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厚生労働科学研究費補助金(食品の安全確保推進研究事業)

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(1)

厚生労働科学研究費補助金(食品の安全確保推進研究事業) 

非動物性の加工食品等における病原微生物の汚染実態に関する研究  平成 25 年度−平成 27 年度  総合分担研究報告書 

 

寄生虫による汚染に関する研究   

研究分担者    杉山  広    国立感染症研究所寄生動物部   

研究分担者    廣井豊子    帯広畜産大学畜産衛生学研究部門  研究協力者    荒川京子    国立感染症研究所寄生動物部  研究協力者    柴田勝優    国立感染症研究所寄生動物部  研究協力者    賀川千里    国立感染症研究所寄生動物部  研究協力者    森嶋康之    国立感染症研究所寄生動物部  研究協力者    堀内朗子    日本食品衛生協会食品衛生研究所  研究協力者    生野  博    (株)ビー・エム・エル細菌検査部   

研究要旨:我が国では,かつて国民の半数以上が回虫・鞭虫・鉤虫という土壌 媒介寄生虫に感染していた.本研究における文献調査により,これら土壌媒介 寄生虫による症例は,激減しながら現在も続発していることが確認された.感 染源となる野菜の虫卵汚染は確実に継続していると考えられたが,具体的な汚 染野菜の特定は困難であった.感染源となる非動物性食品の特定は重要な課題 であることから,寄生虫卵を効率的に検出する方法として,ストマッカーある いは超音波を利用した検査法を構築した.ストマッカー法では回収虫卵数が従 来法に勝った.一方で超音波法では,回収虫卵数において従来法・ストマッカ ー法との間に有意差はなかった.しかし虫卵の分離回収と検出のための作業時 間が短縮され,作業者の負担は大きく軽減された.そこで超音波法で輸入キム チと北海道産行者ニンニクの検査を行った.しかし今回は,回虫卵やエキノコ ックス虫卵を検出することができなかった.  

1.非動物性食品を感染源とする寄生虫症 例の発生状況に関する文献資料の検索 A. 研究目的

回虫・鞭虫・鉤虫は野菜等を感染源とす る食品媒介寄生虫であり,土壌媒介寄生虫 とも呼ばれる.かつて我が国では国民の半 数以上が土壌媒介寄生虫に感染していた.

感染者数は最近,激減したが,国内で感染 したことが確実な症例の報告も続くことか ら,感染源である野菜の虫卵汚染は,いま だに継続していると推測される.ただし感 染源となった野菜の種類や症例数の推移の 詳細などについては,不明な点が多い.そ こでこれらの点を明らかにするため,医学 中央雑誌に収載された文献等を検索して,

検索用のデータベースを構築し,解析に取

り組んだ.

 

B. 研究方法 (1) 症例数

文献学的な二次資料として医学中央雑誌

(医中誌 Web)を用い,1990 年 1月から 2015年12月までの原著論文から,国内で 感染した回虫,鞭虫,鉤虫による症例を抽 出し,検索用データベースを構築した.さ らに日本臨床寄生虫学会誌(1990 年/第 1 巻〜2015年/第25巻)を文献学的な一次資 料として検索し,医中誌Web検索では抽出 されなかった土壌媒介寄生虫症例も,検索 用データベースに付け加えた.そして症例 の年別の発生数を明らかにすると共に,感 染源となった汚染野菜の特定を試みた.

(2)

これら土壌媒介寄生虫のうち,鉤虫に関 しては,ズビニ鉤虫とアメリカ鉤虫の2種 が人体感染の主要な原因として知られてい る.これら両種の人体への主たる感染経路 は異なり,前者は経口感染で,後者は経皮 感染である.このため本研究では,野菜の 摂食,あるいは経口感染によると論文著者 が示した症例のみを鉤虫による症例(ズビ ニ鉤虫症)として選別し,それ以外の鉤虫 症は,検索用データベースから削除した.

症例数の検討として,臨床検体の検査会 社であるビー・エム・エル(BML)にも協 力を仰いだ.同社は全国の医療機関から依 頼を受けて,患者から検出された虫体の同 定を実施している.BMLの寄生虫症の事例 の中から,回虫症,鞭虫症,鉤虫症と診断 された症例の数について,提示を受けた.

従って鉤虫症に関しては,経口感染だけで はなく,経皮感染による症例もその数の中 に含まれている.また,日本人だけでなく 外国人の症例,さらに海外で感染した症例 も含まれている.

(2) 感染源

各症例の感染源となった野菜に関しては,

論文著者の記述に従い,生野菜,無農薬野 菜,有機野菜に分類した.なお本研究では,

農薬または化学肥料を使用しない栽培方法 によって作られた野菜を「無農薬野菜」と 定義した.人糞(いわゆる下肥)のみを肥 料として栽培された野菜は,「無農薬野菜」

とした.また「有機野菜」は,農水省によ って厳密に定義された栽培法によるものを さすが,「無農薬野菜」を「有機野菜」と区 別しない医療関係者(論文著者)も多い.

そこで本研究では,論文著者が「有機野菜」

と記述した場合は,その記述をそのまま採 用した.また各論文で著者が感染源を野菜

(あるいは生野菜)とのみ記述した症例は,

論文を精読して上述の定義から感染源を

「無農薬野菜」あるいは「有機野菜」に振 り分ける努力をした.しかし記述が不十分 な論文および判別不可な論文は,不明(あ るいは生野菜)と分類した.

