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CSR マネジメントシステムの設計思想

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経営 と経済 84巻 第3 200412 253

《研究 ノー ト≫

CSR マネジメン トシステムの設計思想

高 岡

Abstract

ThisarticleexaminesthetasksofCSR (corporatesocialresponsibili ty)management,andtherelevanceofconceptsrelatedtoCSRmanage ment:sustainability,thetriplebottom lineandstakeholderengage ment.

ThisarticlepointsoutthatthedesignconceptofCSRmanagement system issustainability‑oriented,becausethepurposeofthesystem is toachievethetriplebottom line.WhenthetargetofCSRmanagement issetforachievingsustainabilityofbothbusinessandsociety,thearti clesuggeststhatstakeholderengagementisimportantasarequlrement forthetriplebottomlineorientedCSRmanagement.

nconclusion,thisarticleshowstheproblemsofCSRmanagement thatshouldbeconsideredtofunctionasadiverofinnovationnotonly forthesustainabilityofbusinessesbutalsoforthatofsociety.

Keywords:CSRmanagement,thetriplebottom line,stakeholderen‑

gagement,sustainability,innovation.

1.は じ め に

近年世界的に産業界におけるCSR (corporatesocialresponsibility)の推 進 は著 しい. リーデ ィング企業 の間では,緩や かではあ るが,CSR概 念 に対 す る共通理解 も示 されつつあ る.正確 にはCSRとい う概 念の下 で現 代企業 に求め られる役割や課題 に関する共通認識がで きつつある といえる

(2)

(BSR2002;経済同友会 2003a,2003b;CBCC2004参照).また産業界にお け るCSR概念の受け入れや実施 ・推進の姿勢 として顕著なのが,CSRとい う概念の下で企業に求め られ る諸課題や役割をイノベーシ ョンの機会 として 捉 える, もしくはそれに関連づける という認識である.そ うした認識を実施 するビジネスシステムの要 となるのが,CSRマネジメン トシステムである.

そのCSRマネジメン トの重要 な課題 として共通 して指摘 され るのが, ト リプルボ トムライン とい う考 え方 であ る といえる. これがCSRマネジメン

トもしくは社会的責任経営の言い換 え ともいえる程 であ り,少な くとも トリ プルボ トムライン指向がCSRマネジメン トの要であるといえる.

CSRマネジメン トとい う と, とか くコンプライアンスの ように個別企業 組織の法令遵守の組織体制の問題 を想定 しがちであ るが,CSRマネジメン トの課題 を トリプルボ トムラインに設定 した場合,それは単なる組織内部の 経営管理の問題 というよりも,ビジネスシステム全体に及ぶ経営戦略に関わ

る問題であることに留意す る必要があ る.

しかし トリプルボ トムラインの議論 は とか く,それ として考慮する項 目や その達成度を判断する基準及び算定の方法に議論が傾斜 している.

本稿はCSRマネジメン トが,企業 のサステナビ リテ ィー と社会のサステ ナビ リテ ィーの実現や, もしくはそれ らの橋架を指向するのであれば, トリ プルボ トムラインの各項 目やその算定の問題 よりも,それ らの相互規定性を

より重要 な問題 と捉える必要性があることを指摘する.これに関連する問題 がステイクホルダーエンゲージメン トである. これは相互規定性や協議性を 射程 に入れた トリプル ボ トムライン指 向のCSRマネ ジメン トの運用上の重 要な要件 になる.

こうした諸要素 (概念)のつなが り方 こそが, ミクロの次元における持続 可能性 とマクロな次元 におけるそれを橋架 ・両立 させ る枠組みを条件づける ことになる.前者はビジネスの次元における,多様 な時には対立するステイ クホルダー とのインタラクシ ョンを通 じて起動 されるイノベーシ ョンによる

(3)

CSRマネジメン トシステムの設計思想 255

企業の持続可能性」であ り,後者の社会の次元 における持続可能性は,い わゆる 「持続可能な社会」の実現である.

ここで重要なのは既存のビジネスの論理の中でステイクホルダーの要請や 社会問題への取 り組み方が処理 されるのではな く,前者のような企業に とっ ての実益がビジネスの論理,少な くともその行い方の修正を伴 う形で,後者 への寄与 と併存するか, もしくは後者の結果 として前者が得 られるものでな ければな らない.それ こそがCSRとい う概念の下 で企業 に求め られる 「 会に対する責任」の現存性 といえるか らである.

