DB ヘッド定着工法
-設計指針-
目 次
設計指針概要 ... 設計-1 1 章 総則 1.1 適用範囲 ... 設計-2 1.2 本工法に関わる用語の定義 ... 設計-3 2 章 使用材料 ... 設計-4 3 章 設計の原則 ... 設計-6 4 章 終局強度設計の基本原則 4.1 終局強度設計の基本方針 ... 設計-7 4.2 柱梁接合部の設計条件 ... 設計-7 4.3 接合部耐力余裕度の設定 ... 設計-8 4.4 配筋詳細に関する共通構造規定 ... 設計-8 5 章 柱梁接合部の終局強度設計用せん断力の算定 5.1 柱梁接合部の終局強度設計用せん断力 ... 設計-9 5.2 終局強度設計用せん断力算定の注意事項 ... 設計-10 6 章 柱梁接合部のせん断終局耐力の算定および関連規定 6.1 柱梁接合部のせん断終局耐力の算定 ... 設計-11 6.2 柱梁接合部の配筋詳細に関する構造規定 ... 設計-11 7 章 定着設計 7.1 梁主筋の側面剥離定着耐力確保のための定着長さ ... 設計-13 7.2 梁主筋掻き出し定着耐力時接合部せん断力の算定 ... 設計-16 8 章 許容応力度設計 8.1 許容応力度設計の適用対象 ... 設計-18 8.2 ト形柱梁接合部および主筋定着部の許容応力度設計の基本方針 ... 設計-18 8.3 ト形柱梁接合部の短期許容せん断耐力に関する設計 ... 設計-19 8.4 小梁およびスラブの主筋定着 ... 設計-21 9 章 その他の設計 9.1 段差梁が接続する柱梁接合部 ... 設計-23 9.2 T 形および L 形柱梁接合部 ... 設計-24 9.3 壁式ラーメン壁柱・梁接合部 ... 設計-27 9.4 壁筋定着部 ... 設計-28 10 章 配筋要領 ... 設計-29 参考文献 ... 設計-32設計-1 設計指針概要 内 容 鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、プレストレストコンクリート造お よびそれらのプレキャストコンクリート造 ① 柱梁接合部への梁主筋および柱主筋の定着部 ② 壁主筋の定着部 ③ 小梁主筋およびスラブ筋の定着部 ただし、最上階外柱への梁上端主筋の定着および最下階外柱への基礎梁下端主筋の 定着には使用できない。 普通コンクリート 21~60N/mm2 (鋼種)SD295A,B, SD345, SD390、 (呼び名)D16~D41 FCD700-2 (JIS G 5502) 製造管理基準を満足すること 4.5~5.3 la≧(3/4)Dcの場合、 Vpuh>λp・Vmuhを満足するように設計する。 la< (3/4)Dcの 場 合 、 ま た はla≧(3/4)Dcの 場 合 で も 引 張 軸 力 を 受 け る 場 合、 min(Vpuh,Vcu)>λp・Vmuhを満足しなければならない。
接合部耐力余裕度λpは、 1.1以上とすることを基本とする。 Vmuh: 終 局 強 度 設 計 用 せ ん 断 力 、 Vpuh: 柱 梁 接 合 部 の せ ん 断 終 局 耐 力 、 Vcu:掻き出し定着耐力時の接合部せん断耐力、la:定着長さ、Dc:柱せい 許容応力度設計は、骨組全体がメカニズムに達しても、柱梁接合部に接続する柱 および梁が曲げ降伏しない場合に適用する。ただし、la≧(3/4)Dcとする。 pjwh≧0.3%の接合部横補強筋を配置する。pjwh:式(6.4)による接合部横補強筋比 la≧(3/4)Dcを基本とし、式(7.1)による必要定着長さlao以上かつ12db以上とする。 柱梁接合部の終局強度設計の条件を満足する場合、la<(3/4)Dcとしてもよいが、 la<(1/2)Dcとしてはならない。Dc:柱せい、db:梁主筋直径 la≧(2/3)Bを基本とし、式(8.8)による必要定着長さlao以上とする。 B:梁幅、db:主筋直径 式(7.1)による必要定着長さlao以上かつ12db以上とする。 3.0db以上(鉄筋の表面まで2.5db以上) 原則として4db以上 JASS 5 10節かぶり厚さ 表10.1 左右梁せいの重なりが2/3D以上の場合κu=1.0とし、2/3D未満の場合κu=0.7とす る。κu:接合部形状係数、D:大きい方の梁せい 柱端 定着用スタブあり。ただし、柱ヒンジとならない場合、またはFC部材として設計す れば、定着用スタブなし(かんざし筋あり)。 柱端 定着用スタブあり 梁端 梁の上端筋は90°折曲げ定着とし、余長で必要定着長さを確保する。 「壁式ラーメン鉄筋コンクリート造設計施工指針」に準拠し、中壁柱は柱1本を中 央で分割した2本の柱に見立てて検定する。 「壁式ラーメン鉄筋コンクリート造設計施工指針」に準拠する。 DBヘッドのかぶり厚さ 定着長さ 壁筋 柱梁接合部 せん断設計 接合部横補強筋 背面かぶり厚さ ト形柱梁接合部 における梁主筋 終局強度設計 許容応力度設計 側面かぶり厚さ 梁主筋 に関する 構造規定 小梁・スラブ主筋 段差梁が接続する 十字形柱梁接合部 壁柱・梁接合部 検定方法 構造規定 L形柱梁接合部 T形柱梁接合部 項 目 構造種別 適用範囲 鉄筋 使用部位 コンクリート DBヘッド 単体 DBリングの材質 製造仕様 支圧面積比
設計-2 1章 総則 1.1 適用範囲 (1) 本指針は、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、プレストレストコンクリート造 およびそれらのプレキャスト造の骨組において、DB ヘッド定着工法による主筋端部定着と 柱梁接合部の設計に適用する。 (2) DB ヘッド定着工法を適用できる構造形式は、純ラーメン構造、耐震壁付きラーメン構造お よび壁式ラーメン構造とし、使用できる部位は、以下の通りとする。 ① 柱梁接合部への梁主筋および柱主筋の定着部 ② 壁主筋の定着部 ③ 小梁主筋およびスラブ筋の定着部 ただし、最上階外柱への梁上端主筋の定着および最下階外柱への基礎梁下端主筋の定着に は使用できない。 (3) 本指針に記載のない事項は、関連諸基・規準類による。 【解説】 (1) 本設計指針の作成方針 本設計指針は、(財)日本建築総合試験所・機械式鉄筋定着工法研究委員会「機械式鉄筋定着工 法設計指針1) (以下、委員会指針と呼ぶ)」に準拠して作成されている。すなわち、本設計指針採 用の主な設計式、設計条件および構造規定は、委員会指針と同じとし、それらの妥当性は、本工 法開発実験の結果ならびに委員会指針に示された諸実験結果と照し合せて確認されている。 ただし、本工法開発実験では、小梁主筋定着に関する実験を行ったので、「説明資料」に示した 本工法開発実験の結果に基づき、本設計指針 8.4 節に示した長期荷重のみを受ける小梁およびス ラブの主筋の必要定着長さを定めた。 一方、本工法の適用の妥当性の実験による確認は、中間階のト形柱梁接合部における梁主筋定 着について行われているが、最上階の T 形および L 形柱梁接合部における主筋定着について行わ れていない。そのため、本設計指針では、既公表の定着金物を用いた場合を参考にし、T 形およ び L 形柱梁接合部における主筋定着に関する規定を 9.2 節で定めた。 (2) DB ヘッド定着工法による設計者 DB ヘッド定着工法による設計者は、本設計指針の内容を十分に理解し、本工法による柱梁接合 部における主筋定着部を正しく設計しなければならない。 (3) その他の関連諸基・規準類 □日本建築センター:2001 年版建築物の構造関係技術基準解説書 □日本建築学会:鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説(1988 年版及び 1999 年版) □日本建築学会:鉄筋コンクリート造建物の靭性保証形耐震設計指針・同解説(1999 年度版) □日本建築学会:鉄骨鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説(2001 年版) □日本建築学会:プレストレストコンクリート設計施工規準・同解説(1998 年版)
