1 大阪府立大学人間社会学部人間科学科森岡研究室レポート 2012年度 http://www.lifestudies.org/jp/univ/report.htm
ゆとり教育の影響について
:「ゆとり世代」は悪いのか?
三木直子
はじめに 「ゆとり」という言葉は誰でも一回は言ったり聞いたりしたことがあると思います。私 は大学のサークルの活動の中で、後輩と関わったときに「ゆとりだねー」という言葉を友 達と使うことがありました。その時はあまり深く考えず、行動力がないとか先輩に対して の敬意があまりないと感じた時に何となく使っていました。年下に向けて使うことが多く、 自分の中では「ゆとり」という言葉は悪いイメージでした。ゆとり世代が就職し始め、ゆ とり教育やゆとり世代について多くの意見がある中で、社会やゆとり世代自身から「ゆと り」はどのように思われているのだろうと思い、「ゆとり」について調べることにしました。 社会からどのように思われているかはインターネットや書籍を参考に、ゆとり世代の意見 は、10 人のゆとり世代の人に記述および口頭のアンケートを行ったものをまとめました。 また、このレポートの構成は以下の通りです。 はじめに 第一章 「ゆとり教育」「ゆとり世代」の定義 第二章 社会から考えられている「ゆとり世代」の特徴 第三章 「ゆとり世代」に行ったアンケートの結果・考察 第四章 まとめ 1 「ゆとり教育」「ゆとり世代」の定義 ゆとり教育とは、知識量を重視した従来の教育方針を詰め込み教育であるとして、学習 時間と内容を減らし、経験を重視した教育方針のもとで、ゆとりのある学校をめざした教 育のことです。文部科学省による学習指導要領の改訂が何度か行われたことと、その指導 要領が小学校、中学校、高等学校によって改訂された回数や施行された年が異なることか ら、ゆとり教育がいつ始まったかは人によって意見が異なるため、はっきりと定義するこ とは困難です。小学校と中学校の学習指導要領の改訂は、昭和22 年に初めて学習指導要領 が編集、刊行されて以来、昭和26 年、33 年、43 年、52 年、平成元年、10 年、20 年と72 回にわたって改訂されてきました1。高等学校は上記の改訂に昭和31 年から施行されたもの を加えた8 回の改訂がおこなわれてきました。 昭和43 年の改訂後、高等学校への進学率が 90 パーセントを超えるようになり、この状 況にどのように対応するか、また学校教育が知識の伝達に偏る傾向があるということが課 題になっていました。そこで、自ら考え正しく判断できる児童生徒の育成ということを重 視する必要があるとしました。そして、昭和52 年7月 23 日に学校教育法施行規則の一部 を改正し、同時に小学校学習指導要領を全面的に改訂し、昭和55 年4月から施行しました。 この改訂においては次のような方針により改善がおこなわれました。 ① 道徳教育や体育を一層重視し,知・徳・体の調和のとれた人間性豊かな児童生徒の育 成を図ることとしたこと。 豊かな人間性を育てる上で必要な資質や徳性を児童の発達の段階に応じて十分身に 付けるようにするため,各教科等の目標の設定や指導内容の構成に当たって,これら の資質や徳性の涵養に特に配慮した。 ② 各教科の基礎的・基本的事項を確実に身に付けられるように教育内容を精選し,創造 的な能力の育成を図ることとしたこと。 ③ ゆとりのある充実した学校生活を実現するため,各教科の標準授業時数を削減し,地 域や学校の実態に即して授業時数の運用に創意工夫を加えることができるようにした こと。 ゆとりのあるしかも充実した学校生活を実現するため,各教科の指導内容を精選す るとともに,学校教育法施行規則の一部を改正し,第4学年では週当たり2単位時間, 第5,6学年では4単位時間の標準授業時数の削減が行われた。このことによって, 学校の教育活動にゆとりがもてるようにするとともに,地域や学校の実態に応じ創意 を生かした教育活動が展開できるようにした。 ④ 学習指導要領に定める各教科等の目標,内容を中核的事項にとどめ,教師の自発的な 創意工夫を加えた学習指導が十分展開できるようにしたこと。 (引用-文部科学省ホームページ PDF 資料2) この頃から「ゆとり」という言葉が使われるようになり、知識よりも人間性を育てること を重視する傾向が強くなり始めました。