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対 人 恐 怖 症

中村  剛 ,西 村優紀美

Tsuyoshi Nakamura,Yukilnl Nishilnura:

Taijin― Kyofu(Anthropophobia)

< 索 引 用語 : 対 人 恐怖 , 社 会恐 怖 , 加 害 恐 怖 , D S M ― Ⅳ >

<Keywords i anthropophobia,social phobia,adolescent paranoia,fear of harnling others,DSゝ /1‑Ⅳ>

は じめ に

対人恐怖症 は,粗 暴 な人間 を恐れた り,人 を嫌 っ た り,あ るい は迫害妄想 な どの ため に人 を忌避 し た りす るよ うな状 態 を表 す ための用語 で はない。

患 者 は,人 間 (Anthrop―)そ の もの を恐 れ るの で も嫌 うので も忌避 す るので もな く,仲 間 と親 し く交 わ りたい とい う人一倍強 い願 いを もってい る。

む しろ,そ の よ うな願望 が強す ぎるため に,対 人 関係 の なか で患 者 自身 が もつ何 らか の欠 陥 が あ ら わ にな り,そ の結果親 しみ に溢 れ た友好 の雰 囲気 を損 ねて しまい はせぬか, と い うことを恐 れて い るので あ る。 したが って Brautigam 2)がこの病態 の 表 現 に は Anthropophobie(人 間 恐 怖 )で は な く Soziale Phobien(社会 恐 怖 ),あ る い は Situationsphobien(状況 恐 怖 )と い う用 語 が よ り適 切 で あ る とい って い るの は正鵠 を射 た見方 と いえ よ う。

この病 態 は思春期 か ら青年期 の心性 に深 いつ な が りを もってい るが,そ れ は青年 が 自我 にめ ざめ て,他 者 を意識 し,社 会 的存在 へ と脱皮 を は じめ る時期 にあ た るか らで あ ろ う。 したが って18歳か ら20歳代前半 の青年 が集 う大学 キ ャ ンパ スに は こ の症状 に悩 ま されて い る若者 がか な らず存在 す る

と い って よ く,現 に富 山大 学 保 健 管 理 セ ンタ ー (以下 ,セ ンター)に は対 人 恐 怖 症 の学 生 が毎 年 の よ うに訪 れて い る。 と ころが某大学病 院精 神科 外来 で は対 人恐怖 症 を診 療 した経験 が ほ とん どな い とい うことで あ り,む しろ この不思議 さが本症 の特徴 の一部分 を物語 って い るといえそ うで ある。

そ こで小論 で は,セ ンターを訪 れた学生 た ちの訴 え に もとづ き,対 人恐怖 の臨床的特徴 や精神病理, お よび治療経過 につ いて言及 したい と思 う。

対 象 症 例

対 象 は,セ ンターヘ相 談 に訪 れ た学 生 25例 と他 大学 や他 の医療機 関,大 学 の教職員 な どか ら特 別 に相談 と治療 を依頼 され た 5例 の,計 30例 (男性 21例,女 性 9例 )で あ る。 窓 口が限 られてお り,

したが って資料 に偏 りの あ る ことは否定 しが たい が,具 体 的 な症例 を検証 しつつ それ ぞれ の症状 の 意 味 を考 え る ことは許 され る と思 う。

〔 症例 1〕 HK 女 性,発 症 :16歳 ,表 情 ・態度恐 怖

高校 1年 の頃か ら人前 に出ると緊張感が強 くなる。

皆が リラックス して談笑 していると,仲 間にはいって

著者所属 :富 山大学保健管理 セ ンター,The Department of Health Services,Toyama University

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楽 しみたいが, 話 しか け られ た ら適切 な, 時 には気 の 利 いた応答 を しな ければな らない と思 うので気 の休 ま る暇 が な い。 「ち ゃん と受 け答 えがで きな ければ, 人 の話 を聴 いて いない失礼 な人 だ と思 われ るだ ろ うか ら 集 中 しな ければ」, な ど とい う考 え に と らわれて い る。

そん な ときに急 に話 しか け られ ると,   どぎま ぎ して心 と裏腹 に間 の抜 けた相槌 を打 って しま う。 その うえ私 の緊張感 と異様 な雰囲気が周囲の人 たちに伝 わ り,そ の場 を しらけさせ るので,心 苦 しさが倍加 され,一 層 いたたまれな くな る。他 の人 たち も失敗 しなが ら話 す とは思 うが, 自 分 の場合 は頭が悪 く, 「そんな病」 によ る失敗 だか ら次元 が低 い と思 う。 け っ して高望 み は じ ない, た だ 「 普通」に仲間 と談笑で きるよ うにな りたい。

なお, 本 例 は別 の ところで記 した ことが あ る 8 ) 。

症 例 1 は , 人 の前 に 出 る と緊 張 す る と い う,   ど こ に で もあ りそ うな こ とを訴 え て い る。 しか し,

① 仲 間 が皆 リラ ックス して い るはず の イ ンフ ォ ー マル な状況下 で,か え って本人 だ けが異様 な緊張 に東縛 され る こと,② 緊張 した 自分 が か も しだす 雰 囲気 が伝 わ って その場 を 自 け させ る,   とい う周 囲 の変化 を感 じとる こと, ③ 過度 の緊張 の根 源 は, 生 来 的 に具 わ って い る病 的かう特異 な頭 の悪 さに あ る と妄想 的 に確信 して い る こと, な どの特異性 を指摘 で きる と思 う。