設計-3 解図 1.1 DB ヘッド各部の名称 解図 1.2 DB ヘッドの定着長さ □国土交通省国土技術政策総合研究所・他:壁式ラーメン鉄筋コンクリート造設計施工指針 (平成 15 年版) □日本建築学会:建築工事標準仕様書・同解説:JASS 5 鉄筋コンクリート工事(2003 年版) □日本建築学会:鉄筋コンクリート造-配筋指針-同解説(2003 年版) 1.2 本工法に関わる用語の定義 DB リング:異形鉄筋の先端部に挿入する球状黒鉛鋳鉄製の円形リング状定着板 DB ヘッド:異形鉄筋の先端部に DB リングを挿入した後、専用製造装置を用い、DB リングの背 面側と内面側の異形鉄筋に膨らみ(以下、鉄筋こぶと呼ぶ)を形成させた定着金物 DB ヘッド定着工法:先端部に DB ヘッドを取り付けた異形鉄筋を仕口内に所定の長さだけ埋め 込み、DB ヘッドの支圧面に生じる支圧力と異形鉄筋の付着力の作用によって定着させ る機械式定着工法 支圧面積:DB リングの外径より求めた全面積から異形鉄筋の公称断面積を差し引いた面積 支圧面積比:異形鉄筋の公称断面積に対する支圧面積の比 【解説】 (1) DB ヘッドの概略製造方法 DB ヘッドは、「DB ヘッド製造要領書」に示すように、 JIS G 5502 の規定に適合する球状黒鉛鋳鉄(FCD700-2) 製の DB リングを異形鉄筋の先端部に挿入した後、専用 製造装置を用い、鉄筋端部を加圧しながら、DB リング の両側の鉄筋部をそれぞれ加熱し、DB リングの外側と 内側に鉄筋こぶを形成させて製造される(解図 1.1 参 照)。 (2) DB ヘッドの定着長さ DB ヘッドの定着長さ(la)は、解図 1.2 に示すように、 DB リング内面から仕口面までの距離とする。 なお、背面かぶり厚さは、接合部せい(Dc)から DB ヘ ッドの定着長さ(la)を差し引いた距離とし、鉄筋の付 着長さ(ld)は付着に寄与する部分で、DB ヘッドの定着 長さ(la)と同じとしてもよい。
設計-4 表 2.1 DB リングに用いる球状黒鉛鋳鉄品(FCD700-2) の機械的性質と適用鉄筋の鋼種 降伏点 引張強さ (N/mm2) (N/mm2) JIS G 5502 (球状黒鉛鋳鉄品) FCD 700-2 420以上 700以上 SD345, SD390 SD295A,B, 適用鉄筋 鋼種 JIS規格 機械的性質 表 2.2 DB リングの標準寸法 外径 孔径 板厚 φo (mm) φh (mm) td (mm) D16 40 18.0 10 5.3 D19 45 20.5 12 4.5 D22 55 24.0 14 5.1 D25 60 27.0 15 4.6 D29 70 30.0 18 5.0 D32 80 34.0 20 5.3 D35 85 37.5 21 4.9 D38 95 41.5 23 5.2 D41 100 44.5 25 4.9 支圧 面積比 αp 鉄筋 呼び名 表 2.3 DB ヘッド各部の標準寸法 (寸法単位:mm) 突出 長さ 直径 膨らみ 長さ 直径 Lo φw1 Ls φw2 D16 10 24 11 19 D19 11 29 13 23 D22 13 33 15 26 D25 15 38 18 30 D29 17 44 35 D32 19 48 38 D35 21 53 42 D38 23 57 46 D41 25 62 49 鉄筋 呼び名 20 背面側鉄筋こぶ 内面側鉄筋こぶ 解表 2.1 コンクリートの許容応力度 (単位:N/mm2) 圧縮 せん断 圧縮 せん断 Fc/3 Fc/30かつ (0.49+Fc/100)以下 長期に対する 2倍 長期に対する 1.5倍 長 期 短 期 2 章 使用材料 (1) コンクリート ① 種類: 普通コンクリート ② 設計基準強度: 21N/mm2~60N/mm2 (2) 鉄筋 ① 規格: JIS G 3112(鉄筋コンクリート用棒鋼)の規格に適合する異形鉄筋 ② 鋼種: SD295A,B,SD345,SD390 ③ 呼び名:D16~D41 (3) DB リングの材質は表 2.1、各部寸法は表 2.2 による。 (4) DB ヘッドの各部寸法は、表 2.3 による。 【解説】 (1) コンクリート コンクリートの設計基準強度 Fc は、柱梁接合部のせん断終局耐力 および主筋定着部の終局耐力の妥 当性が実験で確認された範囲で設 φw1 φw2 Ld Ls Lo td φo φh a b
設計-5 解表 2.3 鉄筋の許容応力度 (単位:N/mm2) 引張および圧縮 せん断補強 引張および圧縮 せん断補強 SD295A,B 195 195 295 295 SD345 215 (※195) 195 345 345 SD390 215 (※195) 195 390 390 鋼種 長 期 短 期 (注) 呼び名がD29以上の鉄筋に対しては、( )内の※を付した数値とする。 解表 2.4 鉄筋のコンクリートに対する許容付着応力度 Fc≦22.5の場合 Fc>22.5の場合 梁の上端筋 Fc/15 0.9+Fc/37.5 その他の鉄筋 Fc/10 1.35+Fc/25 (注) Fc:コンクリートの設計基準強度 長期 鉄筋種別 短期 長期に対する 1.5倍 定されている。 コンクリートの許容応力度は、建設省告示 1450 号に基づく解表 2.1 による。ただし、短期許容 せん断応力度は、RC 計算規準4)による長期許容せん断応力度の 1.5 倍とした。 (2) 鉄筋の上限強度算定用材料強度および許容応力度 本指針を適用できる主筋(定着筋)は、SD295A,B~SD390 の D16~D41 の異形鉄筋であり、上限強 度算定用材料強度は、解表 2.2 に示す靱性保証型指針 3)による値と同じとする。鉄筋の許容応力 度は、建設省告示 2464 号および国土交通省告示 1024 号に基づく解表 2.3 による。 (3) 鉄筋のコンクリートに対する許容付着応力度 鉄筋のコンクリートに対する許容付着応力度は、建設省告示 1450 号に基づく解表 2.4 による。 ただし、短期許容応力度は RC 計算規準に倣い長期許容応力度の 1.5 倍とした。 (4) DB ヘッドの目標性能および各部寸法 DB ヘッドの目標性能は、柱梁接合部内において鉄筋のコンクリートに対する付着力が消失して も、鉄筋の降伏に先行して DB ヘッドが破断しないことを保証するために、各鋼種とも、鉄筋母材 が規格引張強さ以上に相当する引張力を受けても損傷しないこととした。DB ヘッドの各部寸法は、 上記の目標性能を満足するように定められている。 DB リングの外径φoは、鉄筋直径の 2.5 倍程度を目安にし、表 2.2 に示すように、DB ヘッドの 支圧面積比αpが 5.0 程度となるように定められている。また、DB リングの孔径φhは、日本建築 学会「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説」に示されている異形鉄筋の最外径を参考にして定 められており、DB リングの厚さ tdは、DB リングの面外強度を考慮し、鉄筋直径 dbの 0.6 倍程度 としている。 解表 2.2 鉄筋の上限強度算定用 材料強度 SD295A,B 1.30σyo SD345, SD390 1.25σyo (注)σyo:鉄筋の規格最小降伏点
