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転貸料に対する抵当権の物上代位

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(1)

転貸料に対する抵当権の物上代位

その他のタイトル Dingliche Surrogation des Hypothekenglabigers an der Untermietzinsen

著者 槙 悌次

雑誌名 關西大學法學論集

48

3‑4

ページ 781‑808

発行年 1998‑12‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/00024496

(2)

転貸料に対する抵当権の物上代位

(3)

一賃料に対する物上代位

1等価形態に対する物上代位の特徴

2賃料に対する物上代位の特徴

二転貸料に対する物上代位 1後順位賃借権限定説と執行妨害等要件説の対立

2不相当額の場合の物上代位の許容と統合的構成への道

(4)

抵当不動産の賃料︑特に賃貸用のオーフィスビルやマンション等の賃料は︑バプル崩壊後の不動産価格の低迷から

抵当権者の注目するところとなり︑それに対する物上代位が急増してさまざまな問題を生じさせてきた︒そして︑賃

料に対する抵当権の物上代位については民法典等に直接の明確な規定が準備されていないこともあって︑その具体的

な要件・効果をめぐっては賃料の特性や抵当権の本性の側面からさまざまな議論が展開されてきており︑その中には

裁判所の戸惑い苦悩する問題も多く︑下級審裁判所の見解の乱れなども生じていた︒もっとも︑これらの問題の中で︑

賃料が抵当権のためにも三

0

四条の準用規定によって︑先取特権におけると同様︑当然に物上代位の客体とされる資

格を単純に認められるのかどうかをめぐっては︑最判平元

・ 1 0

・ニ七︵民集四三巻九号一〇七

0

頁︶がこれを肯定

する見解を示している︒また︑賃料を抵当権の物上代位の支配領域から逸出させることなどを狙った将来の賃料の第

三者への予めの譲渡とその対抗要件具備が︑逸出の効力と対抗力を与えられるのかどうかをめぐっては︑最判平一

0•一・三〇(民集五二巻一号一頁)がこれを否定する判断を下している。ただ、両判決とも一般論的な展開から直

接当該事案についての具体的な結論を導き出しているだけに︑そこでの一般論が当該事案の解決を超えてどこまで妥

当するのか︑その射程距離についてはなお問題が残されており︑それぞれ領域での議論全体に終止符が打たれたわけ

一方︑賃料を抵当権の物上代位の支配領域から逸出させることなどを狙いつつも︑法的な逸出ではなく︑事実的な

逸出の手法をとって︑賃料を取引観念上異常に低額・不相当額に定めている場合の賃料に代わる転貸料に対する物上

, 9.  

︱ ︱ 1

0

︵ 七 八 ︱

︱ ‑

(5)

等価形態に対する物上代位の特徴

われわれの社会における財貨は使用価値と価値の担い手としての二面性をもった商品と位置づけられている︒そし

て︑商品は他人のための使用価値であり︑それは何よりもまず商品交換における価値の実現形態としての交換価値を

前面に出している︒もっとも︑財貨の中には自然力を中心とする土地など使用によって価値の減少といった問題を生

じさせないもの︵土地資本の若干の減少は生ずる︶や︑建物などその耐用期間が長期であって︑使用によって若干の

摩損が生ずるものの︑大きな価値の減少を生じさせないものも存在する︒そこで︑このような財貨については︑売買

など目的物の交換価値を一段の取引によってそのまま即時的に︵予約などもあるが︶実現させる取引だけでなく︑賃

貸借など使用価値の支配だけを一定期間与える利用の取引や︑抵当など設定と実行という二段の取引の形をとって︑

差当っては交換価値の観念的支配の移転にとどめる無占有担保の取引も大きな地位を占めている︒

問題は︑目的物が抵当取引に出された場合の法律関係であるが︑抵当権はその第一段階では使用価値と価値を担っ

代位については︑なお下級審裁判所の見解が分れており︑その相違が実質上大きな結果的違いに導くものではないと

しても︑これを契機に学説でもさまざまな議論が展開されている︒

そこで︑本稿は賃料に対する抵当権の物上代位の本性をみつめながら︑転貸料に対する物上代位へと検討を進め︑

両者の連続的関係を基礎に実体的・手続的両面における両者の統合的構成を目指した展開を考えてみようとしたわけ 関法

賃料に対する物上代位

第四八巻第三•四合併号0

(6)

た目的物の交換価値を観念的に支配する権原にとどめられ︑第二段階に入ると抵当権の実行によって目的物の交換価

値を現実的に実現・取得する権原を与えられるものとされている︒そして︑その実現の具体的な過程は典型的には不

動産競売によって目的物の所有権を等価と引換えに︑使用価値面ではその現実的支配の権原を当然に含むものとして︑

あるいは現実的支配の等価としての賃料収取権を含ませながら︑買受人に移転するという形をとるわけである︒なお︑

そのいずれの形となるかは︑法技術的には利用の権原と抵当権とを同系列の順位関係においてその優劣を決定する基

準に従い︑所有者の利用権を含めて後行賃借権は抵当権に劣後するものとして競売によって失われ︵法定地上権や短

一方︑先行賃借権︵対抗力も必要︶は抵当権に優先するものとして競売後も存続するとさ

このように︑抵当権は使用価値と価値に担われた当該目的物の交換価値を支配する権利であるが︑その効力は交換

価値支配を完成・補足させるために︑有体物としての物理的な本来の目的物だけでなく︑さらにそれを超えて次のよ

うな周辺の一定の他の存在にまで及ぶものとされている︒目的物と物理的・空間的連繋関係にあって従たる立場から

それとの統一的な使用価値と交換価値の結合体を構成する従物・従たる権利や︑完成まで目的物に物理的に結合した

存在形態をとる生産物としての天然果実や︑本来の目的物のいわば変身︵連続しつつも存在形態が変わっている︶と

でもいうべき代位物などがこれである︒問題はこの代位物であるが︑それは変身であるだけに多様な存在形態をもっ

ており︑その中には本来の目的物と同種の存在形態をもち︑法技術上も目的物自体とみなされる物々交換的な換地な

ども存在する︒もちろん︑変身の典型は︑交換価値支配権としての抵当権の効力と目的物の商品としての本性からみ

て︑当然に目的物の交換価値の実現形態としての貨幣の形に示される等価形態ということになってくる︒そして︑そ れ︑賃料収取権が買受人に移転するとされている︒

0

(7)