患 者 が症状 に強 くと らわれ るの は, 仲 間 との雑 談 , 談 笑 の場 にお いてで あ る。 家族 の間 や駅 の雑 踏 で行 きか う人 び とは彼 女 の症 状 にあ ま り影 響 を 及 ぼす こ とはな い。 そ うい う意 味 で, 症 状 の発現 が きわ めて状 況依 存 的 (mitweltabhangig)であ る とい え る。 高 橋 1 0 ) は , 人 間 の相 互 交 流 の様 態 を,家 族 や きわ めて親 しい人 び ととの関係,ま っ た く見知 らぬ人 び と (群衆)と の関係 ,そ の中間 的 な間柄 の人 び ととの関係 , に 分類 して それ ぞ れ を収敏 的人 間関係,離 散 的人間関係,共 同的人 間 関係 と呼 ん だ。 そ して 「共 同 的人 間 関係 とい う枠 の中で生 じる不安 や緊張 を 自己の身体 の異常 へ と 症 状 化 させ る病 態 」 が対 人 恐 怖 で あ る とい う。

「自己の ̀ 身 体 の ' 異

常 」 が, 「 自己の ̀ 表 情 0 態 度 の ' 異

常 」 を含 む とす れ ば症 例 1 は 高 橋 の定 義 す る対 人恐怖 の典型 とい うことがで きよ う。

ま た一 般 に対 人 恐 怖 症 の患 者 に対 して 「あ な た は ど うあ りた い と思 って い る の か 」, と 訊 ね て み る と,「 せ め て 世 間 並 み の ̀普

通 'の

人 間 で あ り た い,周 囲 の期 待 に沿 うよ うにふ る ま い た い」 と 応 え る こ とが 多 い が ,症 例 1は そ の代 表 的 な例 で あ る。 な お,表 情 ・態 度 恐 怖 は小 論 の対 象 症 例 30 の な か で最 多 の 8例 を数 え る。

〔 症例 2〕 TM 男 性,発 症 :18歳, 自己視線恐怖 高卒後,予 備校 に通 って いた とき,教 室 な どで無意 識 の うちに 自分 が人を見 て しま うことが よ くあ った。

す ると, 自分 の視線 に気づ いた人が不愉快 にな るよ う で チ ラと見返 して くるので,そ れが苦痛 に感 じられた。

現 在,授 業 中 は教室 の右端 に座 り,左 手 で左 目を さえ ぎるよ うに して ノー トを と って いるので,あ ま り気 に な らな い。他 の人 は視野 の周辺 に意識が あま り向かな いよ うだが,自 分 は隣の人が気 にな る。隣の人 を見 る に して も,一 般 の人 は ̀自

然 に '見

るのだが,自 分 の は ̀不

自然 だ 'と

思 う。 ̀自 然 に ' し

よ うと思 うが, 思 って も ̀自

然 に 'な

らないか ら ノイローゼにな っ て いる "の

で あ る。

道路 を歩 いて い るとき も,人 が近 づ いて くる と気 に な る。 同年令 の人の場合が一番気 にな る。 自分 は人 に 良 く思 われ るに こ した ことはないが,少 な くと も嫌 な 奴 とは思 われ た くない。平穏 になん と も思 わず に通 り 過 ぎて行 って ほ しい。知 らない人 はど うで も良 いが, 不快感 は与 えないに越 した ことはない。

自分 は完 全主 義 者 で要 求 水準 が高 い と思 う。 今 , ノイ ローゼにな って いる "が

挫折 した とまで は思 わ ない。幼稚園か ら中学 にかけて これとい う特技 はなか っ たが,人 に従 ってなん とな くや って きた。成績 は悪 く なか ったが,体 育が苦手で劣等感を もって いた。

症 例 2に は, 自 己 の視 線 が 強 す ぎ る とい う妄 想 的 確 信 が あ る。 患 者 に と って 不 自然 な まで に強 す ぎ る視 線 は 自 己 の肉 体 に具 わ って お り, と り去 る こ とが で きな い もの で あ る。 残 され た手 段 は,少 しで も視 線 を 自然 に近 づ け る よ うに努 力 す る こ と で しか な い が ,そ の努 力 も空 し く,「 他 者 が 不 愉 快 そ うに チ ラ と見 返 して くる」 の で あ る。 視 線 を 和 げ る た め の 懸 命 な努 力 が いつ も無 に帰 す か ら, 彼 は 自分 が ノ イ ロ ー ゼ に な って い る "(困

り は

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対 人恐怖症

て て い る)の で あ り,自 己 の視 線 が 強 過 ぎ る と思 い こん で い る状 態 自体 (妄想 的 確 信 )は 彼 に と っ て の 日常 で あ るか ら ノ イ ロ ー ゼ で は な い "と

い うの で あ る。

症 例 1で は,自 己 の交 際 術 とい う精 神 面 に属 す る,純 粋 に機 能 的 な欠 陥 が悩 み の種 にな って い た。

そ れ に比 べ る と症 例 2の 「自己視 線 」 恐 怖 は機 能 的 色 彩 が 濃 い と は い え ,「 知 覚 的 (可視 的 )領 域 」 の欠 陥 で あ る点 で,症 例 3, 4, 5に 似 た要 素 が

