Environmental Management Report , Kanazawa University 2016
環 境 報 告 書
2016
目 次
7.生物多様性の保全状況
・角間里山本部の取組み………33
8.法令遵守の状況
・環境調査チームの活動について………35
・コンプライアンス研修について………35
・排水管理について………35
9.社会的側面に関する状況
・金沢大学における安全衛生への取組み………36
・学生・教職員を対象とした防災訓練(角間キャンパス)の実施……38
・クマ被害防止対策………38 学長メッセージ……… 1
金沢大学環境方針………2 金沢大学環境基本計画 ………3 環境マネジメントへの取組み………4 リスクマネジメント体制………5
2.環境コミュニケーションの状況
・附属図書館の取組み………12 1.環境に関する教育と研究
・環境に関する教育について(総論)………6
・学長と汗を流そう!角間の里山下草刈りプロジェクト with PII……7
・赤谷プロジェクト・イヌワシ生息環境改善に学ぶ——白山ろく木質 燃料利用復活の生物多様性保全効果への示唆………8
・液中放電方式の高度化による液中難分解性有機物質の高効率処理技術 の開発………9
・環日本海域環境研究センターが目指す国際共同研究拠点………10
・能登大気観測スーパーサイトにおける共同利用研究の展開………11
3.地域・社会貢献活動
・中学2年生職場体験事業(わく・ワーク)の受入れ………15
・世界遺産「イフガオ棚田」の持続発展を担う人材の養成
(第2年度)………16
・インドネシアにおける寄生虫のフィールド調査………17
・石川県珠洲市における自動運転実証実験………18
4.環境配慮への取組み
・マテリアル・フロー(エネルギー・資源や物質の流れ)………19
・エネルギー消費………20
・水資源の利用状況………22
・大気汚染物質の排出と抑制策………22
・廃棄物の排出抑制と再資源化(リサイクル)………23
・PCB 廃棄物について………24
・化学物質の適正管理と特定化学物質の排出・移動量………24
・エネルギーの消費等に伴う温室効果ガス(二酸化炭素)の排出と 抑制策………25
・公共交通機関の利用促進………26
・金沢大学のフロン排出抑制法への対応について………26
・グリーン購入の推進………26
5.バリューチェーンの活動
・金沢大学生協の環境負荷軽減活動
~学内で手軽にできるエコ活動~………27
・「金沢大学キャンパス環境整備の会」の活動………28
6.学生活動
・第 10 回学生リユース市………29
・被災地への寄り添い活動………30
・里山保全活動と大学通学路クリーン作戦………31
・里山の特産品を使った商品開発………32
10.金沢大学概要
・金沢大学の主要施設………39
・金沢大学データ………40
2015 年度の環境基本計画と実績………41 編集後記………44
環境省「環境報告ガイドライン(2012 年版)」と「金沢大学 環境報告書 2016」の対照表………45
内部評価………46
環境報告書の作成にあたって………47
学長メッセージ
金沢大学は、その源流となる 1862(文久 2)年の加賀藩彦三種痘所の設立以降、150 年以上に わたる長い歴史を経て、現在の日本海側における基幹的な総合大学へと発展してきました。そして現 在、「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」を大学憲章に掲げ、「専門知識と課題探求能力、そ して国際感覚と倫理感を有する人間性豊かな人材」を育成するとともに、科学的な世界観と歴史観、
論理的展開力、己を磨く人間力、創造力、そして日本文化・異文化に対する深い理解力を備え、知的 基盤社会の中核的リーダーとなって挑戦し続ける人材の育成に努めています。
第3期中期目標・中期計画期間の開始年度となる平成 28 年度概算要求において、金沢大学の将来 を見据えた議論の末、本学は「重点支援3」の枠組みを選択しました。世界と伍する教育・研究を展 開するため、今後も改革を断行していきます。教育分野では、2016 年 4 月に「金沢大学<グローバ ル>スタンダード(KUGS)」を基軸とした共通教育の改革に向け、国際基幹教育院を創設しました。
そこでは、GS 科目のうちの1科目として「環境学と ESD」を開講するなど、環境教育を積極的に推 進していきます。研究においても、環日本海域環境研究センターの全国共同利用・共同研究拠点への 認定を機に、国内外の教育・研究機関と連携しつつ、より一層環境に関する研究の強化・充実を図っ ていきます。地域においては、「能登里山里海マイスター育成プログラム」や文部科学省「地(知)の 拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」等を通じ、多くの自治体と連携した ESD 活動を推進 しています。2014 年 9 月に金沢大学が代表団体となり設立した北陸 ESD 推進コンソーシアムは、
学校や企業等、様々な団体や関係者が北陸地域全体で環境・ESD に取組むべく、積極的にその活動を 展開しています。
金沢大学では、教育研究活動に伴う環境への影響を最小限に抑えるよう、環境負荷の低減を目指し、
全学的に環境マネジメントシステムを実施しています。2014 年9月には環境方針の見直しを行い、
法令や学内の環境関連規則の遵守の徹底、環境負荷の一層の低減を図っているほか、「金沢大学キャン パスマスタープラン 2015」では、中長期的なエネルギーの削減計画を視野に入れた環境負荷低減を 明文化しています。
2016 年 12 月には、第 8 回ユネスコスクール全国大会を金沢大学で開催します。地域の ESD 活 動の拠点として、環境配慮が今後の持続可能な社会づくりに不可欠であると認識し、引き続き、環境 分野での教育、研究及び社会貢献の一層の充実を図るとともに、大学活動による環境負荷のさらなる 低減を目指します。
金 沢 大 学 長
金沢大学環境方針
基本理念
