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公共的問題と管理科学

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公共的問題と管理科学

はじめに

 オペレーションズ・リサーチないしはマネジメント・サイエンス(以下 OR/MSと略記する)は,はじめ兵帖の問題に,ついで企業の管理の問題 に適用・応用されて発展して来た。多くの科学はそれぞれに個有の研究領 域をもっているが,OR/MSはMethodenlehreとしての性格が強いため,

その研究領域はあらかじめ特定されているわけではない。従って,都市問 題,地域問題,医療問題等の公共的な問題にそれが適用・応用されても別 に不自然ではない。ただ,それらの問題は一般に企業の管理の問題よりも 複雑であり,また経済性という企業の管理の問題に共通して使用可能な尺 度では測り切れない面を持つ等の困難のため,適用が遅れたのであった。

しかし,現実からの要望もあって,】960年代には次第に研究者の関心がこ の領域に向けられるようになった。そして,エポック・メーキソグ的な事 象がTIMS(The Institute of Management Sciences)の学会誌Ma−

nagement ScienceにUrban Issuesとして現われた〔16〕。1970年の事で ある。その後,この特集は]972年にも編まれ〔17〕,1973年には「エコロジー

と生活の質」〔9〕についての特集も同誌上に出て来た。また,1975年Zπ θ卜

∫α08s誌上には,それまでのOR/MSの成果を認めつつも従来の都市問 題分析上の限界を指摘し,分析の新しい方向を示す解説記事が現われた〔41〕。

一方,アメリカOR学会の機関誌Operations Researchでは,1976年に

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医療問題を特集している〔19〕。

 このように,1970年代には公共的問題がOR/MSの重要な領域を占め るようになり,今後もこの傾向が続くようにみえる。そこで,ここでは都 市間題を中心として,OR/MSが公共的問題にどう適用・応用されるかを,

これまでに発表された文献を中心に検討し,今後の方向を探求したい。

1.OR/MSのモデルとして定式化しやすいタイプの問題

 OR/MSは方法として好んで数理的な方法を採るため,問題そのものの 性質ではなく,問題のモデルの性質によって分類され論じられることが多 い。モデルの側面からみて最も取扱い易い問題はモデルがでぎるだけ少い 変数の関数に表現でぎ,その最適解として極値を求める形にまとめられる タイプのものである。たとえば,企業の管理の問題では,在庫管理の問題 がその典型であろう。在庫管理における最も簡単な発注量決定の問題は,

   ある期間の在庫費用=保管費用+発注費用

の考えから,求めるべき発注量をQとおけば,適当な定数をA,Bとして,

   あ・期間の在麟用一AQ・号

というQの関数に表現できる。これから微分によって簡単に最適な発注量 が求まる。これはごく単純なモデルではあるが,極めて実用性に富み,

実際企業ではこれから求まる発注量を経済的発注量(Economic Order Quantity)として現実に使っている。

 もし,モデルの形としてこれと似たものが公共的問題の中にあるならぽ,

それは問題の性質としては在庫管理と全く似ていなくても,上と同じよう に簡単に,また同じような手続きで最適解を求める事がでぎるだろう。

 M.J。 Martinは,都市のゴミ収集の問題を分析し,その費用に関する 基本的なモデルを,

   Cn=A+_旦_十Dn        n

 54

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の形にまとめている〔34〕。ただし,C、はn人の作業者が1チームをつくり,

一軒の家からゴミを収集したとぎの費用であり,A, BおよびDは収集車 と収集作業の1分当り費用,家の並び方に依存するような定数である。勿 論,定数A,B, Dを正確に決定するためには,ゴミの収集作業と家の並 び方を具体的にその都市の実情に合わせて詳しく分析しなけれぽならない。

ここでは,作業研究の手法によって収集作業の時間が綿密に分析・測定さ れデータが得られている。また家並みについても細く分析・分類され,そ れに応じた定数の決定がなされている。

