若年者 若年者

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若年者 若年者

若年者 若年者の の の早期離職問題 の 早期離職問題 早期離職問題 早期離職問題に に に に対 対 対 対する する する するコーチング コーチング コーチングの コーチング の の有効性 の 有効性 有効性 有効性

~企業側からのコミュニケーションに焦点を当てて~

09E408

吉市沙織

(2)

第 第 第

第1 1 1 1章 章 章 章 はじめに はじめに はじめに はじめに

第 第 第

第2 2 2 2章 章 章 章 若年者 若年者 若年者の 若年者 の の の早期離職 早期離職 早期離職 早期離職の の の の実態 実態 実態 実態

1 11

1....若年者若年者若年者若年者とはとはとはとは 2

22

2....若年者若年者若年者若年者のののの早期離職早期離職早期離職早期離職のののの現状現状現状現状

(1)「七五三現象」とは

(2)若年者の早期離職とその問題点 3

33

3....若年者若年者若年者若年者のののの早期離職早期離職早期離職早期離職のののの原因原因原因原因

(1)若年者が離職する理由

(2)若年者が仕事に対して不満を感じる理由

(3)若年者が重要視している社内の人間関係とは

第 第 第

第3 3 3 3章 章 章 章 コーチング コーチング コーチングの コーチング の の必要性 の 必要性 必要性 必要性

1 11

1....コーチングコーチングコーチングコーチングののの仕組の仕組仕組仕組みみみみ

(1)コーチングの定義・目的 (2)コーチングの3原則 (3)コーチングの技術

2 22

2....コーチングコーチングコーチングコーチングををを提案を提案提案提案するするするする理由理由理由理由

第 第 第

第4 4 4 4章 章 章 章 事例 事例 事例から 事例 から から から見 見 見 見る る る社内 る 社内 社内 社内コーチング コーチング コーチング コーチングの の の の有効性 有効性 有効性 有効性

1 11

1....ITITITIT関連機器会社社長関連機器会社社長関連機器会社社長関連機器会社社長のののの事例事例事例事例 (1)コーチング導入の理由・背景

(2)プレコーチングによる事前のプランニング (3)ビジョンの設定

(4)実践結果 2

22

2....機械部品工場機械部品工場機械部品工場機械部品工場のののの事例事例事例事例

(1)コーチング導入の背景・事前のプランニング (2)3つのコーチング・プログラムの実践結果

3 33

3....若年者若年者若年者若年者がががが長長長長くくく働く働働働きききき続続続続けるためけるためけるためのけるためののコーチングのコーチングコーチングコーチング (1)若年者の早期離職原因の着眼点

(2)若年者の早期離職問題の障壁

(3)社内のコミュニケーションに対するコーチングの有効性

(3)

第 第 第

第5 5 5 5章 章 章 章 おわりに おわりに おわりに おわりに

1 11

1....各章各章各章各章のののの要約要約要約要約 (1)第二章 (2)第三章 (3)第四章

2 22

2....結論結論結論結論 3

33

3....今後今後今後今後のののの展望展望展望展望ととと課題と課題課題課題

(4)

1

第 第 第

第1 1 1 1章 章 章 章 はじめに はじめに はじめに はじめに

「七五三現象」という言葉をご存じだろうか。これは、子どもの成長を祝う「七五三」

のことではない。この「七五三現象」の「七五三」という数字は、就職してから3年以内 に仕事を辞めてしまう人の割合である。もう少し詳しく説明すると、中学卒後で7割、高 校卒後で5割および大学卒後で3割の新規学卒就職者1が、3年以内に仕事を辞めているこ とを表している。例えば、筆者は、数か月前、苦労をして就職活動を終えた経験があるの だが、この数値を見て、新規学卒就職者の離職率の高さに愕然とした。なぜなら、苦労の 末に勝ち取った「内定」を自ら捨ててしまうようなものであるからだ。筆者は、「この会社 で一生働き続けることができるかどうか」を意識して就職活動をしていたため、このよう な現実は全く理解しがたいことであった。しかし、現実にこれから社会人1年目となるこ ともあり、就職してからたった3年間という短期間で離職することには、どのような背景 と原因があるかに関心を持つようになった。また、就職活動で様々な企業の方とお会いし たことで、人間関係が社内環境を変えるのではないかと感じていたことから、若年者の早 期離職の問題も、社内の人間関係を見直すことで解決できるのではないかと思うようにな った。そこで、本稿では、新規学卒就職者の早期離職問題を緩和するための方法として、「コ ーチング」を提案し、その有効性を検討していく。

本稿の目的は、若年者の早期離職問題の原因を明らかにした上で、コーチングの技術が、

若年者の早期離職理由の中でも、特に、「社内のコミュニケーション不足」に効果的であり、

若年者の早期離職問題を緩和するために有効な手段であると示すことである。以下では、

4つの章を設定した。

第2章では、まず、「若年者の離職問題」を考察していくために、本稿での「若年者」を 定義した後、若年者の早期離職の現状を、「七五三現象」と呼ばれる現象を基に説明する。

次に、厚生労働省が日本国全域を調査対象として行った調査から、若年者が早期離職する 理由を3つに分類し、更に、労働政策研究・研修機構が行った「職場環境に起因する離職 理由に対する不満足度調査」の結果を用いて、若年者の早期離職に最も大きな影響を与え ている理由が「社内のコミュニケーション」に起因することを突き詰めていく。

第3章では、コーチングの必要性や可能性を示すために、まず、コーチングの定義やコ ーチングを行う際に意識すべき3原則およびコーチングで多用される7つの技術を示す。

次に、第2章で考察した若年者の早期離職の理由の中でも、若年者の不満足度が高かった 要因を「若年者と上司との関係性」であると捉え、「社内のコミュニケーション」の中でも、

特に、「若年者と上司」の関係に焦点を当ててコーチングを用いることを提案する。

第4章では、まず、IT 関連機器会社の社長にコーチングを導入した事例およびコーチン グを導入したことで生産効率が向上した機械部品工場の事例を示し、社内にコーチングを

() 新規学卒就職者とは、学業の過程を終えてから、初めて就職した者のことである。詳 細は、本稿3ページを参照せよ。

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2

導入することの効果を明らかにする。次に、熊谷(2011)や労働政策研究・研修機構が行 った研究結果を比較分析することを通して、「社内のコミュニケーション不足」を解消する ために解決すべき2つの課題を示した上で、それらの課題にコーチングを導入することで、

コーチングが「社内のコミュニケーション不足」を解消できるかどうかを検討していく。

以上の考察を踏まえて、第5章「おわりに」では、本論の要約や結論および今後の展望 と課題を述べることで、本稿の結びとする。

このような4つの章から、「若年者の早期離職問題に対するコーチングの有効性~企業側 からのコミュニケーションに焦点を当てて~」というテーマに対して、厚生労働省などが 行った雇用に関する調査を基に分析し、抽出した「若年者の早期離職問題」の原因の1つ である「社内のコミュニケーション不足」を「コーチングを用いることで解消することで きること」および「社内のコミュニケーション不足を緩和させていくために、コーチング を導入することが有効であること」を明らかにする。

