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皿.言 語教育 と絵本 ・児童 文学

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中学校の英語教育 におけ る 絵本 ・fII瞳 文学 の活用

白 須 康 子

1.は じ め に

近年 、小学生 や幼 児 の英語 教育が盛 ん になってい る中で、 中学校 で は平 成14年 度か ら新 しい学 習指導 要領が施行 され てい る。外 国語学 習の 目標 と

して掲 げ られ ているの は、「外 国語 を通 じて、言語 や文化 に対 す る理解 を深 め、積極 的 に コ ミュニケー シ ョンを図ろ う とす る態 度の育 成 を図 り、 聞 く こ とや話す こ とな どの実践的 コミュニケー シ ョン能力 の基礎 を養 う」(学 習 指導 要領P.88)こ とであ る。 リスニ ング とス ピーキ ングに重点 を置 いた 目 標 となってい るが 、本稿 では敢 えて リーデ ィ ングに焦点 を絞 っ て、 中学校

レベ ルの英語 学習者 の ために英語 で書 かれた絵本 や児 童文学 を活 用す る こ との意義 について探 ってみたい。

言語習得 のため に必要 な4つ の技 能 はお互 いに密接 に関連 しているので、

話す こ と ・書 くこと とい った生産 的 な言語活 動 の能力 を向上 させ るため に は、 聞 くこ と ・読む こ とに よる大量 の イ ンプ ッ トが どうして も必要で ある。

リーデ ィング教材 の素材 とな る もの は会話 ・手紙 ・説 明文 な どがあ り、 も ちろん学 習者 はい ろいろ なス タイルの違 った読 み物 に接 す る こ とが必要 で あ るが、 本稿 で用 い る絵本 ・児童 文学 とい う用語 は童 謡や読 書 の楽 しみ を 味わ うための物 語 に限定 し、単 に知 識 を得 るため の本 は除外 す る。英語 で

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書 か れた絵 本 や児 童文学 を通 して リー デ ィ ングの能力 を養 うこ とは、言語 面 で コ ミュニケー シ ョン能力 の養成 につ なが る ことは言 うまで もな く、そ の他 に も異 文化理解 や、更 に は人 間の教 育 とい った側面 におい て も波及 効 果が期待 で きる と考 え られ る。 中学生 は年齢 的 に13歳 か ら15歳 とい う思春 期 にあ る こ とや、 彼 らが英 語 の初級 学習 者 で あ るこ と等 を考慮 しなが ら、

なぜ絵 本 ・児童 文学 を リーデ ィング用補 助教材 として利用 す るこ とが意義 のあ る ことなのか、 そ して具 体的 に どの ような本 を利用 すれ ば効 果的 であ

るかにつ いて考察す る。

皿.学 習指導 要領 と教科 書

(1)学 習指導 要領 の内容

新 しい中学校学 習指導要領 に規定 され てい る外 国語(英 語)の 各項 目の うち、 リ.一デ ィングに関す る もの を中心 に要 点 をま とめ てみ る と次の よう になる。

まず 、 目標 は 「英 語 を読 む こ とに慣 れ親 しみ、初歩 的 な英語 を読 んで書 き手の意 向な どを理解 で きる ようにす る」(p.88)こ ととなってい る。初歩 的 な英語 とは語彙 の面で別 表 に示 され てい る冠詞 ・前 置詞 ・助動 詞 な ど基 本100語 を含め て900語 程度 までの語 と、基本 的 な連語及 び慣用表現 を使 っ て書か れ、文法 的 には文法事 項 の項 目に具体 的 に提 示 されてい る文型 その 他 の基礎 的 な文法事 項 を含 ん だ文 で構 成 され ている もの を指 す。教科書 の 出版社 に よって基本 語以外 の どの単語 を中学 生が学 ぶべ き もの として選択 す るか にば らつ きが あ るため、 『ジーニ アス英和辞 典 第3版 』で は約1100 語 が中学学習語 として掲 載 され てい る。

次 に 「読 む」 とい う言 語活 動 に は 「黙 読」 と 「音読 」 の両 方が含 まれ 、 教材 が物語 や説 明文 であ る場 合 は、大 意や要 点 を読 み取 る こ とが で きる よ

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中学校の英語教育における絵本 ・児童文学の活用85

うに指導す るこ とになってい る。指導計画 の作成 に当た って は、辞 書 の初 歩 的な使 い方 や活用 の しかた を指導す る ことが盛 り込 まれてい る。そ して、

教材 を選ぶ際 には 「英語 を使用 している人 々を中心 とす る世界 の人 々及 び 日本 人の 日常生活 、風 俗習慣 、物語 、地理、歴 史 な どに関す る もの の うち か ら、生徒 の心 身の発 達段 階及 び興 味 ・関心 に即 して適切 な題材 を変化 を もたせ て取 り上 げる」(p.95)よ うに し、そ れ らが次 の3点 におい て、学習 者 に とって有益 であ るよう配慮す る となってい る。

1.多 様 な ものの見方や考 え方 を理解 し、公正 な判断力 を養 い豊か な心 情 を育 てる。

2.世 界や わが 国の生活 や文化 についての理解 を深め る とと もに、言語 や 文化 に対す る関心 を高 め、 これ らを尊重す る態 度 を育 てる。

3.広 い視野 か ら国際理解 を深め、 国際社会 に生 きる 日本 人 と しての 自覚 を高め ると ともに、 国際協調 の精神 を養 う。

以上3点 と上述 の教材 の5つ のジ ャンル を合 わせ て考 える時、 これ ら3 つ の観 点 を同時 に達成 で きる もの と して 「物語」 の果たす役割 は特 に大 き

い と思 われる。 なぜ な らば、物語 を読 む とい う行為 には読者 が直接 その物 語 にかか わってい くとい う姿勢が伴 い、それが 海外 の物語 であ れば、その 国の文 化や社会 な どに関す る情報が ス トー リーの展 開の 中 に 自然 に織 り込 まれてい る上 、優 れ た作 品 は国や人種 を超 えた人間 に とって普遍 的なテー マ を扱 っているか らで ある。

(2)教 科書の リーデ ィング教材

中学生 は どの よ うな形 で初歩 的 な英語 で書かれ た読 み物 に接 しているの だろ うか。平成14年 に検定 済み教科書 と して7つ の出版社 か ら発行 され た 英語 の テキス ト21冊(各 出版社 か ら学年別 に3冊 ずつ)に 関 して、説明文

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や 物 語 な どの形 式 で 、 あ る程 度 ま と ま っ た量 の英 文 を読 ませ る よ うに工 夫 して あ る課 を 中心 に調 べ て み た と ころ 、 以 下 の よ う な傾 向 が あ る こ とが わ か った 。

まず 、7社 中6社 が 通 常 の レ ッス ンの他 に特 別 な リー デ ィ ング用 の課 を 設 け て お り、 当然 の こ とな が ら学 年 が 上 が る に つ れ て 語 数 が増 加 して長 く な る。1年 生 用 は約100語 か ら200語 、2年 生 は150語 か ら400語 、3年 に な る と300語 か ら600語 程 度 の長 さで あ る。

次 に、 教 材 の 内容 が 世 界 の どの地 域 を扱 っ て い るか に注 目す る と、学 習 指 導 要 領 に提 示 され て い る よ うに 、 ア メ リ カ、 イ ギ リス 、 オ ー ス トラ リア な ど英 語 圏 が舞 台 に な って い る もの が 最 も多 く、 次 い で ア ジ ア 、 ヨー ロ ッ パ 等 を含 め た 世 界 各 地 の 人 々 に ス ポ ッ トラ イ トを当 て た もの、 日本 や 日本

