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金柑子(Citrus leiocarpa TANAKA.)と温州蜜柑(Citrus Unshiu MARC.)との接木雑種"高木蜜柑"に就いて(予報)-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

香川県立厳科大学学術報告

金柑子(C総軍覗$亙e呈⑬earp認TANAE乱)と温州蜜柑

(C紙柑$町ns勤怠覗MARC.)との接木雑種

“高木蜜柑’ゝに就いて

(予報) 野 呂 芙 巳 次 郎

Preliminary repoIt On graft hybrid“Takagi:Mikan” of Kinkoii(Ciirusleiocarl)aTANAKA)and Satsuma

Orange(Citrus Unshiu MARC・) ByKimi臣ONORO (LaboratoryofSdbtropicdHorticultuT’e) (Received ApIi128,1954) 80

Ⅰ 緒

盛に柑橘の品種改良ほ叫ばれ之れが実際に各地で研究中であるが我国にて経済的価値のあるものほ

今の処殆どないと云ってもよい位で,只芽状変異に依り現われた早生温州がある程度で其の他は実生

変異に依り偶然発見せられたもの計りである・

浮木雑種なる言葉は W⊥NKLER 氏忙依り始めて用い、られたもので,同氏ほトマヤノに・イヌホ\ヅキ

を接木して其の合着郡を切断し其の癒合組織から不定芽を発生せしめ両者の中間性質を有する新値 物を生ぜしめSo払num七めi昭¢nS℡と命名したのに始まった・併し偶然に・経木雑種を発見したのは

ADAM民が「キバナフヂ.」(すJabursiimVuIgareG〔)LDREGEN)を砧木として「ベニ・バナエl=LVダ」

(CytisuspurpⅦr¢ⅦS)を接ぎ,両者の中間種「アダムノユニジグ」を得たのに・始まる。(3)

柑橘にて有名なるのほBizzaf・ia(5)であり,何れも周聯キメデであるのほ蕊に論ずる余地がなく,

我国にで比較的新しく発見されたのほ小林蜜柑及び金柑子(Citrusobovaidea)と温州の雑種で実

用的価値がないものがある.(7)

小林蜜柑は夏蜜柑に儲州を接木し活着后脱離して其の部分より夏秋枝2本が発せ,其の内勢力弱き

1枝が小林蜜柑であると佐相氏(1)ほ称し,其の原凶に就ては温州蜜柑の組織の一・部が砧木に附着し

ており,枯木の吸収する養分を消資しいたる穂木が突然脱離したと云う刺戟に依り砧木の接木部附

近の隠芽が生長を始め其の生民に際し残留していた温州の組織の・一部を包含して伸長を開始したも のでほあるまいかと称している. 玄に発表せんとする高木蜜柑も小林蜜柑と非常に良く似た周赫キメデであるが中間石占木たる夏栓及

び金柑子何れも種子を多数有しており,小林蜜柑は有核であり,高木蜜柑ほ無核であるのみが興って

おり,以下今日迄に判明した部分を予報として発表する・

Ⅱ 発 見 の 経 過

余ほ昭和28年12月4日及び5日の両日徳島県下に於ける同県の奨励品種杉山温州の調査委托を受

け出張,初日は那賀那加茂谷村の母樹園を視察,翌日勝浦郡横瀬町に・於ける母樹園を調査せんとして

横瀬町三.渓,高木精一一郎氏所有の園に㌧赴き,吉田孝雄技師其の他の方々の説明を拝聴していた処,高

(2)

恕6巻弟1号(1954) 81 木氏日く「近くに.珍しい蜜柑があるから見てくれ」との事で僅か数本を隔てた硝煙性の蜜柑梯に・案 内され,此の樹ほ「昔金柑子に温州を接いで出来た蜜柑で親木が枯れそうに.なったから6∼7年生の 柚に接木したのである」との話であっ・た,枝梢は直立性を持ち摩性,菓ほ瀾細長く−一見直に・普選や温 州とは異なっている.果は金柑手に似て肩平極めて平滑,金柑子同様柚砧に.不拘,瓢襲の数が果面に て数えられ得る帯革緊密,且つ金柑子の芳香を有し,甘味強く太さ中玉で之れ又温州蜜柑とほ異なづ て」、るが無核で肉質ほ全く如卜l蜜柑であった血余は高木民に質問して日く「潜木して発芽した新梢は 石占木と穂木との中間から出てはいませんでしたか」と,高木民日く「そうです,其の通りです.中間 から出ていたらしい」と.余は直に「之れほ小林蜜柑同様接木雑種である」と答えたのが高木蜜柑発 見の経路であり,仮に斯く命名した.其の時数ケの果実及び枝葉の分譲を受け帰校后再び拾数ケの分 譲を痩け調査する事が出来たが悲しいかな,其の后一樹全部の果実を選果機にて選別の上平均大の果 実の送附を御願した処時既に遅れ全部収穫済みであり好機を逸したが,玄に昨秋調査した一端を報告 し詳細は今秋を待つの外がない.

