総 胆 管 結 紮 ラ ッ ト に お け る 膵 内 外 分 泌 組 織 の 形 態 学 的 変 化, と く に 電 顕 学 的 検 討 沈 敬 補 康 市〓 金 義 哲 佐 竹 克 介 梅 山 馨1) ♪GH♪要 旨♪GS♪: 総 胆管 結 紮 ラ ッ トに おけ る膵 内外 分泌組 織 の経 時的 変化 を主 に電 顕学 的 に検討 した. 総 胆管 結紮 早期 (2週 後) で は, 多 くの膵腺 房細 胞 は形態 学 的 に機 能亢進 像 を呈 し, 膵 外分 泌 は亢進 してい る もの と考 え られ た. また, ラ島B細 胞 も形態 学 的 に機能亢進 像 を呈 し, 膵 内分泌機 能 検査 で も血清 イ ンス リ ン値 の上 昇 が認 め られた. しか し, 総 胆管 結紮 後期 (4週 後) に なる と多 くの腺房 細胞 は萎 縮 像 を呈 し, 外 分泌機 能 は低 下す る もの と考 え られた. また, ラ島B細 胞 では退 行性 変化 が み られ, A細 胞 の 多 くは 機 能亢進 像 を呈 してい た. ♪GH♪索 引用 語♪GS♪: ラ ッ ト総 胆管 結紮, 閉塞性 黄疸, 膵 外 分泌 細胞, 膵 内分 泌細 胞 I . は じめ に 臨 床 的 に, 胆 石 症 や 膵 頭 部 腫 瘍 な ど に よ る閉 塞 性 黄 疸 は 日常 よ く経 験 され, 黄 疸 時 に行 つ た 手 術 で は, 術 後 合 併 症 も多 く併 発 し致 命 的 に な る場 合 が 多 い の は周 知 の 事 実 で あ る. ま た, 黄 疸 を 合 併 した 症 例 の 剖 検 時 の 所 見 で は, 腎 病 変 な らず, 膵 に も比 較 的 高 率 に 壊 死 像 や 慢 性 膵 炎 の 合 併 が み られ た と報 告 さ れ て い る1)2). か か る 胆 道 病 変 に 膵 病 変 が 合 併 す る こ と は1901年
Opie3)の common channel theory 以来 多 く論 じ
られ て来 た が4)∼6), 閉 塞 性 黄 疸 が 膵 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て経 時 的 に検 討 した 報 告 は 比 較 的 少 な い. そ こで, 著 者 は実 験 的 に閉 塞 性 黄 疸 を 作 成 し膵 組 織 の 経 時 的 変 化 を主 に 電 顕 学 的 に 検 討 し2, 3 の 知 見 を得 た の で 報 告 す る. II. 実 験 材 料 お よび 方 法 実 験 材 料: 実 験 動 物 は 体 重 約200gの wister 系 ラ ッ トを用 い, 単 開 腹 群10匹, 総 胆 管 結 紮 後2お よ び4週 群 各15匹 を使 用 した. 実 験 方 法 1. 総 胆 管 完 全 結 紮 ラッ トの 作 成
24時 間 の 絶 食 後, Pentobarbital sodium (Nem
butal, Abbott Laboratories)30mg/kgの 腹 腔 内
投 与 に よ る全 身 麻 酔 下 に て 無 菌 的 操 作 の も とに 上 腹 部 正 中 切 開 で 開 腹 し, 総 胆 管 を左 右 肝 管 分枝 部 直 下 で 二 重 結 紮 し切 離 し た. 切 離 後 腹 腔 内 に生 理 食 塩 水10mlを 注 入 し閉 腹 した. 2. 検 査 方 法 単 開 腹 群 お よび 総 胆 管 結 紮 後, 2お よ び4週 群 の 実 験 ラ ッ トを24時 間 の 絶 食 後 Nembutal 全 麻 酔 下 に て 開 腹 し, 採 血 と同 時 に膵 組 織 を採 取 した. 採 取 され た 血 液 は4℃ で 血 漿 を 分 離 し生 化 学 的 検 査 時 まで 凍 結 保 存 した. 血 清 イ ン ス リン値 (IRI) お よ び 血 漿 グ ル カ ゴ ン 値 (IRG) は い ず れ も radioimmunoassay 法 で 測 定 し, IRGは30K抗 体 を使 用 した. 