熱・電気へのエネルギー変換性能を比較する可視化図法
~各種住宅用エネルギー変換機器の比較~
Visualizing Method for Comparing Energy Conversion Performance to Heat and Electricity
- Comparison among Various Residential Energy Conversion Equipments -
石 川
明
*・ 加 藤 丈 佳
*・ 鈴 置 保 雄
*Akira Ishikawa Takeyoshi Kato Yasuo Suzuoki (原稿受付日2007 年 10 月 11 日,受理日 2008 年 2 月 26 日) 1.はじめに 日本における民生用エネルギー消費は,京都議定書の基 準年である1990 年以降も増加を続けている.そのため,民 生用エネルギー機器・技術に関する選択や意思決定などの 局面で,その技術的特徴や限界について俯瞰的に比較する ことは重要であると考えられる.俯瞰的な比較を可能にす るためには,個々の機器・システムをできるだけ少ない共 通の要素に単純化し,一定の変換規則によって一意かつシ ンプルな計算方法で客観的でその特徴を示すなど,透明性 の高い方法で分析することが必要である. 同じ種類の機器については,同じ方法・指標により,性 能を比較することができる.しかし,ヒートポンプ(HP)と コージェネレーションシステム(CGS)のように,エネル ギーの質(エクセルギー)が大きく異なる熱と電力の相互 変換を伴う機器の性能を比較する場合,比較の基準点や指 標が異なるため,適切な方法で評価しないと,それぞれの 性能や特徴を誤って理解してしまう可能性がある.そこで 本論文では,燃料を含む熱量に関する入出力と,電力の入 出力の二つの独立した軸からなる平面上のベクトルを考え ることで,熱と電力の相互変換を伴う機器の性能を直観的 に比較し,その定量的な理解を深めるための可視化図法を 提案する. 本論文の構成は以下の通りである.まず,CO2ヒートポ ンプ給湯機(CO2-HP)と住宅用コージェネレーション (H-CGS)を例として,提案する可視化図法の概要を説明し, 可視化図法を用いて可能となる直観的な性能比較の方法を 述べる.次に,8 世帯における温水・電力需要の実測デー タを用いて, CO2-HP や H-CGS だけでなく潜熱回収型給 湯器などの様々な住宅用エネルギー機器を考慮して,個々 の住宅に温水および電力を供給するシステムについて,提 案する可視化図法を用いてシステムとしての性能を比較し た例を示す. 2.図法について 2.1 熱・電力の入出力のベクトル表示 給湯器のように入力,出力の関係がエネルギー量(熱量) のみの関係として表される場合,(1)式のように,入出力の 差は損失となる. 損失=入力-出力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1) しかし,CO2-HP や CGS のように熱と電力の相互変換を 伴うシステムでは,熱の他に電力も入出力となる.このよ うな場合,熱量基準で同じエネルギー量であっても低温の 熱と電力ではその価値(エクセルギー)が異なるため,同 一の基準で入出力の差を評価することはできない. そこで本論文では,熱と電力の独立した2 軸からなる平 面を考え,平面上のベクトルによって両者の入出力差を扱 うこととする.このように,電力以外の熱の入出力につい て,その価値(エクセルギー)の差を考慮せずに一つの軸 上で表すことで,熱と電力の相互変換を伴う機器の性能を 2 次元のベクトル図によって直観的に比較する.その理由 は以下の通りである.燃料から電力への変換効率は需要家 This paper presents a method to visualize the performance of residential energy conversion apparatuses for heat/electricity supply, which is useful for the comparison among various apparatuses. Considering the difference in the energy usability or exergy, the energy conversion performance is visualized by the two-dimensional vector diagram consisting of electricity flow and heat/fuel flow. The energy conversion performance is shown as the differential vector between input (fuel and electricity consumption) and output (heat and electricity demand) vectors. Because the output is set at the origin of the diagram, the comparison of performance between various apparatuses can be visualized in one diagram. The proposed diagram is demonstrated to show the operating performance of various apparatuses by using the actual data of hot-water and electricity demand observed in 8 households.