(6)

3

第 第 第

第2 2 2 2章 章 章 章 若年者 若年者 若年者 若年者の の の の早期離職 早期離職 早期離職 早期離職の の の実態 の 実態 実態 実態

第2章では、若年者の離職率の推移や離職理由を見ていくことで、現在問題視されてい る若者の早期離職の実態を明らかにしていく。まず、第1節では、「若年者の離職問題」を 考察していくために、辞書などを用いて、本稿での「若年者」を定義する。次に、第2節 では、若年者の早期離職の現状を、「七五三現象」と呼ばれる現象を基にして説明する。最 後に、第3節では、若年者が早期離職してしまう理由を厚生労働省が日本国全域を調査対 象として行った調査を基に明らかにし、若年者の早期離職の原因とそれを軽減させる方法 を検討していく。

以上の考察を通して、若年者の早期離職の特徴とその理由を明確にする。

1 1 1

1. . . .若年者 若年者 若年者とは 若年者 とは とは とは

本節では、本稿のテーマである「若年者の早期離職問題」を考察していく前段階として、

「若年者」の意味を、2つの辞書を用いて吟味することを通して、本稿で用いる「若年者」

を定義する。

まず、新村(2008)によると、若年者とは、「年が若いもの、年が若く物事に未熟なもの」

のことである(1298ページ)。次に、松村(1995)によると、若年者とは、「年の若い者、

年が若く物事に未熟な者」のことである。これらのことから、若年者とは、「年が若く、物 事に未熟な者」のことであると言える。

次に、本稿での「若年者」を定義する。本稿では、「若年者の離職問題」に焦点を当てて 考察していくため、「年が若く、物事に未熟な者」の中でも、新規学卒就職者に限定する。

新規学卒就職者とは、中学校、高校および大学などの学業の課程を終えてから、初めて就 職した者に絞ることにする。したがって、本稿では「中学校、高校および大学などの学業 の課程を終えてから、初めて就職した者」を、本稿での「若年者」とし、彼らを「新規学 卒就職者」と呼ぶ。

以上のように、本稿では、若年者を新規学卒就職者と定義する。次の「2.若年者の早 期離職の現状」では、若年者の早期離職の実態とその原因を、本格的に考察していく。

2 2 2

2. . . .若年者 若年者 若年者の 若年者 の の の早期離職 早期離職 早期離職 早期離職の の の の現状 現状 現状 現状

本節では、若年者の早期離職の割合や原因を「(1)『七五三現象』とは」および「(2)若 年者の早期離職とその問題点」の2つに分けて説明していく。まず、「(1)『七五三現象』

とは」では、若年者の早期離職の状況を表した言葉である「七五三現象」を、厚生労働省 の「若者雇用関連データ」に掲載されている若年者の離職率を基に解説する。次に、「(2) 若年者の早期離職とその問題点」では、「(1)『七五三現象』とは」で紹介した「七五三現

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象」と呼ばれる現象を説明する際に用いられている、「就職後3年の期間」を参考に、本稿 での「若年者の早期離職」を定義した後、早期離職の問題点を、雇用消失率()や「団塊の 世代()」の退職などから引き起こされる「労働力の減少」という観点から検討していく。

本節を通して、約20年前から現在までの若年者の早期離職率や若年者の早期離職がもたら す問題点が明らかになる。

((

((1111)「)「)「)「七五三現象七五三現象七五三現象」七五三現象」」とは」とはとはとは

ここでは、まず、1987(昭和62)年から2008(平成20)年までの間の新規学卒就職者 の離職率の傾向を捉えることで、若年者の早期離職の現状を示している「七五三現象」を 解説し、次に、「七五三現象」という枠組を用いて、若年者の早期離職の実態を述べる。こ れらのことから、若年者の早期離職が20年以上に渡って継続していることを明らかにする。

若年者の早期離職の現状を表す言葉に「七五三現象」というものがある。これは、子ど もの成長を祝う「七五三()」のことではなく、就職してから3 年以内に、「中学卒で7割、

高校卒で5割、大学卒で3割」が、最初に勤めた会社を辞めてしまう現象のことを指す。

下記の図1は、厚生労働省が、雇用保険被保険者の記録を基に、中学卒、高校卒および大 学卒それぞれの新規学卒就職者が就職してから3年以内に離職した人の割合を算出し、公 表しているデータを参考にして作成した、新規学卒就職者の離職率のグラフである。折れ 線グラフの一番上から、青色の折れ線が中学卒、その下の赤色の折れ線が高校卒、一番下 の緑色の折れ線が大学卒を示している。この各学歴は、新規に被保険者資格を取得した年 月日と生年月日により区分している。グラフの縦軸は、離職率の割合を、横軸は算出され た年度を表している。

なぜ今回、厚生労働省が公表しているこのデータを使用したかと言うと、日本の公的機 関である厚生労働省が全国民のデータを公正に収集し算出した結果であるため、より正確 に若年者の早期離職の現状を示していると思ったからである。図1に示しているのは、厚 生労働省ホームページ上で掲載されていた昭和62年から平成20年までのデータである。

今回この期間のデータを掲載した理由は2つある。1つ目は、現在厚生労働省が公表して いるのが、この昭和62年から平成20年であったからである。2つ目は、この21年間のデ ータを掲載することで、約 20 年間にわたって「七五三現象」が続いていること、そして、

なかなか解決することができない労働問題であることが分かると思ったからである。今回 は、一年毎の離職率を示すことよりも、継続して若年者の離職率が高い水準であることを 示したかったため、三年毎のデータを掲載している。

() 雇用消失率とは、前年末雇用者数に対する1年間で消失した雇用者数の割合のことで ある(厚生労働省 2011,10月3日閲覧)。

() 団塊の世代とは、1947年から1949年のベビー・ブーム時代に生まれた世代のことで ある(新村 2008,1769ページ)。

() 七五三とは、男子は3歳と5歳、女子は3歳と7歳に当る年の11月15日に氏神へ参 詣する行事のことである(新村 2008,1245ページ)。

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図1の新規学卒就職者の離職率を中学卒、高校卒および大学卒に分けて見ていくと、中 学卒の離職率は、昭和62年で64.5%、平成2年で67%、平成5年で66.7%、平成8年で

