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.開発目的
近年における地図のデジタル化によって,地図 の作成者と利用者の境界に大きな変化が生じてい る.従来の地図・空中写真などは紙を媒体にして 供給されてきたが, デジタル地図は CD やイン ターネットを媒体にして供給されている.このよ うなデータの中身は数値データに過ぎず,そのま までは地図として表示することができない.つま り,デジタル地図の利用者は目的に応じてデータ を加工し可視化することが求められる. 地図データを可視化するための GIS ソフトは 様々登場しているが,いくつかの問題点もある. 第 1 にソフトの価格である.高性能な GIS ソフ トには表示・解析機能があるが高価であるため, なかなか個人ユーザが購入することは難しい.第 2 にソフトの操作性である.GIS ソフトは専門的 知識が必要であり,また操作方法が複雑であるか ら,使いこなすまでに多くの時間が必要になる. しかし,無料または安価に購入できる GIS ソフト も多く存在する.たとえば,地理情報分析支援シ ステム:MANDARA1),山岳景観シミュレーショ ンソフト:カシミール 3D2),高性能地球儀ソフト:World Wind3),Google Earth4)などが挙げられ
る.これらのソフトは GIS の初心者から上級者ま で幅広く対応している.また, GIS ソフトを使わ ず,表計算ソフト Excel を使って数値地図を可視 化することもできる(天野,1997). ところで,数値地図には大きく分けてラスタ型 (メッシュ)とベクタ型(ポリゴン)のデータ フォーマットがある.これらのデータ処理のアル ゴリズムは数値地図の種類によって根本的に異な る. 本 稿 で 取 り 上 げる「 数 値 地 図 処 理 ソ フ ト Kmap5)」は筆者が開発した.自然地理学分野の地 図表現に適しているラスタ型データを中心に扱う ため,ベクタ型データには対応していない. 本ソフトにはラスタ型数値地図の処理システム に必要な 1)ファイル操作,2)統計処理,3)表示, 4)出力の各機能を有する.表 1 にそれぞれの機 能についての項目を列挙した.以下, Kmap の主 な機能について紹介したい.
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.機能説明
2. 1
ファイル操作2. 1. 1
フォーマット変換 ラスタ型数値地図の計量データの代表的なもの には DEM データ・ 気候値データがあり, 分類 データとして土地利用データ,植生データ,地質 データなどが挙げられる.これらデータは,あら かじめ定められた規則によってバイナリデータま たは ASCII コードが記述されている.しかし,記 述されているデータは作成機関によって異なる フォーマットを採用しているので,使用する際に はフォーマット変換が必要となる.たとえば,国 土地理院発行の「数値地図 50 m メッシュ(標高)」 はファイルヘッダ部分に 2 次メッシュコード, 測量を実施した西暦,区画隅の緯度・経度情報な どが記載され,そのレコード後半に標高値が格納 されている.また,気象庁発行の「レーダーアメ ダス解析雨量」も同様にファイル前半にデータのラスタ型数値地図処理ソフトの開発
森 田 圭
* キーワーズ:数値地図,ラスタ型,GIS,フリーソフト,Kmap *日本大学大学院理工学研究科地理学専攻後期課程日付,格子系定義などのファイルヘッダが格納さ れているが,解析雨量値を格納したレコード部分 はランレングス圧縮6)を用いて格納されているた め,データの展開が必要になる. これら様々なフォーマットを Kmap 上で読み込 めるラスタ型データ構造にするために,数値地図 ファイルのファイルヘッダ部分の情報を取り除 き,圧縮されたデータの展開などを行った上で, signed 16−bit( 2 byte )の 2 次元配列で数値デー タを再配列している(ファイルヘッダなし:バイ 表
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Kmap の処理機能項目 1.ファイル操作 1 − 1.データの互換性 フォーマット変換 [ASCII コードをラスタ型に変換] バイナリ変換 [上位・下位バイトを変換] 1 − 2.地図編集 切り出し [大きなファイルから必要部分を切り出す] データ修正 [指定点の値を変更] メタデータ編集 [ファイルの基本データ編集] 1 − 3.格子間隔の変更 計量データの場合 [調和収束計算法で内挿] 分類データの場合 [最近隣法で内挿] 2.統計処理 2 − 1.局所処理 (近傍 4 点または 8 点) 微分処理 [勾配,方位,ラプラシアン,陰影の計算] 窓処理 [平滑化,接峰(谷)面などの計算] 2 − 2.大局処理 (全体領域) 基本統計 [ヒストグラム,平均,分散などの計算] 3.表示 3 − 1.ディスプレイ スクロール表示 [表示範囲を超える部分を移動表示] 拡大縮小表示 [任意の大きさで表示] シュードカラー [指定した採色による表示] 点滅表示 [特定の凡例を点滅表示] 断面図表示 [指定する線に沿う値の図示] 位置および値の表示 [指定する点の位置と値を表示] 3 − 2.投影変換 鳥瞰図 [ 3 次元投影を図示] オルソ補正 [地上から撮影したカメラ画像の簡易的なオルソ補正] 4.出力 バイナリファイル [singed 16 − bit で保存] テキストファイル [カンマ区切りで保存] 画像ファイル [BMP,PNG などで保存] プリンタ [カラーまたはモノクロで印刷] 注:野上,1985,1991a から引用.ナリ形式).