きないというのがこれである︒ 第四八巻第三・四合併号三一〇

れに対する抵当権の効力の波及は近年の学説では︑代替的物上代位として賃料などに対する付加的物上代位に対応し

た形で特徴づけられ︑また代償的価値・交換価値︵本来の目的物︶に対する物上代位として賃料など派生的価値・収

(1 ) 

益価値︵本来は別財産︶に対する物上代位に対応した形で特徴づけられている︒

もちろん︑このような代位物は︑抵当権者がその支配価値を抵当権実行の場合のように意識的に実現した形態では

ないものの︑結果的にはそれへと連続する性格をもっており︑価値支配権としての抵当権の効力は理念的には本来の

目的物に対する順位関係のまま︑また抵当債務の債務不履行以前の段階にあっても︵抵当権者による意識的な実現形

(2 ) 

態手ではないので︶︑当然・無条件に移行すべきものと解されてくる︒もっとも︑そのままの移行といっても︑代位

物が交換価値の実現形態をとり︑しかも具体的には金銭債権の段階でとらえられる結果︑その代位権は法技術的には

それに対する債権質権的構成を受け︑その効力は理念的には次のような形になってくる︒金銭債権としての代位物に

おける債権者︵本来の目的物の所有者︶は債権の取立を禁止され︵抵当権の負担なしの処分もできない︶︑第三者関

係では抵当権の登記の公示力の延長に浴しつつ︑第三債権者は弁済を禁止され︑第三者は優先的権利を新たに取得で

そして︑このような理念的関係の具体的実現が強調される領域ではそれに沿った特別法も出されており︑土地改良

( 1

四条︶や土地区画整理法(︱ニ一条︶では第三債務者は︑抵当権者より供託しなくともよい旨の申出のない

0

限り︑供託しなければならないとして直接の弁済が禁止され︑また︑土地収用法︵四六条の四第三項︶でも第三債務

者は抵当権者への通知義務を課せられて︑通知後相当期間内の弁済禁止の効力を受けている︒しかし︑その他の領域

の代位物については抵当権の効力の移行を実現する制度的準備が進んでおらず︑そこでは抵当権の登記の公示力が差 関法

(8)

る ︒ も残るわけであり︑日常的な取引から生じ︑明快な基準の措定が要請される保険金等については立法化が望まれてい なくないと思われる︵少額の賠償金などについては要件の緩和が考えられよう︶︒もちろん︑解釈論では不明確な点 後の相当期間の経過といった積極的要件を第三債務者側に課しつつ︑その処理を第三者にも波及させてよい場合も少 関係では広く背信的悪意者の手法を援用し︑そして登記の公示力を遮断するについては逆に抵当権者への通知とその であることが取引観念上関係者間に認識される状態にある場合も少なくないところから︑そこでは解釈論上対第三者 てくる︒もっとも︑実際上は代位物が抵当権を負担している本来の目的物の等価形態やそれに類比される連続的形態 る弁済禁止効や第三者に対する優先的効力が無条件に永続的に存続すると解するには若干の無理もあり︑問題が生じ の存在形態も異にする代位物たる債権上の債権質権的権利の公示の問題となってきているだけに︑第三債務者に対す 当っては延長されるとしても︑外面上は不動産上の抵当権の公示から︑それと連続関係には立つものの︑客体も権利

なお︑抵当権設定後に目的物の保存や改良のための資金が投下され︑等価形態の額の維持・増加に貢献した場合︑

その費用が代位物から控除されるかどうかであるが︑その投下分についての債権者が一定の厳格な要件の下に抵当権

に優先する不動産先取特権を与えられるものの︑所有者の弁済によって消滅すれば︑その投下分は目的物の物理的存

在に埋没・包摂されて︑代位物から控除されるものではないと解される︒また︑抵当目的物についての保険金は保険

料の等価であるが︑保険料を介して創造される目的物の等価形態に類比される存在であり︑抵当権の物上代位の客体

とされている︒そして︑保険料は一般論としては目的物の保存・改良のために投下された費用と同様︑目的物に投下

されそれに包摂されたものとして︑代位物から控除されるものではない︒ただ︑保険事故発生以前の未必の保険金請

~

(9)

前者が中心となっている︒ まず︑動産の賃料は︑ 2賃料に対する物上代位の特徴 第四八巻第三•四合併号

~

求権について抵当権者がこれに対する質権の設定を受けず︑所有者がこれを第三者に質入れしていた場合︑保険金に

(3 ) 

ついては先行登記による抵当権の優先権に変りはないものの︑保険料分については所有者が目的物の保存の費用分に

つき独立の存在形態を与え︑質権者に対して不動産先取特権に類比される形で優先権を与えたと位置づけられるもの

があり︑まだ熟してはいないが︑質権者は特に背信性がなければ保険料の範囲に限って優先権をもつとも解されよう

目的物の賃貸によって生ずる賃料はその物の使用価値の対価であり︑大まかにはその物の一部や一面が取引に出さ

れた場合の対価ということになるが︑それは前節で取り上げた目的物の等価形態とは異なった本性をもっている︒し

( 4)  