うか が わ れ る。 な お,自 己視 線 恐 怖 は小 論 の対 象 症 例 30中, 6例 を数 え る。

〔 症例 3〕 AN 男 性,発 症 :18歳,自 己呼吸音恐怖 小学校 5年 の旅行 の ときに グル ープを作 った ら自分 が一人 だ け余 ったので,以 来 自分 の攻撃性 を抑 えよ う と思 った。 中学 の ころ,一 緒 に入浴中の祖父 に 「息が 荒 い」 と言 われ た ことが あ る。高校 は県下 1, 2の 進 学校 に入 った。入学後 は皆が徐 々に しゃべ るよ うにな っ て い ったが,自 分 はなかなか溶 け こめず に しゃべ る機 会 を逸 して しまい,そ の うち 今更 しゃべ りだす の も 変 だ "と

思 って卒業 まで遂 に しゃべ らなか った。

高校 3年 の秋 頃,授 業 中 に 自分 の呼吸音 が気 にな る よ うにな った。呼吸音 が大 きす ぎて周囲の人 に迷惑 を か け ると思 い,「呼気 と吸気」 の時 は鼻 と口の どち ら を使 った らよいか と考 えなが ら息 を していたが,そ の うちに動悸 もす るよ うにな った。 とにか く,初 めの頃 は半信半疑 だ ったが,そ の うちに 咳払 いを された り, 自分 につ られ るよ うに周囲 の人 たちが 自分 と同 じ呼吸 を して,ス ースーとい う音 をたて る "の

で,だ んだん 確信 す るよ うにな った。 自分 の呼吸音 を不都合 と思 う の は,「他人 に申 し訳 ない」 が半分,「変 な人 と思 われ るか ら恥ずか しい」が半分で ある。

母親 は,自 分 が物心 つ いた時 には居 なか った。精神病 にな った らしく,ど こか に生 きていることは確か。小 学校 3, 4年 頃か らこの ことは訊 ねて はいけない こと の よ うに思 って いた。

自 己音 恐 怖 は 「自分 の 身 体 か ら不 愉 快 な音 が 出 て ,周 囲 の 人 に迷 惑 を か け る」 と訴 え る もの で あ る の。 症 例 3に は,小 学 校 低 学 年 の ころ,す で に 父 親 や 祖 父 母 の 気 持 ち を察 知 して母 親 の 消 息 を訊 ね るの を 自制 す る ほ どの気 配 りの こまや か さが み

られ た。 中学 の ころ,一 緒 に入浴 中 の祖父 に 「息 が荒 い」 と言 われ た経験 が あ る。友達付 き合 い は もと もと不器 用 で あ ったが, 県 下 1 ,   2 の 進学校 に入 ってか ら周 囲 に圧倒 されて極度 に孤立 す るよ うにな って ゆ き, 以 来, 卒 業 す るまで学校場面 で は一言 も発 しなか った。高校 3年 の時, 自分 の呼 吸音 が異常 に大 きい と意識 す るよ うにな った。 初 めの頃 は半信半疑 だ ったが,そ の うちに 咳払 い を され た り, 自 分 につ られ るよ うに周 囲 の人 たち が 自分 と同 じ呼吸 を して,ス ースー とい う音 を た て る " の

で,だ んだん確信 す るよ うにな った とい う。高校生活 の三年 間,つ いに 一 言 も発 しなか っ た患者 が, な おかつ心 の内で 自分 の呼 吸音 が他 者 に迷 惑 をか けて い る " と

自虐 的 な着 想 に と らわ れ,妄 想 的 に確信 す るにいた ったのであ る。 この 例 は, 我 々 に対 人恐 怖 症 患者 が 自己の欠 陥 の確信 を妄想 的 に形成 して ゆ く過程 を追体験 させて くれ る とい う意 味で興味深 い ケースで あ る。

なお,醜 貌兼 自己音 (悪声)恐 怖 の 1女 性例 も 自分 の 「悪声 」 が話 し相 手 に感 染 す る と訴 え て お り,   この 「他者 への感染」 が 自己音恐怖 に特異 な 症 状 といえ るか も しれ ない。

〔 症例 4 〕 N H   男 性, 発 症 : 1 6 歳, 醜 形恐怖 小学校 4 年 の頃, チ ック ( 瞬目) が 始 まったが半年 ほどで消失 した。高校 2年 の 9月 頃か ら女子高校生が 地下鉄の駅などで笑 っていると, 自 分のことのように 思えてどうしようもな くなった。 この頃は, 肥 ってい て醜いのだと思い,以 来,大 学 1年 の秋頃まで一 日5 キロの ジョギ ングを した。その結果, 肥 満 は解消 した が,醜 貌 (顔全体,強 いて言えば頬の上部が こけ,下 部が弛んでいて生気がない) の ため嘲笑 され るという 観念 は一向に軽減 されなか った。現役で大学 に入学 し たが,現 所属学科の専攻は本意ではない。

症状は入学後 も続 き,   1 回 生の秋に 3 か 月間, 下 宿 に閉 じこもって 2日 に一度パ ンを買いに出る以外は何 もしないという状態になった。 この間, 自 殺 も考えた。