道徳に力を入れるようになったのもこの学習指導 要領からです。また「ゆとり」のある学校生活にするために、授業数や内容が削減され始 めました。しかし、このときはまだ本格的にはゆとり教育が始まったとは言えません。 次の平成元年に行われた改訂では、生涯学習の基盤を培うという観点に立って、21 世紀 の社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成を図ることを基本的なねらいとして、 1 文部科学省ホームページ PDF 資料「学習指導要領等の改訂の経過」1項。 2「学習指導要領等の改訂の経過」6-7項
3 次のような方針が立てられました。 ① 教育活動全体を通じて,児童の発達の段階や各教科等の特性に応じ,豊かな心をもち, たくましく生きる人間の育成を図ること。 これからの社会において自主的,自律的に生きる力を育てるため,道徳を中心にし て各教科や特別活動においても,それぞれの特質に応じて,内容や指導方法の改善を 図ることに配慮した。 ② 国民として必要とされる基礎的・基本的な内容を重視し,個性を生かす教育を充実す るとともに,幼稚園教育や中学校教育との関連を緊密にして各教科等の内容の一貫性 を図ること。 ③ 社会の変化に主体的に対応できる能力の育成や創造性の基礎を培うことを重視する とともに,自ら学ぶ意欲を高めるようにすること。 各教科の内容については,これからの社会の変化に主体的に対応できるよう,思考 力,判断力,表現力等の能力の育成を重視することとした。また,生涯学習の基礎を 培う観点から,学ぶことの楽しさや成就感を体得させ自ら学ぶ意欲を育てるため体験 的な学習や問題解決的な学習を重視して各教科の内容の改善を行った。 ④ 我が国の文化と伝統を尊重する態度の育成を重視するとともに,世界の文化や歴史に ついての理解を深め,国際社会に生きる日本人としての資質を養うこと。 (引用-文部科学省ホームページ PDF 資料3) この改訂ではさらに内面の充実を図るような記述が多くみられるようになりました。ま た、「ゆとり教育」のキーワードでもある「自主的」「生きる力」という言葉も出てきてい ます。知識を充実させるような記述はなく、あくまでもゆとりのある学校生活、自主性の ある生徒の育成、内面の充実を図るような記述が見られるのもゆとり教育の特徴であり、 この指導要領からゆとり教育が浸透してきたように思います。 そして平成10 年に改訂された学習指導要領において、文部科学省は、「21 世紀を展望し、 我が国の教育について、[ゆとり]の中で[生きる力]をはぐくむことを重視することを提言 した。[生きる力]について、同答申は「いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、 自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力」、「自 らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性」、 そして、「たくましく生きるための健康や体力」を重要な要素として挙げた。また、同答申 は[ゆとり]の中で[生きる力]をはぐくむ観点から、完全学校週5日制の導入を提言す るとともに、そのねらいを実現するためには、教育内容の厳選が是非とも必要である」4と しています。また、「各学校が、地域や学校、児童の実態等に応じて横断的・総合的な学習 3 「学習指導要領等の改訂の経過」8-9項。 4 文部科学省ホームページ PDF 資料「学習指導要領等の改訂の経過」9-10項。