金沢大学は、「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」の位置づけをもって、グローバル社会を リードする人材の育成と世界に通用する研究拠点の形成を目標に定め、〈先魁・共存・創造〉というコ ンセプトのもと、不断に改革に取り組むこととしています。
この理念と目標に基づき、教育、研究、診療、社会貢献等あらゆる大学の活動において、国立大学 法人としての社会的責務を自覚し、以下の基本方針の下、人間と自然とが調和・共生する持続可能な 社会の構築を目指します。
基本方針
1 環境に関する先進的教育を継続的に推進し、持続可能な社会の構築に貢献する人材の育成に 努めます。
2 環境技術、環境計測、環境政策、環境医科学、生物多様性など、幅広い分野において世界的 な視野に立ちながら地域の特性を生かした環境に関する研究を推進します。
3 本学の活動が環境に及ぼす影響を調査・解析するとともに、環境負荷の低減のため、資源・
エネルギーの使用量削減、温室効果ガスの削減に積極的に取り組みます。
4 化学物質の安全かつ適正な管理、廃棄物の適正処理と再利用・再資源化により、環境負荷の 低減に努めます。
5 環境に関わる知的成果を含むあらゆる情報を社会に還元・公開し、環境問題に対する啓発に 努めます。
6 本学が実施するあらゆる活動において、環境に関する法規・規制・協定等を遵守するととも に、本学の全ての構成員が協力し、継続的な環境マネジメントシステムを実施します。
2014 年 9 月 1 日 金沢大学長
山崎 光悦
金沢大学環境基本計画
基 本 方 針 目 的 行 動 目 標
1 環境に関する先進的 教育を継続的に推進 し、持続可能な社会の 構築に貢献する人材 の育成に努めます。
環境教育の推進
・環境問題に関する見識を備えた人材を育成するため、学士課程(教養教育専門教 育)及び大学院博士前期課程に、それぞれの課程に応じた環境 ESD のプログラ ムを構築する。
環境に関する社会教育の推進 ・ユネスコスクールや初等中等教育等における環境 ESD を支援する。
環境に関する地域社会貢献活動の 推進
・持続可能な社会の礎となる先駆的人材を養成するために、角間キャンパス内の 里山ゾーンを利用した先進的かつ独創的な教育・研究と地域連携を推進する。
2 環境技術、環境計測、
環境政策、環境医科 学、生物多様性など、
幅広い分野において 世界的な視野に立ち ながら地域の特性を 生かした環境に関す る研究を推進します。
研究域の特徴を生かした環境に関 する研究の推進
・地域から地球規模までの各段階において、人間社会システムと環境との相互関 連性に関する記録・研究を推進する。
・再生可能エネルギーや、バイオマス、廃棄物や廃棄エネルギーを基とし、持続 可能エネルギーを指向した研究を推進する。
・環境由来の物質や微生物、地球温暖化、食環境の変化などがヒトの健康に及ぼ す影響の解析・研究を推進する。
地域の特徴を生かした環境に関す る研究の推進
・環日本海域を含む東アジアの環境汚染や変動がヒトの健康や生物多様性に及ぼ す影響の解析と保全に関する研究を促進する。
・能登半島を中心とした総合的・多角的な地域研究を推進し、特色ある地域研究 の拠点を形成する。
3 本学の活動が環境に 及ぼす影響を調査・解 析するとともに、環境 負荷の低減のため、資 源・エネルギーの使用 量削減、温室効果ガス の削減に積極的に取 り組みます。
資源・エネルギー使用量の削減
・電気等資源・エネルギーの使用状況の把握及び消費量削減の方策を検討する。
・ポスターによる節電等の省エネルギーに関する啓発活動を行う。
・グリーン購入を推進する。
・水使用量の削減のため、節水機器の導入等を進める。
温室効果ガスの排出量の削減 ・通勤通学時におけるエネルギー消費について現状把握と改善に取り組む。
・公共交通機関(バス)の利用を促進し、環境負荷の低減に努める。
自然環境の保全管理 ・キャンパス内の山林の保全活動等、自然環境の保全管理活動を行う。
4 化学物質の安全かつ 適正な管理、廃棄物の 適正処理と再利用・再 資源化により、環境負 荷の低減に努めます。
化学物質の安全かつ適正な管理
・化学物質管理システムの運用を徹底する。
・化学物質管理のルールに関する説明会や化学物質管理状況の現地調査を行い、
適正管理指導を推進する。
廃棄物の適正処理と再利用・再資 源化の推進
・廃棄物の排出状況の把握に努める。
・分別回収を徹底し、リサイクル活動を推進する。
・廃棄物の適正処理を行い、再資源化に努める。
5 環境に関わる知的成 果を含むあらゆる情 報を社会に還元・公開 し、環境問題に対する 啓発に努めます。
環境に関わる情報の社会への還 元・公開
・教職員・学生相互の環境コミュニケーションを推進し、学内における環境活動 の普及に努める。
・環境関連情報を Web サイト等を通じて、積極的に公開する。
・地域とのコミュニケーションに努める。
・環境報告書を作成する。
環境問題に対する啓発
・環境講演会、環境ポスター及び Web サイト等を通じて、環境問題に対する啓 発を行う。
・環境への取組みと課題を全構成員に周知し、実行する。
・金沢大学環境月間を設けて、全構成員の意識を高める。
6 本学が実施するあら ゆる活動において、環 境に関する法規・規 制・協定等を遵守する とともに、本学の全て の構成員が協力し、継 続的な環境マネジメ ントシステムを実施 します。
法令・学内規程等の遵守 ・法令、規程等を周知徹底し、それらを遵守する。
すべての構成員の協力と総合的マ ネジメントシステムの運用
・教職員、学生、大学に関係する全ての構成員が協力し、環境活動を行う。
・学生主体の環境活動を支援する。
・環境マネジメントシステムを継続的に運用していく。
・なお、具体的な実施計画について、各地区で行動計画をたてて実施します。
・環境方針は、金沢大学のすべての教職員・学生及び関係者に周知するとともに、一般の方にも開示します。
環境マネジメントへの取組み
環境マネジメントへの取組み
金沢大学では、2007 年1月に金沢大学環境管理規程および金沢大学環境委員会規程を整備し、金 沢大学における環境管理に関する企画立案を行う環境委員会と、環境保全センター内に環境管理に関 する調査や助言を行う環境調査チームを設置し、PDCA サイクルによる継続的な改善を図るための環 境マネジメントシステムを構築しました。