*名古屋大学大学院工学研究科電子情報システム専攻
〒464-8603 名古屋市千種区不老町
第23 回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンスの
端で見れば,通常50%以下であるがこの値は熱量基準,エ クセルギー基準でほぼ等しい.一方,民生用の熱需要は温 度レベルが低く,ボイラ等による燃料から熱への変換効率 は,エクセルギー基準では10%以下であるが,これを熱量 基準で見れば通常80%以上である.しかも,仕事に変換す る必要のない低温の熱は,エクセルギー量で評価する必要 がなく,むしろエネルギー量として直接表現できた方が, 一般的には理解しやすい.そのため,住宅において燃料を 使用する代表的なエネルギー変換機器であるボイラ(給湯 器)では,入力(燃料)と出力(温水)との関係は(1)式の ように表され,熱エネルギー量を共通の単位としている. 以上のことを考慮して,熱の入出力に関しては熱量を単位 として扱い,電力はこれと区別して2 次元のベクトル図を 用いることとする.これにより,熱と電力の相互変換を伴 う機器の性能を直観的に比較することが可能となる. 熱と電力の入出力を二つの独立した軸からなる平面上の ベクトルで扱う場合,例えば,HP は電力を入力とし熱を出 力とするため,入出力は図1 のようになる.CGS は燃料を 入力とし,熱(温水)と電力を出力とするため,入出力は 図2 のようになる.なお,図 1 と図 2,における各記号は それぞれ次の通りである. ICGS, IHP, : CGS,HP の燃料・電力入力 OCGS, OHP : CGS, HP の熱・電力出力 また,これらに加えて,後述の図3 と図 4 における各記 号はそれぞれ次の通りである. D :demand 熱・電力需要 OD :origin of demand 需要原点 C :consumption 燃料・電力消費 CB,CCGS,CHP:給湯器,CGS,HP 導入時の燃料・電力消費 図1 および図 2 に示すように,熱と電力の両方が入出力と なる場合について,(2)式のように入出力差ベクトルを考える. 入出力差=入力-出力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2) (2)式は(1)式を熱と電力の 2 軸に拡張したものであるた め,入出力差ベクトルは(1)式の損失に対応する.したがっ て,入出力差ベクトルによって熱と電力の両方が入出力と なる機器の性能を直観的に表すことができる.ただし,熱 と電力とのエネルギー価値は異なるため,入出力差ベクト ルは,一般的なエネルギー損失とは意味が異なる.そこで, 図1 および図 2 に熱と電力の等価的な換算を表す補助線を 追加し,補助線との対比によって,一般的なエネルギー損 失と同様に,機器の損失を評価する. 例えば,一次エネルギー(燃料の化学エネルギー)から 電力への換算係数をαとして,入出力ベクトルの始点O を 通り傾き-αの直線(図 1 および図 2 の斜めの破線)を引く と,この直線上の点は全て一次エネルギーに換算して点O と等価な点を表す.この時,入出力ベクトルの終点I と傾 き-αの直線との水平距離は,一次エネルギーに換算した入 出力差,すなわち一般的なエネルギー損失を表す. ここで,給湯器について同様に入出力ベクトルを描くと, 入力>出力であるため,終点I は傾き-αの直線の右側に位 置し,両者の差は損失を表す.一方,熱と電力の相互変換 を伴うHP や CGS の場合,図 1 および図 2 に示すように, 入出力ベクトルの終点I は傾き-αの直線の左側に位置する 可能性がある.この場合,出力よりも入力の方が小さいこ とを表すため,本論文では,両者の差は損失とは区別して 「効果」と呼ぶこととする.効果が大きい程,性能が高い ことを表す. 傾き-αの補助線の引き方は,何を重視するかにより, 様々な考え方が可能である.例えば,エネルギー効率を重 視するのであれば,上述のように一次エネルギー換算値を 用いるのが妥当と考えられる.その場合でも,系統側の発 電効率の向上等に伴い,αは変化する可能性がある.一方, 提案可視化図法において,CGS や HP 等の入出力差ベクト ルはαの値とは無関係である.したがって,提案可視化図 法では,αが変化した場合に「効果」がどのように変化す るのかも直観的に把握できる.