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[第 2 章]

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(1)[第 2 章]. 2.1. 緒言 MIP をグラフトした RC 膜の透過速度に鋳型物質が与える影響を調査した前章の結果、ラ ジカル重合法によって作製した MIP 膜は、鋳型物質の存在によりその透過速度を有意に変 化させることが分かった。これらの変化は鋳型物質との特異的な相互作用による膜表面の MIP 層の形状変化に起因すると推測された 1)。 しかし、1 章では MIP 膜のゲート効果の機構について明確にできなかった。該効果の機 構を明らかにすることは、透過速度自己調節膜を設計する上で重要である。1 章で、確認さ れた事実は、グラフト重合処理を行った RC 膜はカチオン性色素である Malachite Green に より染色されるため、膜表面が負荷電になっているということ(1.5.1) 、ラジカル重合によ り分子インプリントをグラフトした RC 膜は鋳型物質と類似物質を識別して溶質拡散透過 速度を変化させる(1.5.2) 、ということである。MIP 層のキャラクタリゼーションから MIP 膜の物性に関する知見を得ることはゲート効果の機構解明に重要である。 MIP 膜が鋳型物質と特異的に反応するとき、配位性モノマーに由来する官能基が重要な 要因となる 1)。MIP 膜をゲート効果に対し至適設計するためには、配位性モノマー由来の官 能基の量、MIP 層の架橋度、特異結合に関与する非共有的相互作用の種類、MIP に対する 鋳型物質の結合量、および透過速度の変化の関係を理解する必要がある。 そこで本研究では、ゲート効果の機構を解明することを目的として、前章のような透過 速度の評価に加え、MIP 中に存在する配位性モノマー由来の官能基を定量すると同時に配 位性モノマー由来の官能基と鋳型物質の間の相互作用を評価し、ゲート効果の機構を考察 した。. 40.

(2) [第 2 章]. 2.2 2.2.1. 既往研究 電解質および pH が分子インプリントのゲート効果に与える影響. 吉見らはラジカル重合により、Theo-MIP-ITO 電極を作製した 1)。また、この電極を作用 極として、フェロシアン化カリウムのサイクリックボルタンメトリーを行い、鋳型物質が フェロシアン化カリウムの酸化電流に与える影響を観察した。この結果、鋳型物質である テオフィリンの存在下では、フェロシアン化カリウムの酸化電流ピーク密度を約 13%増大 させた。結果を Table 2-1 に示す。これらの結果から、基材表面にグラフトされた MIP が鋳 型物質の影響によって、拡散透過速度を変化させることは明らかである。 加えて、吉見らは Theo-MIP-ITO 電極を用いたサイクリックボルタメトリーにおいて、緩 衝塩含有試験溶液を用いた場合、鋳型物質存在下でも酸化電流値変化は 4-5%しか見られな いことを明らかにした。結果を Table 2-1 に示す。. Table 2-1. Change of oxidation peak current of Theo-MIP electrode by theophylline Buffer (pH7.0). Change of peak current [-]. −. 1.13±0.04. 0.1 M Tris-HCl. 0.95±0.05. 0.1 M phosphate. 1.04±0.05. Robinson. 1.05±0.05. この結果は、緩衝塩存在下でゲート効果が抑制されることを示唆している。このゲート 効果の抑制は、電解質により鋳型物質と MIP 間の静電的相互作用が遮蔽されることに起因 すると考えられる。. 41.

(3) [第 2 章]. 2.2.2. 分子インプリントの結合サイトと鋳型物質間の相互作用. Piletsky らは、蛍光発光法を利用して、MIP の結合サイトと鋳型物質との間に生じる相互 作用を調査した 4)。蛍光発光法は測定対象となる物質自体、またはその誘導体の特有な蛍光 を利用する、あるいは蛍光性物質に対する消光を利用して定量・定性分析を行う、極めて 鋭敏な分析法である。蛍光発光法では、蛍光分子近傍の微環境、巨大分子の局所構造のゆ らぎ、コンフォーメーション変化などを知ることができるため、蛍光免疫定量法や核酸の ハイブリッド形成、配列順序を含む DNA の分析に応用されている。 また、蛍光発光法は 2 種の分子間の相互作用を研究する上で有用な方法である。一般に 疎水性プローブと呼ばれる一群の蛍光分子がある。これらは溶媒の極性が減少すると蛍光 強度が増大する。また、それと同時に蛍光の最大波長が短波長側にシフトする。 Piletsky らは MIP 中の結合サイトの環境を評価するため、ダンシルプローブの一つである 1(6-dimethylamino-1-naphthalenesulfonate)を利用した。この蛍光分子は水のような極性溶 媒中では蛍光発光は弱く、非極性溶媒中では強い発光を示す。また、蛍光極大に短波長シ フトを受ける。この蛍光は酸素によって消光することはない。 蛍光測定において使用された MIP はダンシル基で被覆されたものであり、一つはシアル 酸をインプリントしたもの(P1) で、もう一方は何もインプリントしていないポリマー(k1) の 2 つのポリマーである。 シアル酸存在下で EDMA と P-ビニルフェニルボロン酸、およびアリルアミンを重合し、 P1 を作製した。その構成要素の質量比はおよそ 1:1:1 である。また、K1 は鋳型物質非存在 下で重合した。 アミノ基は、ダンシルクロライドでラベルしたアリルアミンを共重合することにより導 入された。ダンシルクロライドのナフタレン環は微細環境を妨げることなく、MIP の細孔 内に入り込める大きさである。. SO3. (CH3)2N 1 6-dimethylamino-1-naphthalenesulfonate ポリマーの蛍光を 4 つの異なる溶媒中で測定した。更に比較対象として、ダンシルグリ シンを物理吸着させたブランクポリマー(K2)の蛍光も同条件下で測定した。ダンシルプ ローブインプリントポリマーP1 では、K1 よりむしろアミノ基が接近しにくく配置され、疎 水性の空孔を有する。また、特異性のないポリマーK1 はより接近しやすい性質を有する。. 42.

(4) [第 2 章]. Fig. 2-1. Difference in the environment of the dansyl probe (F) in imprinted (P1) and non-imprinted polymers (K1 and K2) as revealed by the fluorescence emission maximum. While in K1 the probes are covalently attached, they are adsorbed on the surface of the polymer in K2. 蒸留水中でのダンシルグリシンを比較すると、 ダンシル基導入ポリマーP1, K1 の懸濁液 のスペクトルは、それぞれ、478nm, 485nm と短波長側へシフトした。結果を Fig. 2-2 に示 す。. Fig. 2-2 Emission wavelengths of dansyl probes in different solvents. Pure dansyl-L-Phe, dansyl-L-Phe adsorbed on polymer, dansyl-labelled imprinted polymer, and dansyl-labelled non-imprinted polymer, respectively, were placed in solvents of different polarity and the maxima of the emmission spectra recorded at λ 355nm. The top of bars indicates the emission maxima. 43.