環境委員会には、具体的な計画の立案等を行う環境マネジメント小委員会と金沢大学環境報告書の 編集を行う環境報告書編集小委員会とを設置しましたが、2014年度に環境方針、環境基本計画の見 直し・改訂を行うとともに環境マネジメントの体制も見直し、さらに 2016年度から、下図に示すよ うな新たな環境マネジメントシステムへと移行しました。
施設環境企画会議の下に環境マネジメント委員会を置き、その下部組織に環境報告書編集小委員会 を設置することで、今まで以上に実行力のある仕組みへと改善しました。
また、環境マネジメントのきめ細かい推進に向けて、大学の各地区(角間北地区、角間南地区、宝 町・鶴間地区、附属病院)ごとに地区責任者と環境関連委員会、環境推進員を配置し、地区ごとに環 境行動計画の作成、実施、評価を行っています。
各地区
金沢大学環境マネジメントシステム(2016.4.1 現在)
学 長
役員会
環境管理責任者 理事(施設担当)
環境マネジメント委員会 環境保全センター
環境調査チーム
施設環境企画会議
地区責任者 地区責任者 地区責任者 地区責任者
各部局長 各部局長
各部局長
環境推進員 環境推進員 環境推進員 環境推進員
部局等委員会 部局等委員会
部局等委員会 部局等委員会 取組みの実施
規制等の遵守など 取組みの実施状況の点検
改善のための助言など
大学の方針・目標の策定 活動計画の立案など 全体の評価と見直し
角間南地区 宝町・鶴間地区
角間北地区 附属病院
各部局長
教職員・学生 教職員・学生 教職員・学生 教職員・学生
C
heckD
oA
ctionP
lan環境報告書編集小委員会
リスクマネジメント体制
◆ 金沢大学リスクマネジメント指針と環境マネジメント
金沢大学では、国立大学法人金沢大学危機管理規程に基づき、学生及び教職員等に被害が及ぶおそ れがある様々な危機を未然に防止し、また、発生した場合に被害を最小限に食い止めるため、危機管 理に関する基本的方針を「国立大学法人金沢大学リスクマネジメント指針」(以下「リスクマネジメン ト指針」という。)として定めています。この中で具体的なリスクが緊急時対応リスク(自然災害、事 故・事件(火災、爆発、毒・劇物や放射性物質等の紛失・流失等)、システム障害、感染症、情報漏え い)、緊急時対応リスク以外のリスク(財務的リスク、施設・設備管理リスク、業務リスク等)及びコ ンプライアンスリスク(法務・倫理違反、不正・ねつ造等)に分類され、まとめられています。
環境に関しても、例えば化学物質の紛失・流失や感染性廃棄物の適正でない処理等は緊急時対応リ スクとして同様のリスクマネジメント対応が必要とされます。このことから、環境に関してもリスク マネジメント指針にある下図のような緊急連絡体制に基づいて対応することとしています。
金沢大学 緊急連絡網(金沢大学リスクマネジメント指針より、2016.4.1 現在)
担当理事等に 連絡
理工系事務部長 理工系総務課長 医薬保健系事務部長 医薬保健系総務課長 医薬保健系薬学・がん研支援課長 企画評価室次長
基金室次長(学友支援室)
法人監査室次長 広報室長 地域連携推進室長 人事課長 職員課長 財務部長 財務企画課長 財務管理課長 施設部長 施設企画課長 施設管理課長 研究推進部長 研究推進課長 産学連携課長
学生部長 学務課長 基幹教育支援課長 学生支援課長 入試課長 情報部長 情報化推進室次長 情報企画課長 情報サービス課長 病院部長 総務課長 経営管理課長 医事課長
人間社会系事務部長 人間社会系総務課長 総務部長
総務課長 学長秘書室長
人間社会学域 学域長
人間社会系事務部長 総務課長
総務係長
理工学域 学域長 理工系事務部長 総務課長 総務係長 医薬保健学域
学域長
医薬保健系事務部長 総務課長
医学総務係長
環日本海域環境研究センター センター長
理工系事務部長 総務課長総務係長 国際基幹教育院
教育院長学生部長 基幹教育支援課長 基幹教育管理係長
環境保全センター 埋蔵文化財調査センター
センター長 施設部長施設企画課長 総務係長
連絡必須
必要に応じて各課に 連絡・報告
学 長
理事(総括・改革・研究・財務担当)
理事(教育担当)
理事(国際・附属病院・同窓会担当)
理事(企画評価・情報・社会貢献担当)
理事(総務・人事・施設担当)
理事(特命担当)(非常勤)
監事
監事(非常勤)
必要に応じて 担当理事等に 連絡 学域、大学院、研究所・
センター、機構・附属施 設等の長
国際担当部長 国際機構支援室長 SGU 企画・推進室長
1.環境に関する教育と研究
環境に関する教育について(総論)
金沢大学では、第2期中期目標・中期計画において、「現代的課題のひとつである環境問題に関する 見識を備えた人材を育成するため、学士課程(教養教育・専門教育)及び大学院博士前期課程に、そ れぞれの課程に応じた環境教育のプログラムを構築する。」と明記し、全学的な環境・ESDの推進を 図ってきました。
2009 年度以降、共通教育科目のなかに、環境教育・ESD の中核となる「地球環境と持続可能な 社会づくり」を開講し、また、共通教育における「環境・ESD リテラシー」プログラム、学士課程専 門教育における「環境・ESD 応用プログラム」を開設するとともに、大学院博士前期課程における人 間社会環境研究科、自然科学研究科、医薬保健学総合研究科共通の ESD 科目を開設し、環境・ESD について体系的・段階的に学べるような仕組みを構築しました。
金沢大学は、グローバル化する社会を積極的にリードする人材を育成するため、2016 年度から国 際基幹教育院を創設し、世界で活躍する「金沢大学ブランド」人材の育成のための独自の教育方針で ある「金沢大学<グローバル>スタンダード」(Kanazawa University “Global” Standard;K UGS)を実施することとしました。2015 年度には、そのための準備作業としてグローバルスタン ダード(GS)科目の検討を行い、環境については、「未来の課題に取り組む:科学技術の動向、自然 環境変動、持続可能性などの多角的視座から、地球と人類、国際社会と日本の未来を総合的に予測し、
