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QoS TCP-AV fair case QoS LAN VoIP throughput of all s TCP-AV 1 TCP 2 1 CSMA/CA CSMA/CACarrier Sense Multiple Access with Collision QoS Avoidance LAN Q

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(1)

DEWS2008 D8-6

無線 LAN における帯域公平性の検討および QoS 保証 TCP の動作解析

新井

絵美

平野

由美

††

村瀬

††

小口

正人

お茶の水女子大学

〒 112–8610 東京都文京区大塚 2–1–1

††

NEC

システムプラットフォーム研究所

〒 211–8666 神奈川県川崎市中原区下沼部 1753

E-mail:

emi@ogl.is.ocha.ac.jp,oguchi@computer.org,

††

y-hirano@hy.jp.nec.com, t-murase@ap.jp.nec.com

あらまし 近年, マルチメディア通信の需要の高まりにより,QoS(Quality of Service)の保証が重要となっている. こ

こで定義する QoS とは指定された帯域を確保することである. これを実現する TCP-AV という帯域確保 TCP がこれま

でに提案, 実装され, 有線環境における評価がすでに行われてきた. しかし, 無線環境においては有線環境における場合

とは異なる問題が存在する. たとえば複数台の端末で通信を行ったときの送信権の制御メカニズムなどが原因となっ

て, 端末ごとのスループットに不公平が生じる場合があるといわれており, その結果有効な帯域制御が行えない可能性

がある. そこで本研究では, これらの問題について実機を用いた実験および考察を行い, 無線環境において TCP-AV を

用いてマルチメディア通信を実行する際の性能を評価し, 問題点を改善することによって, より良い QoS 制御を行うこ

とを目指す.

キーワード TCP, 無線 LAN, 公平性,QoS

A Study on Fairness of Bandwidth and Analyze TCP with QoS-guarantee

Mechanism on a Wireless Environment

Emi ARAI

, Yumi HIRANO

††

, Tutomu MURASE

††

, and Masato OGUCHI

Ochanomizu University

Otsuka 2–1–1,Bunkyo-Ku, Tokyo 112–8610 Japan

††

System Platforms Research Laboratories NEC Corporation

1753 Shimonumabe, Nakahara-ku, Kawasaki,

Kanagawa, 211–8666, Japan

E-mail:

emi@ogl.is.ocha.ac.jp,oguchi@computer.org,

††

y-hirano@hy.jp.nec.com, t-murase@ap.jp.nec.com

Abstract

In late years, the demand for multimedia communication has been raised extensively. To guarantee the QoS is

extremely important. QoS defined here is to guarantee target bandwidth. In order to realize it, TCP-AV has been proposed

and implemented, and it is achieved in a wired environment. However, wireless environment has problems different from the

wired environment. When multiple terminals are communicating, it is said that unfairness of the throughput among terminals

is observed caused by control mechanism of the data transmission right As a result, there is a possibility that it cannot control

the bandwidth effectively. Therefore we invested and considered these problems in this paper. We have used TCP-AV on

wire-less environment and evaluated performance of multimedia communication, for aiming at better QoS controls by resolving

problems.

Key words

TCP,wireless LAN,fairness,QoS

1.

は じ め に

近年,動画ストリームや音声(VoIP)などのマルチメディア通 信の需要が高まっている.そのような通信においてQoS(Quality of Service)は大変重要である.しかし一口にQoSと言ってもそ こで要求される品質はメディアやアプリケーションにより異な る.そのため,マルチメディア通信のための「QoS」を定義し,こ れが保証される仕組みを作る必要がある.また,インターネット (TCP/IPに基づくネットワーク)の本質は「ベストエフォート」 であるが,QoSが必要とされる場面が増えてきたため,インター ネットのプロトコルにQoS保証の仕組みを組込む方法が検討さ れてきている.この1つの例がTCP-AV [1]である.これは,ルー タなどにQoS制御を実装するのではなく,既存のTCPをこれ に載せかえて通信を行うというものである. TCP-AVでは,輻輳 状態により輻輳ウィンドウ制御パラメータを変更する.これに より目標帯域を確保させるようなことが可能となり,ストリー

