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幼児の保存性と移調行動

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

幼児の保存性と移調行動

著者 杉村 健, 白崎 泰子, 沢田 寿子

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 34

号 1

ページ 157‑172

発行年 1985‑11‑25

その他のタイトル Children's Conservation and Transposition Behavior

URL http://hdl.handle.net/10105/2218

(2)

幼児の保存性と移調行動

杉村 健・白崎泰子*・沢田寿子**

(奈良教育大学心理学教室) (昭和60年4月26日受付)

Kuenne (1946)は、移調の距離効果に関する研究で、 3歳から6歳の間に学習様式ないし学 習過程が質的に変化するということを発見した。この研究では、いまやこの分野の古典であると いわれており、学習理論に基づいて子どもの学習研究を行ったこと、動物と大人の学習研究の橋 渡しをしたことの2つの点で、きわめて高く評価されている(杉村, 1978)。 1960年代になって、

Kendler and Kendler (1962)による弁別移行学習の研究に端を発し、学習の発達的研究ないし 発達の学習理論的、実験心理学的研究が急激に増大したことは周知の事実である。その後、弁別 学習に関するいくつかの発達理論が提唱され(Zeaman & House, 1974)、最近になって、 Kend‑

1er 自身もまた、任意移行学習の研究成果に基づいて、自己の理論を修正し発展させている (Kendler, 1979, 1983)<

ところで、学習の発達的研究においては、そのほとんどが異なる年令の被験者に同一の学習課 題を与え、その成績に基づいて学習過程の発達的変化を推論するという方法が用いられている。

しかしながら、かつて Morrisett (Kendler, 1963 による)がKendler説を批判して、 "生活 年令は心理学的には十分な先行条件とはなりえない"と主張したことは、現在でも正しいといえ る。実際に、年令が心理学的に何を意味するか明らかではなく、それに、同じ年令であっても、

子どもの認知発達には著しい個人差があることは周知の事実である。したがって、単に年令では なくて、何らかの心理学的な尺度でもって発達水準を規定し、それと学習過程との関係を調べる

ことが必要である。その尺度として、本研究ではPiagetのいう認知発達の水準を用いることに した。

これまでは、 Piagetのいう認知発達の研究と学習発達の研究が独立に行われてきた。しかし 近年になって、子どもの操作水準と移調(山内ら, 1975; O'Connor & Beilin, 1980)、逆転・

非逆転移行(柴田, 1976, 1983;竹内, 1983)、任意移行(田中1976;内乱1984)、特異学習 (Sugimura, 1985a)、標本一致学習(杉村, 1984)および仮説行動(Gholsonら、 1976; Gholson, 1980)との関係が問題にされるようになってきた。この種の研究では, Piaget流の課題の成績に 基づいて、前操作段階の子どもと具体的操作段階の子ども、あるいは非保存段階の子どもと保存 段階の子どもを選び出し、そして、学習課題の成績を比較する。今後、研究成果が積み重ねられ ることにより、認知発達の理論と学習発達の理論の同一性と差異性が明らかになるとともに、 2 つの理論の統合が期待される。

本研究の目的は、中間大移調に及ぼす保存性の効果を検討することであるが、その契機となっ たのはO'Connor and Beilin (1980)の研究であるので、以下にその概要と問題点について述 べることにする。その研究は3つの実験からなっているが、本研究と直接関係があるのは実験I と実験Ⅲである。

157

*現在福井市

**現在奈良市

(3)

158 杉村  健・自碕 泰子・沢日 寿子

実験Iでは、数と長さの保存課題および系列化課題を用いて、前操作段階、移行段階および具 体的操作段階の子どもを選び出した.移調課題としては、立方体の一面が6.45cm2のものをN0.

1とし、相隣る立方体の一面の比をi :i.3 で変化させ、 No. 13までを用意した No. 1‑2

‑3かNo. ll‑12‑13のいずれかのセットの中間大(N0. 2かNo. 12)を正刺激として連続5 回正反応まで訓練し、そのあとで No. 6‑7‑8のセットを1回だけ提示してテストが行われ

た(5段階の遠テスト)O 移調反応者の割合は前操作段階5%、移行段階25%、具体的操作段階 70%であり、彼らはこの結果について、移調行動が操作水準によって規定されると解釈した。実 験Ⅲでは、数と長さの保存課題を用いて前操作段階の子ども(非保存者)と具体的操作段階の子 ども(保存者)を選び出し、 No. 4‑5‑6で訓練してNo. 6‑7‑8でテストが行われた(2段 階の近テスO。その結果、移調反応者の割合は非保存者53%、保存者47%であって有意差がな

く、移調行動は操作水準の影響を受けなかった。以上の結果から、 O'Connor and Beilin (1980) は移調行動には操作水準だけでなく、近テストから遠テストへの刺激セットの変化といった知覚 的要因も関与していると結論した。

しかしながら、彼らの実験を詳細に検討してみると、実験I (遠テスト)の被験者は平均年令 が前操作段階5:2 (4:8‑6:3)、移行段階5:2 (4:8‑5:ll)、具体的操作段階5

: 5 (5 : 0‑6 : 2)で、最後の段階の年令が有意に高い。これに対して実験Ⅲ (近テスト) では、非保存段階6:8 (6:3‑7:5)、保存段階6:9 (6:3‑7:3)であり、実験

Iと比べて、ほぼ1歳6カ月も年令が高いのである。したがって、実験Iで操作水準の効果があ ったのは、遠テストのためなのかあるいは年令が低いことによるのか判然としないし、また実験

Ⅲで操作水準による差がなかったのは、近テストのためなのかあるいは年令が高いことによるの か明らかでない。さらに言えば、実験Iでは保存課題と系列化課題で操作水準を決定しているの に対して、実験Ⅲでは保存課題のみが用いられている。