 ともあれ,このモデルは,内容的には全く関係ないにもかかわらず,数 式的には先の在庫モデルとほとんど同形である。ただ違う所は,先のモデ ルにおいてQは一応連続量であると考えてもさしっかえないのに対して,

nは離散値と考えなければならない所である。従って,C。の式から微分 法によって最適なゴミ収集のチーム人数を求めることはできない。そこで,

ここではコンピュータによって数値計算的に求める方法が示されている。

これは先の方法にくらべ面倒であるが,あくまでも数学的解法上の面倒さ であって,問題そのものの性質から来る面倒さではない。

 V.F. Dbkmeciも地域の健康関連施設を計画する問題を取挙げ,医療 センター,病院,ヘルスセンターの数,規模,立地について,交通費と施 設費の和の関数の形にモデル化している〔20〕。この関数を最小化する方法

として,彼はヒューリスック法に基くものを提案している。

 このように,ひとつの関数の形に表現できる問題は,OR/MSの分野で は比較的取扱い易いものであって,実用性も案外高い場合が多いのでOR/

MSワーカーにとってはとっつきやすい問題であるといえよう。

 この事はある種の予測問題についてもいえる。P・Kolesarは,消防車 の火災現場への平均到着時間の予測を,

   ET=α+β〔A/(n一λES)〕r

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なる関係から行なっている〔30〕。ただし・Aは地域の面積,nは消防車の台 数,λは火災の発生率,ESは火災1件当りの平均総所要時間である。こ の関数式において実際のデータからパラメータα,βおよびγを推定し,

ETを推定するわけである。これも数式としては決して複雑ではないが,

極めて実用性に富んだ例である。実際,この研究に基いてニューヨーク市 の消防車の台数や配置の変更が行なわれたという。

 以上を要するに,よく都市問題とか公共問題とかは複雑である,輻湊し ている,従って解決困難であるとの謂いがあるが,既知のOR/MSのモ デルのアナロジーの上に定式化でき,しかも応用上大切な問題も多々あ

る。それはOR/MSにとってよい問題であるといえよう。また,複雑で 輻湊した現象の中からそのような問題を探し出す事はOR/MSワーカー にとって重要な課題でもあろう。

2. 数理計画法をめぐって

 数理計画法はOR/MSの中でも特に応用事例の多い分野である。特に 純粋の線型計画法は理論的には既に完成の域に達し,実際の計算上もほと んどのコンピュータに充分実用的なプログラムが用意されているから,い かに複雑な公共的問題に対しても,それの線型式系への定式化さえ可能な らぼ,変数や制約式の数の多さからその解決が本質的に脅かされるような 事態はほとんどない。もっとも,公共的問題に限らず,数理計画法の適用 を必要とする問題にはプランニングの問題が多く,この問題は本質的に整 数を変数として定式化しなけれぽならない場面がしばしぽ生じ,そのため 整数計画法を適用しようとすると既存のコンピュータ・パッケージや解法 の能力を越えてしまう事態も生じうる。従って,その問題に適した解法を 新たに探求しなけれぽならない。また,公共的問題は非線型の関係をもっ てしか表わしえない事もよくある。非線型計画法の一般理論など望むべく  56

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もないから,この場合ますますアド・ホックな解法の開発が要求される。

 都市計画の際など,地域をいくつかの区域に分けて考えることは多い。

G.BagbyとA. Thesenは地理的な条件において等質な区域(ゾーン〉

が水道,電気などのユーティリティによって結ぼれているネットワークを 考え,全土地開発費用の和とネットワークの拡張費用とを最小化する問題 を線型計画法で定式化している〔1〕。この種のネットワーク問題はそのまま 線型計画問題に変換可能であるから,線型計画法を用いて解ける。また,

