第Ⅳ部 国内実地調査結果の概要と考察
研究会では、全国のコミュニティ・ スクール活動の実際と成果 ・ 課題に迫るために、教育委員会 及び学校アンケート調査と共に、全国のコミュニティ・スクール指定校及び所管教育委員会を対象 に実地訪問調査(聞き取り調査)を実施した。その数は、一覧表に示した21か所である。
まず、調査対象の選定にあたっては、次の3つの視点を考慮した。
第一は、平成14年度から16年度にわたる文部科学省の「新しいタイプの学校運営の在り方に関 する実践研究」のその後の取り組みである。文部科学省は、教育改革国民会議の提案を受けた後、
関係法令の改正による制度化の前に、全国で7地区9校を実践校に指定して研究を進めた経緯があ る。これに7地区のうち5地区に出向いてその後の状況を調査した。これらの7地区9校の実践 は、その後に多様な展開がされているが、これについては、3つのタイプに分けられる。
① 教育委員会の明確な方針や推進体制等によって大きく進展し、全市的な取り組みまで進展してい るタイプである。学校運営協議会のしくみに、小中一貫教育のプログラムを取り入れ、中学校区 を単位とするネットワーク型コミュニティ・コミュニティを形成している事例などがある。
② 実践研究校の取り組みが突出したケースのため、その後の進展は大きくは望めなかったタイプで ある。
③ 実践研究校の取り組みを経て、長年にわたる関係機関との調整や試行錯誤を土台にして再スター トを切ったタイプである。
第二は、学校支援地域本部事業や類似的な学校支援活動、さらに放課後活動とリンクさせた取り 組みである。教育基本法の改正によって複数の重要な条文が加わったが、そのひとつが第13条の
「学校、家庭及び地域住民その他関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するととも に、相互の連携及び協力に努めるものとする」である。この条文に基づき、国においては、家庭・
地域の連携に関する制度や事業が創設された。それは「地域の意見等を学校運営に取り入れる制 度」と「地域が子どものための教育活動等を支援するしくみ」のふたつに大別される。
第三は、学校・地域の協働による創意工夫がみられる先進的な取り組みである。学校運営協議会 に関する法令が施行された後、学校運営協議会の運営形態は多様な展開をみせた。その多様な取り 組みの中から、本研究メンバーの専門分野や興味・関心に基づき全国の実践の中から特色ある事例 を選定した。特色ある実践の鍵は何であるかを検証することも、今後の制度の充実・発展には大切 な要素であると考えた。
第四は、東日本大震災との関連である。平成23年7月にとりまとめられた「学校運営の改善の在 り方等に関する調査研究協力者会議」では、推進目標のひとつに、被災地において「地域コミュニ ティの核」になる学校を創出することをあげている。そこで、東北地方のコミュニティ・スクール を多く調査対象として取り上げ、震災に関わる学校運営協議会の活動を探った。
実地調査にあたっては、指定の経緯、活動の特徴、成果と課題、条件などの調査項目を設定して 聞き取りを行った。また、各実地調査箇所のまとめにあたっては、各校のアンケート調査回答を踏 まえ、成果の要点の様式を作成してわかりやすく箇条書きにまとめた。
以下、実地調査の全容を俯瞰して、結果から得られた知見及び示唆を7項目にまとめる。
第一に、ネットワーク型コミュニティ・スクールの展開である。世田谷区、三鷹市、岡山市など 小中一貫教育とコミュニティ・スクールをセットにした取組はひとつの有効な策である。子どもの 発達段階の軸と学校・地域・家庭の軸を連携・協働させていくことは何よりも重要である。しか し、中学校区を単位とするネットワーク型コミュニティ・スクールについては、まだ、発展途上で 工夫の余地がある。
第二に、学校支援地域本部事業との連携による効果的な取り組みである。アンケート調査結果か
らは、下部組織に位置づける事例より連携している事例のほうが多かった。連携のひとつには、学 校支援地域本部のコーディネーターを学校運営協議会の委員として活用しているタイプがある。
下部組織にしている事例では、学校評価部会など他の分野とともに、学校運営協議会の下部組織 に位置づけていた。協議会ごとにタイプは異なるものの、学校運営協議会の協議機能と学校支援地 域本部の実働機能をより効果的に進めて行く連携・協力態勢がみられた。鈴鹿市は、学校支援地域 本部事業により学校のニーズに応じた協力の仕組みができたことが、平成23年度の市内全小中学 校へのコミュニティ・スクールの指定につながった代表例の一つである。
第三に、青少年健全育成組織など地域資源との協働の試みである。学校運営協議会の取り組み を、地域の青少年健全育成団体の活動とのリンクや公民館などの社会教育施設との連携といった地 域資源との協働の視点で行うことが活動の成果をあげる鍵のひとつのようである。例えば、岡山市 岡輝中学校区では、生徒指導の課題をより効果的に進めていくために、挨拶運動を地域づくりと いった校区全体の取り組みと関連させて行っている。これは、地域の健全育成組織とのコーディ ネートを誰が、どのように行うかポイントにはなるが活動の相乗効果を高める点では重要な示唆と いえる。
第四に、継続性と安定性のための工夫である。法律に基づく制度であるため指定された学校は、
それぞれの条件下で工夫している様子がみられた。特に、安定的な運営に関しては、予算や人材に 関する工夫も見られた。教育支援ボランティアが、N P O法人の設立によって、さらなる発展の基 礎を築いていた。また、津市立南が丘小学校や佐賀市立赤松小学校などでは、コミュニティファン ドを設立して、その原資を学校支援活動に生かしている。
第五に、教育委員会のサポートの在り方である。なかでも人的配置を求める声は大きい現実には 圧縮された教育予算の現状では加配は望めないため、それぞれに創意くふうにより特色を出してい る。例えば、三鷹市第四小学校では、学校と地域のパイプ役を務めることができる人材をコーディ ネーターとして配置し、地域担当の教諭と連携して地域人材を活用している。また、別の観点から の教育委員会の支援も大切である。例えば、岡山市教育委員会では、全校展開に向けて数値目標を 示して推進しているが、お互いの実践に関する経験交流や成果や課題に関する情報交換を通してレ ベルアップをめざしている。
第六は、制度の点検・評価の仕組みである。福岡県春日市教育委員会は、すべての小中学校にコ ミュニティ・スクールを指定している先進的な市の一つであるが、「コミュニティ・スクール進捗 状況評価票」を作成・実施している。評価票は、大きく学校・家庭・地域三者連携による共有文化 の醸成と学校経営・運営文化の醸成の2項目に分かれ、各7つの分野別に分けて、4段階のチェッ クリストから構成されている。制度の進展のためにはチェックを行い、改善に向けた次のアクショ ンを起こそうとする事例である。また、三鷹市教育委員会は外部人材を含めた検討委員会を設置し て、制度の今後の在り方を検討している。その報告書の中で「コミュニティ・スクールの特性を十 分に生かし、学園(中学校区単位)での教育が一体感をもち質的な向上を図るために、持っている 資源を有効に共有しつつ学校経営や教育課程、教員研修、地域連携などを共同で行う『フェデレー ション』の考え方などの導入なども考えられる」と述べられている。中学校区を単位とするネット ワーク型コミュニティ・スクールの今後の制度のあり方を考える際に、大変示唆に富む提言であ る。