そこで本研究では、純粋に操作水準のみの効果を検討するために、年令は同じであるが操作水 準のみが異なる幼児、すなわち非保存者と保存者を被験者として用い、その移調行動について比 較することにした。

実験 I

本実験の目的は、幼児の保存性が中間大移調の近テストと遠テストに及ぼす効果を検討するこ とである。上述のように、 O'Connor and Beilin (1980)は近テストでは操作水準の効果がなく 遠テストでは効果があることを兄い出したが、それが年令を同じにした非保存者と保存者の場合 にも得られるとすれば、次の予想が成り立つ。判断が概念的でなく刺激の知覚的変化に影響され やすい非保存者では、移調反応者の割合は近テストから遠テストにかけて有意に減少するが、判 断が概念的であって刺激の知覚的変化に影響されにくい保存者では、移調反応者の割合は2つの テストでほぼ同じであろうo なお、 Sugimura (1971、 1985b)は幼稚園年長児を用い、過剰訓練 によって遠テストの移調反応が増加して距離効果が弱められることを示しているので、本実験で も過剰訓練を実験変数として取り入れ、それが非保存者と保存者に対してどのような効果をもた らすかを検討する。

(4)

方法

実験計画  2 × 2 × 2の要因計画が用いられた。第1の要因は被験者の保存段階(非保存者、

保存者)、第2の要因は移調テストの距離(近テスト、遠テスト)、第3の要因は移調テストの方 向(上方向、下方向)であり、いずれも被験者問要因であった。すべての被験者に対して、連続

5回正反応に達したあとと、 15回正反応の過剰訓練のあとにテストが行われた。

被験者  被験者は奈良市内の幼稚園の年長児191名であり、あとで述べる保存課題を実施し たところ、表1に示す結果が得られた。 0点の者85名を非保存者とし、 5点の者84名を保存者と して移調課題を与えたが、非保存者の5名と保存者の4名は訓練基準に達しなかったので除外し た。非保存者の80名の平均年令は5 : 8 (5 : 2‑6 : 6)、保存者80名の平均年令は5 : 9 (5

: 1‑6 : 6)で、ほとんど同じであった。それぞれについて、年令と男女の数が同じになるよ うにして、 20名ずつの4群を作った。

材料 (1)保存課題‑ピンクの色と栂色のおは じきを6個ずつ用いて数の保存課題を構成した。数 の保存課題を用いたのは、次の2つの理由による。

1つば、従来の研究で数が最もしばしば用いられて いるからであり、もう1つは、数の保存の成績と物 質量、液量、長さそれぞれの保存の成績との間に高 い相関が示されている(天岩、 1973)からである。

?> *蝣蝣ドISS

課題1 (拡散)

。.辛:Jj 2 (ォォ;蝣:)

課題3 (分割)

課題4 (移動)

.I;也5 (FJ)

● ● ● ● ● ●

〇 〇 〇 〇 〇 〇

表1保存課題の結果(人数)

得  点

0   1へ4   5

男児  46  13   41 100 女児  39       43   91 合計  85   22   84  191

● ● ● ● ● ●

〇 〇 〇 〇 〇 〇

・ ・ 9 9 ・ ・

cm

・ ・ ・ ・ ・ OOO 000

●○●○

●○

● ● ● ● ● ●

〇〇〇

〇 〇   ●‑‑・だいだい色のおはじき

○    ○・・・‑・ピンク色のおはじき 図1 数の保存課題

(5)

160 杉村  健・自崎 泰子・沢田 寿子

図1に示すように、栓色を標本刺激、ピンク色を比較刺激とし、栓色のおはじきは、その中心か ら中心までを約3.3cmずつあけて27.0cmx30.5cmの白い厚紙の上部に桟に並べて貼りつけた。

おはじきの直径は約1.9cm であった。

課題1 (拡散):栓色のおはじきの下に、ピンク色のおはじきを約1.5倍の間隔になるように広 げて並べる。

課題2 (収縮):ピンク色のおはじきを間隔をあけずにくっつけて並べる。

課題3 (分割): 2色のおはじきの両端がそろうようにし、 ピンク色のおはじきを3個ずつく っけて並べる。

課題4 (移動):栂色の右側の3個とピンク色の左側の3個がそろうようにし、ずらして等間 隔に並べる。

課題5 (円):ピンク色のおはじきがそれぞれ六角形の頂点にくるようにし、円形に並べる。

(2)移調課題‑緑色のつや紙で作られた大きさが異なる6つの正方形で構成された。隣接する 正方形の面積比は1 :1.4で増加しており、 1辺の長さは3.0cm (No. 1)、 3.5cm(No. 2)、

4.2cm (No. 3)、 5.0cm (No. 4)、 5.9cm (No. 5)、 6.9cm (No. 6)であった。それぞれの 刺激セットは3刺激からなり、底辺が一直線に並ぶようにして、 9.8cmx26.0cm の白い厚紙に 等間隔に貼りつけた。

(a)訓練課題:表2の左側に示されているように、大きさが異なる3つの正方形からなっており

̀まんなが とか̀中ぐらい'という関係に反応しても、 ̀この大きさ'という特定刺激に反応して も学習が可能である。各セットで3つの刺激の並べ方は6通りあり、それぞれ3枚ずつ計18枚の 刺激セットカードを作成し、 ①正刺激が同じ位置に連続して現れない、 ②全く同じ配列の刺激セ

ットが続かない、 ③第1試行では中央に正刺激を置くことを条件にして配列した。

(b)テスト課題:表2の右側に示されているように、上方向、下方向ともに、近テストは1段階、

遠テストは3段階はなれている。テストにおいて○印をつけた刺激を選択すれば、移調(関係) 反応をしたと判定する。刺激の並べ

方は6通りあるが、中間大刺激(○

印の刺激)が同じ位置に現れないよ うにして、 2枚ずつの2組を作った。

例えば、 No. 1‑2‑3で訓練して 近テストを行う場合には、連続5回 正反応に達したあとで No. 3‑4

‑2と No. 4‑3‑2を与え、過 剰訓練後にはNo. 2‑4‑3とNo.