本稿は企業経営へのCSR概念の統合 と機能化の方法を検討す る準備作業 として,CSRマネジメン トシステムの設計 に関わる諸概念の関係やシステ ム運用上の課題を検討することを 目的 とする.

次節では,産業界 におけるCSR概念 もし くはCSRとい う括 りの下で求め られる課題や役割に関する認識をフ ォロー し,その鍵が環境 ・社会 ・経済 と いう3つの領域のサステナビリティーにあることを指摘する.そしてそれが CSRマネジメン トの次元では トリプルボ トムライン経営を意味す ることを 指摘す る.3節では,CSRマネジメン トの成否 を左右 し, トリプルボ トム ライン経営を枠組みづけるステイクホルダーエンゲージメン トの問題を取 り 上げる.その特徴や管理思想 としての意義を明 らかにする.これ らの検討を 踏 まえ,4節 においてはステイクホルダーエンゲージメン トを介 したCSR マネジメン トを単に企業の持続性に寄与する組織学習やイノベーシ ョン ドラ イブ としてだけではな く,社会の持続可能性をも射程 に入れた場合の留意点 を今後の検討課題 として提示する.

2.CSR概念の共通認識とcsRマネジメン トの課題

1) csRのサステナ ビリテ ィー指向化

産業界 に限 らず,CSRとは何か, とい うことに関 して普遍的な合意が存

(4)

在す るわけではない.CSRとは 「社会の期待 に応 えてい くことであ る」 と い う類の理解 は分 か りやす く受け入れやすい反面 ,CSRとい う観点を持ち 込む ことの意義を相殺 して しまう.こうした理解は,た とえば 「ビジネスの 成功はニーズに見合 った事業を効率的に行 うこと」 といったかつてのビジネ スの鉄則 を物語 ったフレーズにおける認識 と本質的には大差な く,特定の含 意 (理解)を引 き出すまでの思考過程 における差異 を暖味 にして しまう.

こうしたCSRの概念や定義の暖昧 さが,現実 には存在す るはずの社会的 責任企業の把握 を困難 にして きた.それは社会的責任企業 を判断する基準の 暖昧 さを意味 す るか らであ る.現在 において もCSRとは 「社会 の期待 に 応 えるこ と」 とい った類の理解 が学術 ・産業の両世界でないわけではない

(e.g.経済同友会 2003,p.39).

しか し90年代以降,CSRの実施を求め られ る産業界 において,世界的 に CSRとい う概念の理解 において一定 の共通認識 がで きつつあ る といえる.

それは厳密 な概 念定義 とい うよ りは,CSRとい う概念の下で企業 に求め ら れる役割や課題,そ してそのビジネスにおける意義 に関する共通認識 という のが より正確 か もしれない.

この背景には,ISOにおけるCSRマネジメン トシステム規格の検討をは じ め,オル ターナテ ィブな観点か らの企業評価の台頭やそのための基準策定に おける国連や国際的なNGO,NPOの働 きかけがある.つま り環境問題への取 り組みを契機 とした政治,経済の世界 におけるグ リーニングシフ トが今 日の CSRの再考 と隆盛のベースになっている (高岡 1999).

グ リーニングシフ トをベース とす る傾 向は近年 のCSR概念の規定や理解 にも表れている. とりわけ産業界のそれにおいてである.た とえば,そこで はCSRとい う概念の中で今後企業が取 り組むべ き重要な課題や役割 として,

トリプルボ トムラインの実現やそれを媒介枠組み とした,企業の持続可能な 発展 と持続可能な社会の実現の両立 とい うことが掲 げ られる.

持続可能な社会やそれに関わる諸問題は元 々は草の根の世界の思想であっ

(5)

CSRマネジメン トシステムの設計思想 257

たか,少な くとも環境問題が らみの鍵概念であった (SpencerCooke1998,

p.100;高岡 1999)・ビジネスに関する領域の議論 としては,環境経営の 問題であった (SpencerCooke1998;高岡 2002)11そ うした諸概念が今,

CSRという概念の下で求め られる課題 として認識 されつつある.

