(一)四〇一
担保裏書について(Ⅰ)
立 木 謙 介
一、序論
ジュネーブ統一条約に基づく手形法では、裏書として、譲渡裏書に関しては通常のものと特殊のものとがある。前者 には典型的な効力として、権利移転的効力、担保的効力、資格授与的効力があり、後者では、これらの効力の一部が変 形されることになる。
ところで、ドイツの実務界では、担保裏書という署名が一般的に認められている。この裏書は通常、手形裏面に単純 署名の方式でなされ、それの目的は、手形債務者の増加による手形の流通力の強化、ひいては手形の割引を容易にする
* 福岡大学法学部教授
*
(二)四〇二
こ と に あ る。 こ の 担 保 裏 書 で は、 当 事 者 は 合 意 に 基 づ き 通 常 の 譲 渡 裏 書 に お け る 手 形 上 の 権 利 の 移 転 を 目 的 と せ ず、もっぱらに裏書における担保的効力の発生による責任の負担を意図するのである。
現 行 法 上 で は、 担 保 責 任 の 全 面 的 排 除 に 関 す る 無 担 保 裏 書 は あ る が、 手 形 上 の 権 利 の 移 転 を 目 的 と せ ず、 担 保 責 任 の み の 発 生 を 目 的 と す る 裏 書 は 存 在 し な い の で、 種 々 の 問 題 を 提 起 す る こ と に な る。 そ れ ら は、 こ の 裏 書 の 法 的 評 価・ 性 質・ こ れ の 手 形 法 上 で の 承 認 の 有 無、 そ れ の 裏 書 連 続 内 外 で の 評 価、 担 保 裏 書 人 の 義 務 の 履 行 と 前 者への償還請求の有無などである。
こ の 裏 書 に つ い て、 重 要 視 す べ き も の と し て ド イ ツ 連 邦 最 高 裁 判 所 が、 一 九 五 四 年、 一 九 九 八 年、 二 〇 〇 三 年 に 判 決 を し て い る の で、 こ れ ら の 事 件 の 概 要、 判 旨、 こ れ に 関 す る 諸 学 説 を 検 討 し、 こ の 裏 書 に 関 す る 諸 問 題 の 解 明 を 試 み る 次 第 で あ る。 た だ し、 こ の 解 明 は 手 形 的( 手 形 法 的 ) な も の に 限 定 す る。 そ し て 本 稿 一 部 は、 一 九 五 四 年 最 高 裁 判 所 の 判 決 を 中 心 と し て、 中 間 的 暫 定 的 な 評 価・ 結 論 と し、 二 部 で は 一 九 九 八 年 と 二 〇 〇 三 年 の判決を含める総合的、最終的な評価、結論とする予定である。
と こ ろ で、 論 者 は、 「 ジ ュ ネ ー ブ 統 一 手 形 法 に お け る 手 形 裏 面 の 担 保 的 責 任 負 担 の 単 純 署 名 に つ い て 」 と 題 し て
(((
、 担 保 目 的 の 単 純 署 名 を 非 定 形 的 手 形 行 為 と し て 典 型 的 裏 書 と 典 型 的 手 形 保 証 の 中 間 的 性 質 か ら 非 定 形 的 手 形 保 証 と の 見 解 を 展 開 し た が、 今 回 は、 実 質 的 に は 裏 書 署 名 者 と し て の 責 任 負 担 を 目 的 と し、 形 式 的 に は 裏 書 の 方 式 を 利 用 す る の で、 こ れ ら に 着 目 し た 問 題 解 明 こ そ が 最 も 妥 当 で は な い か と 思 考 す る に 至 り、 こ れ を 中 核 と し て 論理構成を試みるしだいである。
(三)担保裏書について(Ⅰ)(立木)四〇三
な お、 担 保 目 的 の 裏 書 に つ い て は、 木 内 教 授 が、 略 称 す る と「 保 証 目 的 の 裏 書 人 間 の 負 担 部 分 と 遡 求 義 務 の 範 囲」と題し て
((
(
最高裁昭和五七年九月七日判決の判例批評の中で照会している。
(()
福岡大学法学論叢第三八巻一号(平成五年七月)六九頁~一〇五頁 注 し た 第 一 裏 書 人 が 負 う べ き 遡 求 義 務 の 範 囲 」 民 商 法 雑 誌 第 八 八 巻 五 号( 昭 和 五 八 年 七 〇 三 ~ 七 〇 四 頁、
(()「 約 束 手 形 の 第 一 裏 書 人 及 び 第 二 裏 書 人 が い ず れ も 保 証 の 趣 旨 で 裏 書 し た も の で あ る 場 合 に 手 形 を 受 戻
((7)
、
((9)
)
二、一九五四年事件の事実の概要と判旨 (((
(
事実の概要
原 告( X ) は、 署 名 当 時、 白 地 で あ っ た 手 形 に 引 受 署 名 を な す A に こ れ を 交 付 し た。 A は こ の 手 形 に 引 受 署 名 して、 被告(Y)に交付、 Yは自己指図式で手形を振出し、 Xの署名欄の次の欄に署名して、 訴外Cに裏書した。 Cはさらに訴外Dに裏書交付したので、 Dが手形の最終の所持人となった。Dは支払期日にAに手形を呈示して、 手形金の支払請求をしたが支払がなされなかったので、 支払拒絶証書を作成の上で、 Xに対して償還請求をなし、 支 払 を う け た。 支 払 を な し た X は 振 出 人 た る Y に 対 し て 再 償 還 請 求 を し た。 こ れ が 本 件 で あ る。 こ れ に 対 し て、 第一審、第二審ならびに上告審もこの請求を認めず、棄却した。
(四)四〇四
(
判旨
い。…」と判決してXの請求を棄却した。 の 場 合、 X は 手 形 上 の 権 利 を 誰 か ら も、 特 に Y か ら 譲 渡 さ れ て 保 持 し て い る わ け で は な い の で 前 者 を 有 し て い な 者 は、 手 形 法 四 九 条 に よ っ て 前 者 に 対 し て 支 払 っ た 金 額 な ら び に 諸 費 用 を 請 求 す る こ と が で き る。 し か し、 本 件 な い 署 名 で は、 署 名 者 は 手 形 上 の 権 利 を 譲 渡 す る つ も り も な い し、 で き も し な い の で あ る。 手 形 に 支 払 を な し た 効 力 は な く、 も っ ぱ ら に 担 保 的 効 力 が 帰 す る こ と と な る。 こ の よ う な 署 名 者 自 身 に 手 形 上 の 権 利 が 帰 す る こ と の た も の で あ る。 こ の よ う な 意 図 の も と で の 署 名 は 可 能 で あ る。 だ が、 か か る 署 名 に は、 裏 書 に お け る 権 利 移 転 的 と し、 流 通 力 あ る も の と す る た め の も の で あ り、 自 己 の 署 名 の 付 記 に よ り 手 形 の 利 用 価 値 を 高 め る こ と を 意 図 し ( A ) の た め の 手 形 保 証 と 主 張 す る が、 こ れ に 拘 束 さ れ る も の で は な い。 X の 署 名 目 的 は、 手 形 を 価 値 あ る も の と な り、 こ れ に よ っ て、 手 形 上 の 義 務 負 担 者 の 数 の 増 加 を 意 図 し た 署 名 者 で あ る。 Y は、 こ の X の 署 名 を 引 受 人 形 請 求 権 を 譲 渡 さ れ る こ と な く 手 形 に 自 己 の 署 名 を な し た 者 で、 か か る 署 名 に よ っ て 手 形 上 で 自 ら 義 務 の 負 担 者 面 に お け る 自 己 の 署 名 に よ り、 手 形 上 の 義 務 を 負 担 す る こ と に な る の で、 そ の 支 払 は 適 法 な も の で あ る。 X は 手 X は 自 ら に よ る 手 形 の 支 払 で、 手 形 の 請 求 権 を 取 得 す る こ と に は な ら な い の で あ る。 し か し な が ら、 X は 手 形 裏 こ の こ と に つ い て 何 等 の 主 張 も し て い な い。 本 件 で は 第 一 の 裏 書 欄 は X で は な く Y で な け れ ば な ら な い。 そ こ で の 取 得 は Y に よ る 自 己 指 図 式 で の 振 出 に あ っ て は、 Y か ら X へ の 譲 渡 が な さ れ た 場 合 の み に 可 能 で あ る が、 X は 「 … X は 譲 渡 に よ っ て 手 形 を 所 持 す る こ と に な っ た 者 で は な い か ら、 手 形 請 求 権 者 で は な い。 譲 渡 に よ る 手 形
(五)担保裏書について(Ⅰ)(立木)四〇五
3
判旨の分析