(5) [第 2 章]. P1 の極大発光は波長が短く、発光強度は全ての溶液下で K1 よりも高い。このことは、 P1 のダンシル基は K1 のダンシル基よりも、より疎水環境であることを示唆している。ダ ンシル基を導入していない P1, K1, K2 においては違いが検出されなかった。P1, K1 に対す る比較対象である K2 のダンシル基のスペクトルの深色シフトは、K2 のダンシル基の蛍光 が、溶液中の発光とポリマー表面のダンシル基からの発光の両方から構成され、K2 のダン シル基がより疎水性であることを明確に示している。 これらの観察結果は、非特異的結合サイトの構造の疎水性よりも、鋳型分子によって形 成されるインプリント空孔の疎水性がより高いことを示唆している。鋳型物質に対する高 い親和性は、疎水性空孔内の相互作用が外部の相互作用よりも強いことに起因すると考え られる。 このような場合、インプリントポリマーと鋳型物質間の相互作用による結合定数は、イン プリントされていないポリマーと鋳型物質間の相互作用による結合定数より大きいと考え られる。このポリマー全体の強い疎水性は EDMA に起因している。配位性モノマーと鋳型 物質の間の特異的な結合は主に疎水性相互作用に起因すると仮定できる。. 2.2.3. 分子インプリントの拡散透過速度に鋳型物質が与える影響. Piletsky らは、電荷をもたない溶質がポリマーの網目構造を透過する場合、鋳型物質が拡 散過程に与える影響を、オルトフタルアルデヒド(OPA)とメルカプトエタノール(ME) を 用いて研究した 2)。 OPA と ME は 一 級 の ア ミ ノ 基 を 含 む ポ リ マ ー の 存 在 下 で 蛍 光 複 合 体 を 形 成 す る (Scheme1) 。. Scheme1. OPA と ME による蛍光複合体の形成 ここでも 2.2.2 と同様のポリマーP1, K1 を用いて、シアル酸、グルコース、マンノース、 ガラクトース存在下で、OPA-ME 複合体の蛍光強度を調査し各物質の結合量を調査した。 次の結果は、シアル酸、グルコース、マンノース存在・非存在下における、OPA 複合体 の構造による、蛍光強度の経時変化を示したものである。P1 の強度がシアル酸(鋳型物質) 存在下で有意に増加した。このことは、ポリマー中に多く存在するアミノ基が、OPA 試薬 との反応に有効に働いたことを示唆している。. 44.

(6) [第 2 章]. Fig. 2-3 Fluoresence emission of OPA-modfied polymer P1 in 100mM sodium borate buffer of pH 10.0 over time. Square: Fluorescence in presence of 5uM sialic acid, Rhombus: Fluorescence in presence of 5uM glucose or mannose, Circle: Fluorescence in absence of carbohydrates グルコースとマンノースではシアル酸の場合よりも小さい強度変化を示した。このこと は、ポリマーが鋳型分子に対して高い選択性を持っていることを示唆している。 蛍光発光はシアル酸濃度を 10µM に上げると増加した。しかし、この濃度の増加はシアル 酸を飽和させる結果となり、より高い濃度では蛍光発光強度の減少さえも見られた。相互 作用サイトに対して、OPA 試薬とシアル酸の拮抗が起きるためである。重要なのは、糖(シ アル酸、グルコース、マンノース)の濃度を 5µM 以上加えても、Non-インプリントポリマ ーの蛍光に影響が無いことである。 観察された効果は、鋳型物質と特異結合部位の間の静電的かつ構造状の相互作用により 説明できる。これは鋳型物質との結合により、ポリマー構造の再構成が生じることに起因 する。. 45.

(7) [第 2 章]. Fig. 2-4. Schematic drawing of template-induced structural changes occurring in MIPs. 緩衝溶液に浸されたインプリントポリマーは、表面のイオン化に伴う浸透圧の影響によ り限界まで膨張に達する。その結果として、選択性を有する空孔を含むポリマー領域の体 積は増加し、ポリマーを通る分子の拡散はポリマー領域間の細孔の形状と直径に依存する。 また、鋳型物質の特異吸着により、ポリマーと分子の間に弱い分子間結合による再構成 が起こる。このことは、あらかじめ吸着された水分子とイオンを空孔から排除する原因と なり、それに伴って、表面のポリマー層の膨潤が減少すると考えられる。これらの結果か ら、有機分子の拡散速度に影響を及ぼすことが示唆される。 Piletsky らの研究結果は、MIP と鋳型物質との相互作用が、ポリマー層の形状を変化させ ることを示している 4)。Piletsky らの実験では緩衝塩存在下でもゲート効果は認められる。 このことは、吉見らの示した MIP のゲート効果に対する電解質が作用とは異なる。この相 違の原因は、Piletsky らが作製した P1 のゲート効果が、静電的相互作用よりも疎水性相互 作用に起因して生じる、あるいは、本研究の Theo-MIP、Caffe-MIP の示すゲート効果よりも 非常に大きく、電解質が存在する場合でも極端に抑制されないと考えれば矛盾しない。あ るいは電解質濃度をより高くすれば、ゲート効果の抑制が P1 においても見られる可能性が ある。. 46.

(8) [第 2 章]. 2.2.4. フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)による MIP 構造の解析. FT-IR による MIP 膜の構造解析の一例として、Kobayashi らの研究を挙げる 5)。 鋳型物質テオフィリンの存在下で、配位性モノマーとしてアクリル酸を用い、アクリロ ニトリルと共重合させたポリマーは、テオフィリンに選択性を有する MIP である。Kobayashi らは、この MIP のアクリル酸とアクリロニトリルの共重合比を変化させて 5 種類の膜を作 製した。次に、鋳型物質と配位性モノマー間の相互作用を比較する目的で、FT-IR により構 造解析を行った。配位性モノマーの含有量の違いにより、MIP の構造は変化した。得られ た IR スペクトルを Fig. 2-5 に示す。. Fig. 2-5. Change of FT-IR spectra of MIP with increasing concentration of functional monomer a) polyacrylonitrile, b)〜e) copolymer of acrylic acid (AA) and polyacrylonitrile AA contents in synthetic copolymer: b) 5mol%, c) 15mol%, d) 21mol%, e) 26mol%. 47.

(9) [第 2 章]. この IR スペクトルにおいては、特徴的な変化として次のようなピークが挙げられる。 1730cm-1 付近 :AA 由来の COOH 基の C=O。 1150-1250cm-1:AA 由来の COOH 基の O-C-O。 2500-3600cm-1:OH 基の伸縮振動。 2500-3300cm-1:AA の会合体の COOH 基の OH。 3520cm-1 付近 :会合していない AA の COOH 基の OH。 会合していない AA の COOH 基を示す 3520cm-1 付近のピークは、ポリマーにおける AA 含有量 0-15mol% の分子インプリントゲルまでは徐々に強くなった。しかし、AA 含有量 26mol% の分子インプリントゲルでは、AA の会合体の COOH 基を示す 2500-3300cm-1 のピ ークが強く現れ、会合していない AA の COOH 基を示す 3520cm-1 付近のピークは、AA 含 有量 0-15mol% のゲルに比較して弱くなった。COOH 基の O-C-O 結合を示す 1150-1250cm-1 のピークは AA 含有量が増加するにつれて強く現れた。 AA 由来のカルボキシル基が鋳型物質であるテオフィリンと水素結合することにより、ゲ ル中にテオフィリンを取り込むが、AA の会合体は既に水素結合をしているため、会合して いない AA よりもテオフィリンと相互作用しにくいことは明らかである。 AA 含有量 26mol% の分子インプリントゲルでは、AA 由来のカルボキシル基が多く存在するため、テオフィリ ンとは相互作用しやすいが、AA 含有量が過剰のため隣接 AA の会合も同時に起きやすい。 したがって、AA 含有量が高い場合でのテオフィリン認識部位の形成は効率的でないと考え られる。会合が起きやすい AA 21-26 mol% を含む分子インプリントゲルよりも、AA 15mol% を含む分子インプリントゲルの方が、テオフィリンとの相互作用が強いと予想された。 次に Kobayashi らは、これらの予想を裏付けるために、分子インプリントグラフト膜への 鋳型物質の吸着量を測定した。この実験によりポリマーと鋳型物質間に生じる相互作用の 強弱を評価した。 重量 W の膜を 303K で 3.6µM テオフィリンおよび 3.6µM カフェイン水溶液に 24 時間ひた し平衡にした後、各水溶液の濃度変化を測定した。分子インプリントグラフト膜への鋳型 物質の吸着量[S]は、平衡前後の 3.6µM テオフィリンおよび 3.6µM カフェイン水溶液の濃度 を Ca, Cb、平衡時の水溶液の体積を V とすると、Eq.(2.1)で表される。 [S] = (Cb-Ca)V/W 結果を Table 2-2 に示す。. 48. (2.1).