第七は、東日本大震災に関わる運営協議会の役割である。岩手県岩泉町では復興計画のうち学校 移転などに関わる協議において、学校運営協議会が行政と地域をつなぐ重要な窓口になっている。
また、屋外の活動に放射能の影響が心配された福島県大玉村において、学校運営協議会の意見が屋
外での運動会開催の決定に重要な役割を果たした。このように災害時には、学校運営協議会が大き な働きをなす、頼もしい存在であることが明らかとなった。
なお、本調査研究では、文部科学省のコミュニティ・スクールに関する委嘱研究を受けながら指 定に至らなかった学校ないし教育委員会への訪問調査を行って指定阻害要因を探ることも意図して いたが、諸般の事情により実現には至らなかった。
以上が21か所の実地調査結果の概括的なまとめである。平成16年の関連法令の改正から間もな く8年が経過する。今後の施策の方向性に対して、貴重な知見と示唆を得ることができたものと考 える。
コミュニティ・スクールに関する実地調査一覧
章 実地調査教育委員会及び学校* 調査日 指定年度
1 岩手県岩泉町 平成23年11月1日〜2日 平成19年度 2 秋田県大館市立城西小学校 平成23年12月21日 平成19年度
3 福島県大玉村 平成23年12月12日 平成23年度
4 福島県三春町立三春小学校 平成23年12月12日 平成17年度 5 東京都足立区立五反野小学校 平成24年1月10日 平成17年度 6 東京都杉並区立和田中学校 平成24年2月21日 平成19年度 7 東京都世田谷区 平成24年1月17日 平成16年度 8 東京都三鷹市立第四小学校 平成24年1月27日 平成18年度 9 神奈川県川崎市立東小田小学校 平成23年12月12日 平成22年度 10 神奈川県横浜市立根岸中学校 平成23年12月2日 平成18年度 11 三重県津市立南が丘小学校 平成23年12月19日 平成17年度 12 三重県鈴鹿市 平成23年12月19日 平成23年度 13 京都府京都市 平成23年12月15日〜16日 平成16年度 14 鳥取県南部町 平成24年2月7日 平成18年度 15 広島県尾道市 平成23年12月17日 平成17年度 16 岡山県岡山市 平成23年12月16日 平成17年度 17 高知県中土佐町 平成24年1月23日 平成19年度 18 福岡県春日市 平成24年1月26日〜27日 平成17年度 19 佐賀県佐賀市 平成23年12月8日 平成19年度 20 熊本県宇土市 平成23年12月9日 平成18年度
21 北海道三笠市 平成24年3月2日 平成24年度(予定)
*学校名の場合は、当該校への調査訪問のみを行った。
第 1 章 岩手県岩泉町
第 1 節 岩泉町教育委員会
1
.学校運営協議会制度導入の経緯(
1
)岩泉町の概要岩手県北東部の北上山地に位置し、西は盛岡市に接し東は三陸海岸に達する。東西51km、南北
41kmあり、面積993km2は全国の町の中でも上位にあるが、その8割を山林が占める。基幹産業は
農林水産業である。また、全国的に知られた観光地である龍泉洞がある。
昭和31年と32年の1町5村の町村合併により現在の岩泉町が生まれ、今日に至る。昭和30年前 半に2万8千人あった人口は、林業や炭焼きといった主産業の衰退とともに減少の一途をたどり、
平成23年1月現在1万1千人に過ぎない。過去5年間の人口減少率は約9.3%に達する。昭和40年 には、小中学校合わせて61校 (本校と分校の計) を数えたが、平成23年度現在では小学校13校 (う ち分校1校)、中学校7校である。
(
2
)文科省の委託研究とコミュニティ・スクールの指定コミュニティ・スクール導入の発端は、町の政策の柱の一つに「教育」を掲げる町長が、コミュ ニティ・スクールの提唱者である金子郁容慶応義塾大学教授の講演を聴いたことに遡る。町長の意 向を受け、当時の教育長のもとで導入に向けて検討が行われ、平成17年と18年度に町の中心校で ある岩泉小学校と岩泉中学校が文部科学省の「コミュニティ・スクール推進事業」の委嘱研究を受 けた。この推進事業では、学校運営協議会を立ち上げ、年4回の会議を開催するとともに、各学校 長、教育長、次長、指導主事による「コミュニティ・スクール推進委員会」を毎月1回行い、各学 校と教育委員会の間の情報交換を進めた。
平成17年度の福島県三春町への訪問に続き、平成18年度には杉並区、三鷹市の先進地の視察を 行った。平成19年1月には、事業推進報告と講演会を行う報告会を開催した。そして平成19年4 月に、教育委員会は、岩泉小学校と岩泉中学校をコミュニティ・スクールに指定した。
(
3
)コミュニティ・スクール指定のねらいと拡大学校運営協議会を通じて、保護者や地域住民のニーズを学校運営に反映させるとともに、学校・
家庭・地域社会が一体となってよりよい教育の実現に取り組むことが、コミュニティ・スクール指 定のねらいである。しかし、岩泉町の場合、岩泉町ならではの切実な別の理由があった。それは、
地元出身の教職員は1割に満たず、しかも教職員の異動が早いということである。多くの教職員が 地元を余り知らないので、学校運営協議会を通じて、学校と保護者や地域住民との交流を深め、教 職員に地域をよく理解してもらい指導の充実につなげたいというものである。
教育委員会は、翌平成20年度には小本小学校及び小本中学校を指定し、また平成21年度は門小 学校及び小川中学校を指定した。これで、コミュニティ・スクールは6校(小本小学校は分校と合 わせて一つの学校運営協議会を設置)となった。この他の14校は、いずれも全校児童生徒30名以 下(ほとんどが複式学級を持つ)であり、もともと多くの地域の支えによって学校活動が成り立っ ていることから、これらの学校への指定を行う予定はない。
2
.学校運営協議会の組織と活動(
1
)学校運営協議会委員の任命と研修委員については、原則として学校長の推薦を受け、10名以内を教育委員会が任命する。協議会 委員に対しては、教育委員会から服務について周知を図る研修が行われている。また、先進地視察 の機会が教育委員会より設けられている。委員は無報酬である。
教職員は委員になることができると学校運営協議会規則では規定されているが、現在、委員と なっているのは校長のみである。副校長を中心に事務局が設けられている。
(
2
)「いわて型コミュニティ・スクール事業」と学校運営協議会の活動岩手県では、昭和40年から学校、家庭、住民等が総ぐるみで地域の教育課題に取り組む「教育 振興運動」が行われている。岩泉町の学校運営協議会制度導入の背景には、同町の教育振興運動の 蓄積がある。一方、県教育委員会では、この運動の発展形ともいえる、目標達成型の学校経営への 転換を家庭・地域と協働しながら実現する「いわて型コミュニティ・スクール事業」を平成19〜
22年度の間に推進した。学校と家庭・地域との協働に関わる主な取組は、1)「まなびフェスト」
(数値化された達成目標)の展開、2)家庭との協働の強化、3)体験学習に関する協力関係の構築 であった。