ド イ ツ 連 邦 最 高 裁 判 所( 以 下 最 高 裁 と 略 記 ) は、 担 保 裏 書 に つ い て、 ま ず、 X の 署 名 目 的 が 自 己 の 署 名 の 付 記 に よ る 手 形 流 通 力 の 強 化、 利 用 度 の 促 進 に あ る 場 合 に は、 自 ら 手 形 上 の 義 務 を 負 担 す る こ と に な り、 か か る 署 名 に は 権 利 移 転 的 効 力 は な く、 も っ ぱ ら に 担 保 的 効 力 の み が 帰 す る こ と に な る と の 理 解 の 上 で、 か か る 署 名 の 手 形 法 上 の 裏 書 と し て の 有 効 性 を 承 認 し て い る。 次 に、 X は 手 形 上 の 義 務 者 で あ る が 手 形 上 の 権 利 者 で な い こ と の 理 由 と し て、 形 式 的 に は、 自 己 指 図 式 手 形 の 振 出 の 場 合 に は、 Y か ら X へ の 裏 書 の な い こ と、 つ ま り、 裏 書 の 連 続 の な い こ と を 挙 げ て い る。 形 式 的 に X が 手 形 上 の 権 利 者 で あ る た め に は、 Y か ら 始 ま っ て X が 裏 書 連 続 あ る 手 形 の 所 持 人 で な け れ ば な ら な い が、 本 件 で は、 そ れ が な い と し て、 X は 形 式 的 に み て 権 利 者 で な い と す る。 ま た 実 質的には、 かかる裏書には権利移転的効力がなく、 もっぱらに担保目的のみであることを理由とする。さらには、 支 払 を な し た X は 再 遡 求 権 を 取 得 で き な い 理 由 と し て、 通 常 の 譲 渡 裏 書 で は、 手 形 法 四 九 条 に 基 づ き そ の 権 利 を 取 得 す る が、 本 件 で は X は 手 形 上 の 権 利 を 誰 か ら も、 特 に Y か ら 譲 渡 さ れ て 保 持 し て い る わ け で は な い と し て、 再 遡 求 の 対 象 と な る 前 者 に 相 当 す る も の が 不 在 で あ る と し て、 こ の 権 利 を 認 め な か っ た。 こ の よ う な 結 論 に 到 る 前 提 と し て、 支 払 を な し た X は、 支 払 を 受 け た D の 地 位 を 支 払 に よ っ て 取 得 す る の で は な く、 X は 元 の 地 位 に 再 び戻ることになるので、 元のXの地位は手形上の権利を誰からも、 特にYから取得した者でないとの理解である。 権 利 の 移 転 を 伴 わ な い 担 保 的 効 力 の 発 生 の み を 目 的 と す る 担 保 裏 書 人 は 担 保 義 務 の み を 負 担 す る の で あ っ て、 支 払 を な し て も、 前 者 へ の 償 還 請 求 権 を 取 得 す る こ と に は な ら な い と 最 高 裁 は 結 論 づ け た の で あ る。 本 判 旨 の 大 意 は、 ま ず、 判 旨 記 述 の 目 的 の も と で の 手 形 上 の 署 名 を 手 形 保 証 で は な く 裏 書 と し て こ れ に 担 保 責 任 を 承 認 し た こ
(六)四〇六
と( た だ し、 裏 書 そ の も の か 裏 書 の 類 推 適 用 か は 不 明 )、 次 に、 支 払 を な し た 担 保 裏 書 人 に 対 し て 形 式 的 に は 裏 書 の 不 連 続 性、 実 質 的 に は、 手 形 上 の 権 利 の 取 得・ 譲 渡 の な い こ と に よ る 再 償 還 請 求 を 否 定 し た こ と で あ る。 一 般 的 に い え ば、 責 任 負 担 の 有 無 の 論 拠 と 再 償 還 請 求 権 取 得 の 有 無 の 論 拠 が 争 点 と な る の で、 以 下 で の 検 討 も こ れ らに的をしぼって展開する。
なお、次の図は、本件事件の経過と日本の統一手形用紙による裏面での表示である。
(()BGH Urt. v. (0.4.(954BGHZ (3. 87; BB (954. 396; MDR (954. 4(4; NJW (954. ((96( )
X
Y C
C D
Y Y
A
Y Y C D
A
X
⑧
⑤
②
⑨
④
⑦
③
⑥
⑩
①
⑪(本件)
(七)担保裏書について(Ⅰ)(立木)四〇七 三、一九五四年事件に関する諸学説
Stranz(
の主張の概 要
(((
手 形 裏 面 で 裏 書 の 連 続 外 に な さ れ た 白 地 裏 書 は、 資 格 授 与 的 効 力、 権 利 移 転 的 効 力 な ら び に 担 保 的 効 力 も 有 し ない。債務負担の能力ある裏書は、 裏書の連続内でなされなければならないので、 不連続の中でなされた裏書は、 法 的 に は 無 効 で あ る。 ま た、 手 形 裏 面 の 単 純 署 名 で 付 加 文 言 の な い 署 名 は、 手 形 法 三 一 条 な ら び に 同 法 一 三 条 と の 関 係 か ら 手 形 保 証 と も 解 さ れ え な い。 そ れ に、 こ の よ う な 署 名 者 は、 裏 書 で の 担 保 負 担 を 目 的 と す る 意 図 は あ る が 手 形 保 証 を 目 的 と す る 意 図 が な い か ら、 こ の 点 か ら も 手 形 保 証 と は な り え な い。 か か る 意 図 の も と で の 署 名 は、 裏 書 と し て、 ま た 手 形 保 証 と し て の 意 味 を 持 ち え ず、 流 通 の 強 化 と い う 経 済 目 的 の み を 達 成 す る も の で あ る か ら、 手 形 法 上 で は 意 味 の な い 署 名 で あ る。 手 形 法 上 意 味 を 有 し な い 署 名 に 基 づ い て 支 払 を な し て も、 義 務 の な い者による支払となるので、この者が前者に対して遡求をなしえないのは当然である。
Stranz
は担保裏書について、手形法上の意味を全く有する署名でないことを、かかる署名者の意図、連続外で の 署 名、 付 加 文 言 の 付 記 の な い こ と な ど か ら、 裏 書 で も 手 形 保 証 で も あ り え な い と 結 論 す る。 そ の 結 果 と し て、 手 形 法 的 に は 評 価 に 値 し な い 署 名 者 に よ る 支 払 で あ る か ら 償 還 請 求 に つ い て も 全 く 考 慮 の 対 象 と す べ き で な い と し て い る。 こ れ は、 裏 書 に お け る 形 式 的 資 格 に つ い て 固 執 し て い た 手 形 条 例 時 代 の 考 え で あ り、 ま た、 通 常 の 裏 書 は 権 利 移 転 を 目 的 と す る も の で あ っ て、 担 保 的 効 力 は そ れ の 付 随 的 効 果 に す ぎ な い と の 現 行 法 の 一 般 的 解 釈 に し た が っ た も の で、 現 行 の 手 形 法 に 規 定 の な い も の は 手 形 法 的 な 評 価 に 値 し な い と し て い る。 結 論 と し て は、 か
(八)四〇八
か る 担 保 裏 書 は 法 的 に は 裏 書 で も な く 手 形 保 証 で も な い か ら 法 的 な 評 価 の 対 象 と な り え な い が 経 済 的 評 価 の 対 象 ではありうるということになる。
Hirsch(
の主張の概 要
(((
ま ず 自 己 受 手 形 に お い て、 最 初 の 手 形 取 得 者 の 裏 書 に 先 行 す る 第 三 者 の 裏 書 は、 常 に 無 効 で あ る に も か か わ ら ず、 最 高 裁 は、 こ れ を 無 視 し て、 か か る 第 三 者 の 署 名 を 手 形 的 に 義 務 負 担 力 の あ る 意 思 表 示、 つ ま り 裏 書 と 解 し て い る。 し か し、 か か る 裏 書 は 裏 書 た り え ず そ れ 故 に 手 形 法 一 六 条 の 意 味 に お け る 裏 書 の 連 続 を 中 断 す る も の で は な い。 こ こ に は 裏 書 の 連 続 の 始 ま り な ど 存 し な い の で あ る。 署 名 の 目 的 が、 手 形 の 流 通 力 を 高 め る こ と で、 権 利 移 転 を 目 的 と し な い 担 保 裏 書 に は 権 利 を 移 転 し 担 保 的 効 力 を 発 生 さ せ る こ と は で き な い の で、 か か る 裏 書 に は 裏書としての署名の法的適格性が欠けているから裏書としては無効である。
次 に、 か か る 署 名 の 手 形 保 証 と し て の 可 能 性 に つ い て、 以 下 の よ う な 検 討 が な さ れ て い る。 手 形 法 三 一 条 と 同 法 一 三 条 二 項 後 段 と の 関 係 か ら、 手 形 保 証 の 可 能 性 は 単 純 署 名 が 表 面 の み に な さ れ て い る 場 合 と 解 す る の は、 次 の 理 由 か ら 確 固 た る も の で は な い。 そ れ は、 手 形 法 一 三 条 二 項 後 段 の 意 味 は、 手 形 上 の 単 純 署 名 は、 手 形 裏 面 に あ る 場 合 の み に 有 効 な 白 地 裏 書 と 解 さ れ て い る が、 手 形 裏 面 の あ ら ゆ る 単 純 署 名 を 白 地 裏 書 と す る 推 論 は 論 理 性 が な く、 法 的 な 根 拠 も な い か ら で あ る。 そ れ に、 手 形 法 三 一 条 の 成 立 史 か ら み る と、 手 形 裏 面 の 単 純 署 名 が 裏 書 た り え ず、 か つ そ の 署 名 の 目 的 が 流 通 力 の 強 化 で あ る こ と が 明 確 で あ る 場 合 に は、 手 形 裏 面 の 署 名 を 手 形 保 証 で な い と す る 確 固 た る 根 拠 も な い の で あ る。 成 立 史 の 公 式 議 事 録 に よ る と、 手 形 裏 面 の 白 地 裏 書 が 裏 書 と し て 有 効 た り え な い と さ れ た 場 合 に つ い て、 い か に 解 す る か に つ き、 意 見 が 分 か れ た。 フ ラ ン ス 代 表 と イ タ リ ア 代 表 は、