人 の 話 題 を取 り上 げ た もの と続 き、 各 教 科 書 と も これ らが バ ラ ンス よ く盛 り込 まれ て い る。

更 に6社 の 教 科 書 に設 定 され て い る リー デ ィ ング用 の 各 レ ッス ンを 、 あ る物 事 につ い て論 理 的 に具 体 例 を挙 げ た りしな が ら説 明 して い くタイ プ の もの か 、 そ れ と もス トー リー性 を持 っ た 文 学 の ジ ャ ンル に属 す る もの か に よっ て分 類 す る と、 ほ ぼ1対1の 割 合 で バ ラ ンス の とれ た 配 分 に な っ て い る。 説 明 文 型 の レ ッス ンの トピ ッ ク を見 て み る と、 大 まか に地 球 環 境 の 問 題 を扱 っ てい る もの 、 戦 争 と平 和 、 動 物 愛 護 、 世 界 各 地 の 民 族 や 文 化 につ い て 、 そ の他 に分 類 で き る。 一 方 、 物 語 型 の 方 は 日本 を含 め た世 界 各 地 の 民 話 や 昔 話 を教 科 書 用 に や さ し く再 話 した もの が 最 も多 く、FlyAway Homeな ど最 近 の 映 画 の ス ク リ プ トをベ ー ス に した もの 、 『葉 っ ぱ の フ レ デ ィー:い の ち の た び』 と して 日本 語 に翻 訳 され て話 題 に な ったTheFall ofFreddietheLeafを も とに簡 単 な英 語 で 書 き直 した もの の他 、 劇 や伝 記 とい った ジ ャ ンル の もの も含 まれ てい る。

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中学校の英語教育における絵本 ・瞳 文学の活用87

以上概観 した ように、英語 の教科 書 は多 くの中学生 に とって初 め て接 す る英語 の本 であ り、学 習指導要 領 に示 されて い る初歩 的 な語 彙や文法事 項 を段 階的 に習得 し、 異文化理解 や言語 に対 す る関心 を深 め なが ら、実 践 的 な コ ミュニ ケー シ ョン能力 を伸 ばす ことが で きる よ うに編成 されてい る。

しか し、学校 で使用 す る教科 書 に収 め られ てい る リーデ ィング用教材 の場 合 は、語彙や文法 に多 くの制 限が あ る。 そのため原作 を削 ってか な り短 く す るか、 あ るい は ご く一部 のみ を抜 粋 して使 うだけで な く、単語 や文法 を 単 純 な ものに置 き換 えた りす る結 果、大筋 は生 か されてい て も原作 とは大 分 か け離 れた ものに なってい るのが普通 であ る。 そ こで、補助 教材 として 使 用す る リー デ ィング教材 は教科 書 ほ ど制 限 に こだ わ らず 、 しか し明確 な 基 準 に従 って注 意深 く選択 され た素材 をで きるだ け原書 で提 示 し、初級 学 習者 に も生 の英 語 に触 れ させ るこ とが必要 で はないだろ うか。

皿.言 語教育 と絵本 ・児童 文学

外 国語 学 習 に 目標 言 語 で書 か れ た 文 学 作 品 を導 入 す る試 み の歴 史 は 長 い が 、 以 前 は文 学 と言 え ば大 人 の文 学 を指 す こ とが 多 か っ た。 と ころが 、 最 近 で は学 習 者 の 年 齢 に関 係 な く、 子 どもの た め に書 か れ た文 学 作 品 を リー デ ィ ン グ教 材 と して積 極 的 に採 り入 れ る動 きが あ り(Hill,1986;Bassnet

とGrundy,1993)、 特 に ア メ リカ 、 カ ナ ダ、 オ ー ス トラ リア で は 第2言 と して の英 語(ESL)の 授 業 で児 童 文 学 が 使 用 され る こ とが 定 着 して きて い る。 そ こで 、 なぜ 絵 本 や 児 童 文 学 が 言 語 学習 に有 益 な の か そ の 理 由 を先 行 文 献 に探 っ て み る。

児 童文学 を語 学教育 に導入 した場合 、個 人 的なかかわ りあい を刺激す る とい う文学 としての役 割 に何 よ りも重点 を置 きなが ら、 その他 の メリ ッ ト、

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特 に学 習者 の言語 及 び文化 に関す る知識へ の永続的 で有益 な影響 を主張す るのはCollieとSlater(1987)で あ る。

一方、Ghosn(2002)は 初 歩 か ら一歩 ずつ積 み上 げて い くボ トム ・ア ッ プ方 式の英語教 育 に対 し、児童 文学 をそれ に替 わ る もの と して提 唱 してい る。彼 女 は小学校 の英語教 育 に本物 の文学 を用 い るこ とが なぜ 良 いかの理 由 を4つ 挙げ てい るが、 その うち(1)動 機1寸け、(2)言 語学習、(3)変 化 の媒体 としての文学、 につ いてそ の内容 をもう少 し詳 し く紹介す る。

まず 「動機1寸け」 とは、子 どもが物 語 に 自然 に引 き付 け られ る とい う習 性 を利用 して、語 学学習 の授 業 に本物 の文 学 を使 うことに よって、子 ど も た ちにや る気 を起 こさせ る とい う意 味で意 義の ある状況 を作 り出す こ とが で きる、 とい うものであ る。確 かに小 学校 の子 どもた ちは まだお話 の読 み 聞かせ を楽 しむ年代 であ るか ら、 この理 由は小 学生 に は当 ては まるが、本 稿 で扱 ってい る中学 生 には必 ず しも当 ては ま らない。 この年齢層 の学習者 には何 が動機付 け になるのだ ろ うか。

十代 の英語 学習者 に児 童文学 を利用す るこ との必要性 を述べ ているのは、

フ ィンラ ン ドのR6nngvistとSell(1994)で あ る。 フ ィ ンラ ン ドで は十代 の学 生用 の教科 書 と言 えば正統 派古典 の簡約版 が定 番 であ るが、 テ ィー ン エ イ ジ ャーの若 者 たちに は彼 らの世代 に合 った ジャ ンルやテーマ、 プロ ッ トを持 つ十代 の若者 向け に書 かれ た本 を利 用すべ きで、実 際彼 らはその よ うな本 を好 む し、理解 したが る と報 告 してい る。更 に、異文 化理 解の観 点 か らも伝 統的 な教 科書 よ りも十代 向 けの児 童文学 の方 が、 目標文 化 をよ り 幅広 く、深 く理解 す るこ とを促 す ことに も言及 してい る。

Ghosnの 挙 げた2つ 目の理 由 「言語学習 」 に戻 ろ う。文学 が どの ような 点で言語学 習 に貢 献す るか につ いて、彼女 は文学 は 自然 な言語、最 も洗練 され た言語 を提示 す るので、文脈 の中で語彙 を発 達 させ るこ とを助 け る こ と、上述 のCollieとSlater(1987)も 指摘 してい るよ うに文学 は言葉 をロ

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中学校の英語教育における絵本 ・r瞳文学の活用89

にす る こ とを刺 激 し、子 どもをテ クス トに関 わ らせ るので、言語教 育 にお ける トップ ・ダウ ン方式 の ための優 れた媒体 にな りうるこ との2点 に触 れ てい る。 日本 の場 合 は学校 の英語教 育の現場 で は検定 済み の教科書 を使 用 す る こ とが義務付 け られてい るため、Ghosnの 提案 す る トップ ・ダウ ン方 式 を全 面 的に採用 す るこ とは無理 に して も、補助教材 として児 童文学 を利 用す る ことの言語学習上 のメ リッ トは大 きいであろ う。

そ して、3番 目の理 由 「変化 の媒 体 としての文学」 とは、優 れ た文学 は 子 ど もの情緒 の発 達 を促 し、 人 と人 との 関係 や異文化 に接 す る ときの建 設 的 な態 度 を育成 す る とい う機 能 を果 たす こ とで あ る。 この点 に関 しては学 習者 の年齢 は関係 ない。児童 であろ うと、青 年 であろ う と、成 人であ ろ う

と、文学 はその読者の 内面 に何 か質 的な変化 を起 こさせ る ものであ る。

さて、 もうひ とつ今 まで見 て きた よ りも少 し年齢層 の高 い成 人の英語教 育 に絵本 と児童 文学 を導入 した実践報告 がHo(2000)に よってな され てい る。対象 となった学生 は中華人民共和 国出身の平均 年齢19歳 のEFL(外 国 語 と しての英語)の 留学生 で ある。 この研 究 に よる と彼 らはす で に成人 で 子 ど もを対象 とした本 を読 む年齢層 で はないが、絵本 や高学年 の子 ども向 けの短 編 の物語 を リー デ ィング教材 として導 入 した ところ、 まず絵 本 は中 国人の英語学習 者 に とって発音す るのが難 しい英語 の音 の発音 訓練 に特 に 効果 的で、学生 た ち も通常 の発音練 習用 の ドリル教材 よ りも楽 しく学 ぶ こ とが で きたそ うであ る。 また児童文学 はプ ロ ッ ト、 テーマ、性格描写 の面 で学 生 に とって興 味深 く、言葉 も筋 も簡単 なため読解が容 易 で、彼 らが英 語 を使 う自信 をつけ る こ とが で きた と報 告 され てい る。 そ して、 この グル ー プの学生 が 最 も興 味 を示 した の は、彼 らが 主 人公 と一体 化 で きるヤ ン グ ・ア ダル トが主 人公 にな ってい る小 説で あ る。 この実践報 告例 か ら、絵 本 や児 童文学 はそれ らが ターゲ ッ トと してい る実際の読者層 よ りも年齢 的