岩泉町におけるコミュニティ・スクールの活動の大きな特色の一つは、県の「いわて型コミュニ ティ・スクール事業」と国の学校運営協議会制度を一体的に進めたことにある。平成19年度にコ ミュニティ・スクールに指定された2校では、この事業を取り組む形で、一方それ以降に指定され た学校では、この事業の取り組みを土台にして学校運営協議会の活動を発展させていった。
県と国のコミュニティ・スクールの実際の活動内容はかなり重なる。もっとも、「いわて型」で は学校の運営方針を承認したり、教職員の任用に関して意見を述べることは行われないという点で 違いがある。岩泉町では、双方の融合を図った形で進める取組を「岩泉町型コミュニティ・スクー ル」 と呼んでいる。平成22年1月には、文科省や岩手県教育委員会の後援を得て、町の内外に発信 する「岩泉町コミュニティ・スクール推進フォーラム」を開催した。
(
3
)「学校支援地域本部事業」を取り込んだ態勢づくり岩泉町におけるコミュニティ・スクールのもう一つの特色は、平成20〜22年度に文科省の「学 校支援地域本部事業」(年間予算約140万円)を受けて、それを取り込んで進めたことにある。各 校の学校運営協議会会長が同事業によるコーディネーターとして週3日4時間程度勤め、学校環境 整備や登下校の見守り活動を中心に学校支援体制を確立していった。
教育委員会は、学校支援本部事業を進めた3年間で学校への協力の仕組みができたことが、学校 運営協議会のその後の活動にとっても重要であったと述べている。
(
4
)教育委員会の支援「いわて型コミュニティ・スクール事業」の指定を受けた学校に対して、平成22年度では1校当 たり10万円が県から補助金が交付されていた。6校もこれを受けていたが、平成22年度末で県の 事業は終了した。そのため、岩泉町教育委員会はコミュニティ・スクール6校の活動が途切れるこ とのないように、各校に同額の10万円の予算措置を行っている。その主な支出は、先進地視察経 費、消耗品費、広報誌等印刷代、年間の活動実践集作成費である。
現在、教育委員会は、教育長、次長、指導主事等の担当職員、コミュニティ・スクール6校の校 長で構成する「コミュニティ・スクール推進委員会」を年数回開催し、各校の活動の推進状況や取 り組みの検討を行っている。加えて年度末には、各校の活動の総括や委員の改選や体制等について 報告し意見交換を行う報告会を設け、報告会終了後は参加者による懇親会を開いている。
3
.教育委員会から見た成果と期待(
1
)成果教育委員会によると、成果の第一は、学校支援地域本部事業を合わせて実施することにより、学 校への支援体制ができあがったこと、つまり、地域が学校と一体となって子どもを守り育てる状況 が生まれたことである。また、これまで、学校への地域の関わりは保護者中心であったが、協議会 委員という形で地域住民が入ってくるようになったことで、学校への協力が得られる、あるいは地 域から見られているという意識が働き、学校経営に変化をもたらしている。さらに地域住民にとっ ては、学校行事等や学校支援活動などで学校に行く機会が増え、学校の話題が地域で出るようにな り、学校との距離が近くなった。
また、教育委員会職員にとっては、学校運営協議会委員から地域の話を聞きやすくなるなど、協 議会委員との情報交換が容易になり、教育委員会と地域との関係も深まったと感じている。
以上のように、コミュニティ・スクールは、学校、地域、行政の相互間に新たな良い変化をもた らせたといえる。
(
2
)今後の期待教育委員会の期待としては、学校の方針に対する学校運営協議会からの意見によって学校の姿勢 がもっと変わることにある。例えば、学力向上対策や体力向上対策については、保護者は遠慮して 口に出しづらい。そこで、学校運営協議会からの発言が期待されている。
ところで、岩泉町学校運営協議会規則では、コミュニティ・スクールの指定の期間は、3年間と 定められていた。しかし、平成22年3月に、「教育委員会が指定を取り消すまで」に改正された。
この規則改正は、コミュニティ・スクール6校の活動の継続を願う教育委員会の強い意思と期待の 現れである。
第 2 節 岩泉小学校及び岩泉中学校 1
.岩泉小学校岩泉小学校は町の中心部にある児童数194名、10学級(うち特別支援学級3)の学校である。先 述のように文科省の委嘱研究を経て、平成19年にコミュニティ・スクールに指定された。
(
1
)コミュニティ・スクールの組織コミュニティ・スクールとしての組織は、図の通りである。学校運営協議会は学識経験者、地域 住民、P TA役員、そして校長の10名により構成されている。事務局は、副校長、教務主任、生徒 指導主事の3名が充てられているが、別途、校長と事務局に研究主任及び保健主事を加えたメン バーが地域連携推進委員会を構成しており、そこで学校運営協議会に係わる諸々の事務作業が行わ れる。その下に、「学習アシスタント」「ゲストティーチャー」「見守り隊」「読書ボランティ」から
なる学校支援ボランティアが置かれている。学校支援ボランティアは無償である。学習アシスタン トは、調理や裁縫などの実習支援、校外活動の安全確保、交通安全指導などの補助を行う。学校支 援ボランティアの数は、延べで210名(平成20年度)である。
(
2
)学校運営協議会の協議岩泉小学校では、最近では学校運営協議会が年5回開催され、学校経営方針やコミュニティ・ス クール活動計画の承認、学校経営の中間評価結果の検討、「まなびフェスト」の成果と課題の検 討、視察研修の計画と報告、学校関係者評価、活動の反省と次年度の計画の検討などが計画的に行 われている。現在、岩泉小学校では児童の「あいさつ標語」を町内に掲げて、あいさつ運動を展開 しているが、その標語は、学校運営協議会の席で審査されたものである。
(
3
)コミュニティ・スクールの成果と課題学校が認識する代表的な成果は次の2点である。一つは、学校経営についての様々な意見や要望 が協議会委員から出され、それを生かした学校経営を推進する中で、学校には学校経営に対する緊 張感と責任感をもたらす効果があるとことである。もう一つは、学校と地域のつなぎ役として学校 運営協議会の存在は大きく、地域と学校の融合を果たしていることである。
これに対して課題として、校務分掌上の組織の複雑化は免れないということである。学校運営協 議会の活動のために教職員の仕事量が相当増えていることを窺い知ることができる。次いで、活動 の形骸化への懸念がある。現在のコミュニティ・スクールとしての活発な活動をどのように維持し てゆくのか。また、学校、保護者、地域住民、行政などの関係者の熱意をどう継続させるのか、コ ミュニティ・スクールの立ち上がりの段階から次の段階に入ったといえる。
2
.岩泉中学校岩泉小学校など3校を卒業した生徒が通う岩泉中学校は、5学級117名を擁する町内で最も大き い中学校である。コミュニティ・スクールの指定の経緯は先述の通りである。
(
1
)コミュニティ・スクールとしての活動主たる活動の第一は学校運営協議会の開催であり、年4回開催されている。協議内容は、岩泉小 学校とほぼ同様である。第二は、地域住民と生徒との協働の活動である。「ふれあい農園」や「ふ れあい花壇」に園芸や畑作のプロである地元の高齢者をゲストティーチャーとして招いて生徒との