たがって︑学説においても代償的価値・交換価値に対する派生的価値・収益的価値などとして特色づけられている︒

もっとも︑賃料といっても目的物の種類によってその性格は一様ではない︒

一般的には目的物の価値の済し崩し的実現形態を主とするものであり︑部分的には目的物を

資本とみたてた場合の利子分を含んではいるものの︑動産の耐用期間が一般に短期的であるところから︑その内容は

一方︑土地の賃料︵地代︶は︑自然力としての本性をもつ土地がわれわれの社会では資本

の運動機構の中に組み込まれ︑﹁資本は利子を生み︑土地は地代を生む﹂との形に公理化されている結果︑それは土

地を資本とみたてた場合の利子相当分に位置づけられている︒もちろん︑それは土地の生産力を高めるために土地に

永続的に投下・合体された土地資本の済し崩し的実現形態をも含んでいるわけであるが︑その実現が一般に長期的で

(10)

一般論としてはそのよう ︵保存・エ事・買受け︶︑目的物自体にかかわる債 あるところから︑その内容は利子分が中心となっている︒また︑建物の賃料︵家賃︶は︑敷地の地代分と工作物たる建物の価値の済し崩し的実現形態と建物を資本とみたてた場合の利子分を含んでいるが︑建物の耐用年数が長期的で

したがって︑不動産の賃料は変身の典型である目的物の等価形態からは相当の距たりをもっており︑理論上単純に

(5 ) 

物上代位の客体に編入されるものではない︒もちろん︑先取特権について民法典は目的物の賃料を特別の条件を付す

ることなく︑単純に代位の客体とする旨の規定をおいている︵三

0

四条︶︒しかし︑それは先取特権の物上代位が一

方では価値の済し崩し的実現形態としての動産の賃料に対する代位を含んでいるからであり︑他方問題となる不動産

の賃料については被担保債権との間に次のような特別の牽連関係が認められるからだと解される︒すなわち︑不動産

先取特権を生じさせた債権が目的物に対する直接の資本投下など

権者と所有者との信用取引から生じたものであって︑賃料の実現に直接貢献しており︑そのことから賃料がその債権

のために常に最先順位でその決済に充てられるべきだとする経済的規定を受け︑そのことが政策的に法的側面に投影

されて︑賃料が被担保債権の弁済期到来の有無を問わず︑等価形態と並んで物上代位の客体に編入されたというのが

問題は抵当権の場合であるが︑抵当信用が債務者の機能資本における追加資金の獲得を目的とするものであり︑そ

の資金が当該不動産上や当該不動産の取得のために投下されることも少なくはないものの︑

な関係なしに投下されるものとなっている︒このように典型的な抵当信用は目的物の使用価値の実現やそれに代わる

賃料の取得に直接貢献するものではなく︑そこで生み出される賃料も債務者の機能資本の自由な運動の一環に組入れ

あるところから︑地代分と利子分が中心となっている︒

(11)

第四八巻第三•四合併号

0)

られることになるわけである︒そして︑そのことは目的物が物上保証人の所有に属する場合にさらに明瞭に示されて

いるといえよう︒したがって︑先取特権についての三

0

四条を準用する規定があるからといって︵三七二条︶︑賃料

に対する抵当権の物上代位を無条件に先取特権のそれに類比させることには理論的に問題があるといえよう︒なお︑

資金が目的物に投下された場合等に限って特別に類比させるといった手法も︑実践的には無理が存在する︒

もっとも、最判平元•

1 0

・ニ七︵前掲︶は次のような一般論に立って賃料に対する抵当権の物上代位を単純に肯

定する結論を導き出している︒﹁民法︱︱︱七二条によって先取特権に関する同法三

0

四条の規定が抵当権にも準用され

ているところ︑抵当権は︑目的物に対する占有を抵当権設定者の下にとどめ︑設定者が目的物を自ら使用し又は第三

者に使用させることを許す性質の担保権であるが︑抵当権のこのような性質は先取特権と異なるものではないし︑抵

当権設定者が目的物を第三者に使用させることによって対価を取得した場合に︑右対価について抵当権を行使するこ

とができるものと解したとしても︑抵当権設定者の目的物に対する使用を妨げることにはならないから︑前記規定に

(6 ) 

反してまで目的物の賃料について抵当権を行使することができないと解すべき理由はな﹂いがこれである︒なお︑本

件は先順位と後順位の抵当権を負担する第三取得者所有の店輔について先順位権者が抵当権実行を申立てて︑賃借人

︵賃借権は後順位抵当権より先行するが︑先順位抵当権より先行するかは不明︶が賃料を供託し︑後順位抵当権者が

それに物上代位して転付命令を得たので︑第三取得者側よりそれを不当利得として返還を求めたものである︒

一般論としてみた場合︑賃料に対する抵当権の物上代位は︑典型的な代位物たる等価形態とは異なった本

性をもつ賃料の特色と︑賃料に対して先取特権とは異なった牽連関係に立つ抵当権の特色という二重の規定を受けて

おり︑そこでは何よりもまずこの両面からする検討を深めて︑これらの特色に適合した合理的な位置づけ性格づけが

(12)

求められてくることになる︒そして︑そのような見地からこの代位を見つめるとき︑次のような姿が浮び上ってくる

まず第一に︑この物上代位権は賃料が生じたとき当然・無条件に成立するものではない︒賃料は目的物の等価形態

とは異なって被担保債権の弁済期前には理論上代位を導くための一般的根拠をもたず︑また︑抵当権は先取特権と異

なって賃料の発生に直接貢献するものではなく︑賃料より弁済期前に最先順位で弁済を受ける経済的基礎に立った法

政策的な特別の根拠をもたないからである︒ただ︑債務者の資本の運動に支障が生じて︑目的物をめぐる利用支配と

価値支配の並存関係に破綻が生じ生じたとき︑具体的には債務不履行が生じたとき︑債務の増大による担保価値の相

対的減少を前に目的物の賃料と債権の利息との独特の経済的対応関係から︵すなわち両者が目的物と元本債権を共に

資本とみたてた場合のそれぞれの利子分に該当し︑抵当権の支配にかかわる資本の利子分としての特徴的な経済的対

応関係に立たされているところから︶︑それが法政策的な特別の根拠を生じさせ︑物上代位権の発生要件がみたされ

ることになると解されるわけである︒もちろん︑代位権の行使は代位物に対する抵当権実行の意味をもっているが︑

代位物が本来の目的物とは別個の存在形態をもっている結果︑両者に対する抵当権はいわば一種の共同抵当的関係に

立たされ︑代位権の行使は本来の目的物に対する競売開始決定や差押を実体的・手続的要件とするものではないとさ

(7 ) 