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に高い成 人の学習者 に とって も有益 で、興 味 を起 こさせ る教材 にな りうる ことが わか る。

これ らの先行研 究 と、す で に見 た学習 指導要 領の 内容 及 び教科書 の現状 を考 え合 わせ る と、英語 圏の絵 本 ・児童 文学 を 日本 の中学校 にお ける英語 教育 に活用す るこ とは、(1)言 語習得 、(2)異 文化 理解 、(3)文 学 的価値 の3つ の観点 か ら有用性が あ る と考 え られ る。そ こで、 これ ら3点 につ い て以下 に詳 し く述べ る。

】.V.日本 の英 語 教 育 に なぜ 絵 本 ・児童 文 学 が 有 益 か

(1)言 語習得上の利点

中学生が 英語 を習得す る過程 で、原書 の ま ま一切手 を加 え られ てい ない 絵 本や児童 文学 を読 む こ とは、具体 的 に どの ような言語 習得 上の租 点があ

るだろ うか。

第一 に考 え られ るの は、教科書用 に語彙 や文法、 長 さ を制 限 されたやや 人工 的で断片的 な英語 の読み物 で はな く、 文学 的に質 の高 い 自然 な英語 で 書 かれ た、 ひ とま とま りの完 成 され た物語 を体験 す る機会 を得 る こ とがで

きるこ とであ る。すで に述べ た ように、Buscaglia(1982)のTheFallof

FreddietheLeafは2つ の出版社 か ら出 てい る1年 生 と3年 生用 の教科書 に リーデ ィング教材 として入 ってい る。 この 自然 と生 命 のサ イクル をテー マ とした絵本 の原作 は本文 が1300語 ほ どの話で あるが、A社 の場合 はその 3分 の1の 約420語 に、B社 は8分 の1の わずか170語 に削 られて しまって い る。 中学生 の教科 書 に載 っ てい る読 み物 は長 くて も600語 程 度で あ るか ら、 この物 語 の原作 はそ の2倍 以上 の長 さだが 、教科 書用 に これ ほ ど短 く 要約 して書 き直す必要 があ るのだろ うか。

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そ こで、語 彙 に関 して この物語 を分析 した結 果、全部 で400語 以 下の ボ キ ャブ ラ リーが あ れ ば読 め る本 で 、 この 中 に は中学校 で学習 す る語 が約 300語 含 まれてい る こ とが わか った。 とい うことは、中学学習語900語 の う

ち3分 の1を 知 ってい れば、辞書 に頼 らな くて もこの物語 の大部分 は理解 で きるはずで あ る。文法 的 に も、 中学校 で学 習す る時制 の うち過去形 、現 在 完 了形 、現在進行 形 、助動 詞や疑 問詞で始 まる疑 問文、 受 け身、関係 代 名詞、比 較 な どが含 まれてい るほか、基 本 的な文型 を使 って、全体 的 に簡 潔 な文 で所 々に繰 り返 しの表現 を用 い て書か れてお り、必 要 な注 を与 え ら れれ ば中学生 に も原作 の まま読 め る本である。

そ して何 よ りも、春 か ら夏へ 、秋冬へ とい う美 し くも厳 しい季節 の移 り 変 わ りの中で繰 り広 げ られ る この死 と再 生 の ドラマ は、葉 っぱの フ レデ ィ ー と老賢 人的 な存在 で あ る長老格 の ダニエ ルの交 わす哲学 的 な会話 を通 し て イメー ジ豊か に語 られてい る。生命 をテーマ に した、 この ような物語 を 原書 で読 んで感動体 験 を得 る ことは、 中学生 に とって英語 を通 して何 か を 学 ぶ とい う意味で も重要であ る と思 われ る。

次 に絵 本 とい うメデ ィアに注 目 して、そ の言語習得上 の利点 を考 えてみ よ う。絵 本 は まだ 自分 で文字 を読 む こ とので きない幼 い子 どものため に大 人が読 み聞 かせ をす る こ とを念頭 にお いて書 かれ た作 品が多 く、 耳で聞 い て理解 しやす く、 しか も快 い響 き とリズム を持 ってい る。そ れゆ え、絵 本 は学習者 が楽 しみ なが ら英語特有 の発音 や リズ ム を身 につ けるの に適 した 教材 であ ることは、Ho(2000).の 報告 か らも明 らかであ る。 しか も、童謡 や昔話 を素材 と した もの は繰 り返 しの表現 が多 く、語彙 や表現 を定着 させ

るの に も効 果的 である。

そ れか らもう一つ絵 本 に関 して重 要 な点 は、挿絵 や写真 が話 の内容理 解 を助 けて くれ る ことであ る。 ただ し、 この点 につい て松 岡(1985)が 「昔

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話絵 本が昔話 か ら奪 うもの」 の ひ とつ として指摘 してい る ように、 こ とば で語 られた物語 か らは受 け手が想豫 力 を働 かせ て、そ れぞれ独 自のイ メー ジを思 い描 くこ とがで きるが 、それが絵本 にな ると画家 の イメー ジを受 け 取 る こ とになって しま うとい う問題点が あ る こ とを心 に留 め てお き、絵本

を教材 と して選択す る際 に は、文 と絵 のバ ラ ンス、挿絵 か ら読者が受 け る イメー ジに も十分 に考慮す る必要が ある。

一方、英語 で書 か れた児 童文 学 を英 語 の授 業 に導 入す る こ との利 点 は、

動機 付けであ る。13〜15歳 とい う年齢 の 中学生 に とって、海外 の十歳前後 か らテ ィー ンエ イ ジャー の子 どもを主 人公 とした児童 文学 は、 ま さに彼 ら

と同世代 の子 どものため に書 かれ た ものであ る。 中学 生が英語 の児童文学 を読 む こ とは、英語 の絵 本 を読む よ りも語彙 や長 さの点 では るか に努力 を 要す るが、十代 の 自分 たちに興味や関心 のあ るテーマ を扱 ってい るこ とで、

読 んでみたい とい う気持 ち を起 こさせ る ことが で きる。

学習指導 要領 で も 「読 む」 とい う言語活 動 の指導事 項 のひ とつ に、物語 な どの あ らす じや要 点 を読 み取 るこ とが挙 げ られてい る ように、 あ ま り細 部 に こだわ らず に大意 を把 握 しなが ら読 み進め てい く能力 を中学生 は身 に つ けな くて はな らない。 そ のため には、 リー デ ィング教 材が彼 らの学習意 欲 をそそ る ような内容 で、 い さ読 み始 め る とス トー リー の展 開の面 白 さに 引 きず られ て 自発 的に読 み進 め るこ とが で きる ような もの であれ ば、学習 効果 も高 くなる と思 われ る。 その よ うな読 み方が で きる ようになれ ば、文 脈 か ら未知 の単語 の意味 を推測 した りす るこ とな ども可能 になる。

もち ろん英語 圏 の子 どもに人気 のあ る児童 文学作 品が 、 どれで も外 国語 として英語 を学 習 してい る 日本 の中学生 に適切 であ る とは言 えない。言語 の観 点か ら教材 を選択す る ときに考慮 すべ き点 は、俗語 や非常 に くだ けた 口語 表現 が あ ま り使 われ てお らず、文 法 的に も簡潔 でス タンダー ドな英語

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中学校の英語教育における絵本 ・児童文学の活用93

で書 か れてい るか ど うか 、 中学 学習 語以外 の語 彙が 多す ぎない か ど うか、

ス トー リーの長 さが 長す ぎないか どうか な どであ る。以上 を考 え合 わせ る と、 と りあ えず量 的 に無理 の ない短 編か ら入 っ てい くのが 良い であ ろ う。