未来の課題に取り組んでいく能力」を育成することを目的とし、共通教育における選択必修科目とし て 8 回の講義からなる「環境学と ESD」(1 単位)を実施することとしました。これにより、2016 年度以降、環境・ESD について学ぶ学生数は飛躍的に増大することが期待されます。他方、この改革 に伴い、学士課程専門教育、大学院博士前期課程における環境・ESD 教育体系の見直しが必要となる ため、それらについての検討が、2016 年度以降順次進められる予定です。
※1
脚注
※1:ESD:「持続可能な開発のための教育」(Education for Sustainable Development)の略。
一人一人が自然環境や資源の有限性、地域の将来性等、様々な分野とのつながりを認識し、
持続可能な社会の実現に向けて行動する人材を育成する教育のことです。
1.環境に関する教育と研究
学長と汗を流そう!角間の里山下草刈りプロジェクト with PII
2015 年 6 月 20 日、角間キャンパス里山ゾーンにおいて「学長と汗を流そう!角間の里山下草刈 りプロジェクト with PII」を実施し、本学学生や海外大学の学生、地元 NPO や森林組合のスタッフ など約 80 名が参加しました。
「学長と汗を流そう!角間の里山下草刈りプロジェクト」は、山崎光悦学長の指導のもと、学生が 下草刈りで汗を流すことで、里山保全への理解を深めながら社会で活躍するための基礎力(人間力)
を養うことを目的としています。2015 年度 2 回目となる今回は、石川県の PII(プリンストン・イ ン・いしかわ)事業で来県しているアメリカのプリンストン大学などの海外大学の学生も参加し、里 山ゾーン内のアジチ谷周辺で下草刈りや植樹体験を行いました。
また、地元 NPO の方の指導を受けながら県の郷土料理・笹ずし作りにも挑戦。学生らは地元の食 文化に触れながら、互いに親睦を深めました。
下草刈り① 下草刈り②
笹ずし作り 記念撮影
1.環境に関する教育と研究
赤谷プロジェクト・イヌワシ生息環境改善に学ぶ——白山ろく木質燃料利用復活の 生物多様性保全効果への示唆
群馬県みなかみ町の北部に 1 万 ha ほどの国有林「赤谷の森」があります。この地域で、林野庁関 東森林管理局、日本自然保護協会、地域住民の組織である赤谷プロジェクト地域協議会の三者による 協働事業「赤谷プロジェクト」が行われています。「生物多様性の復元と持続的な地域づくり」を目標 に、三者が協議・協力しあって赤谷の森を管理・利用しているのです。本項では、この森で始まった イヌワシ生息環境改善の取組みを紹介し、小規模な木質燃料利用(昨年度報告した「薪のコミュニテ ィエネルギーとしての可能性」参照)の持つ生物多様性保全の意義を考えてみたいと思います。
2015 年秋、赤谷の森でイヌワシの生息環境を改善するための試験伐採が始まりました。イヌワシ は天然記念物ですが絶滅危惧種に指定され、現在日本には 500 羽〜650 羽ほどしか生息していませ ん。そのイヌワシの営巣場所を囲む森を、合計 165ha、伐採する計画です。イヌワシの狩り場とな る開かれた空間を造成し、子育ての条件を改善することで繁殖率向上を狙ったものです。
イヌワシは、北方の草原で小動物 を狩って暮らす大型の猛禽類ですが、
東日本から中部を中心に広く生息し ています。県鳥をイヌワシとする石 川県においても、かつては白山ろく を中心に多くのイヌワシが暮らして いました。ところが近年、急激に数 を減らし生息域を狭めています。一 体どうしてなのでしょうか。野生生 物と人間活動の複雑なかかわりにつ いてとらえる「社会・生態システム」という見方で説明してみましょう。
かつては日本のどの地域においても、燃料の薪や炭を得るために行う小面積の森林皆伐が見られま した。白山ろくにおいては、薪炭生産のみならず、焼畑や国有地でのブナ林伐採などがイヌワシの餌 場をつくり出していました。ところが、こうした経済活動は 1960 年代以降ほとんど行われなくなり、
これが生息環境悪化となったのです。つまり、かつての社会・生態システムにおいては、人間が樹木 を伐採してつくり出す草原的空間をイヌワシは上手に利用し暮らしていたが、その人間活動が失われ ヤマが森に戻ることでイヌワシは数を減らすことになった、というわけです。
住宅開発やリゾート開発、農業近代化などの人間の活動は、生物多様性を大きく損ねてきました。
しかし、里山のように人間が生産活動を行うことで維持されてきた自然が失われ、そこで暮らしてき た生物が危機に瀕しているのも事実です。そのような生物の生息条件を改善するためには、里山を生 み出していたのと類似の活動を再導入していかなければなりません。イヌワシの場合求められる小面 積皆伐型利用については、木質燃料利用であれば、温暖化対策や石油資源問題を背景に、現在の経済 状況でも再導入は十分に現実性があります。
白山はユネスコ・エコパークであり、生物多様性保全への貢献が期待されています。白山ろくで〈小 規模木質燃料利用+イヌワシ生息環境改善〉を実施することは、人間の営みと生物の共生を現代によ みがえらせるモデルとなる可能性があります。能登の世界農業遺産に対し、ヤマにおける生物との共 生の現代再構築モデルです。焼畑の歴史にも学んだ新しい社会・生態システムの生成が待たれます。
(担当:人間社会研究域経済学経営学系 市原あかね(人間社会学域地域創造学類担当))
出典)公益財団法人日本自然保護協会 出島誠一「イヌワシが狩をする環境の創出試験—
—みなかみ町赤谷プロジェクト」、 群馬県立自然史博物館 2016『ぐんまの自然の「い ま」を伝える報告会 2015 要旨集』
[online] http://www.gmnh.pref.gunma.jp/research/2015/report2015_6.pdf
1.環境に関する教育と研究
液中放電方式の高度化による液中難分解性有機物質の高効率処理技術の開発
