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平成 29 年度の東北地区スモン検診結果

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Academic year: 2021

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(1)

A. 研究目的

平成 29 年度の東北地区スモン患者の身体状況、 医 療、 日常生活、 介護・福祉などについて現状を調査し、

その現状と動向を把握する。

B. 研究方法

東北 6 県の班員を中心とした検診担当者が各県のス モン患者に連絡を取り、 平成 29 年 8〜11 月に 「スモ ン現状調査個人票」 を用いて、 会場検診または訪問検 診の形式で実施した。 地区リーダーへ各班員から送付 された同調査票とスモン医療システム委員会から送付 された集計資料をもとに、 昨年度のデータ、 および過 去 10 年間のデータ1〜9)と比較しながら東北地区スモン 患者の現状を検討した。

C. 研究結果

1 . 受診者と検診形態

平成 29 年度の東北地区のスモン検診受診者は合

計 57 (男 13、 女 44;青森 6、 岩手 13、 宮城 14、 秋田 4、 山形 15、 福島 5) 人であり、 年齢は 55〜97 (平均 79.4) 歳 で あ っ た 。 検 診 形 態 は 来 所 検 診 が 39 人 、 訪 問 検 診 が 18 (自 宅 7、 病 院 ・ 施 設 11) 人 で あ り 、 28 年度より来所受診者が 4 人増加した。 検診率は 61.3%

(=受診者 57 人/29 年 4 月の健康管理手当等支払対象 者 93 人)、 訪問検診率は 31.6% (訪問検診者数/総受 診者数) であった。

28 年 度 よ り 支 払 対 象 者 は 6 人 減 少 し た が 、 来 所 受 診者の 4 人増加により検診受診者が 4 人増加し、 検診 率は過去最大となった (図 1)。 支払対象者は 10 年間 で 6 割にまで漸減したものの、 受診者数は微減に留ま り、 特に 24 年度以降はほぼ同数であった。 年齢にお いては高齢化が進んでいる中で、 26 年度以降の年齢 層別比率と平均年齢はともにほぼ横這いであった。

2 . 身体状況と医療

スモン主要症状の重症比率は、 視力 「全盲」 〜 「指

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平成 29 年度の東北地区スモン検診結果

千田 圭二 (国立病院機構岩手病院 神経内科) 高田 博仁 (国立病院機構青森病院 神経内科) 大井 清文 (いわてリハビリテーションセンター) 青木 正志 (東北大学 神経内科)

豊島 至 (国立病院機構あきた病院 神経内科) 鈴木 義広 (日本海総合病院 神経内科)

杉浦 嘉泰 (福島県立医大 神経内科)

研究要旨

平成 29 年度の東北地区スモン患者の現状を調査した。 検診受診者は 57 (男 13、 女 44;来 所 39、 訪問 18) 人であり、 平均年齢は 79.4 歳であった。 28 年度よりも来所受診者が 4 人増 加し、 その結果、 検診率 (61.3%) は過去最大となった。 平成 20 年以降 10 年間の検診結果 の動向をみると、 平成 26 年以降では受診者数、 平均年齢、 転倒者率、 一人暮らしの比率な どに大きな変化はみられず、 それまで徐々に進行してきた障害度や介護状況の重症化が 3〜4 年で鈍化してきた。 また、 将来の介護に不安を抱く割合は減少し、 施設への期待/依存度が 増大しつつある傾向が示唆された。

(2)

数弁」 が 10.7%、 歩行 「不能」 〜 「要介助」 が 17.5%、

異常知覚 「高度」 が 14.5%、 胃腸症状 「ひどく悩ん でいる」 が 10.5%であった。 身体的併発症は全員が 有 し て お り 、 10% 以 上 に 影 響 の あ る 併 発 症 は 白 内 障 (26.3%)、 高 血 圧 (14.0%)、 骨 折 (14.0%)、 脊 椎 疾 患 (12.3%) 、 四 肢 関 節 疾 患 (22.8%) 。 精 神 症 候 は 84.2%が有し、 影響のあるものは記憶力の低下が 26.3

%、 認知症が 15.8%であった。 診察時の障害度は、 極 めて重度 3 人、 重度 11 人、 中等度 30 人、 軽度 13 人、

極めて軽度 0 人。 障害要因はスモン 10 人、 スモン+

合併症 41 人、 併発症 3 人、 スモン+加齢 3 人であっ た。 長期入院または入所の割合は 17.5%であった。

治 療 は 49 人 、 86.0% が 受 け て お り 、 ス モ ン の 治 療 が 22.8%、 合併症の治療が 80.7%であった。

10 年間で、 スモン主要症状のうち、 視力と歩行で

は重症化の傾向にあったが、 異常知覚と胃腸症状では むしろ軽症化の傾向が見受けられた (図 2)。 診察時 の障害度では軽度の比率が減少傾向にり、 療養状況で は 「長期入院または入所」 の比率が増大しつつあった (図 3)。