設計-6 3 章 設計の原則 地震荷重を受ける柱梁接合部および柱、梁の主筋定着部には、4 章~7 章の終局強度設計を適用 する。ただし、柱梁接合部に接続する柱および梁が曲げ降伏しない場合には、8 章の許容応力度 設計を適用してもよい。 また、長期荷重のみを受ける小梁主筋およびスラブ筋の定着部には、8 章の許容応力度設計を 適用する。 【解説】 (1) 終局強度設計を行った柱梁接合部および柱、梁の主筋定着部 本指針で提案する設計法は、委員会指針 1)に基づき、柱梁接合部および主筋定着に関する終局 強度設計を中心に構築されている。4.2 節で定める終局強度設計の設計条件を満足する柱梁接合 部および主筋定着部については、長期荷重時および短期荷重時における下記の目標性能①、②の 達成が既往実験によって確認されている。したがって、本指針では、終局強度設計を行った柱梁 接合部および主筋定着部は、許容応力度設計を省略できるものとした。 ① 仕口面での梁主筋または柱主筋の引張応力が長期許容応力度に達しても、柱梁接合部なら びに仕口面近傍に使用上支障となるひび割れ等の損傷が生じないこと。 ② 仕口面での梁主筋または柱主筋の引張応力が短期許容応力度に達する力を繰り返し経験し ても、柱梁接合部ならびに仕口面近傍に過大なひび割れを残留させる等の修復性を阻害す る損傷が生じないこと。 (2) 終局強度設計と許容応力度設計の適用区分 部材設計を許容応力設計によった場合にも、柱梁接合部を本指針提案の終局強度設計によって も、骨組の耐震安全性確保の上で問題はないので、本指針では、柱梁接合部および柱、梁の主筋 定着部には、原則として、終局強度設計を適用することとした。 ただし、本指針では、8.1 節に示すように、骨組全体の終局限界変形(メカニズム)時に、柱梁 接合部に接続する柱および梁が曲げ降伏しない場合、許容応力度設計を適用してもよいとした。
設計-7 4 章 終局強度設計の基本原則 4.1 終局強度設計の基本方針 設計対象のト形柱梁接合部は、4.2 節に示す設計条件を満足するように設計する。柱梁接合部 の目標性能は、下記の通りとする。ただし、ト形柱梁接合部は梁曲げ降伏型を設計目標とするこ とを原則とする。 (目標性能) ・ 柱梁接合部は、接続する梁の曲げ降伏後の十分な変形性能を保証する終局耐力を有すること。 【解説】 本指針による設計条件および構造規定を満足する梁曲げ降伏型のト形部分架構については、 限 界層間変形角実験値 R80 が(1/25)以上となることがそれぞれ実験によって確認されている。上記 の R80は、耐力が最大耐力の 80%に低下した時の層間変形角実験値であり、それぞれ靱性保証型 指針3)に示された梁の終局限界状態での部材変形角の目安値(1/50)の 2 倍となる。 以上より、本指針による設計条件および構造規定を満足する梁曲げ降伏型のト形部分架構は、 設計上、十分な変形能力を有すると判断される。 4.2 柱梁接合部の設計条件 設計対象のト形柱梁接合部は、式(4.1)の条件を満足するように設計する。 Vpuh>λp・Vmuh (4.1) ただし、梁主筋の定着長さlaが柱せい Dcの(3/4)倍未満の場合、または Dcの(3/4)倍以上の場 合でも引張軸力を受ける場合には、式(4.2)の条件を満足しなければならない。
min(Vpuh, Vcu)>λp・Vmuh (4.2)
ここに、Vmuh:式(5.1)による柱梁接合部の水平方向の終局強度設計用せん断力 Vpuh:式(6.1)による柱梁接合部の水平方向のせん断終局耐力 Vcu:式(7.8)による梁主筋掻き出し定着耐力時接合部せん断力 λp:接合部耐力余裕度 【解説】 ト形柱梁接合部については、梁曲げ降伏先行型とすることを原則としているので、水平方向の 接合部せん断力について検定を行うこととした。また、梁主筋の定着長さlaは、柱せい Dcの(3/4) 倍以上とすることを基本とし、7.1.1 項で定める梁主筋側面剥離定着耐力によって決まる必要定 着長さlao 以上とすることを前提とした。この前提条件を満足する場合、式(4.1)の条件を満足す るように設計すればよい。 これに対し、定着長さlaが柱せい Dcの(3/4)倍未満の場合には、Vpuhと梁主筋掻き出し定着耐 力時接合部せん断力 Vcu のいずれか小さい方の耐力が式(4.2)の条件を満足するように設計する。 ただし、脆性的な定着破壊防止の観点から、梁主筋定着長さは(1/2) Dc以下としてはならない。 掻き出し定着破壊は、主として梁主筋の定着長さが短い場合に起こる破壊形式であり、7.2 節 に示した機械式定着工法による場合の掻き出し定着耐力は、折曲げ定着を対象にした靱性保証型
設計-8 指針に示された算定式を準用して安全側に評価されることが確認されている。 また、定着長さlaが Dcの(3/4)倍以上の場合でも引張柱軸力を受ける場合、梁主筋掻き出し定 着耐力は、圧縮柱軸力を受ける場合よりも低下する恐れがあるので、この点を考慮し、式(4.2) の条件を満足しなければならないとした。 4.3 接合部耐力余裕度の設定 接合部耐力余裕度λpは、1.1 以上とすることを基本する。 【解説】 接合部耐力余裕度λp≧1.1 を満足するト形柱梁接合部は、4.1 節に示した目標性能を満足する ことが実験によって確認されている。この目標性能は、委員会指針1)4.1 節で定める設計区分Ⅱお よびⅢの目標性能と同じである。すなわち、本設計指針では、主としてト形柱梁接合部を対象と しているので、梁の曲げ降伏後の十分な変形性能を保証することを基本とした。 一方、委員会指針による設計区分Ⅰと同様、接合部耐力余裕度λpの下限値を 1.0 とした場合、 「柱梁接合部は接続する梁の曲げ降伏を保証する終局耐力を有すること」が実験によって確認さ れている。すなわち、骨組が終局限界変形に達しても、設計対象のト形柱梁接合部に接続する梁 が曲げ降伏に達する程度の変形状態であると判断される場合には、λp≧1.0 としても差し支えな い。ただし、この場合、柱梁接合部に接続する梁の十分な変形性能は保証されない。 4.4 配筋詳細に関する共通構造規定 1) 梁主筋中心からの梁主筋の側面かぶり厚さ Csは、3db以上とする。 2) 定着板内面からの梁主筋の背面かぶり厚さ Cbは、4db以上とする。 3) 定着金物のかぶり厚さは、建築基準法施行令第 79 条の規定による。 4) 定着筋の間隔は、JASS 5 の規定による。 【解説】 (1) 梁主筋の側面かぶり厚さおよび背面かぶり厚さ 梁主筋中心からの側面かぶり厚さの最小規定値は、梁主筋の側面剥離破壊防止の観点から、実 験結果に基づき定めた。 また、梁曲げ降伏後の繰り返し載荷によって生じる定着金物背面側への押し抜き破壊の防止の 観点から、実験結果に基づき、梁主筋の背面かぶり厚さの最小規定値を定めた。ただし、定着長 さを長くすると、背面かぶり厚さが小さくても、柱梁接合部内における圧縮ストラットの有効範 囲の拡大に伴い、梁曲げ降伏後の変形性能は必ずしも低下しないことが既往実験 1)で確認されて いる。この実験によると、定着長さが 15db以上かつ(3/4)Dc以上の場合、背面かぶり厚さを 3db 以上とすることができる。 (2) 定着金物のかぶり厚さ 定着金物のかぶり厚さは、建築基準法施行令第 79 条で定める耐久性および耐火性の確保に必要 な値以上とした。