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ミング通信などを効果的に行うQoSを実現できる. TCP-AVに より有線環境における帯域確保などのQoS保証が達成される ようになった. 一方で,無線LANが広く普及したことから,有線環境と同様 の無線環境において通信の品質が保証されることが望まれてい る. その例は,前述のVoIPなどである.ユーザは常に同じ品質 でアプリケーションが利用可能であることを要求するが,シス テムとしては無線環境において,有線環境の場合と同様に品質 保証を行うことは,より困難である.そこで本研究ではTCP-AV のような帯域確保型TCPが無線環境においても想定している ように振舞うかどうかを検証する.特に実機を用いて評価を行 うことにより,シミュレーションではモデル化が困難な端末ご との機器の差異やバッファの大きさなどによる影響を明らかに し,実環境で有効なQoS手法について検討する. 無線環境におけるQoS保証を実現するために,本論文では無 線環境におけるQoSについての2つの重要な問題に焦点をお く. 1つは無線LANの公平性の問題であり,もう1つは実機に おける実装の差異に起因する問題である. 無線LANの公平性の問題は端末の台数が増えたときに顕著に なり[2],すでにシミュレーションにおいて,複数のTCPフロー 間におけるスループットの不公平の発生が示されている[3].こ れは,ネットワークの非対称性と送信権の平等性により起こると いわれている.上記特性の下では,無線LAN AP(Access Point) のバッファにおけるTCP-ACKの破棄が不公平につながるとい われている.しかし,無線上のノイズや電波干渉,デバイスドラ イバの構築法やOSの構成など,シミュレーションでは考慮され ない点が実機には存在するため,このような不公平が実機にお いてどの程度起こるのかどうかは明らかではない.例えば実機 のAPのバッファサイズはメモリや装置の低価格化などの要因 で変動していると考えられ,現状の実システムでバッファが問 題になりうるかどうかを把握することは非常に重要である.ま た,本論文では無線LANインタフェースの構成方法に起因する 実機特有の不公平に関しても考察する.これらの実験により実 機の無線環境における課題を議論した上で,有線環境において は品質保証を実現することができるTCP-AVが実機の無線環境 で期待通りの働きができるかについて検証を行った. 以下,第2章にて無線環境におけるTCPフローのスループッ トの公平性について議論し,第3章でTCPおよびTCP-AVの評 価を行い,第4章で本稿のまとめを行う.

2.

無線環境における公平性

無線LAN環境におけるTCPフローのスループットの公平性 の問題とは,同じ条件で通信しているにも関わらず端末間でス ループットが不公平になることである.これはつまり複数の無 線端末から同時に有線端末にデータを送信するときに,ある端末 はほとんどスループットが上がらず(0Mbpsに近い),ある端 末は全帯域をすべての端末で均等に分けた値よりも高いスルー プットが出るという状態である.このときの一般的なスループッ トの特徴を表すグラフの例を図1に示す. 以下,無線LANの制御の特徴を述べ,この問題について考察

• fair case • U nfair case

Th ere are h u ge d ifferen ce o n th rou gh p ut am o n g term in als

thro ug hp ut o f all term inals are alm o st eq ual

Term in al ID Term in al ID

図 1 公平および不公平なスループット

する.