表2 移調課題に用いた刺激セット

テ  ス  ト

訓  練

1‑2‑3 + 4‑5‑6

+

方向   近テスト    遠テスト ア   2‑(ァ)‑4   4‑ゥー6 下   3‑④‑5  1‑②‑3 (注) +印は正刺激を示し, ○印の刺激を選択すれば移調

反応と判定する。

3‑2‑4を与えた。遠テストを行

う場合には、 No. 5‑6‑4と No. 6‑5‑4、 No. 4‑6‑5と No. 5‑4‑6を与えた.

手続き  実験は幼稚園の一室で個別的に行われた。被験者が実験者と机をはさんで向かい合 って着席すると、実験者が被験者の名前をたずね、そのあとで、家族や友達のことなど実験とは 無関係な話をして、ラポートを形成した。

(1)保存票題‑図1の標準事態を提示して、 "○○ちゃん、これからお姉ちゃんとおはじきで 遊びましょうね。 (標準事態を指しながら)痩色のおはじきの数とピンク色のおはじきの数は同

じかな。"とたずねる。 "同じ"と答えた被験者には、 "同じだね"と言って課題1に移る。

(6)

"ちがう"とか"わからない"と答えた被験者には、ピンク色のおはじきを鐙色のおはじきに1 個ずつ対応させて、 "同じ数だね"と確認してから課題1に移る。

課題1 "ピンクのおはじきを広げますよ。 (おはじきを動かす)栓とピンクのおはじきの数 は同じかな、ちがうかな。"

課題2 "今度はピンクのおはじきを縮めますよ。 (おはじきを動かす)栓とピンクのおはじ きの数はちがうかな、同じかな。"

課題3 "次はピンクのおはじきを分けますよ。 (おはじきを動かす)栓とピンクのおはじき の数は同じかな、ちがうかな。"

課題4 "次はピンクのおはじきをずらしますよ。 (おはじきを動かす)栓とピンクのおはじ きの数はちがうかな、同じかな。"

課題5 "今度はピンクのおはじきを丸にしますよ。 (おはじきを動かす)栓とピンクのおは じきの数は同じかな、ちがうかな。"

"同じ"と答えた被験者には、 "どうして同じだと思ったの"と理由をたずねた。 "ちがう"

と答えた被験者には、 "どちらが多いかな"とたずねた。それぞれの課題のあとでおはじきを標 準事態に戻してから、次の課題に移った。 "同じ"と答えた場合に1点を与え、 0点の者を非保 存者、 5点の者を保存者とした。

(2)訓練課題‑保存課題が終了すると、移調の訓練課題の第1試行に用いるカードを提示し、

次の教示を与えた。 "○○ちゃん、今度はカード遊びをしましょうね。 (刺激の1つを指さして) これ、なんという形か知っているかな。 (被験者の反応を待つ)そうだね、四角だね。 (わからな い者やまちがえた者には正しい名前を教える)この中に1つだけ̀あたり'の四角があります。

よく考えて、 ○○ちゃんが̀あたり'だと思うものを指でさして、お姉ちゃんに教えてね。 ○○

ちゃんの指さしたのがあたっていれば̀あたり'まちがっていたら̀まちがい'と言います。たく さん̀あたり'になるように頑張ってね。"

教示に続いて、被験者の反応速度に応じ刺激カードを1枚ずつ提示した。正反対に対しては

"あたり"と言い、誤反応に対しては"まちがい。 (正刺激を指して)この四角が̀あたり'だよ。"

と言って修正した。 36試行までに連続5回正反応の基準に達しなかった者は、学習不能者とみな して実験から除外した。

(3)テスト課題‑訓練が連続5回正反応の基準に達すると、新たな教示なしにテスト課題のカ ードを提示し、 1つの刺激を選択させた。テストを2試行実施したあとで再び訓練課題を与え、

15回正反応(連続しなくてもよい)の基準に達すると、前とは異なるカードで2試行のテストを 実施した。テスト試行ではどの刺激を選択しても、 "あたり"と言われた。

テスト終了後、次の質問をして内省報告を求めた。 ①カ‑ドを見せないで、 "たくさんあたっ たね。どんな四角があたりだったか教えてちょうだい。" この質問に答えられなかった者には次 の質問をした。 ②最終テスト試行に用いたカードを提示して"これではどの四角があたりかな。

(被験者の選択を待つ)そうだね。では、どうしてその四角を̀あたり'と思ったか教えてちょ うだい。"

結果

訓練  連続5回正反応の訓練基準に達するのに要した平均試行数について、 2 (保存段階)

×2 (テストの距離) ×2 (テストの方向)の分散分析を行った結果、いずれの主効果および交

(7)

162 杉村  健・白幡 泰子・沢田 寿子

互作用も有意でなかった。なお、保存者の平均試行数は4.89、非保存者では5.54であって、保存 者の方が僅かによい成績を示した。過剰訓練中の誤反応について2 × 2 × 2の分散分析を行った 結果も、主効果、交互作用ともに有意でなかった。ちなみに、保存者の平均誤反応数は1.08、非 保存者では1.34であり、過剰訓練によって学習が十分に行われたといえる。