た とえば,米国においてCSRの普及 ・浸透 に努めている産業人の非営利 団体であるBSR (BusinessforSocialResponsibility)や同様の団体である

CSRヨーロッパはCSRを以下の ように捉 えている.まずBSRCSRを 「 理的な価値 に敬意を示 し,人 々やコミュニティー,そして 自然環境を尊重す る形で,商業的な成功を達成すること」であ り,またCSRは 「社会がビジ ネスに対 して抱 く,法的,倫理的,商業的,そ してその他の諸期待に取 り組 むこと,そしてすべての鍵を握 るステイクホルダーの諸要求を公平にバラン スづける意思決定を行 うこと」を意味すると指摘する注2

そ してCSRヨーロ ッパは 「会社 がその戦略や組織,そ して業務手順 ( ペ レーシ ョン)を革新することによって,その株主 とステイクホルダーの双 方に対 して価値をもた らす ことができるように,その会社の社会的及び環境 的なインパク トを管理 し,改善するための方法」に関する概念であると言及

している注3

また 日本の産業界 としては経済同友会 (2003b)が類似の認識 を示 してい る.そ こではまず 日本の産業界 における従来までのCSR概念の 3つの認請

注 1 当初はサステナビ リティーという概念を巡 っては,その概念の原型 を培 った といえ る草の根の世界 と産業界 との理解に隔た りがあった,企業の持続可能性や経済の持続可 能性 と環境や社会のそれは異な り,エコエフ ィシェンシ‑ とい う名の下 に持続可能な発 展や社会の実現に寄与するとい うのは撞着語法で しかない との批判があ った,それが表 面上は,当初の隔た りが埋ま りつつある.つま り社会や環境のサステナビ リテ ィー と企 業q)サステナビ リティー との関係が論理的に整合づけ られて,理解 されている.こq)

りに関 しては高岡 (1999)を参照.

2 0nlineJnternet.16.August2004.Availablehttp://www.bsr.org/CSRResources/Is sueBriefDetail.cfm?DocumentID=48809のくIntroduction)の項 目欄参照.

3 0nline.Internet.16.August2004.Availablehttp://www.Csreurope.org/avoutus/FAQ/

csrのくwhatiscorporatesocialresponsibility)の項 目欄参照・

(6)

が紹介されている.それ らは①従来の経済活動 による価値提供を粛 々と行 う こと,(丑事業で得た利益を社会に還元するという意味の社会貢献を行 うこと, そ して③企業不祥事な どの防止 ・予防に努めること,などである (同上 pp.

30‑1.).つま り日本の産業界におけ る既存のCSR認識が,利益 を上げるこ と (①),それは社会に支持,求め られる財やサービス とい う価値を提供 し ている と同時に雇用や納税 を通 じて社会の発展 に寄与 していることを意味 し,そうした認識を核 として,利益の稼 ぎ方 とは別の次元で,まさに慈善や 横並びでフイランソロフィーを行 った り (②),非倫理的な事柄や違法行為 の発覚によるリスクの回避 という姿勢でコンプライアンス (③)に努めるこ

とをCSRと理解 してきたことを指摘す る.

経済同友会 (2003b)は,これ らの考 えはCSR概念を構成する一部ではあ るが,CSRとい う概念の今 日におけ る積極的な意義を認識す る必要性を強 調す る.それはまずCSR (とい うよ りは今 日のそれ として企業 に求め られ る役割や課題)を投資 として認識 し,事業の中に据 えることの重要性である.

ここで想定 される投資対象の根本は,企業の価値創造のあ り方を洗練させ ることに関連す る.CSRの理解やそれへの対応 をその洗練の参照軸 とする のである (同上,pp.67.,p.34)・さらにはCSRを企業 と社会の双方の持続 可能性を達成する触媒 と位置づける.

こうした認識のベースにあるのが,EUの政策におけるCSRを戦略的に捉 える考 え方であ る (経済同友会 2003a).EUはCSR概念を 「責任ある行動 が持続可能などジネスの成功を導 くことを認識 し,社会や環境に関する配慮 をその事業活動 に組み込み,ステイクホルダー との関係の中で自主的に取 り 組まれるべ き概念」であるとの見解を表明 している (経済同友会 2003,p.

33参照).

