r r r r 児童期後期における創造的態度が物語創作に与える影響

児童期後期における創造的態度が物語創作に与える影響

人間教育専攻 人間形成コース 江 口 倫 子

【問題と目的}

近年，創造性への関心が高まっている。あらゆ る場面や分野において，創造性を求められること が多くなっている。教育の現場においても，創造 性に注目が高まっている。

そこで本研究では，これまでの創造性検査で測 定される中心となった非凡性や産出量だけではな く，創造的態度や創造の過程に現れる想像性も含 め，測定することが可能となる創造的態度尺度の 開発を行い，子どもたち個人の創造性を測定する。

さらに，児童期後期の時期において，もっとも 明 確 に な る 創 造 性 は 文 学 創 造 の 領 域J(ヴィゴ ツキー1930広瀬(訳)2002)であることから，本 研究では，物語創作活動を行う。これらによって，

個人が持つ創造性を測定する。さらに，物語創作 としづ創造性の産出に，創造的態度がどのような 影響を与えているのかについて検討したい。

【研究日 目的

研究Iでは，創造的な人物とは，どのような特 徴を持っているかということを明らかにするため に，一般成人が持つ創造的人物観について，ボト ムアップ的調査と，ヴィゴツキーらの先行研究に よるトップダウン的なアプローチの両方を合わせ て，児童が項目に対して自己評価する，創造的態 度尺度項目を収集し，整理した。

指 導 教 員 皆 川 直 凡

方法

研究の協力者は， T県の教育大学の大学院生(現 職教員含む)30名(男性 17名・女性 13名，そ のうち現職教員含む教員経験者9名，平均年齢は 27.5歳)で、あった。 2009年6月 16日"'‑'6月30

日までの期間に，指導教員の担当授業の受講者，

及び大学院生の協力者に配布し，回収した。

結果および考察

結果， 81個の項目を集めることができた。これ らを，小学6年生の児童に実施することを踏まえ，

参考にしながら，選定を行い，語尾や語葉の変更，

広く捉える事の出来る質問項目に修正し，最終的 に5因子に「問題に対する敏感さJ

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した。

{研究 H】

目的

調査Iでは，創造的態度尺度質問紙を実施し，

分類の妥当性と，尺度構成について考察する。

調査Eでは，調査Iの質問紙では測りきれない，

創造性について， _{~きつねの窓~} (安房直子作・織 茂恭子絵・ポプラ社・ 1977)を用いて，物語創作 課題を実施して検討する。また，調査 Iで明らか になった創造的態度の因子が物語創作へどのよう な影響を与えているのか，その関係性を明らかに する。

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方法

調査の協力者は T県の公立小学校 2校の 8年生 224名(男子110名・女子114名)であった。有 効回答数は， 205名(男子 97名・女子 108名) である。調査1. II共に，同じ小学校で、実施した口

調査Iは，2009年9月29日‑‑...，2009年 10月21 日であり，実施日はそれぞれの実施期期間内で，

創作の流暢性に，創造の具体化が独創性に影響し ていることが明らかになった。男子では，創造的 態度の流暢性が物語創作の流暢性に，影響してい ることがわかった。

創造的態度総合と物語創作総合間の単回帰分析 を行った所，創造的態度は物語創作へプラスの方 向へ影響を与えていた。男子では，影響は見られ 各学級の実態に応じて，各担任教師の都合のよい なかった。

日，時間に実施してもらった。 【本研究のまとめと今後の展望}

調査Eは， 2009年9月29日‑‑...，10月20日であ り，実施日はそれぞれの実施期間内で，各学級の 実態に応じて，各担任教師の都合のよい日に，調 査者が各学級を訪れて実施した。

結果および考察

調査 Iの因子分析の結果，本研究では， I綿密性J が「独創性j と「柔軟性Jの双方に影響している ことが確認され，新たに因子名を定義し，創造的 態度尺度の因子5ぅ「創造的な発見JI再定義JI流 暢性JI創意工夫JI創造の具体化Jを抽出した。

調査 Eの物語創作課題の評価の総合成績の差を，

性別×因子の2要因分散分析を行った結果，性別 の主効果，因子の主効果および両因子間の交互作 用が有意で、あった。

そして，創造的態度因子と物語創作評価項目聞 の相関係数を求めた所，男子では創造的態度の流 暢性と物語創作の流暢性の間，女子では，創造の 具体化と独創性問，創造的発見と問題に対する敏 感さ間，創造的態度の流暢性と物語創作の流暢の 間において，有意な相関がみられた。

創造性態度の総合得点と物語創作の総合評点と の相関係数では，女子は有意な相関が見られたが，

男子は相関が見られなかった。

影響の方向性を明らかにするために，単回帰分 析を行った。結果，女子では，創造的な発見が問 題に対する敏感さに，創造的態度の流暢性が物語

女子では，創造的態度と物語創作の総合得点聞 においても有意な相関，影響が見られ，客観的な 自己評価と他者評価が一致していることがわかっ た。

この要因として，児童期後期に形成されつつあ る客観的な概念が考えられた。男子では，客観的 な自己評価に揺れがあるために，物語創作という 創造の外化への過程の中で，自己のオリジナリテ ィーを出すことに対し，矛盾が見られていると言 える。女子では，概念形成がある程度構築され，

自己を客観的に理解し，なおかつ新たに整理され た抽象的な概念から生まれ出た創造性を，発揮で きていたと考えられた。

しかしながら，物語創作の総合評価得点を参照 すると，男女共に高い得点であり，ヴィゴツキー の定義する通り，児童期後期の子どもたちにとっ て，文学創造，つまり物語を創作するとしづ行為 が，もっとも創造力を発揮できる場所であること も，明確にできた。

一方で，創造的態度では「再定義J，物語創作「再 構成jの両方で，男女共に2分化されていた。課 題文からの解決すべき問題点を見つけられたとし ても，それらを用いて実際に新たな物語へ作り変 えるとしづ創造力について，育成されるべき傾向 があることが考えられる。

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