4 や児童の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動を行う時間として、 第3学年以上の各学年に「総合的な学習の時間」を創設したこと」5、学習時間を「完全学 校週5日制が実施されることに伴う土曜日分を縮減した時数とし」6、授業時間を大幅に削 減したことが大きな改正点です。ゆとりの中で特色のある教育をおこない、児童生徒に豊 かな人間性や個性を生かし、自ら学び自ら考える力などの「生きる力」を培うことをねら いとして、次の方針が立てられました。 ① 豊かな人間性や社会性,国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること。児童 の人間としての調和のとれた育成とともに国際社会の中で日本人としての自覚をもち主 体的に生きていく上で必要な資質や能力の基礎を培う観点から,社会や体育,道徳,特 別活動等において,それぞれの特質に応じて,内容や指導方法の改善を図ることに配慮 した。 ② 自ら学び,自ら考える力を育成すること。 ③ ゆとりのある教育活動を展開する中で,基礎・基本の確実な定着を図り,個性を生か す教育を充実すること。 ④ 各学校が創意工夫を生かし特色ある教育,特色ある学校づくりを進めること。 (引用-文部科学省ホームページ PDF 資料7) このように、ゆとり教育は「ゆとりのある学校生活」、「自主性」、「個性」、「総合的な学 習」、「生きる力」などのキーワードをもって実施されてきました。先ほども述べたように 「ゆとり」という言葉が登場したのは昭和 52 年の改訂後ですが、「ゆとり教育」という名 の下に本格的に教育が変わっていったのは、平成 10 年に学習指導要領が改訂されたころ、 つまり、この学習指導要領が施行され始めたころ(小中学校は平成14 年(2002 年)度、 高等学校は平成15 年(2003 年)度)だと考えられます。よって、「ゆとり教育」の実質的 な開始も平成14 年前後からと言われています。このレポートにおいては、この高等学校で 平成15 年(2003 年)度から施行された学習指導要領を三年間以上受けた昭和 62 年(1987 年)生まれ以降の世代を「ゆとり世代」とします。 2 社会から考えられている「ゆとり世代」の特徴 現在、ゆとり世代が就職して社会に出始めています。会社向けの新人社員育成の本には 「ゆとり社員」として取り上げられ、今までの新人社員の育成法では通用しないことが書 かれています。毎年新人社員を育ててきた上司にはあまりにも理解できない行動、発言を 5 文部科学省ホームページ PDF 資料「学習指導要領等の改訂の経過」10項。 6 文部科学省ホームページ PDF 資料「学習指導要領等の改訂の経過」10項。 7 「学習指導要領等の改訂の経過」11項。
5 するゆとり社員は「モンスター」とまで呼ばれることもあるようです。また、インターネ ットでもゆとり世代について多くの意見が見られます。このようにゆとり教育を受けてき た私達は社会からはひとつの「世代」として捉えられ、いくつかの特徴があげられるよう になってきています。 池谷聡の「職場を悩ます ゆとり社員の処方せん」8(2008)にあげられているゆとり社 員の特徴としては、「オフィスにかかってきた電話をとらない」、「上司との酒をきっぱり断 る」、「仕事の抱負は「転職できるスキル」を磨くこと」、「「受験」も「就活」も苦労知らず でめげやすい」、「何でも教えてくれる「グーグル」が先生」、「言われたことしかやらない、 できない」、「成長できないと感じるとすぐ辞める」などがあげられています。日経ビジネ スの連載記事「ゆとり世代との付き合い方」9では、「失敗を極端に恐れ、間違いのない答え を求める」、「自分から動き出せない」、「まじめで、言われたことはきちんとやる」、「ある 一面では非常に優秀な能力を持っている」といった特徴が述べられています。またゆとり 世代について、同記事の最後には次のように書かれています。 神経質であり大ざっぱ、消極的であり積極的。つかみどころのない若者たちを我々 はバランスが悪いと思いがちです。私たちが当たり前と感じている「暗黙知」と彼 らのそれでは圧倒的な違いがあるからです。 ―中略― 私たちからすると恐ろしいくらいの「未熟さ」と「優秀さ」を併せ持つアンバラン スな「ゆとり世代」。彼らと付き合うには、いったんは「異文化の人たちと関係を作 る」という位置づけでとらえてみる必要がありそうです。 (引用-日経ビジネス連載記事「ゆとり世代との付き合い方」10) 橋本尚美の「「ゆとり社員」との付き合い術」11(2009)では「すいません」の一言が言 えない、やりたい仕事はやりたくない、覇気や粘るとを知らずどこか冷めている、全体へ の投げかけに応えられない、また逆に優秀すぎて扱いにくい、人の話を聞かずに自分の意 見ばかりを通そうとする、といった新人社員の様子があげられています。