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図 コミュニティ・スクールの組織
交流を図ったり、親子で奉仕作業を行う機会を設けている。第三は、地域住民の学校への支援活動 である。上記の園芸指導等のゲストティーチャー、図書ボランティア活動、校地の樹木選定や校庭 整備などの環境整備がある。第四に、学校評価アセスメント(年2回)の実施がある。
この他、行事や授業参観への学校運営協議会委員の招待・出席もコミュニティ・スクール活動の 一環として位置付けられている。
(
2
)コミュニティ・スクールの成果と課題最大の成果は、コミュニティ・スクールになってから、学校行事への地域住民の参加数が増えた ことである。この結果、地域との結びつきを学校が再認識することとなり、地域から支援を得られ る部分は、積極的にお願いしようとする意識が生まれてきている。
その一方、課題としては、まず、学校評価の定着がある。保護者と教職員による評価結果を踏ま え、学校運営協議会委員が意見を述べて学校改善を図る仕組みを確立し、充実したいと考えられて いる。次に、保護者等の要望に対する対応や改善の限度という問題がある。学校の実情を十分理解 してもらうことが必要となっている。さらに、委員の人選の難しさがある。任期は2年であるが、
小学校と候補者が重なる事態も生じている。ちなみに、岩泉町では複数の学校の協議会委員を兼務 することは認めていない。
第 3 節 小本小学校及び小本中学校 1
.小本小学校太平洋に注ぐ小本川の下流域を校区としており、本校は7学級(うち特別支援学級1)76名、分 校は3学級10名の学校である。平成23年3月11日の東日本大震災では、児童や教職員は避難して 無事であったが、本校の運動場、体育館と校舎1階部分が津波で浸水した。そのため本校児童は、
現在は車で約30分の岩泉小学校の3階に間借りして授業を受けている。高台にある分校は、震災 時に地域住民の避難場所となった。平成24年4月から本校は、分校内に新たに建設される仮設校 舎に、小本中学校と一緒に移転する予定である。
(
1
)コミュニティ・スクールの指定と活動の特徴小本地区は、町内の他の地域と同様に学校と地域の絆が強く、学校が核となりコミュニティが位 置づいており、郷土芸能も学校を中心に行われている。岩泉地区の2校に続き、平成20年4月に コミュニティ・スクールに指定され、「いわて型コミュニティ・スクール」の取組と同時進行と なった。学校運営協議会では毎年、教育計画の承認、「まなびフェスト」の確認、評価アンケート の検討及び意見提出などを行っているが、地域との連携については、学校運営協議会の名前の入っ たのぼりを「あいさつ通り」に並べて、挨拶運動を地域をあげて実施している。また、郷土学習で ある「鮭教育」に関連し漁協を紹介されるなど、協議会委員から様々な助言を得ている。
ところで、学校運営協議会は幹部教職員とのつながりはできるが、一般教職員にはなじみが薄い 存在となりがちである。そこで校長は、事務局以外の教職員については、年4回以上開催される学 校運営協議会に、議題に合わせて1回は必ず出席するよう指導している。地域の生の声に触れさせ るとともに、地域との関わり方を学ぶ機会と捉えているのである。
(
2
)震災後の学校運営協議会平成23年度は、4月中旬に仮校舎で新学期を開始した。しかし、学校運営協議会開催の準備もま まならないため、校長は避難先も含めて各協議会委員を訪ねて説明を行った。第1回の学校運営協 議会が行われたのは7月中旬で、仮設住宅の集会所であった。震災以降の経過が報告され、委員か らは児童の様子を気遣う質問が出された。第2回は10月下旬に同じく仮設住宅集会所で行われ、
学校経営に関するアンケート調査(児童、保護者)の結果、児童の保健状況、分校内に建設予定の 仮設校舎、行事をはじめとする今後の学校計画について協議が行われた。
なお、学校の移転など小本地域の復興計画については、教育委員会が保護者全員と意見交換を 行って、その後教育委員会の方針を示し、最終的に9月にまとめられた。その間、協議会委員から は3回にわたり意見聴取が行われた。その意味では、学校運営協議会は学校教育に関わる地域の窓 口的な役割を果たしているといえる。
(
3
)成果と課題成果は、コミュニティ・スクールになって地域住民の学校への関心が高まり、地域のみんなで教 育するという意識が強くなったことであり、他方で課題は協議会委員の確保・選出である。また、
小中連携も課題であるが、震災後一時期、小学校と中学校の職員室が、教育委員会の置かれている 町民会館に一緒に仮移転した。これにより教職員の交流が生まれて、小中連携の良い契機になった と捉えられている。分校内への小中の仮設校舎の完成を待って、小中合同の学校運営協議会の開催 も検討されている。
2
.小本中学校3学級38名の中学校で、生徒は全て小本小学校の本校と分校から入学してくる。小本川の河口近 くにあるために、震災では運動場が浸水し、屋根付きのプール棟は全壊、部室と倉庫が流出した。
校舎は約1 mの浸水に会い、使用不可能となっているため、現在、岩泉中学校に間借りしている。
震災当日、生徒は午前中で下校していた。学校にいた教職員は避難して無事であった。生徒も全員 無事であった。
(
1
)学校運営協議会の活動小本小学校と同じく平成20年4月にコミュニティ・スクールとしてスタートを切った。小本中 学校では、コミュニティ・スクールとして4つの中心となる活動を位置づけている。1)地域の活 動資源を活用した教育活動の展開(地区民運動会への参加、郷土芸能指導及び発表、鮭祭りへの参 加、新巻き鮭作り)、2)ボランティア活動を中心とした体験活動の展開(校地内整備、地域清 掃、助け合い演芸会参加)、3)学校運営協議会委員による学校評価と研修(学校関係者評価、体 育祭や文化祭の見学、先進校視察、立志式見学)、4)外部講師による「体験活動」「講話」の実施
(定置網見学)である。これにより、教職員の移動やP TAの交替があっても同じ活動ができルシス テムづくりを目指している。
昨年度新たに学校運営協議会の仕事として加わった、注目に値する学校運営協議会の仕事が、教 職員の勤務時間外(休業日や夜間等)における地震等の災害体制への協力である。この度の震災は 勤務時間内であり対応の必要はなかったが、学校運営協議会の会長と副会長が学校に駆けつける体 制ができている。
(
2
)震災後の学校運営協議会岩泉中学校に間借りしているため、平成23年度第1回の学校運営協議会は例年より遅れて、6月 上旬に仮設住宅内の集会所で開催された。学校運営方針や年間行事、そして「まなびフェスト」や コミュニティ・スクール事業計画が承認された。災害関係については、仮校舎における生徒の様子 と今後の仮設校舎建設の方向性について学校が説明が行われた。コミュニティ・スクールの活動に ついては、昨年度までの4つの活動を継続したいが、実現可能なのは「学校評価と研修」であるこ とが確認された。
(
3
