オリエンタルランド(東証1部 4661)
2020年度以降の収益拡大が描けるようになるまでは、ボックス圏での株価推移を予想
2017/3期決算の着地は、第4Qの営業利益が想定以上で
ポジティブな印象。一方で、2018/3期の会社計画が減
収減益の予算を組んできたことまでは想定通りだが、
入園者数の前提が5年ぶりの3,000万人割れとなる2,950
万人というのがネガティブな印象。高めの入園者数の
目標を設定するとコストも膨らむことから、例年通り
固めの予算を組んだとみているが、マスコミ報道など
でマーケットにネガティブな影響を与えることへの配
慮がもう少し欲しかった。それをカバーしたのが、自
己株式取得(上限350万株・200億円)の発表である。
ROE低下への配慮が窺われ、マーケットには好感さ
れよう。
決算発表の同日(4月27日)、「2020中期経営計画」も
発表した。2020年度に過去最高の入園者数及び営業
キャッシュ・フローを目指すことを数値目標として掲
げた。控え目な数値目標で、今後の投資に対して積極
的な姿勢を示したものの、新たな具体的な大規模開発
や新規事業への投資などの発表もなく、堅実で地味な
印象を受けた。株価への影響は限定的とみている。
2017/3期決算発表、2020中期経営計画の発表などが
あったが、当社株に対するSBI証券の見方に変更は
ない。2020年度以降の具体的な投資計画が発表され、
2020年度以降の収益拡大が描けるようになるまでは、
ボックス圏(6,000円~8,000円)での株価推移を予想
している。目標株価は7,000円(根拠については2017年3
月10日付けレポートを参照)を据え置き、レーティング
を「中立」を継続する。
SBI証券 投資調査部シニアアナリスト
田中俊
2017年5月8日
(継続)
投資評価
中立
目標株価
7,000円
目標株価との乖離率
7.2%
株価(5/2)
6,529円
時価総額
21,633億円
発行済株式数
331,348千株
外国人持株比率
10.6%
配当(18/3期予想)
40.0円
PER(18/3期予想)
29.2倍
PBR(18/3期予想)
3.0倍
ROE(18/3期予想)
10.6%
(注)発行済株式数は自己株除く、予想はSBI証券
連結業績(日本会計基準)
決算期
売上高
前期比
営業利益
前期比
経常利益
前期比
当期純利益
前期比
EPS
DPS
ROE
(百万円) (%) (百万円) (%) (百万円) (%) (百万円) (%) (円) (円) (%)2015/3
実績
466,291
-1.5
110,605
-3.4
110,486
-1.9
72,063
2.1
215.7
35.0
13.6
2016/3
実績
465,353
-0.2
107,357
-2.9
109,214
-1.2
73,928
2.6
221.3
35.0
12.4
2017/3
会社予
479,900
3.1
109,110
1.6
110,510
1.2
76,870
4.0
231.8
35.0
SBI予
476,000
2.3
108,000
0.6
110,000
0.7
76,500
3.5
230.9
35.0
11.9
実績
477,748
2.7
113,152
5.4
114,611
4.9
82,374
11.4
248.4
37.5
12.7
2018/3
会社予
469,300
-1.8
100,170
-11.5
101,610
-11.3
70,810
-14.0
213.7
40.0
SBI旧予
472,000
-1.2
103,000
-9.0
105,000
-8.4
73,000
-11.4
220.3
35.0
10.5
SBI新予
474,000
-0.8
105,000
-7.2
106,500
-7.1
74,000
-10.2
223.3
40.0
10.6
2019/3 SBI旧予
506,000
7.2
120,000
16.5
122,000
16.2
84,500
15.8
255.0
40.0
11.1
SBI新予
507,000
7.0
120,000
14.3
121,500
14.1
84,500
14.2
255.0
45.0
11.0
2020/3
SBI予
493,000
-2.8
112,000
-6.7
113,500
-6.6
79,000
-6.5
238.4
45.0
9.4
注:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益、EPSは自己株式を除くベース、2015年4月1日付で1株→4株の株式分割を実施、EPSおよびDPSは
(1)決算概況
2017/3期は、増収増益の堅調な決算となった。第4Q(2017年1-3月期)の営業
利益が過去最高を更新、利益ベースではSBI証券予想および会社予想を上回