同書の冒頭では、 ゆとり教育が「自分らしさ」に焦点を当てた結果生まれたのが、「無邪気と鈍感が同居する ゆとり系部下」12であるとしています。そしてその「ゆとり系部下」に対して、他人の言動 8 「職場を悩ます ゆとり社員の処方せん」18-55項。 9 「ゆとり世代との付き合い方-[1]ゆとり世代がやってくる」3項目。 10 「ゆとり世代との付き合い方-[1]ゆとり世代がやってくる」3項目。 11 「「ゆとり社員」との付き合い術 ジェネレーションギャップに悩むリーダーの処方箋」 14-28項。 12 「「ゆとり社員」との付き合い術 ジェネレーションギャップに悩むリーダーの処方箋」 5 項 。
6 に敏感なわりには配慮に欠ける、根拠もないのに自分の可能性を信じ込む、注されると自 分を否定されたと騒ぐ、反省にはたどり着けない、集団よりも個人という価値観が強いな どの印象を持ったと言います。 インターネットでも様々な意見が述べられています。WEB インソースでは「他者視点が育 っていない」、「深く考える習慣が育っていない」、「楽して、きれいに成果を上げたい」、「チ ャレンジする「心」が育っていない」、「年長者と話そうという意識が育っていない」とい った五つの特徴があげられています。また「無断早退や無断欠席する」、「失敗を極端に恐 れ、間違いのない答えを求める」、「自分から動き出せない」13などまとめきれないほどの特 徴を見つけることができます。 これらの特徴に共通して見られるのは、「ゆとり社員」には直接コミュニケーションをと ることが苦手であること、自分のやりたいこと、自分のためになることしかやろうとしな いこと、否定されることに慣れていないことであるように思います。ゆとり世代が育った 環境は、インターネットや携帯電話などが当たり前にありました。インターネットで調べ れば一瞬でほしい答えが見つかる。送りたいときに手軽に、そして相手の都合を気にせず にメールを送ることができる。その便利さは少なからず直接コミュニケーションをとる機 会を減らしていると思います。そしてその結果、年長者と直接話をして何かを学ぶ大切さ が分からない、話かけるタイミングが分からない、内容の重大さに関わらずメールで済ま そうとする人が増えてしまったように思います。また、ゆとり教育が重点を置いていた「自 主性」「個性」の影響も大きいようです。自分がやりたいと思う分野を選択して授業を受け るといったやり方は、確かにやりたいことを自主的に行うという力を伸ばせるかもしれま せんが、逆に、やりたいことだけ、自分に必要だと思うことだけすればよいという考え方 にも繋がってしまったのかもしれません。総合的な授業では個人やグループがそれぞれ考 えることが重視され、教師はそれを「指導」するのではなく、「支援」するという体制に変 わり、生徒は自分が考えたことを否定されるということも減りました。体罰が問題になり、 教師が手をあげたり、厳しく接することもなくなりました。教師や親からげんこつをくら うのが当たり前だった世代とは、注意や指導されること、自分の考えを受け入れてもらえ ないことへの構えが異なるはずです。 職場や人によってゆとり世代の捉え方は微妙に異なるようですが、やはりあまりいい印 象は持たれていません。職場の年長者が思っている「当たり前」とは異なる「当たり前」 を持っており、理解できない行動をしてしまうのがゆとり世代のようです。 3 「ゆとり世代」に行ったアンケートの結果・考察 今回、ゆとり世代が「ゆとり教育」と「ゆとり世代」についてどのような考えを持って いるかを調べるため、『「ゆとり教育」と「ゆとり世代」についてのアンケート』(別紙)を 13 「【新入社員】ゆとり世代のびっくり発言、驚きの行動・特徴」