このように,系統電力と燃 料消費との関係についての様々な考え方をした場合でも, この図法によれば異なる種類の機器の性能について,直観 電 力 ( 入 出 力 ) 熱(燃料入力、熱出力) HP入力(電力) HP出力(熱) HP入出力差 OHP OIHP IHP O I 換算係数α 点Oに等価な点 HPの効果 図 1 HP の入出力差の例 電 力 ( 入 出 力 ) 熱(燃料入力、熱出力) CGS入力(燃料) CGS出力(熱、電力) OCGS CGS入出力差 OICGS ICGS O I 熱量から電力への 換算係数(=α) 点Oに等価な点 CGSの効果 図 2 CGS の入出力差の例
的かつ定量的な比較が可能となる. ただし,αの設定において,CO2排出量を重視する場合 には,燃料ごとに排出量原単位が異なるため,共通の換算 係数αを用いることができない場合もある.したがって, CO2排出量を重視する場合においては,需要家の燃料が同 一の場合に限り,αによる基準線を図示することができる 点に留意する必要がある. 2.2 同一の需要に関する熱・電力供給システムの比較 図1 および図 2 は機器単体の入出力差ベクトルを示すが, HPと CGSとで入出力が異なるため,単純な比較はできない. そこで,同一の熱・電力需要を持つ需要家に対して,比較 対象のエネルギー機器が含まれる熱・電力の供給システムを 考え,システムとしての入出力差ベクトルを用いて様々なエ ネルギー機器の比較を行うように提案図法を拡張する. 需要家の電力需要と系統電力消費について考えると,図 1 の場合は(3)式のような関係がある. 系統電力消費=HP 入力(電力)+電力需要・・・・・・・・・・(3) また,図2 の場合は(4)式のような関係がある. 系統電力消費=電力需要-CGS 出力(電力)・・・・・・・・・(4) (3)式および(4)式を一般化すると,電力の入出力の関係 は(5)式のようになる 消費-需要=入力-出力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5) 熱に関しても同様の関係が得られる.そこでこれらをベ クトルとして拡張することにより,需要家の需要(熱・電 力)を賄うような熱・電力供給システムにおける消費(燃 料・系統電力)との関係,すなわち「システム」入出力差 ベクトルは(6)式のようになる. 入出力差=消費・需要差=消費-需要・・・・・・・・・・・・・・(6) なお,機器単体の入出力差とシステムとしての入出力差を区 別するため,以下では必要に応じてそれぞれを機器入出力差 ベクトル,システム入出力差ベクトルと呼ぶことにする. (6)式の関係を用いて,各システムを導入した場合の需要 家の燃料消費,電力消費を示すことができる.システム以 外の熱供給がない状態では各システムの熱出力が熱需要に 等しくなる.このとき,機器入出力差を表す図1 および図 2 をシステム入出力差と読み替え,燃料消費,電力消費を 表す図に変換すると図 3 のようになる.図 3 において CB,CHP,CCGSはそれぞれ,給湯器,HP,CGS(補助熱源を含 む)を導入した際の燃料と電力の消費を表す.この時需要 は点D で表され,図 1 および図 2 における点 O が点 D と 共通であることがわかる.また,図1 および図 2 における 「効果」は同様に点D を通る傾き-αの直線との水平距離で 示 さ れ る . シ ス テ ム 入 出 力 差 ベ ク ト ル は OIHP=DCHP, OICGS=DCCGSのように需要と消費の関係としても表すこと ができる. また,図3 において,点 D はシステム入出力差ベクトル の始点であり,様々な熱と電力の比が点D を通る直線の傾 きとして表されるため,システムの特性を視覚的に示すこ とができる.例えば,HP では DCHPの傾きの絶対値がCOP の逆数となる.また,需要を表すODD の傾きは需要の熱電 比の逆数であり,CGS 出力を示す OCGSの傾きはCGS の熱 電比の逆数になる.このような図3 の意味を説明したもの が図4 である.CGS について,図 4 の点 CCGSと点D を結 ぶ直線の傾きを-βとすると,CGS の効果が正となるのはα <βの時である.βは,電力と燃料・熱の換算係数α(系統 の発電効率に相当)と比較されるため,βを CGS の見かけ 発電効率と呼ぶことにする.