71%、平成11年で68.5%、平成14年で72.1%、平成17年で66.7%および平成20年で

64.7%であり、単純に平均しても約67.7%である。

次に、高校卒の離職率について見ていく。高校卒の離職率は、昭和62年で46.2%、平成

2年で45.1%、平成5年で40.3%、平成8年で48.1%、平成11年で48.2%、平成14年で

48.5%、平成17年で47.9%および平成20年で37.6%であり、単純に平均しても約45.2%

である。

最後に、大学卒の離職率を見ていく。大学卒の離職率は、昭和62年で28.4%、平成2年 で36.5%、平成5年で24.3%、平成8年で33.6%、平成11年で34.3%、平成14年で34.7%、

平成17年で35.9%および平成20年で30%であり、単純に平均しても約32.2%である。

図1から分かることは、過去21年間に渡って、平均すると、中学卒および高校卒は平成 14年以降、大学卒は平成17年以降、離職率が減少傾向にあるものの、中学卒は約67.7%、

高校卒は約45.2%および大学卒は約32.2%程度が、新規学卒就職後3年以内に離職してい ることである。また、この数値が、今回調べることのできた21年間という長い期間に渡っ て継続していることから、「七五三現象」と表現される「中学卒で3割、高校卒で5割、大

(出所)厚生労働省,「若者雇用関連データ」,

『http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/dl/data_1.pdf』

(2012年10月3日閲覧)。

(図1)新規学卒就職者の離職率

64.5 67 66.7 71 68.5 72.1

66.7 64.7

46.2 45.1 40.3

48.1 48.2 48.5 47.9 37.6

28.4 26.5 24.3

33.6 34.3 34.7 35.9 30

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0

(%

新規学卒就職者 新規学卒就職者 新規学卒就職者

新規学卒就職者の の の の離職率 離職率 離職率 離職率

中学卒 高校卒 大学卒

(3月卒)

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学卒で3割」の新規学卒就職者の早期離職は、21年以上続いていることが分かる。以上が、

図1から分かることである。

更に、厚生労働省の『雇用動向調査』(2011)に掲載されているデータによると、今回調 べることができた平成5年から平成20年の間の常用雇用者()の離職率は、平均で約15.4%

となっており、新規学卒就職者の離職率と比べると、新規学卒就職者の方が、中学卒では

52.3%、高校卒では 29.8%および大学卒では16.8%だけ、それぞれの平均値より低いこと

が分かる。つまり、若干集計期間が違うものの、新規学卒就職者は、常用雇用者の平均離

職率の約 15.4%を大きく上回っており、21 年もの間継続して、「中学卒で3割、高校卒で

5割、大学卒で3割」の割合を保っていることから、1980年代から現在に至るまで、「七五 三現象」は継続して起こっている労働問題の1つであることが分かる。

以上のように、「七五三現象」とは、新規学卒就職者のうち、中学卒で7割、高校卒で5 割および大学卒で3割が、就職先を3年以内に退職する現象のことである。次節では、こ の「七五三現象」を基に、本稿で用いる「若年者の早期離職」を定義し、なぜ若年者の早 期離職が問題となるのかを考察していく。

((

((2222))))若年者若年者若年者の若年者ののの早期離職早期離職早期離職早期離職とそのとそのとそのとその問題点問題点問題点問題点

ここでは、本稿で用いる「若年者の早期離職」を定義し、その後、「若年者の早期離職」

が進むことの問題点を、労働力人口や労働時間の側面から、日本全体の労働力の増減を示 すことを通して、検討していく。このことから、日本の若年者の早期離職が問題となる理 由を明示する。

まず、若年者の早期離職とは、若年者が学校を卒業して数年の間に、初めて就職した会 社を辞めてしまうことである。本稿では、初めて就職した会社を3年以内に辞職すること を「若年者の早期離職」と定義する。このように定義した理由は、若年者の離職問題とし てしばしば取り沙汰されている「七五三現象」で、就職から離職までの期間の基準を3年 としていることから、就職してから3年間という期間が目安になると考えたためである。

次に、なぜ若年者の早期離職が問題であるかを説明する。若年者の早期離職が問題視さ れている主な理由は、若年者の早期離職が進めば、日本全体の労働力の減少に更に拍車を かけてしまうことが懸念されるからである。「労働力」とは、「労働力人口×労働時間」で 算出される(松谷 2007,2ページ)。現在、日本では、労働力を算出する式の各項である

「労働力人口」と「労働時間」の両方が減少している。例えば、「労働力人口」の減少の要

() 常用雇用者とは、次のいずれかに該当する労働者のことである(厚生労働省 2011,

10月3日閲覧)。

・期間を定めず雇用されている者。

・1か月を超える期間を定めて雇われている者。

・1か月以内の期間を定めて雇われている者又は日々雇われている者で、前2か月に それぞれ18日以上雇われた者。

ここでは、「雇用動向調査」に掲載されている主な用語の定義を用いている。

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因として、少子化()や「団塊の世代」の定年などの問題が挙げられる。上記の「(1)『七五 三減少』とは」の図1で示した期間に照らし合わせて、昭和62 年と平成20年の労働力人 口を調べたところ、昭和62年の労働力人口は、15歳から24歳で765万人である。割合で 示すと、昭和62年の総労働人口の6,084万人に対して、15歳から24歳は12.5%となって いる。それに対して、平成20年の労働力人口は、15歳から24歳で589万人である。割合 で示すと、平成20年の総労働力人口の6,674万人に対して、15歳から24歳は8.82%とな っている。今回、15歳から24歳までの労働力人口を示した理由は、15歳から24歳の年齢 が、本項の上記で定義した、「若年者の早期離職」が指す「初めて就職した会社を3年以内 に辞職すること」にほぼ該当する年齢であると考えたからである。このように、昭和62年 と平成20年の15歳から24歳までの労働力人口を比べると、総労働力人口に占める15歳 から24歳までの労働力人口が、昭和62年から平成20年の間に3.68%減少していること が分かる。また、総務省統計局によると、「団塊の世代」が、2010 年には 60 歳に、2015 年には65歳になることで、15歳以上全体の労働力人口が、1年間に約60万人程度減少す ると言われている。更に、現在、諸外国と比べて労働時間が長いことや過労死()などの労 働問題から、日本全体の労働時間が短縮傾向にあり、この傾向は、今後も続くと考えられ ている(松谷 2007,2ページ)。つまり、現在の日本では、「労働力人口」と「労働時間」

の両方が減少傾向にあり、今後も「労働力」の減少が考えられるため、若年者の早期離職 問題は、一過性の問題ではなく、長期的な労働問題であると言える。

以上のように、本稿での若年者の早期離職とは、初めて就職した会社を3年以内に辞職 することと定義され、労働力人口や労働時間の推移から日本全体の現在と未来の労働力を 考慮すると、若年者の早期離職は、近い将来、日本経済の停滞を招く労働問題であること が明らかになった。次節では、若年者の早期離職の原因を探るべく、厚生労働省が行った