採 取 した膵 組 織 の一 部 は 光 学 顕 微 鏡 に よ る病 理 組 織 学 的 検 索 に, 他 は 電 子 顕 微 鏡 的 検 索 の た め に 用 い た. 尚, チ モ ー ゲ ン顆 粒 の 計 量 はIBAS 1 VIDEO PLANを 用 い て 測 定 した. i) 光 学 顕 微 鏡 に よ る病 理 組 織 学 的 検 索 採 取 した 膵 組 織 は, 速 や か に10%ホ ル マ リ ン液 に 固定 し, ヘ マ トキ シ リン ・エ オ ジ ン染 色 を行 つ た 後 検 鏡 した. ii) 電 子 顕 微 鏡 学 的 検 索 採 取 した 膵 組 織 は, た だ ち に0.2M燐 酸 緩 衝 液 (pH7.4) で 希 釈 した6%グ ル タ ール ア ル デ ハ イ ドの 中 で 約1mm3の 大 き さ に切 離 し, 4℃ の条 件 1) 大 阪 市 立大 学 第1外 科 学 教 室 (92)
昭 和59年1月 93 下 で 約2時 間 の 前 固 定 を 行 つ た. そ の 後, 燐 酸 緩 衝 液 で 洗 浄 後1%四 酸 化 オ ス ミ ウ ム で 約2時 間 後 固 定 を 行 つ た. 再 度 燐 酸 緩 衝 液 で 洗 浄 し, 常 温 に て エ タ ノ ー ル 系 列 で 脱 水 後 Epon 812 (Luft7)) に て 包 埋 し た. 次 に Porter-Blum MTIIBの ウ ル ト ラ ミ ク ロ トー ム で 超 薄 切 片 を 作 成 し, 酢 酸 ウ ラ ニ ウ ム お よ び ク エ ン 酸 鉛 の 二 重 染 色 を 行 い, 日立H-300型 電 子 顕 微 鏡 下 で 観 察 し た. な お 超 薄 切 片 作 成 前 に 約 500mμ 厚 の 切 片 を 作 成 し ト ル イ ジ ン ブ ル ー 染 色 を 行 い 超 薄 切 片 用 に ト リ ミ ン グ し た. III. 実 験 成 績 1. 総 胆 管 結 紮 後 の 生 化 学 的 諸 検 査 お よ び 膵 内 分 泌 ホ ル モ ン の 経 時 的 変 動 A) 血 漿 生 化 学 的 検 査 (Table 1) 1) 血 清 ビ リ ル ビ ン 値 血 清 総 ビ リ ル ビ ン 値 は 結 紮 前 値0.2mg/dlに 対 し, 結 紮 後2週 で は6.3±1.1mg/dlと 著 明 に 上 昇 し, 以 後 徐 々 に 上 昇 し4週 後 で は8.3±1.4mg/dl で あ つ た. こ の う ち 直 接 ビ リル ビ ン 値 は 結 紮 前 値 0.1mg/dlに 対 し, 結 紮 後2週 で は, 5.1±1.0mg/ dl, 4週 後 で は5.7±1.1mg/dlで あ り, 直 接 ビ リル ビ ン 値 の 上 昇 が 著 明 で あ つ た . 2) Al-p値 (カ イ ン ド ・キ ン グ 法) 結 紮 前 値13.1±1.1単 位 (U) に 対 し て, 結 紮 後 2週 目 で は51.4±8.2Uと 急 激 に 上 昇 し て い た が, 結 紮4週 後 で は37.9±9.3Uと や や 低 下 し て い た. 3) s-GOT, s-GPT値 (U.V法)
結 紮 前 値GOT 159.2±15.2U, GPT 22.4±5U に 対 し, 結 紮2週 後 で はGOT 1516±340U, GPT178±91U と 著 明 に 上 昇 し て い た が, 結 紮4 週 後 で は1062±280U, GPT136±82Uと 低 下 傾 向 を 示 し た. 4) TTT値, ZTT値 結 紮 前 値 は, TTT 0.3±0.1U, ZTT 2.6±0.3 Uで あ り, 結 紮 後2週 で はTTT 1.5±0.4U, ZTT 2.7±0.6U, 4週 後 で はTTT 1.0±0.3U, ZTT 2.5±0.4Uで 著 変 は 認 め な か つ た. 5) 血 清 総 蛋 白 量 