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学徒兵への読書推薦

資料について

  本 資 料 は、 一 九 四 三 年( 昭 一 八 ) 一 一 月 二 五 日 に 刊 行 さ れ た『 三 田 新 聞 』 五 三 七 号「 学 徒 出 陣 特 集 号 」 の な か の 特 集「戦陣に如何なる書を携行すべきか」において実施された ア ン ケ ー ト 結 果 を リ ス ト 化 し た も の で あ る。 『 三 田 新 聞 』 は、 一九一七年(大六) 〜 一九七一年(昭四六)までが不二出版 から復刻版として刊行されているが、五三七号は欠号となっ ており復刻されていない。だが、大学新聞という学生に向け て編集された限定的なメディアにおける学徒出陣特集という 点 に お い て、 「 学 徒 出 陣 特 集 号 」 に は 貴 重 な 資 料 が 数 多 く 含 まれている。特に著者は、学生の戦時下の読書行為という視 点から大学新聞の資料価値を評価し、本稿に先立ち拙論「戦 時下学生の読書行為   学生と読書が結びつくとき   」

におい て本アンケートへ言及を行っている。だが、紙幅の都合から 推薦書籍名を紹介するだけで執筆者について言及することが できず、アンケートの持つ資料としての有効性について充分 に述べることが出来なかった。よって、拙論を紹介しながら ではあるが、簡単に本アンケートの概要と資料の意義につい て述べていくこととする。   なお現在、復刻版刊行ののちに収集された欠号のいくつか は慶応義塾大学メディアセンターにてマイクロフィルムとし て閲覧することが可能となっており、本稿で扱う「学徒出陣 特集号」は全ページではないが、その大半をマイクロフィル ムで閲覧することが可能である。   一 九 四 三 年 に 学 徒 出 陣 は 本 格 化 し、 一 〇 月 二 一 日 に は 神 宮 外 苑 で 学 徒 出 陣 壮 行 大 会 が 開 催 さ れ る。 こ の よ う な 状 況 下、 『 三 田 新 聞 』 で「 学 徒 出 陣 特 集 号 」 が 企 画 さ れ る こ と と なる。それまで三田新聞編集部は、在校生やOB編集者によ っ て 運 営 さ れ て い た が、 こ の「 学 徒 出 陣 特 集 号 」 に 関 し て は、学内統制機関の報国団による編集ではないかという指摘 が あ る

。 出 版 社 の 統 合 が 行 わ れ、 「 出 版 新 体 制 」 の も と 一 元 化されていく流れのなかで、大学新聞もまた徐々に統制され て い き、 『 三 田 新 聞 』 は 一 九 四 四 年 に は 休 刊 を 余 儀 な く さ れ ていく。いわば、一九四三年の学徒出陣期に発行された「学 徒出陣特集号」は、従来の自由な気風と徐々に深まる弾圧と 中野   綾子 学徒兵への読書推薦       「戦陣に如何なる書を携行すべきか」 『三田新聞』アンケート一覧

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  さて、編集部の企画意図は、図書推薦という行為によって 学問の戦場での有効性を示すことであったと考えられる。そ れは宮本三郎が「兵士の通訳」のなかで「戦場に置いても学 問 が チ ャ ン と 生 か さ れ て ゆ く こ と 」 と、 「 武 力 の 後 に は や は り学問が 彼

と我との心をしつかり結んでゆくであらうこと」 を感じ、戦場で「書を読む兵士」の挿絵を描いていることか らも明らかである。ここでは戦場での読書行為は、戦場で役 立つ学問を養うものであり、さらに友好的な占領を進めてい くための、戦場での血を流さない武器として表象されている。