る着地となった。SBI証券予想との差異は、東京ディズニーシー15周年で増
加すると予想していた諸経費が前年並みに抑制されていた分が上ブレ要因と
なった。経費が全般的に抑制(効率的に使用)されていることに加えて、第4Q
(1-3月期)も閑散期ではなくなり、メンテナンスなどの費用が、以前ほど第4
Qに集中せず、分散化されてきているためとみている。
2017/3期の入園者数は3,000万人となり、期初会社計画の3,040万人には届かな
かった。4期連続で3,000万人以上という高水準の集客を維持したものの、東京
ディズニーシー15周年の年にしてはやや物足りない集客だったとの見方もあろ
う。天候不順の影響に加えて、熊本地震の発生により15周年のスタートで予定
していたプロモーションができなかったこと(宿泊圏からの集客が伸び悩ん
だ)、2016年10月からハロウィーン、クリスマスのピークに日付指定券限定入
園日を導入したが、認知が進まず、集客にマイナスの影響が出たことなどが響
いたとみている。過去とは異なり、パークのキャパシティの限界に近いため、
何処かで入園者数が減少した分を、他で取り返すことが難しくなっている面は
否めない。
ゲスト1人当たり売上高は、チケット価格の改定(2016年4月1日実施)、東京
ディズニーシー15周年関連商品の好調により、過去最高(2017/3期実績11,594
円)だった。
ホテル事業は、東京ディズニーセレブレーションホテルの開業費用の発生など
を吸収して増収増益となる好調な決算となった。特に、東京ディズニーシー・
ホテルミラコスタの好調が目立った。客室単価が6万円台後半まで上昇、客室稼
働率はIR資料では90%台後半との表記となっているが、それも100%に近い稼
働のようだ。
2017/3期は、第4Q(2017
年1-3月期)の営業利益が
過 去 最 高 を 更 新 、 利 益
ベースではSBI証券予
想および会社予想を上回
る着地
東京ディズニーシー・ホ
テルミラコスタの好調が
目立った
海外からの来園者比率の
増加が顕著
図表1
地域別来園者比率の推移
出所:対象会社の公表資料を基にSBI証券投資調査部作成
(2)業績見通し
2018/3期は、減収減益を予想している。入園者数は会社予想2,950万人に対して、
SBI証券では3,010万人と3,000万人台をキープするとみている。東京ディズ
ニーシー15周年の反動減は予想されるものの、2017/3期が熊本地震やチケット
施策などで十分に取り切れていない面があること、東京ディズニーシーに新ア
トラクション「ニモ&フレンズ・シーライダー」の導入(2017.5.12オープン)
を予定している他、新規のスペシャルイベントなども多数用意しており、高水
準の入園者数をキープするとみていることによる。なお、ゲスト1人当たり売上
高については、東京ディズニーシー15周年の反動による商品販売収入の減少を
見込んでいる。
ホテル事業については、東京ディズニーセレブレーションホテルの開業費用が
なくなり、フル稼働することにより、増収増益を予想している。ディズニーブ
ランド3ホテルについては、客室稼働率・客室単価はほぼ横這いでの推移を見込
んでいる。
2019/3期には、東京ディズニーリゾート35周年を迎えることから、SBI証券
では過去最高の入園者数となる3,150万人を予想。売上高・営業利益・経常利
益・当期純利益とも過去最高益を更新するとみている。イッツ・ア・スモール
ワールドのリニューアル、新規のデイパレードを予定しており、集客に大きく
貢献しよう。
2020/3期は、東京ディズニーリゾート35周年の反動により、減収減益の決算を
予想している。東京ディズニーシーに新規アトラクション「ソリアン(仮
称)」の導入を予定しているが、2020年春に予定している東京ディズニーラン
ドの大規模投資(「美女と野獣エリア(仮称)」、ライブエンターテイメント
シアター、「ベイマックス」をテーマとした新アトラクションなど)に向けて
の開業前費用などが膨らむことを想定している。
決算発表の同日(4月27日)、「2020中期経営計画」を発表。2020年度に過去最
高の入園者数(2014年度31,377千人)及び営業キャッシュフロー(2016年度1,206
億円)を目指すことを数値目標として掲げた。控え目な数値目標で、今後の投資
に対して積極的な姿勢を示したものの、新たな具体的な大規模開発や新規事業
への投資などの発表はなかった。
過去最高の入園者数は、東京ディズニーリゾート35周年の2018年度にも更新さ
れる可能性が高いとみており、それを大幅に上回る入園者数となろう。「美女
と野獣エリア(仮称)」など大規模開発のオープンによる集客効果に加えて、
東京五輪開催で訪日外国人観光客の増加が見込めることもあり、2020年度は
3,400万人を超える入園者数も可能と考えている。もう一つの数値目標を営業利