(10) [第 2 章]. Table 2-2. Change of specificity for templates by concentration of functional monomer. AA Content. [S]THO. [S]CAF. αTHO/CAF. [mol%]. [µmol/g-membrane]. [µmol/g-membrane]. [-]. 0. 0.00. 0.000. -. 5. 0.70. 0.015. 47. 10. 0.99. 0.021. 47. 15. 1.25. 0.024. 52. 21. 1.29. 0.045. 27. 26. 1.12. 0.051. 23 αTHO/CAF ≡ [S]THO/[S]CAF. この結果から、AA を 21-26 mol% 含む分子インプリントゲルよりも、AA を 0-15mol% 含 む分子インプリントゲルの方が、テオフィリンとの相互作用が強いことが確認された。こ の結果は AA を 21-26 mol% 含む分子インプリントゲルでは、隣接する AA の会合が起きや すいことを示唆している。 本研究で作製したインプリント膜のゲート効果においても、配位性モノマーであるメタ クリル酸由来のカルボキシル基と鋳型物質の間に生じる相互作用が重要な因子であると考 えられる。そこで、作製したインプリント膜中に存在する官能基を調査するために、FT-IR による分析を試みた。さらに MIP 中に存在するカルボキシル基の定量を試みた。. 49.

(11) [第 2 章]. 2.3 2.3.1. 理論 赤外吸収スペクトル(IR: Infra Red Absorption Spectrum)6). 赤外吸収スペクトルは試料に赤外線を当て、分子の振動のうち、双極子モーメントの起 こす振動に起因する吸収を測定して得られるスペクトルである。そのため赤外吸収スペク トルではピークが下に向かって伸びている。 赤外吸収スペクトルでは、波長の変わりに波数で表されるため、単位は cm−1 である。な お、測定範囲は 4000〜400cm−1 である。 赤外吸収スペクトルでのピーク数(基準振動)は、n個の原子でできている分子で、直 線状の分子で 3n−5 本、非直線分子の場合で 3n−6 本ものピークが出てしまうため、構 造が複雑な分子になればなるほど判別が難しくなるという短所がある。 4000〜1500cm−1(特性吸収帯)の間では官能基ごとに特有な波数で吸収されるピークが 見られるため、官能基の有無を確認することができるという長所もある。. 2.3.2. KBr 法(錠剤法)6). KBr 法はサンプルを粉にして KBr と混ぜた後に、錠剤にしてそのまま測定する方法であ る。KBr は赤外領域に吸収を持たないため、サンプルのみのピークが得られる。サンプルの ピークだけしかないため、比較的わかりやすい。未知化合物の決定に適するなどの長所が あるが、吸湿性が高いため湿度が高いと OH に起因するピークなどが余計に出たり、錠剤に むらができたりしてうまく測定できないという短所もある。. 50.

(12) [第 2 章]. 2.3.3. MIP グラフト層中に含まれるカルボキシル基の定量. RC 膜表面にグラフトされた MIP 中に含有されるカルボキシル基を定量した。メタクリル 酸由来のカルボキシル基は、鋳型物質であるテオフィリンおよびカフェインと相互作用す る重要な部位である。したがって、このカルボキシル基の量の違いによって、ゲート効果 にどのような影響を与えるのかを確認することも、ゲート効果の機構を解明するのに重要 である。次に本章で用いた 4-ニトロフェナシルブロミド法によるカルボキシル基定量法. 7). の原理を記す。. 2.3.4. 4-ニトロフェナシルブロミド(4-NPB)との反応を利用したカルボキシル基の定量. カルボキシル基を定量する方法として、4-NPB 法が知られている。この方法は、4-NPB と カルボン酸の反応(Scheme2)を利用して、生成物の濃度に起因する吸光度変化によりカル ボキシルを定量するものである。. R COOH. +. R COO CH 2CO. NO2. BrCH 2CO. Scheme2. NO2. 4-NPB とカルボン酸の反応. この反応を MIP 層中のカルボキシル基の定量に使用することの利点として、カルボン酸 と 1 対 1 で反応する 4-NPB(MW: 244)は、鋳型物質であるテオフィリンおよびカフェイン と分子量が近いことが挙げられる。したがって、インプリント中の鋳型物質に対する特異 結合部位に出入りすることができる分子サイズで、最も重要な特異結合部位に存在するカ ルボキシル基とも反応できると考えられる。また、室温で進行する反応であるため RC 膜お よびポリマー構造を傷め難い、などが挙げられる。 MIP をグラフトした RC 膜表面には、4-NPB と反応する官能基はカルボキシル基しか存在 しない。したがって、4-NPB 法は MIP 層中に含まれるカルボキシル基の定量に応用可能で ある。また、基材膜の細孔内に収着した 4-NPB の量を RC 膜の含水率により補正する必要 がある。さらに、基材膜に吸着する量は未処理 RC 膜と変わらないと仮定し、MIP 膜に吸着 する 4-NPB 量から未処理 RC 膜に吸着する 4-NPB 量を差し引くことで補正した。. 2.3.5. 4-NPB の検量線. 本研究では、濃度既知の 4-NPB アセトニトリル混合溶液に MIP 膜を浸し、4-NPB と MIP 層中のカルボキシル基を反応させた後、反応前後の 4-NPB の濃度変化からカルボキシル基 を定量する。そのため、4-NPB の検量線が必要となる。原理を Fig. 2-6 に示す。 カルボン酸濃度を一定にし、4-NPB の濃度を変化させて、4-NPB と吸光度の相関を調査 し、この関係を 4-NPB の検量線とする。. 51.

(13) [第 2 章]. Fig. 2-6. Quantification of carboxyl groups in MIP membrane with 4-NPB. 52.

(14) [第 2 章]. 2.3.6. 平面透析膜の含水率の測定. MIP 層中に含まれるカルボキシル基を 4-NPB との反応を利用して定量する場合、膜の細 孔内に収着した 4-NPB の量を補正する必要がある。この補正は MIP 膜の含水率を利用する ことにより行う。溶液中の 4-NPB の濃度が膜の細孔内の濃度と均一であると仮定すれば、 算出した含水率によって収着量を補正できる。 Fig. 2-7 に示すように、乾燥時の膜の重量および膨潤時の膜の重量を利用して膜の含水率 を求めることができる。 まず、Eq.(2.2)により、膨潤状態の RC 膜の重量 W を求める。この W は膨潤状態の RC 膜により排除された水の重量として得られる。 W = W1 + W2 - W3 (2.2) 次に、水の密度 ρW で W を割り返し、細孔体積を除いた膨潤状態の RC 膜の体積 Vm とする。 Vm = W / ρW (2.3) また、細孔の体積を考慮した膨潤状態の膜の体積 V は、膨潤時の膜の厚み Lm と膜の面積 Sm から算出することができる。 V = Lm × Sm (2.4) Eq.(3.3), (3.4)より、含水率 α を求める。 α = 1 - Vm / V (2.5) MIP 膜中のカルボキシル基への 4-NPB の結合量 [S] は、平衡前後のテオフィリン水溶液 の濃度を Ca,Cb、平衡時の水溶液の体積を V、膜の重量を W とすると Eq.(2.6)で表される。 [S] =(Cb−Ca−αCb)V / W (2.6). 53.