この種の問題は都市計画における種々な施設の設置問題にほとんど形を変 えずに応用できるであろう。

 純粋な線型計画モデルを健康サービス(Health Service)の計画過程に 適回した例もある。P. T. Ittigは,ある特定の人々を対象とする移動可 能な保健サービスのプランニングにおける問題点を論じた後,人口,財務 システムのダイナミックスに関する広範なデータの使用によってプランニ ング過程に役立つような線型モデルを示している〔26〕。彼も言っているよ

うに,この領域は線型計画法に限らず,広くOR/MSの各分野にとって ますます魅力的な研究領域となるであろう。

 ところで,問題によっては純粋な線型計画法は,適用可能ではあるが,

不充分な場合もある。M. Rabinowitzらは,大病院によくみられがちな 誤って不適切な病床へ入れられた患者を空きベッドの状況をにらんで割り

当てしなおす問題(これは病院管理上大きい問題のひとつだそうであるが)

を,まず線型計画法で定式化し,次いである種の二段階モデル(Two−Stage Mode1)で定式化している〔鋤。彼らは問題の規模からして前者は非効率的 で非実際的であるとし,後者の効率的なことを示している。また,実デー

タによる計算実験も行なっている。

 このように,純粋の線型計画法も現実の問題に当っては注意深い検討を 要することがあり,研究課題としても興味深い話題を提供する場合がまだ

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まだあると思われる。

 J.G. Nacke1らは,健康管理計画における資源配分に対する集団意思 決定過程を整数計画法で研究している〔35〕。ある健康管理プログラムの効 果は健康管理組織の重み付けられた諸目標に関して競合する代替プログラ ムとの比較によって測定されるが,整数計画法は意思決定者が与えられた 予算,資源,法規制,プログラムの構造的制約のなかでプログラムの効果 を最大にするのに役立つ。プログラムの代替案の数とか目標の数は本来整 数であるから,必然的に整数計画法が要請されるのである。

 ところで,整数計画法の決定的解法は未だ開発されていないが,有力な 解法として分枝限定法がよく用いられる。整変数を含んだ看護婦最適配置 の問題に対して,分枝限定法を使って解いた例がある=46〕。分枝限定法は 混合整数計画法の解法としても有力であるが,外来患者に対する医療行為 における最適要因配置を検討するための分析フレームワークと測定方法の 問題に混合整数計画法を使った例もある〔43〕。

 L.J. LeBlancらは,交通配分問題に対する効果的な解決方法として,

各アークに沿って流れるフローのコストの和を最小にするような目的関数 をもつネットワーク上での非線型計画法を採用している=31〕。すなわち,n 個のノードをもつネットワークを考え,Aをアークの集合,κ ノ$をノー ドγを始点とし,ノードsを終点とするようなアーク(〜,のに沿っての 流量,物をアークσ,ガ上の総流量(従って,撫=Σκ6ノリ,ん(物)

       ハヨ

をアーク(ちフ)に沿って勘単位送ぶに要する費用とするとき,与えら れたネットワーク上で非線型な総費用Σん(Σκかつを最小にする問魎        らブ    r・ε

を考えるわけである。

 R.Carboneらも,基準値(いわゆるbenchmark)に基き,すべての 汚染者が同一の割合で汚染物質廃出を減少させて行く際の公平さと選択的 汚染減少手続きをある種の非線型計画法で論じている〔6〕。

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 これらの問題は変数が多く,変数間の関係も複雑なものである。非線型 計画法は,その解法の理論は未だに一般化の見通しすらたってないが,定 式化の能力に極めて優れているため,これからも複雑な公共的問題に対す

る強力な武器として役立って行くであろう。

 実際の問題を線型計画モデルに定式化しようとするとき,最大(最小)