2. 1 CSMA/CAによる送信機会の平等と自律分散制御

CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision

Avoidance)は,無線LANで標準的に適用されているアクセ

ス方式である.この方式は,衝突を回避するために,他の無線端 末が電波を出していればある一定期間(IFS: Inter Frame Space) だけ待ち,再び搬送波を調べて周囲が電波を出していなければ ランダム時間後に自分が送信するというものである.この方式 の特徴はすべての無線端末が対等の関係にあり,しかも分散制 御している点にある. 2. 1. 1 送信機会の平等 CSMA/CAの1つ目の特徴は送信機会の均等性である. バッ クオフ制御は,キャリアセンスに加えて衝突を回避するための 方法として802.11規格に定められている. バックオフ制御で はDIFS(Distributed Coordination Function IFS)時間アイドル になった後,フレームを送信しようとする無線端末は,規定の CW(Contention Window)範囲内で乱数を発生させ,そのラン ダム時間(バックオフ時間)が決められる. キャリアセンスを ランダム時間だけ行うことにより,各無線端末には公平な送信 機会が与えられることになる.フレームが衝突した場合には,再 送ごとにバックオフ制御のCWの範囲を2倍に増加させる2進 数バックオフにより,フレームの再衝突する確率を低減させる. 2. 1. 2 自律分散制御 2つ目の特徴は自律分散制御である. 802.11無線LANの 基本アクセス手順とされているDCF(Distributed Coordination Function)では,各無線端末がチャネルの使用状況を検査して 自律的にフレームの送信タイミングを決定する.このときのア クセス制御プロトコルにCSMA/CAを使用している. ただし CSMA/CAでは偶然同時にパケットを送信してしまう可能性, すなわちパケット同士が無線上で衝突してしまう可能性がある. 衝突によって,パケットが正常に受信されなかった場合,パケッ トは再送されるが,衝突の発生する確率は無線端末数と通信ト ラフィックの増加につれて大きくなり,スループットの低下を招 く.このとき,端末ごとのMAC(Media Access Control)やTCP

の実装は考慮に入れられず,その結果送信権の平等性を目指し ながら,不公平が起こってしまう.以下でその問題を議論する.

2. 2 CSMA/CAにおけるTCPの振舞の特徴

TCPにおいて1セグメントごとに確認応答を行った場合,RTT

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してしまう.そこで,確認応答を待たずに複数のセグメントを送 信できるようにすることで性能を低下させないようにしている. このとき確認応答を待たずに送信できるデータの大きさをウィ ンドウサイズという. 2. 2. 1 ウィンドウ制御によるTCP-ACKロスの影響 ウィンドウ制御をするときに確認応答(ACK)が失われてし まった場合,データは届いているので再送する必要はない.その ため,ウィンドウサイズがある程度以上の大きさがある場合には 少しぐらい確認応答が失われても再送処理は行わず,次のACK パケットでデータの到着が確認される.例えば,ウィンドウサイ ズが10で通信している端末は10のうち1以上のACKが返っ てくればそのまま通信を続けることができる.しかし,ウィンド ウサイズが1で通信している端末は,その1つのACKが返って こなければデータは再送となり,ウィンドウサイズを増加させる ことができず,なかなかウィンドウサイズが大きな値にならな い.単純に述べると,前者は,後者に比べて10倍有利に通信を することができる.このように同じACKのロスでもウィンドウ サイズによって影響が異なる. すなわちウィンドウサイズが大 きい端末はどんどんデータを送信し,スループットを高くする ことができるが,ウィンドウサイズが小さい端末はいつまでも データの送信ができず,スループットをあげることができない. 2. 2. 2 フローごとのスループットの公平性 ここで,シミュレーションで示されている不公平の原因につ いての議論を紹介する. シミュレーションではこの原因はAP のバッファにおけるACKのあふれであると述べている[3].こ れは端末の台数が増えたときに特に問題となる. 例えば,10台 の無線端末からAPを経由して1台の有線端末にデータを送信 する場合を考える(図2参照).このとき,データの送信は高々 54Mbpsであるのに対し,ACKは100Mbpsの速さでAPのバッ ファにたまる. APは無線の端末にACKを返したいが,APも無 線端末のひとつとして送信権を得なければならない.しかし,10 台分のACKを1/11の確率でしか送信できないため,有線リン クの速さとの相乗効果によってAPのバッファにどんどんACK がたまっていく.その結果バッファに入りきらないACKは破棄 される.このACKの破棄が上記のようにウィンドウサイズの違 う端末に影響を与え,スループットの不公平を招く. Receiving terminal Transmitting terminal Access Point TCP ACK TCP data <w ireless> <wired> Transmitting terminal Transmitting terminal 図 2 シミュレーションにおける TCP フローの不公平 2. 3 MAC層の実装の違い 無線子機のMAC層の違いはシミュレーションでは表せない 効果であり,実機特有の問題点である. データリンク層内のMAC層では有線の規格であるIEEE802.3