)成果と課題平成22年度の学校運営協議会の総括では、成果として、活動を認めてもらえることによる生徒 の地域活動への意欲向上、学校を支持・支援するムードの高まりなどが、また課題としては、協議 会委員の多忙感の低減、委員と教職員の交流の機会の必要性、小学校との連携についての研修の必 要性などがあがっている。
この他、聞き取りでは、P TAも含めた学校内の評価では甘い評価になるが、外からの声を聞く ことにより学校が活性化するというように、学校運営協議会による関係者評価が評価されていた。
委員については、若い委員の参加への期待が聞かれた。
※調査訪問後仮設校舎の工事が早まり、小本小学校及び小本中学校は平成24年1月に移転を果たした。
第 4 節 門小学校及び小川中学校 1
.門小学校岩泉町中心部から盛岡方面に車で30分の距離にある5学級67名の小規模校である。平成20年12 月に学校支援地域本部事業が導入され、翌年4月にコミュニティ・スクールに指定された。
(
1
)コミュニティ・スクールの活動学校運営協議会は年5回開催され、学校経営計画の承認、「まなびフェスト」の自己評価結果
(児童、保護者、教職員)や経営計画に関する学校自己評価の検討、学校関係者評価などが協議さ れている。特徴としては、以前からの「教育振興運動」の名を残しながら、学校運営協議会の活動 に引き継ぎ、「門っ子サポーター」を展開していることである。「門っ子サポーター」では、P TA の実践組織とも一体となって、スクールガード(登下校の見守り)、草取り・スポーツ・環境整 備、図書・芸術文化、郷土芸能・産業の4つの学校支援活動が行われている。
(
2
)コミュニティ・スクールの成果と課題学校の取組に対して地域や保護者の理解が深まり、保護者や地域からの協力が増したことが最大 の成果である。具体的には、地域に向けての経営公約(学びフェスト)の発信により、保護者も協 力して、家庭学習、読書、挨拶などの充実が図れるようになった。また、子どもを介したつながり が深まり、学校への協力もお願いしやすくなった。コミュニティ・スクールに指定されているから こそ、協議会委員は学校に足を運ぶ。制度があるから地域と学校の人と人とのつながりが切れない で済み、また深まる。そして、学校評議員制度よりも学校運営協議会制度の方が、関係者の意識が より高まり効果があると考えられている。
しかし一方で、協議会委員の責任は重く、守秘義務もある。休暇を取って授業参観等に出席する
ことになる。会議も含めて全くのボランティアで足を運んでいる。このような条件の中で、協議会 委員の確保という課題が指摘されている。そして、課題の第二に、学校にとって、学校運営協議会 の開催とコミュニティ・スクールの活動推進には多くの労力を要するという問題がある。これに対 して門小学校では、児童が結果を出せば報われる部分であると受け止められている。
(
3
)活動継続の鍵学校も、保護者も、地域住民も学校運営協議会制度に慣れておらず、緊張しながら進めているの が実態であり、特に学校運営協議会による承認行為には、学校及び協議会委員にも緊張感や負担感 がある。また、協議会委員等の意見に対して、学校でできることには限界もある。学校では、この 制度をプラスに生かす努力をするが、無理をせず、できる範囲で取り組むことが重要であると考え ている。
2
.小川中学校門小学校の他、極小規模校を含む3小学校を校区に持つ4学級(うち特別支援学級1)61名の小 規模中学校である。小中5校での集合学習など、小中連携教育を推進している。
(
1
)指定までの経緯小川中学校は遠距離通学者も多く、広域化した中学校区(旧小川村の範囲)での地域との連携は 小学校と比べ低調で、中学生を持つ世帯が限られてくる中で中学校教育に対する無理解、無関心そ してクレームも寄せられるなど、地域からの協力をいかに得るかが課題となっていた。さらに、各 小学校をつなぎ広域での地域コミュニティの醸成を図る機能が中学校に求められていた。
このような状況の下、平成19年度に「いわて型コミュニティ・スクール」の取組を学校評議員
やP TAの組織を活用して進めていくうちに、目的達成型の学校経営を進めるためには小中連携と
地域連携を強化する必要があると考えられるようになり、地域と学校の課題を協働して取り組むた めに、学校運営協議会制度が有効と判断されたのである。なお、小中連携と地域連携を効果的に展 開するために、小川地区5校の校長会は協議会委員の選定について検討を行った。その結果、各小 学校に関係する地域住民が必ず委員に入ることとなった。そして、平成20年4月に門小学校と同時 に、コミュニティ・スクールに指定された。
(
2
)学校運営協議会活動の特徴学校運営協議会における学校経営方針等の承認、「まなびフェスト」や学校経営評価の自己評価 結果の検討、学校関係者評価としての改善意見の提出、学校行事や地域行事への参加など、基本的 な活動は、町内の他の学校運営協議会と大差ない。しかし、協議会委員の意見を踏まえて、細かな 改善が図られつつあるということは注目できる。例えば、「まなびフェスト」の生徒、教職員、保 護者が協働で取り組む部分を明確にしたり、「生徒の努力をほめる」ことを「まなびフェスト」に 盛り込んだ。次いで、協議会委員と保護者の協力により手作りのコミュニティ・スクールとしての 標語を入れた看板を校舎に設置した、さらに、生徒が地域行事に参加できるように土日の部活動や P TA行事の調整を図った、などである。
この他、教職員の任用に関して、学校に加えて学校運営協議会が要望することにより、生徒指導 加配という形ではあるが、音楽の常勤講師の配置が実現したこと、そして特別支援学級が新設され たことは特筆される。
(
3
)成果と課題コミュニティ・スクールに指定されたことにより、学校の考えをしっかり聞いてもらえる学校運 営協議会という場があることが、ありがたいことであると受け止められている。また、地域住民に よる校庭の草取りなどのボランティア活動が行われたり、これまでは余り見られなかった、地域か らの声かけや中学校への関心が生まれたことは、教職員の励みになっている。さらに、「まなび フェスト」の達成目標を教職員が強く意識するようになったことや、達成目標に向けて学校、家 庭、地域が協働する環境ができたことも重要な成果である。
小中との関係についても、学校運営協議会の協議内容等が委員を通じて小学校にも伝えられるよ うになり、小中連携の方向性も考えられるまでになった。また、中学校からも地域に積極的に出向 くようになった。中学生は、地域住民から挨拶や地域行事への参加を評価されるようになった。以 上のように、懸案であった中学校と地域との関係は好転してきている。これに対して、協議会委員 が仕事の関係で、学校運営協議会や授業参観等の行事に出席できないことがあり、協議会委員の活 動時間の確保が課題となっている。
<主要参考文献>
1)岩泉町教育委員会『岩泉町コミュニティ・スクール推進フォーラム』2010年1月 2)岩泉町教育委員会『平成23年度 いわいずみの教育』2011年6月
(屋敷 和佳)
[調査対象校に見られた成果の要点]
1.学校と地域が情報を共用し、
1
−A.特色ある学校づくりが進んだ
1
−O.地域と連携した取組が組織的に行えるようになる 2.会議で協議や意見具申を行い、
2
−I.学校関係者評価が効果的に行われるようになった2
−J.学校と地域・家庭が情報を共有できた