短編 で も一 つの ま とま りの あ るス トー リー を完読 す るこ とに よって達 成感 を味 わ うことが で きるか らであ る。

(2)異 文化理 解教育の一環 として

学 習指導要領 に教材 を選択す る時 に考慮 すべ き観点 として、 異文化理解 (日本 の文化 も含 めて)と 国際理解 が挙げ られ ているこ とはす でに確 認 した が、 この2つ の違 い につい て小池(1994:28)は 「異 文化理 解は ひとつ の 文化 と他 の文化 を対等 の立場 で比較 し、相互 の理解 を進 め よう とす る態 度 で あるの に対 して、 国際理解 はそ の こ とを含 み なが らも、広範 囲 な地域 を 包 み込 んだ理解 をす る とい う意味 を持 ってい る」 と説明 しなが らも、実際

には同 じもの に対 す る視点 の相 違 と解釈 し、外 国語教育 を異文化理解 教育 に含 まれ るさまざまな分野 の ひ とつ として位 置づ けてい る。

外 国語 教育 にお い て 目標 言 語 が 話 され て い る 国 の 文 化 を教 え る こ との 重 要 性 が ク ロ ー ズ ア ップ され る よ う に な っ た の は1960年 頃 か ら で あ る 。 Brooks(1964)は 外 国語 の授 業 で文 化 に 関す る話 題 を提 示 す る時 の視 点 は、

若 い 学 生 とい う立 場 の 人 の視 点 で あ るべ きで 、 観 点 は彼 らが 日々 の課 業 を こ な して い く時 の 観 点 で な け れ ば な らな い と述 べ 、 言語 の ク ラ ス で話 題 と し て 取 り上 げ ら れ る 項 目 の 詳 し い リ ス ト を 作 成 し た 。 更 にBrooks (1968:210)は 文 化 を 「人 々 の行 為 の う ち最 上 の もの と して 際 立 つ もの 、 人 々 が行 い、 考 え、 信 じる こ との す べ て」 と定 義 した上 で 、 文 化 を 「生 物 学 的 成 長 」 「個 人 的洗 練 」 「文 学 と芸 術 」 「生 活 の パ ター ン」 「生 活 様式 の総 計」 の5つ の カ テ ゴ リー に分類 した。

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一 方、外 国語 教 育 を通 じて 伸 ばす こ との で き る文化 に 関 す る ス キ ル を提 示 し た の はNostrandとNostrand(1970)で 、 そ れ を 基 にSeelye

(1974:7)は 文 化 につ い て教 え る際 の7つ の ゴー ル を設 定 した 。例 え ば 以 下 の よ うな ゴー ル で あ る。

ゴー ル2:言 語 と社 会 的 変 数 の相 互 関係:学 生 は年 齢 、 性 別 、社 会 階級 お よび居 住地 の よ うな社 会 的変 数 が 人 々 の話 し方 や行 動 の し か た に影 響 を及 ぼ す こ とを理 解 す る。

ゴー ル4:語 や 句 の文 化 的含 蓄:学 生 は 目標 言語 の最 もあ りふ れ た語 や 句 に さえ、 文 化 的 に 条件 付 け され た イ メー ジが 結 びつ い て い る こ と を認 識 す る。

ゴー ル7:他 の社 会 に対 す る態 度:学 生 は 目標 文 化 に対 す る知 的 好 奇 心 と、 そ の 人 々 に対 す る共 感 を示 す 。

そ の 後 、Byram(1989)は 言 語 と文 化 を教 え るた め の 理 論 的 モ デ ル を、

円 を4等 分 した 図 を使 っ て示 して い る。4つ の構 成 要 素 は(1)言 語 活 動 、 (2)言 語 認 識 、(3)文 化 認 識 、(4)文 化 経 験 で あ る。(1)は 言 語 を習得 す る とい うス キ ル志 向 で あ る の に対 し、 そ の他 はす べ て 知 識 志 向 で あ る。 ま た 、(1)と(4)は 外 国語 を媒 体 と して 行 わ れ るが 、(2)と(3)は 母 国語 が 使 用 され る。 そ して、 そ れ ぞ れ 焦 点 とな るの は(1)で は外 国語 、(2)と

(3)は 比較 、(4)は 外 国 の 文化 で あ る。

さて こ こで 、 文 化 は 「文 学 」 を通 して 教 え る こ とが で き るか とい う問 題 であ るが 、1960年 代 か ら1970年 代 にか け て は言 語 学 的立 場 か ら否 定 的 な見 方 が 大 勢 を 占め て い た。そ れで も、Marquardt(1967)やMcKay(1982)

は早 くか ら積 極 的 に文 学 の有 用 性 を主 張 し、現 在 で は特 にESL用 の リー デ ィ ング教材 と して文 学 を使 用 す る こ とは一般 化 して い る。

Valdes(1986)は 中 級 の 上 か ら上 級 のESLの 学 生 に ア メ リ カ の 小 説 、

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中学校の英語教育における絵本 ・児童文学の活用95

ドラマ、 詩 、 エ ッセ イ を使 っ て ア メ リカ文 化 を教 え る際 の ポ イ ン トと して 、 ア メ リ カ 人特 有 の価 値 観 例 え ば 自立 、競 争 と フ ェ ア ・プ レイの 精 神 、 更 にユ ー モ アの 話 題 な どを取 り上 げ る こ とを提 案 して い る。 ま た、 どの よ う な順 序 で作 品 を読 ん で い くか につ い て は、 年 代 順 、 テ ー マ別 が 良 い と して お り、 ジ ャ ンル別 とい う配 列 はい ろ い ろ な ジ ャ ンル の作 品 を取 り混 ぜ る こ と に よっ て生 じる多 様 性 を犠 牲 に して しま う とい う理 由 で あ ま り薦 め て い な い。

この ように言語 教育 には文化 の側 面が不可 欠 である こ と、文 化 を教 える 素 材 として文学 が定着 してい る こ とを確認 した ところで、 今度 は外 国語 と して英語 を学ぶ 日本 の 中学生 に とって英語 圏の絵 本や児童 文学 は、 どの よ うな異文化理解 の機会 を提供す るか考 えてみ よう。

まず、昔話 や伝 承童 謡 な ど世代 を超 えて語 り継が れて きた物 語や歌 はい わゆ る基層(下 層)文 化 に属 し、 それ は上層文 化、 中間層文化 と異 な り時 代 の変化 に左右 され る ことな く、 あ る文化 圏で育 った人々が 自然 に身につ け無 自覚 の まま共有 してい る文化で ある(絵 本 ・児童文学研 究 セ ンター編 2002)。 そ れは正 に文化 の ルー ツ と も言 え る もので、そ の文化 圏 の人 々の 世界観 や言語生 活 と深 いつ なが りがあ る。 その意味 で昔話 な どの基層 文化 を学 ぶ こ とは、 その文化 の 中で生活 す る人 々の心の根 っ この部分 に直接 触 れ る こ とに なる。伝 承童 謡 は文章 の中 で引用 され た り、歌 の歌詞 に登場 し た り、 あ るいはパ ロデ ィーの材 料 と して頻繁 に使 われ て きた し、現代 で も そ うであ る。 また、 昔話 の中 には よ く似 た類 型 の話が異 な る文化 圏に また が って伝 播 してい る ものが あ り、そ の こ とに気付 くこ とに よって人間が 人 種や民族 の違 い にか かわ らず共通 して持 っ てい る普遍 的 な人間性 につ いて 考 え るこ と もで きる。 自分 の文化 と他 の文化 を比較 して、 自他 の違い を認 識す るこ とも重要であ るが、共 通項 を見出す こ とも同様 に重要 である。

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子 ど ものための文学 は19世 紀 中葉か ら20世 紀初頭 にか けてイギ リス を中 心 に第一 の黄 金時代 を迎 えた。 その後2つ の世界大戦 を経 て疲弊 した ヨー ロ ッパ か らア メ リカへ絵 本 ・児 童文学の中心 が移 り、そ こか ら更 にカナダ、

オース トラリア、 ニ ュー ジー ラ ン ドへ と波及 して今 日に至 ってい る。現 在 で は主要 な英 語 圏の国 々において児童書 の 出版が盛 んで内容 も充 実 して き てい る。 一 口に西洋 と言 って も例 えば アメ リカとイギ リスでは文化 的な共 通 点が あ るに もかか わ らず、多 くの点 で これ ら2つ の国 は異 なっているの で、 ア メリカはア メ リカの文学 を通 して、 イギ リス はイギ リスの文学 を通 してそれぞれ の国の文化 につ いて学 ぶのが理想 的であ る。 その意味 で英語 圏 の児童 文学 は 日本 の子 ど もたちに、 それ ぞれの国の作家 によって書 かれ た作 品 を直接 、生の素材 として異文化 を学ぶ機会 を与 えて くれ るのであ る。

