第三部 研究会録
3つのポリシーと学修成果の可視化
―内部質保証システムの構築に向けて―
畑野 快
(大阪府立大学高等教育推進機構・高等教育開発センター特認助教)
日時:2016年3月28日(火)14:00〜14:45 場所:今出川校地 寧静館5階会議室 京田辺校地 成心館2階207会議室
(テレビ会議システムで接続)
大島佳代子 学習支援・教育開発センター所長:
毎年、外部講師の先生をお招きしてFDに関する研究会と、学内外で特色ある教育 改善を進めておられる先生にお話をいただく研究会を開催しています。今年度は2つ のテーマで研究会を進めたいと思っています。前半のFD研究会について、今回は大 阪府立大学の畑野快先生をお招きして「3つのポリシーと学修成果の可視化―内部質 保証システムの構築に向けて―」をタイトルに教育アセスメントに関する話題提供を していただきます。今年度、本学でも「3つのポリシー」の再策定を行い、次年度以降、
DP、CPを適切に運用し、教学マネジメントを確立する方針を部長会で了承していた だいております。畑野先生には大阪府立大学での取り組みを紹介いただき、再策定し たDP、CPを基軸に学内で実施している各種学生調査のデータなどから教育プログラ ムの適正な機能をどう検証しようとされているのか、その事例と手法をご紹介いただ きたいと思います。それでは前半の部、よろしくお願いいたします。
畑野快 特認助教:
「3つのポリシーと学修成果の可視化―内部質保証システムの構築に向けて―」と いうタイトルですが、私は「3つのポリシー」の策定運用に関してそれほどかかわっ てはおりません。「内部質保証システム」といいますとPDCAをどのように回していく かということが重要な観点かと思いますが、私がかかわってきた部分はCの部分。立 てたプランをどのようにチェックし、アクションへとつなげていくか。大阪府立大学 の取り組みをお話しさせていただき、先生方や職員の方々に少しでも役立ち、参考に
なればありがたいと思います。
もともと大阪教育大学出身、神戸大学大学院で心理学を学び、修士をとった後、京 都大学でもう一度、修士を取り直すという回り道をしております。心理学を勉強する 中で京都大学では溝上慎一先生、教育の専門と心理学の専門を両方もっておられる先 生に指導を受けました。その後、学振PDを経て大阪府立大学高等教育開発センター に特認助教として着任した次第です。今年4月からテニュア・ポストとして雇ってい ただくことになり、今日、お話しすることはこれからも大阪府立大学でずっと続けて いく仕事になるかと思います。専門が心理学なのでデータ解析も心理学的なイメージ があるかもしれません。その点は専門分野が影響しているとご理解いただければと思 います。
今日のお話は大きく3つ。1つ目は「大阪府立大学の内部質保証はどのように PDCAを回しているか」。2つ目は「学修成果を可視化する方法としてとっている学 生調査」について。同志社大学でもされていることとほぼ同じだと思います。3つ目 は「学修成果の可視化の取り組み」。調査をどのようにFD活動に生かしているか、そ の内容について報告したいと思います。
「内部質保証」。大学の概要は学生数、約7700人。学士と大学院をあわせて。総合大 学とはいえ、それほど大きな大学ではありません。ひたすら統合を繰り返してきた大 学で、2005年に旧大阪府立大学、大阪女子大学、大阪府立看護大学を統合して法人化し、
2012年には学士課程を再編して「4学域13学類制」に移行しました。学域が一番大き な単位であり、その次に学類というのが13学類あります。学類は学部と学科の間とさ れていますが、イメージとしては学部でいいのではないかと思います。学部体制から 学域体制に移行することによって3つのパターンの学類が生まれ、新しくできた学類 として文理融合型ができたことが一つ。2つ目は学部がそのままスライドして学類に なったもの。もう一つは新しく組織を改編してしまったがゆえにできた学類の3つの タイプが生まれた。後で話がつながってきますので最初にご説明させていただきます。
教育に関する意思決定の組織図。上に「教育運営会議」、大学の教育に関する重要 事項を審議する機関があり、それぞれの学類の学類長、教育運営委員長とか役職のあ る方が出てきます。その下に「教育運営委員会(教務)」と「教育改革専門委員会(FD)」
の2つの委員会があります。教育運営委員会は教務内容について議論する。祝日の授 業をどうするかとか。教育改革専門委員会はFDに関する議論を行う場です。各委員 会に教育運営委員長、教育にかかわる先生方が学類から代表で出てきて議論し、その 内容を各学類会議へ持ち帰って報告する。私は高等教育推進機構の中の高等教育開発