表 2 は Kmap で 2 次元配列に変換し,表示する ことができる数値地図の一覧である.また,表 2 で挙げた数値地図を可視化したものを図 1 に示 す.なお,singed 8−bit( 1byte )・16−bit データに 変換したものは, そのまま表示することができ る.
2. 1. 2
バイナリ変換 16−bit 以上のバイナリ形式ファイルは計算され たコンピュータのアーキテクチャ7)に依存するた め,2 つの種類が存在する.Intel 系の CPU はリト ルエンディアン(little endian)8)で記録し,Motor-ola系の CPU はビッグエンディアン(big endian)9)
で記録する.そのため,上位バイトと下位バイト の値が入れ替わる.Intel 系とは主に Windows シ リ ー ズ の OS を 搭 載 した コ ン ピ ュ ー タ であり, Motorola系は主に Macintosh・Solaris シリーズの OSを 搭 載 した コ ン ピ ュ ー タ である. しかし, Macintosh・Solaris シリーズのコンピュータでも 一部 Intel 系の CPU が搭載されおり,記録形式が リトルエンディアンとなるので注意が必要であ る.たとえば, NASA から公開されている SRTM (Shuttle Radar Topography Mission)10)はビッグエ
ンディアンで作成されているので, Windows シ リーズでそのまま表示すると正確に表示されな い.このような場合はビッグエンディアンからリ トルエンディアンに変換しなければならない. Kmapは Windows シリーズを対象に開発してい るため,ビッグエンディアンで作成された数値地 表
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Kmap 対応数値地図 ラスタ型数値地図(データ名) 作成機関 入手先/媒体 フォーマット 数値地図 250 m メッシュ(標高) 数値地図 50 m メッシュ(標高) 数値地図 10 m メッシュ(火山標高) 数値地図 5 m メッシュ(標高) 国土地理院 (財)日本地図センター/ CD ASCIIコード 細密数値情報(10 m メッシュ土地利用) 国土地理院 (財)日本地図センター/ CD ASCIIコード 全国植生指標データ 国土地理院 国土環境モニタリング/ DLhttp : // www1. gsi. go. jp / geowww / EODAS / バイナリ 指定地域,森林・国公有地,沿岸海域, 波向・海霧・自然漁場,自然地形, 気候値,土地利用,道路密度・道路延長, 商業統計,工業統計,農業センサス, 湖沼,流路延長,流域・非集水域 国土交通省 国土数値情報/ DL
http : // nlftp. mlit. go. jp / ksj / ASCIIコード
メッシュ気候値 2000 気象庁 (財)気象業務支援センター/CD ASCIIコード レーダーアメダス解析雨量 気象庁 (財)気象業務支援センター/CD ASCIIコード
100万分の 1 日本地質図第 3 版 産業技術
総合研究所 地質調査総合センター/CD ASCIIコード
自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査) 環境省 環境省生物多様性センター/DL
http : // www. biodic. go. jp/dload / mesh_vg. html ASCIIコード
SRTM− 3,SRTM − 30 NASA NASA SRTM project/DL
ftp : // e0srp01u. ecs. nasa. gov バイナリ
ETOPO− 2・ETOPO − 5 NOAA National Geophysical Data Center/DL
http : // www. ngdc. noaa. gov/mgg / global / バイナリ
注:CD:販売店から CD − ROM を購入,DL:インターネットからダウンロード 数値地図 250m メッシュ(標高)には, 1 km メッシュ(標高)も収録されている.