なお︑目的物を所有者自身が現実に利用している場合の利用料分は債務不履行後も代位の客体とされるものではな

い︒それは利用料分に独立の存在形態を与えて簡易な優先弁済に結びつける合理的な方法がなく︑結局特別の事情の

ない場合にはその利用を目的物の競落人に引渡されるまでの簡易な管理・保管の面から現実の占有に絞って位置づけ

三一五

(13)

第四八巻第三•四合併号

︵ 七 九 ︱

‑ ︶

第二に︑この物上代位権の行使によって充当される債権は第一との関係から抵当債権の利息債権に限定されるべき

ものである︒代位を導く特別の根拠は賃料と利息の対応関係だからであり︑元本は目的物自体によって担保されてお

り︑それを賃料によって担保させる根拠に乏しく︑また︑そこまで抵当権を優遇する特別の必要性も見出せないから

( 8)  

である︒もちろん︑抵当権は利息についても普通抵当では最後の二年分を限度として︑また根抵当では極度額の枠内

で担保するとされており︑抵当権者はこの利息分を含めて目的物の担保価値を考慮しているはずであるが︑目的物の

価格の下落によって右の枠内でも担保力に不足を生ずる場合や︑先順位権が期待通り減少しない場合や︑抵当権実行

手続が遅々として進まない場合などもあり︑利息分への充当もそれなりの意味をもっている︒なお︑賃料と利息の対

応関係は抵当権と賃借権の設定の前後を問わず︑また抵当不動産の所有者が債務者であると否とを問わず存在するわ

けであり︑いずれにおいても物上代位が成立すると解される︒

第三に︑この物上代位権の客体とされる賃料は理論上当然に目的物の利子分の性格づけを受ける目的物自体の本来

の賃料の範囲に限定されるべきものであり︑実践面でも可能な限りそれを実現していくべきものである︒まず︑問題

の中心となる建物の賃料をみた場合︑その中の地代相当分は内面上は土地の利子分に相当するものであり︑土地・建

物の所有者の異同︑土地・建物の抵当権者の異同などがあり︑事態は単純ではないが︑本来建物抵当権に服すべきも

のではなく︑代位物から控除されるべきものである︒また︑賃貸用のオーフィスビルやマンションなどにおける建物

の使用価値の実現を促進し︑また使用価値と価値を存続させるための管理費︵修繕費・清掃費なども含まれる︶や︑

建物の賃料を具体的に発生させ︑収取するための経費︵賃貸を営業として行なう場合やそれに類比される場合の経 たものとでも解する外ない現状である︒ 関法

(14)

費︶などは︑賃料から特に明示的に区分されていない場合でも︑所有者側の主張・立証を通して控除が認められてよ

(9 ) 

いものと思われる︒管理しない者に管理費の支配を認める必要がないからである︒もっとも︑強制管理の制度的準備

が整っていないだけに︑このような控除を実践的にどう実現していくのか︑賃貸人の申立に始める裁判所の審査につ

( 10 )  

いての簡易で合理的な道を模索していかなければならないところである︒

第四に︑この物上代位権の効力は等価形態に対するそれとは異なり︑抵当権の効力が無媒介にそのまま移行して債

権質権的権利に完全に具体化されるものではなく︑代位権が現実に行使されるまでは賃料債権についての所有者の取

立・処分禁止や第一一︳債務者の弁済禁止や第三者に対する対抗力も完全に永続的な形で浮び上ってくるものではない︒

既に具体的に発生した賃料債権は外形上は目的物から独立した存在をもつ別個の財産権であり︑それに対して抵当権

の効力を波及させ︑存続させるためには︑抵当権の登記の公示力の一応の延長の支えはあるものの︑それで完全だと

いうわけではなく︑︵債務不履行の発生など︑代位のための要件具備の時期が第三者側からみて明確でない場合もあ

る︶やはり代位権の具体的な行使のための差押によって登記の公示力の延長を補強し︑代位物に対して抵当権の効力

に服する旨の規定を明確に与えることが必要だと思われる︒もちろん︑まだ現実化していない将来の賃料債権は目的

物の使用価値と不可分の関係にあって︑目的物との物的関係から離脱しておらず︑予めの譲渡がなされ︑対抗要件が

具備されていても︑差押後に発生する分は抵当権の登記による優先権に服することになる︒なお︑賃料に対して複数

の抵当権者が代位した場合には︑その順位は登記の順位による︒

もっとも、最判平一0.-•0(前掲、最判平一0・ニ·10金法一五0八号六七頁も同旨)は第四点に関連す

る問題について次のように判示している︒すなわち︑民法︱︱

1 0

四条一項但書の差押の趣旨は第三債務者を二重弁済を

(15)

第四八巻第三•四合併号

強いられる危険から保護しようとするものであり︑﹁右のような民法三

0

四条一項の趣旨目的に照らすと︑同項の

﹃払渡又ハ引渡﹄には債権譲渡は含まれず︑抵当権者は︑物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が