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センターに所属していまして、FDをどう進めていくか、議論を定義する上での基礎となる提言をするのが高等教育開発センターです。ここで出された話を「教育改革専 門委員会」で議論する。高等教育開発センターはセンター長1名、副センター長1名、
センター主任1名、センター所員11名、職員9名、非常勤3名で人数が多いと思われ ますが、センター所員の先生方は兼任が多くすぐに動ける先生方が多いわけではない。
限られたリソースの中で働いている状況です。
内部質保証システムは複雑なシステムのように思われますが、PDCAをどう回すか、
そのうちDoとActionに関してはどこの大学でも実際に実施されていますので、実際に どこが問題になっているかというとP、プランの部分。教育目標、DP、CPをどのよ うに策定するか。もう一つはどうチェックするかというCの部分。PとCの部分が大 学の独自性、工夫のしどころで変わってくるのではないかと思います。
教育目標、DP、CPの策定に関しては教育運営委員会(教務)の部分でプランを考え、
チェックの部分は高等教育開発センターが、教学IR、学生調査、eポートフォリオを 使って確認しています。GPAは教務システムの方で管理しているので、厳密にはセン ターではありませんが、GPAのデータなども使って確認しています。チェックの部分 については教育改革専門委員会で議論し、そのための資料を高等教育開発センターで 提示しています。これが大阪府立大学の内部質保証システムになるかと思います。
教育目標、DP、CPの策定は教育運営委員会で議論しますが、DPについてはこれ までも先生方や大学で教育目標を立ててこられた。それがなぜ今、「3つのポリシー」
となるかというと、それに関するガイドラインが出たからであり、ガイドラインに沿っ た内容をDPがしっかり保証しているかを改めて見直すことを、2016年度、各大学で 取り組まれたのではないかと思います。教育運営委員会で方針を提示し、学位プログ ラムごとに作成した内容でDPとCPの整合性を保つためにDPが掲げた能力をCPに対 応しているかどうかをチェックする。教育推進課は職員の組織ですが、全部局で個別 に相談しながらチェックしていき、どこにずれがあるか、ないかを確認していく作業 があります。APに関しては「高大接続改革」を見ながら今後は考えていきたいとい うのが大阪府立大学の現状です。DPは各大学でもつくることができる。それをどう チェックしていくかが難しい問題ではないかと思っています。
「学修成果を可視化する方法としての学生調査」。学生がどれだけ伸びたかをチェッ クする方法は2つ。1つは「直接評価」。パフォーマンスを直接評価する方法。先生 方もレポートとか、テストを受けさせて回答を見る。パフォーマンスを見るやり方。
目で見て確認できるのでかなり信頼性は高い。しかしコストがかかる。レポート500
人分を採点するのは大変だということです。「間接評価」はアンケート調査のやり方 で「何ができると思っているか」を通して間接的にパフォーマンスを評価する方法。
アンケートで「どれくらい能力が身につきましたか?」「この程度、身についた」と
○をつける。これは信頼性が直接評価に比べて低いと同時に、コストも低いので同時 に調査できる。プログラムレベルを大学規模で評価しようと思うと「直接評価」のや り方は難しい。そこで「PROG」テストは河合塾とリアセックが共同しているテスト で一般的なコンピテンシーとかリテラシーをやったりしながら測定しようと。ベネッ セもそういうテストをつくるのにかなりコストをかけているようで、もしかすると大 学側が委託して可視化して確認することがあるかもしれません。同志社大学のように 大規模大学になるとコストの面でも難しく、そのテストが本当に育てたい学生の像と マッチしているかどうかにも、少し疑問は残るかもしれません。今後はそういうテス トができるかもしれませんが、現状では「間接評価」としての「学生調査」が現実的 かなと考えています。
本学の学生調査。同志社大学とも関係が深く、2007年、「日本版大学生調査(JCSS)」
への参加をきっかけに学生調査を始めています。これは山田礼子先生が始められた調 査の一環ですが、2008年には「卒業予定者アンケート」、4年生でどれくらい伸びた かを聞くアンケートを大阪府立大学独自で開発し、実施してきました。2009年から「戦 略GP」に採択されたことから同志社大学が代表校でしたが、継続的な学生調査を開始。