一方,HP についてはγ=1/COP であり,HP の効果が正となるのはγ<αの時である.この ように図4 においては,HP や CGS の性能は入出力差ベク トルの傾きとして表れ,これと系統電力の燃料(一次エネ ルギー)換算係数との大小関係,給湯器,HP,CGS を導入 した際の燃料と電力の消費が視覚的に一度に把握できる点 にベクトル図の特徴がある. 同様にして,システム入出力差ベクトルを用いて,他の エネルギー機器の性能を評価できる.その際,需要家が系 統電力に接続されている場合,電力需要に対し,電力を供 給するための機器は必ずしも必要でない.一方,熱需要に 熱(燃料消費、熱需要) 電 力 ( 消 費 ・ 需 要 ) HPの効果 傾き-α D CGSの効果 CHP CCGS CB 給湯器の損失 ICGS OCGS IHP OHP OD OICGS OIHP =DCCGS =DCHP 効果 損失 図 3 同一の需要に対する複数の機器の比較 熱(燃料消費、熱需要) 電 力 (消 費 ・ 需 要 ) HPの効果 基準線(傾き=-α:系統電力の 燃料換算係数) D CGSの効果 CHP CCGS CB 給湯器の損失 OD 傾き=-γ:1/COP 傾き=-β:見かけ発電効率 COP 高い 低い 高い 低い 高い 低い 高い 低い 熱電比 図 4. HP と CGS の図法の見方
対しては熱が直接供給される場合を除き,燃料や電力など を熱に変換する機器が必要となる.システム入出力差ベク トルを用いた各種家庭用エネルギー機器の性能比較につい ては,提案図法の応用例として4章において示す. 2.3 複数の需要に関する複数のシステムの比較 図3 において,(6)式に示される各々のシステム入出力差 ベクトルは,点D を始点とするベクトルである.これに注 目すれば,図5 に示すように需要家が複数であっても,そ れぞれの需要を表す点 Di(i:需要家の番号)を共通の原点に とり,これを始点とするシステム入出力差ベクトルDCi を 視覚的に比較することができる.その結果,前述のように システム入出力差ベクトルの傾きに注目すれば,需要の大 小によらず,システム性能を比較することができる. なお,HP や CGS は単純なカタログ性能では同じ直線上 にプロットされる.しかし,一般にエネルギー変換機器は 定格で連続運転されるのではない.その結果,例えば,CGS の場合には,需要により,起動停止時刻などの運転パター ン,年間の稼働率,補助熱源の使用割合などが異なり,実 使用時の総合効率に差が生じて入出力差ベクトルの傾きが 異なる.HP も使用時の外気温などにより実質的な COP に 差が生じばらつきを生じるため,これを反映すれば傾きは 異なる.このような運用上のばらつきについても実績値を 用いたベクトル図により把握できる.このことは実例を用 いた4 節にて後述する.また,点 D は「効果」の基準点で もあり,図3 における「効果」の基準線も複数の需要家に ついて共通となる.この時,図3 における原点 ODは,需 要家ごとに異なる点ODiとして示される.そこで,これら の点を原点D と区別するため,需要原点と呼ぶことにする. 3 エネルギーの単位と機器の利用率について 日本では季節の変動も考慮する必要があるため,提案図 法において使用機器の実使用時の効率を示すためには,通 常は1年間の運転に対し,年間のエネルギー量などを合計 して効率等を求める.しかし,エネルギー量を単位として 用いると,期間(1日や1年など)の取り方によってエネ ルギー量が大きく変わり,利用率を直観的に把握すること が困難になる.そこで,エネルギー量の時間平均(エネル ギーの平均フロー)としてW を単位として用いると,別途 表などで示される機器の定格出力との比較により,機器の 稼働率を容易に把握できるようになる.つまり,次の 4.2 節の図6 のように,横軸は平均熱フロー(燃料消費変化・ 熱需要)とし,単位は Wth(Watt-thermal)とする.縦軸は平 均電力フロー(系統電力消費変化・電力需要)とし,単位 はWe(Watt-electric)とする.図 6 において CGS などの定格 出力を縦軸に記入すれば,図のみで容易に稼動率の把握が 可能となる.