備えられた後においても︑自ら目的債権を差し押えて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当であ

る﹂︒というのは﹁抵当権の効力が物上代位の目的債権についても及ぶことは抵当権設定登記によって公示されてい

るとみることができ﹂︑﹁対抗要件を備えた債権譲渡が物上代位に優先すると解するならば︑抵当権設定者は︑抵当権

者からの差押えの前に債権譲渡をすることによって容易に物上代位権の行使を免れることができるが︑このことは抵

当権者の利益を不当に害するものというべきである﹂︒﹁そして︑以上の理は︑物上代位による差押えの時点において

債権譲渡に係る目的債権の弁済期が到来しているかどうかにかかわりなく︑当てはまるものというべきである﹂︒

しかし︑民法典制定の頃とは時代も変わり︑債権の商品化が大きく進んでいる現代において︑特に抵当不動産たる

( 11 )  

元物より分離・独立の過程にある賃料債権について︑物上代位のための差押の趣旨を第三債務者の保護に限定し︑ま

た︑登記の公示力の延長を未発生の将来の賃料債権を超えて既発生それにまで無制限に絶対化してよいのであろうか︒

具体的には債務不履行後︑右の差押前における既発生の賃料債権について所有者の取立や処分︑後順位抵当権者や一

般債権者の差押を通した転付命令や受領といった登記の順位とは異なった処分や処理がなされ︑それが既に完結して

しまったとき︑事態を直ちに物上代位権の存続や不当利得による事後処理に直結してよいのであろうか︒本判決の射

程距離についてはなお問題が残っている︒そこで︑まず既に目的不動産から分離・独立した存在を与えられて取引界

におかれた賃料債権をめぐって︵将来の賃料ではない︶︑対抗要件等を具備して取引やそれに類比される関係を完結

した第三者が登場した場合には︑背信的悪意者の法理の拡張解釈の問題はあるものの︑等価形態をめぐる場合と異な 関法

(16)

転貸料に対する抵当権の物上代位

り︑抵当権者は抵当権の登記だけでは︵補強なしには公示力が稀薄化して︶理論上原則として対抗できなくなると

( 12 )  

いった方向も検討してみる必要があるように思われてくる︒

(1

)

前者は松岡﹁物上代位権の成否と限界い﹂金法一五0四号︱二頁以下︑特に一六頁註︵

1 8 ︶︒後者は高橋﹁賃料債権に対す

る物上代位の構造について﹂金法一五一六号六頁以下︒なお︑斉藤﹁﹃抵当権の物上代位﹄の法構造﹂慶大法学部法律学科

開設百周年記念論文集法律学科編二九一頁以下では元物型と収益型の対応がなされている︒

(2

)

松岡・前掲注

(1

)

1 8

(1

)

(3

)

鹿児島地判昭三ニ・一・ニ五︵下民集八巻︱︱四頁︶︑福岡高宮崎支判昭三ニ・八.︱︱

10

(下民集八巻一六一九頁︶を契

機にさまざまな議論が展開されている︒

(4

)

高橋・前掲注

(1

)︒なお松岡・前掲注

(1

)

(5

)

槙﹁賃料に対する抵当権の物上代位﹂谷口先生追悼論文集二巻二七九頁以下︑同﹁抵当不動産の将来の賃料をめぐる譲渡

と代位との衝突﹂民商︱一七巻二号一八七頁以下︒

(6

)

判批は︑道垣内﹁抵当権の物上代位と抵当不動産について供託された賃料の還付請求権﹂民商一0

なお︑物部﹁抵当権による賃料債権への物上代位に関する最二小判平元

1

0・ニ七事案の再検討﹂金法一四九三号四四頁

(7)東京高決平七・三・一七(金法一四三八号三六頁)。もっとも、東京高決昭三四•四・ニニ(金法―二0七号二八頁)、大

阪高決平五

I

O

六︵判時一五0二号一︱九頁︶では要件とされていた︒

(8

)

この問題に言及しているものではないが︑興味深い視点を示唆しているものとして︑物部﹁抵当権による賃料債権への物

上代位を認めることの実際的意義について﹂金法一五0

(9

)

東京高決平五・︱ニ・ニ七︵金法ニニ七九号三四頁︶は賃料とは別個に金額を明示して約定された共益費に対する代位を

( 1 0 )

志賀﹁賃料に対する物上代位をめぐる諸問題﹂金法一三六三号二0頁︑桜井﹁賃料に対する抵当権の物上代位に関する諸

問題﹂法律実務研究九号一︱一頁︑鎌田﹁抵当権の効力﹂司法研修所論集九一号三六頁︑山崎﹁抵当権の物上代位に基づく

(17)

抵当不動産が賃貸され︑それがさらに転貸されているとき︑賃料に対する抵当権の物上代位のための要件がみたさ

れていることが前提となるが︑抵当権者はそこでの賃料ではなく︑転貸料に対して代位していけるのであろうか︒も

ちろん︑賃料と転貸料との間に大きな金額的格差がなければ︑わざわざ転貸料に代位していくことは面倒であり︑実

益も少なく︑実践的にはほとんど利用されないわけである︒なお︑賃借人が賃貸人に対して金銭債権をもち︑それと

の関係で賃料について予めの譲渡や相殺の予約などの方策がとられていることもないではないが︑そこでは少なくと

も物上代位権行使︵差押︶後の賃料については譲渡も相殺も抵当権者に対抗できず︑賃料への代位が可能だと解され

る︒また︑賃借人の信用不安から賃借人からの取立てが困難となってくる場合もあるが︑そこでは転借人が賃貸人に

対して直接義務を負う範囲︵賃料債権の範囲︶第四八巻第三•四合併号

賃料債権の差押えをめぐる執行実務上の諸問題﹂民訴雑誌四二号︱ニニ頁以下︑田原﹁賃料に対する物上代位と建物の管

理﹂金法一四六九号四頁以下など参照︒

( 1 1 )