C.研究結果 (1) 症例数

文献学的検索で明らかとなった国内感染 の土壌媒介寄生虫症例は,1990年から2015

年までの 26 年間に回虫が 225 例,鞭虫が 23 例,鉤虫は8例であった(表 1).2011 年以降の5年間でも,回虫が5例,鞭虫が 7 例,鉤虫は 2例と,土壌媒介寄生虫によ る症例は発生が続いた.

表1.回虫症,鞭虫症,鉤虫症の発生状況:

文献検索およびBMLでの検査に基づく症 例数

症例数(文献検索) 症例数(BML)

回虫  鞭虫  鉤虫  回虫  鞭虫  鉤虫 

1990 15 0 2

1991 12 3 1

1992 11 2 1

1993 12 0 0

1994 8 1 0

1995 7 2 0

1996 7 1 0

1997 4 0 0

1998 57 1 0

1999 2 0 0

2000 3 1 0 25 36 25

2001 66 1 0 44 41 50

2002 2 0 1 41 52 65

2003 5 0 0 26 29 17

2004 2 2 1 22 23 17

2005 2 1 0 20 13 18

2006 2 0 0 18 4 0

2007 0 1 0 13 9 0

2008 2 0 0 15 13 9

2009 0 0 0 5 9 2

2010 1 0 0 9 9 3

2011 0 0 0 3 7 1

2012 3 1 0 14 17 3

2013 0 0 0 2 3 0

2014 1 2 2 4 12 0

2015 1 4 0 11 6 5

合計 225 23 8 272 283 215 BML の資料から明らかとなった土壌媒 介寄生虫症は,2000年から2015年までの 16年間に回虫が272例,鞭虫が283例,鉤 虫は215 例であった(表1).2011年以降 の5年間でも,回虫が34例,鞭虫が45例,

鉤虫は9例と,最近も症例の発生が継続し,

しかも文献検索による解析結果と比べて症 例数は多かった(BMLの資料は国内感染だ

(3)

けでなく輸入症例も含む,また日本人だけ でなく外国人の症例も含む,前述). (2) 感染源

文献学的検索で抽出された土壌媒介寄生 虫症例256例中,感染源が生野菜の症例は 11例,無農薬野菜は 14 例,有機野菜は 7 例で,残りは感染源を明らかにすることが できなかった(表 2〜4).内訳を見ると,

生野菜を感染源とする回虫症例は9例,鞭 虫症例は2例であり,無農薬野菜を感染源 とする回虫症例は14例,有機野菜を感染源 とする回虫症例は5例,鞭虫症例および鉤 虫症例は各々1 例であった.無農薬野菜を 感染源とした回虫症例が最も多かった.

表2.感染源から見た回虫症例数

年  数 

野菜  不明  生  無農薬  有機 

1990〜94 58 2 10 2 44

1995〜99 77 4 0 1 72

2000〜04 78 3 2 2 71

2005〜09 6 0 1 0 5

2010〜15 6 0 1 0 5

計  225 9 14 5 197

表3.感染源から見た鞭虫症例数 年 

数 

野菜  不明  生  無農薬  有機 

1990〜94 6 0 0 0 6

1995〜99 4 1 0 1 2

2000〜04 4 0 0 0 4

2005〜09 2 0 0 0 2

2010〜15 7 1 0 0 6

計  23 2 0 1 20

表4.感染源から見た鉤虫症例数

年  数 

野菜  不明  生  無農薬  有機 

1990〜94 4 0 0 0 4

1995〜99 0 0 0 0 0

2000〜04 2 0 0 1 1

2005〜09 0 0 0 0 0

2010〜15 2 0 0 0 2

計  8 0 0 1 7 感染源となった具体的な野菜の種類も特

定を試みたが,具体的な野菜名の記述がな いか,あるいは野菜の種別,例えば根菜類 との記載のみで,汚染野菜の種類の特定は 困難であった.

D. 考察

回虫,鞭虫,鉤虫に感染する症例は,最 近でも少数ながら継続して国内発生してい ることが,文献学的検索により確認された.

感染源となる野菜の虫卵汚染は,現在でも 継続していることが強く示唆された.

BMLの資料からは,更に多数の土壌媒介 寄生虫症例が我が国で診断される事実が示 された. BML の症例は,国内感染事例だ けでなく,輸入症例も含まれる.海外,特 に熱帯地方の発展途上国では,野菜におけ る土壌媒介寄生虫の虫卵汚染は高度で,こ れを喫食して感染する機会も多い.このよ うな状況を背景に,土壌媒介寄生虫に海外 で感染し,輸入症例として受診する患者(日 本人だけでなく外国人も含む)が多いこと に,我が国の医療関係者は留意すべきであ る.

今回の検討で,感染源となった野菜を特 定することも試みたが,具体的な野菜の名 前は特定できなかった.文献学的検索で感 染源を特定することは容易ではなく,患者 と面談して直接に聞き取る工夫ができない か,検討する必要がある.

E. 結論

土壌媒介虫症として回虫症,鞭虫症およ び鉤虫症は,現在も日本国内で発生してお り,感染源となる野菜の虫卵汚染が現在で も継続していると考えられた.感染源に関 しては無農薬野菜あるいは有機野菜とする ものも認めたが,具体的な野菜の種類に関 しては,特定が困難であった.

F. 健康危険情報 なし G. 研究発表

1.論文発表

1. 杉山  広,荒川京子,柴田勝優,川上  泰,

森嶋康之,山﨑  浩,荒木  潤,生野  博,

朝倉  宏,わが国における土壌媒介寄生虫 症,特に回虫症の発生とその汚染源の文献 的および検査機関データに基づく調査,食 品衛生研究,65, 37-41, 2015.