設計-9 5 章 柱梁接合部の終局強度設計用せん断力の算定 5.1 柱梁接合部の終局強度設計用せん断力 ト形柱梁接合部の終局強度設計用せん断力 Vmuhは、式(5.1)による。 Vmuh = ξh・Qcu (5.1) Qcu = cQgu = (Mgu/lo)・(l/h) (5.2) ξh = (h/l)・(lo/jtg)-1 (5.3) ここに、Qcu:柱梁接合部に接続する梁の曲げ終局耐力時柱せん断力 h:階高、 ho = h-Dg:柱の内法高さ、 Dg:梁せい l:スパン長(柱心間距離)、 lo = l-Dc:梁の内法スパン長、 Dc:柱せい jtg: 梁上下主筋の重心間距離 Mgu:梁の曲げ終局耐力 また、Mguは、下式による。 Mgu = Tgy・jtg (5.4) ここに、Tgy:梁引張鉄筋の上限引張力 【解説】 ト形柱梁接合部の終局強度設計用せん断力 Vmuhは、解図 5.1 の応力状態を考慮し、Vmuh=Tg-Qcu、 Tg=Mg/jtgとすると、式(5.1)で求められる。ト形部分架構の梁曲げ終局耐力時柱せん断力 Qcuは、 解図 5.2 に示すように、柱の反曲点位置を階高中央、梁の反曲点位置をスパン中央と仮定すると、 式(5.2)で求められる。Tgは梁端柱面での引張主筋の引張合力を示す。 Qcu Qg Mg Tg Cg Mc Mc Cc' Cc Dc Dg jtco jtg Vh Vv lag Qcu Tce Tce' Nco+Qg/2 Nco-Qg/2 解図 5.1 柱梁接合部の応力状態 l/2 lo/2 Dc Qg Qcu Dg Mg Mc h/2 ho/2 h/2 ho/2 Mc Qcu Vh(Vv) 解図 5.2 水平力を受けるト形部分架構 の応力状態
設計-10 5.2 終局強度設計用せん断力算定の注意事項 柱梁接合部の終局強度設計用せん断力算定の注意事項を以下に示す。 1) 上限引張力 Tgyは、解表 2.2 による当該鉄筋の上限強度算定用材料強度に断面積を乗じて算 定する。 2) 式(5.4)による梁の曲げ終局耐力は、スラブ有効幅内のスラブ筋を考慮して算定する。梁側 面からのスラブ有効幅は、片側につき1m 程度とする。 【解説】 解図 5.3 に示すように、スラブが接続し、梁上 端側が引張側となる曲げモーメントが作用すると、 スラブ筋に引張力が生じ、見掛け上、梁の抵抗モ ーメントが増大する。この時、柱幅の外側に配置 されたスラブ筋の引張力は、直交梁に生じるねじ りモーメントを介して、柱梁接合部にせん断力と して入力される。 したがって、式(5.4)による梁の曲げ終局耐力 Mgu は、スラブ有効幅内のスラブ筋の引張力によ る曲げモーメント増分を累加する必要がある。通 常、この曲げモーメント増分ΔMgu は、梁側面か らのスラブの有効幅※を片側につき 1m 程度とし、 下式で求められる。 ΔMgu = ΣTsy・jtg (解 5.1) ここに、ΣTsy:スラブ有効幅内に定着されたスラブ筋の降伏引張力の総和 柱梁接合部の終局強度設計用せん断力は、上限強度を評価する観点から、スラブ有効幅内のス ラブ上下筋の降伏引張力を考慮して算定することを原則とした。なお、骨組の保有水平耐力の算 定時には、信頼強度を評価する観点から、定着長さが短いスラブ下端筋の降伏引張力は算入すべ きではない。 ※ 日本建築センター:2001 年版 建築物の構造関係技術基準解説書、付録 1-3.2 鉄筋コンクリート造 部材の終局強度、pp.519-528, 2001 柱 加力梁 直交梁 スラブ 加力梁主筋 の引張力 加力梁の抵抗 モーメント スラブ筋 引張力 スラブ筋引張力 に伴って生じる ねじりモーメント 解図 5.3 柱梁接合部の入力せん断力 に及ぼすスラブ筋の効果
設計-11 図 6.2 接合部横補強筋の配筋詳細 6 章 柱梁接合部のせん断終局耐力の算定および関連規定 6.1 柱梁接合部のせん断終局耐力の算定 柱梁接合部の水平方向のせん断終局耐力 Vpuhは、式(6.1)による。 Vpuh = κu・φ・Fj・bj・Djh (6.1) ここに、κu: 柱梁接合部の形状係数 (ト形柱梁接合部の場合、κu=0.7) φ: 直交梁の有無による補正係数 両側直交梁付き接合部の場合:φ=1.0、それ以外の場合:φ=0.85 Fj = 0.8 Fc0.7 (6.2) Fc:コンクリートの設計基準強度(N/mm2) bj = Bg + ba1 + ba2 (6.3) Bg:梁幅 bai:bi/2 または Dc/4 の小さい方 Dc:柱せい bi:梁両側面からこれに平行する 柱側面までの長さ Djh: 柱梁接合部の水平方向の有効せい (ト形柱梁接合部の場合、Djh = lag) lag:梁主筋の定着長さ 【解説】 柱梁接合部の水平方向のせん断終局耐力は、靱性保証型指針 3)による評価式を用いて算定する ことを基本とした。柱梁接合部の有効幅 bjは、図 6.1 に示すように定義される。 6.2 柱梁接合部の配筋詳細に関する構造規定 ト形柱梁接合部には、検討する地震力の作用方向に 対し、接合部横補強筋比 pjwhが 0.3%以上の接合部横補 強筋を配置する。接合部横補強筋比 pjwhは下式による。 pjwh = nh・awh/(Bc・jtgo) (6.4) ここに、Bc:柱幅 jtgo:梁の上下最外縁主筋間距離 nh:jtgo区間内の接合部横補強筋の組数 awh:接合部横補強筋 1 組の断面積 また、梁上下主筋中心と直近の接合部横補強筋中心 および柱横補強筋中心との距離はそれぞれ 2db以下と し、jtgo 区間に接合部横補強筋をできるだけ均等に配 置する。 bj Bg ba2 ba1 Dc/4 Dc Dc/4 b1/2 b1/2 b2/2 b2/2 図 6.1 柱梁接合部の有効幅 Bc
設計-12 【解説】 (1) ト形柱梁接合部における接合部横補強筋 本設計指針では、靱性保証型指針3)と同様、pjwh≧0.3%の接合部横補強筋を配置することを基本 とした。この規定は、委員会指針1)6.2 節に示すように、設計区分Ⅱに対する規定と同じである。 ただし、委員会指針による設計区分Ⅲと同様、λp≧1.4 とすれば、pjwh≧0.2%としても、梁曲げ 降伏後の十分な変形性能が確保されると考えられる。 なお、pjwhの算定式(6.4)において、梁上下重心間距離 jtgを用いると、梁主筋の 2 段配置の場 合に pjwhを過大評価するので、梁の上下最外縁主筋間距離 jtgoを用いた。 (2) 接合部横補強筋の加工形状 接合部横補強筋は、外周筋および中子筋ともに、溶接閉鎖型または末端部 135°フック付きと し、折曲げ内法直径および末端部 135°フックの余長は JASS 5 によるものとする。ただし、高強 度横補強筋の加工形状はメーカーが定める設計指針による。
設計-13 7 章 定着設計 7.1 梁主筋の側面剥離定着耐力確保のための定着長さ 梁主筋定着長さlaは、式(7.1)による必要定着長さlao以上かつ 12db以上とする。ただし、(3/4)Dc 以上を基本とする。
l
2 ao/d = D
b jg- 2(j /d )・S - D
tg b a jg (7.1) Sa = 56-18.6σsy/(k5・k6・σauo) (7.2) Djg = 1.17(jtg/db) + 24 (7.3) ここに、lao/db:必要定着長さ比 σsy:梁主筋の上限強度算定用材料強度 σauo = βao・(31.2Fc-0.5-1.26)・Fc (7.4) :基本支圧強度(N/mm2) βao:側面剥離定着耐力に対する低減係数(βao=0.8 とする。) Fc:コンクリートの設計基準強度 (N/mm2) k5 = 0.9+12.5pjwh ≦1.0 (7.5) : 接合部横補強筋比(pjwh)による補正係数、ただし、pjwhは、式(6.4)による。 k6 = k6d・k6f ≦1.0 (7.6) : 定着筋直径(db)による補正係数 (db:mm) k6d = 1.31-0.0125db ≦1.0 k6f = 0.492+0.0169Fc ≧1.0 (7.7) db:主筋の呼び名に用いる値、Dc:柱せい、jtg:梁上下主筋の重心間距離 【解説】 (1) 梁主筋必要定着長さに基づく定着設計 本指針 4.2 節では、梁主筋定着部は側面剥離定着破壊を起こさないことを前提とし、ト形柱梁 接合部の設計条件を定めた。本項では、上記の前提が成立するように、梁主筋の定着長さは必要 定着長さlao以上かつ 12db以上とすると規定した。 梁主筋の必要定着長さの算定式は、梁主筋の定着長さおよび鉄筋径の影響を考慮した益尾・窪 田式 5)より導出した。益尾・窪田式によると、いずれの既製定着金物を用いた場合にも、精度よ く側面剥離定着耐力を評価できる。 なお、機械式定着工法に関する梁主筋の側面剥離定着耐力に及ぼす直交梁の効果は、実験研究 によって十分に解明されていないので、折曲げ定着を対象とした靱性保証型指針 3)と同様、実験 資料の不足から安全側に考え、式(7.1)では、直交梁の効果を考慮しないこととした。 (2) 必要定着長さ比の算定式の導出 式(7.1)は、梁主筋中心からの側面かぶり厚さ Csを Cs/db=3 とした上で、益尾・窪田式5)より求 めた梁主筋側面剥離定着耐力時の鉄筋引張応力σsauと鉄筋降伏強度σsyを等値し、式を整理して 求めた (lao/db)に関する 2 次式の解として導出される。設計-14