3 . 日常生活動作および介護

一日の生活は、 一日中寝床 3 人、 寝具上で身を起こ す 2 人、 居間・病室で座る 11 人、 家や施設内を移動 10 人 、 時 々 外 出 19 人 、 ほ ぼ 毎 日 外 出 12 人 で あ り 、 Barthel インデックスは 0〜100 (平均 74.4) であった。

転 倒 は 、 最 近 1 年 間 に 33 人 (57.9%) が 経 験 し 、 骨 折は 7 人に 7 件 (手首 1、 手指 1、 肋骨 4、 胸椎 1) 起 こった。 一人暮らしは 20 人 (35.1%) であった。

介護状況は、 毎日介護 23 人 (40.4%)、 必要時介護 14 人 (24.6%)、 介 護 者 い な い 1 人 、 介 護 不 要 19 人 (33.3%) であった。 介護保険を申請していた 35 人の 認定結果は自立が 0 人、 要支援 1 が 3 人、 要支援 2 が 10 人、 要介護 1 が 3 人、 要介護 2 が 3 人、 要介護 3 が 10 人、 要介護 4 が 4 人、 要介護 5 が 2 人であった。 将 来 の 介 護 に つ い て 不 安 を 抱 く 人 の 割 合 は 29 人 、 51.8

% で あ っ た 。 不 安 の 主 な 理 由 で は 、 介 護 者 の 高 齢 化 (27.6%)、 介護者の疲労や健康状態 (24.1%)、 介護費 用の負担 (17.2%) が多かった。 将来の見通しは多い 順に、 介護を受けながら自宅 5.4%、 介護と介護サー ビスを組合わせて自宅 19.6%、 施設入所 26.8%、 現在 入所中の施設 19.6%であった。

10 年間で 「一日の生活」 で最も多かった 「時々外

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0%

20%

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60%

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20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 0

40 80 120 160

20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

平成年度

患者数 (人)

非受診

来所検診

訪問検診 各年度の支払い対象者

受診者数

訪問検診率 受診率

平成年度 155

93

60.4% 61.3%

受診率と訪問検診率

図 1 患者数と受診率、 訪問検診率

20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 0%

20%

40%

60%

80%

100%

20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 0%

20%

40%

60%

80%

100%

B. スモンの主要4症状

e. 視力 f. 歩行

o. 異常知覚 w. 胃腸症状

全盲 光覚 手動弁 大見出し 指数弁

細かい字 ほぼ正常

不能 車椅子

要介助 つかまり歩き 一本杖 松葉杖

かなり不安定 やや不安定

ふつう

高度 中等度

軽度

ほとんど  なし

ひどくて悩む 軽いが気になる 軽く気にならない

とくになし

図 2 スモンの主要 4 症状 (B)

0%

20%

40%

60%

80%

100%

20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

平成年度 極めて重度 重度

中等度 軽度

B-z. 診察時の障害度 C-a. 最近5年の療養状況

極めて軽度

20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 在宅

時々入院 長期入院•入所

図 3 診察時の障害度 (B-z) と最近 5 年の療養状況 (C-a)

(3)

出」の比率が減少してきた (図 4)。 また、 増加してき ていた 「一人暮らし」 の比率は 26 年度から横這いと なり (図 4)、 逆に日常生活での介護は 「毎日介護」

の比率が 24 年度頃から増大してきた (図 5)。 将来の 介護に不安を抱く割合は 26 年以降減少傾向にあった (図 6)。 介護度が増した場合の見通しでは 「分からな い」 の比率が大きいものの、 「施設への入所」 と 「入 所中の施設」 の比率が徐々に増大しつつあった (図 5)。

D. 考察

東北地区のスモン患者数は 10 年間で 6 割に減少し た 。 年 に 5〜6% ず つ 減 少 し た 計 算 で あ る 。 患 者 総 数 の減少に比べて受診者数の減少は小さく、 特に 24 年 度以降の受診者数はほぼ同数を維持した。 その結果、

増加傾向にあった検診受診率は 29 年度が最大となっ た。 検診受診率を高めるには訪問検診を増加させるこ

と が 勧 め ら れ る が10)、 来 所 受 診 の 比 率 が 高 か っ た 27 年度と 29 年度で受診率が高かったことから、 当然な がら来所検診者数を高く維持することも重要であると 分かる。

28 年度と比べると 29 年度検診群では重症度が低い 傾向がみられた。 診察時の障害度、 一日の生活、 日常 生活での介助、 長期入院・入所の比率などは 28 年度 より小さかった。 一般に、 来所検診では訪問検診より 重症者の比率が小さいので3)、 これらは 29 年度の来所 検診の比率が 28 年度より高かったことを反映してい るとみなせる。