7 作成し、ゆとり世代10 人14に記述、および口頭面接によって回答してもらいました。 ゆとり教育に関しては、ゆとり教育とはどのようなものだと考えているか、またその評 価について質問しました。最初の質問に対しては、授業時間・内容の削減、土曜日が休み になったという回答が多く見られました。具体的なものとしては、円周率の計算値として 3.14 だったものが 3 になった、台形の面積を求める公式を教えなくなったなどがありまし た。これらはテレビやネットでも取り上げられることが多かったため、知っているという 人が多かったのではないかと思います。しかし、具体的な方針や目的についての回答はほ とんど見られませんでした。総合的な学習については、あまりゆとり教育の一環としては 捉えられていないような感じがしました。内容は地域や学校によって大きな差があったが、 何かについて調べたり実際に体験したことについてまとめたものを発表する、あるいは行 事の前などにクラスで話し合う時間に使われることが多かったようです。また、この総合 的な学習の時間についてはあまり印象に残っていないという人が多かったです。また、調 べたことを発表しただけで、面白くなかったという回答も見られました。これは「児童に 自ら学び自ら考える力を育成することを重視した教育を行うことが必要との観点から」、ま た「児童一人一人の個性を生かす教育を行うためには,各学校が児童や地域の実態等を十 分踏まえ,創意工夫を存分に生かした特色ある教育活動を展開することが大切」であると いう観点から総合的な学習の時間を創設した文部科学省の目指したものとは異なっている ように思います。これは、総合的な学習の時間の使い方、内容の組み立て方を詳しく規定 せず学校や教師に任せたため、どのような授業をすればよいか分からないまま授業がおこ なわれるという結果になったと考えられます。実際、小学校の教師は担任がほとんどの教 科を教えるため、総合的な学習の時間の内容を深く考えるというところまで手が回らない ようです。 ゆとり教育については反対の人が多かったです。あまり成果がなかったというイメージ が強いようでした。ゆとり教育が話題になる時はいい内容であることがほとんどなく、批 判されることが多いせいであると思います。もうひとつの回答パターンとして、「評価でき ない」というものもありました。「自分が受けてきた教育を失敗だったと言いたくないから」 A(20 歳 女性 大学生)、「自分はゆとり教育しか受けていないから、ゆとり教育しか分か らん。比べるものがないし。」B(21 歳 女性 大学生)という理由からでした。ゆとり教育 が世間一般に悪いと言われる中で、それに影響されていない意見だと感じました。しかし、 はっきりと賛成という立場をとった人はおらず、ゆとり教育のここが良かった、ゆとり教 育は成功だったという意見も見られませんでした。ゆとり教育に対していいイメージを抱 いていないのは、ゆとり世代も同じようでした。 14 今回は次のようにアルファベットで表記しています。 A(20 歳 女性 大学生)B(21 歳 女性 大学生)C(23 歳 男性 社会人) D(21 歳 男性 大学生)E(20 歳 女性 大学生)F(22 歳 男性 大学生) G(20 歳 女性 大学生)H(19 歳 女性 大学生)I(21 歳 男性 大学生) J(20 歳 女性 大学生)
8 ゆとり世代については、自分のことを「ゆとり世代」であると意識したことはあるか、 ほかの世代と自分の世代を比較して違うと思うことはあるか、社会から言われている「ゆ とり世代」の特徴についてどう思うか、そしてそれは「ゆとり教育」のせいだと思うか、 という質問に回答してもらいました。最初の質問の回答は大きく次の三つのパターンに分 かれていました。 ①「ゆとり」教育を受けた実感がないから、「ゆとり世代」と意識したことがない。 ②「脱ゆとり教育」がおこなわれているのを見て、「ゆとり世代」と意識したことがある。 ③「ゆとり世代」と人から言われて、何となく「ゆとり世代」と意識したことがある。 ①のパターンの人は、「ゆとり」という言葉を聞いても、他人事であって自分は「ゆとり世 代」ではないと思っていたようでした。大学生ということもあり、塾や家庭教師のアルバ イトをしている人は②のパターンの人が多く見られました。実際に自分が受けていた教育 と内容や進度が違うことを実感した時に、自分は「ゆとり世代」だったんだなと意識した そうです。また、この三つのパターンに共通していることは、「ゆとり教育を受けたから」 意識したことがあるという回答がなかったということです。確かに自分が教育を受けてい るときは、「自分は今ゆとり教育を受けているんだ」などと考える人はほとんどいないと思 いますが、「ゆとり」という言葉にあまり興味がなく、人事だと捉えがちな印象を受けまし た。 