近年、先進国においては医薬品が多くの人々が容易に利用できる環境にあるため、インフルエンザ などの特定の季節に集中して大量に利用されるようなケースでは、河川で医薬品が検出されるような 事例が報告されています。インフルエンザに感染している野鳥などがこの水を飲んだ場合、ウイルス がタミフルの効かなくなる耐性になる恐れがあると言われています。医薬品の中には、酸化力の高い オゾンを用いても分解が困難とされる有機物が含まれる場合があります。このような難分解性の有機 物を十分に分解するための1つの手法に、プラズマを用いた水質浄化技術が挙げられます。
物質の第4態であるプラズマは、自然界では雷やオーロラとして存在します。身近な人工的なプラ ズマは点灯している状態の蛍光灯の中に存在します。蛍光灯の中のプラズマはガスの温度に対して、
電子の温度が十分に高い状態にあるため、反応性の高い化学種を、低温の環境下で大量に作り出すこ とが可能です。このような反応性の高いプラズマを水と作用させるとオゾンよりも反応性の高い水由 来の活性種(OH ラジカル)を発生させることができます。OH ラジカルは、有機物と効率よく反応 し、分解作用が極めて高いことが特徴です。産業界では、プラズマを如何に効率よく生成させてラジ カルを対象物に作用させるのか、ということが課題であり、重要な研究対象になっています。
理工研究域サステナブルエネルギー研究センターの環境電力工学研究室では、環境負荷を少なくし、
なおかつ、高い効率で液中の有機物を分解するため、次に挙げる 2 つのプラズマ処理方法の研究開発 に取組んでいます。1つは、商用の 60 Hz の高電圧を用いた大気圧プラズマ生成効率を高める新た な手法(特願:2012-171342)を適用する方式です。この方式は安価な双方向電圧トリガー型の 半導体素子(SAIDAC)を複数用いることで、安価な高電圧源でも容易に高密度プラズマの生成が可 能となります。別の手法は、まず液体の処理室をポンプで減圧し、常温下で液体を沸騰(=飽和蒸気 圧)させます。このような気液界面での相互作用が高い環境下で、高密度のマイクロ波励起プラズマ を発生させ、有機物分解を行います。本手法は金属電極の代わりに耐腐食性能の高い Si 製のアンテナ でプラズマ生成を行えること、極性分子の加熱により気泡生成と放電が容易となることが特徴です。
現在、当研究室では、上記に挙げた液中放電手法のうち、後者の手法を発展させて、半導体デバイ スの製造工程に適用する研究開発を産業技術総合研究所と共同して進めています。具体的には、超純 水を原料ガスとし、半導体を作り込む基板上の有機物膜(レジスト膜)の除去を行うプロセスです。
水由来の反応性の高い化学種を水プラズマにより発生させることができるため、高速処理の実現と、
薬液を利用しないことで環境負荷の低減が期待できます。様々の分野での利用が期待されるプラズマ 技術の応用に、ご興味のある方は、当研究室のホームページをご覧頂ければ幸いです。
※環境電力工学研究室 Web サイト:http://epel.w3.kanazawa-u.ac.jp/index.html マイクロ波励起の液中気泡内プラズマの 発光様相
液中気泡内高電圧パルスプラズマによる メチレンブルー溶液の脱色
(担当:理工研究域サステナブルエネルギー研究センター・石島 達夫)
1.環境に関する教育と研究
環日本海域環境研究センターが目指す国際共同研究拠点
日本海を取り囲む環日本海域は、世界で最も産業・経済活動の発展が著しく、すでに世界の中核地 域の 1 つになっています。一方、急速な発展に伴う人為的要因による大気環境や海洋環境の変化が顕 在化し、その結果、大気・海洋だけでなく陸域生態系やヒトの健康や社会にまでその影響が及んでい ます。こうした危急の問題を解決して将来の環境を創成することが重要な検討項目の1つと考えられ ています。
東アジアの環境問題の危急 性と将来の環境研究における 環日本海域環境研究センター の役割を踏まえた場合、学内 及び国内外の研究者との連携 を拡充することが重要です。
そこで、本センターは、ミッ ションを改訂して環日本海域 にかかわる研究に絞るととも に、教員の最適な配置による スリム化を図り、2015 年 4 月に新しい組織として生まれ 変わりました。2014 年度 までの組織は 3 領域 8 研究
部門の体制でしたが、環境情報領域と地域研究領域の 2 領域は廃止し、自然計測領域は研究領域部門 として残しますが、環日本海域にかかわる研究に絞って、大気、海洋、陸域、統合環境の4領域に改 組するとともに、国内外の研究機関との連携を強化するために連携部門を新設しました。統合環境領 域では、大気—陸域—海洋を統合した物質動態と生態系・ヒトとの関係を検討する先進的な研究を実 践します。また、大学の予算を活用した共同研究を公募し、19 件の研究課題を採択しました。
さらに、本センターが中心となり、これまでの国内外の大気・海洋・陸域の観測ネットワークをベ ースにした「越境汚染に伴う環境変動に関する国際共同研究拠点」を文部科学省に申請し、2016 年 度から新規の共同利用・共同研究拠点として認定されました。2016 年 3 月 7 日−9 日には、共同利 用・共同研究拠点のキックオフ・シンポジウム「Trans-boundary Pollution and Integrated Research Studies」を金沢大学角間キャンパスで開催し、環日本海域環境研究センターの研究成果 の発信とともに、国際研究ネットワークの主な連携先との交流を深めました。改組された本センター は、能登大気スーパーサイト、臨海実験施設、植物園、
低レベル放射能計測施設を基盤とした観測研究体制を構 築し、金沢大学憲章に掲げる「東アジアの知の拠点」の 中核機関として、国内外の研究機関と連携し、研究・教 育を推進することが期待されます。
(担当:環日本海域環境研究センター・長尾 誠也)
2016 年 3 月開催のキックオフ・シンポジウムの集合写真
センター構成図
1.環境に関する教育と研究
能登大気観測スーパーサイトにおける共同利用研究の展開