  以下、具体的な執筆者やアンケート回答結果の傾向につい て述べていく。回答者には、慶応義塾大学関係者が多いが、 その他大学教授から文芸、映画評論家などもみられる。女性 では唯一詩人の江間章子が回答しているのみである。全体的 な傾向としては、編集部による総評で「数的な結果を簡単に 記 し て み る と 〝 万 葉 集 〟( 斉 藤 茂 吉 著 〝 万 葉 秀 歌 〟 を 含 む ) は流石日本古典の粋たるにふさはしく断然他を圧して二十五、 次いで同じく誇るべき古典たる 〝 古事記 〟 の九、更に 〝 芭蕉 俳句集 〟 八が挙げられているのは興味深い」と述べるように、 日本古典がその中心を占める。万葉集が実際には二〇名にし か推薦されていないところを、上下分冊を重複して数えるこ とで二五名とするなど、日本古典を強調するきらいがあるの は確かである。

  だが、個別のアンケートという性質上、個々の回答からは、

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学徒兵への読書推薦

番号名 前役 職推薦書籍/コメント 凡て祖国のためです。続けて下さい。 勉強を何れも外地出陣を予想してのことです。冊、 ケ来たら外国語のポ事ツトに典一冊と詩集一出外 ス)/「マハーバーラタ」1上智大教授吉満義彦 ギ聖ウ「論語」/「旧約書ル」/「リイネス」(ヴェエ

(岡倉天心)の目ざめ」2佐藤信衛哲学家 「天洋東「)/隠白」(釜羅学遠)/元道」(集心用道「 3伊藤吉之助東大文学部教授「万葉集」

4松村武雄文博「古事記」/「万葉集」/「芭蕉俳句集」

5本多顕彰法大教授「歎異抄」

6鬼頭英一立大教授「古事記」

(プラトン)7東商大講師古川哲史 歎」ンドイパ「」/抄異「「集心初道武「」/隠葉」/

8加茂儀一文化史家「万葉集」

(竹内叔雄)時男)/「竹」9竹内時男理博 百万「内竹」(学科の人百万「髞林」(学理生の人)/

山正治氏や浅野晃氏の編著のものを推薦したい。 影尚ほ他に志士の詩歌集遺文集の類を撰ぶなら、 (川田順)10哲学家岡不可止 田「「吉」歌国愛末幕」/松話余講「」/集簡書蔭孟 11比屋根安定青山学院教授「新約聖書」

12杉村楚人冠文芸家「禅林句集」

/「東洋の理想」道」(岡倉天心)13浅野晃文芸評論家 「古事記」/「万葉集」/「明治天皇御集」/「奥の細 14戒能通孝中大講師「幾何学」(ユークリツド)

書物などさつぱするのがまづ第一と思はれます。 軍人に賜りたる勅諭を身読のまゝに訓練をうけ、 学こして生知識人ぶるくとなてたゞ上官の命令決 15ゐます。無学文盲の人達であつても、その中に伍し亀井勝一郎文芸評論家 す。軍隊には農民も商人も其他あらゆる層の人が のど携行ぬ方がよいせでゐないかと考まへては 一冊も本な私の気持としては、軍隊に入る際には、 はゐる筈だ、私すさう考へてゐま生きて。 の最上に中ののもそ軍隊は精髄の書物の、かいなはで きのそり隊らめての軍もねに身を委るのいゝ番一がのあ

松蔭書簡集」16広島高師教授玖村敏雄 )/田吉「」/歌秀葉万「編「懐」(記聞随蔵眼法正奘 ィッツ)/「戦陣訓」17峯村光郎義塾法学部教授 「明治天皇御製集」/「戦争論上・下」(クラウゼヴ 魂の闘ひを貫く事によつてはじまるだらう。 真の闘志と実績はその謙虚な人間的沈潜と心い。 は虚なる人間返らずでに現実の決戦はおぼつかな かはれねばならぬと思ふ。心魂のたゝかひなく、謙 決戦があくまで己に忠にたゝまづ心魂の闘争、へ、 血の決戦に向ふまともかく、ひつくもの多いが、 その他思を携へたい。『パスカル瞑想録』その場合 をはらむ古典に自己省察を求めるか。もし私なら18矢崎弾文芸評論家 深潮或ひは、きまぐれの娯楽など読書に求めぬ事、 また専門の追求を最後までつゞけるか、思ひます。 いも私には最しふさはといとがことつもをのもふ ます。手に入るたゞ自己の信念と要求にしたがひ、 また払底の折を考へなどし選択に自信がもてず、 出行携す陣学徒にをなゝととめなる物そ書どるの また月並なものならいふまでもないことです。す。 なね訪角御のら折が適私には当なが出ぬので答

