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TKプログラム2016_12N.pdf /04/27 15:58 音楽監督就任記念日本ツアー 2016 佐渡裕 指揮 トーンキュンストラー管弦楽団 2016年5月13日 29日 指揮 音楽監督 佐渡裕 ピアノ アリス=紗良 オット ヴァイオリン レイ チェン 演奏 トーンキュンストラー管

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(1)

O R C H E S T E R

YUTAKA

SADO

&

佐渡裕指揮

トーンキュンストラー管弦楽団

音楽監督就任記念日本ツアー 2016 このパンフレットはテクニクスの協賛により制作・提供しております [第20回記念スーパークラシックコンサート 中日文化センター 50周年記念]

JAPAN

TOUR

MAY

2016

ⓒ Jun Yoshimura C M Y CM MY CY CMY K

(2)

A

ハイドン:交響曲第6番ニ長調 「朝」 

(全3楽章/約17分) Joseph Haydn:Symphony No.6 in D Major, "Le matin"

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番ハ長調 作品15 

(全3楽章/約35分)  Ludwig van Beethoven:Piano Concerto No.1 in C Major, Op.15

<ピアノ:アリス=紗良・オット Piano:Alice Sara Ott>

ブラームス:交響曲第4番ホ短調 作品98 

(全4楽章/約40分) Johannes Brahms:Symphony No.4 in E Minor, Op.98

Program

B

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61 

(全3楽章/約43分)

Ludwig van Beethoven: Violin Concerto in D Major, Op.61 <ヴァイオリン:レイ・チェン Violin:Ray Chen>

R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」 作品40 

(約47分) Richard Strauss:Ein Heldenleben, Op.40

Program 指揮・音楽監督:佐渡裕 ピアノ:アリス=紗良・オット ヴァイオリン:レイ・チェン 演奏:トーンキュンストラー管弦楽団 2016年5月13日∼ 29日

佐渡裕 指揮

トーンキュンストラー管弦楽団

音楽監督就任記念日本ツアー 2016 ⓒ Werner Kmetitsch C M Y CM MY CY CMY K

(3)

         大ホール 

Fri 13 May, 19:00 Harmony Hall Fukui / Program A 主催:(公財)福井県文化振興事業団  後援:福井県/福井県教育委員会/福井新聞社/ FBC福井放送/福井テレビ/ FM福井

5/

13

(金)

19:00開演 【プログラムA】

5/

14

(土)

16:00開演 【プログラムB】

5/

15

(日)

15:00開演 【プログラムB】

5/

17

(火)

19:00開演 【プログラムA】

5/

18

(水)

19:00開演 【プログラムA】

5/

19

(木)

18:45開演 【プログラムB】

5/

21

(土)

14:00開演 【プログラムB】

5/

22

(日)

14:00開演 【プログラムA】

5/

23

(月)

19:00開演 【プログラムB】

5/

25

(水)

19:00開演 【プログラムA】

5/

26

(木)

18:45開演 【プログラムA】

5/

27

(金)

19:00開演 【プログラムA】

5/

28

(土)

14:00開演 【プログラムB】

5/

29

(日)

14:00開演 【プログラムA】

JAPAN TOUR 2016

企画・制作:クリスタル・アーツ

ミューザ川崎シンフォニーホール

Sat 21 May, 14:00 Muza Kawasaki Symphony Hall / Program B 主催:テレビ朝日/イープラス

愛知県芸術劇場コンサートホール

Thu 19 May, 18:45 Aichi Prefectural Art Theater Concert Hall / Program B 主催:東海テレビ放送/中日新聞社/中日文化センター 後援:愛知県 協力:クラシック名古屋 第20回記念スーパークラシックコンサート 中日文化センター 50周年記念 第54回大阪国際フェスティバル2016提携公演 (公財)長岡市芸術文化振興財団設立20周年記念 第20回記念スーパークラシックコンサート 中日文化センター 50周年記念 足利市民会館開館50周年記念事業

足利市民会館 大ホール

Wed 18 May, 19:00 Ashikaga Shimin Kaikan / Program A

主催:足利市/(公財)足利市みどりと文化・スポーツ財団/足利市教育委員会/下野新聞社

長岡市立劇場

Tue 17 May, 19:00 Nagaoka Municipal Auditorium/ Program A 主催:(公財)長岡市芸術文化振興財団 協力:TeNYテレビ新潟 協賛:     石本酒造

りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館コンサートホール

Sun 15 May, 15:00 Niigata-city Performing Arts Center Ryutopia / Program B 主催:TeNYテレビ新潟/(公財)新潟市芸術文化振興財団

協賛:     石本酒造

Tour Schedule

Sun 29 May, 14:00 Hyogo Performing Arts Center, Grand Hall Kobelco / Program A 主催:朝日放送/兵庫県/兵庫県立芸術文化センター

フェスティバルホール

Sat 28 May, 14:00 Festival Hall / Program B 主催:朝日放送/フェスティバルホール/キョードー 

共催:朝日新聞文化財団/朝日新聞社/大阪国際フェスティバル協会

滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール大ホール

Fri 27 May, 19:00 Biwako Hall Center for the Performing Arts, Shiga / Program A 主催:株式会社しがぎん経済文化センター 協力:(公財)びわ湖ホール/エラート音楽事務所 後援:滋賀県/滋賀県教育委員会/大津市/大津市教育委員会/びわ湖放送/

エフエム滋賀/エフエム京都

愛知県芸術劇場コンサートホール

Thu 26 May, 18:45 Aichi Prefectural Art Theater Concert Hall / Program A 主催:東海テレビ放送/中日新聞社/中日文化センター

後援:愛知県 協力:クラシック名古屋

アクトシティ浜松 大ホール

Wed 25 May, 19:00 Act City Hamamatsu / Program A

主催:静岡朝日テレビ/(公財)浜松市文化振興財団 共催:中日新聞東海本社 後援:浜松市/ FM Haro! 