1 2 月頃,「 これではいかん」 と思 って ジョギ ングを再 開 した。当然,   この間の単位取得はゼロである。

( 客観的には美形 といってよいが, 患 者 は 「 頬が弛ん

でいて日本一醜いと思 う, 普 通の顔になれたら満足だ」

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と主張する)。

症 例 1, 2, 3で は, 自分 の態度 や振 る舞 い, 視線 ,呼 吸 の音 とい うよ うに,身 体 の機能 面 に異 常 が あ る と妄想 的 に確信 し,そ の状 態 を緩 和 し軽 減 す るよ うに空 しく苦闘す る患者 の姿がみ られた。

それ に対 して症 例 4で は,醜 貌 (形)が 悩 みの中 心 で あ るた め に 自助努 力 で は これを いかん と も し が た く,多 くの醜形恐怖者 が そ うで あ るよ うに美 容整形手術 を望 ん で いた。小論 の対象30例の うち, 醜 形 恐怖 は 3例 で あ るが,そ の うち症 例 4は 美容 整 形手術 を望 み,他 の 1例 (関東地方 の某女子大 生 )は 実際 に隆鼻術 と眼瞼 の整形手術 を受 けて い る (彼女 はその後服薬 自殺 が未遂 に終 わ ったの ち に帰省 し,セ ンターでの 6カ 月間の治療で軽快 した。

しか し復学後数年 を経 て 自殺 を遂行 した ら しい)。

〔 症例 5 〕 T M   男 性, 発 症 : 1 7 歳,   自己臭恐怖 高校 3 年 の 4 月 頃,   くしゃみをカー杯 した ところ, 股 間 に痛 みが走 った。痔 のためか と思 って いたが, そ の 日の下校時 の列車 の中で臭 いに気づ いた。列車 の中 で は煙草 や煙 のよ うな臭 いだ ったが, そ の うち股間 の 臭 いだ と思 うよ うにな った。初 めの頃 は風が吹 いた と きに フ ッと臭 うよ うだ ったが, 夏 にな って増悪 してか らひど く気 にな り出 し, 現 在 にいた って いる。

臭 いは, 股 間 の臭 いであ る ことが多 いが, マ ヨネー ズ, 魚 の腐敗臭 だ った りして全部不愉快 な臭 いである。

授業 中 は前後左右 の席 に居合わせた人 は臭 いに気づ く。

そのため に前後左右 の人 たちが眠 そ うな様子 を してい るよ うだが, 確 認す るのが怖 いのでそれを観察で きな い。授業が うわの空 になること もあ る。 また時間の経 過 とと もに教室全体 に臭 いが広が ってゆ くので, 座 席 が遠 い ところの人 たちまで も落 ちつかな くなる。

〔 症例 6 〕 K E   男 性, 発 症 : 1 5 歳,   自己臭恐怖 自分が変 な ( トイ レのよ うな) 臭 いを発す るので人 が 自分を避 ける。尿道の検査を受 けたが原因 は不明だ っ た。教室 に入 って い くとみなが避 ける。 また,   くしゃ み を した り, 顔 を背 けた り, 通 りすが りに 「くさい」

と言 われた りす る。友達 がで きないが, 予 備校 の先生 に 「 君 は独断的」 と言 われた ことと関係があ ると思 うし

( U P I 結 果 によるセ ンターの呼 び出 しに応 じて来診。

相手が年長者で しか も初対面であるもかかわ らず,あ たか も同年輩の近親者を相手に話 しているような態度 で,横 柄な国の利きかたをする。対人状況での小心翼々, 診察場面での横柄, この間のギャップが著 しく,精 神 分裂病の疑 いももたれたが予後良好であった)。

昭和 38年か ら45年の間 に北海道大学付属病院 を 訪 れ た対 人 恐 怖者 100人の うち, 自 己臭恐怖者 は 最 多 の28例 で あ った 14)。 名 古 屋 大 学 付 属 病 院 の 受 診患者 に関す る村上 らの報告 で も,思 春期妄想 症 164例の なか で, 自 己臭恐怖 (56例)を 主訴 と す る者 が もっと も多 か った, と い う。筆者 らの対 象30例で は,表 情 ・態度恐怖 8例 , 自 己臭恐怖 と 自己視線恐怖 が それぞれ 6例 であ る。 また,一 般 に 自己臭恐怖者 が精神 医学 的治療 が必要 で あ る と 自 ら判 断 して受診 す る ことは少 な い 7)と

言 わ れ て い るので,大 学 の キ ャ ンバ ス内 には潜在的 な患者 が多数 み こまれ る。以上 の諸事実 を勘案 す る と, 大 学生 の対人恐怖 (あるいは思春期妄想症)に 占 め る自己臭恐怖 の臨床 的意義 は決 して小 さ くない といえ よ う。

ところで,筆 者 らが治療 に際 して 自己臭恐怖患 者 か ら受 け る印象 は,大 な り小 な り症例 6の それ に似 て い る。 つ ま り,彼 らは 自分 の嫌 な臭 いが周 囲 に ど う影響 を及 ぼ して い るか につ いて細心 の注 意 を払 って い ると訴 え る一方 で,少 な くと も治療 場面 で は ど こか ぬ けぬ け と した厚 か ま しさを発揮 す る こ とが あ る。 そ して, こ う した 自己臭恐怖 の 特性 は 「神経症 的過敏性 の高 い人 の ほ うが 自己視 線 を,低 い人 の ほ うが 自己臭 を恐怖 の主題 に選 び や す い」 とい う植 元 ら 12)の