テスト (1)移調反応者‑2試行ともに移調反応をした者(表2の○印の刺激を選択した者) を移調反応者と固定した。表3には、連続5回正反応(5/5)に達したあとのテスト試行にお ける移調反応者の割合、過剰訓練(+15)のあとのテスト試行における移調反応者の割合、およ び両テスト(両方)ともに移調反応者として同定された者の割合が示されている。

表3 移調反応者の割合(%)

保 存 者 非保存者

5/   + 15

0 0

6 7

上   50     55     45     35    25    1 5 下   55     55     40     45    55    45 (注) 5/5は連続5回正反応後, +15は5/5+15回正反応後のテストを示し,両方は

5/5と+15でともに移調反応をした場合である。

まず、 5/5の結果について角変換値を用いた2×2×2の分散分析を行った。その結果、テ ストの距離の主効果がZ2(D‑12.15、 P<.001で有意であり、保存段階の主効果はz2(l)‑3.48、

P<.10で有意な傾向を示したO テストの距離の有意な主効果は、表3からもわかるように、近 テスト(72.5%)の方が遠テスト(46.3#)よりも移調反応者が有意に多いことを示し、全体とし ては距離効果が認められたO保存段階の主効果は、保存老(66.Z%)の方が非保存者(52.5#)よ りも移調反応者が多い傾向を示す。過剰訓練後の移調反応者の分散分析も、テストの距離の主効 果がZ2(l)‑ll.09、 P<.001で、近テスト(72.530の方が遠テスト(47.530 よりも有意に多く、

保存段階の主効果は *2(l)‑2.89、 P<.10で、保存者(66.3^0の方が非保存者(53.8)よりも 多い傾向を示した。最後に、両方のテストで移調反応者と同定された者は、テストの距離の主効 果が Z2(l)‑10.01, P<.Ol で、近てスト(58.8#)の方が遠テスト(35.0#)よりも有意に多 く,保存段階の主効果もZ2(l)‑6.38, P<.05であって、保存者(56.3^0の方が非保存老(37.

5%)よりも有意に多かった。       表4 関係について言語報告した者(%) (2)言語報告‑過剰訓練後のテストで2試

行ともに移調反応をした者のうちで、 "中ぐ らいの四角" "まんなかの大きさの四角" "2 番目に大きい四角の というように、大きさの 関係について言語化できた者の割合を示した のが表4である。角変換値による2×2×2

テスト     保存者    非保存者 近 上  98.3(15/16) 64.3(9/14)

下  86. 7 (13/15) 92. 3 (12/13) 遠 上  72.7(8/ll) 80.0(4/5) 下   63.6 ( 7/ll) 81.8 ( /ll) の分散分析をした結果、いずれの主効果も交互作用も有意にならなかった。したがって、近テス

トでも遠テストでも、また保存者でも非保存者でも、移調反応をした者は同じ程度に大きさに関 する言語報告ができたといえる。

(8)

b^KU^

本実験の目的は、中間大移調における距離効果に及ぼす幼児の保存性の効果を検討することで あり、合わせて過刺訓練の効果を調べることであった。主な結果は次の通りである。

(1)保存者、非保存者ともに、移調反応者は遠テストよりも近テストで有意に多く、移調の距 離効果が示された。

(2)非保存者よりも保存者で移調反応者が多く、特に、 2回のテストで移調反応をした者につ いては、保存者と非保存者の間に有意差が認められた。

(3) 5/5のあとと+15のあとの移調反応者の割合にはほとんど差がなく、過剰訓練の移調に及 ぼす効果はなかった。

(4)移調反応者については、保存段階およびテスト条件にかかわりなく、ほぼ同じ程度に関係 の言語報告をすることができた。

まず、非保存者だけでなく保存者にも距離効果が示されたことは、本実験の仮説を支持しない。

本実験の仮説は次の2つの根拠に基づいて立てられた。その1つは、近テストの移調では具体的 操作者と前操作者の問に有意差はないが、遠テストでは前操作者の移調反応が有意に少なかった という O'Connor and Beilin (1980)の結果である。先に述べたように、彼らの研究で用いら れた被験者の年令には約1歳6カ月のちがいが近テストと遠テストの間にある。したがって、近

テストで操作水準のちがいがなく遠テストで具体的操作者の移調反応が多いといっても、それは 操作水準を純粋に反映しているのではなく、年令のちがいが大きく影響しているといえる。これ

に対して本実験では、同じ年令の保存者と非保存者について近テストと遠テストを行ったので、

その結果は純粋に保存段階の影響だけを反映しているといえる。したがって、本実験の結果から は、少なくとも5、 6歳児の場合には、保存者でも非保存者でも距離効果を示し、操作水準と距 離効果の交互作用はないと結論できる。

もう1つの根拠は、非保存者の判断は知覚的要因に影響されやすく、保存者の判断は知覚的要 因に影響されにくいという Piagetの認知発達理論である。保存者も距離効果を示したいという 本実験の結果からみて、保存者でも知覚的要因の影響を受けたといわざるをえない。その原因と

して、本実験では数課題だけで保存段階を決定したこと、 5、 6歳児が示す保存性が不安定であ ることなどが考えられる。しかしながら、移調反応者が非保存者よりも保存者で多かったという 事実は、移調反応が知覚的要因だけでなく保存段階にも関係していることを示すものである。こ れに関連して、5/5後のテストと+15後のテストでの移調反応の仕方を調べてみた。保存者では、

一貫して移調反応をした者が45名、一方だけ移調反応をした者が16名であり、非保存者では同じ 順に30名と25名であった。一貫反応者の割合は保存者73.8^、非保存者54.5%となり、 %2(1)‑