のCSMA/CD(CSMA with Collision Detection),無線の規格で あるIEEE802.11のCSMA/CAの2種類がある. CSMA/CDに おいては,データを送信したい端末はケーブル上の搬送波を調べ 通信状況を監視し(Carrier Sense),ケーブルが空くとデータの送 信を開始する.このとき,複数の端末が同時に送信を開始すると ケーブル内でデータが衝突して壊れるため(Collision Detection), 両者は送信を中止し,ランダムな時間待機してから送信を再開 する. この方法に従うと,1本のケーブルを複数の端末が共有し て,互いに通信する(Multiple Access)ことができる. 次に本研究で使用する無線子機を紹介する.本研究では無線 子機として,USBタイプとイーサネットコンバータタイプの2 種類を使用する. この2種類はMAC層の実装が異なる.USB タイプは一般的なカードタイプの無線子機同様MAC層から直 接無線となり,CSMA/CAの仕組みで動作している. 一方,イー サネットコンバータタイプの無線子機は端末からイーサネット ケーブルを通り,その先で無線に変換してから通信を行ってい る.そのため,端末からはCSMA/CDの仕組みで動作していると 認識される.この違いを図3に示す.

本稿では, USBタイプの無線子機として,BUFFALO

WLI-UC-AG [4]を使用した. また,イーサネットコンバータタイプ無線

子機として, BUFFALO WLI3-TX1-G54 [5]とBUFFALO WLI-TX4-G54HP [6]を使用した.

図 3 無線子機と MAC 層の違い

2. 4 TCPのプロトコル

広く実装されている従来型のトランスポート層プロトコルで

あるTCP-Renoと,提案手法でありQoS実現を目指すTCP-AV

について説明する. 2. 4. 1 TCP-Reno TCP-Renoはトランスポート層で広く実装されているプロト コルである. ここでLinuxのTCP実装[7]について詳しく説明 する. まず通常は正常状態(状態TCP CA OPEN)で動作して いる.このときには通常のTCP輻輳,ウィンドウ制御アルゴリ ズム(スロースタート,輻輳回避)に基づき輻輳ウィンドウは 単調に増加する.これを続けると,一度に送り出すデータはその 分だけ大きくなっていく. しかし,何かエラーが起こると異常状態に遷移し,輻輳ウィ ンドウは急激に減少する. 異常状態にはTCP CA RECOVERY, TCP CA CWR, TCP CA LOSSの3つの状態があり,それぞれ

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ムアウトなどの原因で遷移する(図4参照). Local Device Congestionとはデバイスドライバのバッファ(NICディスクリ プタ値)があふれるというエラーであり,データ送信時にTCP が下位層へ送り出すデータ量がバッファの大きさを超えると発 生する. これが起こると,輻輳ウィンドウが急激に減少するが, その後正常状態に戻り,輻輳ウィンドウは再び単調増加を始め る. またネットワークが混雑している場合には重複ACKまた はSACKの受信,さらにはタイムアウトによるエラーも頻発す る. これらのエラーの場合も発生すると異常状態に遷移して輻 輳ウィンドウは急激に減少し,その後また単調増加に戻る. TCP_CA_Open normal state TCP_CA_Recovery abnormal state TCP_CA_CWR abnormal state TCP_CA_Loss abnormal state [increase of congestion window] “timeout” [reduction of congestion window] “duplicate ACK, SACK”

ECN, ICMP source quench, “Local device congestion”

図 4 輻輳ウィンドウの状態変化 2. 4. 2 TCP-AV TCP-AVはストリーミング通信の品質向上を目指して提案さ れた.目標帯域を確保するための制御を行っている.既存のTCP の輻輳制御方式を拡張し,パケットのバーストロス耐性を向上 する再送制御方式を採用している.具体的には,再送クライアン トの受信バッファを枯渇させない輻輳ウィンドウ制御,一時的 な輻輳発生時の通信速度減少を抑える再送制御などである.