同じ調査を複数の時点でとり、どれくらい伸びたかを確認する調査体制が、この時に できました。4大学から始まった連携が現在、「大学IRコンソーシアム」として大き くなり、2014年、「卒業生調査」を大阪府立大学で開始するようになりました。「1年 生調査」は1年生を対象に。「上級生調査」は3年生を。「卒業予定者アンケート」は 4年生2月、卒論が終わった頃にやっています。工学部はかなり進学率が高いので「修 了予定者アンケート」も加えて。最近始まった「卒業生調査」は卒後5年たった学生 をキャッチアップして郵送して調査を行う。5つほどの調査をやっています。「1年 生調査」、「上級生調査」は大学IRコンソーシアムの共通調査を使用しています。
回収率はかなり高く、毎年80%前後を回収できています。学内の先生方に協力して いただいているのが現状かなと思います。「卒業生調査」は回収率がよくなくて100名 くらいしかデータは返ってきていない。それでも卒業後の学生の状況を確認する上で 貴重なデータと思っています。調査項目を全部が全部、着目して見ているわけではな く、特に学生の現状をどのように変えるかということに役立つような項目をいくつか 選んで見ています。その1つ、学修成果を、能力に関する20の項目から見ていこうと
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考えています。「入学した時点と比べて、あなたの能力や知識はどのように変化しましたか?」という質問に対して「5 大きく増えた」、「4 増えた」〜「1 大きく減った」
まで5件法で聞いています。「リテラシー」「コンピテンシー」に関する項目も分けて いますが、その分類に意味があるわけではなく、項目を分ける視点としてもっている だけです。内容は「一般的教養」「分析力や問題解決能力」「専門分野の知識」とか、
いわゆるジェネリックスキルの項目が並んでいるのが能力に関する項目です。
「生活時間に関する項目」では「今年度になってからあなたは次の活動に1週間あ たりどのくらいの時間を費やしましたか。」で「8 20時間以上」〜「1 全然ない」まで 8件法で聞いています。「授業時間以外に、授業課題や準備学習、復習をする」。こう いう項目で平均値が高いところに回答する割合がどれくらい増えるかを見ることで本 学における学生の授業外学修時間の現状を見ています。
「アクティブラーニングの経験に関する項目」。授業の経験に関する内容では「大学 の授業や授業以外の学習に関して、次のようなことをどのくらい経験しましたか。」
では、「4 ひんぱんにした」〜「1 まったくしなかった」まで4件法で聞いています。
以下の項目すべてがすべてアクティブラーニングではありませんが、「学生自身が文 献や資料を調べる」「学生が自分の考えや研究を発表する」など学生と教員の双方向 性の関係を重視する項目をアクティブラーニングの経験と見てもいいのではないか と。こういう項目を見ることで、どれくらい授業改善活動をやっているかに対するエ ビデンスを提示していきたいと考えています。
「教育満足感に関する項目」では「本学の教育内容・環境に、どれくらい満足して いますか。」について、5件法で満足度を聞いています。どういう授業、設備につい て満足しているかについて確認しています。
以上、4つの視点でどれくらい学生が満足しているかを確認してきたわけです。ア ンケートをとる目的は2つあり、国の要請に応えるアカウンタビリティの側面があり ます。「質保証」がいわれる中でどのように社会に説明責任を果たしていくか。もう 一つは本質的に大学のカリキュラム、学生の質をどう伸ばしていくか、教育改善活動 に生かすことであり、そこの部分をどう折り合いをつけながら進めていくかが悩まし いところです。それに苦労していること、なかなかうまくいかないという話が、次の「学 習成果可視化の取組み」のところになります。
調査をどういう視点で見るか。どこの部分を変えていきたいかということと密接に かかわっているかと思います。大阪大学の佐藤浩章先生が「FD活動の重層的アプロー チ」をいわれていて、「マクロレベル」は制度・組織をどう変えるかというFD。「ミ
ドルレベル」はカリキュラムを学部のレベルでどう変えていくか。「ミクロレベル」
で教授法、授業をどう変えていくか。FDはどこの部分を変えたいかによって見る視 点が違ってくると思います。学生調査、GPAのデータはミクロレベルの話で考える上 で、それほど効果的ではないかなと考えています。集団の特殊性をもったエビデンス になるという特性をもっていますので個々の先生方の授業をどう変えるかには別の方 策がいるのではないかと。今日、お話しさせていただくのはマクロレベル。大学全体 の中でどう変えていくか、部局・学類レベルでどういう課題を改善できるかについて お話をしたいと思います。