10 年間の動向をみると、 28 年度の報告と同様に9)、 身体状況、 日常生活動作および介護度の重症化、 長期 入院・入所と一人暮らしの増加、 介護度は高まったが 介護に関する不安は減少傾向にあり、 施設への期待/

依存度が増大しつつある、 などが指摘できる。 重症化 の主因は高齢化と併発症の累積と考えられる。

ただし、 徐々に進行してきていた障害度や介護状況 の重症化が、 最近 3〜4 年で鈍化したようにみえる。

この重症化の鈍化の機序として、 ①医療・介護・福祉 の進歩、 ②加齢に伴う重症化と死亡脱落との相殺、 ③ 重症者が検診網から脱落しやすい、 などが挙げられる。

介護に関する不安の減少は①を示唆し、 平均年齢が横 這いである点からは②③の可能性が窺える。 ここで① と②は真の鈍化と言えるのに対し、 ③は見掛け上の鈍 化であり、 検診システムの弱点を示すものとも言える。

いずれにしても、 スモン患者群の現状を把握するには、

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20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 0%

20%

40%

60%

80%

100%

20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

F. 日常生活での介護

平成年度 毎日介護

必要時介護 介護不要

介護を受けながら自宅 介護•介護サービス を組み合わせて自宅 施設への入所

分からない

N. 療養の見通し

入所中の施設 介護者いない

図 5 日常生活での介護 (F) と療養の見通し (N)

M-1. 介護の高齢化

M-2. 介護の疲労や健康状態

M-4. 身近にいない M-3. 時間が取れない

0%

10%

20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 0%

10%

20%

20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 0%

10%

20%

30%

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0%

10%

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50%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

0%

25%

50%

75%

100%

21 22 23 24 25 26 27 28 29

M. 介護への不安

M-5. 介護費用の負担が重い M-6. 提供機関がない 平成年度

不安あり

図 6 介護への不安 (M)

20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 0%

20%

40%

60%

80%

100%

20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

D-a. 一日の生活 (動き) E-c. 一人暮らし

終日臥床 居間/病室で座る 家/施設内

の移動 時々外出 ほぼ毎日外出

寝具上で  身を起こす

平成年度

図 4 一日の生活 (D-a) と一人暮らし (E-c)

(4)

検診率を可能な限り高めることが必要である。

E. 結論

平成 29 年度の東北地区スモン検診は、 検診率が過 去最大となった。 東北地区スモン患者の現状として、

障害度や介護状況の重症化が徐々に進行してきたが、

最近 3〜4 年では重症化が鈍化した。 また、 将来の介 護に不安を抱く割合は減少し、 施設への期待/依存度 が増大しつつある可能性が示唆された。

G. 研究発表 1 . 論文発表

なし 2 . 学会発表

なし

H. 知的財産権の出願・登録状況 なし

I. 文献

1 ) 千田圭二ほか:平成 20 年度東北地区におけるス モン患者の検診結果. スモンに関する調査研究班・

平成 20 年度総括・分担研究報告書:25-27, 2009 2 ) 千田圭二ほか:平成 21 年度東北地区におけるス

モン患者の検診結果. スモンに関する調査研究班・

平成 21 年度総括・分担研究報告書:37-39, 2010 3 ) 千田圭二ほか:平成 22 年度東北地区におけるス

モン患者の検診結果. スモンに関する調査研究班・

平成 22 年度総括・分担研究報告書:27-31, 2011 4 ) 千田圭二ほか:平成 23 年度東北地区におけるス

モン患者の検診結果. スモンに関する調査研究班・

平成 23 年度総括・分担研究報告書:33-36, 2012 5 ) 千田圭二ほか:平成 24 年度東北地区におけるス

モン患者の検診結果と大震災の影響. スモンに関す る調査研究班・平成 24 年度総括・分担研究報告書:

37-40, 2013

6 ) 千田圭二ほか:東北地区スモン検診:平成 25 年 度の結果と 6 年間のまとめ. スモンに関する調査研 究班・平成 25 年度総括・分担研究報告書:48-51, 2014

7 ) 千田圭二ほか:平成 26 年度東北地区におけるス モン患者の検診結果. スモンに関する調査研究班・

平成 26 年度総括・分担研究報告書:51-54, 2015 8 ) 千田圭二 他:平成 27 年度東北地区におけるス

モン患者の検診結果. スモンに関する調査研究班・

平成 27 年度総括・分担研究報告書:52-55, 2016 9 ) 千田圭二 他:東北地区スモン検診:平成 28 年

度結果と 9 年間のまとめ. スモンに関する調査研究 班 ・ 平 成 28 年 度 総 括 ・ 分 担 研 究 報 告 書 : 54-58, 2017

10) 千田圭二 他:東北地区スモン検診の検診率向上 への再考. スモンに関する調査研究班・平成 27 年 度総括・分担研究報告書:123-125, 2016

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参照

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