化したい目標がいくつもあり,しかもそれらが互いに競合するという事が よく起こる。そのようなとき,ゴール・プログラミングを用いて定式化す ることがある。S. M. Leeらは,ゴール・プログラミングを複数基準をも つ学校バス配置のモデルに適用している〔32〕。彼らによれば,学校バス配 置の問題は各児童に平等の教育機会を与える事,各学校の人種的バランス を達成する事,送迎コストを最小化する事,バスでの児童の極端に長い送 迎時間を避ける事,生徒数が学校の収容力を越えた場合に各学校間の過剰 定員のバランスをとる事,生徒数が学校の収容力を越えた場合に収容力の 無理な利用を避ける事という6つの目標をもっている。そしてこれらの目 標はそれぞれ異った次元をもっており,しぼしば互いに競合する一たと えば,人種のバランスという目標と送迎コストの最小化という目標のよう に。彼らはこの問題に対して,3つの異るゴール・プログラミングのモデ ルを示し,論じている。

 公共的な問題は,企業の管理問題と違い,しぼしば多くの目標を設定せ ざるをえない場合が多い。このようなとき,ゴール・プログラミングはひ とつの有力な手法となりうるだろう。もっとも,目標すらあいまいで全く 確定する事ができない問題も決して少くないが。

3. ネヅトワーク・タイプの問題

 ゴミ処理場,刑務所のように住民が嫌がる施設をどこに設置すべきかと いう問題がよく起こる。R. ChurchとR. S. Garfinkelはこのような問

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題をネットワーク上で考えている〔12〕。

 いま,2>をノードの集合,五をアークの集合とする無方向グラフG=

(N,、4)を考える。Xを施設の候補地点の集合とする。 Xは明らかにノー ドの有限な集合とアーク上の無限な点の集合とから成る。次に,C(∫,ブ)>

0をアークσ,ノ)の長さとし,塞Xに対して,4C,のをノードゴから κまでの最短距離とし,¢ ≧0をノードfに付与された加重とする。そう した上でChurchらは,関数

   丁(κ)=Σα dσ,κ)

      ¢εjV

を最大化する問題を扱う。つまり,彼らはある施設をどこかに設置しよう とするとき,それがいかに悪い設置であるかを数量的に評価する形で問題 を解いているわけである。考えるべぎ施設が(たとえば原子炉のように)

ある危険を伴っている場合,T(のの式によってその施設の危険さの度合 いを計量することも可能である。また,一箇所ではなく,ネットワークーヒ でP個の点に施設を設定する問題への拡張も考えられる。

 LD. BodinとS. J. Kurshは都市の街路の清掃車についてルーティ ングとスケジューリングを行なう問題を扱っている=4〕。彼らは,ネット ワークG=(N,・4)上のノードNを,出て行くよりも入って来るアークの方 が多いもの,出て行くアークと入って来るアークが同数のもの,入って来

るよりも出て行くアークの方が多いものの3つのタイプに分ける。そして,

第一のタイプのノードの集合をP,第3のタイプのノードの集合をSとし,

またC井をノード∫からノードノへ車が移動する時間とする。すると問題

は,

   謝ηZ=ΣΣCゴ㌃κゴ鳶       ゴε3㌃εP       Σκゴドsノ,ゴε3       κεP

      Σκ」㌃=4㌃,々εD       ゴεs

       鞭≧0

 60

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となる。ただし,SゴはノードブεSに対してノへのアークの数からノより のアークの数を引いた数,碗はノードんεDに対して々よりのアークの数 からんへのアークの数を引いた数を意味する。彼らはこの問題をコンピュ ータを使って解く方法を示し,実際のニューヨーク市とワシントン市での システムに対する計算結果も出している。

 J.J. Jarvisらは,地域排水管理システムを取挙げ,これを固定費付き ネットワーク・フロー・モデルに定式化している〔27〕。彼らは,このモデ ル上で実際のインプット・データから得られたネットワークを処理しやす いサイズにまで減少できることを示し,実際の排水システム(ケンタッキ ー州ジェファーソン地方)に適用した例を示している。