図
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Kmap で表示できる数値地図の例 a)数値地図 5 m メッシュ(国土地理院),b )レーダーアメダス解析雨量(気象庁),c )細密数値情報(国土地理院), d)自然環境保全基礎調査(環境省)を用いて作成. a)標高段彩図(東京都区部) b)レーダーアメダス解析雨量図 c)土地利用図(東京都区部) d)植生図図はリトルエンディアンにバイナリ変換してから 表示することができる.
2. 1. 3
格子間隔の変更 ラスタ型数値地図の格子間隔を変更することは 処理システムの中で重要な操作である.格子間隔 の変更は既知の格子点から新しい格子点に値を補 間することである.なお,計量データと分類デー タでは補間方法が異なる.計量データの場合は 1 次平面補間,スプライン補間,調和収束計算法 (野上,1991 b)などさまざまな方法がある.これ らの方法は周囲の既知の格子点から数式を用いて 値を推定し,補間する.一方,分類データの場合 は新しい格子点から距離が近い既知の格子点の値 を当てはめる方法(最近隣法)が一般的である. Kmapにおける格子間隔の変更方法は計量デー タについては調和収束計算法,分類データについ ては最近隣法を採用した.2. 2
統計処理2. 2. 1
微分処理 DEMデータの微分処理によって勾配( Slope ), 斜面方位( Aspect ),ラプラシアン( Laplacian ),陰 影( Relief shading )の 4 種類が作成できる.図 2 は 50 m−DEM から作成した乗鞍岳の地形特性を 示したものである. 微分処理は標高値と格子間隔から計算するた め,注意しなければならないことは日本の多くの 数値地図は国が定める標準地域メッシュ(1973 年 7月 12 日 行政管理庁告示第 143 号)を採用してい る点である.この標準地域メッシュは緯度・経度 法であり,緯度によって経線間隔は変化する.た とえば,50 m−DEM では南北方向に 1.5 秒,東西方 向に 2.25 秒で区切られている.熊本では南北方向 ωy= 46.19 m, 東西方向ωx= 58.53 mであり, 札幌 では南北方向ωy= 46.26 m,東西方向ωx= 50.90 m になる(日本地図センター編, 1998 より算出). したがって,微分処理を行う場合は緯度による 東西方向の格子間隔(ωx)を補正する必要があ る.50 m−DEM の緯度補正は, ωx=69.6643cos(φ) で補正できる(野上,1999 ).ここで φ は緯度,ωx は東西方向の格子間隔である.なお,この補正式 は近似的に地球を球体とみなしている. a)勾配(S) 勾 配( 角 度 ) を 求 める ア ル ゴ リ ズ ム は 野 上 (1986, 1995, 1999)を参考に算出した.DEM を 2 次元配列(m行 n列)に収納し,注目する格子 点(m, n)の標高を h(m, n)としたとき,勾配 の大きさS(m,n)は, で求められる.ここでωxは東西方向の格子間隔, ωyは南北方向の格子間隔である. b)斜面方位(A) 斜面方位(北を 0 として時計回りの角度)は野 上・杉浦( 1986 )の方法を参考に算出した.斜面 方位A(m,n)は, で求められる.ただし,h(m+1,n)− h(m,n) がプラスのときはθ= 90 を, マイナスのときは θ= 270 を代入する.また,h(m+1,n)− h(m, n)が 0 で, h(m, n+1)− h(m, n)が 0 のとき は平坦地としてA(m, n)=361,プラスのとき はA(m, n)=0,マイナスのときは A(m, n) =180とする.図