(4)

2.学会発表

1.  Sugiyama  H.  Foodborne  parasitic  helminthiases in Japan: an update. 中国 畜産獣医学会家畜寄生虫学分会第 12 次学 術検討会. Zhengzhou, China. November,  2013 (Symposium). 

2.非動物性食品の寄生虫汚染実態調査 2-1.食品等を対象とした検査機関における 寄生虫検査データの解析

A. 研究目的

回虫症を始めとする土壌媒介寄生虫症が,

現在でも日本国内で発生していることから,

回虫など食品媒介寄生虫の虫卵による非動 物性食品の汚染が継続していると推測され た.そこで,食品等の検査を実施している 検査機関の検査データを入手して解析し,

食品における寄生虫汚染の実態を調べた.

B. 研究方法

公益財団法人目黒寄生虫館では,食品等 から検出された異物の検査依頼および鑑定 依頼を受託してきた.検査の委託者は食品 製造に携わる企業や食品検査機関の他,学 校などの教育機関,地方公共団体,更に一 般市民となっている.この異物の検査・鑑 定依頼の記録(1990年〜2008年の19年間)

を再整理し,非動物性食品における寄生虫 の汚染実態を調べた.

まず依頼検体をその種類から,非動物性 食品,動物性食品,人体・動物および環境 由来の3つに大別した.次に非動物性食品 および動物性食品と判定された検体を,公 益財団法人日本適合性認定協会(JAB)の 食品分類表を活用した朝倉ら(2013)の分 類に従い, 10のカテゴリーに振り分け,

異物の検査・鑑定依頼が多い食品群を抽出 した.更に非動物性食品から検出された異 物を,人体寄生虫とそれ以外に2分し,寄 生虫種別の検体数を求めた.

C.研究結果

目黒寄生虫館は1990年〜2008年の19 年間に,合計2,657検体の検査・鑑定依頼 を受託していた(表5).このうち非動物 食品が175検体(5.9%),また動物性食品

は1,820検体(68.5%),人体・動物およ

び環境由来は662検体(24.9%)であった.

非動物性食品に関する検査・鑑定依頼の件 数は最も少なかったが,この中で最も件数 の多い検体は,野菜・果実等で83検体(非 動物性食品の47.4%,朝倉らの区分2)で あり,次いで海藻の44検体(25.1%,区分 外),更に穀類・いも・豆の32検体(18.3%,

区分1)の順であった.

この非動物性食品のうち,人体への感染 性を持つ寄生虫が検出された検体数は11 件で,非動物性食品の検体のうち6.3%を占 めるに過ぎなかった.また検出された寄生 虫は総てアニサキス(Anisakis属線虫およ びPseudoterranova属線虫)であった.そ の内訳をみると,Anisakis属線虫が検出さ れた検体は,米飯(弁当,区分1),マー ガリン(区分8),粉末調味料(区分10)

で,各1検体ずつであった.一方,

Pseudoterranova属線虫が検出された検体 は,豆腐(2検体)の他,米飯(ふりかけ ご飯),パン(以上が区分1),ほうれん 草,キムチ,白滝(以上が区分2),ワカ メ(炊き込み用製品,区分外)で各1検体 であった.

さらに,食品媒介寄生虫の「虫卵」を目 的に検査依頼された検体として,キムチ14 検体,乾燥ネギ1検体(いずれも区分2)

を認めたが,これらは総て寄生虫卵陰性で あった.

D. 考察

目黒寄生虫館が実施した異物の検査・鑑 定の結果(19年間)を検索したが,日本国 内で発生を続ける回虫症など土壌媒介寄生 虫症の有力な感染源を見出すことはできな かった.非動物性食品へのアニサキスの汚 染例が見られたが,これは食品の処理・調 理の過程における交差汚染が原因と考えら れた.

(5)

東京都健康安全研究センターでは,市場 に流通する野菜の寄生虫汚染を継続的に調 査している.最近公表された直近(2008年 5月〜2013年1月)の検査成績(村田ら,

2013)では,国産野菜54検体,輸入野菜

274検体について検査したと記している.

その結果,国内野菜は総て陰性であったが,

輸入野菜のショウガ(根菜類,中国産)1 検体からブタ回虫の含子虫卵(運動性あり)

が検出された.この成績は,特にJAS法改 正以降,国内発生の土壌媒介寄生虫症の感 染源として,海外の流行地から輸入される 野菜が重要であるとの示唆に一致するもの と考えられた.生姜を長期間生食し続けた 回虫症例も報告されていることから,特に 根菜類には注意が必要と考えられた.ただ し,植物検疫法で土の輸入が禁止されてお り,根菜類は十分洗浄された状態で輸入さ れていることから,たとえ寄生虫卵による 汚染があっても,その程度は極めて軽微な ものと考えられた.

E. 結論

回虫症を始めとする土壌媒介寄生虫症の 感染源は,国内の非動物性食品ではなく,

海外の流行地から輸入される野菜(特に根 菜類)との示唆を得た.

F. 健康危険情報   なし

G. 研究発表

論文発表および学会発表共になし.