3.

無線環境における

TCP/TCP-AV

の評価

TCP-AVの無線LAN環境における振舞を確実なものにする ために,TCPの公平性について調べる. そのためにまず,APの バッファサイズを調べ,シミュレーション環境における不公平 の原因が実機においても適用できるか検証した.次に,端末の台 数が増えたときのTCPフローのスループットの公平性を調査 した後, TCP-AVの性能評価を行った.

そ の 際 の 評 価 基 準 と し て,EB(Effective Bandwidth),NRT

(Normalized Required Throughput),AVR(Achievement Ratio) を定義する. EBは最大の帯域幅のことであり,本研究では IEEE802.11g無線LAN [8]を使用するため54Mbpsとなる. し かし,これは理論値であるため実際の帯域幅を測定する必要が ある.この実際の最大帯域幅をNRTとする.実際に実験環境に おいてフロー1本あたりのスループットを測定すると最大で約 25Mbpsとなったため,この値を本研究のNRTとする. AVRは, 指定した帯域を確保できた時間帯が全実行時間のうちどのくら いあるかという比率を示す.今回の実験では120秒の測定を5 秒ごとに分割した.ただし,投入順序による差が見られる最初の 5秒間は除き,全部で23区間とする. 23区間のうち何区間目標 帯域を達成できていたかをカウントして,10回測定した平均を 取った. また,fair-shareとはNRTを送信端末の台数で割った値 であり,帯域を全送信端末で均等に分けたときの1台あたりの 帯域幅であるとする. 3. 1 APのバッファサイズの検証 3. 1. 1 実 験 概 要 まず,無線LAN APのバッファサイズを求めた.無線LAN AP として,BUFFALO WZR-AMPG300NH [9]を使用した.図5のよ うに1台の有線端末から番号を付加したUDP(User Datagram

Protocol)パケットをAPを経由して,無線端末に送り出す[10]. これを受信した無線端末において,受信回数と送信端末で付加 された番号を比較する. 受信回数と番号が一致していれば,パ ケットがロスすることなく通信が行われているといえる.しか し,番号が飛んでいる場合,その間のパケットはロスしていると 考えられる.図5のようなネットワーク構成の場合,パケットロ スの原因は有線側のAPのバッファあふれであるといえる. 図 5 APのバッファサイズ検証実験 3. 1. 2 実 験 結 果 APのバッファサイズの測定を10回行った.その結果を基に APのバッファサイズを推察したところ,約300パケットとな り,シミュレーションで用いられる値と大きく変わらない結果 となった. このことから実機においてもシミュレーション同様 APのバッファにおけるTCP-ACKのあふれが不公平の原因の ひとつであると推測される. 3. 2 異機種無線LAN端末混在環境におけるTCPフローの 公平性 3. 2. 1 実 験 概 要 まず実際の環境に近づけるために異なる種類の無線子機の混 在環境において実験を行った. 異機種無線LAN端末混在環境 におけるTCPの公平性の違いを検証する実験環境を図6に示 す. また,少ない端末台数においてはスループットの不公平が 起こらないため, 7台の送信端末とした. OSとして,端末番号 1,8にLinux2.4,端末番号6と7にLinux2.6,端末番号2∼5に windows XPを使用した. 無線子機として,端末番号1,2,6,7に イーサネットコンバータタイプを,端末番号3∼5にUSBタイ プを使用した. 7台の無線送信端末からAP,ネットワークエミュレータ,ス イッチを経由して1台の有線端末にフローを流したときのス ループットを測定する.スループットの測定にはIperf [11]を用 いた. その際,フローの投入順序に影響されず,また安定した測