益ではなく、営業キャッシュフローとしたのは、大規模開発による減価償却負
担の増加に予防線を張ったとみている。
2018/3期の入園者数の会
社予想は2,950万人と保守
的
「2020中期経営計画」の
数値目標は、 2020年度に
過去最高の入園者数及び
営業キャッシュフロー
図表2
損益計算書
(百万円)
年度 2014/3 2015/3 2016/3 2017/3 2018/3 2019/3 2020/3 2018/3
SBI予想 SBI予想 SBI予想 会社予想 売上高 473,572 466,291 465,353 477,748 474,000 507,000 493,000 469,300 テーマパーク事業 390,912 387,622 384,602 394,215 391,105 420,000 406,650 386,040 アトラクション・ショー収入 165,695 169,590 175,559 182,355 182,780 193,650 191,100 180,070 商品販売収入 148,265 142,361 134,586 138,469 135,400 147,800 139,700 133,800 飲食販売収入 71,835 70,786 69,140 67,819 67,825 72,550 69,850 66,210 その他の収入 5,115 4,883 5,316 5,572 5,100 6,000 6,000 5,960 入園者数(千人) 31,298 31,377 30,191 30,004 30,100 31,500 31,000 29,500 ゲスト一人当たり売上高(円) 11,076 10,955 11,257 11,594 11,500 11,800 11,550 11,530 チケット収入(円) 4,598 4,660 5,007 5,264 5,250 5,300 5,300 5,260 商品販売収入(円) 4,185 4,043 3,964 4,074 4,000 4,200 4,000 4,030 飲食販売収入(円) 2,292 2,252 2,286 2,256 2,250 2,300 2,250 2,240 ホテル事業 64,933 61,066 63,173 66,144 66,195 69,400 68,950 66,340 東京ディズニーランドホテル 17,309 16,674 17,933 17,871 17,775 18,903 18,703 17,840 東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ 17,373 16,080 16,540 18,890 18,412 19,059 19,059 18,490 ディズニーアンバサダーホテル 15,278 14,466 14,433 13,863 14,048 15,038 14,738 13,860 その他 14,971 13,845 14,266 15,519 15,960 16,400 16,450 16,150 その他の事業 17,727 17,603 17,576 17,388 16,700 17,600 17,400 16,920 イクスピアリ事業 8,519 8,683 8,788 8,782 8,400 8,700 8,600 8,470 モノレール事業 4,262 4,147 4,351 4,481 4,300 4,600 4,600 4,480 その他 4,944 4,772 4,437 4,124 4,000 4,300 4,200 3,970 売上原価 301,068 295,924 294,217 299,543 303,000 315,200 309,000 303,390 人件費 70,975 70,609 70,036 73,337 76,400 80,700 78,000 諸経費 198,732 195,935 193,717 194,156 195,000 202,000 198,000 減価償却費 31,359 29,379 30,463 32,049 31,600 32,500 33,000 売上総利益 172,504 170,367 171,135 178,204 171,000 191,800 184,000 165,910 販売費及び一般管理費 58,012 59,762 63,778 65,052 66,000 71,800 72,000 65,740 人件費 22,712 23,462 23,422 23,843 25,000 28,000 28,000 諸経費 29,726 31,042 34,837 34,978 35,500 38,000 38,000 減価償却費 5,574 5,257 5,518 6,230 5,500 5,800 6,000 営業利益 114,491 