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Kmap で作成した乗鞍岳周辺の地形特性 数値地図 50m メッシュ(国土地理院)を用いて作成. a)勾配(Slope) b)斜面方位(Aspect) c)ラプラシアン(Laplacian) d)陰影(Relief shading)c)ラプラシアン(L) ラプラシアン(勾配の変化率)は標高の二次微 分である.画像解析で用いられる技法であるが, DEMデータを用いる場合は地形の凹凸程度を表 す指標となる.計算には野上(1995, 1999)の方 法を用いた.ラプラシアンL(m,n)は, で求められる.計算結果の値が 0 のときは直線 斜面を,プラスは凹型斜面を,マイナスは凸型斜 面を表わす.また,絶対値が大きくなるほど地形 の起伏は大きくなる. d)陰影(R) 地形の起伏を立体的に表現する方法として田中 ( 1939 a,1939 b )が考案した彫塑的水平曲線地図 法が有名ある.これは太陽光線が北西 45 度の高 度の方向から照射し,斜面に陰影をつけ,地形を 立体的表現する方法である.この方法を応用した 国土地理院発行の 20 万分の 1 地勢図は直照法(太 陽光線が水平面に対し垂直の方向から照射すると 仮定した受光量)と斜照法(太陽光線が北西 45 度 の高度の方向から照射すると仮定した受光量)を ミックスさせて地形の起伏を表現している(大 竹,2002). Kmapでは地形面の法線ベクトルと太陽光線の ベクトルのなす余弦から輝度を求め,陰影図を作 成した.輝度R(m,n)は, で求められる.ここでαは太陽高度,βは太陽方 位である.
2. 2. 2
窓処理 窓処理とは 2 n+1 × 2 n+1( n= 奇数)の大きさ の窓を設定し,その中に含まれる格子点の値を統 計量で記述する処理である.窓の大きさは対称性 を保つため,奇数の大きさの正方形とする. DEMデータにおいて,統計量が平均値の場合 は平滑化された地形,最大値は接峰面,最小値は 接谷面を表している. Kmapでは窓の移動を重複する場合と重複しな い場合の 2 つから選択できる.窓の移動が重複 する場合は 1 ピクセルずつ移動し,処理前の地図 と同じ大きさの地図を作成する.窓の移動が重複 しない場合は設定したピクセルごとに移動するた め, 作成する地図は処理前の地図より小さくな る.たとえば, 50 m−DEM を 5 × 5 の大きさで窓 処理を行うと, 250 m−DEM と同じ解像度の地図 が作成される.また,指定した窓のピクセル数の 半分以上が海であった場合は海コードを代入し, 半分以下ならばその統計量を代入する.2. 2. 3
基本統計 基本統計では窓処理(局所処理)とは異なり, 地図全域についての統計量(平均,分散,標準偏 差,最大,最小,ヒストグラム)を記述する.ヒ ストグラムは,図 3 のように凡例区分(最大 25 区分)のピクセル総数をグラフおよびテキスト ファイルとして出力できる.2. 3
表示2. 3. 1
ディスプレイ ラスタ型数値地図において,快適に操作・表示 するためには CPU・メモリ・ハードディスクと いったハードウェアの能力が大きく影響する.し かし,近年のコンピュータ機能の技術革新によっ て,これらの制約は小さくなっている. Kmapは開発言語の制限のため,一度にディス プレイに表示できる地図の大きさは 3,000 × 3,000 ピクセルまでとなっており,それ以上の大きい場 合は移動するたびにファイルにアクセスして表示図
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ヒストグラム表示画面 数値地図 1 km メッシュ(国土地理院)を用いてヒストグラムを作成. 図4
鳥瞰図作成の概念図 図5
乗鞍岳を望む鳥瞰図 10 m− DEM(北海道地図 KK)とランドサット画像を用い て作成. する.このとき,ディスプレイに写らない所はマ ウスによってスクロール表示できる.また,地図 を詳細に把握するために拡大・縮小機能を搭載し た. 凡例においては最大 25 のしきい値を任意設定 でき,採色についても 1,670 万以上色から任意設 定できる.また,特定の凡例を選択すると画面上 の地図が点滅する機能も搭載した.2. 3. 2
投影変換 Kmapでは鳥瞰図の作成および地上カメラ画像 のオルソ補正といった投影変換が可能である.鳥瞰図は視点の位置・高度・方位などの撮影情報を 入力することで作成できる.作成アルゴリズムに はコンピュータグラフィックでよく用いられる光 線追跡法を採用した.図 4 のように,視点から 投 影 面 の 各 画 素 ご と に 向 か う 光 線 を 地 形 面 ( DEM )の値と比較しながら,最初に地形面と光 線 が 交 わる 点 を 追 跡 する 方 法 である. さらに DEMと同じ大きさの数値地図(たとえば,空中 写真・土地利用図など)を貼り付けることで,地 図データをコンピュータ上で立体的に可視化する ことができる(図 5 ).