韮 金 柑、早 の 解 説

金柑子に.は同名異種があって九州地方で称する金柑子はCitrusobovaideaTAKAHAS王iIで金橋子, マルメロ,上軌雷宥和と称するもので外見整糞なるに似ず,肉質慈しく梢晩生,果ほ中畏,倒卵形 で表面平滑,淡黄色で蚤ほ10・・J12で九州地方にては極めて普通の柑橘であり,福1軋 熊本県にては金 柑子と呼び,長崎県に.てほ上柑,山口県にては.マルメロと称しているが金柑子の名称が一・般的である と田中定言郡民(4)(6ノは既に明治の末期頃に.発表している. 然るに徳島県にて称する金柑子ほ相子の・一・品種であり平相子(Ci亀川sleioearpa TANAKA) と.も称し,九州には見当らず四国中国以東に分布する最も古き柑橘であって南支を原産地とし我国に ては徳島県域本(勝浦郡横瀬呵)を根拠地となし,島内より駿河に入り関東に及ぶとは田中良三郎氏 (4〉の説であうて柴は中形,楕円形略触翼有刺ヌ.ほ無刺,果ほ中形乃至梢小形,巣南常に黄色(硝黄橙 色)・密着レで静に心皮外縁の丸味を外に示・す・且つ極めて平滑にて膿貿光沢あり,外皮薄く芳香あ り,黄橙色に・で常に・果肉より濃い,以上は田中民三郎戌(i)の東大学生時代の調査であり, 釆形は極扁平中玉温州大(第2図)である. 横瀬明附近にほ以舶園を形成していたが現在ほ単に宅地内に1{ノ2本宛残存するに過ぎない,当地 方にては平相子とも金柑子とも称し両者間に区.別が判明せず混同しおり.或は平相子ほ金柑子よりも 小形であるとも称している. 皿 高木蜜柑の来歴 高木猪一一」狙氏の説明を其の僅弦に掲ぐ 原木は自宅(横瀬町高屋39)の褒の段畑下から4段目の中央部にあり,今より約50∼60年前に高木 氏の御尊父が約30∼40年生の金柑子に温州蜜柑を接ぎ,其の韓日の部分から発生したのが高木蜜柑の 原木であるが,今より約20年前に惜しくも天牛の為め枯死したので其の当時の状態を詳細に.知る事ほ 不可能であり,単に眉木民並に御尊母の記憶に.依るの外がない” 高木氏ほ原木が枯れそうになったから其の味の余りに良いので保存すべく2枝を取り,6∼7年生 の袖に接木して2本の苗木を得,横瀬町大字三渓字高屋の元高木民所有の畑の最 ̄F一段の中央に植えら れていたが15∼6年前に同町大字三演字官平,美馬暫氏へ其の畑を売却せられ,夫れと同時に.1本の 木を現在の大字三浦字太良尾72の階段畑に移し,下より4段目西より7本日の木が夫れである.美馬 氏の畑に残された木の方が樹勢旺盛で良質の蜜柑を産すると称せられる,今春3月末に美馬民の高木 欝柑を祝祭したが高木氏の言の如く梢樹勢旺盛であるが如く感じた.併し調査未了である.

(3)

香川県立贋科大学率術報告 82

Ⅴ′ 高木蜜柑の調査

以下調査革供した師事滴木民所有の樹である 樹¢妖態、一日見直降霜州欝柑とほ異なった樹姿を示すい殊に周囲は自家選出め優良系蔽州,杉山渡 叶頗痩)植生隼改植せられセいゃやゝら直に判明するl(元ほ全部金柑子の園でおった): 主幹¢丸さ捧周帝約i凡高さ約7尺椅琴の拡やミり約7尺七新梢は相子に似て細く,′梢直立触を有 する椋軒昂えた,総体的に附近.の勧と比レ倭性であるが決して柏琴軌、方でない 柴轄金柑子の僅か鋸嘩を有し細長き降灰し無鋸歯で温州と野中間である様に想われる・ 轟巽− 帯び準寮曙色笹て貯蔵后紅温州の如く紅が漉くなる傾向あるかの如く観察レたが帝木氏は此の点たこは 触れ七いなし〕,且つ金柑子¢如く極めて平滑・果皮蒋ぐ外面より瓢襲を数え得る樗儒者し,果梗部よ り梢浅い縦横を現わすのほ金柑子に似る∩苺は馴\匪似,油胞点は.大にし′そ軌且つヌ.中年て蘭め■2 種ある〃 頂点梢凹むを常とす.斯る点も金柑子に似,総指的に.評すれば葛の外ほ全く金柑子紅類す・ (第i図) 果肉ほ全く酎卜1肇梢に類←,触核にて色汎掛郭こて金柑子の呆れに比し濃く,梢金柑子の芳香を有 し仁甘味強く硝酸味を欠く感があった.果実の特性調査を乳1衰正嫡守 第1衷 米 英 の、特 性 調 査