また、物語 の ジ ャンル もフ ァ ンタジーか らリア リズム まで豊富 で、 冒険 物語 、学校 物語、 自己発見 物語 な どい ろい ろある。1970年 代 以降思春期 の 子 どもや十代 後半 のヤ ング ・ア ダル トを対 象 と した作 品 も数多 く書 かれ る よ うに なった。 この ような状 況 なので、異 文化理解 に役 立つ と思 われ る素 材 の選択 の幅 は広 く、子 ど もた ちは物語 を楽 しみ なが ら、 同時 に異 な る文 化 につ いて の知識 を身につ け、感動体験 を通 して異 文化へ の理解 を深 め る

ことが で きる。

(3)文 学 としての価値

さて、 ここまで英語教 育 にお ける言語習得 と異文化理解 の観点 か ら英語 圏の絵 本 ・児童文学 の有用性 につい て見 て きたが、次 に もう少 し一般 的な 教育 の視点か らそれ らの文 学 としての価値 につ いて考 えてみ たい。

ヨー ロ ッパの子 ど もの本の文化 は、17世 紀 中 頃の コメニ ウスに始 ま る近 代 教育 理論 と密接 に結 びつ きなが ら発展 して きた とい う歴 史があ る。 近代

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中学校の英語教育における絵本 ・児童文学の活用97

教育理 論 の根幹 を成す考 え方 は、子 ども(幼 児)の 視覚 や聴覚等 の外部 感 覚 を研 ぎ澄 ます教 育 を行 うこ とに よって、子 どもの対象物 に対す る観察力 が高 ま り感動体験 を持 つ、 その結果 、子 どもの内部感覚 が活性化 され る と い う ものであ る(絵 本 ・児 童文 学研 究 セ ンター編、2002)。 子 どもの ため の絵 本 はその よ うな子 どもの鋭 い観 察力 に耐 え られ る、高 度で芸術 的 な も の を作 ろ う とい う目的意識 を持 っ て作成 され て きた。 この伝 統 は児童 文学 に も引 き継が れ、 フラ ンスの比較 文学者Hazard(1947:42)は 子 どもに とって良 い本 とは どの ような本 か とい うリス トの中で、 第一 に挙 げてい る の が 「ま さに芸 術 の本 質 に忠 実 な本」 であ る。Smith(1953)やEgoff

(1980)は 子 ど もの本 につ いて評価 す る時 に、大 人の文 学 と同 じもの さ し で測 るこ とを強 く訴 えている。Townsend(1996:vi)も 「ち ょうど子

ど もが 人類 の一部 であ るよ うに、子 どもの本 も文学 の一部 であ る。子 ども に とって良い本 はそれ 自体 で よい本 でなければな らない。」 と述べ ている。

この よ うな伝統 を持 つ絵本 や児童 文学 に は、 ただ単 に英語教材 として言 語習得 や異文化理解 を助 け るだ けで はな く、 文学 と しての価値 が ある こ と

も忘 れ てはな らない。Chambers(1983:27)は 人間 に とって文学が必要 な理 由 を、文学 は人の態 度 と認識の両 方 に働 きか け、 その どち らもが行 動 へ とつ なが る、つ ま り 「文学 は参加 す る方法 を提 供 して くれ る」 のだ と述 べ てい る。英語 とい う科 目も中学生 が受 ける幅広 い教 育 の̲̲̲.部であ り、教 育 の本質 は人碍 として 自立 し成長す る ことを助 け る ものであ るな らば、英 語 の教材 として読 む素材 も彼 らの態 度 の形 成や物事 の認 識 に何 らか の影響 を与 え、そ れに基 づい た行動 を促す よ うな もの である こ とが望 ま しい。 そ れゆ え彼 らが英語 を習得す る過 程で、 自分 と同 じ年代 の子 どもた ちを主 人 公 にす えて、 国や人種 の枠 を超 えた人 間に とって普遍的 なテー マ を扱 って い る海外 の児 童文 学 を読む こ とは、彼 らの想像力 を伸 ば し、視 野 を広 げ、

そ して共感す る心 を育 て、 やが て彼 らが 国際社 会 の一 員 とな るこ とを助 け

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るこ とにつ なが る。そ こで、 中学生 は具体 的 に どの ようなテーマの作 品か ら得 る ものがあ るか を考 え るため に、現 在彼 らが置か れてい る状況 を確 認 してお こ う。

中学 生 は発 達心理学 的 に児童期 か ら青 年期 へ とい う人間の ライ フサ イ ク ルの 中の大 きな節 目の段 階 にあ り、その後22歳 頃 まで続 くい わゆる思春期 の前期 に位置づ け られ る。 この時期 には第二 次性 徴が見 られ 身体 的 には成 熟 してい く一方 で、心理 的 には 自己同一 性の確 立 を模索 しなが ら思春期特 有 の さまざ まな悩 み を抱 えてい る。

2004年 度版 の 『子 ども白書 』 による と、登 校拒否児が全 国で13万 人を超 え、 自尊感情 の低 い子 どもたちが増加 してい る とい う。 また1980年 代か ら 電子 映像 メデ ィア との関 わ りが指摘 され てい る 日本 の子 どもた ちの 「発育 不 全」、 つ ま り身体 や心 の発 達 の遅 れや歪 みが 更 に深刻 化 し、2004年2月

に は 日本小児科 医会 が 「子 どもとメデ ィアの 問題 に対 す る提 言」 を発 表す る に至 ってい る。 イ ンター ネ ッ トを媒介 とした事件 に子 どもが巻 き込 まれ るケースや大 人に よる子 ど もの虐待 も大 きな社 会問題 に なってい る。 この ように今 を生 きる中学生 は思 春期 とい う心 と体 のバ ラ ンスが崩 れ る最 も不 安 定 な時期 に、 多 くのメデ ィアか らの情報 が氾濫す る中で将 来 に対す る明 るい希 望 も持 てず にい る。物 質的 には今 まで の世代 とは比べ物 にな らない ほ ど恵 まれた時代 に育 ちなが らも、精神 的 には空虚で十分 に満 た され てい ない現代 の若 者の置 かれ た状 況 につい て、清水(1999:205‑6)は 「戦争 を生 きの びる こ とも困難 だ けれ ど、平和 を生 きのび るの は、 それ よ りもっ と困難 な ことか もしれない」 と述べ ている。

ま さに子 どもたち は危機 的状 況 の中 にあ るわ けだが、 中学生 に とっては ア イデ ンテ ィテ ィー の確 立 がや は り最 大の課題 であ る と思 われ る。 自分 と

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中学校の英語教育における絵本 ・児童文学の活用99

は何 か とい う自己の発見 や成長 をテーマ とした作品か ら彼 らが得 る もの は 大 きい に違 いない。 また、子 どもの 自殺 、殺 人、校 内暴力 、い じめ とい っ た荒廃 の影 には生 命 の尊 さに対す る認識 の 欠如 があ る と考 え られる。 人 間 も自然の0部 であ り、 その循 環 の中で生 か されて いる存在 であ るこ とを示 す 自然 をテーマ とした作 品や、若 い 自分 たち とは対極 にあ る老 人 をテー マ

とした作 品 も生命 につい て考 えるの に良い材料 となるだ ろ う。

(4)問 題 点

ここまで は英語 で書か れた絵 本 ・児童 文学 を中学校 の英語 教育 に導入 す るこ との プラス面 を見 て きたが、問題点 につ いて も触 れてお く必要が ある。

教科書 を中心 に授 業 を進 め る教育現場 にお いて、補 助教材 の一部 と して 絵 本や物 語 を利用す る とい う状 況で は、実 際 に取 り上げ る こ とので きる作 品の数 はか な り限 られ た もの になって しまう。 そ こで、生徒 の学習状 況 に 応 じて、 教科 書 の内容 になるべ く関連 した素材 を3つ の基準 、す なわち言 語 習得、異文 化理解 、文学 的価値 に照 ら して厳 選 し、効 果 的 に利 用す るよ うに しなけれ ばな らない。 しか し、 これ ら3つ の基準 をすべ て ク リアーす る ような作 品であ って も、授業 で読 むには長す ぎる もの もあ る。更 に、異 文化 理解 と文学 的価値 の観 点 か らは得 る ものが大 きい と判 断 され る作 品で あっ て も、 くだ けた口語表現や 中学校 で は習 わない語 彙が多 す ぎるな ど と いっ た主 に言 語上 の問題の ため に中学生 に は難 しす ぎる作 品 もある。 この