「マクロレベル」。2005年からずっと大阪府立大学ではこの話をしていたらしく、
GPA(成績)は1年から3年までほとんど変わらない。1年前期のGPAと3年前期の 累積GPAの相関係数をとってみたところ、毎年0.8〜0.9の相関係数が出る。これはど ういうことを意味するか。1年次に成績がいい人は3年次も成績がいい。1年次に大 学に適応させる、しっかり学ぶ態度を身につけさせることが大事ではないかと「初年 次ゼミナール」を導入して、初年次を対象に学生が知識を獲得するだけでなく、それ を活用できるように自分自身で学んでいく態度を身につけさせようと、それに関する 授業を導入した経緯があります。これが入ってどう変わったか。初年次教育満足度推 移ということで、「初年次教育がどれくらいあなたにとって満足いくものですか。」で は「とても満足」〜「とても不満」まで5件法で聞く。これを2012年から導入して「満足」
と「とても満足」の割合がかなり増えた。1年前期のGPAの平均値が2012年度から多 少上がってきた。初年次ゼミナールの導入によって満足感も上がり、GPAも上がって くる。「楽勝科目が増えただけなのか」という議論もあり、満足度が上がった意味を 考えていかないといけないと学内で議論しています。
学生調査の能力に関する平均値の結果を表したもの。青のバーが1年生調査の結果 で、赤のバーが上級生の平均値。緑の折れ線は差得点(3年−1年)、緑の線が上に 上がるほど、その分、満足度が伸びたのではないかということです。「外国語の運用 能力」に関しては伸びがよくない。平均値も高くなく、差分を見ても変わらない。外 国語の底上げをしないといけないということで「ACADEMIC ENGLISH」を導入し ました。「3年次以降の専門科目等で必要となるアカデミックな英語運用能力を強化 すること」を目的とした授業です。現在、効果については学生調査で確認していると ころですが、平均値の観点からすると少し伸びているのではないか。「リテラシー」「コ ンピテンシー」の評価については省略します。
「学修成果可視化の取組み」。ミドルレベルの取り組みについて。先程の例は全学レ
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ベルで改革をトップダウンでしやすいやり方でした。1、2年次必修の英語授業とか、トップが入れようとすれば、そのままスライドして入れられる改革だった。部局の先 生の専門科目を議論する機会が、これまでほとんどありませんでした。調査を何年も やって、PDCAのCに相当することを、組織としてはその必要性を認識していたわけ ですが、先生方は、そう思ってなくて「学生調査をやってといわれたからやっている」
と。あまりすり合わせができていなかった。それを変えていかないといけないという ことでミドルレベルでの取り組みの報告となります。
そのきっかけになったのは、僕が大阪府立大学に着任するきっかけとなった「AP 事業」でした。FDに関する議論は教育改革専門委員会で話され、学修成果の「可視 化部会」をつくり、ここに先生方に出ていただき、我々の取り組みを丁寧に説明し、
学類の先生方に報告してもらおうということで始めました。2014年10月からキックオ フの取り組みが始まり、本格的に始まったのは2015年度から。学類のDPと学生調査 とのすり合わせから始めました。学類ごとにDPは決まっていますが、それをチェック する機能としての学生調査という意識はなかった。そこの部分を変えないといけない と考え、学類のDPとそれに即した学生調査の能力に関する項目を「Key Performance Indicator(KPI)」として決め、それを選定してもらうことをやりました。表として選 んでいただき、横セルは1〜13学類が並んでいる。縦には「ジェネリックスキル」と いう一般的な能力の項目を20項目並べています。学類の先生方に学類同士で「どこの 能力が自分たちのDPに即しているか」を選んで○をつけてもらう。ここで何が起き たか。これまで別の内容と思われていた学生調査とすり合わせることで、自分たちが 見ていきたい部分をチェックし、我々も能力がどういう意味をもち、どう変わってい くかを確認しながら先生方にフィードバックしていくことができました。学類の中で も温度差があり、「これが大事」という人もいれば「そうではない」という先生方も います。これをやった後、「どうやったらDPを達成できるか、どうやったら能力は高 まるのか、どういう経験が大事か」という話が出ましたので統計的に分析した結果を 出しました。