私たちの暮らす北東アジア地域は世界的にみて最も大気汚染物質の排出が多いホットスポットとな っており、いまや世界共通の課題である大気環境問題の最前線にある地域といっても過言ではありま せん。大気汚染物質は依然最大の環境健康リスクに数えられるほか、地球温暖化など気候変動の要因 ともなることから、その発生源や長距離輸送の実態を解明することが喫緊の課題となっています。
ここでは、日本海側の能登半島が持つ地形を天然の環境センサーに見立て、その先端で行われてい る大気環境研究の取組みについてご紹介します。日本海に大きく迫り出した石川県の能登半島は、三 方を海に囲まれ、大気汚染物質の発生源となる大都市や工業地帯からも離れていることから、こうし た場所で大気の観測をすると、北東アジア各地から風にのって運ばれてくる大気汚染物質のわずかな 変化でも敏感にとらえることができます。金沢大学の環日本海域環境研究センターでは、いち早く能 登半島が持つこの地理的な利点に着目し、ここを大気観測研究の一大拠点とすべく「スーパーサイト」
の整備に力を入れてきました。
スーパーサイトとは、大気環境の分野で、様々な観測項目を網羅的に観測できる体制を整えた拠点 を指す言葉です。能登でのスーパーサイト構想が持ち上がり、珠洲市から廃校になった小学校の一角 を借り受け、地道に装置などを持ち込み始めてから足掛け 7 年が経ちました。その間、様々な人達の サポートもあって、今では、世界気象機関 WMO が推奨する大気汚染物質の観測対象項目について、
文字通り網羅できるだけの設備がほぼ整いました。また、スーパーサイトには、こうした設備面の充 実以外にも、より多くの研究者がそれぞれ得意とする最先端の観測手法を持ち寄り、共同研究を展開 する受け皿としての役割も求められます。その点においても、近年では国内の有力大学や研究所(茨 城大学、大阪府立大学、海洋研究開発機構、京都大学、国立環境研究所、産業技術総合研究所、首都 大学東京、東京学芸大学、東京工業大学、富山県立大学、富山大学、名古屋大学、酪農学園大学)の みならず、アメリカ(カリフォルニア大学サンタクルーズ校)やスペイン(カタロニア気候科学研究 所 IC3)など海外からも一流の研究者がこの場所を訪れ、共同で大気観測を行った実績があります。
これはひとえに、この場所がいかに研究上価値のある場所であるかという証でもあります。
能登を舞台とするこうした地道な取組みの甲斐もあって、環日本海域環境研究センターは 2016 年 度から「越境汚染に伴う環境変動に関する国際共同研究拠点」として、正式に文部科学省共同利用・
共同研究拠点に認定される運びとなりました。今後も、北東アジアの大気汚染問題の解決の一助とな るべく、スーパーサイトの名に恥じない活動を続けていきたいと思っています。
能登大気観測スーパーサイト(珠洲測定局)の概観:観測部屋には所狭しと最先端の大気観測装置が並ぶ(左)、
屋上に PM2.5採集装置を設置に来た東京工業大学の先生方と(右)
(担当:環日本海域環境研究センター・松木 篤)
2.環境コミュニケーションの状況
附属図書館の取組み
附属図書館は、第 2 期中期目標・中期計画に掲げられている「環境問題に関する見識を備えた人材 を養成すること」という目標を受け、2010 年度以降「環境学コレクション」の整備を行ってきまし た。このコレクションは、環境問題に関する学際的な資料を幅広く収集するコーナーで、2016 年 2 月末現在、5,181 冊となっています。また、地域社会と連携した活動として、①「金沢大学附属図書 館 ECO 学習コンクール」の実施、②「金大生による“調べ学習”教室」の実施、③「いしかわ環境 フェア 2015」への参加、④「いしかわ事業者版環境 ISO」への登録等を行いました。以下に、これ らの取組みについて紹介します。
① 「第 4 回金沢大学附属図書館 ECO 学習コンクール」の実施 2014 年度に引き続き、「第 4 回金沢大学附属図書館 ECO 学習コンクール」を実施しました。2015 年度は、
小学生部門 17 点、中学生部門 34 点、計 51 点の応募が ありました。本学の環境分野関係教員、本学附属小学校及 び附属中学校の副校長、金沢市内小中学校の校長等の 10 名の審査員のほか、本学学生の選考による審査の結果、学 長大賞(各部門 1 名)、附属図書館長賞(各部門 3 名)及 びアカンサスジュニア賞(各部門1名)の計 10 名の受賞 者を決定しました。
表彰式は、11 月 1 日(日)に自然科学系図書館で行わ れ、古畑徹審査委員長(附属図書館長)による審査結果の 発表、山崎光悦学長から各賞の賞状及び副賞の授与、学長 挨拶、審査委員長からの講評がありました。講評後は、大 賞受賞者に研究で苦労した点や楽しかった点、今後の研究 目標などのインタビューが行われました。最後に受賞者の 晴れやかな笑顔とともに記念撮影が行われ、表彰式は終了 しました。
学長大賞の表彰 表彰式後の記念撮影
2.環境コミュニケーションの状況
②「金大生による“調べ学習”教室」の実施
ECO 学習コンクールの実施に合わせ、夏休み期 間中にコンクール応募希望者を対象に研究や調査に ついてアドバイスを行う「金大生による“調べ学習”
教室」を次のとおり実施しました。
・日時:2015 年 8 月 7 日(金)
10:00~12:00、13:00~15:00
・場所:自然科学系図書館
本学の学生が、研究テーマの決め方や調べ方、
調査のコツ、研究のまとめ方などについて、参加 した小中学生にアドバイスを行い、小中学生は、
持ち寄った研究テーマについて、図書館資料やイ ンターネットを使って熱心に調査を行いました。
この企画によって、受講した小中学生及びその保護者のほか、本学学生にも環境及びエネルギー 問題を考える機会を提供することができました。
③「いしかわ環境フェア 2015」への参加
8 月 22 日(土)、23 日(日)に、石川県産業展 示館で開催された「いしかわ環境フェア 2015」に 参加し、ECO 学習コンクールの広報を中心に、環 境学コレクションをはじめとする附属図書館で行っ ている環境問題への取組みを紹介しました。