結 紮 前 値 は, 5.2±0.2g/dlで あ り, 結 紮 後2週 で は5.7±0.6g/dlと 著 変 を 認 め な か つ た が, 4週 後 で は4.2±0.7g/dlと や や 低 下 し て い た. 6) 血 清 コ レ ス テ ロ ー ル 値 結 紮 前 値42±3mg/dlに 対 し, 結 紮 後2週 で は 91.3±7mg/dlと 上 昇 し て い た が, 4週 後 で は 55±5mg/dlと や や 低 下 し て い た. 7) 血 清 ア ミ ラ ー ゼ 値 (ブ ル ー ス タ ー チ 法) 結 紮 前 値4,332±397IU/Lに 対 し, 結 紮2週 後 で は4,157±541IU/L, 4週 後 で は4,496±664IU/ Lで あ り著 変 は 認 め な か っ た. B) 膵 内 分 泌 能 検 査 (Fig. 1) i) 血 清 イ ン ス リ ン値 (RIA固 相 法) 結 紮 前 値6.6±0.8μu/mlに 対 し, 結 紮 後2週 で Table 1 Liver function and serum amylase levels after the ligation of the common
は13.3±1.5μu/mlと 著 明 な 上 昇 を 示 した が, 4 週 後 で は5.5±0.7μu/mlと 低 下 して い た. 2) 血 漿 膵 グ ル カ ゴ ン値 (RIA 2抗 体 法) 結 紮 前 値96±18pg/mlに 対 し, 結 紮 後2週 で は 292±124pg/mlと や や 上 昇 し て い た が, 4週 後 で は1,063±453pg/mlと 著 明 に上 昇 して い た. 2. 総 胆 管 結 紮2週 後 の膵 所 見 A) 光 学 顕 微 鏡 的 所 見 腺 腔 と小 膵 管 腔 の拡 張 が 正 常 膵 に比 し著 明 で あ り, 多 くの腺 房 細 胞 で は 細 胞 の 肥 大 お よび チ モ ー ゲ ン・顆粒 の増 加 傾 向 が み られ るが, 部 分 的 に は細 胞 の染 色 性 が低 下 し, 腺 腔 構 造 の くず れ た 変 性 壊 死 像 が 認 め られ た. ラ氏 島 は な お よ くそ の 形 態 が 保 た れ, 染 色 性 も良 好 で, む し ろ肥 大 傾 向 を示 す ラ 島細 胞 が 多 く認 め られ た (Fig. 2). B) 電 子 顕 微 鏡 的 所 見 大 多 数 の 腺 房 細 胞 は そ の極 性 が よ く保 た れ 基 底 膜 側 で は 明 瞭 な ほ ぼ 円 形 の核 が 認 め られ る. また, ゴル ジ装 置 の 発 達 は 良 好 で , ゴル ジ装置 付近 には prozymogen 顆 粒 が み られ, 粗 面 小 胞 体 は槽 の拡 大 が 明 らか で, ミ トコ ン ド リア も腫 大 し ク リス タ も明 瞭 で あ る. さ ら に 多 数 の zymogen 顆 粒 が 腺 腔 側 にみ られ, 腺 腔 の拡 張 と腺 腔 内 に amorphous material が 認 め られ た(Fig. 3). し か し, 部 分 的 に は細 胞 内 小 器 官 は不 鮮 明 で zymogen 顆 粒 の 減 ・ 少 と電 子 密 度 の低 下 が み られ, 細 胞 質 内 に は 大 き な autophagosome の 観 察 され る変 性 壊 死 像 も認 め られ た. また, 小 膵 管 腔 も拡 張 が み られ, 管 腔 内 に 濃縮 分 泌 物 が 認 め られ た. 一 方, ラ 島B細 胞 の 多 くで は 粗 面 小 胞 体 の 槽 の 開 大, cristae の 明瞭 な 多 数 の ミ トコ ン ド リア, よ Fig. 1 Serum insulin (IRI) and plasma glucagon
(IRG) levels after the ligation of the common bile duct.