サントリーホール

<サントリーホール30周年記念参加公演> Mon 23 May, 19:00 Suntory Hall / Program B 主催:テレビ朝日/イープラス

NHKホール

Sun 22 May, 14:00 NHK Hall / Program A 主催:テレビ朝日/イープラス

オーバード・ホール

Sat 14 May, 16:00 Aubade Hall / Program B

主催:富山テレビ放送/北日本新聞社/キョードー北陸/ (公財)富山市民文化事業団/富山市 C M Y CM MY CY CMY K

(4)

ご 挨 拶

師レナード・バーンスタインの「ウィーンで学ぶべきだ」という一言で、27歳の私が急遽片 道切符でウィーンに渡ったのは1988年9月のことだった。そこから3年間、毎日が素晴らし い音楽体験に溢れていた。楽友協会でウィーン・フィル、ベルリン・フィル等の名門オーケ ストラが当時の最高のマエストロ達と繰り広げる、文字通り世界最高の演奏を目の当た りにし、バーンスタインのリハーサル、録音、演奏会にすべて立ち会った。当時の音の記 憶は、その後パリ、ベルリンと欧州の拠点を移しつつ各国のオーケストラに客演し、日本 でも演奏活動を続ける中でベースになる最も大事な自分の財産になっているのは間違 いない。 だがその頃、ウィーンで私が指揮をする場は最後まで与えられなかった。89年9月にフラ ンスのブザンソン国際指揮者コンクールに優勝した後も指揮台に立つことはないまま。い つかウィーンは僕にとっては夢の中の街になっていたと言ってもよいかもしれない。 昨年9月にトーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督に就任した。たった1度の共演で就 任依頼を受けたことは驚きだったが、決心した理由はいくつかあった。このオーケストラ がニーダーエスターライヒ州によって運営され、財政的にも運営的にも非常に盤石な基 盤を持っていること。世界の音楽の檜舞台とも言える本拠地を抱える、世界でも類まれ な好環境を備え、同じプログラムを3つの拠点で3回、4回と本番を重ねることが出来るこ と。そして今年で10年目を迎える、大きな可能性を秘めた<グラフェネッグ音楽祭>では レジデントオーケストラも務めているのだ。 音楽監督としての責任は非常に大きく多岐に渡る。拙いドイツ語で一言一言リハーサル を重ねるが、その一言で音は変化し、瞬時にオーケストラとの信頼関係が育まれていく。 当然、その逆も起こる。例えてみれば日本とオーストリアで遠距離恋愛をしているようなも のだ。会わない時間に誤解が生まれたり、お互いに大きな達成感を得たかと思うと、また 失望してみたり。この責務を果たすためにまず出来ることは、ひたすら良い練習を積み 重ねること、これに尽きる。この名誉な就任以来彼らとの1年目の課題は、お互いの信頼 関係を育むことだったと思っている。 ウィーンの街を離れて25年。楽友協会で鳴る音を夢に描いてから時間が経った。今、私 はあの金色のホールでベートーヴェンを振り、リヒャルト・シュトラウスを指揮している。どこ までも貪欲に音の喜びをオーケストラに求め、彼らは今持っている最大の努力でそれに 応えようとしてくれている。契約は3年間。今後のさらなる熟成を見据えつつ、今言えるこ とは、彼らと奏でる音楽はとにかく幸福だということだ。素晴らしいスタッフ達に支えられ、 共同作業で積み重ねてきたこの幸福な1年目の成果を、日本の皆さまにお聴きいただけ ることを嬉しく誇らしく思います。どうぞ存分にお楽しみください。 京都市立芸術大学卒業。故レナード・バーンスタイン、小澤征爾 らに師事。1989年ブザンソン指揮者コンクール優勝。パリ管弦 楽団、ケルンWDR交響楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽 団、北ドイツ放送交響楽団等、欧州の一流オーケストラに多数客 演を重ねている。2015年9月よりオーストリアのトーンキュンスト ラー管弦楽団音楽監督に就任。オランジュ音楽祭「蝶々夫人」、 トリノ王立歌劇場「ピーター・グライムズ」、「フィガロの結婚」等オ ペラ公演も多数。国内では兵庫県立芸術文化センター芸術監 督、シエナ・ウインド・オーケストラの首席指揮者を務める。 オフィシャルファンサイト:http://yutaka-sado.meetsfan.jp 

佐渡 裕

Yutaka SADO (指揮・音楽監督)

Greeting

音楽監督

佐渡裕

ⓒ Peter Rigaud C M Y CM MY CY CMY K

(5)

ドイツ人と日本人の両親をもつアリス=紗良・オットは、ここ数年 の間に世界主要ホールでの演奏が絶賛を博し、今日最も刺激的 な音楽家の一人として確固たる地位を築いた。近年はLA・フィ ル、シカゴ響、バイエルン放送響、フィルハーモニア管、N響等の ソリストとして抜擢されている。2015/16年シーズンは、ウィーン 響、ミュンヘン・フィル、フランクフルト放送響、バーゼル響と共演。 ドイツ・グラモフォンと専属契約を結んでおり、2015年3月発売の 最新アルバム『ショパン・プロジェクト』は、25カ国のiTunesクラ シック・チャートで1位にランクインした。 ヴァイオリン

アリス=紗良・オット

Alice Sara Ott ピアノ

1989年台湾生まれ。15歳でカーティス音楽院に入学。2008年 メニューイン・ヴァイオリン・コンクール優勝。2009年エリザベート 王妃国際コンクールに史上最年少優勝を果たす。2013年シャ イー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、2015年エッシェンバッ ハ指揮ロンドン・フィル欧州ツアーに参加。デビュー盤『ヴィルトゥ オーゾ』(ソニー)はドイツの権威あるエコー・クラシック賞を受賞。 音楽クラウドサービス「サウンドクラウド」で200万人以上のフォロ ワーを持つ。1715年製ストラディバリウス“ヨアヒム”を日本音楽 財団より貸与されている。