(九)担保裏書について(Ⅰ)(立木)四〇九
手 形 債 務 負 担 の 意 思 表 示 で あ る か ら、 有 効 と す べ き と 主 張 し て い る。 特 に、 フ ラ ン ス 代 表 は、 裏 書 と し て 適 切 で な い と さ せ れ る 手 形 裏 面 の 単 純 署 名 を 手 形 保 証 と 解 す べ き こ と を 主 張 し た し、 イ タ リ ア の 最 高 裁 判 所 の 判 決 に も 同 旨 の も の が あ る。 そ こ で、 問 題 の 署 名 が 手 形 保 証 と 解 さ れ た 場 合 に は、 手 形 法 三 一 条 四 項 後 段 に よ り、 手 形 保 証 文 句 の 付 記 が な い の で 振 出 人 の た め の 保 証 と い う こ と に な る。 か か る 署 名 者 は 振 出 人 の た め の 保 証 人 と し て、 支 払 を な し た 場 合 に は、 振 出 人 な ら び に 振 出 人 に 対 し て 責 任 を 負 担 す る す べ て の 者 に 対 し て 償 還 請 求 を な し う る ( 手 形 法 三 二 条 三 項 )。 現 行 法 上 で は、 償 還 請 求 権 者 は、 手 形 に 支 払 を な し た 者 す べ て か、 手 形 保 証 人 で あ る。 最 高 裁 の「 … 手 形 に 支 払 を な し た 者 は 誰 で も 手 形 法 四 九 条 に よ り 前 者 に 対 し て 手 形 金 な ら び に 付 随 的 費 用 の 請 求 が で き る。 し か し、 本 件 で は、 X は 手 形 上 の 権 利 を 誰 か ら も 特 に Y か ら 取 得 し て い な い の で 前 者 を 有 せ ず 再 償 還 権 を 有 し な い 」 と す る 論 理 は 不 適 切 で あ る。 か か る 見 解 は、 求 償 義 務 に 基 づ き 支 払 を な し た 者 は、 支 払 に よ り、 手 形 上 の 請 求 権 を 取 得 す る も の で は な く、 こ の 者 の 以 前 の 地 位 に 戻 る と の 理 由 に よ る。 な お、 裏 書 人 以 外 の 者 が 裏 書 の 連 続 外 で な し た 署 名 は 手 形 法 上 で は 無 効 で あ り、 か か る 者 が 支 払 を し て も 前 者 へ の 償 還 請 求 を 有 す る こ と に は な ら な い と の 主 張 に 対 し て、 こ の よ う な 署 名 者 に 手 形 上 の 義 務 負 担 を 課 す の で あ れ ば、 こ の 者 が 義 務 の 履 行 を な し た 場 合 に は、 こ の 者 に 償 還 請 求 権 を 付 与 し な い と の 結 論 こ そ は 経 済 的 観 点 な ら び に 手 形 法 三 二 条 と 同 法 四 九 条に基づく法的観点から妥当な見解ではないとし、かかる署名を手形保証として、解決すべきことを主張し た
(3
(
。
Hirsch
は、 最初の裏書に先行する第三者の裏書署名のある場合には、 この裏書は義務負担能力のある裏書とは な り え な い の で 裏 書 と し て は 無 効 で あ る と 形 式 的 理 由 を 挙 げ、 次 に 裏 書 の 目 的 が 担 保 的 効 力 の み を 意 図 し て、 権 利 移 転 を 目 的 と し な い 裏 書 は 法 的 適 格 性 が な い と の 実 質 的 理 由 を 付 し て、 か か る 裏 書 の 裏 書 と し て の 効 力 を 否 定
(一〇)四一〇
す る。 そ し て、 か か る 署 名 の 裏 書 外 で の 署 名 と し て の 可 能 性 に つ い て 手 形 法 三 一 条 と 同 法 一 三 条 の 成 立 史 に 言 及 す る。 ま ず 手 形 法 一 三 条 後 段 に つ い て、 手 形 裏 面 の あ ら ゆ る 単 純 署 名 を 白 地 裏 書 と 解 し な け れ ば な ら な い 必 然 性 は な い こ と。 次 に 署 名 の 目 的 が 手 形 の 流 通 力 の 強 化 に あ る 場 合 に は、 こ の 署 名 を 手 形 保 証 で な い と す る 確 固 た る 根 拠 も な い こ と。 こ の 論 拠 と し て、 成 立 史 の 公 式 議 事 録 で の 議 論 の 展 開 を あ げ て、 そ こ で 手 形 保 証 と 主 張 し た フ ラ ン ス 代 表 と イ タ リ ア の 最 高 裁 の 判 決 を あ げ て い る。 そ こ に 手 形 保 証 と 解 し う る 可 能 性 を み い だ し う る と し て、 さ ら に は 単 純 署 名 な の で 付 加 文 言 が な い か ら、 手 形 法 三 一 条 四 項 後 段 に よ り 振 出 人 の た め の 保 証 と 解 す る。 こ の 者 が 支 払 を す る と 被 保 証 人 な ら び に こ の 者 に 対 し て 責 任 を 負 担 す る す べ て の 人 に 対 し て 償 還 請 求 を な し う る と す る。 本 件 で は
証の問題として解決すべきであったとの見解を主張したのである。
Xが 手 形 請 求 権 を 誰 か ら も 取 得 し て い な い と い う 最 高 裁 の 判 決 に 対 し て 裏 書 の 問 題 で は な く 手 形 保 裏 書 の 連 続 は、 か か る 手 形 の 所 持 人 を 適 法 の 所 持 人 と 推 定( 手 形 法 一 六 条 一 項、 同 法 七 七 条 一 項 一 号 )、 善 意 取 得 な ら び に 善 意 の 支 払 で の 形 式 的 資 格 に 関 す る も の で、 実 質 的 権 利 の 存 在 の 推 定 規 定 で あ る。 し た が っ て 形 式 的 資 格 の 付 与 さ れ な い 署 名 は、 す べ て 無 効 と し て、 法 的 評 価 か ら 排 除 さ れ る べ き で は な い。 ま た 成 立 史 か ら の 手 形 保 証 と 解 す る こ と の 可 能 性 に つ い て は 不 明 確 な 部 分 は 残 さ れ た も の の 現 行 法 に よ る と 単 純 署 名 が 振 出 人 の た め の 保 証 と な り う る に は、 手 形 表 面 と 規 定 さ れ て い る の で 手 形 保 証 と 解 す る こ と に は か な り の 無 理 が あ る
(4
(
。 こ れ ら の点からすると、
Hirschの主張は説得力ある説明となりえていないことになる。それは、 彼の主張が、 ドイツ手 形 条 例 時 代 の 裏 書 で の 署 名 の 連 続 性 へ の 固 執、 裏 書 は 通 常 権 利 移 転 に 関 す る も の で あ り、 こ れ を 前 提 に し て、 そ の 付 随 的 効 力 と し て 担 保 的 効 力 が あ る と の 前 提 へ の 固 執、 さ ら に、 手 形 法 一 三 条、 三 二 条 に つ い て の 議 事 録 の 一
(一一)担保裏書について(Ⅰ)(立木)四一一
部の見解を根拠とするものだからである。
Reinicke3
の主張の概 要
(5
(
手 形 法 は、 あ る 者 が 手 形 上 の 権 利 を 取 得 せ ず、 ま た そ れ を 譲 渡 し な い に も か か わ ら ず、 手 形 上 の 責 任 を 負 担 す る 場 合 と し て、 手 形 保 証 を 規 定 し て い る。 あ る 署 名 が 手 形 保 証 と し て 有 効 と さ れ る に は、 手 形 上 に 保 証 文 句 を 付 記 し て、 保 証 人 が 署 名 し な け れ ば な ら な い。 保 証 文 句 の な い 場 合 に、 そ れ が 保 証 と な り う る に は、 手 形 法 三 一 条 三 項 に 規 定 さ れ て い る よ う に、 そ の 署 名 が 手 形 の 表 面 に な さ れ て い る こ と を 要 す る。 こ れ ら の こ と か ら、 手 形 裏 面における単純署名は手形保証とはなりえないことになる。
と こ ろ で、 裏 書 は、 裏 書 人 が 手 形 上 の 権 利 を 譲 渡 す る と の 意 思 表 示 で、 担 保 責 任 は そ れ に 付 随 す る 効 果 で あ る から、 手形上の権利を移転することなしに、 担保責任の発生のみを求める裏書は手形法上では認められていない。 単 純 署 名 が 裏 書 の 連 続 内 で な さ れ て い る 場 合 に は、 裏 書 人 の 権 利 譲 渡 の 意 思 が 外 観 的 に 表 示 さ れ て い る と し、 こ の 外 観 的 意 思 表 示 の 効 果 と し て、 担 保 責 任 が 利 益 衡 量 に 基 づ い て 発 生 す る と 解 し、 こ の 者 が 支 払 を す れ ば、 彼 は 償還請求権を有することになると説く。