Fig. 2 Light micrograph of the pancreas at 2nd weeks after ligation (H-E Staining,•~200)
Fig. 3 Electron micrograph of the acinar cells at 2nd weeks after ligation. (•~5,000). A lot of zymogen granules (Z) were preserved and intracellular organells were well developed. N: Nucleus, G: Golgi Apparatus, Mt: Mitochondria, rER: rough Endoplasmic Reticulum, Lu: Acinar lumen
昭 和59年1月 95 く発 達 した ゴル ジ装 置 が み られ, 電 子 密 度 の高 い 芯 を 有 す る イ ンス リン顆 粒 が 豊 富 に み られ, ゴル ジ 装 置 付 近 に も多 くの幼 若 分 泌顆 粒 が 認 め られ た (Fig. 4). また, 毛 細 血 管 腔 に 面 した 部 分 で は, 種 々の 電 子 密 度 の 分 泌顆 粒 が 多 数 み られ, 顆 粒 膜 同 志 の 融 合 も さ か ん で 血 管 内 腔 に 向 う Ω 状 の 開 口放 出 像 も しば しば 観 察 され た (Fig. 5). 他 方, A細 胞 は ラ島 周 辺 に 存 在 し, 比 較 的 大 き な 楕 円形 の 核 を有 し, 細 胞 質 内 で は電 子 密 度 の 高 い 多 数 の 分 泌顆 粒, 散 在 す る小 さ な ミ トコ ン ド リア, よ く 発 達 した ゴル ジ装 置 が み られ る が, ほ ぼ 正 常A細 胞 と 同様 の 像 を呈 して いた. 3. 総 胆 管 結 紮4週 後 の 膵 所 見 こ の 時期 に な る と実 験 動 物 の 栄 養 状 態 は か な り 悪 化 し, 膵 は 浮 腫 状 で 腹 腔 内 で は黄 染 が ひ ど く腹 水 が 認 め られ た. A) 光 学 顕 微 鏡 的 所 見 総 胆 管 結 紮2週 後 にみ られ た よ うな 腺 腔 や 細 膵 管 の 拡 張 は み られ ず, 腺 房 細 胞 の染 色 性 の 低 下 と 萎 縮 が著 明 に な り, 腺 房 や 小 葉 間 隙 の 開 大 が 明 ら か で あ つ た. ま た, ラ 島細 胞 に も染 色 性 の 低 下 と 粗鬆 化 が 認 め られ た (Fig. 6). B) 電 子 顕 微 鏡 的 所 見 大 多 数 の 腺 房 細 胞 は な お そ の 極 性 は よ く保 た れ て い る が, 腺 腔 の 狭 小 化 が 著 明 で, 粗 面 小 胞 体, ゴル ジ装 置, ミ トコ ン ド リア な どの 細 胞 内 小 器 官 の 発 達 は極 め て 悪 く萎 縮 像 を 呈 し, チ モ ー ゲ ン顆 粒 は 数 の 減 少 と縮 小 化 が 明 ら か で あ つ た (Fig. 7). ま た, 部 分 的 に は 不 正 形 の 核, 減 少 した チ モ ー ゲ ン顆 粒, 大 き な vacuole の 認 め られ る 腺 房 細 胞 も観 察 され た. 一 方 , ラ島B細 胞 の多ぐ で は, 核 の 形 態 は よ く 保 た れ て い るが, 細 胞 質 内 で は 分 泌顆 粒 は減 少 し, 粗 面 小 胞 体 の 槽 の 拡 張, 膨 化 した ミ トコ ン ド リア, 多 く の vacuole や ラ イ ソ ゾ ー ム が 観 察 さ れ た (Fig. 8). ま た, ラ島A細 胞 で は正 常 像 を 呈 す る部 Fig. 4 Electron micrograph of B cells at 2nd
weeks after ligation. (•~10,000). Many of B cells preserved a lot of secretory granules and their intracellular organelles were well developed. Sg: Secretory granule, rER: rough Endoplasmic Reticulum, G: Golgi apparatus, Mt: Mitochon dria
Fig. 5 Electron micrograph of B cells at 2nd weeks after ligation. (•~30,000) Granular mem branesfused with each other and (ƒ¶-shaped exocytosis (•ª) were often observed. Ca: Capil larylumen, Sg: Secretory granule
Fig. 6 Light micrograph of pancreas at the 4th weeks after ligation, (H-E Staining,•~100)
分 もみ られ るが, 多 くのA細 胞 で は 鮮 明 な核 を 有 し, 細 胞 質 内 で は, 多 数 の分 泌顆 粒, よ く発 達 し た ゴル ジ装 置, cristae の 明 瞭 な ミ トコン ド リア, 槽 の 開 大 した 粗 面 小 胞 体 な どが観 察 さ れ, また, ゴル ジ装 置 付 近 に幼 若 分 泌顆 粒 が み られ, よ く発 達 した 粗 面 小 胞 体 の槽 に多 数 の リボ ゾー ムの 付 着 が 認 め られ るA細 胞 も観 察 され た (Fig. 9). さ ら に, 毛 細 血 管 腔 に面 した 部 位 で は, 多 数 の 分 泌顆 粒 と Ω 状 の 開 口放 出 像 や 血 管 内 皮 細 胞 内 に遊 離 され た 分 泌顆 粒 が認 め られ た (Fig. 10). 4. 総 胆 管 結 紮, 2お よ び4週 後 に お け る チ モ ー ゲ ン顆 粒 の 量 的 変 化 (Table 2) 単 開 腹 群 に お け る膵 腺 房 細 胞 で は, チ モ ー ゲ ン 顆粒 数 は平 均43±8個 で あ り, 直 径 は 平 均0.76±
Fig. 7 Electron micrograph of acinar cells at the 4th weeks after ligation. Acinar lumen (•ª) became narrow and the acinar parenchyma became atrophic with marked decrease of zymogen granules.(•~5,000). N: Nucleus, rER: rough Endoplasmic Reticlum
Fig. 8 Electron micrograph of B cells at the 4th weeks after ligation. Many of B cells showed degenerative changes: decrease in their secretory granules, swollen cisternae of the rough endoplas micreticulum and appearance of vacuoles. (•~ 10,000). V: Vacuole, Ly: Lysosome, Mt: Mito chondria,Sg: Secretory granule
Fig. 9 Electron micrograph of A cells at the 4th weeks after ligation. Many of A cells showed enlargement of the Golgi apparatus and juvenile secretory granules were observed around them.