「若年者雇用実態調査結果」を基に若年者の早期離職の理由を考察していく。

3 3 3

3. . . .若年者 若年者 若年者の 若年者 の の の早期離職 早期離職 早期離職 早期離職の の の の原因 原因 原因 原因

本節では、厚生労働省の「若年者雇用実態調査結果」から、若年者が離職していく原因 を明らかにし、今後若年者の早期離職問題を改善していくための着眼点を、「(1)若年者が 離職する理由」、「(2)若年者が仕事に対して不満を感じる理由」および「(3)若年者が重要 視している社内の人間関係とは」の3つに分けて考察していく。まず、「(1)若年者が離職 する理由」では、厚生労働省が日本国全域を調査対象として行った調査結果を基に、若年 者が初めて就職した会社を辞職した理由を拾い上げていく。次に、「(2)若年者が仕事に対

() 少子化とは、出生率が低下し、子どもの数が減少し続けることである(新村 2008,

1377ページ)。

() 過労死とは、過度な仕事が原因の労働者の死亡のことである(新村 2008,611ペー ジ)。

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して不満を感じる理由」では、独立行政法人の労働政策研究・研修機構が行った「若年者 の離職理由と職場定着に関する調査」に掲載されていた、職場環境に起因する離職理由に 対する不満足度調査を基に、実際に働く人が、どのような点に不満を感じているのかを浮 き彫りにしていく。最後に、「(3)若年者が重要視している社内の人間関係とは」では、「(2) 若年者が仕事に対して不満を感じる理由」で示した「職場環境に起因する離職理由に対す る不満足度調査」で若年者の不満足度が高かった上位3項目を、「(1)若年者が離職する理 由」で分類した「入社後に感じたミスマッチ」の枠組を用いて、その共通点を浮き彫りに することで、若年者が仕事を続けていく上で重要だと考えている社内の人間関係を明らか にする。

以上の考察を通して、若年者の早期離職の理由を探っていく。

((

((1111))))若年者若年者若年者が若年者ががが離職離職離職離職するするする理由する理由理由理由

ここでは、厚生労働省が行った若年者の雇用実態に関する調査から分かる、若年者が初 めて就職した会社を離職した理由の共通点を絞り、グループ化する。このことから、若年 者の離職理由を「労働者のやむを得ない理由」、「労働条件のミスマッチ」および「入社後 に感じたミスマッチ」の3つに分類できることを示す。

下記の図2は、厚生労働省が平成23(2011)年に行った「若年者雇用実態調査結果」に 掲載されていた、若年労働者が初めて就職した会社を離職した理由(複数回答3つまで)

をグラフにまとめたもので、縦軸に離職の理由を、横軸に割合を示している。青色の棒グ ラフで示している割合が、若年労働者が始めて就職した会社を離職した理由の回答率であ る。

まず、この調査の概要を説明する。この調査の目的は、主要産業の事業所における入職 者・離職者等の属性や入職・離職に関する事情等を調査し、労働力の移動の実態を明らか にすることである。この調査の範囲は、一部地域を除いた(どの地域を除いたかは不詳)

日本国全域であり、調査対象となったのは、日本標準産業分類に基づく 16 大産業() に属 している事業所の中から、産業・事業所規模別に層化して無作為に抽出した5人以上の常 用労働者を雇用する14,604事業所である。この調査の若年労働者とは、15歳から34歳ま での労働者を指す。調査の期間は、平成23年10月1日から11月30日である。

今回、このデータを使用した理由は、この調査が、厚生労働省によって日本国全域を対 象に行われたものであり、約 29.2%の無効回答があるものの、産業・事業所規模別に層化 して無作為に抽出した14,604もの事業所からのデータを集めていることから、より日本国

() 16大産業とは、鉱業・採石業・砂利採取業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・

水道業、情報通信業、運輸業・郵便業、卸売業・小売業、金融業・保険業、不動産業・

物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サー ビス業・娯楽業(その他の生活関連サービス業のうち家事サービス業を除く)、教育・学 習支援業、医療・福祉、複合サービス事業およびサービス業(他に分類されないもの)(外 国公務を除く)を指す(厚生労働省 2011,10月3日閲覧)。

(12)

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民の声の実態に近い回答を得ることができると思ったからである。

次に、図2のデータを、回答率の高い順に見ていくと、「仕事が自分に合わない」が24.5%、

「労働条件・休日・休暇の条件がよくなかった」が23.8%、「賃金の条件がよくなかった」

が 20.9%、「人間関係がよくなかった」が20.1%、「会社に将来性がない」が 14.2%、「ノ

ルマや責任が重過ぎた」が12.7%、「結婚、子育てのため」が10.3%、「自分の技能・能力 が活かせられなかった」が10.2%、「健康上の理由」が8.7%、「不安定な雇用状態が嫌だっ

た」が7.0%、「倒産、整理解雇又は希望退職に応じるため」が4.7%、「1つの会社に長く

勤務する気がなかったため」が4.1%、「雇用期間の満了・雇止め」が 3.6%、「責任のある 仕事を任されたかった」が2.4%、「家業をつぐ又は手伝うため」が 2.1%、「介護、看護の

ため」が0.9%、「独立して事業を始めるため」が0.9%、「その他」が18.9%および「不明」

が5.7%である。

図2から分かることは2つある。まず、1つ目は、「結婚、子育てのため(10.3%)」、「健 康上の理由(8.7%)」、「倒産、整理解雇又は希望退職に応じるため(4.7%)」、「1つの会社

(出所)厚生労働省,「雇用動向調査」,

『http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/12-2/kekka.html#link01』(2012年10月5日閲覧)。

(図2)若年労働者が始めて就職した会社を離職した理由

5.7%

18.9%

0.9%

0.9%

2.1%

2.4%

3.6%

4.1%

4.7%

7.0%

8.7%

10.2%

10.3%

12.7%

14.2%

20.1%

20.9%

23.8%

24.5%

0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0%

不明 その他 独立して事業を始めるため

介護、看護のため 家業をつぐ又は手伝うため 責任のある仕事を任されたかった 雇用期間の満了・雇止め 1つの会社に長く勤務する気がなかったため 倒産、整理解雇又は希望退職に応じるため 不安定な雇用状態が嫌だった 健康上の理由 自分の技能・能力が活かせられなかった

結婚、子育てのため ノルマや責任が重過ぎた 会社に将来性がない 人間関係がよくなかった 賃金の条件がよくなかった 労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった 仕事が自分に合わない

若年労働者 若年労働者 若年労働者

若年労働者がが初初めてめてめてめて就職就職就職した就職したしたした会社会社会社会社をを離職離職離職離職したしたしたした理由理由理由理由((((複数回答複数回答複数回答複数回答33つまでつまでつまで)つまで))

回答割合

(13)