「いしかわ環境フェア」は、環境に関する様々な 展示や体験を通じて、県民一人ひとりが楽しみなが ら人と環境の関わりについて理解を深め、環境にや さしいくらしについて考え、実践していく契機とな ることを目的として(公社)いしかわ環境パートナ ーシップ県民会議が主催しているイベントで、145
の企業・団体等が出展し、約 2 万 6 千人の参加がありました。
④「いしかわ事業者版環境 ISO」に登録
2012 年度から引き続き、「いしかわ事業者版環境 ISO」に登 録し、環境負荷の軽減活動に継続して取組んだほか、「いしかわク ールシェアスポット」(夏の暑い日に涼しい場所を共有することに より、家庭の消費電力を抑制する石川県の取組みの趣旨に賛同し、
涼しく快適な時間を過ごせる場所として登録した施設・店舗等)
として、次のとおり図書館施設 3 か所を登録しました。
・中央図書館 8 月 17 日(月)~9 月 18 日(金)
・自然科学系図書館 8 月 7 日(金)~9 月 18 日(金)
・医学図書館 8 月 3 日(月)~8 月 28 日(金)
大学生と一緒に調査中
附属図書館の取組みを来場者に紹介
2.環境コミュニケーションの状況
⑤ その他の活動
(1)附属図書館ブックリユース市の開催
学生、教職員から不要になった図書の提供を受けて附属図書館に展示し、希望者の方に自由にお持 ち帰りいただくことで再利用を図り、環境負荷の軽減に資する企画で、毎年 2 回、春と秋に実施して います。合計 3,200 冊の図書を展示し、ほとんどが
再利用されました。
・春:4 月 30 日(木)~5 月 1 日(金)
・秋:11 月 16 日(月)~11 月 17 日(火)
(2)うちわとブランケットの館内貸出サービス
附属図書館では、地球温暖化防止と省エネルギーを推進するため、館内の空調温度を夏季は 28℃、
冬季は 19℃に設定しています。座る場所によっては、空調が効きにくい場所もあります。そこで、
省エネしながら少しでも快適に過ごしていただくため、夏季はうちわ、冬季はブランケットの館内貸 出サービスを行い、利用者から好評を得ています。
学生等でにぎわうブックリユース市
うちわの館内貸出(夏季) ブランケットの館内貸出(冬季)
3.地域・社会貢献活動
中学 2 年生職場体験事業(わく・ワーク)の受入れ
金沢大学環境保全センターでは、職場体験を通して様々な環境について考える機会になればと金沢 市立兼六中学校 2 年生男子 4 名の職場体験(2 日間)を受け入れました。
1 日目、中学生たちは、環境保全センター概要について説明を受け、廃液処理装置、角間南地区排 水モニター槽の見学をしました。次に、測定室で分析機器を使用し、廃液の受け入れ検査や、処理水 の検査など、原子吸光光度計を使用した分析業務の体験もしました。続いて環境保全センター長によ る「環境保全と持続可能な社会について」の講義を受け、地球にやさしく、環境に配慮しながら、社 会生活を送らなければならないことや、自然環境を大切に守っていかなければならないことに気づか されたようです。
昼食後、使用できなくなった実験系廃液ポリタンクを収集車に積み込み、民間の廃棄物処理業者の 廃棄物処理施設に搬入しました。現地では、実験系の廃ポリタンクを荷台から降ろし、指定のコンテ ナに詰め替える作業を体験しました。現地の担当者から、一連の廃棄物の処理の流れの説明を受け、
実際に、大型の廃棄物処理プラントを見学しました。また、大型廃棄物処理プラントの廃熱を利用し た温室では、トマト狩りの体験をさせて頂きました。その後大学に戻り、学長を表敬訪問し懇談を行 いました。懇談では、学長からご自身の学生時代の話を聞き、また、これからの時代には語学が大事、
特に英語をしっかり勉強するようにとのアドバイスを受けました。中学生たちは、「どうして学長にな ったのですか?」「学長として、どんなことに気を付けていますか?」「大学での仕事は?」等々、た くさんの質問をしていました。そして、最後に記念写真を撮りました。次に自然科学研究棟の建物を 見学し、学問の木の前では「櫂の木」の説明文を読み、環境保全センターに戻り、1 日目を終了しま した。
2 日目、廃液収集車に乗り、角間キャンパス内にある各廃液置場に、空容器の返却作業と、実験系 廃液確認・収集作業をノートパソコンとバーコードリーダーを使って行いました。環境保全センター に戻り、収集した実験系廃液を分類ごとに指定の場所に搬入する作業を行いました。昼食は、大学会 館の生協食堂に行きました。食堂では、同じく「職場体験」をしている同級生たちが、みそ汁をお椀 によそったり、後かたづけをしたり、忙しそうに働いている様子を見て、たくさんの大学生の中に交 じって昼食をとりました。
午後からは、創立五十周年記念館「角間の里」の見学をし、ビオトープで水生生物を見つけたりし て角間の里山を散策しながら、絶滅危惧種の生物・植物を探索しました。また、草木塔「草木の心」
の前では、草木塔の説明を受け「私たちは、自然に生かされているということに感謝する心」を学び ました。その後、環境保全センターに戻り、パソコンで「化学物質管理システム」を操作し、各学域 等の次回収集する実験系廃液リストを抽出し、「実験系廃液収集予定表」を作成しました。最後に、環 境保全センターのスタッフと 2 日間の職場体験を通しての感想を述べ合い、終了しました。中学生た ちは、この職場体験を通して「環境」についてたくさんのことを学んだことと思います。
中学生2年生職場体験事業「わく・ワーク」風景写真
3.地域・社会貢献活動
世界遺産「イフガオ棚田」の持続発展を担う人材の養成(第2年度)
フィリピン共和国ルソン島北部にあるイフガオ棚田は、1995年 にユネスコの世界文化遺産、2005年に世界食糧農業機関(FAO)
の世界農業遺産(GIAHS)に認定されています(写真1)。しかし、
近年、若者の農業離れと都市部への流失により耕作放棄地が増加し、
棚田の維持が困難になりつつあります。また、棚田への観光客が急 増しており、無理な道路工事により危険個所が生じたり、観光施設 の乱造により、棚田景観が損なわれており、2001年には「世界危 機遺産」に認定されました(2012年に解除)。イフガオ棚田の農 業、伝統文化を守り、持続発展をになう若手人材の養成が急務とな っています。