2-2.輸入キムチを対象とした寄生虫卵検査 データの解析

A.  研究目的

  2005年10月〜11月に中国と韓国は,輸 入キムチに寄生虫卵の汚染があることに気 付き,その原因が製造国での汚染であると して,相互に非難の応酬を繰り返した(い わゆる「(キムチの)汚染騒動」あるいは「キ ムチ戦争」).我が国は当時,韓国から年間 に 3万トン近いキムチを,さらに中国から もキムチを輸入しており,汚染実態の把握 等で緊急対応が求められた.そこで厚生労 働省は,キムチの検査法を通知し,検疫所 に検査の実施を指示した.その結果,検疫 所での陽性例検出はなかったが,市販の輸 入キムチを検査した研究者から寄生虫卵を 検出したとの報告が続き(その後には回虫 卵も検出され),行政としての検査を継続す ることになった.しかしこの時期以降に実 施された検査の結果は,記録が見当たらな い.そこで2005年以降の輸入キムチに関す る寄生虫卵検査の実施状況および検査結果 について,食品の検査を実施する検査機関 に対して,アンケートによる聞き取り調査 を実施した.

B.  研究方法

  厚生労働省の「食品衛生法上の登録検査 機関における検査実績」に掲載されている 登録検査機関のうち,自主検査件数の多い 上位16機関と,公益法人目黒寄生虫館に依 頼し,2005年以降における各年の輸入キム チの寄生虫卵検査の実施件数と陽性件数に ついて,記入式のアンケート調査を行った.

C.  研究結果

  検査機関16のうち1機関を除く15機関 と目黒寄生虫館から回答が得られた(表6). 2005年度および2006年度の検査数は,計 79件および11件であったが,2007年度か ら2010年度までは,いずれの検査機関にお いても検査は実施されていなかった.また Anisak is Pseudo-

terranova

175 3 8

1 穀類,いも,豆 32 1 4 2 野菜,果実等 83 - 3

3 きのこ 2 - -

8 菓子,糖,油脂 3 1 -

9 嗜好飲料 9 - -

10 調味料 2 1 -

* 海藻 44 - 1

1820 235 229

4 魚介類 1712 226 192

5 肉類 100 8 37

6 卵 8 1 -

7 乳類 0 - -

662 - -

2657 238 237

表2. 目黒寄生虫館の異物の検査・鑑定依頼

その他 計 項目・

区分(大分類) 件数

人体寄生性

非動物性食品

動物性食品

表5.食品等を対象とした寄生虫検査

(6)

2011年度以降2015年度までは,年間に計 1件から 9件の検査が実施されていた.な お虫卵が検出されたのは,2005年度に実施 された1件のみであった.

D. 考察

2005年11月に中国と韓国との間で発生 したキムチの寄生虫卵汚染に関する非難の 応酬を契機として,我が国でも輸入キムチ の寄生虫卵検査が実施された.その結果,

一部のキムチ検体から回虫(人体寄生性)

を始めとする寄生虫卵が検出された.しか しその後の検査に関しては,記録が見当た らない.今回のアンケート調査から,輸入 キムチの検査が実際に実施されなくなった から,記録が見当たらなかったのではない かと考えられた.しかし2011年度以降は,

少数であっても検査が改めて実施されるよ うになったことも分かった.土壌媒介寄生 虫の感染事例は最近でも発生しており,中

には感染源として輸入キムチを疑う報告も 認める.従って輸入キムチを対象とした寄 生虫卵検査は,感染源の特定や予防法の策 定とも関連する.検査を実施して,陰性で あってもその成績を記録することは,今後 も重要な課題になると考えられた.

E. 結論

キムチの寄生虫卵検査は検査機関で実施 されており,2011年度以降は検査が続けて 行われていた.しかし虫卵(回虫卵)は,

2005年度に1機関において1検体から検出 されただけであった。

F. 健康危険情報   なし

G. 研究発表

1.論文発表  なし 2.学会発表  なし.

表6.輸入キムチを対象とした寄生虫卵検査(アンケート調査の結果に基づく成績)

番号 登録検査機関名  2005 2006 2011 2012 2013 2014 2015 1 千葉県薬剤師会検査センター  0 0 0 0 0 0 0 2 日本食品分析センター  0 0 0 0 0 0 0 3 東京顕微鏡院  0 0 1 2 8 0 1 4 日本冷凍食品検査協会  0 0 0 0 0 0 0 5 日本食品衛生協会  11 0 0 0 0 0 0 6 食品環境検査協会  0 0 0 0 0 0 0 7 食肉科学技術研究会  0 0 0 0 0 0 0 8 日本海事検定協会  0 0 0 0 0 0 0 9 日本食品油脂検査協会  0 0 0 0 0 0 0 10 マイコトキシン検査協会  0 0 0 0 1 9 1 11 新潟県環境衛生研究所  0 0 0 0 0 0 0 12 愛知県薬剤師会  0 0 0 0 0 0 0 13 広島県環境保健協会  50(1) 10 0 0 0 0 0 14 北九州生活科学センター  0 0 0 0 0 0 0 15 沖縄県環境科学センター  0 0 0 0 0 0 0 16 目黒寄生虫館  18 1 0 0 0 0 0

計  79(1) 11 1 2 9 9 2

表中の数字は,検体数(回虫卵が陽性の検体数)を示す.なお,2007年度から2010 年度 の間は,いずれの検査機関でも検査の実績がなく,この間の成績は表6から省いた.

(7)

3.非動物性食品からの寄生虫卵の検出方 法の改良・構築と食品検査への応用 3-1.検査方法に関する文献的検討 A. 研究目的

野菜等を汚染する寄生虫卵の検出法につ いては,我が国では1950年代に盛んに検討 されていた.しかし最近では,食品衛生検 査指針(検査指針)に準拠して検査が実施 されることが多く,食品等の検査機関にお いて,試験法を再検討した上で検査を実施 することは,ほとんどないと考えられる.