レイ・チェン

Ray Chen

Soloists

 アリス=紗良・オットの演奏は迷いがない。自分の目指 す方向を信念をもって見据え、ひたすら前進あるのみと いう姿勢を崩さない。それがひとつひとつの音に反映 し、疾風怒濤のごとく突っ走っていく勢いを感じさせる。  音楽家は繰り返し同じ作品を演奏しても、そのつど 新しい作品と向き合う思いで演奏し、弾き慣れた作品 に新風を吹き込むものだが、アリスのピアノも斬新性が みなぎる。  彼女のモットーは、「常に新鮮な気持ちで作品と対峙 し、演奏するたびにその作品の新たな発見をすること」 である。  「私はピアノを始めたときから、ことばで自分の意志を 伝えるよりもピアノの方が的確に伝えられると思っていま した。ステージで演奏すると、聴衆とのコミュニケーショ ンに熱い感動を得ることができます。以後、迷いはありま せん。聴いてくださる方たちと音楽でコミュニケーション をとる、なんて素敵なひとときでしょう。オーケストラとの共 演も大好きです。さまざまな楽器と音の対話を行い、そ の醍醐味を聴衆に届ける。そして作曲家の神髄に近 づいていくのです」  そのことば通り、今回の佐渡裕指揮トーンキュンスト ラー管弦楽団との共演も非常に楽しみにしている。 「マエストロとは最初に共演したときから、息が合ってい ました。自分が自由に演奏できると感じたからです。ただ し、オーケストラとの共演は、最初が肝心です。リハーサ ルの最初の10分で指揮者とオーケストラに認めてもらえ なかったら、共演はうまくいかないと思います。そのため に私は懸命に準備をします。オーケストラのメンバーは 各々がソリストと同じ。キャリアが長い人が多く、こんなチ ビっ子がソリストですという顔をしていったらけっしてうま くいかない。ですからいつも学ぶという姿勢、挑戦する 心、ステージから何かを得るという気持ちをもって臨む ようにしています。私は1回1回のステージで成長してい くと考えていますので。本番が大切な勉強の場。最初 から心してかからないとなりません。でも、一度認めてく れたらオーケストラはずっとサポートしてくれる。だから 最初が勝負!」  佐渡裕は、彼女が10代のころから知っている。いま、 国際舞台で華々しい活躍を展開している彼女との ベートーヴェンは、彼らの「いま」を映し出すリアルなス テージ。近年、アリスは作曲家の神髄にひたすら迫る演 奏を聴かせる。そんな迫力ある共演に期待したい。  レイ・チェンも破竹の勢いでスター街道をまっしぐらに 突っ走っている、情熱と力強さを感じさせるヴァイオリニ ストである。性格は陽気で率直で、常に自然体。会った 人がみなファンになってしまうのではないかと思えるほど のナイスガイだ。その表情がステージに立つと一変し、 驚異的な集中力を発揮して作品の内奥へとひたすら 迫っていく。  彼は2008年のメニューイン・ヴァイオリン・コンクール、 2009年のエリザベート王妃国際音楽コンクールで優勝 の栄冠に輝き、一気に国際舞台へと躍り出た。そしてダ ニエル・ハーディング、クリストフ・エッシェンバッハをはじ めとする著名な指揮者と次々に共演、録音も積極的に 行っている。  「これらの国際コンクールを受けたことで、自分の音 楽人生は大きく変わりました。演奏会の数が一気に増 え、交流も増えました。でも、本来ぼくはシャイで内向的 な性格なんですよ。それがコンクール後には人との接し かたやビジネス面での対処など学ぶことが山ほどあり、 社会勉強をしました(笑)。その経験が自分の生き方に も影響し、いまでは当初より音楽が成熟したと思います」  彼のモットーは、聴衆とともに音楽を作っていくこと。常 に聴き手の反応を見、さらに作品を練り直し、演奏を磨 いていく。  「ぼくは説得力のある演奏が理想です。聴衆とともに その音楽を目いっぱい楽しみたいタイプなんです。以 前、コンクールの審査員をしていたマキシム・ヴェンゲー ロフと出会い、彼はぼくの演奏をとても高く評価してくれ ました。その後もずっとあらゆる面でサポートをしてくれ、 共演も続けています。ぼくはマキシムのようなオーラを発 する音楽家になるのが夢です。そのためにはいろんな 経験を積むことが大切。10年後には、もっと人々の心に 残る演奏家になることを願っているんですよ」  現在は各地の音楽祭にも招かれ、リッカルド・シャイー 指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団やイスラエル・ フィルとも共演、若き才能はいま飛翔のときを迎えている。  佐渡裕は2014年5月デンマーク放送交響楽団の演 奏会でレイ・チェンと初共演し、ベートーヴェンのヴァイオ リン協奏曲を演奏。そのときに両者は同じアプローチを 備えているとわかり、今回の共演につながった。いまで はマエストロいわく、「レイ・チェンは親友」だそうだ。互い に尊敬し合い、呼吸を呑み込んだベートーヴェン、親密 的な対話が聴けそうだ。 © Marie Staggat ⓒ Julian Hargreaves

実力

人気

共演

期待

C M Y CM MY CY CMY K

(6)