益尾・窪田式における補正係数 k2、k3は、検証用実験より、k2≦1.1 および k3≦1.05 と制限さ れ、この制限をlao で表すと、lao≦18db、lao≦1.1jtgとなる。
すなわち、laoが 18dbまたは 1.1jtgを超える場合、定着長さlaを増やしても、Tauは変化しな い。この場合、Tauを増やすためには、コンクリート強度 Fc、定着筋直径 db、接合部横補強筋比 pjwhなどを変更し、再度、必要定着長さ比を式(7.1)より求める必要がある。 (3) 必要定着長さ比の常用値 式(7.1)による必要定着長さ比lao/dbは、他の要因が一定値の場合、jtg/dbが大きいほど増加す る。定着長さlaは 12db以上と規定されていることを考慮し、lao=12~18dbとすると、lao≦1.1jtg の時には、jtg/db= (lao/db)・(jtg/lao)≧10.9~16.4 となる。これらの場合、定着長さlaを増や しても、式(解 7.1)による Tauは一定値となる。一方、益尾・窪田式の検証用実験によるla/jtg の下限値(0.5)とla/db=12 を用いると、jtg /db=24 となり、db=41mm の場合、jtg=984mm (概ね、実 梁の最大値)となる。なお、同実験のト形部分架構試験体における jtg/dbは 10~20 程度である。 以上より、jtg/db=24(Djg=52.1)とするとともに、pjwh=0.3%( k5= 0.938)とし、梁主筋の必要定 着長さ比lao/dbの常用値を求める。なお、σsyは解表 2.2 による。 解表 7.1 に、梁主筋の鋼種と呼び名およびコンクリートの設計基準強度 Fcを変化させて求めた lao/dbを呼び名に応じた 3 グループにまとめた中で、大きい方の呼び名に対するlao/dbの値を常 用値として示した。 同表中の"-"を付した場合は、k2≦ 1.1 の条件より、接合部横補強筋比 pjwh などを変更しなければ、該当する鉄筋鋼 種に対して利用できないコンクリート であることを示す。 なお、jtg/db>24 の場合、同表による 値を採用できないので、式(7.1)によっ てlao/dbを算定する必要がある。 (4) RC 規準による必要定着長さ比との比較 RC 規準 17 条 定着4)では、柱梁接合部において柱筋、梁筋端を標準フックとする場合、必要投 影定着長さlabは、下式によるとしている。ただし、横補強筋で拘束されたコア内に定着される場 合には 0.8 を乗じてよいとしている。梁主筋の投影定着長さlahの定義を解図 7.2 中に示す。 lab = S・σt・db/(8fb) (解 7.1) ここに、fb:許容付着応力度で、短期許容付着応力度値(Fc/40)+0.9 を用いる(N/mm2)。 S:側面かぶり厚さによる必要定着長さの修正係数 σt:仕口面における鉄筋存在応力度、長期、短期に係わらず、当該鉄筋の短期許容応力 度を用いることを原則とする。 db:鉄筋の呼び名に用いる数値(mm) 上式において、標準フックに対する側面かぶり厚さを鉄筋径の 2.5 倍以上とし S=0.9 とすると ともに、σt=fta(短期許容引張応力度)として求めた RC 規準による必要投影定着長さ比lab/db と 解表 7.1 梁主筋の必要定着長さ比lao/dbの常用値 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48 51 54 57 60 D25以下 D29,D32 14 13 D35~D41 - 17 15 14 D25以下 15 13 D29,D32 18 16 15 14 D35~D41 18 15 13 D25以下 - 18 16 15 14 13 D29,D32 18 15 13 D35~D41 17 15 12 12 12 SD390 12 12 - - 12 SD295 鋼種 呼び名 SD345 12 12 12 - Fc (N/mm2)
設計-15 解図 7.2 機械式定着と折曲げ定着の抵抗機構 の比較を解図 7.1 に示す。なお、S=0.9 に対応す る側面かぶり厚さに対する鉄筋径の比(2.5)は、 本指針 7.1 節による梁主筋中心からの最小側面 かぶり厚さの比(3)に相当する。 解図 7.1 において、本指針および RC 規準によ る場合ともに、lao/dbまたはlab/dbのプロット値 を結ぶ同一線上での Fc の最小値は、該当する鉄 筋鋼種に対して利用できる最小値を表す。また、 RC 規準による場合、17 条の解説に従い、投影定 着長さの増大による定着耐力の上昇効果の上限 をlab/db=20 とし表示している。 同図によると、いずれの鋼種も、本指針による 必要定着長さ比lao/dbは、同一 Fcに対する RC 規 準による必要投影定着長さ比lab/db よりも小さ く、細径鉄筋の場合、両者の差は大きい。また、 SD295 および SD345 の場合、呼び名が D35~D41 の太径鉄筋に対して利用できる本指針による Fc の最小値は、RC 規準による場合よりも大きい。 この点は、益尾・窪田式の補正係数 k6より、低 強度コンクリートに対し、太径鉄筋の側面剥離定 着耐力時の支圧強度が細径鉄筋の場合よりも小 さく評価されることに起因する。 (5) 機械式定着と折曲げ定着の抵抗機構 本指針によるlao/dbと RC 規準によるlab/dbの差は、機械式定着と RC 規準で主対象とする折曲 げ定着の抵抗機構の差異に起因すると考えられる。すなわち、解図 7.2 に示すように、機械式定 着による定着金物内面での支圧抵抗は、折曲げ定着 3)による折曲げ部内面での支圧抵抗よりも大 きいと推察される。 (a) 機械式定着の場合 (b) 折曲げ定着の場合 10 15 20 20 30 40 D25以下 D29,D32 D35~D41 Fc (N/mm2) lao/db(lab/db) SD295 RC規準 10 15 20 20 30 40 D25以下 D29,D32 D35~D41 Fc (N/mm2) SD345 RC規準 lao/db(lab/db) 10 15 20 20 30 40 50 60 D25以下 D29.D32 D35~D41 Fc (N/mm2) SD390 RC規準 lao/db(lab/db) 解図 7.1 本指針による必要定着長さ比 と RC 規準による必要投影定着長さ比の比較
設計-16 図 7.1 掻き出し破壊定着耐力 に関する記号の定義 7.2 梁主筋掻き出し定着耐力時接合部せん断力の算定 梁主筋掻き出し定着耐力時の接合部せん断力 Vcuは、式(7.8)による。 Vcu = ζh・Tcu (7.8) ζh = 1-(l/h)・(jtg/lo) (7.9) Tcu = βc・kn・(Tc+Tw) (7.10) la・ ・ ・ la 2 2 t g t g c e c T = 2 b 0 . 3 1 3 F ( + j ) / j (7.11) be = bs+Ce1+Ce2 (7.12) Tw = 0.7Aw・σwy (7.13)