例外的に,キムチを汚染する寄生虫卵の検 出法が検討されている.この検討が行なわ れた2005年には,輸入キムチの寄生虫卵汚 染の問題が発生した.その際,厚労省から 通知として発出された試験法との関連で,

検出法の検討が積極的に実施され,それら の方法による検出感度が明らかにされたと いう経緯がある.

非動物性食品を汚染する寄生虫卵を迅 速・簡便に検出するには,従来の方法を改 良し,また新たな方法を構築する必要もあ ると考えられた.その前提として,検査方 法に関する国内外の文献を改めて収集し,

内容を検討・整理した.

B. 研究方法

  野菜を汚染する寄生虫卵の検出法につい て,PubMed等で文献の検索と収集を行っ た.得られた文献を取捨選択し,文末に掲 げた報告について,詳しい検討を行なった.

以下の「結果」および「考察」では,これ らの文献を引用しながら記述を進めた.な お引用文献は,右肩に示した.

C. 研究結果

  検査指針[1]および2005年度厚労科研「輸 入食品の寄生虫汚染制御に関する緊急研 究」総括・分担報告書[2]も,引用文献とし て採用した.これらの文献資料を一覧する と,食品汚染の寄生虫卵を検出するプロセ スは,汚染食品からの虫卵の分離回収操作 と,回収虫卵の検出操作の2つから構築さ れていた。まず,野菜・果物や漬物・キム チ等の汚染食品から虫卵を分離回収すると いう操作については,いずれも水あるいは 界面活性剤等を用いてサンプルの表面をブ

ラシなどで洗う[1,3-7],振り洗いする[8,9],超 音波を利用する[11,12]などの手法がとられて いた.しかし中には,単に水で洗うという 記述のみのものもあり[13],洗浄のプロセス についての詳細な記述と更に比較考察をし た成績はなかった.一方,洗浄液について は村田らがその組成について比較検討を行 い[9],界面活性剤と消泡剤の併用が回収率 の向上に寄与することを示した.

  次いで,食品から分離回収した溶液中の 虫卵の検出法については,虫卵を比重液に 浮遊させて顕微鏡下に観察する浮遊法,あ るいは虫卵をより効率的に沈査に集めて顕 微鏡下に観察する沈殿法,のいずれかの手 法が採用されていた.笛木らは,野菜や土 壌の検査では回収沈渣の量が多いため,浮 遊法でより効率よく検査ができるとした[1]. また,村田は野菜・果実,有機肥料,栽培 土壌及び砂場などの寄生虫卵検査法として 浮遊法を採用し[6],更にキムチの検査法で も浮遊法を採用した[9].検査指針でも浮遊 法が採用されている[2].一方で,海外の報 告では,Klapec[10]が浮遊法を採用していた 他は,おおむね沈殿法が用いられていた.

  浮遊法と沈殿法との比較検討は,キムチ および犬の糞便を検体としたものがあり,

キムチの検査法では沈殿法の検出感度が高 いと結論されていた[7].一方で犬の糞便に ついては,沈殿法の検出感度が高いとする 論文[14]と,浮遊法の検出感度が高いとする 論文[15]の両方を認めた.

D. 考察

  野菜等に付着した回虫卵の調査結果は,

我が国において1950年代初頭まで活発に 報告されてきたが,その後はほとんど見受 けられなくなった.過去の報告の中でも,

検査法に関する詳細な記述があるものは少 なく,多くは検査結果を記すに留まってい た.この中で,食品からの寄生虫卵分離法 について,洗浄液の組成を検討した村田ら の成績[9]が注目された.

分離回収された虫卵の検出法については,

検査指針において浮遊法が採用されており,

これは食品関係の検査室での汎用性が考慮 された結果と考えられた.浮遊法をもとに した土壌等の検査法が検討され,またキム

(8)

チの寄生虫卵汚染の検査法に浮遊法が選択 された[9]のも,基本的な操作が検査指針に 準拠したことによる.一方で,キムチの寄 生虫卵汚染問題が生じた際の検討では,沈 殿法の検出感度が高いという興味深い結果 が示された[2].相反する結論が得られてい るが,その理由は説明されておらず,いず れの検出法の感度が高いのか,今後の詳細 な比較検討が必要である.

E. 結論

  野菜等から寄生虫卵を検出する方法につ いて文献調査を行ったところ,食品からの 虫卵の分離回収にはブラシ等による洗浄を 記すものが多く,検出法については沈殿法 を記すものが多かった.しかしながら,い ずれの分離回収法・検出法が,より高い検 出感度に繋がるのかについては,今後の検 討による比較と確定が必要と考えられた.

F. 健康危険情報   なし

G. 研究発表

論文発表および学会発表共になし.

参照文献

1.日本食品衛生協会 (2004): 野菜・果実に

付着した寄生虫卵の検出法. P.538-539. 厚 生労働省監修, 食品衛生検査指針微生物編, 日本食品衛生協会, 東京.

2. 遠藤卓郎ら (2006): 輸入食品の寄生虫 汚染制御に関する緊急研究. P.71-88. 分担 研究報告書III. 遠藤卓郎編,平成17年度厚 生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特 別研究事業)総括・分担研究報告書,国立感 染症研究所, 東京.

3.笛木賢司 (1950): 野菜, 土壌の中に存す る蛔虫卵の浮遊検査法について. 医学と生 物学, 16, 58-60.

4.清水重矢 (1952): 武蔵野市に販売される

苺に付着する寄生蠕虫卵について. 医学と 生物学, 24, 200-202.

5.Rude, R.A., Jackson, G.J., Bier, J.W., Sawyer, T.K. and Risty, N.G. (1984): J.