これはCSR概念の定義 としては酸味であるが,CSRを単なる法令遵守や 義務 とい うニ ュアンスを超え,環境や社会 と調和 したビジネスのあ り方を, 多様 なステイクホルダー との共創関係の上で考慮 ・実現 しようとする構想

(7)

CSRマネジメン トシ ステムの設計思想 259

,

企業の持続可能性の達成」 と 「持続可能な社会の実現」を一つの枠級 みにおいて考えることを指向することを意味する注4

ここで持続可能な社会の形成を担 う一翼 として企業に求め られるのは,ど ジネス という営為の本来的な役割 と強 くつなが りをもつ.それは,一見して 困難に思われる事柄を創意工夫 と起業家精神でブレークスルー し,それを可 能にするシステムを構築 ・機能 させるという働 きである.それが企業の価値 創造を意味 し,その結果,利益を得 る.ビジネスを社会変革 ・発展を産み出 すイノベーシ ョンの基点であると同時にその結節点 と位置づけるのである.

またビジネスは協働の場で もある.多様なステイクホルダー との相互活動 によって成 り立つ.これまで とは異なる,もしくは広範な領域の,多様かつ 多数のステイクホルダー との対話や協力を介 した,もしくは前提 とした協同 の下で,環境や社会に対する配慮を組み込んだビジネスを展開 し,企業 も正 当な利益を得て発展すると同時に,それを翻 って見れば

,

持続可能な社会」

の形成への企業の関与 と寄与になるような関係を 目指すのである.この点を 企業の 「社会に対する責任」の現存性 とする.

ステイクホルダー との協 同は,広義 (社会的次元)には持続可能な社会を 機能させる関係形成の原則であるが,狭義 (ビジネスの次元)には,イノベー シ ョンの源泉 となる新 しい, もしくは異なる価値 をもった差異 との遭遇の機 会 と理解することがEUのCSR構想のポイン トであろう: これを連動 させる 枠組みの設定がCSRマネジメン トの第一の課題 (設計上の) といえる.

4 EuropeanCommission (2001)G71eenPaperonPylDmOtingaEuy109eanFrameworkfor CorPorateSocialResponsibility,EuropeanCommission (2002)CorPwateSocialRespon‑

sibility:ABusinessContributiontoSustainableDevelopmentを参照.CSRやその根幹にあ る,持続可能な社会 とい う思想,その形成 に多様な主体の協調 とエンゲージメン トを位 置づける戦略はEU加盟のために批椎が求め られる,アキ コミノテールの規定にも反映さ れている・詳細はhttp://europa.eu.int/eur1ex/en/com/gpr/2001/com2001̲0366enOl.pdf

照 .

(8)

2) csRマネジメン トシステムの設計軸 としての トリプルボ トムライン こうしたCSR概念, よ り正確 にはその下 に求め られ る役割 に関す る認識 は,企業 におけ るCSRマネジメン トやCSR戦略の設計 に関す る議論 にも反 映 されている・た とえばBSR (2002,非訳 p.2)はCSRマネジメン トシス テムの究極の課題を 「社会,環境及び経済面 における企業責任にかかわる問 題 を企業の価値観,企業文化,営業活動及び組織のあ らゆるレベルにおける 事業の意 思決定 に組み込む こと」,つま り統合す ることであ ると指摘 し,そ れはよ り良好な総合的マネジメン ト慣行 を創出することに役立つ と言及 して いる.

これはCSRマネジメン トシステムの課題 として トリプルボ トムライン経 営やそ うした設計軸 か らシステムを構築 し,実践 す るこ とがCSRマネジメ ン トの本質的な課題であ ることを示唆 している注5.そのシステムの開発 ・ 運用 に関す る考 え方は,た とえば図1に示 したBSRの考 えるCSRマネジメン

トシステム設計の要点 にもあるように,ISOの環境マネジメン トシステムの 設計 と運用 において重視 され る継続的改善や,Plan‑Do‑Check‑Actとい う 管理過程論的な思想に則 っているといえる (BSR 2002,邦訳参照).

トリプルボ トムライン とは,ビジネスの行い方 において,一般的には環境 ・ 社会 ・経済 という3つの領域 に関わる諸課題を同時的に調和 ・融合させるこ

とを指向する経営管理 の概念である (高岡 1999,2002,p.237).とい うよ り,その ように認識することが肝要である.