授業経験、授業外学習時間、生活時間の項目を説明変数として、そして予測変数と して選んだ「KPI」を置いて「どの経験がKPIに対して高い予測率をもつ可能性があ るか」と分析をして、結果を出しました。学生自身、文献や資料を調べる経験があれ ば、分析力や問題解決能力に「標準化係数」、相関係数とほぼ近いという理解でいい と思いますが、0.3くらいの影響がある。授業で検討するテーマを学生が設定する経験 とリーダーシップ能力の標準化係数は0.29と、KPIにかかわる授業の経験や生活時間
が出てきました。グレーの項目は「授業の経験」、白の項目は「生活時間」の項目を 表す。これ以外にもKPIの平均値を使って、ある学類と他の12学類の平均値を比べる ことによって、その学類の特徴、他の学類に比べて「ここが高い」という結果を出し ていきました。
しかしこの取り組みの結論は、なかなかうまくいかず、いろんな課題がありました。
思った以上に学生調査の存在、意義を理解されていない先生が多く、「こんなのをやっ ているんだ」と。同じ先生に毎年依頼して調査をしているが、内容を先生方に周知さ れているかというと、そうではなかったということで、「単年度の比較をしても理解 してもらえない」「結果はこうだったが、来年は違うのではないか」とか「学類によっ てニーズが違う」「こういうことよりも国家試験の合格者、不合格者の特徴とか入試 形態の違いによる学生の成長の違いを知りたい」と。分析手法の課題としては、相関 アプローチは受けがよくない。工学系の先生は相関係数0.9くらいという世界で研究し ている中で、0.3という数字を出しても「どうしたらいいの?」という。その通りだ と、この方法を撤退しようと思ったわけです。それよりも2016年度にフィードバック した時にいわれたのが「学部制から学域・学類制に変わった。その結果はどうなのか。
データをとっているなら学域制と学部生の違いを見て、いい部分とよくない部分を明 らかにしてもらった方がありがたい」といわれて、ではそれをやりましょうと。今年 は2011年〜2015年の上級生調査のデータを使って学域制の効果検証・比較を行いまし た。「学部制」の時に実施した2011、12、13年の3年分の調査と「学域制」の14、15 年に実施した「上級生調査」、3年生後期に実施したものを使っています。回収率は 分かれますが、それに対して多変量分散分析を行い、効果量を確認し、どれくらい差 があったかをあわせて確認していきました。その結果を出し、フィードバックしてい きました。
「学域制の平均値と学部制の平均値」。赤いバーは学域制の時の平均値。青い点線は 学部制の平均値。オレンジで囲っているところが差の出たところ。グレーのバーはIR コンソーシアムで全国50くらいの大学の平均値を出し、その中でどのくらいの差があ るかを確認しています。結果を見ると、ある学類の傾向として「外国語、数理的運用 能力はあまりよくない。専門分野の知識はかなり伸びがある」と。差が出たところを 見ると「専門分野の学科の知識」、「批判的に考える能力」、「文章表現能力」は学部制 に比べて学域制の方が伸びている傾向にある、とフィードバックしました。設備に関 してもどこがよくて、どこがよくないのか。「コンピュータの施設・設備、インターネッ トの利便性はよくなっているが、図書館の設備は満足度が高くない」とデータの結果
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を出して「実際にどうですか?」と学類ごとの先生方と話を進めていきました。差が出たところは「専門分野や学科の知識」は学部制の平均値の方が高い。「コミュ ニケーション能力」、「プレゼンテーション能力」、「就職するための準備の程度」は学 域制の方が高い。「コンピテンシーとされるコミュニケーションは学域制がいいかも しれないが、専門分野が重要ではないか」と。その意味では、あまりよい結果ではない。
「教育に対する満足感」は、よくない。学部制の平均値、学域制の平均値はきれいに 学域制の方が低かった。「教員と話をする機会」など学習支援に関する満足度は低下 している傾向にある。効果量を見てもそれほど大きい差ではないが「これほどわかり やすく出たものはない」という話になり、実際に学類の先生のところへいって結果を 見ながら「どうでしょうか?」と話をしてきたわけです。「外国語が伸びない」といっ ているが、3年次、4年次で外国語を専門授業に入れてやっているというところがあ り、ある学類A、B、Cの中でBに特徴があり、そこは3年次になっても平均値が上がっ ていっているという分析結果を出して報告してきました。先生方に、やってみて実際 どうなのかという確認データを示すこと、いいところ、よくないところを見る中で課 題が出てくることを先生方と話をしてきました。こういう調査は意識調査なので信頼 感は理工系の先生になればなるほど高くはない。しかし実際にもっていって先生方の 実感とすり合わせしながらディスカッションするというのが最近、大学で始めた取り 組みです。それが重要ではないかと思っています。