σ
≤ n o c c k = 1 + / F m i n ( 1 + 0 . 0 1 6 F , 1 . 4 5 ) (7.14) σo = Nc/(Bc・Dc) (7.15) ここに、Tcu:梁主筋掻き出し定着耐力 βc:低減係数(βc=0.6 とする)、 la:定着長さ Fc:コンクリートの設計基準強度(単位:N/mm2) jtg:梁上下主筋の重心間距離、 be:柱有効幅 Ce1, Ce2:最外縁の定着筋中心からの柱側面かぶり厚さ(≦0.8la) bs:最外縁に配置された定着筋の中心間距離 Aw:梁定着筋列より柱上下方向にそれぞれla の 範囲および柱有効幅 be の範囲内に配置され た横補強筋の全断面積 σwy:接合部および柱の横補強筋の降伏強度 kn:柱軸圧縮応力度σoの効果を表す係数 Nc:地震時柱軸力、Bc,Dc:柱断面幅およびせい ただし、Nc≦0 の時は、Nc=0 とする。 柱梁接合部および柱の横補強筋の降伏強度σwyは、式 (7.16)による。 σwy = min (σwyo, 55√Fc) (7.16) ただし、Fc≧60N/mm2の時は、Fc=60N/mm2とする。 ここに、σwyo:接合部および柱の横補強筋の規格降伏点 【解説】 (1) 梁主筋掻き出し定着耐力の算定式 梁主筋掻き出し定着耐力時の接合部せん断力 Vcuは、式(7.8)に示すように、掻き出し定着耐力 Tcuに換算係数ζhを乗じて求められ、掻き出し定着耐力 Tcuは、城らの提案式を幾分簡略化した 靱性保証型指針3)に示された算定式(7.10)によって求められる。 (2) 梁主筋掻き出し定着耐力に及ぼす接合部横補強筋の効果 柱梁接合部および柱の横補強筋の負担力 Twは、掻き出し破壊(コーン破壊)面と交わる横補強筋 の断面積と降伏強度の積(Aw・σwy)の 0.7 倍として、式(7.13)で求められる。機械式定着工法によ るト形柱梁接合部を模擬した実験において掻き出し破壊(コーン破壊)を起こした試験体の横補強設計-17 筋には、高強度鉄筋と普通強度鉄筋が用いられている。高強度鉄筋を用いた場合、材料強度試験 値のσwy をそのまま式(7.13)に代入すると、横補強筋の負担力 Tw が過大評価される。式(7.16) による横補強筋の降伏強度σwyは、この点を考慮し、Tmax/Tcuの平均値がほぼ 1 になるように、 コンクリートの設計基準強度 Fcに応じて制限した値としている1)。Tmaxは最大耐力実験値である。 (3) 梁主筋掻き出し定着耐力に及ぼす柱軸圧縮応力度の効果 梁主筋掻き出し定着耐力の算定式の検証に用いた検討対象試験体の柱軸力比σo/σBは、梁曲げ 降伏後の接合部せん断破壊型(BP)試験体では 0.0~0.23、接合部せん断破壊型(P)試験体および定 着部破壊型(A)試験体では 0.0~0.10 である。これらの柱軸力比に対して、式(7.14)による柱軸圧 縮応力度の効果を表す係数 knの最大値は 1.48 および 1.32 となる。σBはコンクリートの圧縮強 度を示す。 式(7.14)による柱軸圧縮応力度の効果を表す係数 kn は、この点を考慮し、柱軸力比σo/Fc を 0.2 で頭打ちして与えている1)。ただし、係数 knは、地震時軸力を用いて算定することとした。
設計-18 8 章 許容応力度設計 8.1 許容応力度設計の適用対象 許容応力度設計の適用対象は、ト形柱梁接合部および主筋定着部、ならびに小梁およびスラブ の主筋定着部とする。ただし、ト形柱梁接合部および主筋定着部の許容応力度設計は、骨組全体 が終局限界変形(メカニズム)に達しても、柱梁接合部に接続する柱および梁が曲げ降伏しない場 合に適用する。 【解説】 本指針では、許容応力度設計の適用区分を明確にするために、骨組全体の終局限界変形(メカニ ズム)時に、柱梁接合部に接続する柱および梁が曲げ降伏しない場合には、許容応力度設計を適用 できるとした。許容応力度設計を行う柱梁接合部および柱、梁の主筋定着部の目標性能は、3 章 の解説(1)に示す①と②の性能とする。 8.2 ト形柱梁接合部および主筋定着部の許容応力度設計の基本方針 ト形柱梁接合部および主筋定着部の許容応力度設計は、8.3 節ならびに以下の方針に従って行う。 (a) 長期荷重時には、ト形柱梁接合部にせん断ひび割れを発生させない。 (b) ト形柱梁接合部の接合部横補強筋は 6.2 節の構造規定を満足するものとする。 (c) ト形柱梁接合部における梁主筋定着部は、4.4 節の構造規定を満足するものとし、梁主筋の定 着長さは、式(7.1)による必要定着長さlao以上かつ 12db以上とするとともに、(3/4)Dc以上 の場合に限定する。dbは主筋の呼び名に用いる値、Dcは柱せいを示す。 【解説】 (1) 長期荷重時の柱梁接合部 ト形柱梁接合部の梁端柱面での梁上端筋については、長期荷重時に高い引張応力が作用し、梁 端柱面近傍に曲げひび割れが発生する場合がある。すなわち、梁主筋引張鉄筋比 ptが大きく、か つ、コンクリート強度が低く、長期柱軸力が低い時、梁端柱面での梁上端筋の引張応力が長期許 容引張応力度に達する前に、柱梁接合部にせん断ひび割れが発生する恐れがある。したがって、 大きな長期荷重を受けるト形柱梁接合部については、委員会指針 1)に基づき、柱梁接合部にせん 断ひび割れを発生させないように設計する必要がある。 (2) ト形柱梁接合部における梁主筋の定着長さ ト形柱梁接合部については、許容応力度設計においても、終局強度設計と同様、梁曲げ降伏後 の変形性能を確保するために、骨組全体が終局限界変形に達するまで、梁主筋定着部は側面剥離 定着破壊を起こさないように、梁主筋の定着長さlaは、式(7.1)による必要定着長さlao以上かつ 12db以上とした。また、許容応力度設計の場合、梁主筋の掻き出し定着破壊を防止するために、 梁主筋定着長さlaは(3/4)Dc以上の場合に限定した。
設計-19 8.3 ト形柱梁接合部の短期許容せん断耐力に関する設計 (1) 設計条件 ト形柱梁接合部は、式(8.1)の条件を満足するように設計する。 Vpah > Vmah (8.1) ここに、Vmah:柱梁接合部の水平方向の短期設計用せん断力 Vpah:柱梁接合部の水平方向の短期許容せん断耐力 (2) 短期設計用せん断力の算定 ト形柱梁接合部の短期設計用せん断力 Vmahは、式(8.2)による。 ただし、式(8.3)中の Qcaは、上下柱の短期設計用せん断力 QDの平均値としてもよい。 Vmah = ξha・Qca (8.2) Qca = cQga = (Mgao/lo)・(l/h) (8.3) ξha = (h/l)・(lo/jg)-1 (8.4) Mgao = Tga・jg (8.5) ここに、Qca:柱梁接合部に接続する柱または梁の短期許容曲げ耐力時柱せん断力 jg:梁の応力中心距離、ただし、jg=(7/8)dgとする。 dg:梁の有効せい、 Mgao:柱梁接合部に接続する梁の許容曲げ耐力 Tga:梁引張鉄筋の許容引張耐力、 その他の記号の定義は、5 章による。 (3) 短期許容せん断耐力の算定 ト形柱梁接合部の水平方向の短期許容せん断耐力 Vpahは、式(8.6)による。 Vpah =τpa・bj・Djh (8.6) τpa = κa・(fs-0.5) (8.7) ここに、fs:解表 2.1 によるコンクリートの短期許容せん断応力度 (N/mm2) κa:許容せん断耐力に対する接合部形状係数(ト形柱梁接合部、κa=6.5) bj:式(6.3)による柱梁接合部の有効幅 Djh: 柱梁接合部の水平方向および鉛直方向の有効せい(6.1 節による) 【解説】 (1) 設計条件 ト形柱梁接合部の許容応力度設計では、梁主筋の定着長さlaは柱せい Dcの(3/4)倍以上とする ことを前提とし、梁主筋掻き出し定着耐力時せん断力を考慮せず、短期許容せん断耐力に対する 設計条件が定められている。laが(3/4)Dc未満の場合には、4.2 節に示した終局強度設計を行うも のとした。この点は、ト形柱梁接合部における梁主筋掻き出し定着耐力に関する実験研究が不足 しているので、仕口面での梁主筋引張降伏時における、掻き出し定着破壊型の梁主筋定着部の損 傷程度が十分に検証されていないためである。 (2) 短期設計用せん断力 短期設計用せん断力 Vmahの算定式は、終局強度設計と許容応力度設計で用いる諸元の違いを考 慮し、5 章に示した終局強度設計用せん断力の算定式を変更した式である。