す。4つの定期ツィクルスを持つウィーン楽友協会 (写真①)、定期公演のほかオペラやダンス、教育プ ロジェクトなど多彩なジャンルの公演に出演するザ ンクトペルテン祝祭劇場(写真②)。さらに10月から6 月までの定期プログラムに加えて夏期は国際音楽 祭のフェスティバル・オーケストラとして登場するグラ フェネック(写真③)です。  トーンキュンストラー管弦楽団は、およそ110年間 に及ぶ変化に富んだ歴史に彩られています。1907 年の創設以降、ウィーンの重要なオーケストラの一 つとして楽友協会を本拠地とし、特にこの20年間、 芸術面と組織面において非常にダイナミックな発展 を遂げてきました。その間、トーンキュンストラー管弦 楽団は3つの素晴らしい活動拠点を持つに至りま  年間公演数は125以上に及ぶため、私どもには 非常に多くの仕事が課せられています。団員は101 名、それにチケットオフィスや運営部門で働く約20 名のスタッフがおります。平均年齢は約41歳。女性 の割合は40%以上に及び、これは上昇傾向にあり ます。ウィーンのオーケストラの中で、もっとも平均年 齢が若く、女性の割合が高いのがトーンキュンスト ラー管弦楽団です。  このように規模が大きく伝統豊かなオーケストラ のマネージャーにとって、新しい音楽監督を選ぶの は非常に大きなチャレンジであり、責任が伴う課題 です。前任のアンドレス・オロスコ=エストラーダとの 12年間の共同作業(そのうち7年間は音楽監督とし て在任)の後、この任務は困難を極めました。この オーケストラはどう成長していくことができるのか?芸 術面、そして音楽面で前に進むには何が必要なの か?どのような人物を、芸術的にどのような個性を持 つ人を、オーケストラビルダーとしてはどういう人をわ れわれは望んでいるのか?これが、当楽団と私が投 げかけた問いでした。  私と佐渡裕との最初の接点は、私がベルリンにい た時期にさかのぼります。ユタカが客演したベルリ ン・ドイツ交響楽団の演奏会を聴き、当時すでに彼 が放つオーラに感銘を受けました。私がトーンキュン ストラー管弦楽団の仕事でウィーンに移ったとき、ユ タカを客演指揮者に招聘するプランは最初から頭 の中にありました。初共演は、ショスタコーヴィチの交 響曲第5番、バーンスタインの《不安の時代》というプ ログラムでしたが、実に素晴らしい経験でした。沸き 立つ喜びと熱狂、そしてオーケストラと指揮者が互 いに評価し合っていることが楽友協会でのコンサー トで感じられたのです。ザンクトペルテン祝祭劇場で の最終日の公演後、私は楽屋に行き、「このオーケス トラとのリハーサルや本番はうまくいきましたか?」とユ タカに尋ねました。彼は自身のいつもの公演のように 150%の力を出し尽くしたといった感じで、赤いソファ の上で幸せそうにくつろいでいました。私の質問に 答えようと、マエストロは腕を上げ、「イエス、イエス、 イエス!」と大きな声で言ったのです。このとき私は、 「彼こそが新しいシェフになる人だ」と確信しました。 「われわれの音楽監督になることを想像できます か?」と聞いたところ、ユタカは私をじっと見て、「ぜひ 考えさせてください」と言いました。その3週間後、わ れわれのもとに彼のマネージメントから快諾の返事 が届いたのです。  オーケストラ側も投票でユタカを新しい音楽監督 に選びました。それはすでに予想されていた結果と はいえ、大きな喜びでした。正しい選択だったと言え るでしょう。ユタカの就任記念公演とともに、トーン キュンストラー管弦楽団の歴史に新たな章が始まり ました。彼が放つエネルギー、喜びと熱狂、音楽へ の姿勢、経験、国際性により、このオーケストラはさら に先へと進むことができます。彼の音楽にあるおお らかさがこの楽団の発展を助けてくれるでしょう。ユ タカの引き寄せるような指揮ぶりは奏者を突き動か し、しばしば彼ら自身さえも超越するような広がりを 見せます。なぜならオーケストラにそれだけの空間を 与えてくれるからです。  私たちの希望や期待、願いは幸福な形で繰り返 し叶えられました。今シーズンの開幕から多くのコン サートで共演を重ね、このオーケストラとユタカがす でに一体となっていることに聴き手の方はお気づき でしょう。私たちはクラシック音楽とオーケストラを人 びと、聴衆にとってもっと身近なものにしてくれる音楽 監督を探していたのですが、「その人」を見つけた のです! ユタカは人を愛し、そして音楽への愛を人 と分かち合います。彼はその愛を今度は聴衆と演 奏家から受け取る。音楽とはこれほどシンプルで素 晴らしいものであり得るのです。例を挙げると、日本 で生まれ、ユタカが音楽監督を務める「1万人の第 9」の(ユタカの言葉を借りれば)<室内楽ヴァージョ ン>として、私たちはベートーヴェンの第9交響曲を 500人のアマチュア歌手たちと演奏しました。これは 参加したすべての人にとって忘れられない経験に なり、再演も予定されています。2017/18シーズンで はユタカの師であるレナード・バーンスタインを特集 し、次の日本ツアーでも彼の作品が演目の中心に置 かれる予定です。こちらも今から非常にワクワクして います。  今回3週間で14公演に及ぶ日本ツアーを行うこと は、私たちにとって特別な出来事です。トーンキュン ストラー管弦楽団の多くのメンバーはこれまでの来 日公演を通して、西洋のクラシック音楽が日本で崇 拝され、高く評価されていることをよく知っています。 街の多くの場所で音楽を味わえるウィーンと同様、日 本でもクラシック音楽が大きな役割を担っているのだ と思います。日本の皆さまのために音楽を奏でられ ることは非常な栄誉であり、このツアーのために最 善の条件を取り揃えるよう努力しました。  今回の演目は私たちが過去数ヶ月の間にウィーン 楽友協会で演奏した曲ばかり。ユタカの指揮では、 新しいトーンキュンストラー・レーベルで最初のCDも 製作し、最近リリースされました。シンフォニックな音 楽でウィーンの音楽文化を比類なき形で花開かせ たリヒャルト・シュトラウス。その魅惑的な音楽を収め た録音です。このコンビによる次のCDも間もなく発 売となります。「交響曲の父」でありウィーン古典派を 開拓したハイドンの3つの初期の交響曲、そしてブ ルックナーの交響曲第4番《ロマンティック》。どちらも 楽友協会大ホールでのライヴ録音で、今後数ヶ月の 間に発売される予定です。  熱意あふれる日本の聴衆の皆さまと出会えること を楽しみにしております。2人の若き素晴らしいソリス ト、アリス=紗良・オットとレイ・チェン、そして私たちの 音楽監督であり皆さまのマエストロ佐渡裕と共に、 素晴らしい演奏をお届けできるよう全力を尽くす所 存です。