よ うに、素材 の選択 の幅 を狭 め る要素が存 在す る こ とが 第一 の 問題点 であ る。

この問題 を解決 す るため には どう した らよい だろ うか。 ひ とつ には、授 業外 の時 間を活用 す る ことが考 え られ る。授業 時間 内に読 み終 え よ うとす る とどう して も時 間的 に制 限 され て しま うが、放 課後や週 末、長期休 暇 な

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XOO

ど生徒 が 自由に使 える時間 に読 む こ とを勧 め るこ とに よって、使 え る作 品 の数 を増 やす こ とが で きる。 また、 長す ぎる作 品 に関 して は、授業 で一章 また は一部 を導入 的 に取 り上 げ、続 きは課 題 と して家 で読 ませ るとい う方 法 を とれ ば、 ただ単 に長い作 品だか らとい う理 由で使 える本 の リス トか ら はず す必要が な くな る。た だ し、 この場合 には生徒 の 自習 の効率 を上 げ る ため に、 中学校 では習 わ ない語 句や異文化 理解 の点で説 明が必要 な箇所 の 注 を用意 して配布す るな どの配慮 が必要 であ る。

もう一つ の解 決法 は、 日本語 に翻訳 され てい る ものが あれ ば、その翻訳 書 を利 用す るこ とであ る。 中学生 の レベ ルで は語 彙や文法 の知識 が限 られ てい るの で、英語 が難 しす ぎる場 合 は リー デ ィング教材 として適切 で は な い。 しか し、 もしその作 品が 異文化 につい て学 ぶ こ とが で きる要素 を多 く 含 んでいた り、文学 として中学生 に関心 のあ るテーマ を扱 ってい るのであ れ ば、翻 訳書 を読 書案 内的 に紹介 す るこ とも意義が あ るの で はない だろ う か。

以上 をま とめ る と、 中学生 が英語 の授 業 を通 して英語 圏の絵 本 ・児童 文 学 に接す る方法 としては、(1)授 業 中 に作 品全 体 を英語 で読む、(2)授 業 中に作 品の一部 を英語 で読 み、残 りは授 業 時 間外 に英 語 また は翻訳書 で読 む、(3)授 業 中 に紹 介 され た作 品 を授業 時間外 に翻訳 書 で読 む、 の3つ が 考 え られ る。

2つ 目の 問題 点 は、原作 の まま一切 手 を加 えず に中学生 が読 む ことが で きる作 品 とその 内容 とのギ ャ ップであ る。 つ ま り、 中学生 で あれば 日本語 な ら大 人の文学 も読 み始 め る年代 で はあ るが、英語学 習者 としては初級 な ので、彼 らの英 語力 で無 理 な く読 める絵 本や児童文学 は彼 らよ りも年齢 の 低 い子 どもたち を対象 に書か れた ものが多 い とい うこ とだ。 た とえ言語 習 得 の面 か らは中学生 の語 彙や 文法知識 の レベ ル に合 致 して い る もので あ っ

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中学校の英語教育における絵本 ・児童文学の活用101

て も、 内容的 に幼児 や児童が主 に楽 しめ る ような本 では中学生 はあ ま り魅 力 を感 じないで あろ う。そ こで、素材 を選択 す る時 には幼 い子 どもに も理 解 で きる英語 で書 かれてい て も、年齢 を問わず に訴 えか ける普遍 的 なテー マ を扱 っている作品 であるか どうか を見極 め る必要があ る。

これ らの問題点 に留意 しなが ら、 リーデ ィング用 の補 助教材 として利用 可能 な作 品 につ いて、 イギ リス ・アメ リカの本 を中心 に童謡 、昔話、絵 本 お よび短編小説 の ジャ ンル毎 に探 ってみたい。

V.絵 本 ・児 童 文学 か らの リーデ ィン グ用 補 助 教 材 の 選 択

(1)童 謡

英語 圏の子 どもた ちが親 や周 囲の大 人たち に歌 って も らうことによって 自然 に覚 え、 長い年 月 にわたって親か ら子へ と歌 い継が れ て きたのがマザ ー ・グース とかナーサ リー ・ライム と呼 ばれ る童謡 である

。 ほんの2行 程 度 の短 い歌 か ら積 み上 げ歌 まで長 さはさま ざまであ るが、押 韻 に よって 口 ず さみ易 い歌が多 いの で、中学校1年 生 か ら導入 して発音 や リズムの練 習 に応用 で きる。

英 語 の童 謡集 は主 に絵 本 の形 で多 数 出版 され てい るが、 で きれ ばCDや DVD等 の視聴 覚教材 とセ ッ トに なってい る もの を使用す る方が効 果 的で あ る。実 際 に耳で聞 いて覚 え ることがで きる し、遊 びを しなが ら歌 う童 謡 であれ ば・子 ど もた ちが どの ような動作 を しなが ら歌 うの か を観察す るこ とがで きるか らであ る。

童 謡 は どれ もそ れほ ど長 くはないの で授業 の 中で一つず つ、 あ るい はい くつ か まとめて読 む こ とがで きる。取 り上 げ る歌 を選択す る ときの基準 は、

英 語 圏の子 どもた ちに人気 があ り、 よ く引用 された りす る有 名 な歌 を中心

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に選ぶ のが良 い。 その ような歌が どれであ るかは、複 数の童謡 集 に重複 し て掲載 されて いる とい うこ とが一つ の 目安 になる。 その ほかに も、異文化 理解 のための素材 となる、 その童謡 の背 景 に まつ わ る興 味深 いエ ピソー ド があ る もの、絵 本 の場 合 は挿絵が 歌 の内容理解 を助 け る ように描かれ てい

るか どうか、 そ して何 よ りも楽 し く音読 した り、歌 った りす る ことが で き るか どうかが選択 の際 の基準 とな る。

次 に どの よ う な 童 謡 が こ れ らの 基 準 を 満 た し て い る か と い う と 、 短 い も の で はRain,rain,goaway、 な ぞ な ぞ 歌 と し て 鏡 の 国 の ア リ ス 』 に も 登 場 す るHumpty‑)umpty、 「お ば あ さ ん 」 も の の 中 で も 人 気 が 高 い Therewasanoddwomanwholfvedfηashoe、 ナ ン セ ンス の 歌 と し て 有 名 なHeydiddlediddle、 早 口 言 葉 のPeterpiperpickedapeckof

pickledpepperな ど が あ る 。

も う少 し長 め の も の で は 、ThlsfsthehousethatJackbuiltの1行 ら始 ま り、 そ れ に1行 ず つ 新 しい 文 が 加 わ っ て 最 後 に は11行 の 歌 に な る積 み 上 げ 歌 は 、 頭 韻 や 脚 韻 が 多 く発 音 や 英 語 特 有 の リ ズ ム の 練 習 教 材 と して も適 し て い る 。 ま た バ バ ー ドお ば さ ん と犬 の 喜 劇 が 物 語 の よ う な 歌 に な っ て い るOldMo亡herHubbardも 人 気 の あ る童 謡 で 、 第1ス タ ンザ 以 外 は 2行 目 と4行 目が 脚 韻 を 踏 む 形 式 に な っ て い る 。 こ の 歌 は 本 に よ っ て い く つ か の 異 な る バ リ エ ー シ ョ ンが あ るが 最 初 と最 後 は た い て い 同 じで あ る 。

そ れ か ら、 子 ど も た ち が 数 を 数 え た り、 遊 び を し た り し な が ら歌 う メ ロ デ ィー の つ い た 童 謡 で は 、 復 活 祭 の 前 の 聖 金 曜 日 に 食 べ る 習 慣 の あ る 十 字 の 印 の つ い た 菓 子 パ ン の 歌 、motcrossbinsや 、 中 世 に 大 流 行 し た ペ ス

ト と の 関 連 が 指 摘 さ れ て い るRfng‑a‑rfη90'roses、 数 え 歌 のOne,two, three,four,eveな ど の ほ か 、 日本 の 子 ど も た ち に も親 し ま れ て い る もの と し て1Vlaryhadalittlelamb、Twln・kle,twin」kle,litalestar,London