(•~8,000) N: Nucleus, G: Golgi apparatus, rER: rough Endoplasmic Reticulum.
Fig. 10 Electron micrograph of A cells at the 4th weeks after ligation. (•~25,000). ƒ¶-shaped
exocytosis (•ª) were often observed at the capil larylumen. Sg: Secretory granuled, Ca: Capillar ylumen
昭和59年1月 97 0.18μmで あつ た. 総 胆 管 結 紮2週 後 で は顆 粒 の 直 径 は0.77±0.22μmと 著 変 は 認 め な い が, 顆 粒 数 は88±11(p<0.05) と統 計 的 に優 位 の 増 加 を示 した. 総 胆 管 結 紮4週 後 で は顆 粒 の直 径 は0.42± 0.09(p<0.05) と縮 小 が み られ, そ の 数 も25±5 (p<0.05) と統 計 的 に優 位 に減 少 を 示 した. IV. 考 案 肝 障 害 時 に 膵 に も機 能 お よ び形 態 的 に 種 々 の 変 化 が 生 じ る こ とが知 られ て い る8). Zieve ら9)およ び 広 瀬10)は肝 障 害 が 高 度 に な る に つ れ 膵 外 分 泌 能 も低 下 す る と報 告 して い る. ま た, 肝 障 害 時 の膵 分 泌 能 に 関 し て も血 清 イ ンス リ ン値 は 高 反 応 を示 す も の が 多 い が, 耐 糖 能 異 常 が 高度 に な る と分 泌 能 は低 下 す る. 組 織 学 的 に も ラ 島 の肥 大, 増 生 を 示 す もの もみ られ るが, 肝 障 害 の進 展 と共 に ラ島 細 胞 の萎 縮, 粗鬆 化 な ど退 行 性 変 化 が 生 じ る と報 告 され て い る11)∼16). ま た, 閉 塞 性 黄 疸 患 者 の剖 検 膵 で は し ば しば 巣 状 壊 死 や 脂 肪 壊 死, 腺 房 小 導 管, 膵 管 の 拡 張 が み られ, 閉 塞 性 黄 疸 時 に は膵 実 質 が壊 死 に陥 りや す い 状 態 に な る の で あ ろ うと指 摘 され て い る1)2). こ の様 に 閉 塞 性 黄 疸 を 伴 う肝 障 害 時 に は 膵 障 害 も合 併 す るの は 事 実 で あ る が, そ の病 態 に つ い て は 詳 細 な 検 討 はみ られ ず 明 らか で な い. 閉 塞 性 黄 疸 に伴 う肝 の病 態 につ い て 佐 藤 ら17)は 総 胆 管 結 紮 ラ ッ トの 実 験 的 研 究 で血 中 総 ビ リル ビ ン, GOT, GPT, Al-P値 な ど の機 能 検 査 で は, こ れ らは 総 胆 管 結 紮 と共 に上 昇 し3週 前 後 で 最 高 値 を 示 し, そ の後 漸 次 低 下 す るが, 肝 の 組 織 学 的 検 索 で は 総 胆 管 結 紮 に よ る 閉 塞 期 間 が 長 び くに つ れ 肝 細 胞 の 減 少 と線 維 の増 生 が 進 行 し, 結 紮4週 後 で は部 分 的 に偽 小 葉 の構 築 が み られ, 6週 後 に は 胆 汁 性 肝 硬 変 の 像 を 呈 す る と述 べ て い る. 