Tonkünstler-Or chester

トーンキュンストラー管弦楽団事務局長フランク・ドルシェルより日本のみなさまへ

佐渡裕新音楽監督を迎えて

F r a n k D r u s c h e l ①ウィーン楽友協会 ⓒ Musikverein ⓒ Gerald Lechner ②ザンクトペルテン祝祭劇場 就任の調印式はグラフェネック城にて行われた 日本ツアーでもコ ンサートマスター を務める優 秀な 女性奏者リーケ・ テ・ヴィンケルと 佐渡裕とフランク・ドルシェル ③広大な敷地に野外劇場、屋内コンサートホールなどを有するグラフェネック 女性奏者が多く在籍している ⓒ Werner Kmetitsch ⓒ Alexander Haiden ⓒ Lukas Beck C M Y CM MY CY CMY K

(7)

トーンキュンストラー管弦楽団

Tonkünstler-Orchester トーンキュンストラー管弦楽団は 108 年の歴史を持ち、オーストリ アおよびウィーンの音楽文化の中で最も重要な役割を果たしてき た。これまでに、ファビオ・ルイージ、クリスチャン・ヤルヴィ、 アンドレス・オロスコ=エストラーダらが首席指揮者を務めた。 「ウィーン楽友協会」、「ザンクトペルテン祝祭劇場」、グラフェネッ ク国際音楽祭の開催地で広大な敷地に野外音楽堂を有する「グ ラフェネック」の 3 か所を拠点に活動し、同音楽祭のレジデント・ オーケストラも務めている。今回の日本ツアーには総勢 103 人 の奏者と7 人のスタッフが来日している。 https://www.tonkuenstler.at/en そのトーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督に 佐渡裕が就任したというニュースは、大いに歓迎す べきものである。両者にとってまたとない幸福な組み 合わせになるであろうことは、容易に察せられるか らだ。 なぜトーンキュントラー管弦楽団は、たった一度の 客演だけで、佐渡に音楽監督への就任を依頼した のだろうか? それはもちろん音楽面における一目ぼ れということもあっただろうが、それとともに、日常のな かでの欠かせない音楽生活のあり方について、佐 渡裕のもっている豊かなセンスや経験を、本能的に 「ぜひ必要だ」と彼らが感じたからではないだろうか? いまYouTubeでトーンキュンストラー管弦楽団が 近況を発信している動画を見てみると、面白いことに 気が付く。最初、佐渡はトーンキュンストラーにとって は出会ったばかりの指揮者だったにも関わらず、つま り佐渡にとっては「アウェイ」だったにも関わらず、胸 襟を開いて、肩を組んで、まるで昔からの親しい友人 のように楽員やスタッフや合唱に参加している市民 たちと笑いあい、肩を組み、どんどん溶け込んでいる のだ。そこには、国境や文化の違いをこえて、人間ど うしとして音楽を通じてつながろう、理解し合おうとい う友情の兆しが感じられる。それはベートーヴェンの 精神そのものでもある。 ちなみにウィーンは、多民族国家ハプスブルグ帝 国の首都だった頃から、とりわけ東からの異文化に さらされてきた。そして外からの刺激を受け入れ、よ そ者を家族のように迎えることで、葛藤をこえた豊か な文化を生み出してきた町である。ベートーヴェンも ブラームスも、そしてあのバーンスタインも、みな外か らやってきてウィーンに迎え入れられた。ウィーンは外 部を必要としているのだ。 「いい化学反応が起きている」と佐渡裕は語って いたが、それは佐渡自身のなかにも変化が起き始め ていることをも意味する。 先にも述 べたように、トーンキュンストラーは、 ウィーン楽友協会大ホールで定期的に週末のコン サートを任されている。オーケストラにとって本拠地 となるコンサートホールは、楽器にも等しい価値を持 つ。いつも演奏するホールの響きがオケを育て、影 響を与え、熟成を促すからだ。だからトーンキュンス トラーは、まぎれもなく最高の楽器を手にしているオ ケなのである。むろんその音楽監督である佐渡に とっても同じことだ。 ちなみにこのオケ、いまやオーストリアでもあまり使 われなくなりつつあるウィンナ・ホルンの音色を楽しめ るほか、オーボエやティンパニも独自の楽器の音色を 持っている。国際化、平均化がいわれるオーケストラ 界において、そうしたローカル色をしっかりと保持して いることは、大きな強みでもある。 世界一の響きを持つといわれる黄金のホールとし て名高い、ウィーン・ムジークフェラインザール(ウィー ン楽友協会大ホール)で、日曜日の午後3時のコン サートを任されているトーンキュンストラー管弦楽団 は、知る人ぞ知る、まぎれもないウィーンを代表する一 流のオーケストラである。 かつてはフルトヴェングラーも指揮したという108年 の歴史あるこの名門、レコーディングはこれまで多く はなかったが、ウィーンに少しでも長く滞在したことの ある人なら、その存在感はきっと誰もが感じたことが あるに違いない。ウィーン・フィルやウィーン交響楽団 が国際的なアピールの場に立つことの多い、この楽 都の象徴だとすれば、トーンキュンストラー管弦楽団 は、ウィーンの日常での欠かせない音楽生活を担う、 地元色の強いオーケストラということができる。 しかしその実力たるや素晴らしいものがある。筆 者も以前ウィーンでこのオケでブラームスの「ドイツ・レ クイエム」の実演を聴いたことがあるが、冒頭の低弦 のたっぷりとした深みからして、圧倒された。あの黄 金のホールの響きとあいまって、これこそ本当のブ ラームスなのかと感じ入ったものである。あの記憶以 来、筆者にとってトーンキュンストラーの名は特別なも のとなった。その彼らがやってくるというだけでウィー ンの週末コンサートを思い出して、胸のときめきを感じ るほどである。 ナクソス・ジャパンからリリースされたこのコンビに よるレコーディング第1弾、R.シュトラウスの交響詩 「英雄の生涯」と「ばらの騎士」組曲も試聴したが、 トーンキュンストラーならではの、あの懐深く柔らかい 響きは健在だ。やはりウィーンの演奏家たちは、音の まろやかさや呼吸を大切にする。