10

に長く勤務する気がなかったため(4.1%)」、「雇用期間の満了、雇止め(3.6%)」、「家業を つぐ又は手伝うため(2.1%)」、「介護、看護のため(0.9%)」および「独立して事業を始め るため(0.9%)」のように、離職者のやむを得ない理由により早期離職をする場合があるこ とである。これらの理由は、労働者と会社との関係性の問題ではなく、労働者自身の個人 的な事情による問題であるため、今挙げた8つの理由以外の理由とは分類して、「労働者の やむを得ない理由」としておく。次に、2つ目は、図2から分かることの最初に挙げた「労 働者のやむを得ない理由」、「その他」および「不明」を除いた9つの若年者の早期離職理 由を、「労働条件のミスマッチ」および「入社後に感じたミスマッチ」の2つに分類するこ とができる点である。この2つに分類した理由は、「労働者のやむを得ない理由」以外の離 職原因を、企業側が原因である場合と、労働者が原因である場合に分けることができると 考えたからである。つまり、「労働条件のミスマッチ」が企業側に原因がある離職理由であ り、「入社後に感じたミスマッチ」が労働者側に原因がある離職理由であると考えられるの である。まず、図2の理由のうち、「労働条件のミスマッチ」に分類できるのは、以下の3 項目である。それは、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった(23.8%)」、「賃金の条 件がよくなかった(20.9%)」および「不安定な雇用状態が嫌だった(7.0%)」である。次 に、「入社後に感じたミスマッチ」に分類できるのは、以下の6項目である。それは、「仕 事が自分に合わない(24.5%)」、「人間関係がよくなかった(20.1%)」、「会社に将来性がな い(14.2%)」、「ノルマや責任が重すぎた(12.7%)」、「自分の技能・能力が活かせられなか った(10.2%)」および「責任のある仕事を任されたかった(2.4%)」である。このように、

図2の若年労働者が初めて就職した会社を離職した理由を見ていくと、若年者の離職理由 を、「労働者のやむを得ない理由」、「労働条件のミスマッチ」および「入社後に感じたミス マッチ」の3つに分類することができる。

以上のように、若年者の早期離職には様々な理由があるが、その原因をグループ化して いくと、「労働者のやむを得ない理由」、「労働条件のミスマッチ」および「入社後に感じた ミスマッチ」の3つに分類することができる。次の「(2)若年者が仕事に対して不満を感じ る理由」では、労働政策研究・研修機構が行った「職場環境に起因する離職理由に対する 不満足度調査」の結果を、本項で分類した若年者の離職原因の3つのグループに照らし合 わせて見ていくことで、更に仕事に対する不満が高まる理由を分析していく。

((

((2222))))若年者若年者若年者が若年者ががが仕事仕事仕事仕事ににに対に対対して対してしてして不満不満不満不満ををを感を感感じる感じるじるじる理由理由理由理由

ここでは、労働政策研究・研修機構が2006年に行った「若年者の離職理由と職場定着に 関する調査」の中から「職場環境に起因する離職理由に対する不満足度」を、「(1)若年者 が離職する理由」で3つに分類した早期離職理由の各項目に照らし合わせて見ていくこと で、若年者が仕事に対する不満足を感じる局面を明らかにしていく。このことから、更に、

若年者が離職する原因を探っていく。

下記の図3は、独立行政法人の労働政策研究・研修機構が2006年に行った「若年者の離

(14)

11

職理由と職場定着に関する調査」に掲載されていた、職場環境に起因する各離職理由に対 する不満足度を示したもので、縦軸に離職理由を、横軸に各項目に対する不満足度の割合 を示している。青色の棒グラフで示している割合が、職場環境に起因する離職理由に対し て、そのような状況で仕事に不満を感じる若年者の割合である。例えば、図3の職場環境 に起因する離職理由の「職場の人間関係が良好でない」は不満足度が 92.0%となっている が、これは、「職場の人間関係が良好でない」場合に、仕事に対して不満足だと感じる人が 92.0%いるということである。このように、今回の調査は、項目ごとに若年者が仕事に対し て不満に感じるかどうかを回答してもらったものである。

まず、この調査の概要を説明する。この調査は、若年者の職場定着支援上における課題 を明らかにすることを目的として行われたアンケート調査である。調査の範囲は、全国の 公共職業安定所(ヤングハローワークなど含む)32所に来所した求職者(35歳未満)を調 査対象に、アンケート調査を依頼したもので、有効回答数は 3,477 人である。図3には、

この調査の中から、前職が正社員であった 2,024 人の回答のみを掲載している。今回非正 社員の回答を掲載しなかった理由は2つある。1つ目は、閲覧した調査結果に正社員と非 正社員の回答を合計した結果が掲載されていなかったからである。2つ目は、本稿では、

雇用期間に定めのない正社員を対象に考察しているため、雇用期間を定められている場合 のある非正社員の情報を除くべきだと考えたからである。なお、本調査の調査期間は、2006 年9月25日から11月6日までとなっており、全国の公共職業安定所(ヤングハローワー ク等含む)でアンケート用紙を配布し、郵送により回答を回収した。

(出所)労働政策研究・研修機構,「若年者の離職理由と職場定着に関する調査」,

『 http://www.jil.go.jp/institute/research/2007/documents/036/036-01.pdf』(2012年12月24日閲覧)。

(図3)職場環境に起因する離職理由に対する不満足度

73.5 73.8 75.1 75.3 77.1

78.8 82.9 82.9 85.0

92.0

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0 仕事の量が多すぎる

仕事の責任が重すぎる 賃金が低い 休暇が取得しづらい 求められるノルマ・成果が厳しい ストレスが大きい やりたい仕事ができない 人を育てる雰囲気がない 相談できる上司・同僚がいない 職場の人間関係が良好でない

職場環境 職場環境 職場環境

職場環境に に に に起因 起因 起因 起因する する する する離職理由 離職理由 離職理由に 離職理由 に に に対 対 対する 対 する する する不満足度 不満足度 不満足度 不満足度

不満足度回答率

(15)

12

今回、このデータを使用した理由は、このアンケートの対象者が、全国の公共職業安定 所(ヤングハローワーク等含む)32所に来所した求職者(35歳未満)であり、前職または 現在の仕事に対する不満足理由を調査したものであることから、実際に仕事をして感じた ことが結果に反映されていると考えたからである。

次に、図3のデータを不満足度回答率の高い順に見ていくと、「職場の人間関係が良好で

ない」が92.0%、「相談できる上司・同僚がいない」が85.0%、「人を育てる雰囲気がない」

が 82.9%、「やりたい仕事ができない」が82.9%、「ストレスが大きい」が 78.8%、「求め

られるノルマ・成果が厳しい」が77.1%、「休暇が取得しづらい」が75.3%、「賃金が低い」

が 75.1%、「仕事の責任が重すぎる」が 73.8%および「仕事の量が多すぎる」が 73.5%で

ある。

図3から分かることは3つある。まず、1つめは、仕事に不満を感じる理由は各自1つ ではないことである。このように考えた理由は、今回掲載している10項目全ての不満足度