19秋山謙蔵國學院大教授「明治天皇御製集」

20今泉孝太郎義塾法学部教授「戦争法」(前原光雄)

21吉田精一拓大教授「芭蕉七部集」/「万葉集」

海濶の気宇を養ふようにしたいものである。 東天皇御集を拝誦して大治亜の国民としての天空 戦の場に在つても日々明でもないことであるが、 首一人や百国愛入訓のはつて居るべき云ふま戦陣 義塾文学部教授22を国川合貞一人の背嚢中には君養に殉ずる精神気魄きべふ 文博、 日本軍日本人にはふさはしからざるものである。 そはとにかく聖書やニイチエは我々であらうか。 今次はどうチエとが入つてゐたといふことだが、 ニ逸前世界大戦には独軍と人の背嚢中にはイ書聖 23大室貞一郎東大学生主事「不動智」(柳宗彰)

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東京女子大学長 「新約聖書」/「プルターク英雄伝」/「カーライル英雄崇拝論」/「独逸戦争史」(トライチケ)/「マルチン・ルター書簡集、説教集」/「眠られぬ夜のために」(ヒルテイー)哲学家「唐詩選」文博、京大文学部教授 「論語」

文博、広島文理大教授 「ツアラトストラ斯く語りき」(ニーチェ)/「万葉集」京大文学部教授「西郷南洲遺訓」文芸評論家「古事記」/「延喜式祝詞」科学評論家「うひ山ふみ」(本居宣長)/「蘭学事始」(杉田玄白)

義塾予科講師 塾員金井医博が満州に猛烈に大活躍出来し原動力の一つは支那語の勉強であつた。愚息が中・南支に出陣して陣中より要求せし書物も支那語であつた。仏印へ進駐せし時には仏語の初歩を要求されて送本した。スマトラ方面進出の折にはマライ語の本を送りました。出陣学徒各位には言葉の武器たる此の種の携帯書を第一に薦める。医博、義塾医学部教授 「英人の見た海軍兵学校」(セシル・ブロック)/「満蒙行政瑣談」(金井章次)映画評論家「万葉集」

東大文学部助教授「膝栗毛」/「聖書」

外交評論家 私の周囲を見渡して、生死の巷に出入して僕を離さないやうな書籍が無いのを自ら恥ぢます。たゞ考へますのに学徒の携行する書物は、その専門と、その信仰によつて異なるのではないでせうか。仏教信者は経典、キリスト教徒は聖書といつたやうに。慶應義塾関係者は福澤諭吉翁の日清戦争頃の烈々たる愛国的筆陣のものがいゝかも知れません。一つのお願ひはどこに行つても、そこの歴史と、国情と、特殊性を研究していたゞきたい。兵務に服しながら、しかし何か一つのものの研究に興味と、お土産を発見していたゞきたいと思ふ。

W,Bley,Volk)( lyker·KanoniereRikunFFlieg·dn·wieder!)/」(」「 36hoKpffliegerM.V.RichtfenFlieger·am)/「」(義塾文学部講師板垣鷹穂 Kote·.R·rriegstagechK.VbuichofenDhter」()/「 erlegMli·Finebe·nE.udetMein」()/「「 37菊池寛作家「万葉集」/「今昔物語集」

38池田亀鑑東大文学部助教授「新葉和歌集」/「太平記」

39遊部久蔵東亜研究所員「蘭学事始」(杉田玄白)

/「芭蕉全集」ン、小林秀雄訳)40北原武夫作家 論る「ラア」(章一十八す語関と熱情と神精「」/に 41厨川文夫義塾文学部助教授「日本人の笑」(池田孝次郎、柴田宵曲、森銑三)

42福良俊之東京新聞経済部長「明治天皇の聖徳」(渡辺幾治郎)

43木村素衛京大文学部教授「正法眼蔵」(道元)/「楠正成遺言状」

44畑功義塾文学部教授「松濤閑談」(牧野伸顕)