2. 4
出力機能 表示した数値地図は画像またはデータとして出 力することができる.画像は BMP, PNG, JPG, RAW11)形式の 4 種類である.出力した画像は汎 用の画像処理ソフトで加工でき,掲示用地図の背 景図として最適である. データは signed 16−bit(ヘッダなし:バイナリ 形式) とテキスト形式( Excel で読込み可能な フォーマット)で保存できる.よって, ERDAS IMAGINE(LGGM 社), ENVI(Research Systems 社), ArcGIS( ESRI 社)などといったリモートセ ンシング解析ソフトや GIS ソフトに取り込み,ベ クタ型データと重ね合わせて解析することも可能 である.3
.まとめ
本稿ではラスタ型数値地図処理ソフトである Kmapの主な機能について説明した.本ソフトの 特徴は多くのラスタ型数値地図に対応しており, その地図データをバイナリファイルとして出力で きる点にある.つまり,数値地図を GIS ソフトで 読込めるように変換するツールの役割も果たして いる.市販ソフトにも変換ツールは存在するが, 高価であるのが難点である.また,個人ユーザが 数値地図を使用するたびに変換プログラムを作成 していては膨大な時間がかかってしまう.このよ うな現状を踏まえると, Kmap の開発意義を提示 できる. 本ソフトは扱うデータがラスタ型であるため, ベクタ型の処理に比べて処理プログラムが単純で あり,出力データを 2 次元配列で格納するので 自作プログラムで簡単に処理できる.現在では, 日本大学地理学教室野上研究室の学生が修士論 文,卒業論文で使用している.佐々木( 2006 )は アメダス雨量計より空間分解能が高いレーダーア メダス解析雨量データを用いて里雪,山雪の降水 分布の検出を行った.また,鈴木(2006)は大型 哺乳類動物の生息分布と環境要因との関係を検 討し,生息条件として関わり深い環境要因は積 雪であることを定量的に明らかにした.さらに, 瀧沢( 2006 )は乗鞍岳で定点撮影をしているライ ブカメラ画像と気温,標高データからしている落 葉広葉樹林の植物季節の推移を分析し,新緑前線 は 1 日つき約 35 m 上昇すると報告している.こ れらの研究例では本ソフトを用いて数値地図を変 換し,目的に合ったプログラムを作成して処理を 行っている.このように自作プログラムであれば 既存ソフトにはない,きめの細かい処理も可能で あるため, C 言語や Visual BASIC などの開発言語 を学習することが望まれる.現在,無料コンパイ ラの登場などによってプログラムを作成する環境 は整っている.また,アルゴリズムについても, 多くの蓄積のある画像処理のアルゴリズムをその まま利用することができる. 今後,デジタル地図の需要が高まるにつれ,地 図データを処理する力や地図を読む力が必要に なってくる. つまり, 利用者のアイディア次第 で,新しい地図が作成できるのである.Kmap が その一役を担うことができれば幸いである. 謝辞 本ソフトを作成するにあたり、ご懇篤なご指導とご 高配を賜りました野上道男教授に厚く御礼申し上げま す。 (2007 年 1 月 31 日投稿) (2007 年 5 月 30 日受理)1)http: // www 5c. biglobe. ne. jp /~
mandara /から ダ ウ ンロードできる.