4.68, p<.05で前者の方が有意に多かった。このことから、保存者は非保存者に比べて、中間大 の概念をより強く獲得しているといえる。

移調反応に及ぼす過剰訓練の効果は認められなかった。この結果は、 Sugimura (1971, 1985b) と一致しない。特に、 Sugimura (1985b)と本実験とは全く同じ移調課題を用いたのにもかか わらず、異なる結果が得られたのである。この原因は不明であるが、過剰訓練の効果はあまり安 定していないといわざるをえない。

最後に言語報告の結果をみると、 "中ぐらいの四角"といった関係を言えた者は保存者81.1%

非保存者79.1#であって、ともにかなり高い割合を示した。このことから、保存者でも非保存者 でも、移調反応を示した者は同じ程度に中間大の概念を言語化できるといえるので、この種の言

(9)

164 杉村  健・自碕 泰子・沢田 寿子

語概念と保存段階の問には関係がないといえる。これに関連して、 O'Connor and Beilin(1980) の実験Ⅱでは、同じように中間大の概念が言語化できる子だもでも、移調反応者は保存老(90%) の方が非保存者(30#)よりも多いことが示されており、他方、 Kitao (1974)の研究では、 "中

ぐらい"という言語知識がある者は移調の距離効果がなく、知識がない者は距離効果があること が兄い出されている。このように、移調、保存性、言語概念の関係は複雑であると考えられる。

実 験II

実験Iでは、 O'Connor and Beilin (1980)の結果から導いた予想を確認することができなか ったが、詳細に検討してみると、実験Iでは1段階の近テストと3段階の遠テストが用いられて いるのに対して、彼らの研究では2段階の近テストと5段階の遠テストが用いられていた。また, 彼らが用いた刺激のN0. 1は1辺が2.5cmであったのに対して,実験Iで用いた刺激は1辺が 3.0cmであった。これらの相違が結果の相違をもたらしたとも考えられるので、本実験ではN0.

1の1辺を2.5cm とし、 1段階の近テストと5段階の遠テストを行うことにした。なお、近テス トは通常は1段階であるので、彼らが用いた2段階にはしなかった。次に、通常の移調実験では 訓練セットとテストセットは大きさだけが異なっているが、本実験ではHansenandCole(1968) の研究を参考にして、大きさだけでなく形と色も同時に変化させる条件を設定した。これによっ て、刺激の知覚的変化が保存者と非保存者に及ぼす効果を検討することができる。

本実験の目的は、テストの距離と刺激の変化を組み合わせてできる近テストー不変化、近テス ト‑変化、遠テスト‑不変化、遠テストー変化という4条件の下で、同じ年齢でありながら保存 段階だけが異なる幼児の移調反応が、どのように異なるかを調べることである。非保存者の判断

は概念的でなく,刺激の知覚的変化に影響されやすく、保存者の判断は概念的で刺激の知覚的変 化に影響されにくいならば,次の予想が成り立つ。刺激セットの変化が最も小さい近テスト‑不 変化条件では、保存者と非保存者における移調反応の差は小さく、刺激セットの変化が最も大きい 遠テスト‑変化条件では、非保存者の移調反応が減少し、保存者との差が最も大きくなるであろう。

方法

実験計画  2 ×2 ×2 ×2の要因計画が用いられた。第1の要因は被験者の保存段階(非保 存者、保存者)、第2の要因は移調テストの距離(近テスト、遠テスト)、第3の要因は刺激セッ

ト(変化、不変化)、第4の要因はテストの方向(上方向、下方向)であり、いずれも被験者問 要因であった。

被験者  被験者は奈良市、郡山市、川西町の幼稚閑の年長児213名であり、保存課題の結果 は豪5のとおりであった。 0点の者93名を非

保存者、 5点の者86名を保存者として移調課 題を与えたが、非保存者の13名と保存者の6 4引ま訓練基準に達しなかったので除外した。

非保存者80名の平均年令は5 : 9 (5 6 : 5)、保存者80名の平均年令は5:10 (5

: 3‑6 : 6)で、ほとんど同じであった。

それぞれについて、年齢と男女の数が同じに

表5 保存課題の結果(人数) 得    点

1‑4

男児   45   19    45   109 女児   48   15    41  104 合計   93    34    86   213

(10)

なるようにして, 10名ずつの8群を作った。

材料 (1)保存課題‑実験Iと同じ。

(2)移調課題‑大きさが異なる8つの緑色の正方形と8つの栓色の円がつや紙で作られた。

隣接する正方形の面積比は1 : 1.4で増加しており、 1辺の長さは2.5cm(No.1)、 3.0cm (No.

2)、 3.5cm (No. 3)、 4.1cm (No. 4)、 4.9cm (No. 5)、 5.8cm (No. 6)、 6.9cm (No. 7)、

8.1cm (No. 8)であった。円の場合も1 :1.4の面積比で増加しており、同じ番号の正方形と円 の面積が同じになるようにした。円の直径は2.8cm (No.1), 3.3cm (No.2), 4.0cm(No. 3)、

4.6cm (No. 4)、 5.5cm (No. 5)、 6.5cm (No. 6)、 7.7cm (No. 7)、 9.2cm (No.8)であった。

それぞれの刺激セットは3刺激からなり、底辺または円周の1点が一直線に並ぶようにして、

12.0cmx30.0cm の白い厚紙に等間隔に貼りつけた。

(a)訓練課題:表6の左半分に示したように、緑色の3つの正方形からなっており、刺激セッ トの配列の仕方は実験Iと同じである。

(b)テスト課題:表6の右半分に示したように、不変化セットは緑色の正方形、変化セットは 栓色の円で構成されている。各セットの刺激の並べ方は6通りあり、それらをそれぞれ2枚ずつ 計12枚の刺激セットカードを作成し、訓練課題と同じ条件で配列した。