(15) [第 2 章]. membrane (swell state) + pycnometer + water: W3 (g). membrane (dry state): W2 (g). pycnometer + water: W1 (g). Fig. 2-7. Measurement of water content in RC membrane 54.

(16) [第 2 章]. 2.4 2.4.1. 実験方法 分子インプリントの FT-IR による構造解析. Theo-MIP 膜の化学構造を FT-IR(FT-IR410, 日本分光株式会社)により解析した。蒸留水 中で超音波洗浄し、テオフィリンを抽出した Theo-MIP、および未処理 RC 膜を 3 時間乾燥 した。これらの膜を赤外分光光度計の光路上にそのまま据え付けることにより IR スペクト ルを透過度で記録した。. 2.4.2. インジウム−スズ酸化物(ITO)電極の洗浄. ITO ガラス電極(旭硝子、東京、ガラス厚:1.1mm、ITO 蒸着層厚 50nm)をダイヤモン ドカッターで 1×5cm の大きさに切断した。この電極をアセトン中で 10 分間、3 回超音波洗 浄した。次に、水酸カリウムを 1M 含有したメタノール溶液で 20 分間超音波洗浄し、さら に蒸留水中で 5 分間、5 回超音波洗浄した。洗浄の終わった電極は乾燥させた後、デシケー ター内で保存した。. 2.4.3. ITO 電極に対するイソプロペニル基の導入. 洗浄した 1×5cm の ITO ガラス電極を 3-MPS とヒドロキノンを含有した 10wt%トルエン 溶液中に浸漬し、セパラブルフラスコ内において 353K で 4 時間反応させることで、電極に イソプロペニル基を導入した。反応終了後、電極を取り出してメタノールで洗浄しメタノ ール中で保存した。. 2.4.4. 3-MPS 処理電極への MIP グラフト. 鋳型物質であるテオフィリン 0.62g、あるいはカフェイン 0.74g と、配位性モノマーであ る MAA 1.2g、架橋性モノマーである EDMA 12.3g、重合開始剤 AIBN(和光純薬株式会社、 大阪)0.35g を含有した DMF 混合溶液 33ml 中に 3-MPS 処理した RC 膜を入れ、窒素ガス雰 囲気下でブラックライトを 4 時間照射しラジカル重合させた。EDMA と鋳型物質に配位し た MAA が、膜表面に導入したイソプロペニル基を巻き込みながら膜表面で共重合する。 ポリマー生成後、テフロン棒でゲルを砕き、電極表面を傷つけないように注意しながら 取り出した。この膜を蒸留水中で約 1 時間超音波洗浄することによって、余分に付着した ポリマーの除去、および MIP グラフト層中から鋳型物質を抽出した。この電極を Theo-MIP あるいは Caffe-MIP 電極とした。また、インプリントしていない単なる共重合体 Poly (EDMA-co-MAA)をグラフトした電極も作製した。これを Non-MIP 電極とした。MIP グ ラフト後、電極表面にシリコン樹脂を塗布することで電極の有効面積を 1×5cm に規定した。. 55.

(17) [第 2 章]. 2.4.5. サイクリックボルタンメトリーによる溶質拡散透過速度変化の評価. ボルタンメトリーの試験液には、支持電解質として 0.1M 硝酸カリウム、レドックス マーカーとして 5mM フェロシアン化カリウム、鋳型物質として 5mM テオフィリンを 含有した。テオフィリン非存在下、および存在下でのフェロシアン化物イオンの酸化電 流ピークを測定し、電流ピークの増減をゲート効果の指標とした。 ここで、 MIP の透過速度と poly (EDMA-co-MAA)の膨潤・収縮の関係を検討するため、 Theo-MIP、Non-MIP 電極を用いて、0.1M Tris-HCl (pH4.0-10.0) 存在下におけるフェロ シアン化物イオンの酸化電流値を測定した。 さらに、鋳型物質と MIP 間の静電的相互作用の役割を考察するため、硝酸カリウム濃度 を 50-400mM の範囲で変化させ、ピーク電流値およびゲート効果と硝酸カリウム濃度の関 係を調査した。. 2.4.6. 電解質および pH が各処理膜の溶質拡散透過速度に与える影響. 電解質が各処理膜(Theo-MIP, Caffe-MIP, Non-MIP)のゲート効果に与える影響について 調べた。透析液中の電解質 KNO3 の濃度を 0 – 0.20M までの間で変化させ、二室回分式透析 実験によって、鋳型物質存在下/非存在下でのクレアチニンの KL を測定した。これらの結 果を比較し、電解質の存在が MIP 膜のゲート効果に与える影響を調査した。 また、吉見らが行った ITO を用いた実験(2.1)と同様に、pH7.0 の 0.1M Tris-HCl 緩衝塩 を透析液中に含有し、二室回分式透析実験によって Theo-MIP におけるクレアチニンの拡散 透過速度を測定した。さらに、ゲート効果の抑制が pH の違いに起因するか否かを確認する ため、少量の NaOH で pH7.0 に調整した KNO3 水溶液を用いての透析実験も行った。 2.4.7. 分子インプリント膜の含水率の測定. 乾燥時の膜の重量および膨潤時の膜の重量を利用して膜の含水率を求めた。 1)乾燥時の膜の重量 W2 を測定した。膜の乾燥は、蒸留水で膨潤させた膜を約 343K の乾燥 機中に 24 時間以上放置することで行った。 2) 乾燥状態の膜を蒸留水に浸し膨潤させた。膨潤時間によって膜の含水率は変動する可能 性が考えられたため、膨潤時間を 24 時間から 120 時間と変動させ、膜の含水率を測定 した。膨潤状態の膜の膜厚および断面積を測定し、細孔中を水の体積を含む膨潤状態の 膜の体積 V を算出した。 3) 25ml ピクノメーターを蒸留水で満たし、重量 W1 を測定した。 4) 25ml ピクノメーターに蒸留水と膨潤した膜を入れ、293K で重量 W3 を測定した。 5) W = W1 + W2 - W3 から、細孔内の水の体積を取り除いた膨潤状態の RC 膜のみの体積を水 の重量として求めた。これを 3 で求めた水の比重で割り返すことにより、細孔内の水の体 積を取り除いた膨潤状態の RC 膜のみの体積 Vm を算出した。 6)膜の含水率は 1 – Vm / V から算出した。. 56.