裏 書 の 連 続 は 手 形 法 一 六 条 に よ る と、 資 格 授 与 的 効 力 発 生 の 前 提 で あ る が、 こ れ に と ど ま ら ず、 実 質 的 権 利 移 転 の た め の 前 提 と も 解 す べ き で あ る。 つ ま り、 裏 書 人 が 外 観 的 に 所 持 人 と し て 明 示 さ れ て い る 場 合 の み に 手 形 は 裏 書 さ れ う る と 解 す べ き で あ る。 こ の よ う に 解 す る と、 手 形 取 引 の 迅 速 性、 簡 便 性、 予 見 可 能 性 に 利 す る こ と に な る の で あ る。 こ の よ う な 理 解 に よ る と、 裏 書 の 連 続 内 に な い 単 純 署 名 は 無 効 と な り、 手 形 上 の 権 利 の 移 転 が な い の で、 こ の よ う な 署 名 者 に は 担 保 責 任 の 発 生 も な い。 担 保 責 任 の な い 者 は 支 払 を な す 必 要 も な い か ら、 支 払 を
(一二)四一二
しても義務なく支払ったことになるのでこの者に償還請求はないことにな る
(6(
。
Reinicke
は、 手 形 裏 面 の 単 純 署 名 は 実 定 法 上 手 形 保 証 で は な い と し た 上 で、 ま ず 現 行 手 形 法 上 に は、 裏 書 は 権 利 移 転 を 目 的 と す る も の で、 担 保 責 任 は、 そ の 付 随 的 な も の に す ぎ な い と の 前 提 で 論 を 展 開 す る の で、 担 保 責 任 の み の 発 生 を 目 的 と す る 裏 書 な ど 法 律 上 は あ り え な い と す る。 次 に、 そ の 裏 書 の 意 図 を 問 わ ず、 そ れ が 連 続 内 で なされていれば、 外観上、 譲渡裏書の意思が表明されているので、 担保責任が利益衡量に基づいて発生するので、 こ の 者 が 支 払 を す れ ば、 こ の 者 は 償 還 請 求 権 を 有 す る こ と に な る と す る。 そ し て、 こ の 論 理 を 補 強 す る た め に、 裏 書 の 連 続 の 意 味 に つ い て、 次 の よ う に 説 明 を 加 え て い る。 そ れ は、 連 続 は 実 質 的 権 利 移 転 の た め の 前 提 で も あ る と す る。 そ の 結 果 と し て、 連 続 性 の な い 単 純 署 名 は 無 効 で あ り、 手 形 上 の 責 任 が な い に も か か わ ら ず、 か か る 署 名 者 が 支 払 を し て も 義 務 な く 支 払 っ た こ と に な る の で、 前 者 へ の 償 還 請 求 な ど は な い と す る。 裏 書 の 連 続 あ る 手 形 所 持 人 は 権 利 者 で あ る と の 推 定 を う け る だ け で は な く 権 利 者 で あ る と 看 做 す あ る い は 擬 制 す る こ と で 償 還 請 求も処理するのである。
こ の 主 張 は、 手 形 条 例 時 代 の 裏 書 連 続 性 に 固 執 し、 形 式 的 権 利 者、 即 実 質 権 利 者 と の 発 想 で あ り、 連 続 性 は 推 定であるとの通説的解釈とは隔たりのある論理構成であり妥当性ある見解としては評価できない。
Kniestedt4
の主張の概 要
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(
ま ず、 手 形 法 一 三 条 は、 手 形 裏 面 の 単 純 署 名 を 白 地 裏 書 と 規 定 し て い る が、 し か し 手 形 裏 面 の 単 純 署 名 は す べ て 白 地 裏 書 と い う こ と に は な ら な い。 自 己 指 図 式 手 形 の 裏 面 第 一 の 欄 の 第 三 者 の 単 純 署 名 は 裏 書 連 続 外 の 署 名 と な る の で、 有 効 な 裏 書 で は あ り え な い。 し か し、 か か る 署 名 者 は、 経 済 的 に は 支 払 義 務 者 の 信 用 力 の 強 化 に 役 立
(一三)担保裏書について(Ⅰ)(立木)四一三
つ の で 手 形 上 の 責 任 を 負 担 す べ き で あ る。 次 に、 か か る 署 名 は、 手 形 法 三 一 条 の 文 言 上、 手 形 保 証 で は な い。 だ が、 か か る 署 名 者 の 意 図 と 目 的 達 成 の た め に 手 形 法 三 一 条 の 文 言 解 釈 に 代 わ る 合 理 的 で 新 た な 解 釈 が な さ れ る べ き で あ る。 つ ま り、 当 事 者 間 で 争 い の な い 目 的 達 成・ 流 通 力 強 化 の 意 図 が 形 式 規 定 の 遵 守 に よ っ て 無 視 さ れ る べ き で は な い。 そ こ で、 次 の よ う に 手 形 上 の 解 釈 を な す べ き で あ る。 ま ず 手 形 法 三 一 条 四 項 後 段 規 定 は 推 定 規 定 に す ぎ な い。 次 に 手 形 法 三 一 条 二 項 は 関 係 者 の 合 理 的 利 害 関 係 の 達 成 の た め に、 障 害 と な る も の で は な い。 こ れ ら の こ と か ら 手 形 法 三 一 条 四 項 後 段 の 推 定 が 否 定 さ れ う る。 さ ら に、 こ の 単 純 署 名 者 が 支 払 を な し た 場 合 に は、 被 保 証 人 に 対 し て 償 還 請 求 を な し う る。 手 形 法 三 二 条 三 項 で、 最 終 的 に は 引 受 人 の 責 任 追 及 に 至 る と 解 す べ き で あ る。 こ の よ う に 解 釈 す る こ と で、 単 純 署 名 者 に 対 し て は 振 出 人・ 引 受 人 へ の 手 形 上 の 責 任 追 求 を 承 認 す べ き で あ る
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Kniestedt
は ま ず、 自 己 指 図 式 手 形 に お け る 第 三 者 の 単 純 署 名 か ら 始 ま る 裏 書 は 連 続 性 を 害 す る の で、 白 地 裏 書ではないとし、 白地裏書たるには連続内でなければならないとする。次に、 この単純署名を関係者の意図にそっ て形式的解釈ではなく合理的解釈によって、手形法上では、手形保証と解すべきと説いたのである。
確 か に、 手 形 裏 面 の 単 純 署 名 は す べ て が 白 地 裏 書 と 解 し な け れ ば な ら な い と の 規 定 は な い の で、 問 題 は あ る も の の 一 応 の 承 認 は で き る。 し か し、 手 形 保 証 と 解 す る た め に、 手 形 保 証 に 関 す る 規 定 を 当 事 者 の 意 図 の 合 理 的 解 釈で修正すべきと解することは、 かなり無理があると思える。この点、 かかる署名の実質は手形保証であるから、 こ の 実 質 達 成 の た め に 合 理 的 解 釈 と の 立 場 か ら、 こ の よ う な 結 論 と す る こ と で、 手 形 裏 面 の 単 純 署 名 を 手 形 法 上 で効力のあるものと解したのである。
(一四)四一四
だ が、 手 形 上 に な さ れ た 署 名 の 有 効 利 用 の た め に、 実 質 的 に は 手 形 保 証 と す る 意 図 は 評 価 す べ き か も し れ な い が、 手 形 法 規 の 相 互 関 係 を 考 慮 す る と か な り 無 理 の あ る 論 理 で あ る。 裏 書 署 名 を 意 図 し て い る 当 事 者 に 重 点 を お いた理論構成も可能と思われるので、この点からのアプローチをなすべきではなかったか。
Opitz5
の主張の概 要
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手 形 保 証 に 関 す る 規 定 は、 担 保 目 的 の 裏 書 に 適 用 さ れ う る。 こ の 解 釈 は、 手 形 法 一 三 条 二 項 と 矛 盾 す る も の で は な い。 ま た、 こ の 解 釈 は 手 形 法 三 一 条 三 項 と 矛 盾 す る も の で も な い。 そ れ は、 手 形 法 は 手 形 表 面 の 単 純 署 名 を 手形保証とのみ規定するものであり、手形裏面の単純署名は手形保証でないと規定していないからである。
実 質 的 権 利 者 で な い 者 に よ る 手 形 裏 面 に お け る 担 保 目 的 の 署 名 を 手 形 法 上 い か な る 署 名 と 解 す べ き か に つ い て は、 当 事 者 の 意 思 を 基 準 と し て 判 断 さ れ る べ き で あ る。 か か る 署 名 に 関 す る 当 事 者 の 意 思 は 保 証 で あ る か ら、 こ の 署 名 者 の 責 任 負 担 は 手 形 法 三 二 条 一 項、 二 項 に よ り 発 生 し、 こ の 者 が 支 払 を な し た 場 合 に は、 こ の 者 の 償 還 請 求 は、 手 形 法 三 二 条 三 項 な ら び に 同 法 四 九 条 に よ る こ と に な る。 こ の 理 由 は、 裏 書 連 続 内 で 担 保 目 的 の 書 名 が な された場合も同様である。