とい うの も トリプルボ トムライン とい う概念は元 々は社会的責任投資な ど において,企業の対環境問題への行為や持続可能な社会実現への貢献度を評 価す るために考 え出された概念であった (Waddock 2002,pp.2045.).そ のために トリプルボ トムラインの議論 は, とか く環境 ・社会 ・経済の各領域 において,具体的にどの ような項 目を選定 (組み込むべ きか)するべ きか,

5 0nlineJnternet.16.August2004.Availablehttp://www.bsr.org/CSRResources/Is sueBriefDetail.cfm?DocumentID≡48809のくmplementationSteps)̲ManagementStruc turesの項 目欄参照 .

(9)

CSRマネジメン トシステムの設計思想

CSRに対するビジ ョン と支援の確立

<成功にとっての決定的な要素 >

<ポイン ト>

CSRに対する広範な支持基盤を組織全体 に渡 ってつ くるため,多方面の社内ステ イクホルダーを動かし,教育すること.

<具体的活動 >

CSRの明確な指令を作成する

CSRについて取締役会,CEO,経営幹 部チームを教育する.

取締役会,CEO,経営委員会 レベルの 支援 と関与の体制を確立する

組織全体の関心を盛 り上げる

CSR体制の構築

<9つの最重要ステップ>

企業の使命や規模,活動分野,企業文 化,事業構造,地理的条件, リスク分 野,公約範囲を調査 して,企業に最適 CSR体制を構築するプロセスに従事 する.

<CSR体制 に関する主なステ ップ>

動機 の理解

CSRの重要課題の特定

ステイクホルダーの特定 と評価 CSR活動を支援する職能組織の特定 企業のシステム,文化及び差 し迫 った 変更の分析

社内体制に対する諸 々の選択肢の評価 スタッフの配置計画の作成

職能横断型相互交流の設定

予算及び資金配分のプロセス及び枠組 みの評価

261

現在のCSRシステムの調査 ・内部評価 全体像 を評価する (どのようなCSRに関 する方針や計画,構造が既 に実施されて いるか, どこに空 白があるのかな どの把 握)

現在のCSRq)定義を評価する

現行のCSRについての方針,基準,価 値観,及びビジネス諸原則を評価する CSRに関する現在の公約,た とえば採 用または是認 している外部基準を理解 する

CSRに関わる部門,機能,又は職能横 断型組織を特定する.

現在取 り組んでいるCSR課題を特定す

ステイクホルダーマ ップを作成する CSRに関する現在の計画及び活動を評 価する

CSRの実践 に関連する評価,報告活動 を検討する

CSRマネジメン トシステムの実施

<長期的方針 >

CSRマネジメン トシステムの構成部分を 組織全体の諸プロセス及び諸計画に組み 入れること

CSRの公約 ・日的 目標の設定 方針の策定

ステイクホルダーの関与 全体的な課題の対応

サプライチ ェーンへの組み入れ 企画 ・戦略部門 との連携 CSRの業績評価 と報告

リスク管理 教育 と訓練

説明責任 と従業員の業績評価 コミュニケ‑シ ョ二/ 継続的改善

出典 :BSR (2002, 邦 訳,p.4)を修正

1:BSRの提唱するCSRマネジメン トシステムの構築ステ 、ソプ

(10)

またその項 目の充足を測 る基準や方法をどのように設定するか とい うテクニ カルな議論 に終始 している印象を拭 えない (Spencer‑Cooke 1998,pp.103

‑4.)6.た とえば表1GRI (GlobalReporting Initiative)7が,サステナ ビリティー報告書に記載すべ きとして推奨する3領域における諸項 目を示 し ている.

またBill(2000a)は持続可能な社会 とい う観点 と関連づけて,環境報告 書 という括 りを超 え,社会的パーフォーマンスの記載に力点を置いた,いわ ゆるソーシャル レポー トにおいて 目立 って記載 されだ して きている項 目を表 2の ようにま とめている.

これ らも確かに看過できない問題である.こうした情報公開がステイクホ ルダー との対話の基盤 にな り,アカウンタビリティーの度合いがその対話の 行方を大 きく左右するか らである (Spencer‑Cooke 1998,p.108)・

しか しこうした課題 は企業の トリプルボ トムラインの遂行度やCSRとい う観点か ら企業の善 し悪 しの評価を行 った り,評価 ・選定やコンサルティン グをビジネスにしている側か らはプライオ リティーの高い問題であるとして

も,実施者サイ ドに立てば以下の ような認識がより重要であろう.