楽曲を楽しむための

いくつかのヒント

今回の曲目について、少しだけ触れておこう。ハイ ドン、ベートーヴェン、ブラームス、そしてリヒャルト・ シュトラウス。これらの作曲家たちはみな、ウィーンと 縁の深かった人たちである。そして、古典派の時代 から後期ロマン派の時代にかけての音楽的な変化 を、ウィーンのオケの響きとともに味わうことができる 内容になっている。 ハイドンが基礎を確立した交響曲の形式を継承 し、革新的な精神をもって1曲ごとに実験を繰り返し、 強烈なメッセージを盛り込んだのがベートーヴェンで ある。その彼の作品からは、ピアノ協奏曲第1番と ヴァイオリン協奏曲が選ばれている。どちらについて も言えるのは、ソリストに花を持たせるだけでなく、 オーケストラも互角の存在感をもってシンフォニックな 主張を行う作品であるということ。単純な素材に始 まって、エネルギッシュで堂々とした展開が行われる、 巨大な構造物となっていること。 ベートーヴェンの作品がどちらも希望に満ちた輝 かしい作品であるのに対し、後期ロマン派のブラー ムスとR.シュトラウスは、それぞれに影を帯び、夕映え のような印象を残す作品だということができる。ブ ラームスの特徴は温故知新ということを徹底的に 行った古典主義者であったということで、それはこの 交響曲にも如実に出ている。論理的で構成的なの だ。特に第4楽章はパッサカリアという形式でできて おり、同じ低音の音型が繰り返されながら、重層的な 展開が進められていく。バッハよりもはるか以前に ルーツを持つ形式を活用しながらも、そこに盛り込ま れているのは痛切なまでにロマンティックな、あふれ んばかりの愛と憂いである。 シュトラウスは19世紀末から20世紀前半にかけ て、オーケストラ音楽、そしてロマン派の究極点に達 した人である。「英雄の生涯」というタイトルはベー トーヴェンの第3交響曲にインスパイアされたと伝えら れるが、この「英雄」とは誰を意味するのだろうか?  これは特定せず、誰もが自分の人生と重ねてみても よい。英雄の敵の描写は、いかにも嫌らしく嘲笑的 で、精神の混乱をさそうかのようだ。闘争や慰めや、 さまざまな試練を経て、この曲が最後に至るのは、静 かで平安な境地である。そこがこの作曲家の一番 味わい深いところだ。断定や勝利で終わるのではな い。本当の人生はこうあって欲しいと誰もが願うよう な、穏やかな夕暮れのようなエンディングを迎える。 ベートーヴェンやブラームスが構成美の音楽を書い た人たちだとすれば、シュトラウスはドラマそのものを 描いた人である。その違いをぜひ楽しみたい。 す。4つの定期ツィクルスを持つウィーン楽友協会 (写真①)、定期公演のほかオペラやダンス、教育プ ロジェクトなど多彩なジャンルの公演に出演するザ ンクトペルテン祝祭劇場(写真②)。さらに10月から6 月までの定期プログラムに加えて夏期は国際音楽 祭のフェスティバル・オーケストラとして登場するグラ フェネック(写真③)です。  トーンキュンストラー管弦楽団は、およそ110年間 に及ぶ変化に富んだ歴史に彩られています。1907 年の創設以降、ウィーンの重要なオーケストラの一 つとして楽友協会を本拠地とし、特にこの20年間、 芸術面と組織面において非常にダイナミックな発展 を遂げてきました。その間、トーンキュンストラー管弦 楽団は3つの素晴らしい活動拠点を持つに至りま ます。ウィーンのオーケストラの中で、もっとも平均年 齢が若く、女性の割合が高いのがトーンキュンスト ラー管弦楽団です。  このように規模が大きく伝統豊かなオーケストラ のマネージャーにとって、新しい音楽監督を選ぶの は非常に大きなチャレンジであり、責任が伴う課題 です。前任のアンドレス・オロスコ=エストラーダとの 12年間の共同作業(そのうち7年間は音楽監督とし て在任)の後、この任務は困難を極めました。この オーケストラはどう成長していくことができるのか?芸 術面、そして音楽面で前に進むには何が必要なの か?どのような人物を、芸術的にどのような個性を持 つ人を、オーケストラビルダーとしてはどういう人をわ れわれは望んでいるのか?これが、当楽団と私が投 げかけた問いでした。  私と佐渡裕との最初の接点は、私がベルリンにい た時期にさかのぼります。ユタカが客演したベルリ ン・ドイツ交響楽団の演奏会を聴き、当時すでに彼 が放つオーラに感銘を受けました。