す。 けまじ存と切大番一がとこるかをき磨てしら照に45松澤武雄東大理学部教授 莵に角今迄学んだ事柄を実際の経験たりません。 唯今適当なものが思ひあ学生にすゝめる本の件、

46森本治吉二松学舎教授「万葉集」

義塾文学部長47小林澄兄「新訓万葉集上・下巻」(佐佐木信綱編) 文博、

東商大教授48吹田順助「万葉集」/「芭蕉句集」/漱石の小説 文博、

49間崎万里義塾文学部教授「掌中大西年表」(岩井大慧)/「袖珍和英辞典」

よい。 先得るやうなものをづ読自ら選択されるがみてし また幾回でも繰り返相当時日を要しても、場合に、 50教義塾経済学部藤林敬三ものを極く少数持つて行かれるがよい。授唯だこの ら本をすゝめられるよりは、自分でこの本と思ふ つてその間に書物でも見たいと思ふならば、他か 軍隊生活に充分読書の余暇があると思へない。従 51尾佐竹猛明治文化史研究家「福翁自伝」

52有竹修二東朝論説委員「蒙古史」(ドーソン)

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学徒兵への読書推薦

53向井潤吉書家「古事記」

54イ訳香涙岩黒」(王窟岩「)/ト袋一平スルト」(和平と争戦「映画評論家) 55小島政二郎作家「葉隠」

56福原麟太郎東京文理大教授「万葉集」

57藤田徳太郎浦和高校教授「明治天皇御製集」/「古事記」

(岡倉天心)58能勢朝次東京文理大教授 「万葉集」/「禅と日本文化」(鈴木大拙)/「茶の本」

義塾経済学部長「孟子」/「新旧約聖書」/「プラトー対話篇」59野村兼太郎 経博、「日本書紀」/「古事記」/「神皇正統記」/「論語」/

。はたく存じます。其他に何らもお薦めしませんひ60鈴木信太郎東大文学部教授 携の各学徒の専攻科目門専行書を一冊以上はもてし 61桑木或雄理博「ゲーテとの対話」(エツケルマン)/「謡曲集」

)スツアラウトウト藤左千夫歌集」ラ」(ニイチェ/「 62倉心映画評論家伊「」/集彦赤木島「)/歌天の津村秀夫「邦東理想」(岡 漱」(「日本開化小史「田口卯吉)/心」(石)/目夏 かず候63義塾工学部長谷村豊太郎 良つへ考のもす申と書り折差らがな越申御の角当 64高石真五郎毎日新聞社会長「万葉集」

テイア/ヒツポリコトス イキケロ/ラトン/オプデオイスレレカアイデポ シ/モニデススカトウルル/ス/ロメホ/劇悲ア65日大教授呉茂一 /「ヴェルレーヌ詩集」/ギリシ/「ブレーク詩集」 イアラトストラ」(」ニチー集詩ェルレドーボ)/「 /「ツ/「ゲーテ詩集」/「荘子」/「論語」「万葉集」

簡単ながら右おこたへまで。す。 んれたものが意義深く浮でくるものと存ぜられま 必要な場合には、きつと心の奥にある過去に読ま 66し本などは必要はないものと存ぜられます。江間章子本が詩人 学徒出陣に際へましても心に浮んで参りません。 す。お問合せの携行をおすゝめいたしたい本は考  こ拝復学徒出陣まとまに感の至りでござい激 幹之助)義塾医学部長67北島多一 医博、熱島宮」(識知の活生帯「「)/正岡安」(旅の界世篤

夫) 理事68川周明)(大串兔代今村武雄/「新訓万葉集」/「日本国家論」 商京東会済経工 「大」(行言的本日川)/明周大史略侵亜東英米「」(

69吉田洋一北大教授「万葉集」/「パンセ」(パスカル)

館大学長70山田孝雄「直毘霊」(本居宣長) 文博、神宮皇學

/「芭蕉俳文集」「有明詩集」/「奥の細道」71早大文学部教授山内義雄 明島「」/集歌彦赤木」/「治集万「」/集御皇天葉 72奥村信太郎毎日新聞社長「愛国百人一首」