清原﹁抵当権者による物上代位権の行使と目的債権の譲渡﹂判評四七五号二五頁以下では︑第三債権者の二重弁済の危険

調

(12)槙•前掲注(5)の第二論文民商―一七巻―一号一九九頁以下参照。

後順位賃借権限定説と執行妨害等要件説の対立

でそれに代位していけることになる︒

0

問題は︑賃料が市場価格よりもかなり低額に定められ︑取引観念上不相当とみられる場合であり︑それは賃借人が

賃貸人に対する金銭債権者である場合や︑賃貸人と同族会社・系列会社等の関係にある場合などに時折見られるとこ 関法

転貸料に対する物上代位

(18)

ろである︒そして︑そこでの抵当権者の対応策としては賃料を正常な相当の額に改める債権者代位権や債権者取消権

の手法も考えられないわけではないが︑そのような手法は実践的にはかなり面倒であり︑結局は賃料に代わって相当

額をもつ転貸料が注目されることになる︒もちろん︑転貸料に対する物上代位をどのような法理によってどう処理し

ていくのか︑下級審裁判所の態度は次のように分れている︒

まず︑中心的な見解は︑原賃貸借が抵当権設定登記前になされていた場合には転貸料への代位が認められず︑設定

登記後になされた場合に限って認められるとなすものであり、東京高決昭六三•四・ニニ(金法―二0七号二八頁)

(1 ) 

を先頭になかり広く各地の裁判所によって採用されている︒そして︑その理は東京地決平四・一

O ・

四六号四七頁︶において次のように詳細に展開されている︒

民 法 ︱ ︱

1 0

四条の債務者は︑抵当権の目的である不動産上

の権利者と読み替えるべきものであるが︵大審院明治四

0

年三月︱二日⁝⁝︶︑この不動産上の権利者とは︑抵

当物件の所有者のほか︑第三取得者及び抵当物件を後に借り受けた賃借人を含むものと解される︵東京高裁昭和

六三年四月二二日⁝⁝︶︒したがって︑上記の賃借人が抵当物件を転貸して取得する転貸料債権は︑抵当権の物

上代位の対象となるべきものである﹂︒﹁④原賃貸借が抵当権設定登記前にされた場合と転貸料債権に対する代

抵当権設定登記の前に原賃貸借があった場合には︑原賃借権は︑抵当権に対抗できるものである︒し

たがって︑抵当権者は︑原賃借人が目的物を転貸して得る利益を侵害することはできない﹂︒﹁これに対し︑抵当

権設定登記後に原賃貸借がなされた場合には︑それが短期賃貸借でなく抵当権に対抗できない場合は︑代位を認

めても不当に原賃借人の利益を侵害することにはならない︒さらに︑原賃貸借が短期賃貸借である場合にも︑原 位の可否 転貸料債権に対する抵当権者の物上代位の可否

(19)

第四八巻第三•四合併号

§ 

賃借人が法律上抵当権者に対抗できるものとして保護されるのは︑原賃借人が目的物を現実に利用する関係のみ

であり︑転貸して差益を得ることまで︑法律上保護されているのではないから︑転貸料債権に対する代位を認め

もっとも︑転貸借といっても︑実際上は所有者に対する債権者が債権実現の一環として既に賃貸されている債務者

の不動産を低額の賃料で借り受けた形を作り︑当初の賃借権を転借権に転化させる事例も時折見られるとこである︒

そして︑そこでは当初の賃借権が抵当権に後行している場合には新たな賃借権が短期賃借権とされ︑また︑先行して

いる場合には賃借権が譲渡されたものとして︑抵当権に対する優先性と転貸料に対する代位の遮断が主張されている

ようである︒そして︑このような事態を前に︑前者のような場合について仙台高決平五・九・八︵判時一四八六号八

四頁︶は︑短期賃借権を抵当権設定後の賃借権一般に含める前記東京地決平四と同様の説示の下に︑転貸料に対する

代位を認めている︒また︑後者のような場合について東京高決平七・三・一七︵金法一四三八号三六頁︶は︑当初の

賃借人(‑五名︶から賃借権の譲渡があったと認めるべき証拠がないとして︑所有者から抵当権設定後に本件建物を

一括して賃借し︑当初の賃借人に対する賃貸人たる地位の譲渡を受けて転貸料債権を取得したと認定し︑代位を認め

ている︒もっとも︑以上の認定の上に立った理論構成としては︑一︱

1 0

四条の債務者の中には﹁抵当不動産の所有者及

び第三取得者のほか︑少なくとも︑抵当不動産を抵当権設定の後に賃借した者も含まれ﹂るとしているだけであり︑

代位肯定の結論を出発点としての三

0

四条の債務者の枠に投影するとどめている︒

一方︑他の見解は︑転貸料に対する代位を一般論としては否定しつつ︑所有者︵賃貸人︶と賃借人︵転貸人︶とが

実質的に同一視される場合や︑賃貸借が代位権の行使を妨害する目的でなされた場合などに限って︑例外的に肯定す ても原賃借人の利益を不当に害するものではない﹂︒ 関法

(20)

また、大阪高決平七•六・ニ0

(2 ) 

るものであり︵執行妨害等要件説︶︑大阪地裁から近年の大阪高裁で採用されている︒例えば︑大阪高決平七・五・

二九︵金法一四三四号四一頁①事件︶は出発点としての否定的判断について次のように判示している︒﹁三

0

項が物上代位の目的につき﹃賃貸⁝⁝二因リテ債務者力受クヘキ金銭﹄と規定しているところからすると︑物上代位 の対象となる賃料債権は︑文理上は債務者に帰属する賃料債権であって︑債務者の賃借人に帰属する賃料債権︵転貸 料︶はこれに含まれないことになる︒もっとも︑右準用にあたっては︑同項の﹃債務者﹄は︑抵当権設定者︑抵当不 動産の第三取得者など当該不動産の所有者と読み替えることになるが︑これら所有者からの賃借人もこれに当たるも のと解する余地はなく︑結局︑民法の規定の文理に則して考える以上︑転貸料債権について抵当権の効力は及ばず︑