永 川 ら18)も犬 で 同様 の 実 験 を 行 な い 閉 塞 期 間 と肝 の 線 維 化 は 平 行 して 増 強 す る と報 告 し て い る. 著 者 の 成 績 で は 血 中総 ビ リル ビ ン値 は 結 紮2週 後 ま で は 急 激 に 上 昇 しそ の 後 ほ ぼ 横 這 い 状 態 を 示 した が, GOT, GPT, Al-P値 は佐 藤 ら17)の報 告 と ほ ぼ 同 様 の経 過 を 示 した. ま た, 血 清 総 蛋 白質 は 結 紮 前 値 5.2±0.2g/dlに 対 し, 結 紮2週 後 で は5.7±0.6g/ dlで 栄 養 状 態 は な お 良 好 で あ つ た が, 4週 後 に な る と4.2±0.7g/dlと 低 下 傾 向 が み られ た. 一 方 , 胆 道 閉 塞 患 者 の 膵 外 分 泌 機 能 は, 一 般 に 亢進傾 向 に あ る とい わ れ, 犬 や ラ ッ トで 総 胆 管 結 紮 に よ る 実 験 で も比 較 的 短 期 日に 閉 塞 機 転 が 発 生 す れ ば 膵 外 分 泌 機 能 は亢進 す る と報 告 さ れ て い る19). 著 者 の実 験 結 果 に よ る と総 胆 管 結 紮2週 後, す なわ ち, 早 期 の 完 全 閉 塞 性 黄 疸 時 の 膵 外 分 泌 組 織 は, 光 顕 的 に は腺 房 細 胞 の 肥 大, 腺 腔 お よ び 小 膵 管 の拡 張 が 著 明 で, 電 顕 的 に は 腺 房 細 胞 は極 性 が 良 く保 た れ, 良 く発 達 した ゴル ジ装 置, 槽 の 拡 大 した粗 面 小 胞 体, 腫 大 した ミ トコ ン ド リア, 多 数 の チ モ ー ゲ ン顆 粒 が み られ, 拡 張 した 腺 腔 や 小 膵 管 内 に は 分 泌 物 で あ る amorphous material が 観 察 され た. ま た, 腺 房 細 胞 内 の チ モ ー ゲ ン顆 粒 の定 量 分 析 に関 し, ラ ッ トの 正 常 膵 腺 房 細 胞 で は, Ermak ら20)は平 均45±3個 と報 告 して い る. 著 者 の成 績 で も結 紮 前 値 は43±8個 で あつ た が, 結 紮 2週 後 で は88±11個 で 明 ら か に チ モ ー ゲ ン顆 粒 数 の増 加 (p<0.05) が 認 め られ た. これ ら の所 見 は 形 態 学 的 に 分 泌亢進 を 示 唆 す る も の で あ り, 閉 塞 性 黄 疸 早 期 で は 膵 外 分 泌 能 は亢進 す る も の と考 え られ た. 閉 塞 性 黄 疸 時 の膵 外 分 泌 機 能亢進 の 原 因 に関 し て は 尚不 明 で あ る が, 膳 所 ら21)は臨 床 的 お よ び 実 験 的 に総 胆 管 完 全 閉 塞 例 で 高 セ ク レ チ ン血 症 を み て い る. ま た, 馬 場 ら22)は膵 に 対 し て trophic action の あ る trypsin inhibitor (Foy-305) を正 常 な ら び に 総 胆 管 結 紮 ラ ッ トに 投 与 し, 後 者 で の膵 重 量 が 有 意 に 増 加 して い る こ とを示 し, そ の原 因 と して セ ク レ チ ン以 外 に も コ レキ ス ト ・パ ン ク レ
Table 2 Diameter and number of zymogen granules in acinar cells.
