九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
[078]Bulletin of Research Institute for Applied Mechanics
http://hdl.handle.net/2324/4791860
出版情報:九州大学応用力学研究所所報. 78, 1995-10. Research Institute for Applied Mechanics, Kyushu University
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発 刊 の 辞
中村泰治先生は平成7年3月31日をもって定年御退官を迎えられました.先生 は,昭和 30年 3月東京大学工学部応用物理学科を卒業後,同年 6月より 4年間,通 産省工業技術院機械試験所に勤務され,昭和 34年 4月より 9年間の総理府科学技術 庁航空技術研究所(現航空宇宙技術研究所)勤務を経て,昭和 43年 9月九朴I大学 応用力学研究所助教授に就任されました.その後,昭和46年1月に同研究所教授に 昇任,同年 3月大学院工学研究科(土木工学専攻)指導教官,平成 2年 6月大学院 総合理工学研究科(大気海洋環境システム学専攻)指導教官となられ,この度の退 官まで27年の長きにわたり九州大学において,鋭意,研究と教育に従事されました.
この間,高知工業高等専門学校,九州工業大学,宮崎大学における非常勤講師とし て学生の教育と研究指導に当たられました.
研究面では,風工学における基礎から応用まで広い分野にわたり,国際的にも高 く評価されている数多くの優れた業績を残しておれらます.
構造物など非流線型物体の周辺流と空力特性に関する研究においては,風洞実験 や水槽実験を駆使し,円柱や矩形柱等の基本断面の流れ特性を系統的かつ詳細に調 ベ,物体抵抗,渦放出機構に関してブラフボディ流れの体系化を進めてまいりまし た.特に橋梁断面に用いられる扁平な構造断面についてはその渦放出機構が単一せ ん断層の発振現象に支配されていることを卓抜した着眼により見出されたのです.
一般に構造物は乱流としての自然風中に曝されていまず.乱流中で構造物の空力特 性がどのような変化を示すかを, 2次元物体, 3次元物体,剥離・再付着が生じる 扁平な物体についてそれぞれ系統的な実験を行い,乱れの強さとともに乱れのスケ ールも重要な影響を及ぼすことを明らかにしました.このようにブラフボディ流れ に関して数多くの優れた研究により,常に世界の風工学研究において先導的な役割 を果してまいりました.
構造物など非流線型物体のフラッタ発生機構とその防止に関する研究において は,ギャロッピング現象に関する理論および実験解析を通しての統一的解明,渦励 振現象に関する優れた洞察による理論および数々の実験研究,曲げフラッター,ね じりフラッター,あるいはこれらが連成した2自由度フラッターに関する研究は風 工学の広範な分野で極めて重要な成果として生かされております.例えば日本の国
家的プラジェクトである本四連絡橋の橋梁断面,ケーブル,主塔などの耐風安定性 について,あるいは近年構想が明確になりつつある超高層建築物に関する耐風設計 においてその進展に多大な貢献を果してまいりました.
上に述べた先生の研究業績は, 143編の論文, 2冊の著書として発表されており,
それらは国内外において極めて高く評価されております.また数々の招待講演,基 調講演を行い,国際学術誌の編集委員を務めてまいりました.
大学の行政面においては,平成 3年 4月から 5年 3月まで応用力学研究所長とし て大学運営の中枢に参画するとともに,応用力学研究所の発展のために多大の貢献 をなされました.この他,国際交流委員会委員,情報処理教育センター運営委員会 委員,計算機委員会委員,公開講座委員会委員,原子力委員会委員,情報科学委員 会委員等の各種委員会委員として大学の発展に寄与されました.
また,学外においては,日本風工学会理事,土木学会構造工学委員会各種分科会 委員,日本学術会議構造工学研究連絡委員会の耐風構造分科会委員,同災害工学研 究連絡委員会の風工学専門委員会委員を歴任し,学術の振興に尽くされました.
以上のように,先生は終始一貫学術の研究および大学の運営に尽力して,本学の 発展に寄与するとともに,学外においても学術の振興に多大の貢献をなされました.
ここに,先生の定年御退官を機に,先生の偉大な足跡を記念するための論文集を発 刊する次第です.今後の御多幸と益々のご活躍を念じつつ発刊の辞といたします.
平成7年 盛 夏
応用力学研究所所長 竹▲ 杉公