表6 移調課題に用いた刺激セット

テ  ス  ト

方向   刺激の変化     近テスト     遠テスト 訓  練

1‑2‑3 +

(線色の正方形)

6‑7‑i +

(緑色の正方形)

不変化 (緑色の正方形) (栓色 の 円)変  化

不変化 (緑色の正方形)

変  化 (栓 色 の 円)

2 ‑③‑4    6 ‑⑦‑8 2‑③‑4    6 ‑⑦‑8 5 ‑㊨‑ 7   l ‑(至上‑ 3 5 ‑甘‑ 7   1 ‑i.♪‑ 3 (注) +印は正刺激を示し, ○印の刺激を選択すれば移調反応と判定する。

手続き  保存課題の手続きは実験Iと全く同じである。移調の訓練基準を連続5回正反応と し、 48試行まで行ったこと以外は,すべて実験Iと同じである。移調のテストは訓練基準達成後 に、すべての被験者に12試行実施した。テストではどの刺激を選択しても正誤の情報を与えなか った。内省報告は、訓練基準達成とテスト試行終了後の2回にわたって求めた。それぞれの最終 試行に用いたカードを提示し、その試行で被験者が選択した刺激を実験者が指さしながら、 "ど うしうこの四角が̀あたり'だと思ったのか教えてちょうだい。"と言って、言語反応を求めた。

結果

訓練 連続5回正反応の訓練基準に達するのに要した平均試行数について、 2 (保存段階)

×2 (テストの方向)の分散分析を行った結果、保存段階の主効果だけがF(l, 156)‑3.46, p<.10で有意な傾向を示した。これは、保存者(平均6.1)の方が非保存者(平均8.6)よりも

速く訓練基準に達したことを示す。

テスト (1) 12試行中の平均移調反応数‑豪7は、テスト12試行中の移調反応数の平均を 示したものである。 2×2×2×2の分散分析を行った結果、 3次の交互作用だけがF(1,144)

(11)

166 杉村  健・自崎 泰子・沢田 寿子

‑3.73, P<.10で有意な傾向があり、それ以外の主効果、交互作用はすべて有意ではなかった。

ちなみに、保存者と非保存者のちがいがどこにあるかを調べるために、分散分析の誤差項を用い て条件ごとにt検定を行ったところ、遠テストー変化条件の下方向においてのみ、 t (144)‑1.96 で5%水準に近い有意差が認められた。これは、保存者(平均8.6)の方が非保存老(平均5.3) よりも移調反応が多いことを示す。

表7 テスト12試行中の平均移調反応数(標準偏差)

不   変   化 近テスト       遠テスト

¥m?.冒

非保存老

: '/‑'

上    下     上    下 8 9    8.7     8.4    6.0 (3. 1) (2. 2)  (4. 2) (3. 4)

8.6    7.6     8.5    7.7 (2. 4) (3. 7)  (4. 0) (3. 4)

変       化 近テスト

上    下

8.3    8.9 (2. 8) (3. 5)

7.0    7. 7 (4. 0) (4. 1)

ト0.4 0.9 ‑0・1 ‑1.7 1.3 2.2

遠テスト 上    下

5.4    8.6 (4. 5) (4. 2)

.1    5.3 (3. 3) (3. 7)

‑2. 7    3. 3

(2)第1試行における移調反応者‑表8は、テスト第1試行における移調反応者の割合を示 したものである。角変換値を用いた2×2×2×2の分散分析を行った結果、保存段階とテスト の方向の交互作用だけがx2(l)‑2.98, P<.10で有意な傾向を示した。これは、非保存者では 上方向(70%)と下方向(6530 がほぼ同じであるが、保存者では下方向(80%)の方が上方向

(60^0 よりも%2(1)‑3.81, P<.10で移調反応者が多いことによるものである。

表8 テスト第1試行における移調反応者の割合(%)

言語報告 (1)訓練基準達成後‑連続5回正反応の基準に達したあとで、 "まんなか" "中 ぐらい" "2番目日 といった中間大に関する言語化ができた者は、保存者では51.Z%,非保存者 では36.3^であった。 x2(l)‑3.66, P<.10で有意な傾向があり、同じように5回連続して中 間大刺激を選択しても、保存者の方が非保存者よりも正しい言語報告ができることを示している。

(2)訓練後の言語報告とテスト第1試行における反応の関係‑訓練基準達成後に中間大に関 する言語化ができた者でテスト第1試行において移調反応をした者は、保存者では68.3劣(41名 車28名)、非保存者では 62.1# (29名中18名)であり、中間大の言語化ができなかった者で移 調反応をした者は保存者では71.8# (39名中28名)、非保存者では70.6^ (51名中36名)であったO 保存者と非保存者をこみにした場合、中間大の言語化ができた者で移調反応をした者は65.7%

(70名中46名)、言語化できなかった者では71.1% (90名中64名)であった。以上のように、訓 練後の言語反応とテスト第1試行における移調反応の間には有意な関係がなかった。

(12)

(3)テスト終了後‑テストの最終試行からさかのぼって連続6回以上にわたり移調反応をし た者について、中間大に関する言語化ができた者の割合を調べた。保存者では71. 4^(28名車20名)、

非保存者では45.8^(24名中11名)であって、 Zi(l)‑3.52, P<.10で有意な傾向が認められたO 考察  本実験の目的は、 O'Connor and Beilin (1980)と類似した中間大移調課題を用いて、