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6.村田以和夫 (1997): 野菜・果実, 有機肥 料, 栽培土壌及び砂場からの寄生虫卵検査

手法. p.171-177. 藤田紘一郎・村田以和夫 編, 食品寄生虫ハンドブック, 第1版, サイ エンスフォーラム, 東京.

7.杉山 広・川中正憲 (2013): 回虫.

p.348-352. 渡邊治雄ほか編, 食中毒予防必 携, 第3版, 日本食品衛生協会, 東京.

8.今園義盛 (1953): 蛔虫感染経路に関する

研究. 最新医学, 8, 718-729.

9.村田理恵, 鈴木淳, 柳川義勢, 村田以和夫

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10.Jeffry, W.B., George, J.J., Ann M.A. and Richard, A. R. (2001): BAM: Parasitic Animals in Foods, Bacteriological Analytical Manual, Chapter 19, Parasitic Animals in Foods. US food and drug administration, Silver Spring.

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Isolation and enumeration of Giardia cysts, cryptosporidium oocysts, and Ascaris eggs from fruits and vegetables. Food Prot., 63, 775-778.

12.Kłapeć, T. and Borecka, A. (2012):

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(2010): Comparison of three concentration methods for the recovery of canine

intestinal parasites from stool samples. Exp.

Parasitol., 126, 214-216.

3-2.新たな検査方法の確立:ストマッカー 法および超音波法の検討

A. 研究目的 

文献等の検索結果から,現在,我が国で 流通する非動物性食品の寄生虫卵汚染は,

その程度が相当に低いものと考えられた.

従って,汚染実態の調査を行うには,多数

(9)

の検体を効率良く処理できる検査法の確立 が求められた.検査指針を見ると,食品か ら虫卵を分離するに当たっては,検体の表 面を歯ブラシなどで丁寧に洗うと記述され ており,このような作業が検査時間,ある いは検査効率を左右する要因として,作業 効率に影響を及ぼしているとも考えられた. 

食品細菌の検査分野では,ストマッカー が機材として広く利用され,検体に付着す る菌体の分離に威力を発揮している.しか し寄生虫検査の分野では,ストマッカーを 利用して野菜の表面に付着する虫卵を検出 した試みは見当たらない.また,器具等の 洗浄に利用される超音波洗浄が,検体に付 着する虫卵の分離に威力を発揮することは 知られているが,他の分離回収操作法との 性能比較は十分ではない.そこで,ストマ ッカー法と超音波法の虫卵検出能力を明ら かにし,従来法と比較するために,以下の 検討を行った. 

 

B. 研究方法 

本試験は,ストマッカーや超音波洗浄装 置の使用に精通している日本食品衛生協会 食品衛生研究所に委託した(試験検査成績 書は各年度の報告書に添付したので参照さ れたい).検査の対象にはブタ回虫を用い ることとし,屠畜場に依頼して自然感染ブ タから検出されたブタ回虫を入手した.虫 卵を付着させる検体として白菜を選び,試 験のつど雌成虫の膣と子宮(遠位端役 1cm)

から,卵殻表面にタンパク膜が完成した虫 卵を分離して,模擬検体(虫卵添加検体)

を調製した. 

予め、試験条件設定のための予備試験を 実施し,ストマッカー法ではストマッカー 袋による検査可能な検体重量と洗浄液量に

ついて検討し,また超音波法では超音波処 理の時間および洗浄容器の洗浄回数等を検 討した。さらに虫卵の検出操作法である浮 遊法と沈殿法についても比較検討を行った。 

本試験における,模擬検体の接種回虫卵 数は 1,000 個および 200 個の 2 条件とし,

いずれの試験法においても各々5 回の実験 を繰り返して回収虫卵数を求めた.得られ た値は F 検定で分散を確認し,t 検定で有 意差を調べた. 

 

C.研究結果 

予備試験の結果,1 回の試験に用いる検 体重量は,ストマッカー法および超音波法 ともに 50g,洗浄液量は 250ml とし,虫卵 の検出操作は沈殿法を用いることとした.

また超音波法では,処理時間を 5 分,洗浄 容器の洗浄回数は 2 回とした. 

このような条件で,本試験を実施したと ころ,以下の結果が得られた. 

 

(1) 接種回虫卵数を 1,000 個とした場合  回収虫卵数は,超音波法では 1129.6 ±  104.7(平均±標準偏差),従来法では 861.2 

± 264.4,ストマッカー法では 1485.6 ±  398.6 であった.ストマッカー法による回 収虫卵数の平均値が,従来法のそれより有 意に高い(有意水準 5%)との結果を得た.

その他のデータ間には,有意差を認めなか った(表 7). 

 

(2) 接種回虫卵数を 200 個とした場合  回収虫卵数は,超音波法では 133.0 ±  19.4,従来法では 133.4 ± 34.6,ストマ ッカー法では 154.6 ± 48.2 であった.各 データ間には,有意差を認めなかった(表 8). 