2
−L.地域が学校に協力的になった2
−S.保護者や地域からの苦情が減った3.校長が作成した方針等を承認し、
3
−F.教職員の意識改革が進んだ
3
−R.学校に対する保護者や地域の理解が深まった3
−T.保護者・地域に学校支援活動が活発になった4.学校運営の透明性が増して、
4
−L.地域が学校に協力的になった
4
−T.保護者・地域に学校支援活動が活発になった第 2 章 秋田県大館市立城西小学校
第 1 節 学校運営協議会制度導入の経緯
秋 田 県 大 館 市 は、 秋 田 県 北 東 部 に 位 置 す る 人 口79,517人( 平 成24年1月1日 現 在 )、 面 積
913.70km2の都市で、小学校19校、中学校10校を設置している。コミュニティ・スクールに指定さ
れたのは、城西小学校のみである(平成19年)。また、市では、平成24年度より市内すべての小・
中学校で学校支援地域本部事業を開始する予定である。
1
.コミュニティ・スクール指定前の状況城西小学校は昭和33年に開校し、児童数322名、14学級を抱える標準規模の学校である。平成 15年、城西児童センターを併設したオープンスペース型の新校舎が完成し、オープンスペースを 利用して地域人材の活用による学習活動を多く展開してきた。PTA活動は、一人一役運動を進め、
平成19年11月には日本PTA全国協議会会長表彰を受けたほど活動が活発で、学校の様々な活動を
支える力になっている。このような保護者や地域住民の学校に対する強い思いがあったものの、
「地域と共に歩む」「参画」という視点から、教職員、保護者、地域住民が具体的に学校に対してど う活動していけばよいのか漠然としていた。
2
.コミュニティ・スクール指定(導入)の経緯コミュニティ・スクール指定のきっかけは、平成16年頃、秋田県教育委員会から「コミュニ ティ・スクールが始まるので県として1つくらいは…」という話が大館市教育委員会にあり、これ を受けた市教育委員会が城西小学校を推薦したのであった。
市教委が城西小学校を推薦した理由は、城西小学校の新校舎改築に関連している。新校舎は、
「地域に開かれた学校」をコンセプトに改築された。その際、学校に対して熱い思いを持っている 地域住民たちが「校舎改築促進期成同盟会」を組織し校舎改築に尽力した。このような学校に協力 的な素地がある地域であるため、コミュニティ・スクールを導入にあまり抵抗ないだろうという期 待があった。その後、平成17〜18年にかけて研究指定を受け、平成19年4月、大館市教育委員会 よりコミュニティ・スクール指定を受ける運びとなった。
3
.コミュニティ・スクール設置への具体的なプロセス平成17〜18年度にかけて、「保護者や地域住民が学校運営に参画することを通じて、地域に開か
れた信頼される学校づくり」をコンセプトに、コミュニティ・スクール研究事業を実施した。その 際、「学校運営に関する基本的な方針の承認及び運営に関する意見の申し出」の観点より次の2点 を仮説として立てた。
① 学校と保護者、地域が連携して教育活動を企画・実施することにより、保護者や地域住民が参 画できる組織の在り方や運営上の方策が明らかになるだろう。
② 教職員、保護者、地域住民の学校評価と学校運営協議会による評価の整合性を図ることによ り、地域の声を反映させた学校運営に資することができるだろう。
このような仮説を設け、研究事業を行ない学校運営協議会設置の準備を進めていたところ、以下 の課題が明らかになり、その課題に対する対応が必要になった。
課題1:学校と地域を結ぶターミナル的な役割を果たす組織(地域委員会)の必要性
対応策:地域委員会を立ち上げるために、公募及び推薦により委員を選出する。
(学校からは校長、教頭、コミュニティ主任)
課題2:地域のニーズを生かした活動をするための学校組織の見直し
対応策:指導部を再構築し、3プロジェクトチームに編成しペアで企画運営をする。
プロジェクトチームと地域委員会の連携を図る。
課題3:学校運営協議会の位置付け
対応策:学校の課題に対応するための運営協議会と地域委員会の連携を図る。
課題4:委員、教職員、保護者、地域住民への制度趣旨の説明
対応策: 情報発信(コムニタ、学校報、経営要覧、ポスターの配付、ホームページの開
設)、研修会等の開催(PTA諸行事及び研修会、夏休み研修会、各学年部親子 学習会)
第 2 節 城西小学校学校運営協議会の組織と運営 1
.概要城西小学校学校運営協議会は、委員12名(平成23年度)で構成されている。内訳は地域代表
(元P TA会長、民生児童委員など)3名、保護者代表2名、行政及び有識者4名、教職員3名であ る。委員の推薦は、校長が教頭や前協議会会長と相談した上で行っている。
任期は2年としており、再任は妨げてはいない。ただし、委員の在任期間は6年を超えることは できないとしている。このことは後述するように人選に苦慮する要因になる。
2
.活動内容(
1
)活動状況主な活動は、会合、学校行事(入学式、運動会、城西ふれあいフェスティバル、卒業式など)へ の出席である。また、運営協議会の実働部隊として「地域委員会」が毎月1 ~ 2回開催され、活動 の具体的な企画・運営を行っている。会議の進行は、前半は教頭が担当し後半は運営協議会会長が 行う。記録はコミュニティ主任(教職員)が担当している。
会議の回数は、平成21年度では年5回であったが、平成23年度は年4回となっている。具体的 に議事内容は、第1回(4月)「教育委員会より運営協議会委員の任命状の交付、校長による学校 経営説明とその承認」、第2回(9月)「授業参観、校長による前期学校評価の報告、前期学校評価 について運営協議会としての評価及び意見の集約」、第3回(12月)「授業参観、学校や教育委員 会等への意見具申」、第4回(2月)「今年度の学校評価、来年度の学校運営方針の協議など」であ る。
(
2
)学校運営協議会から学校・教育委員会への意見や提案協議会から学校や教育委員会に対して行われた意見や提案は、「学校運営の基本的な方針に対す るもの」「学校運営に関する事項に対するもの」「学校の職員の採用その他の任用に関する事項に対 するもの」の3つに分類することができる。
<学校運営の基本的な方針に対するもの>
○学校教育目標「かなえよう夢 育てよう やさしさ」を具現化するための教育活動を推進
○ 地域の学校として保幼中高との連携をはじめ各地域団体と協力し、地域の教育力を生かした学 校づくり
○学校運営協議会や地域委員会での様子を教職員に伝え、同一歩調での学校運営
○学校評価項目の内容をより精選し、分かりやすく具体的な表現の提示
<学校運営に関する事項に対するもの>
○健康づくりや食生活の定着を図ってほしい(早寝・早起き・朝ごはん)
○「聞いて、考え、つなげる力」を授業を通して育ててほしい
○教師自身、聞き上手になってほしい
○学校内外での子どもたちの挨拶をよくしてほしい
<学校の職員の採用その他の任用に関する事項に対するもの>
○コミュニティ・スクールとしての学校づくりを推進する担当教諭の増置(平成21年度)
以上のような提案を受け、学校や教育委員会は以下のような取組を行った。
表1 平成21年度の学校運営協議会の運営状況
回 議題等