トリプルボ トムライン指向のCSRマネジメン トに とって よ り重要である のは,ステイクホルダーダイアログ という括 りで議論 されているように,意 見や価値観の相違や対立を必然 とする多種多様なマルチステイクホルダー と

6 トリプル ボ トム ラ イン の動 向 ,算 定 項 目や評 価 基 準 ・方 法 な どに関 して は http://www.sustainability.co,uk/sustainability.htm,http://www.accountability.org.uk/, http://www.trilliuminvest.com/などを参照・

7 GIRは国連環境計画 (UNEP)CERESのパー トナーシ ップの下に1997年後半に制 定 された機関である.20006月に任意のサステナビ リテ ィー報告書のガ イ ドラインを 公表 し,同ガイ ドラインの策定その ものが,マルチステイクホルダーダイアログの過程 を経ている.同ガ イ ドラインはサステナビ リテ ィーの経済的側面,環境的側面,そして 社会的側面を結びつけることを第‑ とし,一般に受け入れ可能で,サステナビ リティー レポー トの核 となる書式 ・様式 (フ ォーマ ット)を確立 しようとす るその他の世界的規 模のイニシアティブ との比較可能性を検討 している.主な財源は国連基金や国連環境局 及び民間財団 (Ford財団,JohnDandCatherineT.MacAuthur財団,CharlesStewart Mott財団,SpencerT.andAnnW.01in財団)から拠出されている(Brichard2000a参照).

(11)

CSRマネジメン トシステムの設計思想 263

の交流やエンゲージメン トをイノベーシ ョン ドライバーに転換するとい う認 識 と,そのための橋架の枠組みづ くりである (Hun°etal.2002).それは 企業ガバナンスへのステイクホルダーの関与を も射程 に入れ,それ らが持続 可能 な企業のあ り方 を正統化す る要件 と位置づけ られ る (Spencer‑Cooke

1998,p.110).

CSRヨーロ ッパは,欧州のグ リーンペーパーやホワイ トベー タ一往 8にお いて主張 され る趣 旨を踏 まえて,CSRマネジメン トとはステイクホル ダー 重視の経営である とも言及 してい る. しか しい くら表面的 にステイクホル

1:GRlのサステナ ビリテ ィー ・レポー トの記載推薦事項

基 本 項 目 経済的側面の項 目 環境的側面の項 目 社会的側面の項 目

●CEOのステイトメソ ト

●報告をする組織のプロフィー

●エグゼクティブ ・サマリーと 鍵 となる指標

●ビジョンと戦略

●政策,組織,そしてマネジメ ン′トシステム

●パフォーマンス

●利益

●無形資産

●投資額

●賃金と利益

●労働生産性

●税金

●地域社会の発展

●供給業者

●製品とサービス

●エネルギー

●マテリアル

●水

●放出物,排出物,廃棄物

●輸送

●供給業者

●製品とサービス

●土地利用 と生物多様性

●環境関連法の遵守状況

●労働環境

●人権

●供給業者

●製品とサービス

出典 :Birchard (2000b,p.57)を基 に作成・

2:サステナ ビ リテ ィー指向の社会報告書 における記載項 目の動向

出典 :Birchard (2000a,p.57)を基に作成 ・ 8 4参照.

(12)

ダー重視 といって も,事後的な結果の説 明やポーズだけでは意味がない.

ここで求め られ るのは利害対立や認知 コンフ リク トの解消または緩和を 目 指 した相互理解であ り,その先にある,差異の融合を通 じたビジネスの行い 刀 (や価値創造の方法)の イノベーシ ョンである.それには保有す る資源の 質や差異 よりも,ステイクホルダーの質その ものが重要 になる注9

Waddock (2002,p.205)は トリプルボ トムライン とい う観点か ら企業を 評価する場合,複雑でホ リステ ィック (全体的)な組織パーフ ォーマンスの 考察が必要である と指摘す る.しか し単に結果 として表れる諸パーフ ォーマ ンスの実績だけを捉 えるのではな く, トリプルボ トムライン指向の経営にお いて も,項月 その ものやその基準 よりも,それを設定する際の協議制 もしく は相互規定性の枠組みやそれが機能 しているかどうかを加味す る必要があろ

う.そ うした場では当然な らが ら対立 を機会 と捉 える姿勢 と寛容 さが,ステ イクホル ダーエンゲージメン トとい う学習機会 における差異 との遭遇をイノ ベーシ ョン ドライブにつなげる前提 として指摘 される (Mirvis2000;Hun°

etal.2002;RondinellLondon2002).