 先にも述べたが,都市とか地域とかは,それをいくつかの地区に分け,

それらの地区の結びつぎないしは関連の上で議論することがしぼしば可能 であり,また有効である。そのような場合,それは容易にネットワークに モデル化できる。つまり,都市問題とか地域問題の中にはネットワーク・

モデルを使って解決できるものが実に多い。逆にいえば,ネットワーク理 論はOR/MSの中でも特に都市・地域問題向きの理論である。

4. 確率および確率過程の問題

 公共的問題における現象には,決定論的な変数では扱えず,確率変数で 記述しなければならないものが非常に多い。従って,そのような問題に対 しては確率論,および待ち行列理論を含む確率過程論が有力な手段となる。

 M.B. DumasとM. Babinowitzは,血液銀行における血液廃棄を少 くさせるための政策を論じている〔21〕。保存されている血液は,輸血可能 な期間に限界があり,これを過ぎると廃棄しなけれぽならない。ところが,

輸血を必要とする事態はいつ起こるかわからない(確率的現象)。そこで 確率理論が必要になるわけである。

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 、一方,P. D. Cummingらは・合理的な血液採集計画を立てる方法をマ ルコフ過程を使ってモデル化し,検討している〔18〕。

 いつ発生するかわからない事態に備える問題の典型は消防である。J.D.

Finnertyは,消防夫はどれ位睡眠をとるべきかという問題を確率論的に 考えている〔23〕。彼の分析結果によると,火災発生率をえ,ある時間τにお いて,妨げられずにS時間睡眠をとるという事象をS,Sの確率をP(ε)

とおけば,

   P(ε)=θ一λε〔λ(τ一s)+1〕

となる。モソテリーの消防署における実際のデータでは,τ=9であり,

λ=0.0,67と推定されるから,s=5とすれば, P(S)=0.907と計算され

る。

 警察もいつ起こるかわからない事態に備えている。D. G. OlsonとG.

P・Wrightは,マルコフ連鎖を使ってモデル化し,パトロール・カーがい くつかのブロックをパトロール中に,犯行現場にうまくとおりあわせる確 率の期待値を最大にするようなパトロール・スケジュール作成方法を開発

している〔37〕。

 D.BammiとNT. Thomoulosは,バト冒一ルすべき地域の構成が 与えられたとぎ,各地域がそれぞれ独立の場合,隣接地域からの応援があ

る場合,優先度がある場合を考慮しつつ,呼出しにポアソン到着,サービ スに任意分布を仮定して,サービス・コールへの応答時間モデルを作成し

ている〔2〕。

 J.M. ChaikenとP, Dormontは,パトロール・カーをいかに割当そ るべぎかの問題を待ち行列理論を使って議論している〔7〕・〔8〕。

 待ち行列の理論は割当ての問題にはよく応用される。A. O Esogbue とA.J. Singhは,病院で患者の症状により優先度をつけてベッドを割 当てる問題を,重・軽2種の患者がそれぞれボアソソ分布で到着し,指数  62

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分布で入院していると仮定して,保管費と空き損失を考えたとき,N台の ベッドのうち重症患者用に何台を空けておくべきかの問題として,待ち行 列モデルによって定式化している〔22〕。

 待ち行列の理論はOR/MSにおいて特に重要な位置を占め,多くの研 究者によって論じられている。その論文は極めて多岐に渡っていて,統一 が旧れているとは言い難い。統一的な理論が望まれているが,非常に困難 である。全応用分野に見通しの効くような統一理論はここ当分現われて来 そうもない。今後とも,現実の問題が理論を刺激し,それに応じてモデル

・理論が開発されるという状況が続いて行くだろう。

.5. シミュレーションおよびシステム・ダイナミックス   について

 シミュレーションは複雑な問題を扱う場合のOR/MSにおける最も有 力な分析手段であり,公共的問題を解くのにほとんどこれに頼るしか方法 がない場合もある。特に,考慮すべき要因の数が多く,現象としても複雑 で数式モデルのあてはめが困難な場合にそれがいえる。