精 神 病 理 学 的 な見 方 や,「 自己臭 恐 怖 で は治療 過程 で葛 藤 が顕 在 化 し に くい」 とい う精神療 法 の体験 に もとづ く宮 岡 ら 7)の 考 え に一 脈通 じる と ころが あ り,治 療者 の 自 己臭恐怖 に対 す る感情移入 の難 しさを示唆 す る も ので もあ る。

考   察

1 . 山 下 1 4 ) は , そ の著書 『 対人恐怖』に, 昭 和3 8

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対人恐怖症

年 か ら45年 ころ まで に北 大 病 院精 神科 神 経 科 で彼 自身 が診 療 した対 人 恐 怖 者 100人を と りあ げて い る。 そ して対人恐怖 の説 明 を ̀も

っと も身近 でわ か りやす い '赤

面 恐怖 か ら始 めて い る。 ちなみ に 彼 の分類 に したが うと,対 人恐怖 の なか で は 自己 臭恐怖が28例で一番多 く,つ いで赤面恐怖 (22例), 表 情 ・態 度 恐 怖 (18例),視 線 恐 怖 (15例)の 順 に な って い る。 さ らに,同 じ100症例 の 「訴 え」

を その ま ま拾 って数 にあ らわす と,赤 面43例,自 己臭33例,視 線30例,緊 張24例な どとな り,訴 え られ た症状 の頻度 で は赤面 が もっと も多 か った と い う。 と ころが,そ の後 の諸 家 の報告 はいず れ も 赤 面 恐 怖 の減 少 傾 向 を指 摘 す る。 丸 山 ら6)は 「戦 前 多 か った赤 面 恐怖 が減 少 し,視 線 恐怖 が漸 増 し て い る」 といい,近 藤 5)も 「対人恐怖 的訴 えの う ちで,そ の典型 的 な もの と考 え られて きた赤面恐 怖 が減 り,視 線恐怖 や表情恐怖 な どが増 えて きた」

と記 して い る。 そ う した傾 向 の背景 に社 会 的 ・文 化 的変容 が あ る ことは疑 い よ うが な いが,西 田 9)

はそれ を対人交 渉 の基 本 的 な態度 の変化 と して と らえ,「 周 囲 に対 す る恥 の意 識」 を反 映 す る赤 面 恐 怖 の減少 と 「周囲 に対 す るお びえ の意識」 を反 映 す る視 線恐 怖 の増加 と して説 明 を試 み て い る。

しか し,後 述 の よ うに表情 0態 度恐怖 や視線恐怖 と赤面恐怖 (山下著 『対 人恐怖』 の症例 4, 6, 9等 を参 照 14))は , ほ とん ど同一 の対 人 緊 張 を 病 態 の基 礎 と して お り,そ れが表面 的 に違 った形 を と って現 れ た もので あ る。 つ ま り, これ らの対 人恐怖者 はいずれ も ̀個 性 的 な面 を抑 えて 目立 た ず,平 均 的 に組織 にな じむ人 で いたい 'と

い う旧 態依然 と した 日本 の ム ラ社会 的心性 を共有 してお り, したが って両者 の間 にあ るの は,西 田の い う

「 対 人交 渉 の ̀基

本 的 な態度 の変化 '」

で はな く, せ いぜ い 「その ̀表

面 的 な態 度 の変 化 '」

にす ぎ な い と思 われ る。 さ らに付言 す るな ら,対 人恐怖 の類型 と しての視線恐怖 の患者 には 「(本人 に とっ て は不 本意 か も しれ な いが), 自 己が発 射 す る視 線 の強 さに他者 を萎縮 させ る威 力 が あ る」 ので あ り,そ の意 味 で 「自己視線 恐怖」 の ほ うが実態 を 正 確 に表現 す る呼称 で あ る。 その際,自 己視線恐

怖 はむ しろ 「周囲 をお びえ させ る意 識」 で あ って, そ うい う自己の攻撃性 が丸見 え にな るのを恐 れて い るので あ る。 したが って視線恐怖 が 「周 囲 に対 す るお びえ の意 識」 を反映 す るとい う西 田の考 え に は, この点 か らも同意 しが たい ものが あ る。

さて,セ ンターを訪 れ た学生 のなかで赤面恐怖 を主訴 とす る者 は皆無 で あ った。 この事実 はお そ ら く来訪者 が大学生 に限 られて い る ことと無 関係 で はないで あ ろ う。彼 らの多 くは,仲 間 との間 で は比較 的能 力 が高 く,深 刻 な挫折感 や屈辱感 を味 わ うことな く幼 児 ・学童 期 を過 ご してお り, 周 囲 に対 して も,受 動 的 な 「恥 の意識」 よ り も能動 的 な 「支配 の意識」 を多 く体験 して い る。 したが っ て仲 間 との対人 関係 にお いて生 じる神経症 的反応 の うちで,赤 面恐怖 は受動 的 な色合が濃 いだ けに, 症 状 の選択順位 が低 くな ったのか も しれ な い。 し か し,そ れ らはあ くまで も症状選択 とい う表層 的 な次元 で生起 した事象 に とどま る もので あ って, 上 述 の よ うに対人恐怖 の病 態 の基礎 はあ くまで も 同質 の対 人 緊 張 にあ る こ とはい うまで もな いで あ ろ う。