私がトーンキュン ストラー管弦楽団の仕事でウィーンに移ったとき、ユ タカを客演指揮者に招聘するプランは最初から頭 トで感じられたのです。ザンクトペルテン祝祭劇場で の最終日の公演後、私は楽屋に行き、「このオーケス トラとのリハーサルや本番はうまくいきましたか?」とユ タカに尋ねました。彼は自身のいつもの公演のように 150%の力を出し尽くしたといった感じで、赤いソファ の上で幸せそうにくつろいでいました。私の質問に 答えようと、マエストロは腕を上げ、「イエス、イエス、 イエス!」と大きな声で言ったのです。このとき私は、 「彼こそが新しいシェフになる人だ」と確信しました。 「われわれの音楽監督になることを想像できます か?」と聞いたところ、ユタカは私をじっと見て、「ぜひ 考えさせてください」と言いました。その3週間後、わ れわれのもとに彼のマネージメントから快諾の返事 が届いたのです。  オーケストラ側も投票でユタカを新しい音楽監督 に選びました。それはすでに予想されていた結果と はいえ、大きな喜びでした。正しい選択だったと言え るでしょう。ユタカの就任記念公演とともに、トーン キュンストラー管弦楽団の歴史に新たな章が始まり ました。彼が放つエネルギー、喜びと熱狂、音楽へ の姿勢、経験、国際性により、このオーケストラはさら に先へと進むことができます。彼の音楽にあるおお らかさがこの楽団の発展を助けてくれるでしょう。ユ タカの引き寄せるような指揮ぶりは奏者を突き動か し、しばしば彼ら自身さえも超越するような広がりを 見せます。なぜならオーケストラにそれだけの空間を 与えてくれるからです。  私たちの希望や期待、願いは幸福な形で繰り返 し叶えられました。今シーズンの開幕から多くのコン サートで共演を重ね、このオーケストラとユタカがす でに一体となっていることに聴き手の方はお気づき でしょう。私たちはクラシック音楽とオーケストラを人 びと、聴衆にとってもっと身近なものにしてくれる音楽 監督を探していたのですが、「その人」を見つけた のです! ユタカは人を愛し、そして音楽への愛を人 と分かち合います。彼はその愛を今度は聴衆と演 奏家から受け取る。音楽とはこれほどシンプルで素 晴らしいものであり得るのです。例を挙げると、日本 で生まれ、ユタカが音楽監督を務める「1万人の第 9」の(ユタカの言葉を借りれば)<室内楽ヴァージョ ン>として、私たちはベートーヴェンの第9交響曲を 500人のアマチュア歌手たちと演奏しました。これは 参加したすべての人にとって忘れられない経験に なり、再演も予定されています。2017/18シーズンで はユタカの師であるレナード・バーンスタインを特集 し、次の日本ツアーでも彼の作品が演目の中心に置 かれる予定です。こちらも今から非常にワクワクして います。  今回3週間で14公演に及ぶ日本ツアーを行うこと は、私たちにとって特別な出来事です。トーンキュン ストラー管弦楽団の多くのメンバーはこれまでの来 日公演を通して、西洋のクラシック音楽が日本で崇 拝され、高く評価されていることをよく知っています。 街の多くの場所で音楽を味わえるウィーンと同様、日 本でもクラシック音楽が大きな役割を担っているのだ と思います。日本の皆さまのために音楽を奏でられ ることは非常な栄誉であり、このツアーのために最 善の条件を取り揃えるよう努力しました。  今回の演目は私たちが過去数ヶ月の間にウィーン 楽友協会で演奏した曲ばかり。ユタカの指揮では、 新しいトーンキュンストラー・レーベルで最初のCDも 製作し、最近リリースされました。シンフォニックな音 楽でウィーンの音楽文化を比類なき形で花開かせ たリヒャルト・シュトラウス。その魅惑的な音楽を収め た録音です。このコンビによる次のCDも間もなく発 売となります。「交響曲の父」でありウィーン古典派を 開拓したハイドンの3つの初期の交響曲、そしてブ ルックナーの交響曲第4番《ロマンティック》。どちらも 楽友協会大ホールでのライヴ録音で、今後数ヶ月の 間に発売される予定です。  熱意あふれる日本の聴衆の皆さまと出会えること を楽しみにしております。2人の若き素晴らしいソリス ト、アリス=紗良・オットとレイ・チェン、そして私たちの 音楽監督であり皆さまのマエストロ佐渡裕と共に、 素晴らしい演奏をお届けできるよう全力を尽くす所 存です。