しかし,図6 には多数の機器をプロットした ことから図中への定格出力の記入は図が煩雑になるため省 略し,表1 と比較することで稼動率を読み取ることとした. GE-CGS を例にとれば,縦軸の電気出力は平均 157Weであ り,表1 の定格出力 880Weとの比較により,稼働率が約18% であることがわかる. 4 応用例 提案可視化図法の応用例として,表1に示す家庭用の各 種エネルギー機器について,表2に示す8 軒の需要家2)の1 年間の需要データをもとに,各需要家に設置した場合のシ ステム入出力差ベクトルを計算した.なお,ここでは機器 単体ではなく,給湯・電力需要を満足するために設置され た機器を組み合わせたシステムに対し,1 年間に消費され る電力・ガスの消費量を求め,これを1 年の時間で割るこ とにより,平均出力によるシステム入出力差ベクトルを求 めている. 4.1 家庭用各種エネルギーシステムの 入出力差ベクトル算出方法 以下に各システムのシステム入出力差ベクトルの算出方 法を述べる. <ガス給湯器> 従来型給湯器と,潜熱回収型給湯器については,給湯需 要から熱効率カタログ7)値によりガス需要を求めた. <CO2 ヒートポンプ給湯機> CO2HP 給 湯 機 に つ い て は , 実 働 機 器 の 実 測 COP(2.92-3.22)の平均値 3.02 を使用した4).給湯需要からこ のCOP により所要電力量を求めた. <太陽熱温水器> 太陽熱温水器を導入する場合,需要家の燃料消費は 2.2 節で述べたように,補助熱源の消費分を考慮しなければな らない.そのため,太陽熱温水器と補助給湯器を組み合わ せて一つのシステムと考え,これによる消費と需要の差を 熱(燃料消費変化、熱需要) 電 力 ( 消 費 変 化 ・ 需 要 ) 傾き-α D DC1_HP DC1_CGS DC1_B D1 DC2_CGS DC2_HP D2 DC2_B OD1 OD2 需要原点 図 5 複数の需要に対する複数の機器の比較
太陽熱温水器のシステム入出力差ベクトルとした. 太陽熱温水器は,運転実績データ 9)(受熱部 6m2)をも とに,全日日射量と給水温度上昇の近似式を作成し,地点 毎の 2005 年の各日の全日日射量から給湯利用量を計算し た.なお,夏季など温水量が必要給湯量を上回る場合には, 必要給湯量を有効な利用量とした.また補助給湯器として 潜熱回収型給湯器を用いるものとした.太陽熱温水器は屋 根の向きなどによる日照条件や機器本体の重量等による設 置の制約もあるが,ここでは考慮していない. <ガスエンジンCGS> GE-CGS の効率については,各種損失を考慮した定格運 転時の効率6)をHHV に換算して用いることとした. CGS の総合効率向上のためには,排熱を無駄なく活用す る運転モードが求められる.また,ガスエンジンは部分負 荷では効率が低下する.ここでは,排熱利用のため貯湯槽 満蓄時に停止し,逆潮流なし(余剰電力は貯湯槽ヒータ回 収)で電力需要が740W 以上の時に定格出力で運転するも のとした.これを各需要家モデルに当てはめ,各月ごとに 代表週の10 分毎データによるシミュレーションを行い,12 ヶ月を合計した.この運転パターンにおいて不足する給湯 需要に対しては補助熱源を用いるものとし,補助熱源の効 率は 80%(HHV)とした.なお,起動・停止に伴う損失は考 慮しないこととした. <燃料電池CGS> FC-CGS も運転パターンが総合効率に大きく影響する. そのため,運転パターンについては,文献2)の実績値(発 電量・排熱利用量)を用いることにした.運転モードは8 軒中6軒において逆潮流あり,残り2軒が余剰電力ヒータ 加温である.また,余剰熱は6軒がラジエータ放熱,残り 2軒が貯湯槽満蓄時停止としている 2).逆潮流分は他の発 電分と同様に,系統電力消費を削減するものとしてシステ ム入出力差ベクトルを計算することとする.なお,文献2) には燃料消費量が明示されていないため,燃料電池の運転 中平均負荷に対し,シミュレーション用の部分負荷効率 3) を用いることとし,補助熱源の効率は80%(HHV)とした. また,起動・停止等に伴う損失は考慮しないこととした. <太陽光発電> 太陽光発電を導入する場合,2.2 節で述べたように給湯器 を含めて一つのシステムとして考えないと他のシステムと 同じレベルでの比較ができない.そのため,太陽光発電シス テムにおいても給湯器を含めて1つのシステムと考え,これ による消費と需要の差をシステム入出力差ベクトルとする. 