償 還 請 求 の 問 題 は、 形 式 的 な 権 利 に よ る の で は な く 実 質 的 な 権 利 に 関 係 す る も の で あ る。 そ こ で、 実 質 的 な 権 利 者 で あ っ た 者 の み が、 手 形 関 係 に お け る 裏 書 人 な の で あ る。 そ れ 故 に(
BGH Urt. v. (0.4.(954) 判 決 も 支 払 を なした担保目的の署名者に裏書に基づく償還請求を拒否したのである。
こ の 状 況 は、 実 質 的 に 権 利 者 で な い 者 が 手 形 裏 面 に、 そ の 者 の 署 名 を 白 地 式、 記 名 式 で な し た か ど う か に か か わらず、すべての場合にあてはま る
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(一五)担保裏書について(Ⅰ)(立木)四一五
Opitz
は、 担 保 目 的 の 署 名 が 裏 書 連 続 の 内 外 で な さ れ て い る 場 合、 す べ て に つ い て、 そ の 署 名 の 意 図 が 実 質 的 に は 手 形 保 証 で あ る か ら、 手 形 保 証 に 関 す る 規 定 の 合 理 的 解 釈 で、 か か る 署 名 の 法 的 解 明 ほ 試 み る べ き と す る。 そ の 実 質 的 目 的 の 意 図 す る と こ ろ か ら、 か か る 署 名 が 連 続 の 内 外 に あ る を 問 わ ず 手 形 保 証 と 解 し、 そ の 責 任、 こ の 者 の 義 務 の 履 行 と 償 還 請 求 を 主 張 し て い る が、 手 形 法 規 の 規 定 を そ の 合 理 的 意 図 の み で、 自 由 に 操 作 す る こ と は 疑 問 で あ る し、 付 加 文 言 の な い 手 形 保 証 に つ い て は、 手 形 法 三 一 条 三 項 の 明 文 規 定 を 全 く 無 視 す る こ と に も な る。 最 高 裁 が 義 務 を 課 し た 担 保 裏 書 人 に 償 還 請 求 を 拒 否 し た 理 由 を 実 質 的 権 利 者 で な か っ た か ら と す る 点 で は 判 決 の 補 強 を し た こ と に な る が、 判 決 の 拒 否 を 手 形 保 証 で 承 認 す べ き と 論 理 構 成 し て い る。 な お、 連 続 外 の 単 純 署 名についても、言及しているのは評価に値する。
Hefermehl6
の主張の概 要
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ま ず、 手 形 法 一 五 条 一 項 は、 反 対 の 文 言 の な い か ぎ り 裏 書 人 は 引 受 な ら び に 支 払 を 担 保 す る と 規 定 す る が、 こ れ は 手 形 法 一 三 条 に よ る 裏 書 で あ る こ と を 前 提 と し て い る。 こ の 責 任 は 資 格 授 与 の 要 件 を 具 備 し た も の に 限 定 さ れ て は い な い。 こ の 資 格 力 は、 手 形 の 流 通 促 進 の た め に 実 質 的 権 利 の 欠 缺 を 補 完 す る も の で あ る か ら、 形 式 的 資 格 者 で は な い が 実 質 的 権 利 者 た る 手 形 所 持 人 か ら 裏 書 の 権 利 を 奪 う も の で は な い。 そ こ で、 形 式 的 権 利 者 で な い が 実 質 的 権 利 者 に よ る 裏 書 が 有 効 と 解 さ れ る な ら ば、 手 形 法 一 五 条 一 項 に よ り こ の 者 の 責 任 が 肯 定 さ れ る こ と に なる。
次 に、 担 保 的 効 力 は、 一 般 的 に は、 手 形 上 の 権 利 の 移 転 に 伴 う 二 次 的 効 果 と 考 え ら れ て い る が、 実 務 上 で は、 関 係 者 が 手 形 上 の 権 利 を 移 転 す る こ と な く、 手 形 の 価 値 を 強 化 す る た め の 裏 書 が あ る。 こ の 場 合 の 責 任 の 根 拠 の
(一六)四一六
た め に 形 式 的 資 格 の 付 与 さ れ た 署 名 で あ る こ と を 要 求 す る 主 張 が あ る。 こ れ は、 担 保 負 担 の み を 意 図 し た 署 名 者 の責任を意図されていない手形上の権利の移転と仮装するもので、純粋に概念法学的考え方である。これは、 担保責任の発生は常に、 手形上の権利の移転を前提とするもので、 手形法が果たすべき機能を考慮することなく、 資 格 の 必 要 性 を 絶 対 視 す る も の で あ る。 資 格 力 は 善 意 取 得、 善 意 支 払、 抗 弁 排 除 の 根 拠 を な す た め の も の で あ る が、 あ ら ゆ る 裏 書 の 責 任 負 担 の 根 拠 と す る こ と に は 理 由 の あ る も の で は な い。 裏 書 は 種 々 に 利 用 さ れ う る も の で あ る か ら 資 格 力 の な い 者 に よ る 白 地 裏 書 に 責 任 の 負 担 を 認 め る こ と で 手 形 の 流 通 力 が 害 さ れ る こ と な く、 逆 に そ れ の 強 化 と な り う る の で あ る。 最 高 裁 は、 手 形 の 譲 渡 を 意 図 せ ず、 し か も 裏 書 の 連 続 外 に な さ れ た 手 形 裏 面 の 単 純署名について、手形上の責任を認めている。
な お、 手 形 保 証 の 方 式 に 関 す る ハ ー グ 会 議 の 審 議 で は、 明 確 に、 手 形 裏 面 の 単 純 署 名 は、 手 形 保 証 で は な い と し た の で あ る が、 そ の よ う な 署 名 が 白 地 裏 書 と な り う る か 否 か に つ い て は 未 解 決 の ま ま と さ れ た の で あ る。 そ こ で は 手 形 裏 面 の 単 純 署 名 を 白 地 裏 書 で な い と す る 人 は、 手 形 保 証 に 関 す る 規 定 で 十 分 で あ る と し、 他 の 人 々 は、 手 形 保 証 で な い の で あ れ ば、 ど の み ち 白 地 裏 書 に な る と の 解 釈 に な る か ら、 そ れ に 賛 同 し た の で あ る。 こ こ で の 審 議 か ら は、 こ れ 以 上 の こ と は 推 論 で き な い。 す る と、 手 形 保 証 の 方 式 に 関 す る 規 定 は、 手 形 裏 面 の 連 続 外 の 担 保 裏 書 の 承 認 を 妨 げ る こ と に な ら な い の で あ る。 手 形 法 に は 譲 渡 裏 書 と 並 ん で 純 粋 な 担 保 裏 書 の 規 定 が あ る し、 小 切 手 法 二 〇 条 に は、 明 確 な 規 定 も あ る の で 適 正 な 方 式 で 手 形 裏 面 に 署 名 し た 者 は 裏 書 人 と し て 手 形 上 の 責 任 を 負 担 す る こ と に な る。 た と え、 こ の 者 の 署 名 が 裏 書 の 連 続 外 に な さ れ て い る 場 合 も 同 様 で あ る。 そ れ は、 裏 書 の 連 続 は 実 質 的 な 手 形 上 の 権 利 の 移 転 に 関 係 し な い か ら で あ る。 確 か に、 裏 書 の 不 連 続 は 手 形 の 流 通 力 を 害 す る か
(一七)担保裏書について(Ⅰ)(立木)四一七
も し れ な い が、 連 続 外 の 裏 書 で も 担 保 的 効 力 の 発 生 を 妨 げ る も の で は な い。 担 保 裏 書 に は 権 利 移 転 的 効 力 が 欠 け て い る の で、 こ の 裏 書 を 正 真 正 銘 の 裏 書 と 称 す る か あ る い は 担 保 裏 書 ま た は、 裏 書 の 担 保 機 能 付 署 名 と 称 す る か は二次的問題である。 手 形 上 の 義 務 者 と し て 手 形 に 支 払 を な し た 者 は、 手 形 法 四 九 条 に よ り 再 遡 求 権 者 と な る の で、 自 己 の 前 者 な ら び に 引 受 人 に 対 し て、 遡 求 権 な ら び に 手 形 上 の 権 利 を 取 得 す る。 形 式 的 な ら び に 実 質 的 な 権 利 者 と し て 流 通 期 間 中 に 署 名 し た 者 が 支 払 を し た 場 合 に は、 何 等 問 題 視 さ れ な い、 形 式 的 に は 権 利 者 で あ る が 実 質 的 に は 権 利 者 で な い 者 が 支 払 を し た 場 合 に は、 こ の 者 は 前 者 な ら び に 引 受 人 に 請 求 で き る。 そ れ は、 支 払 を な し た 者 は 支 払 を 受 け た 手 形 所 持 人 の 権 利 を 取 得 す る か ら で あ り、 支 払 を な し た 者 の 再 遡 求 な ど の 承 認 の た め に は こ の 者 が 以 前 に す で に手形上で実質的権利者であったことは必要ないのである。 手 形 保 証 の 規 定 に あ る よ う に、 再 償 還 請 求 権 の 取 得 は、 遡 求 義 務 を 果 た し た 者 が 以 前 に、 す で に 手 形 上 の 請 求 権を有していたことを前提としていないのである。 裏 書 の 連 続 外 で 手 形 に 署 名 し た 者 も、 支 払 を し た 場 合 に も 何 等 異 な る こ と な く 同 様 に 解 す べ き で あ る。 か か る 署 名 が 手 形 保 証 と 解 さ れ た 場 合 に は、 手 形 法 三 二 条 三 項 に よ り、 ま た こ の 署 名 が 担 保 裏 書 と 解 さ れ た 場 合 に は、 担 保 裏 書 人 の 署 名 の 前 に す で に 手 形 に 署 名 を し て い た 者 に 対 し て 再 遡 求 権 な ら び に 引 受 人 に 対 す る( こ の 者 が 担 保 裏 書 人 の 署 名 の あ と で 引 受 を し た 場 合 も 同 様 ) 手 形 上 の 権 利 を 原 始 取 得 す る の で、 右 の す べ て の 場 合 に、 支 払 をなした担保裏書人は再遡求権等を取得するのであ る