(18) [第 2 章]. 2.4.8 2.4.8.1. 4-NPB を用いた分子インプリント層中のカルボキシル基の定量 ジ-n-プロピルアミンを用いた 4-NPB 法によるカルボン酸の定量. 4-NPB 法 7)によるカルボン酸の定量の有効性を確認するため、4-NPB 法により得られる吸 光度とカルボン酸濃度の関係を調査した。ここで、カルボン酸としてマロン酸を用いるこ ととした。モノマーとして用いているメタクリル酸を用いることも検討したが、メタクリ ル酸は揮発しやすいために、測定中においても吸光度が著しく変化し測定は困難であった。 一方、マロン酸は常温で固体のカルボン酸であり、水溶液中でも安定した結果が得られた。 また、当初は参考文献に従って 7)、マロン酸水溶液を発色させるためにジメチルアミンを 用いていたが、ジメチルアミンも揮発性が高く(b.p.: 280K)、吸光度を安定に測定できなか った。そこで、ジメチルアミンの代わりとして、分子量が大きく沸点の高いジ-n-プロピル アミン(b.p.: 383K)を用いることで安定した測定を可能とした。 1) マロン酸 0.010gを蒸留水 100ml に溶解し、0.001M マロン酸とした。 2) 0.001M マロン酸 100ml を 0.05M Na2CO3 40ml で中和した。 3) 3vol% 4-NPB のアセトニトリル溶液を調整した。 4) 0.001M マロン酸を Table 2-3 のように蒸留水で希釈し、各 Sample とした。. Table 2-3. Concentration of malonic acid. 0.001M malonic acid [µl]. Water [ml]. Malonic acid conc. [M]. ①. 500. 0. 0.0010. ②. 400. 100. 0.0008. ③. 300. 200. 0.0006. ④. 200. 300. 0.0004. ⑤. 100. 400. 0.0002. ⑥. 0. 500. 0. ⑥を吸光度測定の際のブランクとした。 5) 3vol% 4-NPB を各 Sample に 5ml ずつ加え、15 分放置した。 6) ジメチルスルホキシド(DMSO)を各 Sample に 5ml ずつ加え、15 分放置した。 7) ジ-n-プロピルアミンを各 Sample に 0.25ml ずつ加え、 15 分放置したのち、 吸光度を 550nm で測定した。. 57.

(19) [第 2 章]. 2.4.8.2. 4-NPB の検量線. 本研究では MIP 膜と濃度既知の 4-NPB 溶液を反応させ、反応前後の 4-NPB の濃度変化か ら、MIP 層中のカルボキシル基を定量する。そこで、4-NPB 濃度を求める検量線を以下の 手順で作成した。 1) マロン酸 0.010gを蒸留水 100ml に溶解し、1mM マロン酸水溶液とした。 2) 1mM マロン酸水溶液 100ml を 0.05M Na2CO3 40ml で中和した。 3) 3vol% 4-NPB のアセトニトリル溶液を調整した。 4) 3vol% 4-NPB 溶液を Table 2-4 のようにアセトニトリルで希釈し、Sample とした。. Table 2-4. 4-NPB concentration of samples. 3vol% 4-NBP [µl]. Acetonitrile [µl]. 4-NBP conc. [vol%]. ①. 3000. 0. 3.0. ②. 2500. 500. 2.5. ③. 2000. 1000. 2.0. ④. 1500. 1500. 1.5. ⑤. 1000. 2000. 1.0. ⑥. 500. 2500. 0.5. ⑦. 0. 3000. 0. ⑦を吸光度測定の際のブランクとした。 5) 2.4.8.1 で中和した 1mM マロン酸水溶液 60µl に蒸留水 40µl を加え、0.3mM マロン酸水 溶液を調整した。 6) DMSO を各 Sample に 5ml ずつ加え、15 分放置した(黄色に発色) 。 7) ジ-n-プロピルアミンを各 Sample に 0.5ml ずつ加え、15 分放置したのち(濃い茶色に発 色) 、吸光度を 550nm で測定した。. 2.4.8.3. 4-NPB を用いた MIP 膜中のカルボキシル基の定量. 濃度既知の 4-NPB アセトニトリル混合溶液に MIP 膜を浸した後、DMSO5ml を加えて、 4-NPB と MIP 層中のカルボキシル基を反応させた。反応時間は 72 時間とした。その後、ジ -n-プロピルアミンを 0.5ml 加え発色させ、吸光度を測定した。2.4.8.2 で作製した 4-NPB の 検量線から反応後の濃度を算出し、反応前後の濃度差を求めた。4-NPB とカルボキシル基 の反応は 1 対 1 で進行するため、反応前後での 4-NPB の濃度変化が MIP 中のカルボキシル 基の量に相当する。. 58.

(20) [第 2 章]. 2.4.9. 二室回分式透析による MIP グラフト膜に対する溶質拡散透過速度の測定. 1.4.4 の手順に従って、二室回分式透析により MIP グラフト膜に対する溶質の拡散透過速 度を評価した。さらに、鋳型物質と MIP 間の静電的相互作用の役割を考察するため、硝酸 カリウム濃度を 0-0.2M の範囲で変化させ、KL およびゲート効果と硝酸カリウム濃度の関係 を調査した。. 59.

(21) [第 2 章]. 2.5. 実験結果および考察 2.5.1. FT-IR による構造解析. 蒸留水中で超音波洗浄してテオフィリンを抽出した Theo-MIP 膜、および未処理 RC 膜を 343K で 3 時間乾燥させた膜を、赤外分光光度計の光路上にそのまま据え付けることにより IR スペクトルを測定した。結果を Fig. 2-8, 2-9 に示す。 この IR スペクトルにおいては、次のような特徴的なピークが挙げられる。 1730cm-1 付近:MAA 由来の COOH 基の C=O。 1150-1250cm-1:MAA 由来の COOH 基の O-C-O。 Theo-MIP 膜の IR スペクトルと未処理 RC 膜の IR スペクトルのどちらにおいても、基材 である RC 膜に存在する水酸基のピークが 3400 cm-1 付近に大きく観察された。また、両ス ペクトルを比較したところ、1735cm-1 付近のピークが、Theo-MIP において明らかに大きく 出ていることが分かった。これは、カルボキシル基の C=O を示す面外変角振動である 6)。 RC 膜と Theo-MIP 膜における 1735cm-1 付近のピーク強度の違いは、メタクリル酸をモノマ ーとする共重合体がグラフトされている可能性を示唆している。なお、未処理 RC 膜におい ても、 1735cm-1 付近に弱いピークが見られた。 このことから、未処理 RC 膜にも一部の CH2OH 基が酸化されたカルボキシル基が存在することが示唆される。 しかし、2500-3500cm-1 のピークは基材である RC 膜に存在する水酸基の影響を著しく受 けてブロードしてしまったため、MIP 膜中に存在するカルボキシル基を有効に解析するこ とはできなかった。また FT-IR では、MIP 層のカルボキシル基のスペクトルのみを分離して 定量することは難しかった。そこで、機器分析によらず、膜中のカルボキシル基を定量す る他の方法が必要であると考え、4-NPB によるカルボキシル基の定量法を考案した。. 60.

(22) [第 2 章]. Fig. 2-8. FT-IR spectrum of untreated RC membrane 1735cm-1:C=O of carboxyl group. 61.

(23) [第 2 章]. Fig. 2-9. FT-IR spectrum of untreated Theo-MIP membrane 1735cm-1:C=O of carboxyl group. 62.