太 陽 光 発 電 の 設 備 容 量 は 標 準 的 な 出 力 で あ る 約 3kW(24m2)とした.発電電力量はメーカーホームページ 10) による理想的な条件での試算結果に対し,屋根の向きや汚 れ等による性能低下を考慮し,試算結果×90%とした.ま た,給湯需要に対応する機器は潜熱回収型給湯器とした. なお,太陽光発電は逆潮流が認められているため,電力需 要パターンは考慮していない. 4.2 システム入出力差ベクトルによる エネルギーシステムの比較 8 軒の需要家について 7 種類のシステム入出力差ベクト ルを示したものが図6 である.システム入出力差ベクトル を用いることで,需要の違いによるばらつきを打ち消し, 各システムの特徴をガス・電力消費の変化として視覚化で きる.さらに,系統電力の一次エネルギー換算値として, 需要端発電効率36.6%(省エネ法)を,原点を通る「効果」の基 準線(α=36.6%)として示した.以下に需要および各システ ムの特徴について述べる. <電力・給湯需要> 図6 では,電力,給湯需要はグラフの第3象限にプロッ トされ,需要の各点から原点に向かうベクトルが各需要家 の需要を示す(図中の⑤,⑦は表2 の需要家番号を示す). 熱需要は310Wth~920Wth,電力需要は 470We~1090We,熱電 比(=給湯/電力)の平均は0.92 である.需要から各機器 のプロットに向かうベクトルが,各機器を導入した時のガ 表 1 各機器の諸元 入力(kW) 出力(kW) 効率(HHV) 電力 ガス 電力 熱 貯湯槽 容量 (L) 発電 平均/ 総合 備考 従来型給湯器 - 50.0 - 42.0 - - 83.0% カタログ7) 潜熱回収型給湯器 - 44.2 - 42.0 - - 93.0% カタログ7) CO2HP 給湯機 1.44 - - *4.35 460 - COP =3.02 文献4),5) 太陽熱給湯器 - - - *2.54 300 - - ホームページ9) GE-CGS - 5.50 0.88 *2.72 150 16.0% 65.4% 文献6) FC-CGS - 3.16 1.00 *1.29 200 31.6% 72.3% 文献3),8) 太陽光発電 - - 3.24 - - - - ホームページ10) 系統電力 - 2.73 1.00 - - 36.6% - 省エネ法 *総合効率・入出力等から計算で求めた出力 表 2 各需要家のデータ 平均需要(W) 需 要 家 番 号 所在地 床面積 (m2) 間取り 家族構成 給湯 電力 熱電 比* 1 神奈川県 149 4LDK 核家族 6 人 450 633 0.71 2 千葉県 112 4LDK 核家族 4 人 563 514 1.10 3 大阪府 165 6LDK 核家族 4 人 539 677 0.80 4 奈良県 146 6LDK 核家族 6 人 648 928 0.70 5 北海道 148 5LDK 核家族 4 人 797 625 1.28 6 広島県 201 6LDK 核家族 5 人 515 1089 0.47 7 宮崎県 101 4LDK 高齢夫婦 310 465 0.67 8 北海道 119 4LDK 核家族 4 人 924 564 1.64 平均 143 4.4 4.9 594 686 0.92 *冷暖房を含まない(熱電比=給湯/電力)
ス・電力消費に相当する. <ガス給湯器> 従来型給湯機や潜熱回収型給湯機については,原点の右 側にプロットされ,原点からの水平距離が熱損失を表す. 従来型給湯器の損失は平均122Wthである.カタログ値によ る計算ではあるが,潜熱回収型給湯機の損失は平均 45Wth と少なく,条件によってはCGS や CO2-HP と比較して遜色 ない損失となる場合もある. <CO2ヒートポンプ給湯機> COP を一定としたため,図 6 では,γ=1/3.02=33%の線 上で,給湯・電力需要の真上にプロットされる.系統電力 (36.6%)を基準とした場合,わずかに効果が認められる. (文献 4 では COP=2.92-3.22 に対し,γ=34%~31%,定格 COP=4.29,γ=23%).消費電力増加は平均 196Weである. <太陽熱温水器> 太陽熱温水器の出力は天候や季節の影響を大きく受け, 熱需要の全量を供給することはできない.