(mean•}SD) (* p<0.05)
ア チ ミン(CCK-PZ)な どの 体 液 性 物 質 の 障 害 肝 で の 不 活 性 化 阻 害 を想 定 して い る. 著 者 の 成 績 で は, お もに 腺 房 細 胞 に形 態 学 的 に 分 泌 機 能亢進 像 が み とめ られ た こ と か ら, 標 的 細 胞 が 腺 房 細 胞 で あ る CCK-PZあ る い はCCK-PZ類 似 物 質 の 関 与 が 示 唆 さ れ た. 一 方 , 悪 性 腫 瘍 に よ る長 期 黄 疸 症 例 で は, 総 ア ミラ ー ゼ 量 お よ び 重 炭 酸 塩 濃 度 の 低 下 が 指 摘 さ れ23), ま た, Zieve ら9)およ び広 瀬10)も肝 障 害 が 高 度 に な る に した が い膵 外 分 泌 能 は 低 下 す る と報 告 し て い る. 著 者 の 成 績 で は 総 胆 管 結 紮4週 後 の 膵 外 分 泌 組織 は染 色 性 の低 下 や 萎 縮 が 著 明 で, 腺 房 細 胞 の 電 顕 所 見 で も細 胞 内 小 器 官 の 発 達 は極 め て 悪 く, チ モ ー ゲ ン顆 粒 も density が低 下 し, 定 量 分 析 で も数 の 減 少 と縮 小 化 が 明 ら か で あ つ た (p< 0.05). こ の こ と か ら, 閉 塞 性 黄 疸 が 遷 延 し肝 障 害 が 進 行 す る と膵 外 分 泌 機 能 は 低 下 す る も の と考 え られ た が, しか しそ の原 因 につ い て は 長 期 閉 塞 性 黄 疸 に よ る栄 養 障 害, 障 害 肝 に お け る蛋 白合 成 阻 害, 向膵 ホ ル モ ン の 分 泌低 下 あ るい は膵 外 分 泌 抑 制 ホ ル モ ン の上 昇 な どが 考 え られ るが 詳 細 は不 明 で あ り今 後 の検 索 が 待 た れ る. つ ぎ に, 閉 塞 性 黄 疸 時 に は 耐 糖 能 異 常 が高 率 に み られ る こ とが 指 摘 さ れ て い る. 高 三 ら24)によ る と非 糖 尿 病 の 閉 塞 性 黄 疸 患 者81例 に 経 口的 糖 負 荷 試 験 を 施 行 した と こ ろ, parabolic pattern を示 し た55例 の 大 半 は 軽 度 黄 疸 例 で 耐 糖 能 の 低 下 は あ る が, イ ン ス リン分 泌 は 正 常 も し くは亢進 して お り, Linear pattern を 示 した26例 は高 度 黄 疸 例 で, 耐 糖 能 の低 下 に と も な い イ ン ス リン 分 泌 も抑 制 され て い る と述 べ て い る. しか し, 実 験 的 に閉 塞 性 黄 疸 時 の膵 内 分 泌 機 能 お よび 膵 内 分 泌 組 織 を検 討 し た 報 告 は ほ とん どみ られ な い が, 小 林 ら25)は総 胆 管 結 紮2週 後 の 黄 疸 犬 の経 十 二 指 腸 的 糖 負 荷 試 験 で, イ ン ス リン ・グル カ ゴ ン モ ル比 は 対 照 犬 よ り 高 い 傾 向 に あ り イ ン ス リン優 位 の状 態 を 指 摘 して い る. 本 実 験 成 績 で は血 清 イ ン ス リン値 は結 紮 前 値6.6±0.8μu/mlに 対 し, 結 紮2週 後 で は13.3± 1.5μu/mlと 著 明 な 上 昇 が み られ た が, 結 紮4週 後 で は5.5±1.5μu/mlと 低 下 を 示 し, 血 漿 膵 グ ル カ ゴ ン 値 は 結 紮 前 値96±18pg/mlに 対 し 結 紮2 週 後 で は292±124pg/ml, 4週 後 で は1,063±453 pg/mlと 著 明 な上 昇 が み られ た. また, 形 態 学 的 検 索 で は総 胆 管 結 紮2週 後 の ラ島 は, 光 顕 的 に は 染 色 性 も良好 で 肥 大 傾 向 を 示 す もの が 多 く, 電 顕 学 的 観 察 で は 多 くのB細 胞 に 豊 富 な 分 泌顆 粒 や 粗 面 小 胞 体, ゴル ジ装 置 の 槽 の 開 大 が み られ, 毛 細 血 管 腔 に 面 した と こ ろで は顆 粒 膜 の 融 合 も さ か ん で Ω 状 の 開 口放 出 像 も しば しば 観 察 され た. こ れ らの 所 見 は 形 態 学 的 にB細 胞 の機 能亢進 像 を 示 す も の で あ り血 清 イ ン ス リン値 の 上 昇 もみ られ た こ とか ら, 早 期 の 閉 塞 性 黄 疸 時 に は イ ン ス リン 分 泌 は亢進 す る もの と考 え られ た. そ の機 序 につ い て は 尚不 明 で あ る が, 近 年 イ ン ス リ ン は hepatotrophic factor と して の 重 要 性 が 指 摘 され て お り26)27), B細 胞 の 機 能亢進 の 一 因 と し て 閉 塞 性 黄 疸 に と も な う障 害 肝 に お け る肝 細 胞 の 修 復, 再 生 に 対 す る反 応 で あ る と も推 論 で き るが, こ の 時 期 に は膵 外 分 泌 機 能 の亢進 も み られ, 黒 田 ら28)の想 定 して い る腺 房, ラ 島刺 激 系 の亢進 や entero-insular axis の 関 与 等 も考 え られ, 今 後 よ り詳 細 な 検 討 が 必 要 で あ る. 