2)http : // www. kashmir 3d. com / からダウンロードが できる.
3)http : // worldwind. arc. nasa. gov/ からダウンロードで きる.別途,Microsoft . NET Framework と DirectX のランタイムが必要となる.これらは http : // www. microsoft. com / japan / windows /から無料でダウン ロードできる.
4)http : // earth. google. co. jp /からダウンロードできる. 5)http : // st. lapgis. chs. nihon−u. ac. jp / kei / からダウン
ロ ー ド できる. 動 作 環 境 は OS:Windows Me / 2000 / XP / Vista,CPU:Intel Celeron 800 MHz 以上, メモリ:128 MB 以上,ハードディスク:50 MB 以 上の空き容量以上,ディスプレイ:1,024 × 768 以 上 32 bit を推奨し,マウス:本体に接続可能で上記 OSに対応したものと VB6. 0 のランタイムが必要 となる. 開発言語は Microsoft Visual BASIC 6. 0 (SP6)を使用した. 6)連続するデータをあらかじめ定められた符号に置 き換え,データ量を圧縮するアルゴリズムの一つ. 7)従来は建築学において設計や建築様式のことを表 していたが, コンピュータ用語ではハードウェ ア,OS などの基本設計や設計思想に用いられる. 8)マルチバイトの数値をメモリ中へ格納する場合の 方法.たとえば, 0123 h という値をメモリ内に格 納するとき, 23 h を 1Byte 目に 01 h を 2 Byte 目に 格納する方法(相磯,2001). 9)バイナリデータの転送や格納を行うときの順番規 約.最上位のバイトから順番に送信や記録を行う 方式.反対に最下位のバイトから順番に送信や記 録を行う方式をリトルエンディアンという(相 磯,2001). 10)スペースシャトルに搭載したレーダを用いて,地 球の立体地形図を作成するミッション. 11)非圧縮かつ画像の縦横のピクセル数や画像フォー マットを定義するヘッダを持たず,各ピクセルの 色情報だけを並べて記録した画像データ形式の ファイル. 相磯秀夫監修(2001)『情報技術用語大辞典』オーム社. 天野亮介( 1997 )表計算ソフト Excel を用いた数値地 図作成及び各種主題図作成の試み. 地理誌叢, 39(2),49−58. 大竹一彦( 2002 )『新版 2 万 5000 分の 1 地図 デジタ ル化時代の地図』古今書院. 佐々木洋一( 2007 )レーダーアメダス解析雨量データ から検出される里雪・ 山雪時の降水分布. 平成 18年度日本大学大学院理工学研究科地理学専攻 修士論文(未公開). 鈴木菜美恵( 2007 )大型哺乳類の分布と積雪の関係, 及びそれに関する地球温暖化の影響.平成 18 年 度日本大学文理学部地理学科卒業論文(未公開). 瀧沢佳奈枝( 2007 )乗鞍岳における落葉樹林の植物季 節の推移.平成 18 年度日本大学文理学部地理学 科卒業論文(未公開). 田中吉郎( 1939 a )彫塑的水平曲線地図法の理論と描 き方.地理学評論,15,655−671. 田中吉郎( 1939 b )彫塑的水平曲線地図法の理論と描 き方(2).地理学評論,15,784−797. 日本地図センター編( 1998 )『数値地図ユーザーズガ イド(補訂第 2 版)』日本地図センター. 野上道男(1985)数値地形分析のための処理システム. 地形,6,245−264. 野上道男・杉浦芳夫( 1986 )『パソコンによる数理地 理学演習』古今書院. 野上道男( 1991a )地理情報とくにラスタ型数値地図 利用の高度化.情報地質,2,331−339. 野上道男( 1991b )等高線地図から DEM を作成する一 方法.地図,29(3),20−26. 野上道男( 1995 ) 細密 DEM の紹介と流域地形計測. 地理学評論,68,465−474. 野上道男( 1999 )50 m−DEM による地形計測値と地質 の関係.地理学評論,72,23−29. 注 参考文献
Kei MORITA* : Development of Raster-type Digital Map Processing Software
Key words : Digital Map, Raster-type, GIS, Free software, Kmap