110,605 107,357 113,152 105,000 120,000 112,000 100,170 テーマパーク事業 97,154 95,665 91,692 95,880 87,000 101,000 93,000 82,600 ホテル事業 15,897 13,138 13,800 14,647 16,000 17,000 17,000 15,690 その他の事業 1,261 1,602 1,604 2,400 2,000 2,000 2,000 1,760 消去又は全社 178 198 259 223 - - - 120 営業外収益 受取利息 359 407 575 339 350 350 350 受取配当金 515 503 629 652 650 650 650 持分法による投資利益 112 132 147 150 150 150 150 受取保険金・保険配当金 489 571 475 524 500 500 500 固定資産受贈益 - - 399 その他 1,267 923 758 814 850 850 850 営業外収益合計 2,744 2,539 2,986 2,480 2,500 2,500 2,500 2,360 営業外費用 支払利息 1,161 486 217 210 200 200 200 社債償還損 2,761 - -固定資産除却損 28 1,071 - 107 100 100 100 支払手数料 262 687 532 537 500 500 500 その他 350 413 379 164 200 200 200 営業外費用合計 4,563 2,658 1,129 1,021 1,000 1,000 1,000 920 経常利益 112,671 110,486 109,214 114,611 106,500 121,500 113,500 101,610 特別利益 - - 130 - - - - -特別損失 - - 210 - - - - -税金等調整前当期純利益 112,671 110,486 109,135 114,611 106,500 121,500 113,500 101,610 法人税等合計 42,099 38,442 35,206 32,237 32,500 37,000 34,500 30,800 (税率) 37.4% 34.8% 32.3% 28.1% 30.5% 30.5% 30.4% 30.3% 当期純利益 70,571 72,063 73,928 82,374 74,000 84,500 79,000 70,810 非支配株主に帰属する当期純利益 - - - - -親会社株主に帰属する当期純利益 70,571 72,063 73,928 82,374 74,000 84,500 79,000 70,810 EPS 211.33 215.72 221.26 248.39 223.33 255.02 238.42 213.70 DPS 30.00 35.00 35.00 37.50 40.00 45.00 45.00 40.00 配当性向 14.2% 16.2% 15.8% 15.1% 17.9% 17.6% 18.9% 18.7% EBITDA 150,766 145,609 145,334 153,101 143,800 160,000 152,700 138,710 設備投資額 20,366 37,034 39,706 50,993 69,000 50,000 50,000 69,000 減価償却費 36,934 34,637 35,982 38,280 37,100 38,300 39,000 37,100 増減率(yoy %) 売上高 19.7% -1.5% -0.2% 2.7% -0.8% 7.0% -2.8% -1.8% テーマパーク事業 18.5% -0.8% -0.8% 2.5% -0.8% 7.4% -3.2% -2.1% ホテル事業 32.7% -6.0% 3.5% 4.7% 0.1% 4.8% -0.6% 0.3% その他事業 5.6% -0.7% -0.2% -1.1% -4.0% 5.4% -1.1% -2.7% 営業利益 40.5% -3.4% -2.9% 5.4% -7.2% 14.3% -6.7% -11.5% テーマパーク事業 41.9% -1.5% -4.2% 4.6% -9.3% 16.1% -7.9% -13.9% ホテル事業 32.2% -17.4% 5.0% 6.1% 9.2% 6.3% 0.0% 7.1% その他事業 108.1% 27.0% 0.1% 49.6% -16.7% 0.0% 0.0% -26.7% 経常利益 39.3% -1.9% -1.2% 4.9% -7.1% 14.1% -6.6% -11.3% 当期純利益 37.1% 2.1% 2.6% 11.4% -10.2% 14.2% -6.5% -14.0%