 R.R. FrerichsとJ. Prawdaは,狂犬病の予防対策をシミュレーショ ン・モデルによって検討しているが〔24〕,この場合考えるべぎ要因として は犬の地区的な分布状態,犬の免疫度(狂犬病にかかりやすい状態にある,

病気が潜伏している,感染している,死んでいるなどの状態),予防対策 の費用,いくつかあるワクチンの効果等があり,単位予防対策費用当りの 予防効果を最大にするような政策を考えるためには,これらの要因が複雑 に絡み合った状況を考えなけれぽならないから,シミュレーションが適し ているわけである。

 T.M. CookとB. S. Alprinは都市環境における雪や氷の除去につい てシミュレーション・モデルで考察しているが〔15〕,これなどもシミュレ

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一ショソ向きの問題である。

 都市における廃棄物処理は今日の重要問題のひとつであることは論を待 たないが,それを解くためには,輸送システム・土地利用計画・都市の膨 張現象,公衆衛生等の複雑な相互関係を考えなけれぽならない。そのため には,数式モデルによることは到底不可能で,OR/MSの立場からこれに アプローチしょうとするならぽ,シミュレーションに頼る以外に方法はな い。R, M. ClarkとJ.1. Gilleanは,オハイオ州クリーブランドにお ける例を示しながら,シミュレーション・モデルを解説している困〕。

 人口問題も廃棄物処理問題に劣らず,複雑な要因の絡み合いを考えなけ ればならないものである。これはまた多くの学問分野からのアプローチを 必要とする大規模な問題でもあるが,OR/MSからのアプローチとして,

人口計画にシミュレーションを応用した例がある〔36〕。

 このように,シミュレーションは複雑・困難な闇題への応用がスムース に可能であるが,そのモデルを作成する事はやはり相当に複雑・困難な仕 事である。そこで,シミュレーション・モデルが容易に作成でき,シミュ レーション結果も分析しやすい形でアウトプットされるようなシミュレー ション専用のコンピュータ・プログラム・パッケージないしはコンピュー タ言語がいくつか開発されている。これらのうちのひとつGPSSを用い て,N. K. Kwakらは外科の患者に対する異ったスケジュリソグ・ポリ シーのもとでの病院の手術室および回復室の利用水準を評価・決定する問

題を研究している〔29〕。

 GPSS以上に公共的問題によく利用される言語がDYNAMOで,これ を使うシステム・ダイナミックスは世界的規模の問題から都市的規模の問 題,地域開発,環境,資源,犯罪,教育,交通,医療等の問題とその応用 分野は非常に,広い。

 日本において極めて今日的な話題である「薬づけ」抑制のための健康保  64

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険法改正の問題を分析した例もある〔47〕。

 システム・ダイナミックスは,複雑なフィードバックを含む因果関係を もつシステムの現象をモデル化でぎ,そのようなシステムに対してある政 策を採ったとき,いかなる効果が期待できるかを比較的簡単に分析できる ので,たとえば都市政策効果の分析モデルをこれを用いて開発した例も報

告されている〔49〕。

 システム・ダイナミックスの応用例としては,J. A. Foresterらによる ワールド・ダイナミックスが特に有名であるが,これのひとつのサブシス テムである汚染サブシステムの最適化について,LMarianiとB. Nico−

lettiは制御理論の立場から極めて理論的に研究している=33⊃。システム・

ダイナミックスへの多くの批判のひとつに,それが帰納的・実験的方法で ある所から来る理論的妥当性の欠除(ないしはその危険)を指摘するもの がある。この研究はそれに対するひとつの方向を示すものであり,今後こ のような研究は実り多いものとしておおいに期待されよう。

 シミュレーションは解決すべき多くの理論的問題を含みながらも,その 方法的強力さのゆえに今後とも多くの公共的問題解決のために活用される だろう。ただし,その方法的簡便さゆえの安易な利用は厳に慎まなけれぽ なるまい。