2 . 筆 者 らが対 人恐怖 の典型 と考 え る病 態 は,表 情 ・態度 恐怖 ( 8 例 ) ,   自己視線 恐怖 ( 6 例 ) ,   自

己音 恐怖 ( 1 例 ) , 醜 形 恐怖 ( 3 例 ) お よ び 自己 臭 恐 怖 ( 6 例 ) , 計 2 4 例で あ る。 そ の他 の 6 例 に つ いて は別稿 にゆず る と して, これ ら24例は次 の よ うな特徴 を もって い る。

( 1 ) 患 者 は, 自 分 に は身体 的 また は精 神 的 に深 刻 な欠 陥が あ ると思 う (妄想 的確信)。

( 2 ) そ の欠 陥が周囲 の人 び とを不快 にす るので, 患者 に罪悪感 が あ る ( 加害者意識) 。

G ) 不快 を感 じた周囲 の人 び との反応 を見て, ( 1 ) と(2)を 再 確 認 す る ( 関係 念慮) 。

に) 症状 の発現 が状況 に依存 して い る ( 状況依存 性) 。

( 5 ) 思 春 期 ない し青年 期 に発症 し, 長 期 にわ た っ て単一症候 的 に推移 す るが,人 格 の解体 がみ

られ な い。

笠原 4 ) は , 対 人恐怖 を 「他 人 と同席 す る場面 で,

(6)

不 当 に強 い不安 と精 神 的 緊張 が生 じ, そ の ため他 人 に軽 蔑 され るので はないか と案 じ, 対 人関係 か らで きるだ け身 を引 こ うとす る神 経 症 の一 型」 と して, そ れを下記の 4 群 ( ①〜④) に 分類 してい

る。

① 平均 者 の青 春 期 とい う発達段 階 に一 時的 にみ られ る もの。

② 純粋 な恐 怖症段 階 に とどま る もの。

③ 関係妄想 性 を は じめか ら帯 びて い る もの。

④前 分 裂 病 症状 な い し分 裂病 の回復 期 にお け る 後症状 と してみ られ る もの。

この うちの③ を,彼 は神経症水準 にあ る① や② と区別 す る意 味 で 「重 症対人恐怖」 と呼 んだ。 ほ ぼ 同 じ病 態 を,山 下 15)は

「対 人恐 怖 の定型 例 」 と言 い,植 元 ら 12)は

独 立 した一 臨 床 単 位 とみ な して 「 思春期妄想症」 とい う名称 を与 えて いるが, それ らは また筆者 らが対人恐怖 の典型 と して い る 病 態 と も合致 す る。 とはいえ これ ら諸 病 態 の間 に は微妙 な違 いが み られ るので,そ れ らの相違点 の うち臨床 的 に意義 のあ る ものを とりあげてみたい。

その二 は,一 般 に表情 ・態度恐怖者,自 己視線, 自己音, 自 己臭恐怖 者 で は他者 が近 くに いな い と 気分 が楽 にな る とい うが,醜 形 恐怖 者 はひ と りで い る ときで も気 が休 ま る ことが な く,い つ も身体 の異常 を悩 んで い る ことであ る。

表情 ・態度 恐怖 者 , 自 己視 線, 自 己音, 自 己臭 恐怖者 に は例外 な く, 自分 自身が露呈 す る欠陥 の ため に周 囲 の人 び とが不快 な反応 をす るのを見 て 自己の欠 陥 を確認 す る,つ ま り 「関係 念 慮,あ る い は関係妄想」 がみ とめ られ る。 これを筆者 らの 醜 形恐怖 3例 につ いて検証 す ると, 1例 に はま っ た く関係念慮 が な く,関 係念慮 のあ る 2例 につ い てみ て も,高 校 時代 に一過性 に関係念慮 が あ った もの 1例 (症例 4)と ,「 ク ラス ・コ ンパ の幹 事 を したが,参 加者 が少 なか ったの は自分 の容姿 が 威圧 的 なので女性 が集 ま らなか った ためか」 と関 与 した行事 の不首 尾 に関 して関係念 慮 が一 過性 に み られ た もの 1例 ,と い うのが その実態 で あ る。

したが って醜形恐怖者 には周 囲 の人 び との反応 に よ って 自己の欠陥 を確 か め る とい う他者依存 的 な

色彩 は薄 く, そ れだ け患者 の主体 的 な妄想 的確信 が強 い といえ そ うで あ るが,   この点 に関 して は, す で に青木 らD が 詳細 に報告 している。

彼 らは, 異 形 恐怖 ( 青木 らは,   この語 は, 患 者 が 自己の身体 的欠陥 に関 して平均 的他者 に比較 し て単 に醜 い とい うよ りも, 比 較 を絶 した世 に も稀 な る 「異形 の」者 と感 じて い る, と い う事態 を的 確 に表現 す ると考 えて い る) を 二 つ の類型 に分 け て い る。

1 群 : 身 体 の対象 的側面 の部分 的欠 陥 に妄想 的 に こだわ り,   これが単一 症状 と して持続 す るが,   これ に関す る関係妄想 を終始 欠

く群

2 群 : 身 体 的異形性 に他者 が注 目 し,忌 避妄想 が顕在化 す る群

この うち, 1群 を 「妄想様 固定観念群」 と呼 び, 思 春期妄想症 の辺縁 に位 置 す る病態 で あ ると して

い るが, 1群 の説 明部分 を 「関係妄想 を ほ とん ど 欠 く群 」 も含 む とい う解釈 が許 され るな らば, 筆 者 らの 3 症 例 は この群 に属 す る と思 う。