(24) [第 2 章]. 2.5.2. サイクリックボルタンメトリーによるゲート効果の機構の推定. MIP の透過速度と poly (EDMA-co-MAA)の膨潤/収縮の関係を検討するため、 未処理電極、 Non-MIP 電極、Theo-MIP 電極を用いて、0.1M Tris-HCl(pH4.0-10.0)存在下におけるフェ ロシアン化物イオンの酸化電流値を測定した。結果を Fig. 2-10 に示す。 未処理 ITO 電極におけるフェロシアン化物イオンのピーク電流値は pH によらず一定であ った。一方、Non-MIP 電極、および Theo-MIP 電極では、pH の増大に伴ってピーク電流値 は同じように減少した。 また、Theo-MIP 電極におけるピーク電流値、およびゲート効果と硝酸カリウム濃度 (50mM-0.4M)の関係を調査した。結果を Fig. 2-11 に示す。硝酸カリウム濃度の増加に伴 い、鋳型物質存在下および非存在下における Theo-MIP の電流値はともに増加しながら近づ いて行き、ゲート効果は減少した。以上の結果から、Theo-MIP のゲート効果のメカニズム に関する仮説を立てた。導出される透過速度変化のメカニズムを Fig. 2-12 に示す。 Theo-MIP 電極と Non-MIP 電極におけるピーク電流値は、pH の増加に伴って同じように 減 少 し た 。 し た が っ て pH の 増 加 に 伴 う 電 流 値 の 減 少 は 、 グ ラ フ ト さ れ た poly (EDMA-co-MAA) の性質に起因すると考えられる。高 pH 溶液中では、カルボキシル基のプ ロトンが遊離するため、カルボキシル基の負荷電密度は増加する。したがって、poly (EDMA-co-MAA) 層は近傍のカルボキシル基同士の反発により膨潤する(Fig. 2-12-A) 。ITO 上にポリマーが不均一にグラフトされ、多孔質構造が形成されたと仮定すると 1)、高 pH 溶 液における透過速度の減少は、poly (EDMA-co-MAA)層の膨潤に伴う空隙率の低下に起因す る。低 pH 溶液ではカルボキシル基はほとんど荷電しないため、poly (EDMA-co-MAA)層は 収縮し、透過速度は増加する(Fig. 2-12-B) 。 このカルボキシル基の荷電によるポリマーの膨潤収縮を考慮すると、ゲート効果におけ る鋳型物質の作用は次のように推察できる。テオフィリンが ITO 上のポリマー層に侵入す るとき、カルボキシル基と水素結合し poly (EDMA-co-MAA)を収縮させる。観察されたゲー ト効果は、ポリマー層の収縮に伴う空隙率の増加に起因すると考える(Fig. 2-12-C)。 電解質による poly (EDMA-co-MAA)中の荷電の遮蔽もカルボキシル基間の反発を弱め、 poly (EDMA-co-MAA) を収縮させる。高濃度電解質溶液中におけるポリマー層の収縮によ って、フェロシアン化カリウムの酸化電流値が増大したと考えられる(Fig. 2-12-D) 。この ようにポリマーが強く収縮した場合、鋳型物質が MIP 内のカルボキシル基と相互作用して も、poly (EDMA-co-MAA)層の形状が変化できなくなる(「ゲートが開きっぱなし」の状態) と説明できる。. 以上の結果より、ポリマー層の不均一性、膨潤収縮、およびそれに伴う空隙率変化は、 MIP グラフト電極のゲート効果で重要な役割を果たしていることが分かった。少量の鋳 型物質で大きなゲート効果を得るためには、MIP 中に生じる静電的相互作用、およびポ リマーグラフト層の不均一性を考慮した MIP 設計が必要である。. 63.

(25) [第 2 章]. 0.8. 30. Anodic peak current [mA]. 20 0.6 15 0.5 10 0.4. Degree of gate effect [%]. 25. 0.7. 5. 0.3. 0 0.00. 0.05. 0.10. 0.20. 0.40. 0.50. KNO3 concentration [mol/l]. Fig. 2-10. Variation in anodic peak current and degree of gate effect of Theo-MIP/ITO with KNO3 concentration (squares, anodic peak current without theophylline; circles, anodic peak current with theophylline; triangles, gate effect). 64.

(26) [第 2 章]. Anodic peak current of ferrocyanide [mA]. 1.00. 0.80. 0.60. 0.40. 0.20. 0.00 3.0. 5.0. 7.0. 9.0. 11.0. pH of buffer solution [-]. Fig. 2-11 Relationship between anodic peak current of ITO electrode and pH of ferrocyanide solution (Test solution: potassium ferrocyanide 5 mM, Tris-HCl buffer 0.1 M, potassium nitrate 0.1 M. Electrodes: circles, Untreated ITO; triangles, Non-MIP/ITO; squares, Theo-MIP/ITO). 65.

(27) [第 2 章]. Redox marker (ferrocyanide) Electric repulsion. A) High pH Without template Swollen. -. -. -. -. -. -. -. -. ITO electrode. B) Low pH Without template Shrunk. ITO electrode. C) With template Shrunk. Template ITO electrode. D) High ionic strength Shrunk. Electrically shielded copolymer. ITO electrode. Fig. 2-12. Possible mechanism of change in permeability of MIP layer grafted onto an ITO electrode due to swelling and shrinking. 66.

(28) [第 2 章]. 2.5.3 2.5.3.1. 分子インプリントのゲート効果に電解質が与える影響 Non-MIP のゲート効果に電解質が与える影響. Non-MIP 膜の溶質透過速度に共存する電解質が与える影響について調査した。結果を Fig. 2-13 に示す。 電解質非存在下における鋳型物質存在下での透過速度の減少は 12%であった。しかし、 電解質として 0.1M KNO3 を用いたところ、電解質非存在下、テオフィリン存在下で見られ た溶質透過速度の減少は観察されなかった。 電解質が存在しない水溶液中においては、Poly(EDMA-co-MAA)のカルボキシル基はプ ロトンを解離し負に荷電している。このような場合、近接するカルボキシル基同士は電気 的に反発しあうためポリマー層を膨潤させていると考えられる。 一方、電解質が多量に存在する場合、カルボキシル基間の電気的反発を遮蔽するため、 ポリマー層は収縮する。0.1M KNO3 存在下ではポリマー層が強く収縮するため、テオフィ リン存在下においてポリマー層に変化が生じず、クレアチニンの KL が減少しなくなったと 考えられる。. 67.

(29) [第 2 章]. Absence of electrolytes. Gate effect [%]. -13 0.1M KNO3 (pH 5.8). ±0. 0.00. 0.50. 1.00. 1.50. 2.00. 2.50. 3.00. Overall mass transfer coefficient K L [µm/s]. Fig. 2-13 Influence of electrolytes to gate effect of Non-MIP membrane Green: Absence of theophylline, Blue: Presence of 5mM theophylline. 68.