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定を可能にするために測定時間は120秒とした.さらに,ネット ワークエミュレータのパラメータとして,遅延を20ミリ秒,パ ケットロスを0.5%と設定した. USBタイプの無線子機とイーサ ネットコンバータタイプの無線子機の混在環境の場合,MAC層 における制御の違いからスループットの公平性の違いが現れる 可能性がある. 図 6 異機種無線 LAN 端末混在環境を用いた実験環境 3. 2. 2 実験結果および考察 10回測定を行い,平均を取った.このときのスループットの 公平性の違いを図7に示す. これを見ると,USBタイプは常に fair-share(NRT÷7台=約3Mbps)以上のスループットが出 ているのに対し,イーサネットコンバータタイプはスループッ トが高い場合にはfair-share程度,低い場合には1Mbps以下と なっている.しかし,この違いがMAC層におけるどのような制 御の違いからきているのかは明らかではない. そこで輻輳ウィンドウの動きとエラーの種類を観測すること がきるTCPモニタ[12]というツールとパケットの情報を見る ことができるtcpdumpコマンドを使ってこの原因を推察する. これらを用いて,イーサネットコンバータタイプでスループッ トが高い場合(2.26Mbps≒fair-Share程度)とスループットが 低い場合(504Kbps)の2つの場合を比較する. TCPモニタを用いたときの結果を図8に示した.図中のグラ フの実線は輻輳ウィンドウの変化を示しており,破線はその時刻 にエラーが起こったことを示している. TCPモニタは3種類の 異常状態を見分けることができるが,今回はすべて重複ACKま たはSACK受信によるエラーが観測されている.これはパケッ トロスが起こっていることを示す. 次にtcpdumpコマンドから,データを送信した時間とACKを 受信した時間を取り出して作成した図を図9に示した.横軸に 時間をとり,図中の上段の点がデータを送信した時間を,図中の 下段の点がACKを受信した時間を,それぞれ1パケットにつ き1つの点で表した.これにより,データ送信とACK受信のタ イミングや頻度を明らかにした.なお,図8,図9とも,上部をス ループットが高い場合,下部をスループットが低い場合とした. この2つのグラフを見ると,イーサネットコンバータタイプ のスループットが高い場合には頻繁にデータを送信し,パケッ トがロスしても積極的に再送を行っており,ウィンドウが増減 している.しかし,スループットが低い場合にはゆっくりとしか ウィンドウが上がらず,データの送信頻度が低いままである.こ れは前述のACKロスによる影響を受けていると考えられる.た だし,スループットが低い場合はスループットが低く抑えられ ているために,スループットが高いときのようにパケットロス を頻発していない. このことから,ACKが返ってこないなどで コンバータの無線部分でパケットが送り出せなくなったときに, コンバータのバッファがあふれるのを防ぐためにパケット送信 を緩めるようOS側に指示している可能性がある. これにより 送信量が減り,全体的なスループットの低下を招いていると考 えられる. terminal ID th ro u g h p u t[ M b p s] USB-type Converter-type 図 7 USBタイプとイーサネットコンバータタイプのスループットの 公平性の違い 図 8 TCPモニタの実行結果 図 9 tcpdumpの実行結果 3. 3 同機種無線LAN環境におけるTCPフローの公平性 3. 3. 1 実 験 概 要 カードタイプの無線子機においてTCPフロー間でスループッ トの不公平が起こることが示された[2]. しかし,イーサネット