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中学校の英語教育における絵本 ・り瞳 文学の活用103

Bridgeの 歌 があ る。

この ような歌 を授業 で学習 した後、興味 のあ る学 習者 には入 手可能 な英 語 の童謡集 を紹介 して他 の童 謡 を英語 で読 む ことを勧 める こ ともで きる し、

あ るい は英語 と 日本語 の翻訳 が 両方載 ってい る本 も出版 されて い るの で、

中学生 にはむ しろこち らの方が 読みやす いか もしれ ない。

(2)民 話 ・昔話

民話 や昔話 も民 間伝 承 とい う形 で代 々語 り継 がれ て きた もので、 これ ら には一 定 のパ ター ンが あ り、 リフ レイ ンが多用 されるのが特 徴 であ る。 日 本 で は イギ リス、 ドイ ツ、 フラ ンス、北 欧 な どの民話 が翻訳 され てい て、

そ れ らはす で に 日本 の子 ど もたちの文化 の一部 に なってい る。 中学生が幼 児期 に読 んで もらった り、 自分 で読 ん だ りして内容 をよ く知 っている民話 や昔 話 を今 度 は英語 で読 んでみ る とい う試 み は、全 く未知 の物 語 に挑戦 す るの と違 って安 心感 があ り、英語 を読 む 自信 をつ けるこ とがで きるとい う メ リッ トがあ る。 そ して民話 は細 か い人物 描写 や状 況説 明 を省 いてア クシ ョンを中心 に話が展 開 し、繰 り返 しの表現 が頻 繁 に使 われ るため、その部 分 が よ り鮮 明 に記 憶に残 って語句 の定着率 も高 くなる。

イ ギ リ ス に 昔 か ら伝 わ る 民 話 を集 め た 本 と して はJacobs(1890)の EnglishFairyTalesと 、 同 じ くJacobs(1894)の1VloreEnglish

FairyTalesが あ り、 この2冊 を1冊 に ま とめ た もの も出版 さ れ て い る 。 日本 の子 ど もた ち に も親 し まれ て い る 『3び きの子 ぶ た 』 や 『ジ ャ ック と 豆 の 木 』 の 話 な どが この 中 に収 め られ て い る。 昔 話 の 本 な の で 多 少 古 風 な 表 現 が 見 られ るが 、 英 語 の リー デ ィ ン グ用 教 材 と してそ の ま ま問 題 な く使 用 で き る。 ま たJacobsの 本 を基 に して多 くの 昔 話 絵 本 が 出版 さ れ て い る

の で 、 そ れ らの絵 本 を利 用 す る こ と も可 能 で あ る。 イギ リス で は も う一 人

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Lang(1889)がTheBlueFairyi1/に 始 ま る12冊 の 『色 の童 話 集 』 を 出 して い る。Langの シ リー ズ に は イギ リス の 昔 話 ば か りで な く、 広 く

ヨー ロ ッパ を起 源 と した もの 、 ロ シア 、 ア フ リ カ、 日本 な どの 話 も含 まれ て い る。TheBlueFairyBookの 新 版 がAlderson(1975)に よっ て 出 版 され てい る。

ア メ リ カ のHaviland(1972)は 世 界 の有 名 な昔 話32編 を選 ん でthe FairyTaleTreasuryと して編 集 し、 ブ リ ッグ ズの 挿絵 入 りで 出版 して い

る。 この 中 に は ドイ ツの グ リム 兄 弟 に よ っ て採 録 され た 『お お か み と七 ひ きの子 や ぎ』 や 『金 のが ち ょ う』、 ノル ウェ ー の ア ス ビ ョル ンセ ン とモ ー に よ っ て再 話 され た 『三 び きの や ぎの が らが ら どん』、 日本 の 『一 寸 ぼ う し』

の話 も入 っ て い る。

この よ うにLangやHavilandの よ うな民 話 集 に はい くつ か の 国 や 地 域 の話 が 収 め られ て い るの で 、 一 冊 で 世 界 の さ ま ざ まな 国 の 民 話 を読 む こ と が で きる とい う利 点 が あ る。 もち ろ ん有 名 な昔 話 は単 独 で絵 本 に な っ て い る の で 、 何 冊 か 選 択 して 読 む こ と もで き る。 例 えば 、 シ ンデ レラ系 の 昔 話 が 国 に よっ て どの よ う なバ リエ ー シ ョンで語 られ て い るか をペ ロー の 『シ ンデ レ ラ』(フ ラ ンス)、 グ リム兄 弟 の 『灰 か ぶ り』(ド イ ツ)、 ジ ェ イ コブ ズ の 『い ぐさ姫 』(イ ギ リス)で 読 み比 べ て み る とい う方 法 もあ る。 ま た 、 ア メ リカ の 挿絵 画 家Brownは 海外 の 昔 話 を 自 ら再 話 また は翻 訳 して 多 数 の 昔 話 絵 本 を作 り、 コー ル デ コ ッ ト賞 を受 賞 して い る 。 例 え ば、0血cea Mouse(Brown,1961)は イ ン ドの昔 話 をベ ー ス に した短 い話 で あ る。 長 め の もの で はStoneSoup(Brown,1947)とDic、kWhlttingtonand

研sCat(Brown,1950)が そ れ ぞ れ フ ラ ンス とイ ギ リス の民 話 を再 話 し た もの であ る。

民 話 ・昔 話 を リー デ ィ ン グ用補 助 教 材 と して使 用 す る と きに は、 当然 の

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中学校の英語教育における絵本 ・児童文学の活用105

ことなが ら1年 生用 に は 日本 の子 どもに親 しみ のあ る短 い話 か ら始 め、学 年が上 が るにつれ て 日本 で はあ ま り知 られ てい ない長め の話 を扱 うように す る こ とと、一 つ の国や地域 の話 に片寄 らない ようにバ ランス に配慮す る 必要が あ る。興 味 のあ る学習者 に は教室外 で も民 話や昔話 は なるべ く英語

で読 む ように勧 めたい。

(3)そ の他の絵 本 ・児童文学

次 に現代 の創作 物語 につ いて絵 本 と児童 文学 の中か ら中学生用 の リーデ ィング補助教材 として利 用 で きる作 品 を探 ってみ よう。絵 本 につ いて は 自 然 とアイデ ンテ ィテ ィーの追求 とい う2つ の テーマ を中心 に、児童文学 は イギ リス とア メ リカ を代 表す る児 童文学作 家 の短編 集の 中か ら一つず つ作 品 を取 り上 げて述べ る ことにす る。

ま ず 自然 ・環 境 を テ ー マ と し て 扱 っ た 絵 本 と し てUdryとSimont

(1956)のATreeis"1Viceは 、 簡 潔 な英 語 で季 節 ご とに木 を め ぐる さ ま ざ ま な 自然 現 象 や 木 と人 間 の共 生 を語 り、物 語 の 最 後 で 自 ら木 を植 え る と い う行 動 を とる こ とに よ っ て、 自主 的 に 自然 や 環 境 の保 護 に 関 わ っ て い こ う とす る姿 勢 を呼 び か け る。HallとCooney(1979)のOx‑CartManは

ア メ リカ の 農 場 に住 む 家 族 を主 人 公 に して季 節 の 移 り変 わ りの 中 で 日々繰 り返 され る生 活 の営 み と、 家 族 が力 を合 わせ て働 く姿 を描 い た作 品で あ る。

Hal1の 文 は所 々 に レフ レイ ンや頭 韻 、 脚 韻 をち りばめ詩 の よ うな快 い リズ ム を 醸 し 出 して い る 。 本 格 的 な 物 語 絵 本 で はBurton(1942)のThe

LltheHouseが あ り、 この 本 で は文 の配 置 が 絵 の 一 部 とな っ て美 し く一体 化 してい る。 この 作 品 は時 の流 れ と共 に変 わ りゆ く自然 と昔 の ま ま変 化 し

な い古 い 家 を対 比 させ 、 社 会 の進 歩 が 自然 環 境 の破 壊 を招 き、 古 い もの が 疎 外 され 顧 み られ な くな る こ とへ の警 鐘 を鳴 ら して い る。 これ は ア メ リ カ

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lOfi

を舞 台 に した作 品 で はあ るが 、人 間が歩 ん で きた歴 史 の一部 であ り、 出版 か ら60年 以上 を経 た今 で も現代性 を持 ち続 けてい る。