も う一 つ は, 加 害者 と して の罪悪感 (加害者意 識) に 関 す る問題 で あ る。加害者意識 は, 表 情 ・ 態度恐怖者 と自己視線恐怖者 にお いて強 く意識 さ れ るのが常 で あ る。彼 らは自己の こわば った不 自 然 な表情 0 態 度 あ るい は自己の異様 に強 い視線 が 周 囲 の人 び とに居心 地 の悪 い思 いや射 す くめ るよ うな威圧感 を与 えて い る ことに罪悪感 を もってお り,   したが って劣等感 と罪悪感 とい う二重 の悩 み を訴 え る ことが あ る。 もっと も, この二重 の悩 み は,治 療 の経過 中 に,「 結 局 は症 状 の表 と裏 の関 係 です ね」 とい う洞 察 が得 られ る場合 が多 いので あ るが ・・。一方,醜 形恐怖者 はほ とん ど加害者 意 識 を もたな いが, 彼 らには上述 の よ うに他者依 存 的 な色彩 は薄 いので, む しろそれが 当然 で あ ろ

う。

その点 自己臭恐怖者 の場合,そ の態度 は矛盾 に 満 ちて い る と言 わね ば な らな い。 自己臭恐怖 6 例 の うち, ̀自己が発 す る異 様 な臭 い ' を

自分 自身

で確か にか ぎと って い る者 はな く,彼 らは臭 いの

実 在 を確信 で きる最 大 の〜 ときに は唯一 の〜根拠

(7)

を他者 の言動 にお いて い る。 彼 らは ̀ 鼻

に手 を当 て た り鳴 ら した り,あ るいは咳払 いや くしゃみ を した り, 「 臭 い」 と言 った りす る周 囲 の人 た ち ' の一 挙手一投 足 に細心 の注意 を払 って 自分 の悪臭 発散 を確認 してお り,   したが って もっと も他者依 存性 の高 いず 群 で あ る。 しか し, 加 害者 意 識 は き わ めて希 薄 で あ るか, ま った く念頭 にないか の よ うで あ る。 患者 が平然 と して 「時間 が経過 して授 業 が終 わ りに近 づ くと, 皆 が ざわ ざわ して落 ちつ か な くな った りす るが, そ れ は自分 の悪臭 が部屋 の遠 くまで達 したか らだ」 と言 うのを聞 くと,精 神 分 裂病 の疑 いを抱 か ざ るをえ な い。 訴 え の内容 だ けか ら, この両者 の違 いを指摘 す る とすれ ば, 自己臭恐 怖 者 の妄想 に は被 害 的 な要 素 が な く, む しろ臭 いの源 が 自分 にあ るとい う 一 点があ るのみ で あ る。 山下 1 4 ) は , 対 人 恐 怖 の なか で 「( 自己臭 の グループが)精 神分裂病 との鑑別診 断 や境界例 を め ぐって, 最 も問題 の多 い症例群 で あ る」 と記 して い るが, 筆 者 らもほぼ同 じ考 えを もって い る。

3 . 筆 者 らが行 らて きた対 人恐怖 の治療 は,い わ ゆ る定式 的 な精神療法 で はな く,   と りたてて い う ほ ど特異 な療 法 で もな い。 ただ,通 常 の病状,病 歴 だ けで な く, 治 療 者 に対 す る忌 憚 の な い要望 や

対人恐怖症

批 半J など も3 ゝくめて患者 の ことば に耳 を傾 け, 患 者 が相 手 に理 解 され て い る とい う安 心 感 と信 頼感

を与 え る, と い った治療者 と して は ご く当 た り前 の基 本 的構 え 1 3 ) に 徹 しき る よ うに努 め て きた。

あえて言 えば それ に加 え, 次 の よ うな短 0 長 期 の 治 療戦 略 を ひそか に視 野 に いれて はい る。

① 短 期戦 略 : 対 人 恐怖 は, 症 状 の発 現 や増 悪 が 対 人 的状 況 に依 存 して い る。 したが って患者 は症 状 の状 況 依 存 の よ うす を観 察 す る こ とに よ って,

自身 の こころの深部 へ客観 的 な 目を向 け る ことが で きるよ うにな る。 た とえば, 症 例 3 ( A N ) は

「自分 の不快 な呼吸音 が周囲 の人 び とに感染 す る」

が,治 療者 に は 「感染 しな い」 と言 う。 この事実 は,ANが 治 療 者 との相 対 関係 にお け る 自己の弱 さを意識下 で認 めて い る ことの告 自で あ る。 治療 者 は,   この こ とを A N 自 身 が洞察 す る過 程 を支援 し,そ の過程 を通 じて治療 が促進 され るのを見守 る ことに した。 そ して, 面 接 を重 ね るにつ れ, 患 者 は確 実 に軽快 して い った。

② 長 期戦 略 : 多 くの患者 は幼小 児期 か らよ く行 き届 いた しつ けを受 けて い る。 そのせ いか患者 た ち は社 会 的 に過剰適 応 の状 態 にあ り,交 流分析 エ ゴグ ラムの AC得 点 は ほ とん ど例外 な く満点 に近 い 1 1 ) ( 図 1 参 照)。 た とえ ば,症 例 1(HK)は