これについて物上代位権を行使することはできないと解するよりほかはない﹂︒﹁また︑転貸料の性質から考えても︑

これが抵当不動産の交換価値のなし崩し的実現と見るのは単なるひゆとしても無理であるし︑これに物上代位権の行 使を許すことは物上代位制度の本来の趣旨にそぐわないものといわざるをえない﹂︒﹁もっとも︑抵当権設定者︵債務

者︶とその賃借人︵転貸人︶との関係や賃貸借・転貸借成立の経緯等から︑その転貸料債権が抵当権設定者︵債務

者︶の賃料債権と同視しうるものと推認されるような場合においては︑実質上原賃料債権にほかならないものとして 転貸料債権についても物上代位権の行使を認めるのが相当である﹂︒ただし本件はこの例外に該当しない︒

︵金法一四三四号四一頁②事件︶も次のように判示している︒﹁所有者と賃借人と が実質的に同一視される場合︑あるいは︑所有者と賃借人との間の賃貸借︵原賃貸借︶が︑賃料に対する抵当権の行 使を妨害する目的でされ︑詐害的なものである場合には︑まず所有者︵原賃貸人︶と転借人との間に直接賃貸借契約 が締結されたものと評価し︑転借人が支払う賃料にも抵当権者の物上代位権が及ぶものとすることが可能である﹂︒

~

(21)

第四八巻第三•四合併号三二四

︵ 八

00

) このような二分状態にある裁判例に対して学説ではさまざまな観点からの検討が加えられ︑それを契機に多様な見 解が生じている︒まず︑後順位賃借権限定説をとる判例に対する受けとめ方であるが︑この見地に立つ判例は転貸料 に対する物上代位の認否について外形的に単純明解な基準を提示しており︑実践的には特に執行実務上は受け入れや すいものとなっている︒確かにそこでは抵当権者側は当該賃借権が抵当権に後行する旨を主張・立証する必要がある

(3 ) 

︵証明文書の提出の要否については議論が残っている︶︑それは執行妨害を主張・立証するよりは簡単だから

︵賃貸借契約日については所有者側の偽装工作もありうるが︑それに対する裁判所の判断もそうむずかしくは ないであろう︶︑また社会的事実としても悪質な賃貸借は後行賃借権に数多くみられるからである︒

しかし︑後順位賃借権への限定は次のような問題を抱えている︒まず︑実践面では先行賃借権の中にも取引観念上 不相当に低額の賃料の定めのあるものがないではなく︵抵当権設定を見越したものとは限らない︶︑逆に後行賃借権 にあっても正常な相当額の賃料の定めのあるのが建物ではむしろ一般的でもあるという点である︒したがって︑前者 については別個の対応策を探し求める外はなく︑後者については管理費の控除を完成させない限り︑その代位は不合 理な結果を招く恐れを生じさせてくる︒次に︑理論面ではこの見解が先順位賃借権と後順位賃借権を区別して取扱う 根拠の背景に抵当権との対抗関係的構成を持ち出している点に批判が集中してきている︒そこでの対抗関係は不動産 競売の結果現実化されるものであり︑部分的にもせよそれを結果発生前に現実化させる論理的根拠が明確でなく︑ま た例外的に対効力を認められる後行短期賃借権を後順位賃借権の中に含める点について︑短期賃貸借の中には不正常 なものが多く︑不相当な賃料額の例が数多くみられるとしても︑理論的な説明が不十分だとされているからである︒

(4 ) 

したがって︑後順位賃借権限定説を明確に支持する学説は少数にとどまっており︑理論的な不十分さを認めつつ︑実 であり ものの 関法

(22)

︵八

践的な利益衡量・執行実務の連用からやむをえない結論だとする見解や︑賃料額の正常・異常性を多少組み入れて処

5( ) 

理する見解などともなってくる︒

一方︑執行妨害等要件説をとる判例は︑抵当権者側における立証の面倒さという難点を抱えてはいるものの︑理論 的には明快であり︑また実践的にも賃借権の設定時期を問わず事態に適合した柔軟な処理を導くことができる点から︑

かなり多数の学説の支持を受けている︒しかし︑

一般論として転貸料に対する物上代位を否定する理論的前提に立ち︑

そこから出発してよいのかどうか︑目的物の使用価値実現の等価が法技術的に賃貸借と転貸借の重層的構成をとって いるところからみて︑単純ではない︒また︑否定説を前提にした場合︑実践的には肯定の例外的地位とそこで使用さ れる執行妨害といった文言から︑肯定のための認定基準に積極性が求められて︑そのままでは要件を緩和しにくい面

︵恐れ︶をもっている︒したがって︑そこでは目的物の所有者が自己の資本の運動が順調に展開していた時期に︑賃 借人となる者との過去・現在・未来における良好な社会関係を考慮して︑情誼上︵謝礼や見返り的なものを含む︶割 安の賃料額を取りきめていたときにあっても︵使用貸借の場合もある︶︑賃料と転貸料の較差の割合の基準だけで簡

単に事情変更による事後的執行妨害とみることができるのか︑などといった懸念も生じてくる

営体制の構築のために同族会社等に長年賃貸していたときも︑これを単純にダミー的存在とみなすことができるかど

一律的に抵当権に対抗できない賃借権に限定する対抗力説

も考えられるが︑それは短期賃借権の問題を除いて後順位賃借権限定説と同様の難点をもっている︒また︑順位関係 の優先・劣後を問わず︑転貸料に対する物上代位を全面的に否定し︑しかも例外を認めない考え方や︑逆に全面的に

なお︑転貸料に対する代位を︑長期と短期とを問わず︑ うかなどの問題も存在する︶︒

三二五

(23)

移転される︶その支配する交換価値を実現・取得する権原をもっているが︑その実現までの使用価値支配の権原は抵 当権者にはなく︑それは原則として所有者の自由に委ねられている︒したがって︑目的物が賃貸され︑使用価値支配 の対価としての賃料が生じた場合でも︑それに対する支配権は原則として抵当権者には与えられないものとなってい