自分の世代とほかの世代を比較して違うと思うところは、「後輩を見てると挨拶ができな い人が多い気がする」E(20 歳 女性 大学生)、「自分より上の世代は何となく責任感があ ってしっかりしてる感じかな」H(19 歳 女性 大学生)、「(30、40 代と比べて)携帯とか パソコンとかの機会に順応が早いと思う」I(21 歳 男性 大学生)など、様々な回答があり ました。しかしそれがゆとり教育の影響であるという感じではなく、「でも、年齢のせいだ と思うー」B(21 歳 女性 大学生)、「そもそも育った環境が違うし」C(23 歳 男性 社会 人)というように、年齢や環境のせいだと付け加える人が多かったです。「ゆとり教育を受 けていない年上の世代と比較して」というのは、大学生ではその世代接することがなく、 比較対象が主に親だったので、なかなか回答を得ることができませんでした。 アンケート用紙に紹介した「社会から思われているゆとり世代の特徴」は、「失敗を極 端に恐れて、すぐにマニュアルを求める」「言われたこと・頼まれたことしかしない」「注 意されるとすぐにめげる」「口頭でいうべきことをメールで済まそうとする」の四つです。 場合によっては「無断遅刻・欠席をする」「上司の酒を断る」なども口頭であげました。「ど う思いますか?」という問いかけに対しては、「そんな人ばかりではないと思う」と答え る一方で、「周りを見て、こういう特徴の人がいますか?」と聞くと、「確かにいるかも」 というように、少し矛盾した回答がいくつかありました。「言われてみると」といったニ ュアンスで上記のような特徴が「ある」といった感じで、性格や世代間の考えの違いがあ るせいという意見も見られました。また、「言われたことしかやらんて、言われんと分から んし。」J(20 歳 女性 大学生)、「マニュアルが与えられてきたんやから仕方ないやん」
9 D(21 歳 男性 大学生)というのも、ゆとり世代をあわらす発言であると思いました。 「これらの特徴はゆとり教育のせいだと思いますか?」という質問に対しては、ほぼ全 員が「全てがゆとり教育のせいではないと思う」と答えていました。「ほかの影響は?」 と聞くと、社会、時代、育った環境、親などがあがっていました。「ゆとり教育はあくま で教育であって、勉強の仕方を教えるものだから、そういうところには関係ないと思う」 と答えていたA さん(20 歳 女性 大学生)は塾の講師をしており、「教育」に対して自分 の意見をしっかりと持っている感じがしました。また、「ゆとり教育にしたのは偉い人た ちだから、ゆとり世代は悪いとか言われても知らん。俺らのせいじゃないし。しょうがな いやん」I(21 歳 男性 大学生)という発言は、「自分が悪いとは思わない」というゆとり 世代の特徴にあてはまっており、印象的でした。また、上記の特徴があるにしろないにし ろ、「ゆとり教育のせいにしているだけ」という意見は、なるほどと思いました。 全体を通して、ゆとり世代自体もゆとり教育やゆとり世代にいいイメージは持っていな いものの、具体的な特徴をあげるとそれを全部認めるわけではないという人が多かったで す。そして「ゆとり」という言葉は知っていても、「ゆとり教育」については詳しく知らな い人が多いということも感じました。聞けば考えて答えてくれる人もいる半面、「えー別に」 のように全く興味がなさそうな人もいました。「興味がない」というのもゆとり世代の特徴 なのかなと思いました。また、今回「ゆとり教育を受けたという実感がない」と答えた人 が多かったのは、私立の中学、高等学校に通っていた人がいたことも影響していたと思う ので、偏った回答になっていたかもしれません。 4 まとめ 今回アンケートをして感じたことは、「ゆとり」ということばの曖昧さでした。「ゆとり 教育」を定義すること、ゆとり世代の特徴をまとめること、「ゆとり」という言葉の使われ 方のどれもが難しく、「ゆとり」についてまとめることはできないと感じました。ゆとり教 育の影響が本当にあったのか、あったとしたらどんな影響なのか、はっきりと述べること は難しいです。「最近の若者は…」という言葉はいつの時代でも登場するものですが、その 「若者」がゆとり教育を受けていたというくくりにされているだけかもしれません。現在、 新しい学習指導要領が施行され始めています。文部科学省によると「ゆとり」でも「詰め 込み」でもないといいます。知識ばかりを詰め込む教育で心にゆとりがなくなる、かとい ってゆとりを重視した教育では知識や技能が足りない。教育法の改善に限りはありません が、「上の人が勝手に決めた」教育のように感じられるままではいけないと思います。教育 が人間性にどこまで影響を与えるのか、脱ゆとりがどのように影響を与えるのか、これか らの課題になると思います。