が 70%を超えており、回答者が複数の項目に対して不満に感じると回答していることが分

かるからである。このアンケートは、複数回答方式ではなく、各項目に対してそれぞれ不 満足だと感じるかどうかを回答してもらったものであるが、この結果から、仕事に不満を 持つ理由は、1人に1つではないことが分かる。次に、2つ目は、先に(1)で若年者の早期 離職理由を分類したものに照らし合わせてみると、「労働条件のミスマッチ」よりも「入社 後に感じたミスマッチ」の割合の方が、不満足度が高いことである。図3の項目は、「職場 環境に起因する離職理由」であるため、(1)で分類した3つのグループのうち、「労働者の やむを得ない理由」は含まれていない。そこで、今回は、図3の項目を「労働条件のミス マッチ」および「入社後に感じたミスマッチ」の2つに分類していく。実際に、図3の項 目を分類していくと、「労働条件のミスマッチ」に分類されるのは、「休暇が取得しづらい

(75.3%)」および「賃金が低い(75.1%)」であり、平均すると75.2%である。次に、「入 社後に感じたミスマッチ」に分類されるのは、「職場の人間関係が良好でない(92.0%)」、

「相談できる上司・同僚がいない(85.0%)」、「人を育てる雰囲気がない(82.9%)」、「やり たい仕事ができない(82.9%)」、「ストレスが大きい(78.8%)」、「求められるノルマ・成果 が厳しい(77.1%)」、「仕事の責任が重すぎる(73.8%)」および「仕事の量が多すぎる

(73.5%)」であり、平均すると80.75%となる。このように、「労働条件のミスマッチ」よ りも「入社後に感じたミスマッチ」の割合の方が、若年者の仕事に対する不満足度が5.55%

高いことが分かる。この差は、百分率で見ると、若干の差であるように感じるが、「職場環 境に起因する離職理由に対する不満足度調査」の項目で、最も若年者の不満足度が高かっ た「職場の人間関係が良好でない(92.0%)」と、最も若年者の不満足度が低かった「仕事 の量が多すぎる(73.5%)」の差がわずか18.5%であることから、今回グループ分けをした

「労働条件のミスマッチ」と「入社後に感じたミスマッチ」の平均割合の差である「5.55%」

は、今回の調査結果では、回答結果に大きな違いがあると解釈できる。最後に、3つ目は、

図2から分かることの2つ目で述べた「入社後に感じたミスマッチ」の中でも、上位3つ

(16)

13

は、「社内の人間関係」に関する項目である点である。上位3項目とは、「職場の人間関係 が良好でない(92.0%)」、「相談できる上司・同僚がいない(85.0%)」および「人を育てる 雰囲気がない(82.9%)」である。このことから、職場の人間関係は、一見、業務に直接的 な関わりがないように見えるが、若年者が仕事を続けていく上では、予想されたこと以上 に、重要だと思っていることが分かる。

以上のように、労働政策研究・研修機構が2006年に行った調査によると、仕事に対して 不満を持っている若年者にとって、その原因はそれぞれ複数あることが分かった。また、

この調査の結果を「(1)若年者が離職する理由」で分類した3つのグループのうち、「労働 条件のミスマッチ」および「入社後に感じたミスマッチ」に照らし合わせて分析すると、「労 働条件のミスマッチ」よりも、「入社後に感じたミスマッチ」の方が不満足に感じると回答 した人の割合が5.55%大きいことが分かった。更に、「入社後に感じたミスマッチ」の項目 の中でも上位3項目を占めるのは、「社内の人間関係」に関する項目であった。これらのこ とから、次の「(3)若年者が重要視している社内の人間関係とは」では、ここまでで明らか になった若年者の離職理由の中でも「(1)若年者が離職する理由」で分類した「入社後に感 じたミスマッチ」の枠組を用いて、若年者の離職に特に大きく関わっている「社内での人 間関係」に焦点を当てた上で、更に、社内のどの人間関係に着目するかを、引き続き図3 の結果を用いて考察していく。

((

((3333))))若年者若年者若年者が若年者ががが重要視重要視重要視重要視しているしているしている社内している社内社内社内ののの人間関係の人間関係人間関係人間関係とはとはとはとは

ここでは、若年者の早期離職問題を緩和するために、上記「(2)若年者が仕事に対し て不満を感じる理由」で述べた、「職場環境に起因する離職理由に対する不満足度」の 検討結果から、「社内の人間関係」に関する項目に注目して、若年者とその上司との関 係に着目して考察することの必要性を説明する。これらを通して、なぜ筆者が、若年者 の早期離職問題を緩和させるために、若年者とその上司とのコミュニケーションに着目 して論じていくことにしたかを明らかにする。

なぜ今回、筆者が若年者の離職問題の軽減を図るために、「社内の人間関係」に注目した かを説明する。ここで、もう一度、図3の労働政策研究・研修機構が行った「職場環境に 起因する離職理由に対する不満足度」の結果を見てみると、若年者が不満足だと回答した 職場環境に起因する離職理由のうち、「(1)若年者が離職する理由」で「入社後に感じたミ スマッチ」に分類された離職理由の中でも、社内の人間関係に関する項目は、「職場の人間 関係が良好でない」で92.0%、「相談できる上司・同僚がいない」で85.0%および「人を育 てる雰囲気がない」で82.9%となっており、「職場環境に起因する離職理由に対する不満足 度」の上位3項目を占めている。この調査の離職理由 10 項目の不満足度の平均回答率は 79%であり、今述べた3項目の不満足度は、平均回答率を上回っている。つまり、社内の 人間関係が良好でないと、若年者の仕事に対する不満足度は高くなることが分かる。その ため、若年者の早期離職問題を緩和するためには、上司や筆者自身が思っている以上に、

(17)

14

社内の人間関係を見直すことが必要であると考えた。

また、その中でも、「相談できる上司・同僚がいない」および「人を育てる雰囲気がない」

の回答率が高いことから、若年者とその上司との関係が良好でないことが、若年者の早期 離職に大きく関係していることが分かる。このことから、本稿では、社内の人間関係の中 でも、若年者と上司とのコミュニケーションの改善に的を絞って考察していくこととする。

以上のことから、若年者を対象に行った「職場環境に起因する離職理由に対する不満足 度」を分析することで、「若年者と上司との関係性」が仕事に対する満足度に大きく関わっ ていることが分かった。そこで、次章では、コーチングという手法を用いて、若年者とそ の上司との間のコミュニケーションを向上させるために必要な考え方や行動を検討してい く。