1 今年度の学校運営方針及び計画についての協議・承認 2 前期前半の運営についての協議
学校評価についての理解・協議
3 前期学校評価及び後期運営についての協議、(授業参観)
4 後期前半の運営の在り方についての協議(授業参観)
教育委員会への意見具申についての協議
5 今年度の学校運営及び学校評価についての協議(授業参観)
来年度の学校運営及び方針についての協議・承認
(※ 城西小学校提供資料より引用)
<学校運営に関すること>
○ コミュニケーション力の育成を目指し教育活動全般を通して「聞いて、考え、つなげる力」の 育成
○ P TA活動のテーマを「早寝・早起き・朝ごはん」とし、共通理解と共通実践を図りながらの 健康づくり
○学校評価指標の精選(20項目<平成21年度>→10項目<平成22年度>)
<教育活動に関すること>
○ 毎月5日の朝にP TA生活部員とガード隊によるあいさつ運動や毎週木曜日のガード隊の下校 指導の実施。
○高校生との交流授業、夏休み・冬休み学習会への高校生の参加
○夢をかなえるための講演会の実施
<教職員の任用に関すること>
○地元在住の教職員の加配(※教員割合が近隣の小学校より高い(約95%))
(
3
)情報公開城西小学校学校運営協議会では、設置に至るプロセスの中で「委員、教職員、保護者、地域住民 への制度趣旨の説明」という課題に直面した。その対応策として、情報発信を強化することとなっ た。具体的には、学校ホームページによる情報公開、経営計画,コミュニティ・スクール理解促進 ポスターの全世帯配付と地域配付及び回覧、地域向けお便り「COMUNITA(コムニタ)」や学校報
「城西の風」の発行を行った。その他に、P TA諸行事及び研修会、夏休み研修会などイベントを開 催してコミュニティ・スクールの理解を図っている。また、印刷物に関する費用の一部は、学校支 援地域本部事業より捻出している。
(
4
)学校評価大館市では、「PDCAサイクル」に「C (Check)」を加えた「PDCACサイクル」を学校評価の評 価システムとして導入し、城西小学校では保護者・地域住民の教育参画の実現をねらいとして学校 運営協議会による学校関係者評価を実施している。
具体的なシステムは、校内に組織されているシンクタンク(学校評価委員会)が評価計画の立 案、提案、評価の実施・集計・分析・検討、公表を行う。そして、シンクタンクが半期ごとに作成 した評価書を学校が運営協議会に提出し、この評価書を基に協議会内で学校経営上の課題や重点を 協議する。また、協議会ではシンクタンクが作成した評価書に加えて、協議会独自に教師、児童、
保護者を対象にヒアリング調査を行う、例えば、平成23年度の前期は、教師2名、児童2名、保 護者2名に対してそれぞれ7〜8分程度(合計15分程度)のヒアリング調査を行った。
このような調査及び協議結果を踏まえて、協議会が学校評価書を作成している。この評価結果 図 城西小学校コミュニティ・スクールポスター
は、保護者には紙面で報告し、加えてホームページ上でも公開している。
第 3 節 城西小コミュニティ・スクールの成果
校長と教頭は、学校運営協議会の成果を、学校現場や地域住民それぞれ立場から以下のようにと らえている。
<学校現場>
○城西小学校独自の地域による教育活動への参画の方策が明確になった。
○地域住民からの要望を学校行事や授業に取り入れるようになった。
○地域人材や地域素材を生かした学年経営の推進が可能になった。
○学習のねらいに基づきながら専門的な知識をもった人材を活用した授業が可能になった。
○運動会、クラブ活動、放課後・長期休業日学習会・環境整備等にも地域の人が積極的に参加。
○学校評価に基づいた授業改善。
○教職員が、「共働」「共育」「共感」を意識しながら、保護者及び地域住民と教育活動を実施。
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※城西小学校提供資料より引用
<教育委員会>
○学校運営協議会での指導助言
○学校運営協議員の人選への助言
<園児・児童・生徒側>
○登下校時の地域住民へのあいさつ。
○地区運動会等の地域行事への参加率の向上。
○異年齢との交流の機会が増えたことによるコミュニケーション力の育成。
<保護者側>
○ P TA一人一役運動をはじめ、学習ボランティアや学校行事等で学校を訪れる回数や人数が増 え、教育活動への参画意識が高まった。
○子どもの健康面に対する関心が高まり、PTAテーマに対して共通実践を図るようになった。
○ ベルマーク運動、エコ活動(プルタブ・古本・ペットボトルキャップ回収)、愛購運動等への 協力体制が高まった。
<地域住民>
○地域から学校への情報(お礼、要望、苦情等)がスムーズに届くようになった。
○ガード隊の活動による地域住民の防犯意識の向上。
○ 地域委員会メンバーのコーディネートにより、各種団体への依頼が迅速になり、地域住民の学 校への協力体制の構築。
○ 地域委員会が、運営協議会やP TA活動を支える存在として機能し、保護者及び地域住民の教 育活動への参画を推進している。
また、協議会運営の予算獲得にも大きな成果があった。具体的には、学校支援地域本部事業の予 算が3年間で終了することにに対する危機感から、地域委員会を中心に企業との協賛など予算獲得 に向けた検討が行われた。そのような状況のなか、地域のネットワークを生かした情報収集を進め たところ、ある地方銀行の記念事業による「地域委員会」活動資金を獲得したのである。
第 4 節 城西小学校学校運営協議会の課題と今後について 1
.委員の人選運営協議会の抱える課題の一つは「委員の人選」である。現在、学校の教育活動への地域住民の 参画意識は高まりつつあるが、委員を引き受ける人材はやや少ない。平成23年度の委員改選の 際、新しく地域住民を委員に推薦し、在任期間(最大6年間)が残り少ない前任者には地域委員会 などの運営に回ってもらうことによって協議会委員の育成を試みている。
今後は、委員の人材不足によって、在任期間が残っている元協議会委員の再登板なども考えられ ているものの、学校の教育活動への地域住民の参画意識の啓発と同時に委員の育成を行って課題解 消に努めている。
2
.コーディネーターの経費保護者及び地域住民の学校への参画意識を推進するためには、コーディネーターの存在が不可欠 である。平成23年度は、教育委員会への要望によって、非常勤職員としてコーディネーターが配 置された。
しかし平成24年度より大館市では、学校支援地域本部事業を中学校区で実施する予定である。
そのため、1校あたりの予算が減少し、それに伴ってコーディネーターの配置が数校で1名になる 可能性がある。この事態に対して、学校運営協議会は教育委員会に対してコーディネーターの確保 について意見具申を行っている。
<引用・参考文献>
1)平成23年度 大館市立城西小学校学校経営計画
2)平成22年度コミュニティ・スクール推進協議会 実践発表資料
3)大館市立城西小学校提供資料
※インタビューは、平成23年12月22日、大館市立城西小学校校長室にて校長、教頭、コミュニティ主任に対し て、高橋興(青森中央学院大学教授)とともに行った。
(佐久間 邦友)
[調査対象校に見られた成果の要点]
1.学校と地域が情報を共用し、
1
−K.
