反し
て規則聞の単なる調整の手段と考えることには異論がありうるであろう︒規則間の調整には︑その目的だけの試案を
作ればよいのである︒企業会計原則は企業会計原則としての姿勢をもっと明確な形で再建︑維持されるべきものと思
われる︒そのような形を通じて︑企業会計原則が実務のあるべき指針として有効に働くためには︑法制上の整備が先
( 註
5 )
づ 必 要 で あ る ︒
そのためには︑商法の規定を前提として︑証券取引法上︑とくに株主保護に必要な実体規定を設け︑名実共に株式
会社法の特別法とするよう改めるべきであると思う︒そして証券取引法の適用を受ける株式会社は︑商法の計算規定
を前提として︑それを制限するものとしての証労取引法上の計算規定に基き︑財務諸表を作成することを要するもの
とし︑証券取引法の適用を受けない株式会社は︑商法の規定に従って計算書類を作成しなければならないものとする
ことが必要である︒
吏に︑計算書類規則と財務諸表規則との一元化の要請を反映して︑できるだけ︑その用語︑様式および作成方法に
ついては一致するような調整を必要とするが︑必ずしも規則は一本にする必要がないのではなかろうか︒現行通り規
則は二元的であっててよいと思う︒証券取引法の適用会社は財務諸表規則を商法適用会社は計算書類規則により︑財
務諸表作成するのも︑この問題を解決する一方法ではなかろうか︒
この場合︑証券取引法の適用を︑つける株式会社については︑証券取引法の計算規定を前提として新しく作成される
財務諸表規則に基づき計算書類を作成し︑これを公認会計士監査の対象とする︒監査証明ある財務諸表は株主総会に
提出されると同時に︑大蔵省や証券取引所にも提出するようにすれば︑公認会計士監査は一回だけ行われることとな
るわけである︒
C ' i t l : 1 )
1 0 :
菜 〆 L
よ4