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Hefermehl
は、 ま ず、 手 形 法 一 五 条 一 項 と 同 法 一 三 条 か ら、 手 形 請 求 権 の 譲 渡 と 裏 書 の 連 続 性 の 直 接 的 関 連 性
(一八)四一八
を 否 定 し、 同 様 に 担 保 的 効 力 と の 関 係 で も 否 定 し て い る が、 実 定 法 上 か ら は 正 論 で あ る。 次 に、 担 保 裏 書 の 承 認 に つ い て は、 実 務 上 の 必 要 性、 利 便 性、 裏 書 制 度 の 種 々 の 機 能 的 役 割 の 配 慮 を 根 拠 と す る。 こ こ で の 配 慮 の 意 味 に つ い て は 言 及 さ れ て い な い が、 多 分 に 裏 書 制 度 は 実 定 法 上 の も の に 限 定 的 な も の と す べ き で な く、 こ の 制 度 か ら、 派 生 的・ 推 論 で き る よ う な も の も 含 み う る 可 能 性 に つ い て 述 べ た も の で は な い か と 思 わ れ る。 ま た 手 形 法 自 体 に 純 粋 担 保 裏 書 が 規 定 さ れ て い る と 述 べ て い る が、 こ れ は 担 保 的 効 力 を 排 除 す る 純 粋 譲 渡 裏 書 を 逆 説 的 に 述 べ た も の で は な い か、 あ る い は 権 利 移 転 と 担 保 的 効 力 の 分 離 可 能 な 点 を 拘 え て、 こ の 様 な 表 現 に な っ た の で は な い か と 思 わ れ る。 そ れ は 実 定 法 上 に 担 保 目 的 の み の 裏 書 の 制 度 が な い の で、 か か る 署 名 の 法 的 解 明 が 問 題 と さ れ て い る か ら で あ る。 な お、 か か る 署 名 の 手 形 保 証 と し て の 可 能 性 を ハ ー グ 会 議 で の 審 議 に 言 及 し て い る が、 現 行 の 実 定 法 規 上 か ら す る と、 そ の 可 能 性 は 否 定 す べ き で あ る し、 本 件 で の 最 高 裁 も 同 旨 の 立 場 で あ る。 最 後 に、 支 払 を な し た 担 保 裏 書 人 の 償 還 請 求 に つ い て は 裏 書 の 制 度 か ら、 手 形 保 証 と 解 さ れ う る と す れ ば 保 証 制 度 か ら、 そ れ ぞれに、請求を認めるべきと説いている。
裏 書 の 連 続 性 と 手 形 請 求 権 の 譲 渡、 担 保 的 効 力 の 発 生 と の 関 連 性 の 否 定 は 評 価 す べ き で あ る が、 か か る 署 名 者 の 意 図 は 手 形 保 証 で は な く、 裏 書 で あ る に も か か わ ら ず、 手 形 保 証 と も、 裏 書 と も 解 し う る と す る 点 に つ い て は 疑問である。
Liesecke7
の主張の概 要
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手 形 裏 面 の 連 続 外 に な さ れ た 第 三 者 の 単 純 署 名 は、 手 形 保 証 と の 付 記 文 言 が な い し、 そ れ が 意 図 的 に 回 避 さ れ ているので、 これをいかなる署名と解するかは難しい問題である。この署名は、 手形上の権利移転を伴わないで、
(一九)担保裏書について(Ⅰ)(立木)四一九
担 保 責 任 の み を 手 形 上 で 負 担 す る と の 意 図 の も と で な さ れ て い る の で、 小 切 手 法 の 持 参 人 払 式 小 切 手 に 認 め ら れ ているように、これに担保責任負担の効力を認めるべきである。 問題は、 この署名者が支払をなした場合に、 この者に再遡求権が付与されうるか否かである。これについては、 担 保 裏 書 人 が 署 名 し た 当 時 に す で に 手 形 に 署 名 し て い た 人 に 対 す る 再 遡 求 権 を 認 め る べ き で あ る。 こ の 手 形 は 手 形 法 四 九 条 の 意 味 に お け る 前 者 か ら 譲 渡 さ れ た も の で は な い が、 担 保 裏 書 人 は 手 形 上 の 義 務 者 と し て 手 形 に 支 払 を し た の で あ る か ら、 法 律 上 の 規 定 に よ り 手 形 保 証 人 と 同 様 に 手 形 所 持 人 の 権 利 を 取 得 し、 自 己 の 前 者 に 対 し て 再 遡 求 権 を 取 得 し う る か ら で あ る。 こ の 方 法 で 最 終 的 に は、 手 形 の 主 た る 義 務 者 た る 引 受 人 に そ の 責 任 を 果 た さ せ う る こ と に な る。 こ の よ う な 解 決 方 法 は、 手 形 関 係 者 の 意 図 に 合 致 す る。 こ の よ う な 担 保 裏 書 は、 手 形 裏 面 に 単 純 署 名 の あ る 場 合 を 規 定 し て い る イ ギ リ ス 法 の 非 正 規 裏 書 人 の 責 任 に 類 す る も の で あ る が、 イ ギ リ ス 法(
Sect 56 BEA)の理は国際的手形法にも適用されるべきであ る
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Liesecke
は、 ま ず、 手 形 裏 面 の 連 続 外 の 単 純 署 名 を 保 証 文 句 の な い こ と、 そ の 意 図 す る と こ ろ か ら 手 形 保 証 で は な い と す る が、 手 形 上 の 権 利 移 転 を 伴 わ な い 手 形 上 の 担 保 責 任 の 負 担 の み を 目 的 と す る 署 名 と し て、 こ れ を 小 切手法上は規定があるので手形法上でも認めるべきとする。 かかる署名についての規定は手形法自体にはないが、 通 常 の 譲 渡 裏 書 の 変 形 と 解 し う る と し て い る。 し た が っ て、 担 保 責 任 も 変 形 的 裏 書 の 二 次 的 効 果 と 解 す る こ と に な る。 次 に、 担 保 責 任 を 果 た し た 署 名 者 が 前 者 等 へ の 手 形 上 の 請 求 に つ い て は、 こ の 署 名 の 意 図 が 実 質 的 に は 手 形 保 証 で あ る と の 認 識 か ら 手 形 法 上 の 支 払 を な し た 手 形 保 証 人 と 同 様 に 解 し て、 こ の 保 証 規 定 で 処 理 す べ き と し て い る。 こ れ は、 手 形 法 上 の 裏 書 規 定 で 解 決 し よ う と す れ ば、 解 決 の 直 接 的 条 文 が な い の で 手 形 保 証 規 定 の 類 推
(二〇)四二〇
適 用 と い う こ と に な る よ う で あ る。 さ ら に は、 イ ギ リ ス 手 形 法(
BEA) の 条 文(
Sect 56) も そ の 補 強 的 も の と してかかげている。
し か し、 問 題 は、 責 任 負 担 は 典 型 的 裏 書 規 定 の 変 形 的 署 名 と し て の 責 任 根 拠 で、 こ の 者 の 責 任 の 履 行 の あ と の 根 拠 条 文 は 手 形 保 証 規 定 の 類 推 と す れ ば、 両 者 の 関 連 性 の 説 明 が な い の で、 説 得 に 欠 け る の で は な い か。 責 任 負 担 根 拠 を 変 形 的 裏 書 に よ る 責 任 と す れ ば、 前 者 等 へ の 請 求 も 変 形 的 裏 書 の 効 果 と し て 説 明 す べ き で は な い か と 思 わ れ る。 そ れ は、 責 任 負 担 で は 手 形 保 証 で な い と 説 明 し、 こ の 者 の 前 者 等 へ の 責 任 追 及 は 手 形 保 証 規 定 の 類 推 適 用 と す る と 一 貫 性 に 欠 け る こ と に な る の で は な い か、 と 思 考 す る か ら で あ る。 な お、 自 己 受 手 形 で は 裏 書 の 連 続 は す べ て 受 取 人 か ら で な け れ ば な ら な い か 否 か に つ い て は 疑 問 を 呈 し て、 担 保 裏 書 の よ う な 場 合 に は、 特 に、 こ の者の署名が裏書欄の最初にある場合には裏書の連続との関係ではこれを考慮すべきでないとしている。 しかし、 裏書の連続は形式的・外形的に判断すべきと考えるので同意できない。