第 第 第

第3 3 3 3章 章 章 章 コーチング コーチング コーチング コーチングの の の必要性 の 必要性 必要性 必要性

第3章では、コーチングの手法を説明した上で、若年者と上司間のコミュニケーション を向上させるための方法として、コーチングを導入することの理由を述べていく。まず、

第1節では、鈴木(2009)および市瀬(2012)を参考に、コーチングの定義や狙い、手法 などを説明する。次に、第2節では、第2章で明らかにした若年者の早期離職原因である

「若年者と上司の関係性」を改善するために、なぜ、コーチングを導入することが必要で あるかを述べ、その後、コーチングを若年者の「上司」に導入することの意義を検討する。

これらを通して、コーチングの定義や前提、スキルなどを把握した上で、なぜ筆者が若 年者の早期離職問題にコーチングを導入しようと考えたかを明確にする。

1 1 1

1. . . .コーチング コーチング コーチングの コーチング の の の仕組 仕組 仕組 仕組み み み み

本節では、コーチングの概念や手法を、「(1)コーチングの定義・目的」、「(2) コーチン グの3原則」および「(3)コーチングの技術」の3つに分けて説明し、コーチングの役割や プロセスを解説していく。まず、「(1)コーチングの定義・目的」では、鈴木(2009)およ び市瀬(2012)を参考に、本稿で用いるコーチングの定義を明確にする。今回、この2つ の文献を参考にした理由は、実際にコーチングを行っているコーチに、その指導方法を明 示するような視点で書かれた鈴木(2009)と、職場で管理職やリーダーなどの上司となり、

部下や後輩への指導方法に迷っている読者を対象に書かれた市瀬(2012)のそれぞれのコ ーチングの定義を吟味することで、コーチングを多面的に捉えた上で、本稿が意図するコ ーチングを定義づけることができると考えたからである。次に、「(2)コーチングの3原則」

では、鈴木(2009)を参考に、コーチとクライアントが対話を重ねる時に、コーチが留意 すべきコーチングの3原則を明らかにする。最後に、「(3)コーチングの技術」では、引き 続き、鈴木(2009)を参考にしながら、コーチがどのような視点を持って、クライアント

(18)

15 の目標達成を支援していくかを述べる。

これらを通して、コーチングの仕組みや働きを明らかにする。

((

((1111))))コーチングコーチングコーチングのコーチングののの定義定義定義・定義・・・目的目的目的目的

ここでは、鈴木(2009)と市瀬(2012)で説明されているコーチングの定義を基に、本 稿で用いるコーチングの定義を明らかにする。本項を通して、コーチングの狙いや意図が 明らかになる。

まず、鈴木(2009)によると、コーチングとは、「対話を重ねることを通して、クライア ントが目標達成に必要なスキルや知識、考え方を備え、行動することを支援するプロセス である。」と定義されている(12 ページ)。ここでの「クライアント」とは、自身の目標達 成に向けてコーチングを受ける対象のことである(鈴木 2009,12 ページ)。また、クラ イアントが目標達成することを支援する人を「コーチ」と呼ぶ。コーチの役割は、クライ アントの目標達成に必要な知識やスキルおよびものの見方や考え方を、クライアント自身 が継続的にバージョンアップし続け、その結果として目標達成していく全プロセスを支援 することである。

次に、市瀬(2012)が定義するコーチングとは、「深い対話を通じて相手に様々な気づき を促すことで、認識や行動の変化を支援し、モチベーションを高めるためのコミュニケー ション手法」のことである(14ページ)。この過程で、自分の置かれた状況を振り返ること で、クライアントには、それまで無自覚だったことや新たな可能性が気づきとして浮かび 上がり、目指す目標や行動のあり方を自発的かつ主体的に選び取ることが可能になる。つ まり、コーチングとは、「深い対話を重ねることを通して、相手がさまざまな目標達成に必 要なスキルや知識などを備え、認識や行動の変化を起こすことを支援するコミュニケーシ ョン手法」であると言える。

以上のことから、コーチングとは、「対話を通して、クライアントの目標達成を支援する ためのコミュニケーションの手法」であることが分かった。次の(2)では、コーチングの前 提を明らかにするために、鈴木(2009)を参考にしながら、コーチングを行う際の3つの 原則を説明し、(3)では、コーチングの技術を解説していく。

((

((2222))))コーチングコーチングコーチングのコーチングののの333原則3原則原則原則

ここでは、鈴木(2009)を参考に、コーチがクライアントとの対話を通してコーチング を行う際に意識すべき3原則を1つずつ解説し、コーチングが前提としている枠組を示す ことで、コーチングを取り入れるために必要な考え方を説明する。

まず、コーチングの3原則とは、「双方向のコミュニケーションであること」、「継続的に コミュニケーションを交わすこと」および「相手に合ったコミュニケーションを取ること」

である。コーチングでは、これらの3原則に基づいて対話が行われる。以下では、これら の3原則を1つずつ詳しく見ていく。

(19)

16

①①

①双方向双方向双方向の双方向ののコミュニケーションのコミュニケーションコミュニケーションであることコミュニケーションであることであることであること

まず、新村(2008)によると、「双方向」とは、情報の伝達が一方向でなく、どちらか らも発信して情報のやりとりができることを指す(1632ページ)。つまり、双方向のコミ ュニケーションとは、互いが同じ目線で言葉のキャッチボールをしている状態を指す。

コーチとクライアントが会話をする際に、コーチ側に強い先入観や誘導的な質問をす るようなコミュニケーションの取り方では、ただ言葉のやりとりをしているだけで、双 方向とは言えない。言い換えると、相手の発言を受けて、自分の言葉を投げかけ、また 相手がそれに返して、という同じ目線での言葉のキャッチボールを行える状態が、双方 向の会話が成立している状態と言える。

双方向のコミュニケーションを取ることが重要である理由は2つある。1つ目は、双 方向の会話で、クライアントの「無意識を顕在化」させる必要があるからである。「(1) コーチングの定義・目的」でも述べたように、コーチングを行う目的は、「深い対話を重 ねることを通して、相手がさまざまな目標達成に必要なスキルや知識などを備え、認識 や行動の変化を支援すること」である。このように、コーチとクライアントとの双方向 のコミュニケーションを通して、クライアントに、新たな「気づき」をもたらすことで、

クライアントの認識や行動の変化を促す。2つ目は、コーチが、クライアントの長期的 な成長を視野に入れているからである。コーチングでは、コーチとクライアントとの信 頼関係が必要不可欠である。なぜなら、2者間で信頼関係を築くことができれば、コー チがクライアントに取ってほしい行動をリクエストしやすくなる上に、クライアントも コーチからのリクエストに快く応じる関係ができあがり、これらが相まって、コーチン グの成果に影響を与えると考えられるからである。このように、双方向のコミュニケー ションを用いることで、コーチとクライアントが互いのことを知り、信頼関係を構築す ることができる。