6. 数量化の困難な問題へのアプローチ

 公共的問題の多くは,その現象を記述するための要因が莫大,複雑なぽ かりではない。数量的変数として把握することが難しいものを含んでいる 場合もある。このような,いわぽ質的側面を含む問題に対して,OR/MS は未だ有力・決定的な方法を開発してはいない。もともと演繹的科学は質 的アプローチよりも量的アプローチをより好む傾向があるからである。し かし,質的側面を含む問題に対してOR/MSの立場から研究した例がない

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わけではない。逆に,量的アプローチが一最階した1970年代のOR/MS はこの面への努力をかなり精力的に行なっていると言ってもよい。

 質へのまず最初の演繹的アプローチは,質としてとらえられた要因を量 としての要因に交換することから行なわれるのが常道である。

 G.W. Torranceは,患者の健康度を示す指標を開発している〔45〕。ま た,R. RosserとV. Wattsも病気の測度を与える研究をしている〔39⊃。

Management Science誌のEcology and the Quality of Life特集号で も,生活の質の測定に関する研究が取り挙げられている〔10〕。

 このような問題を考える場合,データの統計的解析もさることながら,

より演繹的なアプローチを試みようとするならば,効用理論,決定理論の 応用が有効である。

 S・E・Bodilyは,公平さと能率に対する利益集団の選好の統合という質 的側面を考慮した警察部門の設計に対して,多属性効用理論を用いて論じ

ている〔3〕。

 RKeeneyとC・W・Kirkwoodは,集団の個々の成員がリスクに対 して異る選択態度をもつ(すなわち異る効用関数をもつ)事,種々の方策 に対して起こる不確定性がある事忌を考慮しつつ,ある種の社会福祉効用 関数を考えて,集団意思決定のモデルを論じている〔28〕。

 E.S. SavaSは,公共的問題を考える上で極めて大切でしかも困難iな公 共サービスの達成の測度に関する問題を効率,効果,公平の3側面から論 じているこ 2〕。公平について,彼はその重要さの認識が増しているにもか かわらず,MSの研突者になおざりにされて来たものであると言う。

 確かに公平についての研究は現在OR/MSの分野で真正面から取り扱 かわれているとは言えないが,それは研究者が手を操ねいているというよ

りも,それがあまりにも難しい課題であるため研究者が手を出しかねてい るといった方が実情に近い。

66

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 公平と同様に難しい課題「自由」にJ.P. van Gigchは真正面から取 り組み,自由と計画の間にば本来ジレンマがないことを示そうとしてい る〔25〕。彼はここで,民主主義について4つのMode1(Libelal, Conser−

vative, Broker Rule, Socialist−Communist)にタイプ分けし,それぞ れを項目別に比較して表にまとめている。ここでのMode1はいわゆる演 繹的なモデルではないが,極めて有益なものであるといえよう。

 質への対応は演繹的科学であるOR/MSにとって本質的な意味で困難 な事である。しかし,公共的問題にアプローチしょうとするとき,質への 対処が必ずOR/MSに立ちはだって来るであろう。そのようなとぎ,徒

らに数式的モデル作りに走る事のない対応もむしろ科学としてのOR/MS 1に必要であろう。その意味でGigchの方法には興味が持たれる。

おわりに

 一般にOR/MSは,問題の内容ではなく,モデルによって分類され,

理論化される。従って,それを公共的問題に適用・応用しようとする場 合,モデルのタイプによって適用・応用が困難になるという事はない。モ デルと問題との対応がつきさえずればよいのである。実際,モデルはその 特質からして公共的問題への適用が不可能などというものはなく,上に見 て来たようにこれまでに開発されたもののほとんどすべてが公共的問題に 応用されているといってよい。もし応用されていないモデルがあるとすれ ば,よほどの例外的なものを除いて,それはそのモデルに対するOR/MS