設計-20 許容応力度設計の場合、接合部せん断力解析値に比べて柱梁接合部の短期設計用せん断力をで きるだけ大きく設定しないと、解析のばらつき等によって、柱梁接合部がせん断破壊を起こす恐 れがある。したがって、柱梁接合部の短期設計用せん断力の算定に用いる柱の短期設計用せん断 力 QDは、骨組全体の終局限界変形(メカニズム)時における、柱梁接合部に接続する柱のせん断力 に適切な割り増し係数を乗じて算定する必要がある。 ただし、特別の検討を行わない場合、柱の短期設計用せん断力 QDは、RC 計算規準と同様、骨 組の弾性解析による柱のせん断力解析値を 1.5 倍以上に割り増した値としもよい。 (3) 短期許容せん断耐力の算定式 柱梁接合部の短期許容せん断耐力 Vpahは、式(8.6)に示すように、式(6.1)によるせん断終局耐 力 Vpuhと同様、柱梁接合部の有効幅と有効せいの積にせん断強度τpaを乗じて求めることとした。 τpaの算定式(8.7)中のκaは、RC 計算規準と同様、Fj=0.8×σB0.7≒0.8×15.4(fs-0.5)、直交梁 の有無による補正係数(φ=0.85)を考慮して定めた。Fjは靱性保証型指針による接合部せん断強度 の基準値、σBはコンクリートの圧縮強度を示す。 式(8.6)を用いて許容応力度設計を行った柱梁接合部については、直交梁の存在を考慮し、主筋 の上限強度算定用材料強度を規格降伏点の 1.30 倍として終局強度設計を行った場合とほぼ同じ 構造性能が確保される。ただし、隅柱などにおいて直交梁が柱梁接合部の両側に存在しない場合、 安全率αaを大きく設定し、κaを定める必要がある。
設計-21 8.4 小梁およびスラブの主筋定着 小梁主筋およびスラブ筋は、肋筋で囲まれた梁断面または縦筋と横筋で囲まれた壁部に定着す るものとし、同主筋の定着長さlaは、下記による。 (1) 肋筋で囲まれた梁断面に定着される場合 この場合、定着長さlaは、式(8.8)による必要定着長さlao以上、かつ、(2/3)B 以上とすること を基本とし、主筋中心から梁上面までのかぶり厚さ Cgは 3db以上とする。B は定着される側の梁 幅、dbは主筋直径を示す。
lao = max (lao1, lao2, lac) (8.8) lao1/db = 12φa・fta/(k6・σaua) - 45 (8.9) lao2/db = φa・S・fta/√σB - nd (8.10) (D19 以下) いずれの呼び名も、lac/db=14 とする。 (D22~D29) D22 の場合lac/db=16、D25 の場合lac/db=18、D29 の場合lac/db=19 とする。 ただし、部材端フェイスでの主筋の引張応力σtを下記の値とする場合、lac/db=14 とするこ とができる。 D22:σt=0.9fta, D25:σt=0.8fta, D29:σt=0.75fta ここに、lao1:主筋の上面押し出し定着耐力に対する必要定着長さ lao2:主筋の掻き出し定着耐力に対する必要定着長さ lac:部材端の曲げひび割れ制限値 wcr(0.3mm)によって決まる必要定着長さ fta:解表 2.3 による主筋の長期許容引張応力度 φa:定着耐力に対する安全率で、φa=1.6 とする。 σaua=φg・(31.2Fc-0.5-1.26)・Fc (8.11) :主筋の押し出し定着耐力に対する基本支圧強度 φg:主筋の上面押し出し定着耐力に対する有効係数(φg=0.5 とする) k6 : 式(7.6)による主筋直径(db)による補正係数 S = 2.53nr/nb (8.12) nr:主筋本数 nb = (bs/db)+(la1/db)+(Da/db) (8.13) :支持される梁の有効幅に対する鉄筋径倍数 bs:最外縁に配置された主筋の中心間距離 la1:仮定定着長さ(la1/db=12 とする)、 Da:定着板の直径(Da/db=2.4 とする) nd = 3+(Da/2db) (8.14) :上面かぶり厚さに対する鉄筋径倍数 D32 以上の主筋は、特別の検討を行った場合を除き、適用範囲外とする。また、片持ち形式の小 梁およびスラブの主筋定着については、別途、クリープ変形の影響を考慮するものとする。 (2) 縦筋と横筋で囲まれた壁部に定着する場合 この場合、定着長さlaは、式(7.1)による必要定着長さlao以上かつ 12db以上とする。ただし、 (2/3)B 以上とする。B は定着される側の壁厚さ、dbは壁筋直径を示す。
設計-22 (a) 梁への定着 【解説】 (1) 小梁およびスラブの主筋定着の考え方 長期荷重のみを受ける小梁およびスラブの主筋定着は、本工法開発実験の結果に基づき、式 (8.8)による必要定着長さlao以上の定着長さを確保することを基本とした。 現在、機械式定着工法による小梁主筋定着に関する実験は本工法開発実験以外になく、また折 曲げ定着工法による小梁主筋定着に関する実験もほとんど行われておらず、小梁主筋の定着設計 については、未解明な事項が多く残されている。したがって、太径主筋を用いる片持ち形式の小 梁主筋等の定着設計は、ひび割れやクリープ変形等の影響を考慮し慎重に行う必要がある。 (2) 式(8.8)による必要定着長さ比 本工法開発実験によると、機械式定着工法による小梁主筋定着部では、小梁端近傍の大梁上面 の曲げひび割れおよび小梁上端筋の抜け出しの進展に伴い、ト形柱梁接合部の梁主筋定着部では 見られなかった大梁上面の押し出し破壊が生じた。また、折曲げ定着工法による小梁主筋定着部 では、大梁からの掻き出し破壊が生じた。 上記の実験結果に基づき、小梁主筋およびスラブ筋の必要定着長さlao は、式(8.8)に示すよう に、lao1、lao2、lac のうち最も大きい値とした。式(8.8)の導出方法は、「説明資料」に詳述され ているので参照されたい。 (3) 縦筋と横筋で囲まれた壁部に定着する場合 この場合、解図 8.1 (b)に示すように、定着筋の上下に拘束筋を配置し、ト形柱梁接合部におけ る梁主筋と同等の定着耐力を確保することを前提に、定着長さlaは、式(7.1)による必要定着長さ lao以上かつ 12db以上とできるとした。ただし、この場合の応力状態は、正負繰返し力を受ける ト形柱梁接合部の場合よりも緩和されるので、(2/3)B 以上とした。 この場合の必要定着長さlaoの常用値は、解表 7.1 によることができる。 (b) 壁への定着 解図 8.1 小梁、スラブの主筋端部の配筋例