Table王S寅ze and COmpOSまt30n O董fruits′Of TakagiMまkan at Yokosed16

果皮の厚さ (分) Thまckness O董 Rind 供試数 Nou$ed 直径(分) DiameteI (Cm) 厚さ(分・) Ha∃gbt (ぐ】l−) 14タラ− 42cm 士eI・enCe

、‥・;.ニ_

1/003% 1JOO3% 1.205 ユい205% 22欠こト 63分ト∴ オ堀 825g三ノ【∴19cm′弓 6cm 0・75分†12い0グる

23mml120%

ニ ー 1100% 止100グあ 備考,苗木蜜柑の大さほ58分−・70分,金柑子ほ50分叫59分 高木氏め談に依れば昨秋の収騒は約7貫目にて果実は義揃い極めてよく,徳島県の規格たる「天, 特,ア,ワ,ミ,九 ン」の内天及び特ほ殆どなくカ及びンは極めて柿で,大部分濾ワ及びミの階級 に属すと称する. 余は静岡県澱牒蘭瀾消締在勤中百数十ケ印の哀別叶蜜柑変異枝を調査したが隠樹たる普通剖削、卜lの果 型指数は平均王30,早生渥州は125,偏平系ほ152∼柑9であって,高木蜜柑は普通温州より■余樺偏平に て罷兼系と偏平系の中間に属し,金柑子よりは梢腰商であるが商品としては隠避の異形である. 考 察 高木蜜柑の風云=こ就てほ原本が既に枯死し確証を得る事不可能であるが,樹の各形矧及び果実の特 性に徹して接木雑稗たるは疑う余地がない, 原木並に第2代目の砧木共‡こ抽砧であり,研う馴占にて如何様軋変化を及ぼすかほ全く不明であるが 軍2代目の鼎芙よりも㌧腺甘であり且つ浮く傾向が生じて来ないのは適戌砿於ける各稗柑橘類の実蔵 に徹して明であるが,只不安に感ぜられるのは余りに果皮が緊張し樹上にて既に裂果を填じ易く、なる ではないか仁且づ又アケビノコノノ、、蛾の被害多酎こあらざるや,且つ遠距灘輸送に堪え得るや,之等 の朝ま今ノ告の研究に待つの外がないが高木埼の釦こ依れば斯る不安は更にないとの事である・

(4)

琴6準琴1号(1954) 83 余が行える調査は供試数極めて少なく,1椒を代衷するものでほないが高木氏の謂が呉芙であれは 丁儀輸出蜜柑として誹向の太さに・て余が現地にて一個した処,輸出蜜柑として最適の果実であると直