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コンバータタイプのみを用いた環境においては不公平が起こる かどうか明らかではない. TCP-AVを使用する際,イーサネット コンバータタイプの無線子機を用いるのが便利である. そこで,イーサネットコンバータタイプのみを用いる環境を 構築した.パラメータを片道遅延2.5ミリ秒とし,Iperfを用いて 120秒間スループットの測定を行った.これを10回行い,平均 を取った. このとき送信端末の台数を2∼6台と変えて実験を 行った.実験環境を図10に示す.ただし,図は送信端末の台数が 6台の場合を表している. 図 10 イーサネットコンバータのみを用いた実験環境 3. 3. 2 実験結果および考察 送信端末が4台のときと5台のときのスループットを図11 と図12に示す.送信端末が2台∼4台の場合は,ほぼ公平に帯 域を分け合っていた.しかし,送信端末を5台にしたときに1台 不公平に陥る端末が現れた(図12のTerminal ID2). その後, 送信端末を6台にしたときには,再び公平に帯域を分け合うよ うになった. この結果からイーサネットコンバータを用いた無 線LAN通信は不安定で,周囲の状況の些細な変化によりACK ロスが起こるタイミングが変わるなどして,その結果スループッ トに大きな影響を受けやすいと考えられる. 図 11 TCPフローが公平な場合(送信端末数 4) 3. 4 TCP-AVの評価 3. 4. 1 実 験 概 要

3台の無線LAN送信端末を用いてTCP-AVのAVRを調べる 実験環境を図13に示す. ここで,Flow1はTCP-AVのフローと するが,送信端末のTCPの実装は変更しない.その代わりTCP

中継器(TCP-Proxy)を端末とイーサネットコンバータの間に

設置し, TCPをTCP-AVに載せかえる. Flow2および,Flow3は

図 12 TCPフローが不公平な場合(送信端末数 5) 既存のTCP-Renoを用いて通信を行う.このとき遅延を10ミリ 秒と設定した.期待される振舞としては,TCP-AVの積極的な帯 域確保制御により,fair-share(NRTの32%:8Mbps)以上の帯域 を確保できると考えられる. 図 13 AVRを評価する実験 3. 4. 2 実験結果および 結果を図14の“3flows”に示した.横軸のNRTは,NRT100%= 25Mbpsとし,TCP-AVの帯域をNRTの何%を目標として設定 したかを表す. ここで,”3flows”とは,図13のように,TCP-AV フロー1本・TCP-Renoフロー2本の計3本のフローで実験を 行ったことを表す.このとき,全実行時間の9割程度の時間目標 帯域を確保できるのは,NRTの40%程度までを設定した場合で あった. 次にTCP-Renoの端末からのフローを1台につき2本に増や し,TCP-AVフロー本・TCP-Renoフロー4本の計5本のフロー とした. この結果は図14中に“5flows”として示した. この とき,全実行時間の9割程度の時間,目標帯域を確保できるの は,NRTの30%程度までを設定した場合となった.これらの結果 から,fair-shareより10%増程度であれば,ほぼ全実行時間中,帯 域を確保できることがわかった.しかし,この程度の帯域確保に とどまるのは無線のCSMA/CAの送信権の平等性の影響が考え られる.そのため,フロー数よりも端末の台数による影響の方が 大きいと考えられる. 3. 4. 3 送信端末が増加した場合の実験概要 次に,送信端末が増加した場合に同様の評価を行った.実験環 境を図15に示す.公平性を検証した際に不公平が生じていた5 台の送信端末における環境とする.