Hueck / Canaris8
の主張の概 要
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担 保 的 効 力 の 発 生 に は、 必 然 的 に 権 利 移 転 が な け れ ば な ら な い と の 十 分 な 法 的 根 拠 は な い の で、 当 事 者 の 意 図 す る 担 保 的 効 力 の 発 生 の み を 認 め る 署 名 が あ っ て も よ い し、 実 務 上 で は 認 め ら れ て い る。 確 か に、 通 常 で は、 担 保 的 効 力 の 発 生 は 権 利 移 転 の 二 次 的 効 果 に す ぎ な い が、 こ の 効 力 の 発 生 は 手 形 法 に お け る 典 型 的 通 常 の 形 態 に 基 づくものであり、 例外的に、 権利移転的効力と担保的効力の分離の可能性を認めても矛盾することにはならない。 だ が、 こ こ で の 担 保 的 効 力 の 発 生 は、 権 利 移 転 に 伴 う 法 定 上 の 根 拠 に よ る も の で は な い か ら、 直 接 的 に は 当 事 者 に よ る 法 律 行 為 上 の 意 思 に 基 づ く こ と に な る。 な お、 小 切 手 法 二 〇 条 は、 持 参 人 払 式 小 切 手 に つ い て、 権 利 移 転
(二一)担保裏書について(Ⅰ)(立木)四二一
を 伴 わ な い に も か か わ ら ず、 担 保 的 効 力 の 発 生 を 認 め て い る。 持 参 人 払 式 小 切 手 は、 裏 書 に よ っ て 指 図 式 に 変 わ る こ と は な く 持 参 人 払 式 小 切 手 に と ど ま る。 ま さ に、 こ こ で は、 裏 書 は 権 利 移 転 を 伴 わ な い に も か か わ ら ず、 担 保的効力の発生が法定されているのである。 支 払 を な し た 担 保 裏 書 人 は、 手 形 法 四 七 条 三 項、 同 法 四 九 条 に よ る と 前 者 に 対 す る 再 遡 求 権 が 認 め ら れ る。 特 に 手 形 保 証 人 と 参 加 支 払 人 に つ い て は、 類 似 の 規 定 が あ り、 こ れ ら の 者 は、 手 形 法 三 二 条 三 項、 同 法 六 三 条 一 項 に よ り 償 還 請 求 権 を 有 す る。 担 保 裏 書 人 は、 手 形 法 四 九 条 の 意 味 す る 前 者 を 有 し な い と の 解 釈 は 妥 当 で な い。 つ ま り、 こ の 前 者 の 中 に は、 以 前 に 手 形 上 の 権 利 者 だ っ た 所 持 人 の み を 意 味 す る と 解 す る 必 然 性 は な く、 支 払 っ た 者の前に手形上にいた人も含まれるのである。遡求権者は、 もっぱらに自己の以前の手形上の権利を行使するが、 担 保 裏 書 人 は、 そ の よ う な 権 利 者 で な い と し て 排 除 す る 決 定 的 な 理 由 も な い。 担 保 裏 書 人 に 対 し て、 手 形 法 三 二 条 三 項、 同 法 六 三 条 一 項 と の 類 似 性 を 排 除 す べ き で は な い。 そ れ は、 手 形 保 証 人 に し ろ 参 加 支 払 人 に し ろ、 以 前 に 手 形 上 の 権 利 を 有 し て い た 者 で は な い か ら で あ る。 い ず れ に せ よ、 担 保 裏 書 人 に 再 遡 求 権 を 否 定 す る 論 拠 は な いのである。 なお、 手形上の権利の移転は資格授与的効力を前提とするものではないので、 資格力のない裏書でも、 善意取得、 抗 弁 の 切 断 を 排 除 す る も の で は な い。 手 形 厳 正 原 則 の 不 当 な 誇 張、 な ら び に 資 格 授 与 概 念 の 誤 っ た 理 解 は 修 正 さ れ ね ば な ら な い。 確 か に、 手 形 法 一 六 条 一 項 の 裏 書 の 連 続 は 取 得 者 保 護 の 規 定 で あ る が、 不 連 続 の 場 合 に、 あ ら ゆ る 保 護 を 排 除 す る と の 意 味 で は な い( 推 定 力 が 機 能 し な い に す ぎ な い )。 同 様 に 担 保 的 効 力 と 裏 書 の 連 続 と の 関係性は存在しないのであ る
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(二二)四二二
ま ず、
Hueck / Canarisは、 手 形 上 の 権 利 の 移 転 と 担 保 的 効 力 の 発 生 は 必 然 的 に 一 体 化 し て い る と の 十 分 な 法 的 根 拠 は な い の で、 両 者 の 分 離 は 可 能 で あ る と す る。 つ ま り、 原 則 的 に は 両 者 が 一 体 化 す る の が 典 型 的 で あ る が 例外的には分離も可能とするのである。その上で署名者の責任の根拠は、 両者一体化の場合には法定上の効果で、 例 外 的・ 分 離 の 場 合 に は、 法 定 上 の 規 定 が な い の で 当 事 者 の 意 思 に 責 任 根 拠 が あ る こ と に な る と す る。 こ れ の 可 能 な こ と は 手 形 法 に は な い が 小 切 手 法 二 〇 条 で 持 参 人 払 式 小 切 手 に 裏 書 し て も 指 図 式 に 変 わ る こ と は な い の に、 つ ま り 権 利 移 転 は な い の に 担 保 責 任 の 発 生 を 認 め て い る 規 定 を あ げ て、 手 形 法 に も こ れ を 類 推 適 用 で き る と 解 す る の で あ る。 こ れ ら の 説 明 は 正 論 と し て、 評 価 で き る。 担 保 裏 書 署 名 者 の 責 任 は 意 思 表 示 上 の 効 果 と し て 裏 書 的 責任としている。つぎに、 支払をなした担保裏書人に再遡求権が認められるべき論拠として、
Hueck / Canarisは、 裏 書 以 前 に 手 形 上 の 権 利 者 で な く て も、 支 払 を な し た 者 に も こ の 者 の 前 に 手 形 上 に 署 名 し て い た 者 に 対 し て 償 還 請求を認めるべきとする。手形法三二条三項 (手形保証) 、同法六三条一項 (参加支払) を例示して、 担保裏書人は、 これらの手形保証人、参加支払人と類似する点をあげて、その請求の根拠としている。
こ の 点 に つ い て は、 担 保 裏 書 の 責 任 根 拠 を 意 思 表 示 に よ る 署 名 の 責 任 と、 裏 書 規 定 の 拡 張 な い し は 類 推 で 説 明 し て い る の で あ れ ば、 担 保 裏 書 人 の 前 者 等 へ の 責 任 追 及 も、 裏 書 規 定 の 拡 張 な い し は 類 推 で 論 拠 づ け る べ き で は な か っ た か と 思 わ れ る。 つ ま り、 通 常 で は 権 利 の 移 転 と 担 保 責 任 は 一 体 で あ る が 担 保 裏 書 で は こ れ が 分 離 す る こ と を 認 め る 以 上 は 権 利 移 転 を 前 提 と し な く て も 前 者 へ の 責 任 追 及 を 裏 書 的 に な し う る と の 論 理 で あ る。 た だ し、 手 形 法 自 体 の 中 で の 解 決 と す れ ば、 既 存 の 規 定 で、 担 保 裏 書 人 に 償 還 請 求 を 認 め る に つ い て、 こ の よ う な 説 明 が な さ れ ざ る を 得 な い の か も し れ な い が、 担 保 裏 書 人 の 責 任 を 裏 書 的 に 説 明 し、 支 払 っ た 場 合 の 前 者 な ど へ の 権 利
(二三)担保裏書について(Ⅰ)(立木)四二三
について手形保証人や参加支払人の規定を用いると一貫性に欠けるのではないかと考えるからである。 最 後 に、 担 保 責 任 と 裏 書 の 連 続 に つ い て は、 資 格 力 概 念 の 誤 っ た 理 解 と し て 関 係 性 を 否 定 し て い る。 こ の 点 に ついては正論と評価したい。
Zöllner9
の主張の概 要
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担保裏書は、意図的に権利移転の効力を発生させないための裏書であるが、判例 ・ 学説はこれを承認しており、 裏 書 に 関 す る 手 形 法 の 明 文 規 定 は な い が、 か か る 署 名 者 の 責 任 負 担 を 否 定 す る と い う 法 的 根 拠 も な い の で 有 効 性 を承認する。