︵賃借人の利用によって価値の若干の減少があっても︑それは所有者の利用によっても同様に生ずるものである︶︒

ただ︑前述︵第一章︶したように例外として債務者に信用不安から具体的には履行遅滞が生じたき︑利息債権保全の ための枠内で︑しかも管理費等を控除した本来の使用価値支配の対価としての賃料に対して︑物上代位が認められる と解してきたわけである︒問題は︑目的物が転貸された場合の転貸料に対する代位であるが︑かつてはほとんど注目 されていなかったものの︑近年は信用関係等に立つ当事者間において賃料を低額に設定した賃貸借が増大し︑また代 位の内容についての管理費等の控除が十分実現されていないこともあって︑急激に注目を集めるに至っている︒した がって︑それへの代位については︑全くの例外的事例に対する対応策としての一般法理︵権利濫用・信義則・シカー

ネの禁止・法人格否認など︶に任せるのではなく︑それを超えた抵当権の物上代位固有の視点からの法理の検討が求 入ると抵当権の実行によって 肯定する考え方も提起されているが︑後に若干ふれるようにいずれも理論的・実践的問題を抱えている︒

不相当額の場合の物上代位の許容と統合的構成への道 転貸料に対する抵当権の物上代位は基本的にはどのようにとらえられるべきものなのであろうか︒元来︑抵当権は 使用価値と価値を担う目的物を︑第一段階では交換価値の面において観念的にだけ支配する権利であり︑第二段階に

第四八巻第三•四合併号

︵使用価値と価値に対する支配権が所有者より取り上げられ︑不動産競売での買受人に

︵ 八

0二 ︶

(24)

もちろん︑この問題は賃借権と抵当権との間の対抗問題として処理できるものではない︒賃料の異常に低い賃借権

の多くが実際上後順位賃借権であるとしても︑そこでの対抗関係は抵当権実行としての競売によって賃借権の存続が 断たれるか否かの問題であり︑対抗できない賃借権も競落までは原則としてそのまま存続するものだからである︒な

お︑短期賃借権も︑不正常なものでなければ︑管理行為として競落時点を超えて存続するものとされている︒した

がって︑競売終了までの間の賃料支配について先順位賃借権と後順位順位賃借権との分別的処理は論理的に無理があ

そこで︑先順位と後順位を区別しない構成が注目されることになるが︑そこでは両者を含めた賃借権における転貸

料への代位について︑原則に対する例外を予定するかどうかはともかく︑その出発点として理論上肯定と否定といず

れの構成を採るのかが問題となってくる︒そして︑これをめぐっては学説上肯定説と否定説とが登場してきているわ けである︒まず︑肯定説は︑転貸料に対する代位の実践的な必要性を前提としつつ︑それを支える積極的な理論的根

拠は必ずしも明確ではないものの︑後順位賃借権限定説のとる理論構成の不十分性や執行妨害等要件説における異常

か否かの基準の不明確性︵それは執行実務の運用に支障を及ぼす︶などから︑全面的に肯定するものである︒他方︑

否定説は賃料自体に対する物上代位を始めから否定する基礎に立って︑転貸料に対する物上代位を完全に否定し︑ま た︑物上代位を賃貸料にそして六二二条の賃貸人の転借人に対する直接請求権にとどめるべきだとして︑全面的に否

(8 ) 

定するものである︒

もっとも︑学説の大勢は肯定説と否定説との間に立って︑出発点としてはともかく︑展開面では全面的肯定や全面

められてきているわけである︒

三二七

︵ 八

0三 ︶

(25)

統合的構成をとる必要が生ずるというわけである︒ 第四八巻第三•四合併号

︵ 八

0四 ︶

的否定といった形でいずれかの構成を徹底するのではなく︑その中間に立って具体的に妥当な結論を求めているよう

である︒原則的に肯定しつつ︑賃料が正常な場合には例外的に否定し︑また︑原則的に否定しつつ︑賃料が異常な場

(9 ) 

合には例外的に肯定するといった構成がこれである︒したがって︑具体的な事件での攻撃・防禦の面での有利・不利

は否定できないものの︑結果的には大きな違いがなく︑実践的には同様の結論が目指されているともいえよう︒

もちろん︑それだからといって理論構成を放棄してよいわけではなく︑結局のところ原理面からの検討を進めてい

くほかはないが︑そこでは次のような構成の姿が浮んでくるように思われる︒すなわち︑賃料自体に対する物上代位

が例外的ながらも肯定されるとの前提に立つとき︑それは本質的には抵当権の支配する目的物の使用価値の実現の対

価に対してその効力の波及が認められたものということができるわけであり︑そして右の対価は通常は︑目的物自体

と同視される目的物上の所有権の効力の展開として︑所有者の賃貸借契約を媒介に生じた所有者たる賃貸人の取得す

る賃料債権という形をとることになってくる︒しかし︑賃料が当事者間の契約自由に委ねられているところから︑目

的物の使用価値実現の対価としては取引観念上著しく不十分な場合もあり︑そこでは︑転貸料が取引観念上一応相当

である場合に︑抵当権が使用価値と価値の担い手としての目的物自体に対する支配権であるという基礎に立ち返って︑

使用価値実現の対価が法技術的に重層構造をとるものとして賃料と転貸料を統合してとらえてよいように思われてく

る︒所有権は目的物を全面的・包括的に支配するものであって︑法技術的には目的物のいわば代表者として表舞台に

登場するものであり︑代位物たる賃料も一般的にはこの所有権の展開面で処理すれば足るものの︑それが使用価値実

現の対価としての相当額に大きく及ぱない場合には︑本質論に立って目的物自体を表舞台に登場させ︑法技術面での 関法

参照

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