今年度、認証評価があったこともあり、学生調査の意識はこれまでより理解しても らえたことはあります。これらの結果を大学として報告書としてまとめて理事・副学 長会議に4月に提出する予定です。実際にデータをつくって報告書を返すことは続け てきましたが、自分が所属する組織で、それをどう変えていくかということに使われ る資料として意味があると示すことができるか。「調査は何の意味があるのか?」と いわれてきたので、そこを少し変えていきたいという話をしています。
「CHECKをACTIONにつなげるために」。部局の先生方との信頼関係をつくること がまず大事で、チェックの実質化のためには部局の理解も必要不可欠です。調査をや ればそれだけでPDCAのCになるのかというと、そんなことにはならず、ただ調査が 回収されるだけです。先生方にとって意味のあるものになるためには先生方自身に調 査の意味を理解してもらわないと役に立たない。認証評価や外部評価には調査は十分 な力を発揮するし、2016年度、認証評価がありましたが、こういう調査項目を使うこ とがほとんどで、その意味では役に立った。部局の先生方も今回、その点の認識は深 めてくれたと思います。しかし教育を変えていく意味で、カリキュラムやDPを変え
ていく上で役に立つかということでは意味が違う。本来はこれらの調査は先生方のと ころでつくってもらうのがベストだと思います。ただ今回報告した内容は、これまで やってきた内容があり、それをどう生かすかという発想のもとで「能力の項目」につ いて「それを学類の教育目標と、どうすり合わせるか」という話をさせていただきま した。どこの大学でもそうですが、大学の文脈に生かしたやり方が重要ではないかと 思います。データ解析は現場のニーズにあわせた方法で、どういうところで先生方が 困っているのか、何に困っているかを、その課題を解決するために、このデータが使 えるのかどうか。何でもかんでもやりますというのでは、いいデータを提供すること はできないと思っています。
トップダウンだけではなく、ボトムアップのアクションが一番大事ではないかと。
この手の調査をやると結果に基づいて何かを変えていくという話をされるイメージが 強いと思いますが、それはあまり効かないのではないか。「意識調査だけで何とかし よう」というのは先生方を説得するには分が悪い、僕自身も説得性があるとは力強く 思えない。ではそれをどう使うか。部局の先生方が「こういうことに困っている、こ ういうことを変えていきたい」という。実際にデータを見ると、その問題がここに顕 在化している。「これを使って変えていこう」という交渉のツールとして使うのが一 番使いやすいのではないかと思っています。ここに関してはそれぞれの文脈ごとに考 えていかないといけないと思っています。
目標に即した評価のサイクルということで、何度も調査をやっていますが、どの部 局で何を調査しているかを目的をもって調査する。1年ごとに多少、平均値に差が出 たり、分散が出たからといって効果的な結果とは思えないわけです。実際にPDCAを どのサイクルで回して、どの部分で見て、その結果を何に報告していくか。具体的な 目標を定めながら調査の設計を組まないとデータが溜まっていったままで何も使えな い形で終わってしまう可能性があるので気をつけた方がいいかもしれないと思いまし た。以上です。
大島:
ありがとうございました。質疑応答の時間をもちたいと思います。ご質問がありま したら。
フロア:
先進的な取り組みだと思いました。学生アンケートについて、FDアンケートのよ
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うなもので各授業に対して行われるというイメージですが、このアンケートは大学の学び全体に対して自分がどれだけ到達したかというアンケートですか。
畑野:
授業評価アンケートのイメージだと思いますが、授業評価に関してはeポートフォ リオを使い、それぞれの授業ごとにどう学んだか、その授業に対する満足度、先生は どういうところがよかったか、をとっています。しかし回収率がよくなくて、eポー トフォリオのデータ入力率を上げていきたいと考えています。
大島:
本学では3月下旬に「キャンパスライフに関するアンケート調査」を行っています。
「授業評価アンケート」はミクロのレベルでやっているものです。同志社大学の場合、
10年以上、「キャンパスライフに関するアンケート調査」のデータが蓄積しています。
スタッフも各学部に説明にいっているところもあり、学部から呼ばれているところも ありますが、データの蓄積はあっても、それをうまく使っている学部・研究科もあれば、
存在自体が理解されていないところもあるかなと思っています。
フロア:
大阪府立大学では学域ごとに出して各学域にいって説明されるのか。どの学域の教 育力があるとか、ないとか。もう1つ、データを見て教員同士でディスカッションで きるのはすばらしいなと思いますが、大阪府立大学ではどうやってデータをもとに 教員がディスカッションして教育の向上につなげるのか、議論の成果をどうフィード バックされているのか。
畑野:
13学類をフィードバックしていますので学部単位で回っているということですが、
横の比較は工学と看護では全然違うので、そこで差が出るのは当然だという印象があ る一方で「他と比べて高い」となると喜ぶとか、あまり横の比較は意味がないかなと、
2年経過して思います。むしろ時間軸、過去の学生と現在の学生の数年の比較の中で 今後どうしたらいいかという議論はあります。2年やって思うのは緊迫感がないのは 事実で、就職率が比較的高い方なので能力がそれほど伸びない課題については先生方 もあまり感じておられない。「ここの部分を伸ばせ、伸ばさない」という議論はして
いません。結果をフィードバックするという程度です。それに対して先生方がデータ をもとに、どうディスカッションするか。そのレベルまでまだ到達していなくて、デー タをもっていくと好意的なパターンには「面白いですね。見せてください」と。「何 の役に立つの?」とか「自分たちのもっている課題でどういう方策につながるの?」
という意見もあり、対話の前提にもつながらないという、どういうデータや結果を先 生方は必要とされているのか、そのニーズを聞き出して分析する。それをやって、も う一度先生方にもっていって「こういう結果が出たのでどうでしょうか?」と進めて いるところです。興味をもつ先生方と興味をもたれない先生方に、どう興味をもって もらえるかを交渉しているというのが現状です。
フロア:
学修成果の一部=能力に関する20の項目で「入学した時点と比べて、あなたの能力 や知識はどのように変化しましたか。」を5段階で聞かれています。リテラシーに関 する項目、コンピテンシーに関する項目もあり、リテラシーのところで「分析力や問 題解決能力」とか「専門分野の知識」とありますが、具体的にどのような質問をされ るのか?
畑野:
学生がこの項目を読んで何を想定するか、こちら側が何を想定するかというご質問 でしょうか?
フロア:
教員側が学生のこれらの項目に関する能力をはかるわけで、専門分野の知識につい て漠然と聞くのか、あるいは突っ込んだ聞き方をされているのか?
畑野:
これに関してはこれだけです。専門分野の知識について学生がどう認識するかは学 生任せで、今回の調査では質、内容を問うことはできません。
フロア:
もう1点。DPとCPの整合性は大事なところですが、大阪府立大学でDPと各学部の カリキュラムがあると思いますが、DPに対して各科目との整合性はどのようにとれ
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ているかについて、評価をされているのかどうか?畑野:
それを確認する調査は行っていません。今年、「3つのポリシー」に基づくガイド ラインが出て、それに沿うとどれくらい整合性があるか、職員の方と教員1人で部局 の13学類を回り、すり合わせをして確認したという現状に止まっています。全学的に 評価する、チェックすることは現在、まだやっておりません。
フロア:
質保証、質改善のためのPDCAのうち、PとCは高等教育開発センターで、DとA は部局で分かれている状態だと。本来、効果的に実施しようと思うとPDCAの主体は 部局で責任をもって行うという理解でよろしいですか?
畑野:
その通りだと思います。Cの部分を、できるだけ部局の先生方独自でやっていく。
それを情報としてとりまとめて次のアクションにつなげていく。先生方につなげて いってもらうのがベストだと思います。ただDPのように大きくなってきて全学的に どうしていくかを共有する場が必要ですので二層に分けてPDCAを理解していこうと いうことではないかと思っています。
大島:
それでは以上で質疑応答は終わりたいと思います。畑野先生、どうもありがとうご ざいました。