テストの距離と刺激セットの知覚的変化が保存者と非保存者に対してどのような効果をもたらす かを検討することであった。主な結果は次の通りである。

(1)テスト12試行中の平均移調反応数、第1試行における移調反応者ともに、保存段階、テス トの距離および刺激の変化の主効果は有意でなかった。

(2)保存段階×テストの躍巨離、保存段階×刺激の変化、および保存段階×テストの距離×刺激 の変化の交互作用は有意でなかった。

(3)平均移調反応数でみると、近テストー不変化条件では保存者と非保存者の差は小さいが、

遠テストー変化条件では下方向のみで保存者の方が非保存者よりも多い傾向があった。

(4)訓練基準達成後、テスト終了後ともに、中間大の関係について言語化できた者は保存者の 方が多かった。しかし、訓練後の言語反応とそれに続くテスト第1試行における移調反応の間に は有意な関係がなかったO

実験Iでは保存者の方が非保存者よりも移調反応者が多かったが、実験IIでは移調反応者、移 調反応数ともに、保存段階によるちがいがみられなかった。 2つの実験で最も類似している条件 は、実験Iの5/5後の近テストと実験Ⅱの不変化条件における第1テスト試行である。そこで 両者の移調反応者の割合を調べてみると、実験Iの保存者では上方向、下方向ともに80%、非保 存者では上方向60%、下方向70%であり、実験Ⅱの保存者では50%と80劣、非保存者では70%と 40%であった。このように、実験Iではテストの方向にかかわりなく保存者の方が一貫して移調 反応者が多いが、実験Ⅱでは保存者は下方向で非保存者は上方向で移調反応者が多く、一貫した 結果が得られていない。以上の結果から、少なくとも数の保存課題で査定した保存段階と移調と の関係は不安定なものであると結論せざるを得ない。

次に、実験Iでは1段階近テストの移調反応者は72.5^、 3段階遠テスト46.3%であって有意 な距離効果が示されたが、実験IIの不変化条件では1段階近テスト60.0^、 5段階遠テスト72.5

%であって、有意差はないが5段階の方がやや多かった。これら2つの実験結果を総合してみる と、移調は1段階から3段階にかけて減少し、 3段階から5段階にかけて増加するというように テスト段階のU字型関数であることが示唆される。これに関連して、 Rabinowitz (1983)は1段 階テストと4段階テストは同程度の移調を示し、ともに2段階テストよりも多いことを兄い出し、

中間大移調のrule‑basedモデル(Lane & Rabinowitz, 1977)で説明しているo このモデルに よれば、訓練中に被験者は刺激の絶対特性(この大きさの四角)と関係特性(中ぐらいの四角) の両方を学習し、テスト刺激が与えられたときに、絶対ルールに基づいて絶対特性に反応するか、

関係ルールに基づいて関係特性に反応するかを決定しなくてはならない。ここで、移調が生じる のは次の2つの場合である。その1つは,訓練セットとテストセットの知覚的弁別に失敗し、テ ストセットに対しても訓練セットと同様な反応をする場合である。もう1つは、知覚的弁別は可 能であっても、絶対ルールを使用せず関係ルールを使用する場合である。このモデルに基づいて、

Rabinowitz (1983)の結果は次のように説明されている。 1段階テストでは弁別の失敗のため に移調が多くなり、 2段階テストでは弁別が可能になるために移調が減少する。 4段階テストで

(13)

168 杉村  健・自崎 泰子・沢田 寿子

は弁別は可能であるが関係ルールを用いる可能性が増加するために、再び移調が増加する。木研 究で得られたU字型の結果も、このモデルに当てはまるであろう。

本研究で最も強い関心があったのは、保存段階とテストの距離が移調に及ぼす効果であり、こ の点について、刺激の知覚的変化に影響されにくい保存者は距離効果を示さないが、知覚的変化 に影響されやすい非保存者は距離効果を示すであろうと予想した。先に述べたように、実験Iも 実験Ⅱもともに、保存段階とテスト段階の問に有意な交互作用がなかったが、念のために、実験I の移調反応者(表3)と実験Ⅱの不変化条件の移調反応者(表8)について、テストの方向をこみ にした表を作成した。その結果が表9である。 2つの実験で移調者の割合そのものが異なる点に 問題がないわけではないが、差の絶対値をみると、どの段階のテストもほとんど変らないのであ る。このことは、保存者も非保存者もともに、テストの距離の影響を同じ程度に受けていること を示すものであり、本研究の予想を支持しない。近テストでは具体的操作者と前操作者の差がな く、遠テストでは具体的操作者の移調反応が多いという O'Connor and Beilin (1980)の結果 はやはり、近テストと遠テストで被験者の年齢がかなり異なること、および操作段階を決定する のに異なる課題が用いられたことによるものであり、妥当性が乏しいといわざるをえない。

表9 保存段階とテスト段階の関係(移調反応者の創合)

1

保存者     80.0 実験I    非保存者     65. 0 差      15. 0 保存者     65.0 実験Ⅱ    非保存者     55. 0

テ ス ト 段 階

3

差      10. 0      ‑5. 0 (注)実験Ⅱは不変化条件のみの資料である。

実験Ⅱで新たにつけ加えられた変数、すなわち訓練からテスト‑の色と形の変化は、移調反応 に有意な影響を及ぼさなかった。事実、移調反応者の割合は不変化条件66.3^、変化条件71.3^

であった(表8参照)。この結果は Hansen and Cole (1968)や Sugimura (1972)と同じで あるので、刺激の変化は移調に影響しないと結論することができ、移調が訓練セットとテストセ ットの弁別可能性だけでは説明できないことを示唆する。保存段階と刺激変化の交互作用も有意 でなく、保存者と非保存者が刺激の変化の分化的影響を受けなかったといえる。