 

表 7.超音波法等による虫卵回収数(接種虫卵数 1000 個/50g) 

超音波法 従来法

超音波法 1031 1032 1263 1210 1112 1129.6 ± 104.7 - -

従来法 854 469 1074 777 1132 861.2 ± 264.4 0.07 -

ストマッカー法 1505 1813 1670 1640 800 1485.6 ± 398.6 0.11 0.02*

t検定:P(T<=t) 両側

試験法 回収虫卵数

(個) 平均±SD

   

   

(10)

表 8.超音波等による虫卵回収数(接種虫卵数 200 個/50g) 

超音波法 従来法

超音波法 160 110 131 143 121 133.0 ± 19.4 - -

従来法 122 151 185 107 102 133.4 ± 34.6 0.983 -

ストマッカー法 71 187 181 156 178 154.6 ± 48.2 0.380 0.447 t検定:P(T<=t) 両側

試験法 回収虫卵数 平均±SD

(個)

   

D. 考察 

検体からの寄生虫卵検出については,食 検査指針にも記述があり,野菜表面をブラ シでこする従来法が定着している.しかし 多量の検体を効率的に処理する方法の開発 は必要であり,ストマッカーあるいは超音 波洗浄装置を使用する方法を構築した.そ して本試験を実施し,従来法,ストマッカ ー法および超音波法による試験結果を相互 に比較した.その結果,検体 50g にブタ回 虫卵を 1,000 個接種した場合に,ストマッ カー法による回収虫卵数が従来法より有意 に高い(有意水準 5%)との結果を得た.そ れ以外では,回収虫卵数に関して各試験法 との間に,有意な差を認めなかった. 

各試験法の優劣を総合的に判断する方法 として,検査の過程における作業をいくつ か選別し,各作業に関する優劣に応じて各

試験法にスコアを与え,スコアの合計を比 較するという手法がある.このような定量 分析の手法を,今回の本試験にも適用した.

すなわち,回収虫卵数のほかに,1 回の検 査に使用可能な検体量(検体量),各試験 法に必要な処理時間(処理時間),虫卵計 数のための顕微鏡観察時間(観察時間)の 計 4 項目を選定し,各項目についてスコア を与えて,各試験法のスコア合計を求めた

(表 9).その結果,スコアの合計は超音 波法,ストマッカー法,従来法の順となっ た.すなわち,超音波法は回収虫卵数が従 来法・ストマッカー法と有意差はないが,

作業時間を短縮して作業者の負担を大きく 軽減する方法であることが分かった.そこ で非動物性食品の寄生虫卵汚染の実態調査 には,本法を活用することにした(次項を 参照).  

   

 

各項目について以下の基準により 1〜3 までのスコ      アを与え,その合計を算出した. 

 

回収虫卵数:数値の最も高いものを 3,最も低いも  のを 1,中間のものを 2 とした. 

検体量:1 回の検討で処理可能な検体量の最も多い  ものを 3 とし,最も少ないものを 1 とした. 

処理時間:顕微鏡観察前までの作業時間が最も短い  ものを 3 とし,以下同上. 

観察時間:顕微鏡観察の時間が最も短いものを 3 と  し,以下同上.なお同位のものには(例:検体重量),  同じスコアを与えた. 

   

E. 結論 

寄生虫卵を効率的に検出する方法として,

ストマッカーあるいは超音波を用いた検査 法の試験条件を検討し,その検出感度につ いて従来法と比較した.その結果、回収虫 卵数についてはストマッカー法が勝ってい たが、観察時間も含めた総合的な検査法の 効率化という観点からは、超音波法がすぐ れているという結果が得られた.超音波法

は試験法として推奨されるべきものと考え られた. 

 

F. 健康危険情報    なし 

 

G. 研究発表  1.論文発表 

1. 堀内朗子,荒川京子,秋庭達也,吉田建 検査法 

回 収 虫 卵 数 

検 体 量 

処 理 時 間 

観 察 時 間 

ス コ ア  合 計  従来法  1 3 1 2 7 ストマッカー法  3 1 3 1 8 超音波法  2 3 2 3 10

表 9.  超音波法と従来法,ストマッカー法のスコアによる定量分析 

(11)

介,平田史子,松本奈保子,丸山弓美,奥 津敬右,朝倉  宏,杉山  広,ストマッカ ーを利用した野菜等の回虫卵検査法の検討,

食品衛生研究,65, 45-50, 2015.

 

2.学会発表  なし. 

 

3-3.輸入キムチの土壌媒介寄生虫卵検査 A.  研究目的

輸入キムチの土壌媒介寄生虫卵検査は,

最近ではほとんど実施されておらず,汚染 実態は明らかでない.一方,土壌媒介寄生 虫の感染事例はいまだに発生があり,感染 源として輸入キムチを疑う症例も認める.

そこで輸入キムチを購入して寄生虫卵の検 出を試みた.検査法には,我々が構築した 超音波法を適用した.

B.  研究方法 (1) 被験物質

  平成28年度1月に東京の食料品店で購入 した中国産キムチ3点および韓国産キムチ 2点を被験物質とした.各キムチは約100 g を検査材料とし,洗浄容器(1,000mL容の 広口ねじ口瓶)に入れ,500 mL の洗浄液

(Antifoam A 150μL添加0.5% Tween80・

クエン酸緩衝液)を加え,約10分間静置し たのち,以下の操作を行った.

(2) 検査法

  キムチからの虫卵の分離回収操作は,5 分間の超音波洗浄によった.すなわち検体 入りの洗浄容器を超音波洗浄水槽(ダルト ン)に入れ,発振器(東京超音波技研製,

型番UP-305,出力700W,周波数27kHz)

により超音波を発生させて洗浄した.そし て洗浄液の沈渣から,浮遊法で虫卵の検出 操作を行った.

C.  研究結果

  いずれの輸入キムチ検体からも,人体寄 生性の寄生虫卵は検出されなかった.しか し1検体(韓国産)からダニの卵が検出さ れた.