ウィーンの音で魅了! 来日公演の聴きどころ

Column

「500人の第九」の合唱リハーサル風景 赤いネクタイの合唱参加者達。熱演が話題に

林田直樹(音楽ジャーナリスト・評論家)

「黄金のホール」で金曜日夜と日曜午後3時の定期演奏会を行っている ⓒ Dieter Nagl 最初のCD録音。メンバーと共に入念に音をチェック

知る人ぞ知るウィーンの名門

ⓒ Martina Siebenhandl C M Y CM MY CY CMY K TKプログラム2016_12N.pdf 7 2016/04/27 15:58

(8)

そのトーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督に 佐渡裕が就任したというニュースは、大いに歓迎す べきものである。両者にとってまたとない幸福な組み 合わせになるであろうことは、容易に察せられるか らだ。 なぜトーンキュントラー管弦楽団は、たった一度の 客演だけで、佐渡に音楽監督への就任を依頼した のだろうか? それはもちろん音楽面における一目ぼ れということもあっただろうが、それとともに、日常のな かでの欠かせない音楽生活のあり方について、佐 渡裕のもっている豊かなセンスや経験を、本能的に 「ぜひ必要だ」と彼らが感じたからではないだろうか? いまYouTubeでトーンキュンストラー管弦楽団が 近況を発信している動画を見てみると、面白いことに 気が付く。最初、佐渡はトーンキュンストラーにとって は出会ったばかりの指揮者だったにも関わらず、つま り佐渡にとっては「アウェイ」だったにも関わらず、胸 襟を開いて、肩を組んで、まるで昔からの親しい友人 のように楽員やスタッフや合唱に参加している市民 たちと笑いあい、肩を組み、どんどん溶け込んでいる のだ。そこには、国境や文化の違いをこえて、人間ど うしとして音楽を通じてつながろう、理解し合おうとい う友情の兆しが感じられる。それはベートーヴェンの 精神そのものでもある。 ちなみにウィーンは、多民族国家ハプスブルグ帝 国の首都だった頃から、とりわけ東からの異文化に さらされてきた。そして外からの刺激を受け入れ、よ そ者を家族のように迎えることで、葛藤をこえた豊か な文化を生み出してきた町である。ベートーヴェンも ブラームスも、そしてあのバーンスタインも、みな外か らやってきてウィーンに迎え入れられた。ウィーンは外 部を必要としているのだ。 「いい化学反応が起きている」と佐渡裕は語って いたが、それは佐渡自身のなかにも変化が起き始め ていることをも意味する。 先にも述 べたように、トーンキュンストラーは、 ウィーン楽友協会大ホールで定期的に週末のコン サートを任されている。オーケストラにとって本拠地 となるコンサートホールは、楽器にも等しい価値を持 つ。いつも演奏するホールの響きがオケを育て、影 響を与え、熟成を促すからだ。だからトーンキュンス トラーは、まぎれもなく最高の楽器を手にしているオ ケなのである。むろんその音楽監督である佐渡に とっても同じことだ。 ちなみにこのオケ、いまやオーストリアでもあまり使 われなくなりつつあるウィンナ・ホルンの音色を楽しめ るほか、オーボエやティンパニも独自の楽器の音色を 持っている。国際化、平均化がいわれるオーケストラ 界において、そうしたローカル色をしっかりと保持して いることは、大きな強みでもある。 サートを任されているトーンキュンストラー管弦楽団 は、知る人ぞ知る、まぎれもないウィーンを代表する一 流のオーケストラである。 かつてはフルトヴェングラーも指揮したという108年 の歴史あるこの名門、レコーディングはこれまで多く はなかったが、ウィーンに少しでも長く滞在したことの ある人なら、その存在感はきっと誰もが感じたことが あるに違いない。ウィーン・フィルやウィーン交響楽団 が国際的なアピールの場に立つことの多い、この楽 クイエム」の実演を聴いたことがあるが、冒頭の低弦 のたっぷりとした深みからして、圧倒された。あの黄 金のホールの響きとあいまって、これこそ本当のブ ラームスなのかと感じ入ったものである。あの記憶以 来、筆者にとってトーンキュンストラーの名は特別なも のとなった。その彼らがやってくるというだけでウィー ンの週末コンサートを思い出して、胸のときめきを感じ るほどである。 ナクソス・ジャパンからリリースされたこのコンビに よるレコーディング第1弾、R.シュトラウスの交響詩 「英雄の生涯」と「ばらの騎士」組曲も試聴したが、 トーンキュンストラーならではの、あの懐深く柔らかい 響きは健在だ。やはりウィーンの演奏家たちは、音の まろやかさや呼吸を大切にする。

楽曲を楽しむための

いくつかのヒント

今回の曲目について、少しだけ触れておこう。ハイ ドン、ベートーヴェン、ブラームス、そしてリヒャルト・ シュトラウス。これらの作曲家たちはみな、ウィーンと 縁の深かった人たちである。そして、古典派の時代 から後期ロマン派の時代にかけての音楽的な変化 を、ウィーンのオケの響きとともに味わうことができる 内容になっている。 ハイドンが基礎を確立した交響曲の形式を継承 し、革新的な精神をもって1曲ごとに実験を繰り返し、 強烈なメッセージを盛り込んだのがベートーヴェンで ある。その彼の作品からは、ピアノ協奏曲第1番と ヴァイオリン協奏曲が選ばれている。どちらについて も言えるのは、ソリストに花を持たせるだけでなく、 オーケストラも互角の存在感をもってシンフォニックな 主張を行う作品であるということ。単純な素材に始 まって、エネルギッシュで堂々とした展開が行われる、 巨大な構造物となっていること。 ベートーヴェンの作品がどちらも希望に満ちた輝 かしい作品であるのに対し、後期ロマン派のブラー ムスとR.シュトラウスは、それぞれに影を帯び、夕映え のような印象を残す作品だということができる。ブ ラームスの特徴は温故知新ということを徹底的に 行った古典主義者であったということで、それはこの 交響曲にも如実に出ている。論理的で構成的なの だ。特に第4楽章はパッサカリアという形式でできて おり、同じ低音の音型が繰り返されながら、重層的な 展開が進められていく。バッハよりもはるか以前に ルーツを持つ形式を活用しながらも、そこに盛り込ま れているのは痛切なまでにロマンティックな、あふれ んばかりの愛と憂いである。 シュトラウスは19世紀末から20世紀前半にかけ て、オーケストラ音楽、そしてロマン派の究極点に達 した人である。「英雄の生涯」というタイトルはベー トーヴェンの第3交響曲にインスパイアされたと伝えら れるが、この「英雄」とは誰を意味するのだろうか?  これは特定せず、誰もが自分の人生と重ねてみても よい。英雄の敵の描写は、いかにも嫌らしく嘲笑的 で、精神の混乱をさそうかのようだ。闘争や慰めや、 さまざまな試練を経て、この曲が最後に至るのは、静 かで平安な境地である。そこがこの作曲家の一番 味わい深いところだ。断定や勝利で終わるのではな い。本当の人生はこうあって欲しいと誰もが願うよう な、穏やかな夕暮れのようなエンディングを迎える。 ベートーヴェンやブラームスが構成美の音楽を書い た人たちだとすれば、シュトラウスはドラマそのものを 描いた人である。その違いをぜひ楽しみたい。 レコーディングの合間に団員と リハーサルも「黄金のホール」で行われる 新音楽監督就任はウィーンでも大きな話題に。ポスターがあちこちで見られた。

佐渡裕との出会いと近況、期待

C M Y CM MY CY CMY K TKプログラム2016_12N.pdf 8 2016/04/27 15:58

参照

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