ビジネスの遂行 もし くはマネジメン トにおけるこうした協働 の問題は, CSRとい う概念 と同様 ,古 くて新 しい問題 であ り, トリプルボ トムライン 指向のCSRマネジメン トを機能 させ る上で非常に重要 になる.

以下では,ステイクホルダーエンゲージメン トとい う概念 と関連づけて, CSRマネジメン トにおけるステイクホルダー との協働の問題 を考察する.

3.CSRマネジメン トとステイクホルダーエ ンゲージメン ト 1)トリプルボ トムラインの要件としてのステイクホルダーエンゲージメン ト CSRマネジメン トの構想やそのシステムの設計 において,重要 なステ ッ プの一つ としてあげ られるのが,ステイクホルダーダイアログやマルチステ

9 こうした着想のステイクホルダーダイアログやマルチステイクホルダーフォーラム の重要性に関しては,http://www.epe,be/,http://www.ecotext.co,uk/stakeholder.html

(13)

CSRマネジ メン トシステムの設計思想 265

イクホルダーラーニングなどの表現で語 られる,ステイクホルダー とのネ ッ トワーキングである.それはビジネスの何 らかの次元へのステイクホルダー の巻 き込み (stakeholderinvolvement)であった り,より戦略的,双務的な コラボ レーシ ョンやパー トナーシ ップであった りする.

BSRの重要 な役割の一 つで もあ り,設立の大 きな理 由 となったのが, こ うした関係の枠組みを調整することであった注10

ここでのステイクホルダー関係は,従来のビジネスパー トナー同士の協調 や提携 とは異な り,ビジネスセクター以外の,た とえば環境や人権などのア ドボカシーを事業 とするNGO・NPOな ど,組織 としてのステイクホルダー

3:ア ドボカシーグループによる企業に対するキ ャンペーンの類型

敵対的キ ャンペーンの種類 コラボ レーテ イブなキ ャンペーンの種類

ルール強制 ルール変革 価値観の押 しつけ 経済変革 コンサル テーシ ョン協働的 ステイクホル ダーエン′ゲージ メ二/卜 ア ドポ カ 企業行動 を変 企業に課せ ら 運動 グルー 経済的圧 力 相益的な問題解決策 ビジネス全体の変 シーグル えるために既 れてい る既存 プの価値観 を用 いたピ の開発 と助言 草の共創 ,そのた

‑プの 目 布の法律を運 法規の改正 を を企業 に採 ジネス慣行 (個別特定問題主導) めの相互理解

用強化 (規制) 通 じた企業行動変革 (規制) 用 させ る(説得) の変革

キ ャン′ 敵対的 な提訴 選挙や住民投 教育的 ,倫 パーフォーマソ ジ ョイン′トタスクフ ビジネスの全体的

‑ンの特 な ど 票 な どを介 し 理的価値観 スレイティング オース,対話の場 な な慣行の変革,節

た政治的行為 のア ピール などを通じた(ガティブ)イコヅトリ一二ソグやポスク ン/提供どの設置 と建設的 コサル テ‑シ ョーンの 供 ,製品や事業 のチ ャージ ョイ ン トベ ンしいビジ ョンの提 活動領域 裁判所 や公聴 左記 にプラス 企業の施設 企業の施 会社や運動 グループ 左記 にプラス,中

出典 :Bliss (2002,p.254)を簡略化 して作成 ・ 注10 た とえばBSRBE (BusinessandtheEnvironment)プログラムは,環境的に持続

可能なサプライチ ェーンマネジメン トの確立,持続可能 な発展か らの企業の価値創造シ ステム確立の促進,ネガテ ィブ環境 インパ ク トを削減す るための製品デザ イン,環境マ ネジメン トのベス トプラクテ ィスに関する情報収集 と提供な どを行 うプログラムである が,単 に情報交換 .提供を行 うだけでな く,パー トナーシ ップの調整やそq)訓練のプロ グラムや,そ こか ら今後求め られるであろう役割を学習 した り,それをビジネスに反映 させるノウハウが志向されている (Rondineli‑London2002,p.206,p.210)I

(14)

が想定 される.そ うした行動原理や活動の 目的性の異なる異種主体問でのス テイクホルダー責任や関係責任 (relationalresponsibility)の共有 を特徴 と する注11

こうした関係のあ り方 はステイクホルダーエンゲージメン トと呼ばれる.