10 文献一覧 池谷聡 2008 「職場を悩ます ゆとり社員の処方せん」朝日新聞出版 橋本尚美 2009 「「ゆとり社員」との付き合い術 ジェネレーションギャップに悩むリーダーの処方箋」 PHP 研究所 山本直人 2012 「世代論のワナ」新潮新書 サイト一覧 文部科学省ホームページ http://www.mext.go.jp/ 池谷聡 「ゆとり世代との付き合い方」日経ビジネスオンライン(2012.8.25 確認) http://www.nikkeibp.co.jp/article/nba/20080326/151309/ 「「ゆとり世代」の新人の5つの特徴と求められる育成方法」 WEB インソース編集部(2012.8.25 確認) http://www.webinsource.com/archive/100405001321.html 「【新入社員】ゆとり世代のびっくり発言、驚きの行動・特徴」NAVER(2012.8.25 確認) http://matome.naver.jp/odai/2128321591083754201
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「ゆとり教育」と「ゆとり世代」についてのアンケート
「ゆとり教育」とは、知識重視型の詰め込み教育をやめ、学習時間と内容を減らした、 経験重視型の教育のことです。そして、この「ゆとり教育」を受けた世代は「ゆとり世代」 と呼ばれています。学習指導要領は1970 年代以降何回か改訂されてきましたが、「ゆとり 教育」の実質的な開始は、小中学校は2002 年度、高等学校は 2003 年度と言われています。 今回のアンケートでは、この高等学校で2003 年度から実施された学習指導要領を高校一年 生の時から受けた1987 年生まれ以降の世代を「ゆとり世代」とします。 この「ゆとり世代」の特徴を調査することをアンケートの目的とします。このアンケー トは「ゆとり世代」の特徴、社会からの認識についての人間学演習1のレポート作成のた めの資料としてのみ使用させていただきます。レポートに引用する場合は、個人情報を公 開しない形で使用させていただきます。また作成したレポートはウェブで公開する予定で す。 生年( )年生まれ 性別( ) 職業( )<ゆとり教育について>
(1)「ゆとり教育」とはどんなものだと考えていますか? (2)「ゆとり教育」についてあなたはどう評価しますか?<ゆとり世代について>
(1)自分のことを「ゆとり世代」であると意識したことはありますか? また、それはどんな時ですか?12 (2)自分の世代を、「ゆとり教育」を受けていない世代、「ゆとり教育」を受けた上の世 代または下の世代と比べて違うと思うところはありますか? (3)現在、「ゆとり世代」が社会人になった、あるいはこれから社会人になろうとしてい ます。「ゆとり世代」を迎え入れる社会からは「ゆとり世代」に対して、様々な意見や、「ゆ とり世代」の特徴が述べられています。例えば、「失敗を極端に恐れて、すぐにマニュアル を求める」「言われたこと・頼まれたことしかしない」「注意されるとすぐにめげる」「口頭 でいうべきことをメールで済まそうとする」などです。 (ⅰ)あなたはこのような意見を聞いてどう思いますか? 実際に「ゆとり世代」にはこ れらの特徴があると思いますか? もし、このほかに「ゆとり世代」の特徴として思 い浮かぶものがあれば書いてください。 (ⅱ)これらの特徴は「ゆとり教育」の影響によるものだと思いますか? ご協力ありがとうございました。 大阪府立大学人間社会学部人間科学科三回生 三木直子(連絡先:<xxxxxx> @edu.osakafu-u.ac.jp)