金沢大学は、「能登里山マイスター養成プログラム」などによっ て、能登半島の地域活性化のための人材養成に成果をあげてきまし
た。このノウハウをイフガオ棚田で活かすために、国際協力機構(JICA)の草の根技術協力事業(特 別枠)「イフガオ里山マイスター養成プログラム」[正式名:世界農業遺産(GIAHS)イフガオ棚田 の持続的発展のための人材構築支援事業]を2014年2月に開始しました(3年間)。
「能登の里山里海」は、佐渡の「トキと共生する郷づくり」とともに、2011年に日本で初めて(先 進国としても初めて)GIAHSに認定されました。しかし、どちらも急速な過疎・高齢化に悩まされて います。金沢大学では、2007年から能登里山マイスター(2012年からは能登里山里海マイスター と改称)を養成しており、2015年度までに128名の若手人材(地元の若者と大都会からの移住者)
を養成し、能登を活性化してきました。2016年4月から、さらに3年間の事業を実施中です。今回 の能登とイフガオが連携した若手人材の育成は、“GIAHS Twinning”[2013年に開催された世界 農業遺産国際フォーラムのコミュニケが提唱した二つの世界農業遺産(GIAHS)の連携活動]の実例 として、世界から高く評価されています。
「イフガオ里山マイスター」では、能登マイスター方式を取り入れて、受講者は研究課題に1年かけ て取組み、修了論文を作成、公開プレゼン、審査を経て、修了証書が手渡されます。受講生には、担 任教員が配置され個別指導する密度の高い学びと実践の場となっています。受講生は、世界遺産の棚 田がある4自治体から集まっており、多様な研究課題に取組んでいます。たとえば、イフガオ棚田で の伝統米の栽培、農産物の加工・販売、棚田の生物多様性問題(さまざまな外来種が侵入・定着して、
大問題を引き起こしています)、伝統文化の維持、エコツーリズム振興などです。1期生(20名が 2014年3月入講)は14名、2期生(26名が2015年4月入講)は21名が修了し、修了生ネットワ ークをつくり、地元自治体、政府機関、大学等のフォローアップ支援を受けて大活躍しています。
2015年9月には、イフガオ州大学の担任教員、マイスター修了 生、受講生ら22名が、1週間にわたり能登、金沢を訪問しました(写 真2。前年9月に第1回)。能登の里山里海の現場訪問と、能登マ イスターの教員、受講生、修了生、支援者らと交流しました。また、
能登マイスターのスタッフ、石川県立大学等の研究者もイフガオを 訪問し、交流とレクチャーを行いました。これまで2年間の事業に より、イフガオと能登の双方に活気が生ており、このグローバル連 携事業の成果が期待されます。
写真1.イフガオ・バタッド棚田(FAO 世界農業遺産、ユネスコ世界文化遺産)。
2016 年 6 月。
写真2.イフガオ里山マイスター養成プログラム 第 2 期生の能登・金沢研修団。金沢駅鼓門、
2015 年 9 月。
3.地域・社会貢献活動
インドネシアにおける寄生虫のフィールド調査
金沢大学は途上国との連携による寄生虫感染症対策を、2006 年から継続的にインドネシアにおい て実施してきました。これは科学研究費基盤(B)海外学術調査をベースに、医薬保健研究域医学系 寄生虫感染症制御学講座がフィールド調査として実施してきたものです。2015 年度は、9 月 14 日
〜9 月 26 日の 12 日間の日程で、引率教員のもと医薬保健学総合研究科院生及び保健学類学生がス ンバ島ワインニャプ村に入りました。
① 背景:かつては日本でも猛威を振るっていた多くの寄生虫疾患は、国内ではほぼ撲滅されましたが、
途上国では未だに高度まん延をみており、旅行者下痢症などの輸入症例が国内でも警戒を要します。
特に腸管寄生虫症は下痢や貧血の原因となる一方で、現地ではほとんど介入対策が実施されておら ず、撲滅を達成した先進国からの医療協力が、対策構築に貢献しうる感染症といえます。
② 目的:途上国における腸管寄生虫症のまん延実態を把握し、そのデータを保健衛生当局に提供する ことで、学校保健方式による寄生虫対策を現地に構築することを目指しています。
③ フィールドワークの概要:学校健診で採取した学童便と感染経路推定のための家畜・家禽・野鼠な どのヒト周辺の動物由来便を材料に、寄生虫の顕微鏡検査を実施しました。サンプル収集と顕微鏡 検査には、日本人学生と現地保健関係者が共同であたり、学生には寄生虫検出の実地体験を、また 現地関係者には感染症対策構築のためのエキスパート教育を提供しました。
④ 結果:256 名(男子 94 名、女子 162 名)の学童が健診を受診し、計 84 名(32.8%)が便検 体を提出しました。また動物便としては、野鼠、豚、山羊、犬などの合計 65 検体を採取しました。
人糞便の顕微鏡検査結果では、回虫 38(36.3%)、鞭虫 20(19.4%)、鉤虫 8(7.8%)、鞭毛 虫 15(14.6%)、アメーバ類 19(18.4%)などの極めて高い寄生虫の感染を認め、また動物で はさらに高い寄生虫の感染率(全般的にほぼ 40%以上)を確認しました。このような動物の寄生 虫が人にも感染するかどうか(人獣共通感染)の評価には遺伝子レベルでの寄生虫解析が必須なた め、DNA 解析による研究が院生らによって現在も進められています。
⑤ 対応・成果:以上のデータを現地保健衛生当局に提出し、検査陽性児童への駆虫を実施しました。
これまでの本活動を通じて腸管寄生虫の高度まん延の実態が調査地域に周知され、複数の校区での 学童健診の実施が保健当局で検討されています。
フィールドワークの風景
■ 顕微鏡検査(左)
主に保健学類検査技術科学専攻の 学生が鏡検を担当した。
■ スタッフ集合写真(右上)
エイクマン研究所(ジャカルタ)と 金沢大学の合同調査として実施さ れた。
■ 学童健診(右下)
インドネシア人スタッフとともに 実施した。
(担当:医薬保健研究域医学系・所 正治)