(30) [第 2 章]. 2.5.3.2. Theo-MIP のゲート効果に電解質および pH が与える影響. 吉見らが Theo-MIP グラフト ITO を用いて行った電解質共存下でのボルタメトリの結果 (2.1)から、緩衝塩および電解質共存下では Theo-MIP のゲート効果は抑制されることが示 された。そこで、本研究で作製した MIP 膜においても、電解質がゲート効果を抑制するか 否かについて調査した。電解質の存在は MIP 膜と鋳型物質間に働く静電的相互作用を遮蔽 するため、静電的相互作用が MIP 膜のゲート効果に与える役割を調査することができる。 始めに、Theo-MIP のゲート効果の抑制が電解質の作用によるものなのか、あるいは緩衝 塩による MIP 層内の pH 変化の抑制に起因するものなのかを明確にするため、緩衝作用を 持たない電解質として KNO3 存在下、あるいは少量の水酸化ナトリウムで pH を 7.0 に調整 した KNO3 存在下でクレアチニンの KL を求めた。次に pH7.0 の 0.1M Tris-HCl 緩衝塩の存在 下の KL を求め、KNO3 存在下の結果と比較した。テオフィリン存在下、非存在下における クレアチニンの KL をまとめて Fig. 2-14 に示す。また、ゲート効果もグラフ上部に示した。 なお、テオフィリン存在下で透過速度を増加させる場合+、減少させる場合−と表記した。 電解質が存在しない場合、5mM テオフィリン存在による、クレアチニンの総括物質移動 係数の増大は約 21%である。 KNO3 濃度が 0.01M と希薄な場合は、クレアチニンの総括物質移動係数の増大は約 16%で あり、電解質非存在の場合に対して大きな抑制は見られなかった。 pH5.8 の 0.1M KNO3 存在下では、5mM テオフィリン存在による、クレアチニンの総括物 質移動係数の増大は約 6%にまで抑制された。 0.2M KNO3 存在下および 0.1M Tris-HCl 緩衝塩存在下では、5mM テオフィリンが存在す る場合としない場合を比較して、クレアチニンの透過速度に有意な変化は見られないもの の、むしろかすかに減少する傾向が見られた。 これらの結果から、緩衝作用を持たない電解質によっても、緩衝塩によっても Theo-MIP のゲート効果は抑制されることがわかった。また、基材が ITO でも RC 膜でもゲート効果の 抑制は認められた。 また、KNO3 水溶液の pH はやや酸側にシフトしており、約 pH5.8 である。本実験で使用 した緩衝溶液は pH7.0 に調整されており、この pH の違いがゲート効果に何らかの影響を与 えている可能性もあった。そこで、少量の NaOH で pH7.0 に調節した KNO3 水溶液を用い た同様の実験も行った。 その結果、ゲート効果はほとんど認められなかった。このことから共存する電解質が増 えるとゲート効果はさらに強く抑制されることが示唆される。また、pH7.0 に調節した KNO3 存在下では他の条件下と比較してクレアチニンの KL が大きく減少した。このことは 0.2M KNO3 存在下でも同様であった。これらの結果から、共存するイオンが増えることでも、ク レアチニンの透過は阻害されると言える。. 69.

(31) [第 2 章]. Absence of electrolytes. Gate effect [%] +21. 0.01M KNO3 (pH 5.8) +15 0.1M KNO3 (pH 5.8) +5 0.1M KNO3 (pH 7.0) +5 0.2M KNO3 (pH 5.8) -7 Tris-HCl buffer (pH 7.0) -3 0.00. 0.50. 1.00. 1.50. 2.00. 2.50. 3.00. 3.50. Overall mass transfer coefficient K L [µm/s]. Fig. 2-14. Influence of various electrolytes to gate effect of Theo-MIP membrane Green: Absence of theophylline, Blue: Presence of 5mM theophylline. 70.

(32) [第 2 章]. さらにこの結果は、電解質濃度の増加に伴ってゲート効果の抑制の度合も増加すること を示唆している。そこで、電解質 KNO3 の濃度を 0-0.2M の間で変化させ、電解質濃度とゲ ート効果、あるいは鋳型類似物質による透過速度変化の関係を調査した。電解質濃度とゲ ート効果の関係を Fig. 2-15 に示す。 Fig. 2-15 では横軸に電解質濃度、縦軸には鋳型物質あるいは鋳型類似物質による Theo-MIP の透過速度の変化を示した。 電解質存在下では、テオフィリンによる Theo-MIP のゲート効果は抑制された。また、電 解質濃度の増加に伴ってゲート効果はさらに大きく抑制された。電解質の存在によって透 過速度の変化が抑制される原因を Fig. 2-16 のように考察した。 Fig. 2-16 は MIP グラフト層内の鋳型物質に対する特異結合部位を示している。電解質 KNO3 存在下においては、電離したカリウムイオンと硝酸イオンが、特異結合部位内での鋳 型物質とカルボキシル基間の静電的相互作用を阻害するものと予想される。 電解質の存在によりゲート効果が抑制されたことから、Theo-MIP のカルボキシル基とテ オフィリンの間に生じる静電的相互作用が、Theo-MIP ゲート効果に重要な役割を果たして いることが示唆される。 一方、鋳型類似物質であるカフェインによる透過速度の変化も、電解質の存在により抑 制された。また、Fig. 2-15 では、電解質濃度の増加に伴い、テオフィリン存在下とカフェイ ン存在下での透過速度の間の差が小さくなっていった。この結果から、高濃度の電解質溶 液中では、透過速度に関して Theo-MIP はテオフィリンとカフェインを識別できないことが 分かる。Theo-MIP のテオフィリンに対する認識能にも、静電的相互作用は重要な要因であ ることが示唆される。. 71.

(33) [第 2 章]. Relative change of permeability of Theo-MIP by akaloids [%]. 30.0. 20.0. 10.0. 0.0. -10.0. -20.0 0.00. 0.05. 0.10. 0.15. 0.20. Concentration of KNO3 [mol/l]. Fig. 2-15 Influence of electrolytes to the gate effect Blue: Presence of 5mM theophylline, Red: Presence of 5mM Caffeine. 72.

(34) [第 2 章]. Fig. 2-16. Shielding of electrostatic interactions between a template and functional groups by electrolytes 73.

(35) [第 2 章]. 2.5.4. 分子インプリント膜の含水率の測定. 状態の異なる 4 種の膜(それぞれ、untreated、3-MPS、Theo-MIP、Caffe-MIP)の含水率 は、膨潤時間の違いによって変化することが予想された。そこで膨潤時間に対する含水率 の変化を求め、含水率が安定する時間および含水率の評価を行った。以下に、各膜の含水 率の経時変化を示した(Fig. 2-17-20) 。 各膜ともに膨潤時間の違いによってある程度のバラツキは見られるものの 40-60%の含水 率である。文献によると 8)、Cuprophan の含水率は 46 - 66%であり、今回得られた MIP グラ フト膜のデータはこの範囲内にあるので妥当な値であると思われる。膨潤時間 89 時間, 96 時間付近での含水率に大きな値が見られたが、これは実験誤差であると考えている。この データを除外して含水率の平均を算出した。この結果を Table 2-5 にまとめる。. Table 2-5 Swelling time [h]. Water contents of various membranes 24. 48. 96. untreated. 40. 44. Water content. 3-MPS. 44. 40. [v/v %]. Theo-MIP. 55. 55. 58. Caffe-MIP. 43. 41. 44. 113. 120. Average. 54. 57. 49 ± 8. 47. 44 ± 4. 48. 54. 54 ± 4. 58. 51. 47 ± 7. 40-60%の間の含水率でほぼ安定した。水の浸透が平衡に達するまでの時間は 48 時間以上 と推測される。含水率の平均では、他の膜と比較して 3-MPS の含水率が低く Theo-MIP の 含水率が高いことがわかった。シランカップリング剤によりイソプロペニル基を導入した 膜表面は疎水性になっているため、水の浸透が遅い可能性が示唆される。 また、Theo-MIP 膜と Caffe-MIP 膜の含水率は他の膜に比べ多少高く、未処理膜に比べ水の 浸透速度が早い。これらの結果から、重合処理によって、膜の空隙率が増加した可能性、 あるいはポリマー層が水で膨潤しやすい可能性が示唆された。. 74.

(36) [第 2 章]. Water content [v/v %]. 80 60 40 20 0 0. 24. 48. 72. 96. Swelling time [h] Fig. 2-17. Time courses of contained water in untreated RC membrane 75. 120.