これは二者間であろうとそれ以上であれ と,参加主体が一体化 して物事の推 進 ・運営に当たる関係を意味する.ステイクホルダーを企業側に巻 き込んで, 事業プロセスやプロジ ェク トに関与参画 (エンゲージ)させ る形態 と,両者 で協議会な どの中立地帯 を設定 し,そ こでの協議 内容をそれぞれの母体に反 映する とい う形態がある.後者 を経て前者 に移行す る場合 もある.

こうしたステイクホル ダー との関係形成の 目的 としては, これまで①相互 学習や(卦正統化,そ して① を介 した(勤相互理解や信頼 に基づ く企業変革や革 新 な どが指摘 されて きた (Payne2002,p.129;RondinelliLondon2002,

p.202,p.208,pp.2145.)

ステイクホルダーエンゲージメン トはその 目的 として, とりわけ③を念頭 にお く・それはステイクホルダー側 も同じである.た とえばBliss(2002,p.

264)は,NGO側 にも問題解決の創造的な解決策を発見する (共創する)意 向のある企業への働 きかけをステイクホルダーエンゲージメン トと呼んでい る注12

Bliss(2002)はア ドボカシー型の環境NGOの企業へのかかわ り方を表3 ようにま とめている. これは大局的なNGOの戦略転換 と, ここで焦点を当 てている企業 とステイクホルダー との関係の質を考察 ・規定するための要点 を示す.

注11 Windsor(2002,p.145)はこの責任の形態 として,以下の4つを指摘 している.それ らは (1)企業 と (特定の)ステイクホルダー との間の責任, (2)ステイクホルダー同士の 間の責任, (3)基盤 としての 自然を含む,共通のプール した諸資源に対する責任,そして (4)共同利益で結ばれた社会に関する責任,である.

注12 ここでの問題 とは企業 に とっては主にネガティブイメージの払拭であった り,正統 性の確保であ り,NGOに とっては環境や社会問題の発生を未然に防止 した り,解決 した

りすることである.

(15)

CSRマネジメン トシステムの設計思想 i267

またRondinelliLondon(2002,pp.2036.)は,企業 とこうしたNGO のコラボレーシ ョンの質的な違いを表 4のようにま とめている.かれ らは第 四段階までは社会貢献 というニ ュアンスでのかかわ り方であるのに対 して, 第五段階をきっけ とした第七段階への進展が,親密の点で もその意義の点で も,企業 とこの種のステイクホルダー との新 しい関係をめ ぐる現象 として重 要であると指摘する.

4:企業‑NGOの環境 コラボ レーシ ョンのタイプ

企業‑NGOの環境 コラボレーシ ョンのタイプ 徳をする方 企業にとつての効果

1.企業のNGOへの寄付,寄贈 NCO 企業にとつては社会貢献 .企業市民 としてのアピール

2.NGOの諸活動への従業員ボランティアの提供 NCO 同上,プラス個人 レベルでの学習

3.マーケテイング上の提携 NCO 企業の製品 .サービスへの信用,正統性の付与

4.NGOの特定のプロジェクト支援 NCO 企業イメージの向上,今後の要求内容や要求者の把握

5.NGOによる事業慣行の検証や助言の提供 企 業 企業活動全体への信用 .正統性の付与

6.NGOによる受賞活動 と教育的提携 企 業 同上,プラス組織的学習の機会

出典 :RondinelliLondon(2002,p.204)を簡 略化 して加筆 修 正 ・

この第七段階は表 3では主に協働的コンサルテーシ ョンに該当する.なぜ な らこれは企業によるビジネスへのステイクホルダーの巻 き込みを意味する か らである.

これはNGOの企業への取 り込み とは異なる.NGOの側にも巻 き込 まれる ことへの覚悟があ り,かつメリットもあるか らである注13

注13 た とえば こうしたNGOは企業批判 を展開す るこ とや政府 に圧力をかけ るこ とで企業 行動 を変 え よ う として きたが,それでは問題 の解決 には 十分 ではなか った (Lawrence 2002,p.197)・それ よ りも敵対的な雰囲気 を背景 に,企業の 自主的な改善 を促すサポー ター

としての役割 に徹す る方 が,環境問題 を改善す る とい うNGOの戦略 目的 に も適 うとい う 姿勢 に転換 して きてい る.

参照

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