1 8 1 6 1 4 1 2 1 0 8 6 4 2

C P       N P       A       F C       A C

図 1 症 例 1(HK)の エゴグラム ・パターン

(8)

「普 通 の人 の よ うに3ゝるまい た い。 普 通 の女 子学 生 にな りたい」 と言 うが, 同 時 に彼女 は 「普通 の 女 子学生 とい うもの は一緒 に旅 行 が で きて, 本 音 を打 ち明 け られ る友達 が 2, 3人 はい る人」 と主 張 して譲 らな い。 つ ま り彼女 の希求 してや まな い

̀ 普 通 '   と

い う もの は, 自 身 が定 義 す る窮 屈 な

̀ 普 通 ' な

の だが,彼 女 はそれ を普遍 的 な もの と 妄 信 し, そ れ に固執 す る結 果,   自縄 自縛 に陥 って い るので あ る。 したが って治療 の長 期 的戦 略 は, 彼 女 が 自分 を縛 って い る  ̀ 普 通 ' の

極 格 を発 見 す るよ うに援助 す る ことで あ る。 この ̀ 普

通 '   と い う極格 は,一 般 に,対 人恐怖者 の多 くにみ とめ ら れ,患 者 はそ う した固定観念 か らなか なか脱 しき れ な いのが常 で あ る。 しか し,治 療 を重 ね るにつ れ,症 状 は消失 しない まで も患者 に 自己実現 を指 向す る積極性 が生 まれ, 社 会性 の面 で も良 循環 が 形 成 され て ゆ くもので あ る。

文     献

1 ) 青 木 勝 , 大 磯 英 雄 , 村 上 靖 彦 ほ か : 異 形 恐 怖 D y s m o r p h o p h o b i e に つ い て 一青 年 期 に好 発 す る異 常 な確 信 的 体 験 ( 第 4 報 ) 一. 精 神 医 学 , 1 7 ; 1 2 6 7 ‑ 1275, 1975.

2)Brautigam,W.I Phobie.In:Lexikon der Psychiat―

rie, 2.Auflage, Gesanlllnelte Abhandlungen der ge―

brauchlichsten psychiatrischen Begriff(herg.Ch.

Muller),springer― Verlag,Berlin,Heidelberg,New York,London,TOkyo,P.520,1986.

3 ) 笠 原敏 彦 , 黒 河 泰 夫 , 林 下 忠 行 ほか : 「 自己の発

す る音 」 に悩 む症 例 につ い て. 臨 床 精 神 医学 , 1 4 ; 939‑945, 1985.

4 ) 笠 原 嘉 , 藤 縄 昭, 関 日英 雄 ほか : 正 視 恐 怖 ・体 臭 恐 怖 ―主 と して精 神 分 裂 病 との境 界 例 につ いて 一.

笠 原 嘉 ( 編) , 医 学 書 院 , 東 京 , 1 9 7 2 .

5 ) 近 藤 喬 一 : 対 人 恐 怖 の時代 的変 遷 一統 計 的観 察 . 臨 床 精 神 医学 , 9 ; 4 5 ‑ 5 3 , 1 9 8 0 .

6 ) 丸 山普 , 児 玉 和 宏 , 小 島忠 ほか : 対 人恐 怖 の時 代 的 変 遷 . 臨 床 精 神 医学 , 1 1 ; 8 2 針8 3 5 , 1 9 8 2 . 7 ) 宮 岡等 , 阿 部 裕 美 : 自 己臭 恐 怖 . 臨 床 精 神 医学 ,

19;877‑881, 1990.

8 ) 中 村 剛 , 西 村 優 紀 美 : 普 通 の女 の子 に な りた い。

「学 生 と健 康 」 所 収 , 南 江堂 , 東 京 , 1 9 9 8 .

9 ) 西 田博 文 : 青 年 期 神 経 症 の時代 的変 遷 ―心 因 と病 像 に関 して。 児 童 精 神 医学 とその近 接 領 域 , 1 2 ; 1 5 ‑ 21, 1970。

1 0 ) 高 橋 徹 : 対 人恐 怖 ―相 互 伝 達 の分 析 。 医学 書 院, 東 京 , 1 9 7 6 .

1 1 ) 東 京 大 学 医 学 部 心 療 内科 ( 編著 ) : 新 版   エ ゴ グ ラム ・パ ター ンー T E G ( 東 大 式 エ ゴ グ ラム) 第 2 版 に よ る性 格 分 析 ―. 金 子 書 房 , 東 京 , 1 9 9 5 . 1 2 ) 植 元 行 男 , 村 上靖 彦, 藤 田早 苗 ほか : 思 春 期 にお

け る異 常 な確 信 的 体 験 につ いて ( その I ) ― い わ ゆ る思 春 期 妄 想 症 につ いて ―. 児 童 精 神 医学 とそ の近 接 領 域 , 8 ; 1 5 5 1 6 7 , 1 9 6 7 .

1 3 ) 山 下 格 : 精 神 療 法 の基 本 的 考 え 方 . 諏 訪 ・三 宅 ( 編) : 乳 幼 児 の 発 達 と精 神 衛 生, 川 島書 店 , 東 京 , 1976.

14)山 下 格 :対 人 恐 怖 。 金 原 出版 ,東 京 ,1977.

15)山 下 格 :対 人 恐怖 の診 断 的位 置 づ け.臨 床 精 神 医

学 ,11;797‑804,1982.

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参照

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