図6 では原点の 左側にプロットされ,給湯需要の1/2-2/3 程度の熱量を供給 できる.システムの効果(原点との水平距離)の平均は 298Wthである. <ガスエンジンCGS> 計算結果からβ=29%~34%(平均 32%, カタログ値43%)とな った.表2 の多くの需要家で平均電力需要は GE-CGS の出 力880Weより小さく,熱電比も0.47~1.64 と GE-CGS の熱 電比3 より小さい.そのため,全体の平均では GE-CGS の 電気出力は157Weで,稼働率も約18%と FC-CGS に比較し て低くなっている.補助熱源の使用割合はグラフには明示 されていないが,シミュレーシ計算結果の平均では給湯需 要の約15%となった. 図6 のデータを個別に見ると,電力需要と熱電比が大き い需要家⑤の平均出力が225Weで最も大きい.一方,需要 家⑦は電力需要が最も小さく熱電比も2 番目に小さいため, 平均出力は 81Weと最も小さくなった.これらの GE-CGS の入出力差を表す点は,系統電力による基準線の近傍にプ ロットされ,その効率(=β)と平均出力(=稼働率)の分 布を視覚的に確認できる. <燃料電池CGS> 計算結果からβ=37%~44%(平均 38.6%, 定格値 53%)で ある.見掛け発電効率は平均で7%ほど GE-CGS より高い. また,熱電比が小さく部分負荷運転も可能なことから,電 気出力の平均は378Weと発電電力量はGE-CGS の 2 倍以上 となっており,稼働率も38%と高くなっている.なお,補 助熱源の使用割合は給湯需要の29%となっている. <太陽光発電> 図6 では,潜熱回収型給湯器の下側にプロットされ,電 気出力の平均は355Weであり,電力需要の1/2 程度を供給 できる.効果(基準線との水平距離)は最も大きく,燃料 電池CGS と比較すると,発電電力量は同程度であるが,一 次エネルギー消費が約1000Wth少ないことがわかる. 4.3 提案図法の効果のまとめ 図6 により,8 軒の異なる需要に対し,7 種類の異なる民 生用エネルギーシステムを導入した場合の入出力差ベクト ルを示した.図6 より,複数の異なる需要に対してもシス テム入出力差ベクトルと基準線の傾きの差やベクトルの大 きさによりエネルギーシステムの効果を定量的かつ俯瞰的 に把握することができる. 図6 において CGS や HP は,基準線の近傍にプロットさ れている.このことはCGS や HP の効果はあまり大きな値 ではなく,原点と同程度,言い換えれば効率100%のガス給 -1,500 -1,000 -500 0 500 -1,000 -500 0 500 1,000 1,500 平均熱フロー(Wth)(ガス消費変化・熱需要) 平 均 電 力 フ ロ ー ( W e ) (消 費 変 化 ・需 要 ) 給湯・電力需要 系統電力(36.6%) 従来型給湯器 潜熱回収型給湯器 CO2-HP給湯機 太陽熱温水器 GE-CGS FC-CGS 太陽光発電3kW 定格カタログ値 大きい記号は各機器の平均値 を示す 給湯・電力需要 従 来 型 給 湯 器 潜 熱 回 収 型 給 湯 器 CO2HP 給湯機 太陽熱温水器 GE-CGS FC-CGS 太陽光発電 図6.各種民生用エネルギーシステムの比較 給湯器損失平均 122Wth 効果 損失 ⑤ ⑤ ⑦ ⑦ 入出力差ベクトルの評価(2.1節参照) 系統電力
湯器と同程度の一次エネルギー消費量であることがわかる. 次にCGS や HP の一次エネルギー削減量について考える. 一次エネルギー削減量は,基準とするシステムとの「効果・ 損失」の差として相対的な値となる.そのため,従来型ガ ス給湯器を基準とした場合は,ガス給湯器の損失分が省エ ネ効果とほぼ等しくなる.しかし,効率が90%を超える潜 熱回収型ガス給湯器を基準とすれば,HP や CGS の一次エ ネルギー削減量は相対的に小さくなる.基準となるシステ ムが決まっており,一次エネルギー削減量のみを比較する 目的であれば,図6 を基準となるシステムを共通の原点に 変更することで削減量の比較はより容易になる. 図6 は試算の一例であり,給湯器の効率は表 1 に示した カタログ値を用いているため,実際の運用値とは若干異な る可能性はあるが,HP や CGS を省エネ機器として考える ならば,更なる効率の向上が望ましいと言える.