支 払 を な し た 担 保 裏 書 人 に 償 還 請 求 権 を 否 定 す る こ と と 手 形 保 証 人 に 償 還 請 求 権 を 付 与 す る こ と の 間 に 矛 盾 は な い。 そ れ は、 手 形 保 証 人 は 手 形 上 で 被 保 証 人 の 地 位 が 明 確 で あ る か ら 償 還 請 求 権 を 有 す る が、 裏 書 連 続 外 で 意 図 的 に 担 保 目 的 の み の 署 名 を す る 純 粋 な 担 保 裏 書 人 は、 前 に 実 質 的 な 権 利 者 で な か っ た の で、 こ の 者 に 償 還 請 求 権を付与するのは整合性がな い
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ま ず
Zöllnerは、 担 保 裏 書 を 承 認 す る 理 由 と し て、 判 例・ 学 説 で の 承 認 と 裏 書 規 定 か ら の 積 極 的 否 定 も な い こ と を あ げ て 消 極 的 に 承 認 し て い る。 次 に、 担 保 裏 書 人 の 支 払 に 対 し て 償 還 請 求 権 を 承 認 す る か に つ い て は、 以 前 に 手 形 上 の 権 利 者 で な か っ た と の 理 由 で 否 定 し て い る。 彼 の 基 本 的 理 解 は、 権 利 移 転 と 担 保 責 任 の 不 可 分 性 で あ り、 裏 書 の 連 続 性 に あ る の で、 担 保 目 的 の み の 裏 書 に つ い て は 担 保 裏 書 人 が 支 払 を し て も 償 還 請 求 に つ い て は 明 文 規 定 の な い こ と で 否 定 的・ 消 極 的 と 思 わ れ る。 他 方、 手 形 保 証 に つ い て は、 保 証 人 は、 か つ て 手 形 上 の 権 利 者 で な く と も 償 還 請 求 が 付 与 さ れ る の は、 被 保 証 人 の 特 定 性 な ら び に 明 文 規 定 が 存 す る か ら と し て い る。 な お、 彼
(二四)四二四
は、 か か る 裏 書 が 連 続 内 で あ れ ば、 擬 制 的 に 権 利 移 転 が あ る も の と し て、 担 保 的 効 力 も 承 認 す る と 思 わ れ る。 結 果的には最高裁と同旨の立場を取っている。
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Richardi
の主張の概 要
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裏 書 の 法 制 度 は、 手 形 の 所 持 人 で な い 者 で も 担 保 責 任 を 引 受 け る こ と を 可 能 に し て い る。 こ の 裏 書 は、 手 形 法 上 の 方 式 で 担 保 約 束 を 付 与 す る 意 図 で 手 形 上 に な さ れ う る の で あ る。 こ の 担 保 裏 書 で は、 担 保 責 任 は、 手 形 上 の 権 利 の 譲 渡 の 法 定 効 果 と し て 生 ず る の で は な く、 裏 書 人 の 法 律 行 為 上 の 意 思 で、 手 形 上 の 担 保 責 任 が 発 生 す る の で あ る。 担 保 裏 書 人 は、 手 形 上 の 権 利 を 譲 渡 す る 意 思 は な く、 担 保 負 担 の 約 束 を す る の み で あ る か ら 手 形 の 所 持 人である必要もない。これらのことから、 方式は完全あるいは記名式を取らず、 白地裏書の方式が取られている。 こ れ が 有 効 で あ る た め に は、 手 形 の 裏 面 あ る い は 補 箋 上 に な さ れ な け れ ば な ら な い。 そ れ は、 手 形 表 面 の 単 純 署 名はそれが支払人あるいは振出人のものでないかぎり、手形保証と解されるからである。
Richardi
は、 担 保 裏 書 は、 裏 書 の 法 制 度 の 中 で 可 能 で あ る こ と を 述 べ た 上 で、 担 保 裏 書 人 の 責 任 の 根 拠 を 意 思 表 示 上 の 効 果 責 任 と し て い る。 そ し て、 通 常 の 譲 渡 裏 書 で あ れ ば、 権 利 移 転 の 効 果 と し て 担 保 責 任 が 発 生 す る と の 前 提 の も と で、 担 保 裏 書 も 裏 書 の 変 形 と し て 手 形 法 上 で の 可 能 性 を 述 べ て い る。 そ し て 担 保 裏 書 の 要 件 と し て 形 式 的 に は 手 形 裏 面 か 補 箋 上 の 単 純 署 名 で あ る こ と を 手 形 保 証 と の 区 別 と し て い る。 な お
Richardiは、 支 払 を し た 担 保 裏 書 人 の 償 還 請 求 に つ い て は 直 接 的 な 説 明 を し て い な い が、 手 形 保 証 の 代 替 で あ る と の 説 明 が あ る の で この保証の類推適用で処理するとの推測はなしうる。それに、 担保裏書と連続性についての直接的な言及もない。
(二五)担保裏書について(Ⅰ)(立木)四二五
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Sedatis
の主張の概 要
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担 保 裏 書 は、 手 形 上 に 裏 書 の 連 続 内 で な さ れ る 場 合 と 連 続 外 で な さ れ る 場 合 と が あ る。 前 者 で あ れ ば、 連 続 に 貢 献 す る か ら 資 格 授 与 的 効 力 の 付 与 さ れ た も の と 評 価 さ れ る が、 後 者 で あ れ ば、 い わ ゆ る 孤 立 し た 担 保 裏 書 と な り 実 質 的 権 利 の み な ら ず、 形 式 的 資 格 力 さ え も 欠 け た も の と な る。 し か し な が ら、 両 者 と も に 署 名 者 に よ る 担 保 負 担 の 明 確 な 意 思 の も と に 手 形 の 流 通 促 進 が 意 図 さ れ て い る 点 で は 共 通 で あ る か ら、 両 者 は 同 一 の 観 点 か ら そ の 法 的 根 拠 づ け が な さ れ る べ き で あ る。 つ ま り、 通 常 の 裏 書 に お け る 担 保 責 任 の 発 生 と 担 保 目 的 の み の 裏 書 に お け る 責 任 負 担 の 発 生 と を 区 別 す る こ と な く、 両 者 と も に、 そ の 責 任 の 発 生 を 統 一 的 に 理 解 す べ き で あ る。 統 一 的 に 理 解 で き る 考 え 方 と し て は、 債 権 法 上 の 交 付 契 約 に 基 づ く と す れ ば、 こ れ ら の 責 任 負 担 の 根 拠 を 統 一 的 に 説 明 で きることになる。
これを実証しているのが小切手法二〇条の持参人払式小切手における裏書の担保責任の発生である。
な お こ の 契 約 は、 手 形 法 上 の も の で あ り、 原 因 関 係 か ら 独 立 し た 設 権 的 な も の で、 こ の 契 約 の 要 素 は、 署 名 者 に よ る 債 務 負 担 の 合 意 と 合 意 に 基 づ い て の 証 券 の 交 付 と 受 領 か ら 成 り 立 つ も の で あ る。 こ れ は、 場 合 に よ っ て は 黙 示 的 に 締 結 さ れ う る も の で も あ る。 こ の 契 約 は、 債 務 負 担 を 目 的 と す る 債 権 法 上 の 性 質 を 有 し、 証 券 の 交 付 を 必 須 の 要 素 と す る も の で あ る。 そ れ に、 す べ て の 署 名 者 に よ る 手 形 法 上 の 債 務 負 担 の 法 的 根 拠 は、 原 則 的 に は、 責任負担の意思に由来するものである。
担 保 裏 書 で 特 に 問 題 と な る の が、 支 払 を な し た 担 保 裏 書 人 に よ る 前 者 等 へ の 償 還 請 求 で あ る が、 責 任 負 担 と 支 払による償還請求権取得との密接な関連性から肯定されるべきである。
(二六)四二六
支 払 を な し た 償 還 義 務 者 の 実 質 的 な 償 還 権 の 取 得 は、 最 終 義 務 者 た る 引 受 人 に 至 る こ と を 前 提 と し て い る。 こ の原則は、 手形法の一般的な法原則として認められている。手形法四九条と同法四七条三項は、 自明の理として、 支払をなした裏書人は、 支払における法律上の効果として前者に対して請求権を取得するのである。この原則は、 手 形 に 支 払 を な し た あ ら ゆ る 償 還 義 務 者 に 対 し て、 以 前 の 流 通 関 係 に お け る 法 的 な 地 位 と は 関 係 な く 帰 属 す る も の で あ り、 手 形 法 自 体 に 個 別 的 に 認 め ら れ て い る。 例 え ば、 通 常 の 譲 渡 裏 書( 手 形 法 一 五 条 )、 手 形 保 証( 手 形 法 三 二 条 三 項 )、 参 加 支 払( 手 形 法 六 三 条 一 項 )、 無 権 代 理 人( 手 形 法 八 条 一 項 ) に は 支 払 に よ っ て 署 名 者 に 償 還 請求権が法定されてい る
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