感した・イ甲鱒28年感ヵ、チタ向輸串蜜柑の荷造りについて」の印刷物紅依るに「宋の大きせ.トほ周匪

5寸7分以上7寸5分以下甲も鱒であるが成る可く周囲6寸より7「寸・までで異形の良いものと明記 してあり,高木蜜柑ほ大きに於て適当である計りでなく果面梢膳貿を帯び浪費橙色にて平滑見て)光沢 があノノ◆り軽めて発観を呈するのが其の磯由である・外観の、みならず果肉も亦渡橙鰍て僧味紅替勺セい る点は他の温州蜜柑の追従を許きぬ点である 今後大玉よりも中玉が歓迎せられんとする傾向があり,甘味強く酸味梢不足し正月用蜜柑と七せは 最適⑳柑賂と推定するも,貯潮力の如何紅就てほ何等実槍なく保証の隈リセないが高木氏㊥談浸.破れ ば牒一㌣シ、草月造ほ完全に貯蔵し得るものであると. 今春徳島県及び本県下の各地にて接木し,桝殻石占としで如何なる形質を現わすかを試除草モニ、あ 3∼4年后に.ほ確たる実証を得るものであろう巾 尚本種ほ完全なる周騰キメラであり,−今後形態及び組 う予定陀_七箕め簡薬ほ勢畠㌧鞭 と沌㍍■て漉き将来に∴栗東する予定であこる. 摘 1小′′∴本渾喀柚姉の㍉叩γ40年金柑子粧慮州蜜柑を接木し生じた接木雑種ら心い. 2・枝葉ほ金柑子に類似する点多々あって溢州蜜柑よりも矯性である 芦:、ノ恩賞顆外観棒金相子に=似て=い′るが只葛の形態が異なる∴果肉ほ純然ねる 沢ほ曙質黄橙色濃臥収穫期ほ尾張削、卜ほ池田系の中間である. 4,′′意揃い虐めて良好,中玉紅て輸出蜜柑の規格に良く・丁・致し,滝川蜜柑よ、りも契観 許毒ない.. 5¢ 内地用蜜柑と・して之れ又薄け卜I蜜柑の追従を許さないが,唯貯蔵蜜柑とし 発押するかほ∴不明である′. 6・以上は柚砧の果実であり,今日迄併殺石占の樹なきを以て如何様に変化するかほ今後の研究に.符 ?の外ない. 引 用 ′文、ノ献 1・佐相和典衛,中原滑:裏:橙と温州蜜柑の間に生じた周櫛キメラ小林蜜柑に就て(予報)燐薬及掬芸,′第3巻9号 昭和3年 2永井威三郎:植物の遺伝と変異 93−−103p大正5年 3り 田中表磨:遺伝学, 昭和12年 4 田中揆三郎:寛大卒業論文,明治43年 5 ;周橡キメラの著例BjzzarrjaJourna王of Geneties,Vo118No11927柑橘研究Vol2,No1 昭和3年 6 ;柑橘類,園芸大辞典,520一−・527p昭和19年 7 罫相即郎:柑橘 昭和24年

(5)

84 香川無立顔料大学学術報曽

鱒、女suM女

官寧ka女真贈汰a恥 AⅣ紺Citms Var呈e七y T血a竜野r(〉血ces別atte′d,Good−Sized and Very B飽狐色ifu8Appearan毛、Fyni七wi抽Sa七飢1m諷伽払nge−Pn払

TakagiM準ahwas甲Oducedfromthegraft Qybrid of K坤0.うi(CitrusleiocayやaTANAKA・)

㌫云satsumOrange(Cii・y・uSuク?ざkiuMARC・)atTak喝i・sorchardinYokosed16,Ⅹatsuuragun;

T?k11S坤中卒en,J叩飢

Theo軸inal、PiantofTakagiMikanァasalreadyde?dabotlt20yearsandtwosecondarymbther

plants whidlhave been grown on Yuzu(CitrusJu710S TANAKA.)a吏・e heぬthy.andi)rOd11Ce

good f‡一山ts every year。ItisnowbeihgteSted on trifohate,Whichis aroot・LStOCk us畠d usually

inJapan.

BotanicaldescriptiozlOf the TakagiMikanis as follows:

Tree rather’SmalIer than Satsumaorange tree.Branc血mostly ascendingto errect.Bianche

and七wigS few but slender..夏.eaves typical1y of mediumsize,Slightly smaller and thinner

than Satsumaorange.

Fruit ripen王ngatYokoseslightlylaterthan OⅥ唱riunshiu(a strain of Satsuma orange,L)

Usuallygood by Desαmbe‡・10.

軌血.s如peofmediumsjze,VeIy飴t(i罰点exof加托sb叩e j43,).=釣用itsligIltユyf111lolぬd

at base as Kinko.ii;aPeX Slightly to basined.

RindcoJorwaxy,deep′9rangetOyellow−Orarlge;rathe‡・deeper thantwo dtrus but somewhat

morevariabie.Rind thickncss very thim;SOmeWhat thicker than Kinkojibut conside吏ILrdly

t王1i中平町tban\飴鱒umaor■angeい Sk由良Sとkk・tOpt如ba11ひ玉βg・ヨ盈md mostlymedillm■

PuEp co月or deep orange to yellow−Orange,Slightly deeper than tWO Citrus、SeedleもslaS

Satsuma町叩ge.′Aromapleasa鴫 Sim鮎r■tO壬【inko−ii.

Qua軌yv竺ygOOd,SO旦u触soBids王2per centinthe beginningOfDescember,aVeraging

higher than Satsumaorange小 Pu丘p very拍icy・A(:id usuallyaboutl.O per centi王Ihervesttime.

S(〉li(トacid ratio rather higher than SatsumaoIangeJSee Ta−blelland PlatesIandII.

Ithink,that thenewvarietyhasfru紘 pr’Om王Slng甲ainlyforexport・

(6)

PLATEI.高 木 蜜 柑(Takagimikan)

(7)

PLATE‡.金柑子 Kink6ji(CitrusleiocarpaTanaka)

ヾ、■ 一∴Åヽ・・T 汗斬 ■、・ ■l_1ヽ ヽヽ ぢんど′÷√■と横1i

∂.KAJIMOTO

ヽ ノ、◆ 1

闇 .二二

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