.の研究者が公共的問題に興味を持っていないからである。ある別の特定の 分野へのみの適用を考えて開発されたモデルすら,公共的問題へ応用され

るようになる事がある。

 たとえぽ,都市問題を考える場合,それは都市社会問題と都市経営問題 とに分類されるという〔48〕。OR/MSの性格からして,明らかにその適用・

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応用はほとんどの場合後者にのみ可能である。従って,現在のところOR/

MSの公共的問題への適用事例は・その問題が極めて広範であるにもかか わらず,それらの中のごく一部で,ほとんどすべてがMa鯛gementの側 面を含んだ問題に対してである。

 ところで,公共的問題をその具体的内容からではなく,その性質から分 類する事も可能であろう。そのラフの試みのひとつを示せば,別図のよう

になろうか。

 図中,1の領域がモデル化 しやすいという意味で最も簡 単である。従って,このよう な性質をもつ公共的問題に対 しては,OR/MSの適用が最 も容易である。実は,それが 1で述べた例である。皿の領 域は,要因が多く,問題とし ては極めて複雑になるが,数:

理計画法等によりそれほど困

III

要因少

1

非数量的

     w

    数量的

1 11

      要因多

図 1 公共的問題の性質的分類 難ではなくモデル化される。困難さはむしろモデルの解法に伴って現われ るのが普通である。皿およびWの領域の問題は,多くの場合人闇の側面を 含んでいる。勿論,すべての公共的問題は人間の側面を含んでいるのであ

るが,それをモデル化するとき,人間の心理的側面とか惜動的側面とかは 捨象できる事がある。またそれゆえにこそ数量化が可能であるともいえる。

盟とかWの領域の問題は,いかにモデルとして抽象化しようとしても,そ の側面が捨て切れない場合である事が多い。しかし,このような問題こそ 公共的問題としては本質的なものであり,その解決のために科学的手段が 強く望まれてもいる。ある考え方からすれぽ,このような問題は演繹科学  68

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にはなじまない,したがってOR/MSの適切ではないとも確かに言えよ う。また,現在のところこのような問題に対してOR/MSはあまり有力 な武器とはなっていないことも確かである。しかし,先にもみたように,

この方面へのOR/MSからのアプローチはすでに手がつけられている。

今後皿,IVの性質をもつ問題へのチャレンジは増えて行くであろう。

 ところで,要因が多くて複雑な問.題は,それをシステムの問題としてと らえ,分析する事が今日主流である。豆およびWの問題はよリシステム的 な問題であるともいえる。その意味でシステム・ダイナミックスとかシス テム・シミュレーションは皿ないしはWの領域への有力な手段であるとい える。しかし,成功した事例はほとんどHの性質をもつ場合である。もっ

とも,IVの領域へのアタックが全くない訳ではない〔5⑪〕。

 システムという見地からすると,公共的システムはほとんどの場合オー プン・システムである。ここにもアプローチ困難な原因がある。オープン

・システムに関する理論は,von Vertranfy以来一般システム理論の分 野で多くの研究がなされているが〔51〕,OR/MSの立場からもなお一層の理 論的発展が望まれる。

(付記)

 早稲田社会科学研究第18号所収の拙稿「都市変容モデルの開発」は,そ こでも簡単に指摘しておいたが,著者のみの研究成果によるものではなく,

行動システム研究会の共同研究の成果によるものである。ここに,改めて その旨を明記し,以下に共同研究にたずさわったメンバーの氏名をかかげ,

改めて各位にお礼申し上げると共にお詑び申し上げる次第である。

 松田正一氏(早稲田大学),一楽信雄氏(武蔵大学),土方正夫氏(現筑 波大学),佐藤滋氏(早稲田大学),高木亮一氏(現パイオニア株式会社),

堀良氏(早稲田大学)

(18)

・elmtsatvt6gstwt

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