なお, FC-CGS は現在,開発途上にある機器であり更なる効率の 向上に期待したい. このように一次エネルギー消費量には大きな差は無いが, ガス・電力消費という点で考えるとHP はガス消費を減ら し電力消費を増加させる.逆にCGS は電力消費を削減し, ガス消費を増加させる.つまり,ガス・電力の消費につい ては全く対照的な効果を生じることが,システム入出力差 ベクトルの向きから視覚的に理解できる. 系統電力消費とガス消費を統合した「効果」は,電力と ガスのエネルギー換算係数によって異なる.しかし,換算 係数が変化しても,太陽エネルギーを用いた太陽光発電と 太陽熱温水器の効果が高いことに変わりはない.一方,CGS とCO2-HP の効果は,系統電力の一次エネルギー換算係数 により大きな影響を受け,換算係数によっては効果がわず かしか認められないか損失側になる場合もある. そのため,換算係数を一意に定めて評価するのではなく, 換算係数を一つのパラメータとして「効果」の意味を考え る必要がある.このような目的に対しても,提案したシス テム入出力差ベクトルによる図法は有効である. 5 まとめ 以上のように,提案した図法は,一枚の図でエネルギー の平均フローのみを用いて,個々の需要家と熱・電力供給 システムの入出力差ベクトルについて全体像を俯瞰しなが ら同時に比較することができる点に特徴がある. 特にCGS の場合は,需要と電気出力・効果を同時に視覚 的・定量的に示すことができ,利用率や需要家の熱電比, 入出力差ベクトルの傾きと大きさを比較しながら種々の検 討を行えるため,様々な局面で有効であると考えられる. 本報では家庭用ヒートポンプと CGS のデータを図示し たが,これは研究として公開されている家庭用機器のデー タが比較的豊富で容易に入手できるためであり,図法自体 の制約によるものではない.また,本報では複数のシステ ム入出力差ベクトルについて同時に1 枚の図に示したが, 1 種類の入出力差ベクトルのみの図示であっても,図法の特 徴を理解するならば,同様の方法で図示された他の入出力差 ベクトルとの比較は容易であるため,十分に有用である. この方法は民生用の熱・電力変換機器について同様に利 用でき,適切な単位化を行うことで,大型CGS,大規模地 域冷暖房等の規模が異なるエネルギーシステムの比較にも 応用可能である.そのため,同様の問題の検討や,実績デ ータなどの結果を表示する際に,この図法が有効に利用さ れることを期待する. 参考文献 (URL のアクセス確認 2006.11.27) 1) 石川明,加藤丈佳,鈴置保雄:「物質投入量を考慮した エネルギーシステムの評価-家庭用電熱供給システム の比較評価の視覚化-」,第 23 回エネルギーシステ ム・経済・環境コンファレンス,2-3, 2007.1.25~26 2) (財)建築環境・省エネルギー機構,住宅用燃料電池の導 入に関する技術研究成果報告会資料,2006.3 3) (財)建築環境・省エネルギー機構,住宅用燃料電池の実 用化に関する総合研究(その3),2005.3 4) 柴田善朗,村越千春,中上英俊, 実使用条件下における CO2 冷媒ヒートポンプ給湯機の性能評価,第 22 回エネルギー システム・経済・環境コンファレンス,2006.1.26~27 5) 小林和幸,村端秀峰ほか,自然冷媒(CO2)ヒートポンプ給 湯機の開発(その 3)多機能タイプの開発,空気調和・衛 生工学会学術講演会公演論文集,2003.9.17~19 6) 木谷健一,伊東弘一,天野嘉春,橋詰匠,家庭用ガスエンジ ン・コージェネレーションシステムの特性分析,第 25 回 エネルギー・資源学会研究発表会講演論文集P269-270 7) 東邦ガス, ガス発電・給湯冷暖房システム,ガス給湯冷 暖房システム 設計資料編 2006.10 8) 東京ガスにおける家庭用燃料電池コージェネレーショ ンシステム開発 http://www.alianet.org/homedock/15kinen/5-2.html 9) チリウヒータホームページ http://www.chiryuheater.jp/waterheater.html 10) 京セラニュースリリース 2006-09-07 「新型 ECONOROOTS(エコノルーツ) type R」 http://www.kyocera.co.jp/news/2006/0901.html