(37) [第 2 章]. Water content [v/v %]. 80 60 40 20 0 0. 24. 48. 72. 96. Swelling time [h] Fig. 2-18. Time courses of contained water in 3-MPS-treated membrane 76. 120.

(38) [第 2 章]. Water content [v/v %]. 80 60 40 20 0 0. 24. 48. 72. 96. Swelling time [h] Fig. 2-19. Time courses of contained water in Theo-MIP membrane 77. 120.

(39) [第 2 章]. Water content [v/v %]. 80 60 40 20 0 0. 24. 48. 72. 96. Swelling time [h] Fig. 2-20. Time courses of contained water in Caffe-MIP membrane 78. 120.

(40) [第 2 章]. 2.5.5 2.5.5.1. 4-NPB を用いた分子インプリント層中のカルボキシル基の定量 ジ-n-プロピルアミンを用いた 4-NPB 法によるカルボン酸の定量性. 4-NPB 法のカルボン酸の定量性を確認するため、10-7mol オーダーのマロン酸の検量線を 作製した。結果を Fig. 2-21 に示す。 先述のように文献に示された方法では、ジメチルアミンの高い揮発性のため、安定した 吸光度を測定することはできなかった。そこで、常温で安定なジ-n-プロピルアミンを発色 試薬として用いたところ、マロン酸含有量と吸光度の間に高い直線関係が得られ、再現性 も良かった。本結果から、ジ-n-プロピルアミンを発色試薬として用いる本方法では、10-7mol オーダーのカルボキシル基を高精度に定量できることが示された。. 2.5.5.2. 4-NPB の検量線. 本研究では 4-NPB と MIP 層中のカルボキシル基を反応させ、4-NPB の濃度変化からカル ボキシル基を定量する。したがって、4-NPB の検量線が必要となる。そこで、カルボン酸 濃度一定の条件で 4-NPB の濃度を変化させ、4-NPB と吸光度の相関を調査した。この場合 も、2.5.5.1 と同様、ジ-n-プロピルアミンを発色試薬として用いた。結果を Fig. 2-22 に示す。 得られたプロットを 3 次曲線で回帰したところ、4-NPB と吸光度との間には充分高い相 関が見られた。また、3 次曲線で回帰されたことから、4-NPB 濃度が低い場合にはマロン酸 との反応が遅いことが示唆される。この結果から、MIP 層中のカルボキシル基の定量では、 4-NPB の濃度を 0.3 vol%とした。. 79.

(41) [第 2 章]. 0.9. y = 1615090 x 2 R = 0.999. ABS [-]. 0.6. 0.3. 0.0 0.0. 0.2. 0.4. Concentration of malonic acid [µmol]. Fig. 2-21. Quantification of malonic acid by 4-NPB method 80. 0.6.

(42) [第 2 章]. 1.4 1.2. y = -24.416x3 + 17.584x2 + 0.8861x R2 = 0.9958. ABS [-]. 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 0.00. 0.10. 0.20. 0.30. 0.40. 4-NPB Concentration [vol%]. Fig. 2-22. Calibration curve for 4-NPB concentration 81.

(43) [第 2 章]. 2.5.5.3. MIP グラフト膜に存在するカルボキシル基の定量. カルボキシル基と 4-NPB の反応を利用し、Theo-MIP 膜、3-MPS-treated、untreated RC 膜 の 1cm2 当たりに含まれるカルボキシル基の定量を試みた。 Untreated、3MPS-treated、Theo-MIP 1 cm2 当たりに対する 4-NPB の吸着量を Fig. 2-23 に示す。 各膜中のカルボキシル基量の差を利用して MIP グラフト層中のカルボキシル基を定量し たが、3 つの膜に対する 4-NPB 吸着量には有意な差は認められなかった。 これらの結果から、基材である RC 膜が 4-NPB に対して高い親和性を有することが考え られた。基材である RC 膜にも空気酸化により生成したカルボキシル基が多く存在している 可能性が考えられる。 RC 膜と反応した 4-NPB 量は、ポリマーグラフト後の Theo-MIP と比較してほとんど変化 しないことから、グラフトされたポリマー層中のカルボキシル基の密度は 10-9mol/cm2 以下 と非常に少ないことが示唆された。. 82.

(44) [第 2 章]. Untreated 3-MPS Theo-MIP. 0.0. 1.0. 2.0. 3.0 -9. 4.0 2. Amount of adsorbed 4-NPB [×10 mol/cm ]. Fig. 2-23. Quantification of carboxyl groups in various membranes. 83.

(45) [第 2 章]. 総括 1. 未処理 RC 膜の FT-IR スペクトルと比較して、Theo-MIP 膜のスペクトルでは 1735cm-1 付 近に現われるカルボキシル基の C=O に由来するピークの強度が明らかに増大する。この ピーク強度の増大は、膜にグラフトされたポリマー中のカルボキシル基に起因する。 2. 電解質が存在しない場合、Theo-MIP はテオフィリン存在下で 20 -30%の透過速度の増大 を示したが、0.1M KNO3 存在下では、透過速度の増大は 5%程度にまで減少した。したが って、共存する電解質は、Theo-MIP とテオフィリンの間の静電的相互作用を遮蔽し、ゲ ート効果を抑制する。 また、共存イオン種が増えると遮蔽効果の影響も大きくなり、ゲート効果はより減少 する。さらに、電解質濃度の増加に伴って、ゲート効果は著しく抑制される。高電解質 溶液中では、テオフィリンによる透過速度の変化とカフェインによる透過速度の変化に ほとんど差がないことから、テオフィリンとカフェインを識別できなくなる。 3. 4-NPB を用いたカルボキシル基の定量法では、4-NPB に対してセルロース膜も高い親和 性を有しているため、Theo-MIP 膜のカルボキシル基の量を厳密に定量することはできな いが、 Theo-MIP 膜のカルボキシル基の密度は 10-9 mol/cm2 以下であることが示唆される。. 84.

(46) [第 2 章]. 参考文献 1) Yoshimi, R. Odaira, T. Iiyama and K. Sakai, ““Gate effect” of thin layer of molecularly-imprinted poly(methacrylic acid-co-ethyleneglycol dimethacrylate) ”, Sens. Actuators, B, 73, 49-53(2001) 2) 藤 隆一、水島 裕 編、岩波講座−現代医学の基礎 13−薬物動態と薬効、第一版、岩波 書店 (1999) 3) K. Hattori, Y. Yoshimi, T. Ito, K. Hirano, F. Kohori and K. Sakai, “Effect of electrostatic interactions on gate effect in molecularly imprinted polymers”, Electrochemistry, 72, 508-510 (2004) 4) S. A. Piletsky, T. L. Panasyuk, E. V. Piletskaya, I. A. Nicholls and M. Ulbricht, “Receptor and transport properties of imprinted polymer membranes - a review”, J. Membr. Sci, 157, 263-278 (1999) 5) T. Kobayashi, H. Y. Wang and N. Fujii, “Molecular imprint membranes of polyacrylonitrile copolymers with different acrylic acid segments”, Anal. Chim. Acta, 365, 81-88(1998) 6) 田中 誠之 編、有機化合物の構造決定法、産業図書、第一版(1998) 7) 日本分析化学会 編、分析化学便覧、改訂四版、丸善、東京(1996) 8) 吉田 文武、酒井 清孝 著、化学工学と人工臓器、第二版、共立出版、東京(1992) 使用記号 W. 膜重量. [g]. ρ. 密度. [g・m-3]. L. 膜厚. [m]. α. 含水率. [-]. 85.

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参照

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