がひしたい。 し源等を可な範囲で詳能く探査されることをおね 外地にあつてはその土地の人情、風俗、人文地理資 い、ととこるす究研を術技ふとかすなこひ使に的73物理学校教授會田軍太夫 兵器ことに新兵器を如何に効果精神を発揮して、 この際既存の知識と科学わたくしはむしろ、すが、 徒で携行して欲しいは本自ら違ふと考へられまか 法文科系と理工化系の学栄えある出陣に際して、

74寺尾新理博「葉隠」/「禅と日本文化」(鈴木大拙)

75小泉信三経博、義塾塾長「万葉秀歌」

の毒ですが仕方ありません。 ますので一々書きあげても無駄かと存じます。気76理博、北大教授中谷宇吉郎 その中推薦したい本は到底入手困難と思ひすが、 軽すでのいためす庫をい文岩てれ入に慮考を点波

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推 す 声 も 数 多 く み ら れ る。 具 体 的 な 署 名 タ イ ト ル に つ い

一 郎、 藤 井 敬 三( 慶 応 義 塾 大 学 経 済 学 部 教 授 )、 谷 村 豊 太 、江間章子の四人である。 「書物 ど さ つ ぱ り あ き ら め て 」( 亀 井 ) や「 軍 隊 生 活 に 充 分 の 余 が あ る と 思 へ な い 」( 藤 井 )「 本 な ど は 必 要 な い も の 」( 江

為 へ の 否 定 を 表 す こ と に な る。 特 に 亀 井 勝 一 郎 は、 戦 後 学 に お け る 戦 争 責 任 の 追 及

」 の な か で 小 田 切 秀 雄 に よ っ

戦争が武力だけではなく文化戦争の側面を呈したとき、読

凡例

・ 本 資 料 は 一 九 四 三 年 十 一 月 二 五 日 発 行、 『 三 田 新 聞 』 第 五 三 七 号 「 戦 陣 に 学 徒 は 如 何 な る 書 を 携 行 す べ き か 」 の ア ン ケ ー ト を リ ス ト化したものである。 ・書籍タイトルは原則として本文に従った。また、著者名について は記載されている範囲をカッコで示した。 ・基本的には本文記載の書籍タイトルを抜き出してリスト化を行っ た。タイトルではなく書籍内容による回答に関しては、コメント 的な態度を示す行為としての意味を強める。つまり、戦場で の読書行為は、戦争に積極的に関わろうとしないという反戦 を表す態度を示すことになるのである。そういった反戦の意 を表す行為としての読書行為への転換は、学徒兵の手記に記 された読書行為を通して「きけわだつみのこえ」の刊行、映 画化によって大衆に広まっていったが、その為に現在では戦 時下における読書行為にまつわる様々な表象が見えにくくな っている。いままでに戦時下の文学者の戦争責任について文 学研究の場では、その執筆内容や戦時下のポストにおいて評 価を下してきたが、内容面だけでの評価だけではなく読書に 対する態度や考え方という視点によって新たな評価軸を見出 していくことも必要とされるだろう。本アンケート結果一覧 は、戦場においてどの本をどのように読むかということが、 本来いかなる意味を持っていたのかということを考えるうえ の有効な手がかりとなるものである。

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学徒兵への読書推薦

欄に抜粋したコメントを翻刻している。 ・明らかな誤字・脱字は適宜訂正した。 ・原則として、旧漢字・異体字は新字体に改め、旧仮名遣いについ てはそのままとした。

(1)中野綾子「戦時下学生の読書行為   学生と読書が結びつくと き   」( 『日本文学』日本文学協会、二〇一二・一一) ( 2) 「 戦 中・ 戦 後 の『 三 田 新 聞 』 を 語 る 」( 『 近 代 日 本 研 究 』 第 一 三巻、慶応義塾福澤研究センター、一九九七) (3) 「彼」とはフィリピン兵のことである。 (4)小田切秀雄「文学における戦争責任の追求」 (『新日本文学』 新日本文学会、一九四六・六) (なかの・あやこ/早稲田大学大学院)

参照

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