以上の点に注意しながら対話を繰り返すことで、コーチは、クライアントの無意識な 思考や行動の原因をアウトプットさせて自覚させ、クライアントが自ら、目標や成長に 向けて最も有効な方法の選択、実践および軌道修正ができるように支援をする。また、

双方向のコミュニケーションを取ることで、コーチは、クライアントと信頼関係を築き、

クライアントの成長を長期的に支援することができる。

②②

②継続的継続的継続的に継続的ににコミュニケーションにコミュニケーションコミュニケーションをコミュニケーションををを交交交交わすことわすことわすことわすこと

上記の「①双方向のコミュニケーションであること」で、コーチは、「クライアントの 長期的な成長を視野に入れている」ことを述べた。つまり、コーチは、否応なしに変わ り続けるビジネス環境に対応しながら、クライアントが着実に目標達成に近づいていく ために、クライアントに起きた変化に対応しながら、継続的に関わる必要がある。なぜ なら、ただ1度のコーチングでは、クライアントが目標達成に着実に近づくための行動 の定着を図ることはできないからである。

(20)

17

例えば、コーチは、クライアントの目標に向けての行動を促すために、クライアント の「自己効力感」を高めようとする場合がある()。「自己効力感」とは、「ある結果を生 み出すために必要な行動をどの程度うまく行うことができるかという個人の確信」のこ とである(10)。コーチは、コーチングによってクライアントの「自己効力感」を高めよう とするとき、前回の対話のときに比べて、クライアントの改善された点を具体的に伝え ることで、クライアントに自己の成長を再認識させる。つまり、クライアントの「自己 効力感」が高まることは、クライアントにとって、「自分でもできるんだ」という自信に なり、次なるチャレンジに意欲的に取り組むことが可能となる。

このように、コーチは、クライアントと継続的に関わりを持つことで、クライアント の目標達成を支援している。

③③

③相手相手相手に相手ににに合合合った合ったったコミュニケーションったコミュニケーションコミュニケーションコミュニケーションををを取を取取取ることることることること

「相手に合ったコミュニケーションを取ること」とは、クライアントの特徴、思考、

行動パターンおよび性格などに注目して、コーチが柔軟にクライアント1人ひとりへの 対応方法を変えながら関わっていくことであり、「個別対応」とも言われている。

このような対応が必要とされている理由は、クライアントごとに行動を加速させるス イッチが違っているからである。そこで、相手に合ったコミュニケーションを取るため に、継続的な関わりと双方向の対話の中で、クライアントの発言や行動をよく観察し、

性格や考え方、価値観などをよく把握した上で対応しなければならない。このときに、

コーチに必要とされるのは、「クライアントをどれだけよく知っているか」である。その ため、クライアントの性格や行動パターンなどが不明瞭なまま、いくらコーチングを行 ったとしても、個々の特性を理解した上で関わらなければ、クライアントのためによか れと思ってしたことが、クライアントの行動を阻害するような逆効果となる場合がある。

そこで、コーチは、クライアントの特徴別にタイプ分け(11)をするなどして、クライアン トの興味関心がどこにあり、どんなことに興味があるかなどを、より早く、そして、よ り深く理解することで、クライアントとコミュニケーションを取る必要がある。

() コーチがクライアントの目標達成への行動を促す他の方法には、「フィードバック」が ある。これは、コーチとクライアントとの対話の中で、これまでのプロセスや行動を検 証し、今後目標に近づくための有効な手段の発見と、その実践を繰り返し、軌道がずれ ていれば修正していくものである。これらを通して、目標に向けて、ズレを修正しなが らクライアントが行動変化を起こすきっかけを作っている。詳細は、鈴木(2009)を参 照せよ。

(10) 「自己効力感」とは、Bandura(1977)が提唱した社会的学習理論の中で紹介された、

他者の行動の観察に基づく学習についての理論である。本稿では、冨澤(2012)を参考 にした。

(11) 鈴木(2009)では、クライアントの特徴を知るための1つの方法として、「コントロー ラータイプ」、「アナライザータイプ」、「プロモータータイプ」および「サポータータイ プ」の4つのタイプに分類することを述べている(99-101ページ)。詳細は、鈴木(2009)

を参照せよ。

(21)

18

ここまでで述べた、「双方向のコミュニケーションであること」、「継続的にコミュニケー ションを交わすこと」および「相手に合ったコミュニケーションを取ること」が、コーチ ングの3原則である。これらは、どれか1つが満たされていればよいというものではなく、

どんなクライアントに対しても、常に3つ全てを満たしている必要がある。つまり、「双方 向」の対話を「継続的に」実行し、1人ひとりの特性に合わせて「個別対応」していくこ とが、コーチングの柱となるのである。

以上のことから、コーチングには、「双方向のコミュニケーションであること」、「継続的 にコミュニケーションを交わすこと」および「相手に合ったコミュニケーションを取るこ と」という3つの原則があり、これらは、どんなクライアントに対しても普遍的に満たさ れているべき原則であることが明らかになった。次の(3)では、コーチングで頻繁に用いら れる7つの技術を説明することで、コーチングを用いてどのようにクライアントの目標達 成を支援するかを述べる。

((

((3333))))コーチングコーチングコーチングのコーチングののの技術技術技術技術

ここでは、引き続き、鈴木(2009)を参考に、コーチングで多用される7つの技術を説 明する。これらを通して、コーチが、コーチングを行う際に使用するコミュニケーション の技術を述べていく。

まず、7つの代表的なコーチング技術とは、「聞く」、「ペーシング」、「質問」、「承認」、「フ ィードバック」、「提案」および「要望」である。コーチは、これらを戦略的かつ自然な形 で会話の中にちりばめ、クライアントの目標達成をサポートしていく。以下では、この7 つの技術を1つずつ見ていく。

①①

①聞聞聞く聞くくく

コーチングを採用するときに、コーチに求められる「聞く能力」とは、単に鼓膜を振 動させるレベルのものではなく、クライアントが何を言わんとしているのか、あるいは、

その発する言葉の言外にある本質は何かを聞き分け、正しく理解することである。その ために、コーチは以下の5つのポイントに注意しながら、クライアントの声に耳を傾け る必要がある。

まず、コーチがクライアントと対話をする際に聞くためのポイントとなるのは、「『聞 く』ことに集中する」、「相手の話の先読みや、結論の先取りをせず、最後まで聞く」、「相 手のノンバーバル(非言語)な情報を受け取る」、「『聞いている』というサインを送る」

および「沈黙を共有する」の5つのことである。次に、この5つのポイントを1つずつ 説明していく。

(ⅰⅰⅰ)「ⅰ)「)「聞)「聞聞く聞くく」く」」ことに」ことにことに集中ことに集中集中する集中するする する

コーチは、自分が話すことよりも、相手に話をさせる環境を作ることに集中する。

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