D. 考察

食品衛生法上の登録検査機関おいて,こ の5年間に,少数ながらキムチの寄生虫卵

検査が実施されていた.しかし虫卵の検出 例を認めなかったことから,中国産および 韓国産の輸入キムチを購入して寄生虫卵検 査を実施し,汚染状況を調べた.その結果,

回虫等の人体寄生虫の虫卵は検出されなか ったが,ダニの卵が検出された.今回実施 した超音波法によるキムチの検査法は,人 体寄生性の寄生虫卵検出にも適用可能と考 えられた.

キムチには様々な原材料が添加されてい るため,脂質や微細な夾雑物が多い.2005 年に厚労省からキムチの検査法が通知され たが,その検査法では脂質や夾雑物の除去 が十分に行うことができないと指摘されて きた.我々が構築した超音波法(浮遊法)

でも,キムチからの虫卵検出は,生野菜の 検査に比較して,多くの作業時間を必要と した.検査を効率的に進めるために,寄生 虫卵は残したまま,キムチの残渣だけを効 率的に除去する方法について,新たに開発 する必要があることが分かった.

E. 結論

  中国産および韓国産の輸入キムチ計 5検 体について,超音波法(浮遊法)による寄 生虫卵検査を行った.人体寄生性の虫卵は 検出されなかったが,1 検体からダニの卵 が検出された.

F. 健康危険情報   なし

G. 研究発表

1.論文発表  なし 2.学会発表  なし

3-4.北海道産行者ニンニクのエキノコック ス虫卵検査

A.  研究目的

寄生虫エキノコックスによる人体症例は,

感染症法で第4類に規定され,全例の報告 が義務付けられている.本虫は成虫がキツ ネやイヌなどの腸管に寄生し,虫卵が糞便 に混じって体外に排泄される.人はこの虫 卵を経口摂取することで感染する.そして 人体内で虫卵から幼虫が孵化し,この幼虫

(これを包虫と呼ぶ)が血流に乗って全身 の各臓器,特に肝,肺,腎,脳などに定着,

そこで幼虫がさらに発育して(しかし成虫

(12)

にはならず),寄生部位に応じた多彩な症状 が発現する.

人体感染の主たる原因となるエキノコッ クスには2種類があり,病名も原因となる 寄生虫種により区別され,それぞれ単包性 エキノコックス症 (単包条虫による),あ るいは多包性エキノコックス症(多包条虫 による)と呼ばれる.我が国では多包性エ キノコックス症が,この30年近くの間に北 海道東部から北海道全域に流行域を拡大し,

地域住民に対する健康被害の原因として,

大きな脅威となっている.

エキノコックスの人への感染経路の一つ として,野草の生食が疑われてきた.北海 道では陽性キツネの糞便にエキノコックス の虫卵を多数認めることから,その糞便で 汚染された野草にはエキノコックスの虫卵 が多数付着して,人への感染源になる可能 性が高いと考えられる.野草(あるいは地 物の野菜)の中でも,特に行者ニンニクは 非加熱で,あるいは加熱不充分で喫食され る場合も多いと聞く.そこで北海道東部で 入手した行者ニンニクを対象に寄生虫卵検 査を実施し,エキノコックス虫卵の検出を 試みることにした.検査法には超音波法を 適用した.

B.  研究方法

  被験物質である行者ニンニクは,帯広市 およびその近郊の青果販売店で購入した.

購入は2月末から5月上旬までの間に6回 に分け,合計41検体の行者ニンニクを入手 した.なお行者ニンニクは購入後,試験開 始まで7日間以上,−80 ℃で冷凍した.こ のような条件での冷凍により,エキノコッ クスの虫卵は感染性を完全に失うことが知 られている.このような冷凍方法を適用し て,検査従事者のエキノコックス感染の危 険性を排除した.

検体は原則として全量を検査に用いたが,

変敗を認めた検体はその部分を廃棄し,健 常な部分のみを検体とした.検査にあたっ て検体を洗浄容器(1,000mL容の広口ねじ 口 瓶 ) に 入 れ , そ の 5 倍 量 の 洗 浄 液

(Antifoam A 150μL添加0.5% Tween80・

クエン酸緩衝液:自家調整)を加えて,約 10分間静置したのち,我々が構築した超音 波法で虫卵の分離回収を試みた.虫卵の検 出操作には浮遊法を適用した.

C.  研究結果

被験物質である行者ニンニク 41 検体に ついて寄生虫卵検査を実施したが,いずれ の検体も陰性で,エキノコックスの虫卵は 全く検出されなかった.

D. 考察

北海道東部で栽培された(あるいは野生 の)行者ニンニクについてエキノコックス の虫卵の検出を試みた.虫卵の分離回収操 作には我々が構築した超音波法を適用した.

しかしいずれの行者ニンニク検体からもエ キノコックスの虫卵は検出されなかった.

今回の調査では,寄生虫卵を検出するこ とができなかったが,超音波法を用いるこ とで,複数の検体を短時間で洗浄処理する ことができた.被験物質の破損も超音波法 では認められず,特に浮遊法と組み合わせ た場合に,顕微鏡下での虫卵観察が容易と なった.このような利点は,野菜の寄生虫 卵汚染検査を実施するに当たり,大きな利 点になると考えられた.

E. 結論

  本研究班において野菜や漬物等に付着し た寄生虫卵を効率的に検出することが証明 された超音波法により,北海道で販売され ている行者ニンニク 41 検体について寄生 虫卵検査を行った.しかしいずれの検体も 陰性で,エキノコックスの虫卵は検出され なかった.

F. 健康危険情報  なし G. 研究発表

1.論文発表  なし 2.学会発表  なし

参照

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