実験Ⅱで特に関心があったのは保存段階×テストの距離×刺激の変化の交互作用であり、近テ ストー不変化条件では保存段階による移調反応の差が小さく、遠テスト‑変化条件では保存者と 非保存者における移調反応の差が最も大きくなると予想したのである。しかしながら、平均移調 反応数(表7)でも移調反応者の割合(表8)でみても、有意な交互作用がなかった。ちなみに、

近テストー不変化条件の移調反応者は保存者65.0^、非保存者55.0^であり、遠テストー変化条 件では同じJTBに65.0方と70.0^であり、両条件における保存者と非保存者の差はほぼ同じであっ た。ここでもまた,保存段階が移調反応に対して分化的な効果をもたなかったといえる。なお、

表7の最下行に示した差についてその絶対値をみると、近テストー不変化条件の平均は0.6、遠テ スト‑変化条件の平均は3.0であり、後者の方が大きいことがわかる。遠テスト‑変化条件では

(14)

テストの方向によって正負が逆になっているという点に問題はあるが、差が大きいという点を取 り上げるならば、近テストー不変化条件よりも保存段階の影響を受けやすいのかもしれない。

最後に,言語反応について考察する。訓練後に中間大に関する言語化をした者も、テスト後に 同様な言語化をした者もともに、保存者の方が非保存者よりも多かった。テスト後の結果は実験 Iとは異なっているが、これは言語報告のさせ方のちがいによるのかもしれない。本実験の結果 からは、同じように5/5の訓練基準に達しても、また中間大移調をしていても、保存者の方が 非保存者よりも中間大の概念を正しく言語化する能力は高いことが示唆される。しかし、訓練後

に中間大の言語化をした者もしなかった者もともに、同じくらいの割合で移調反応をしているの で言語化の能力と移調反応とは関係がないといえる。この結果は、移調が言語概念の影響を受け

ると主張したKuenne (1946)やKitao (1974)の研究とは‑致せず、特にKuenneの言語媒介 説を否定するものである。

要 約

近年になって、 Piaget のいう認知発達と子どもの学習の関係について関心が高まってきた。

本研究においては、数の保存性によって査定された操作水準と中間大移調の関係が、 2つの実験 によって検討された。幼稚園年長児の中から、 5つの下位テストからなる数の保存課題の成績に 基づいて、保存者と非保存者が選ばれた。そして、中間大移調課題が与えられた。

実験I : O'Connor and Beilin (1980)の研究から、移調の距離効果は保存者ではみられない が非保存者ではみられるであろうと予測した。 5/5および5/5+15回正反応の訓練基準に達し たあとで、 1段階近テストか3段階遠テストが行われた。移調反応者は遠テストよりも近テスト で、非保存者よりも保存者で多かった。しかしながら,保存段階とテストの距離の問に有意な交 互作用がなかったので、仮説は支持されなかった。

実験Ⅱ :刺激の変化を強調するために,刺激の形と色が訓練セットからテストセット‑と変え られた。近テストー不変化条件では、保存者と非保存者の移調における成績の差が最も小さく、

遠テスト‑変化条件では,その差が最も大きくなると予測した。 5!5の訓練基準に達したあとで、

不変化刺激か変化刺激のもとで1段階近テストか5段階遠テストが行われた。移調反応数の平均 と移調反応者の両方で、すべての主効果および交互作用が有意でなかった。このように、保存段 階×テストの距離×刺激の変化の有意な交互作用がなかったので、仮説は支持されなかった。

以上の結果から、数の保存課題で査定された保存者と非保存者は、中間大移調における近テス トと遠テストに対して分化的に反応しないと結論することができる。

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く付記) 本研究の資料収集にさいし、実験Iでは奈艮市立伏見幼稚園、私立極楽坊保育園および奈艮教育大

(16)

学附属幼稚園、実験Ⅱでは姦艮市立飛鳥幼稚園、大和郡山市立沿道幼稚園および川西町立川西幼稚園の御協力を 得ました。記して感謝の意を表します。

(17)

172 杉村  鎚・自碕 泰子・沢田 寿子

Children's Conservation and Transposition Behavior

Takeshi Sugimura, Yasuko Shirasaki, and HisaKo Sawada {Department of Psychology, Nara University of Education, Nara 630, Japayi)

(Received April 26, 1985)

There has been an increasing concern about the relationship between Piagetian cogni‑

tive development and learning in children. In the present study two experiments were performed to examine the relationship between children's operational level assessed by the conservation of number and intermediate‑size transposition. Among older kindergarten children conservers and nonconservers were selected on the basis of the number‑conserva‑

tion task consisting of丘ve subtests. They were given an intermediate‑size transposition task.

Experiment I: It was predicted from the O'Connor and Beilin study (1980) that the distance effect of transposition would occur for the nonconservers but not for the conservers.

After reaching the training criteria of 5/5 and 5/5十15 correct responses, the subjects were given one‑step near test or three‑step far test. The number of transposers was grea‑

ter on the near test than on the far test and greater for the conservers than for the conservers. Since there was no sigificant interaction between conservation level and dis‑

tance of test, however, the pressent hypothesis was not supported.

Experiment II : To emphasize the stimuls changes, the form and color of stimuli were changed from the training to the test sets. The prediction was that the smallest performance difference in the transposition test of the conservers and the nonconservers would be found on the near‑unchanged test while the largest difference would be found on the far‑changed test. After reaching the training criterion of 5/5, the subjects were given one・step near test or five‑step far test under the stimuls changed or the stimuls unchanged condition.

For the mean number of transposed responses and the number of transposers all the main effects and the interactions were not significant. Since there was no signi丘cant interaction of conservation level X distance of test X stimulus change, the present hypothesis was not supported.

From these丘ndings, it can be concluded that the conservers and the nonconservers assessed by the number‑conservation task did not respond differentially to the near and the far tests in the intermediate‑size transposition.

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