学校が活性化した
1
−L.
地域が学校に協力的になった
1
−O.
地域と連携した取組が組織的に行えるようになった1
−T.
保護者・地域に学校支援活動が活発になった2.会議で協議や意見具申を行い、
2
−B.
教育課程の改善・充実が図られた2
−H.
適切な教員人事がなされた
2
−O.
地域と連携した取組が組織的に行えるようになった 3.校長が作成した方針等を承認し、3 −A.特色ある学校づくりが進んだ 3 −B.教育課程の改善・充実が図られた 3 −K.学校が活性化した
4.学校運営の透明性が増して、
4
−F.
教職員の意識改革が進んだ4
−K.
学校が活性化した
4
−O.
地域と連携した取組が組織的に行えるようになった4
−R.
学校に対する保護者や地域の理解が深まった第 3 章 福島県大玉村
第 1 節 学校運営協議会制度導入の経緯
福島県大玉村は、福島県の中央部よりやや北部に位置し、面積は79.46km2、人口は、平成23年
12月31日現在8,645人である。ただし、東日本大震災に伴う原発事故により富岡町の住民が多く避
難している。
所管学校は幼稚園が2園、小学校が2校、中学校1校である。幼稚園は小学校と併設されており 小学校校長が幼稚園長を兼任している。また大玉村では、平成23年度より村内の全校がコミュニ ティ・スクールに指定され、「おおたま学園」と名付けた幼・小・中一貫教育を行っている。その ため、協議会は各学校に置かれ各校に委員がいるのではなく、「おおたま学園」として1つの協議 会が置かれている。
1
.コミュニティ・スクール導入(指定)の経緯(
1
)学校運営の視点からコミュニティ・スクール導入のきっかけは教育長の提案によるものである。教育長は、学校経営 を全面的に校長に委ねている現状においては、校長の人事異動等によって学校の目標、学校経営方 針が大きく左右され、それによって児童・生徒、その保護者たちが振り回される現状を危惧し解決 方法を模索していた。その結果、地域住民参画の人の異動に左右されない学校運営、支援システム が必要との認識に至った。
そのような状況下において、コミュニティ・スクールに関する情報等を入手した。そこで教育長 は、各学校をコミュニティ・スクールに指定することで、これまでのような人によって学校運営が 左右される状態ではなく、大玉村の学校として一定のレベルを維持しながら学校運営ができる仕組 みとして、コミュニティ・スクールを選択したのである。
また担当職員によれば、コミュニティ・スクール導入の意図を以下のように語っている。
学校ってどうしてもいらっしゃった校長先生が「こんな学校づくりをしたい」と言ったとき に、校長先生の目指すところによって左右される部分がどうしても出てくると思うのですが、そ れがあまりにも極端だと子どもたちも迷ってしまいますし、保護者の方々も「前はこういうやり かただったのに、なんで校長先生変わったとたんに」ということで、結局、学校不信まではいか ないですけども、信頼関係が強かったものが弱まる。あるいは崩れてしまうということもありう るわけなので、そういったことにならない土台というか、それを保障するためのしくみとしてコ ミュニティ・スクールを使ってやってみようと。
(
2
)地域づくり大玉村にとってコミュニティ・スクールを導入することは、ただ単に学校運営という視点以外に も地域づくりも関連している。担当職員は以下のように語る。
冷静に振り返ってみると、じゃあ東北だから、福島県だから、地域のつながりがいい意味で 残っていて、それが続いているかというと、そうでもないんですよね。けっこうテレビとかいろ
んな通信手段もあるので、ある意味都会と変わらないような感覚も田舎にいたって当然持ってし まうので。例えば「べつに隣近所とそんなに積極的に付き合いしなくたって、やっていける わ」っていうのが現実だと思うんです。
このように大玉村にとってコミュニティ・スクール事業は、単なる学校運営支援だけではなく、
将来の地域づくりでもある。
2
.大玉村教育ビジョン(大玉村総合教育基本計画)大玉村教育ビジョン(大玉村総合教育基本計画)とは、改正教育基本法第17条を受け、「第4次 大玉村総合振興計画」との整合性を図りながら、大玉村教育委員会が作成した大玉村の教育が目指 すべき基本的かつ総合的な構想である。
基本目標は『「夢を育てる教育」おおたまに学び、世界とつながる人間育成』とし「スクール・
コミュニティ」を推進するものである。具体的には以下のとおりである。
【目指す人間像】
◯共に支え合い、自尊心をもった人 ◯未来を切り拓く力をもった人
◯あきらめない強い心と健康な体をもった人 ◯共生の心をもった人
◯社会性・市民性をもった人
以上のような「目指す人間像」に掲げた人づくりのため、「家庭・地域・学校の協働のもと『みんなで支 え、みんなで育て、みんなが育つ』おおたまの教育」を推進するため、以下の施策の方針を定めた。
①人・自然・地域とつながり、互いに響き合い、高め合う響育
②みんなで支え、みんなで育て、みんなが育つ共育
③心身共に健康で、たくましく、未来を切り拓く強育
④ふるさとをし、伝統や文化を継承し、さらに新しい文化を創る郷育
大玉村におけるコミュニティ・スクール事業は、「①人・自然・地域とつながり、互いに響き合 い、高め合う響育」「②みんなで支え、みんなで育て、みんなが育つ共育」の1つとして位置づけ られている。
3
.おおたま学園これまで大玉村では、「大玉村幼・小・中連接連絡協議会」を組織し、幼稚園入園から中学校卒
業までの11年間を1つの教育に繋げる取組を行なってきた。平成23年度よりコミュニティ・ス
クール事業を開始するにあたり、学校間のより一層の繋がりを図るため、5つの幼稚園・小学校・
中学校を1つの大きな学校のように見たて、幼・小・中一貫教育『おおたま学園』とした。
『おおたま学園』の構想として、子どもたちや教職員が積極的に交流し、合同行事などにも取り 組むことをかかげており、これを具現化するために、現在徐々に合同行事などを開催している。ま た今後は保育所や高等学校とも連携した事業などを展開しようと計画している。
また、『おおたま学園』の幼・小・中一貫教育は、施設一体型の一貫教育ではない。ただし幼稚 園と小学校は同じ敷地に施設が併設されており、小学校校長が幼稚園園長を兼任している。