(7)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 20 40 60 80 100 NRT(NormalizedRequired Throughput)[%] A V R (A ch ie ve m e n t R a tio )[ % ] •3 flows( ) TCP-AV-P flow TCP-Reno-2 flows (1flows*2terminals) •5 flows( ) TCP-AV-P flow TCP-Reno-4flows (2flows*2terminals) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 20 40 60 80 100 NRT(NormalizedRequired Throughput)[%] A V R (A ch ie ve m e n t R a tio )[ % ] •3 flows( ) TCP-AV-P flow TCP-Reno-2 flows (1flows*2terminals) •5 flows( ) TCP-AV-P flow TCP-Reno-4flows (2flows*2terminals) 図 14 AVRによる TCP-AV の評価 1(送信端末数 3) 図 15 送信端末が増加した場合の AVR の評価 3. 4. 4 実験結果に関する考察 本実験におけるfair-shareはNRTの20%である5Mbpsであ る.結果を図16に示す.設定帯域をfair-share程度とした場合ま ではAVRは100%である. fair-shareを超えて設定帯域をNRT の25%とすると,AVRは70%となる.さらにNRTの40%を設定 するとAVRは1割以下となる. 無線LANの送信権の平等性により,fair-shareを大幅に超えて 帯域を確保することはできなかったが,不安定な無線かつイー サネットコンバータを用いた環境においてもTCP-AVを用いた 端末が不公平な端末とならず, fair-shareより5%増ぐらいまで であれば品質保証が可能であることがわかった.また,端末台数 がこれより少ない場合および6台の場合も同様の傾向であった. 図 16 AVRによる TCP-AV の評価 2(端末台数 5)

4.

まとめと今後の課題

本研究では,無線環境におけるQoS実現のために実機を用い て実験を行った. 1点目はTCPフローの公平性に関する実験で ある. まずAPのバッファサイズについて検証することで,シ ミュレーション同様APのバッファあふれが不公平の原因のひ とつとなりえることを示した.次にイーサネットコンバータタ イプとUSBタイプの無線子機の混在環境において,イーサネッ トコンバータタイプ間のみでスループットの不公平が起こるこ とが明らかになった.そこでTCPモニタツールとtcpdumpコマ ンドを用いて,イーサネットコンバータタイプの挙動について 考察を行った.さらにイーサネットコンバータタイプのみの環 境においても不公平が起こることを示した. 2点目として,有線環境においてQoS保証を可能にした TCP-AVを,無線環境においてAVRという新たな基準を用いて評価 を行った.その結果,TCP-AVはfair-shareの5∼10%増程度まで は目標帯域に近い通信を長時間行うことができ,不安定な無線 環境においてもある程度のQoS保証を導入できたといえる. 今後は,さらに台数を増やした環境における公平性の検証, イーサネットコンバータタイプの挙動の詳しい分析, UDPフ ローを流したときの挙動,高遅延や高負荷をはじめとする様々 な環境におけるTCP-AVの更なる性能評価を通して,無線環境 におけるより良い品質保証の提案を進めていきたい.

本研究にTCP-AVプロトコルの提供と適切なアドバイスを頂 いたNECシステムプラットフォーム研究所の藤田範人氏と浜 崇之氏に感謝致します. 文 献

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http://buffalo.jp/products/catalog/item/w/wli3-tx1-g54/

[6] BUFFALO AirStation High Power wireless LAN Ethernet converter 54Mbps (WLI-TX4-G54HP) :

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phys-ical layer(PHY) specification,1999

[9] BUFFALO wireless LAN BB router AirStation  NFINITI GIGA

300Mbps 11n conformity (WZR-AMPG300NH) : http://buffalo.jp/products/catalog/network/wzr-ampg30nh/ [10] Perl program of inspect the size of buffer:

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[11] Iperf: http://dast.nlanr.net/Projects/Iperf/

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高遅延環境におけるシーケンシャルアクセスの性能向上に関す る考察”, 通信学会論文誌, Vol. J87-D-I, No. 2, pp. 216–231, 2004 年 2 月

図 1 公平および不公平なスループット
図 3 無線子機と MAC 層の違い
図 4 輻輳ウィンドウの状態変化 2. 4. 2 TCP-AV TCP-AV はストリーミング通信の品質向上を目指して提案さ れた . 目標帯域を確保するための制御を行っている
図 12 TCP フローが不公平な場合(送信端末数 5) 既存の TCP-Reno を用いて通信を行う . このとき遅延を 10 ミリ 秒と設定した . 期待される振舞としては ,TCP-AV の積極的な帯 域確保制御により ,fair-share ( NRT の 32% : 8Mbps )以上の帯域 を確保できると考えられる

参照

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