総 胆 管 結 紮4週 後 の ラ 島 は, 光 顕 的 に 染 色 性 の 低 下, 粗鬆 化 が み られ, 電 顕 学 的 に はB細 胞 は分 泌顆 粒 の 減 少, ミ トコ ン ド リ ア の 膨 化, 多 く の l ysosome が み られ, ま た, 血 清 イ ン ス リン値 も低 下 (p<0.05) して い た. これ らの 所 見 は形 態 お よ び 機 能 的 にB細 胞 の 退 行 性 変 化 お よ び 分 泌 低 下 を 示 す もの で あ る. 他 方, A細 胞 で は多 数 の 分 泌顆 粒, よ く発 達 した 細 胞 内 小 器 官 や Ω 状 の 開 口放 出 像 が 観 察 され, A細 胞 はB細 胞 とは 逆 に形 態 学 的 に 機 能亢進 像 を示 し, 血 漿 膵 グル カ ゴ ン値 の 上 昇 と関 連 が 認 め られ た. か か る 所 見 は 臨 床 的 に 低 ア ル ブ ミン血 症 を伴 う高 度 閉塞 性 黄 疸 例 で は イ ン ス リン分 泌 は 低 下 す る と の報 告23)や肝 障 害 時 に 膵 グ ル カ ゴ ン値 は 上 昇 す る との 報 告29)30)と一 致 す る も の で あ る. また, 近 年, 糖 代 謝 の 研 究 に お い て イ ン ス リン・グ ル カ ゴ ン (I/G) の 相 対 的 関 係 が 研 究 され て お り31)32), 肝 硬 変 症 に お い て はI/Gモ ル 比 は 低 値 を 示 す と報 告 され,33), 実 験 的 に も小 林 ら25) は 総 胆 管 結 紮 に よ る閉 塞 性 黄 疸 犬 で イ ン ス リン不 足-グ ル カ ゴ ン優 位 を 指 摘 して い る. そ の 原 因 と (98)
昭和59年1月 99 し て 黄 疸 犬 に お け る 障 害 肝 で の イ ン ス リ ン extraction の亢進 を あ げ て い る が 著 者 の 成 績 か ら はB細 胞 そ の も の の 機 能 低 下 とA細 胞 の 分 泌 機 能亢進 が, 相 対 的I/Gモ ル比 の 一 因 で あ る こ と が 示 唆 され た. V. 結 語 総 胆 管 結 紮 ラ ッ トの 早 期 (2週 後) で は, 多 く の 膵 腺 房 細 胞 は形 態 学 的 に機 能亢進 像 を 呈 し, 膵 外 分 泌 は亢進 して い る も の と考 え られ た. また, ラ 島B細 胞 も形 態 学 的 に機 能亢進 像 を呈 し, 膵 内 分 泌 機 能 検 査 で も血 清 イ ンス リン値 の上 昇 が 認 め られ た. し か し, 総 胆 管 結 紮 後 期 (4週 後) に な る と, 多 くの腺 房 細 胞 は萎 縮 像 を呈 し, 外 分 泌 機 能 は低 下 す る もの と考 え られ た. ま た, ラ 島B細 胞 で は 退 行 性 変 化 が み られ, A細 胞 の 多 くは機 能 亢進像 を 呈 して い た. 文 献 1) 藤原道夫, 他: 閉塞性黄疸 におけ る術後腎不全 と 膵の関連性. 日外会誌, 76(1): 1975 2) 新田増雄: 胆石症例を中心 とした肝 ・胆道系, 腎 臓お よび膵臓の相関性についての臨床病理学的並 びに病理形態学的研究. 昭和医学会雑誌, 38(5): 463, 1978
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ELECTRON MICROSCOPIC OBSERVATION ON THE PANCREAS AFTER THE
EXPERIMENTAL LIGATION OF THE COMMON BILE DUCT IN RATS Keiho SHIM, Ichikun KO, Euichol KIM, Katsusuke SATAKE and
Kaoru UMEYAMA
1st Department of Surgery, Osaka City University Medical School
The present examination has been attempted to investigate morphological changes of pancreatic acinar and islet cells after complete ligation of common bile duct in rats using electron microscope.
At the early stage of the ligation of the common bile duct (2nd weeks after the ligation), the most of acinar cells and B cells of the Langerhans islands showed hyperfunctional appearance, but no remarkable changes were observed in the A cells. At the late stage (4th weeks after the ligation), acinar cells became atrophied and B cells were degenerative changes, however many of A cells showed hyperfunctional appearance.