ア イ デ ンテ ィテ ィー の 問 題 を扱 った 絵 本 で は、 日本 の 子 ど もた ち に も翻 訳 書 で親 しまれ て い るLionni(1959)のlittleBIUeandlittleYellow

が まず挙 げ られ る。 これ は表 面 的 に は就 学 前 の子 ど もを対 象 に書 か れ た や さ しい 本 で あ るが 、 思 春 期 の子 ど もが 必 ず 直 面 す る 「自分 とは何 か」 とい う根 源 的 な 問 い が テ ー マ とな って い る奥 の深 い絵 本 で あ る 。 青 と黄 色 とい う二 つ の 別 個 な人格 が 混 じ り合 う こ とに よ っ て緑 とい う新 しい 人格 が 生 ま れ るが 、 そ れ が 両 親 に さ え我 が 子 と して認 め て も らえ な い悲 しみ を乗 り越 え て 、 そ れ ぞ れ が 自己認 識 に至 る様 子 が ち ぎ り絵 で 抽 象 的 に表 現 され て い る 。 も う一 人Silverstein(1976,1981)もTheMissingPieceとThe

Mlss∠ngP7eceMee亡stheBignで 二 種 類 の抽 象 的 な 「形 」 を主 人公 と し て登 場 させ 、 ユ ニ ー ク な 自分 探 しの旅 を描 い て い る。 前 者 で は一 部 が 欠 け た 円 形 が 主 人 公 で 、 自分 の 欠 けた 部 分 に ぴ っ た り合 う相 手 を探 し求 め て こ ろ こ ろ と回転 しなが ら遍 歴 の旅 に 出 る が 、 い ざ望 み が か な っ て 自分 が 完 全 な 円 形 に な った と思 った 瞬 間 に思 わぬ 落 と し穴 が あ り、 結 局 は も との欠 け た ま ま の 自分 に戻 っ て 自己 を取 り戻 す とい う話 で あ る。 後 者 は鋭 く とが っ た二 等 辺 三 角 形 が 主 人 公 で、 自分 は 回転 して移 動 す る こ とが で き ない と思 い込 み 、 欠 け た部 分 の あ る他 者 に依 存 す る こ とに よっ て何 とか移 動 した い と考 え、 通 りす が りの さ ま ざ ま な相 手 に トライ して み る が どれ も うま くい か ない 。 あ る 日 ビ ッグ ・オ ー とい う完 全 な 円 と出会 い 、 痛 み を伴 い なが ら も 自力 で 回転 す る こ とを覚 え 、 自分 の存 在 に 目覚 め る物 語 で あ る。 テー マ は違 うが 、Silverstein(1964)のTheGivingTreeも 中学 生 用 の リー デ

ィ ング教 材 と して適 切 で あ る。

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中学校の英語教育における絵本 ・児童文学の活用107

次 に 短 編 小 説 で は イ ギ リ ス のPearce(1977)の 短 編 集Whatthe NeYghboursDidandOtherStorYesに 収 め られ て い る作 品 の ひ とつ

"R

eturntoAir"は1500語 程 度 の短 い ス トー リー であ る。 こ れ は イギ リス の小 学 校 で もテ キ ス トと して使 用 され る頻 度 の 高 い 成 長 物 語 で 、 ソー セ ー ジ とい うあ だ名 の 少 女 が 初 め て池 で ア ヒ ル も ぐ りを して 目標 物 を取 っ て き た時 の 経験 を一 人称 で語 っ て い る。彼 女 は水 泳 の イ ンス トラ ク ター に水 底 か ら取 っ て くる よ うに言 わ れ た レ ンガで は な く、 泥 の 詰 ま っ た ス ズ 製 の お 弁 当箱 を取 っ て くるが 、恐 怖を克 服 して初 め て水 底 ま で潜 っ た こ とが彼 女 に とっ て は、 且ollindale(1997)の 言 う 「エ ピ フ ァニ ー」(epiphany)、 ま り成 長 の節 目 とな る重 要 な体 験 で 、 そ の喜 び が 古 い お 弁 当 箱 に大 切 な コ イ ンの コ レ ク シ ョン を入 れ てマ ン トル ピ ー ス に飾 る とい う行 動 で 表 され て い る。

この作 品 の 中 に は 日本 の 子 ど もた ち に とっ て不 思 議 に思 う こ とが い くつ か あ る に違 い な い 。 例 えば 、 イ ンス トラ ク ター が 水 中 に投 じる の は なぜ い つ も レ ン ガな の か 、 ソー セ ー ジ が古 い お 弁 当箱 の 中 に し ま っ た の は なぜ コ イ ンの コ レ ク シ ョンな の か 、 そ して 、 彼 女 は なぜ そ れ を マ ン トル ピー ス の 上 に 置 い た の か 、 とい った こ とで あ る。 これ らの 疑 問 に対 す る答 えの 中 に

イ ギ リス の文 化 を理 解 す るた め のい くつ か の 手 が か りが 隠 され て い る。

ア メ リ カの作 家Konigsburg(1971)のAltogether,OneataTime

は 四篇 の作 品 か ら成 る短 編 集 で、 そ の 中 のuTheM〔gh亡oftheLeonfds"

は老 ・若 の テ ー マ を扱 っ て い る。 ニ ュー ヨー クの セ ン トラルパ ー クで60代 の祖 母 と10歳 の孫 が33年 に一 度 しか 見 る こ とので きな い壮 大 な流 星 群 を0 緒 に見 物 す る とい う話 で あ る。 少 年 は次 に この夜 空 の シ ョー を見 る と きに

は 自分 が 中 年 に な っ て しま う と言 っ て泣 くが 、祖 母 に は も う次 の チ ャ ンス は ない こ と を悟 り、 い つ もは クー ル な 関係 を保 っ て い る二 人 が 手 をつ な い

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で帰宅す るので ある。 悠久 の時の流 れの中で ほんの一 瞬、死 にゆ く老 人 と これか ら成 長 してい く子 どもが 同 じ時 を共有 す る ことに よって生 じた、 お 互 いへ の慈 しみ の気持 ちが さ りげな く描かれ ている。

日本の子 どもた ちは この作 品 を通 して アメ リカの 中産階級 の人 々の家 族 のあ り方 を垣 間見 る こ とが で きる。お 互 いが あ る程 度 の距 離 を保 ちつつ 、 支 えが必 要 な時 に は助 け合 って 暖か い人 間関係 を維 持 してい こう とす る。

そ して、 「自立」が アメ リカ人に とって重要 な価 値基 準で ある ことも一 人暮 らしの祖母の姿 は物語 ってい る。

以上 、 リーデ ィ ング用 補助 教材 として適切 な作品の具体 例 をイギ リス と アメ リカの絵本 を中心 にほん の0部 しか挙 げ る ことが で きなか ったが、他 の英語 圏の本 の リス トも必要 であ る し、 またそ のよ うな本 の リス トは定期 的にア ップデイ トさせ ていか なけれ ばな らない。

V【.お わ り に

本稿 で は中学校 の英語教育 に限定 して、言語 習得、異 文化理解 お よび文 学 的価 値の観点 か ら英語 圏の絵本 と児童 文学 の有用性 を考 察 した。 リーデ ィング用補 助教材 の選択 にあ たっては、 まず語彙 や文法、 ス トー リーの長 さとい った言語面 での基 準 をク リアー した上 で、その作 品の 中に は異 文化 理解 を助 ける どの よ うな要素 が含 まれてい るか、そ して中学生が彼 らの成 長過程 におい て読 む意義 のあ るテ ーマ を扱 った文学 的 に価値 の あ る作 品 で あ るか どうか を考慮 す る必要 があ る。 その ように して厳選 され た作 品 を原 書 で読 む こ とは、 中学生 が質 の高い 自然 な英語 を媒体 として英語 を読 む力 をつ け る とともに、 英語 圏 を中心 とした世 界 の人々や 文化 に対す る洞 察力 を養 い、共 感や感動像 を通 して彼 らが 人 間 と して成長す るの を助 け る こ

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中学校の英語教育における絵本 ・ツ瞳 文学の活用 cos

とにつ なが る。 高等学校 にお ける英語 学習へ の橋 渡 しとい う意味 で も、 中 学生 の時 か らた とえ短 い もの であ って も原書 に親 しむ機会 を持 つ こ とは重 要 であ る と思 われ る。

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参照

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