設計-23 9 章 その他の設計 9.1 段差梁が接続する柱梁接合部 (1) 左右梁せいの重なりが大きい方の梁せいの 2/3 以上の場合 この場合、十字形柱梁接合部ではκu=1.0、T 形柱梁接合部ではκu=0.7 とし、柱梁接合部の設 計を行うことができる。κuは式(6.1)中の接合部形状係数を示す。 (2) 左右梁せいの重なりが大きい方の梁せいの 2/3 未満の場合 この場合、十字形柱梁接合部ではκu=0.7、T 形柱梁接合部ではκu=0.4 とし、柱梁接合部の設 計を行う。 (3) 梁主筋の定着設計 柱梁接合部内に定着される梁主筋の定着設計は、7 章に従って行う。 【解説】 本節の規定は、段差梁が接続する十字形柱梁接合部に関する既往実験結果 2)に基づいて定めた ものである。十字形柱梁接合部の設計は、靭性保証型設計指針3)に従い行う。T 形柱梁接合部につ いては、9.2.1 項の柱主筋定着に関する規定を満足する場合、委員会指針1)に従い、せん断力に関 する設計を行えばよい。 なお、梁降伏型の十字形柱梁接合部の終局 強度設計用せん断力 Vmuhは、下式を用いると、 式(5.1)より求められる(解図 9.1 参照)。 Qcu=cQgu = {(Mgu+Mgu’)/lo}・(l/h) (解 9.1) ξh = (h/l)・(lo/jge)-1 (解 9.2) jge = (jg1+jg2)/2 (解 9.3) ここに、Qcu:柱梁接合部に接続する梁の 曲げ終局耐力時柱せん断力 Mgu,Mgu’:左右梁の曲げ終局耐力 jg1,jg2:左右梁の応力中心距離 D D (2/3)D D (2/3)D D(2/3)D D(2/3)D 図 9.1 左右梁せいの重なりを大きい方の梁せい D の 2/3 倍とした段差梁の例 l/2 l/2 lo/2 Dc lo/2 Qg Qcu Dg Mg Mc h/2 ho/2 h/2 ho/2 Mc Qcu Vh(Vv) Qg' Mg' 解図 9.1 十字形部分架構の応力状態
設計-24 図 9.2 かんざし筋の配筋詳細 9.2 T 形および L 形柱梁接合部 9.2.1 T 形柱梁接合部 (1) 降伏ヒンジが形成される場合 骨組の終局限界変形(降伏メカニズム)時に、最上階の柱頭部に降伏ヒンジが形成される場合、 定着用スタブを設ける。 この場合、柱主筋の定着長さlaは、40db以上かつ梁せい Dgの 1.5 倍以上とし、接合部横補強筋 比 pjwhは 0.3%以上とする。dbは柱主筋直径であり、pjwhの算出は式(6.4)による。 (2) 降伏ヒンジが形成されない場合 骨組の終局限界変形(降伏メカニズム)時に、最上階の柱頭部に降伏ヒンジが形成されない場合、 下記の構造規定を満足すれば、定着用スタブを設けず、柱主筋の定着に本工法を適用してもよい。 1) 柱主筋の定着長さlaは、16db以上かつ(3/4)Dg以上とし、定着金物の位置を梁上端筋の直下 まで延伸させる。また、柱主筋中心からの側面かぶり厚さ Csは 3db以上とし、定着板内面 からの背面かぶり厚さ Cbは 4db以上とする。 2) SD390 に対するコンクリートの設計基準強度 Fcの適用範囲は、D32 以下の時 30N/mm2以上、 D41 以下の時 36N/mm2以上とする。 3) 接合部横補強筋は、外周筋と中子筋を併用したものとし、接合部横補強筋比 pjwhは 0.6%以 上とする。 4) X,Y 両方向ともに、柱梁接合部内の梁上端筋の上部より、下式による柱頭補強筋比 pjwv が 0.3%以上のかんざし筋を配置する。かんざし筋の鋼種は、SD295A,B, SD345, SD390 のいず れかとし、かんざし筋の足部長さは梁下端筋直下までの長さ以上、外幅は接合部横補強筋 の内幅と同じとする。 pjwv = nv・awv/(Bc・jtco) (9.1) ここに、Bc:柱幅、jtco:柱の両側最外縁主筋間距離 nv: Bc区間内の柱頭補強筋の組数 awv:柱頭補強筋 1 組の断面積 (かんざし筋足部鉄筋 2 本分の断面積の和) ただし、X 方向に対しては Bc=Bcx, nv=nvx, jtco=jtcox、Y 方向に対しては Bc=Bcy, nv=nvy, jtco=jtcoyとする。 Bcx, Bcy:X 軸および Y 軸と直交する柱幅 nvx, nvy:X 軸および Y 軸に平行に配置された Bcx, Bcy区間内の柱頭補強筋の組数 jtcox, jtcoy:X 軸および Y 軸に平行に配置された 柱の両側最外縁主筋間距離
設計-25 【解説】 (1) 降伏ヒンジが形成される場合 本工法の適用の妥当性は T 形柱梁接合部の実験によって確認されていないので、最上階の柱頭 部に降伏ヒンジが形成される場合、定着用スタブを設けることとし、接合部横補強筋は、本設計 指針 6.2 節と同様、pjwh≧0.3%を規定した。 なお、T 形柱梁接合部に接続する柱の部材種別が FA または FB であっても FC に下げれば、本文 (2)項による定着用スタブを設けない設計を行っても差し支えないと考えられる。 (2) 降伏ヒンジが形成されない場合 最上階の柱頭部に降伏ヒンジが形成されない場合、委員会指針 1)による設計区分Ⅰに対する構 造規定と同じ規定を定めた。この構造規定を満足すれば、定着用スタブを設けず、柱主筋の定着 に本工法を適用してもよいとした。設計区分Ⅰの目標性能は、柱梁接合部が接続する柱または梁 の曲げ降伏を保証する終局耐力を有することとしている。 (3) 梁曲げ降伏型 T 形接合部への適用 委員会指針 1)では、機械式定着工法による柱梁接合部は、靱性保証型指針による折曲げ定着工 法の場合と同等以上の終局耐力を発揮すると推察されるので、接合部横補強筋、柱頭補強筋およ び柱主筋に関する構造規定を満足する場合には、梁曲げ降伏型 T 形接合部の場合にも機械式定着 工法を適用できるとしている。以上より、柱曲げ降伏型の場合と同様、9.2.1 項の規定を満足す る場合には、梁曲げ降伏型 T 形接合部にも本工法を適用してもよいと考えられる。
設計-26 9.2.2 L 形柱梁接合部 最上皆の L 形柱梁接合部への柱主筋の定着に本工法を用いる場合には、定着用スタブを設ける。 この場合、柱主筋の定着長さlaは、40db以上かつ梁せい Dgの 1.5 倍以上とし、接合部横補強筋 比 pjwhは 0.3%以上とする。dbは柱主筋直径であり、pjwhの算出は式(6.4)による。 また、梁主筋の構造規定は、下記による。 1) 最上階の L 形柱梁接合部への梁上端筋の定着は 90°折曲げ定着とし、投影定着長さlahは 16db 以上かつ(3/4)Dc以上、余長部折曲げ終点からの定着長さlavは、式(9.2)による必要定着長さ以 上とする。ただし、30db未満としてはならない。dbは梁主筋直径、Dcは柱せいを示す。 lavo = σyo・db/(4fa) (9.2) ここに、σyo:梁上端筋の規格降伏点 fa:解表 2.4 によるその他の鉄筋のコンクリートに対する短期許容付着応力度 2) 梁下端筋の定着長さlaは、16db以上かつ(3/4)Dc以上を基本とし、式(7.1)による必要定着長 さ以上とする。ただし、la<(3/4)Dcの場合、下式の条件を満足するものとする。また、定着板 内面からの背面かぶり厚さ Cbは 4db以上とする。 Tcu > σsy・Σat (9.3) ここに、Tcu:式(7.10)による梁下端筋の掻き出し定着耐力 σsy, Σat:梁下端筋の上限強度算定用材料強度および断面積の総和 【解説】 (1) 柱主筋の定着 本工法の適用の妥当性は、L 形柱梁接合部の実験によって確 認されていないので、最上階の L 形柱梁接合部における柱主筋 の定着に本工法を適用する場合には、解図 9.2 に示すように、 定着スタブを設けることとした。定着スタブを設けた場合、L 形柱梁接合部であっても、梁主筋はト形柱梁接合部の場合と同 様の定着耐力を有すると考えられるので、コンクリート設計基 準強度 Fcの適用範囲の下限を定めていない。ただし、L 形柱梁 接合部は、委員会指針1)の場合と同様、接続する梁の曲げ降伏 型となるように設計することを基本とする。 なお、定着用スタブ内の横補強筋は、柱梁接合部に接続する 最上階柱頭部の横補強筋と同鋼種、同径かつ同間隔以下とし、 定着用スタブにはかんざし筋を配置しなくてもよい。 (2) 梁主筋の定着 最上階の L 形柱梁接合部における梁上端筋および梁下端筋 の定着に関する規定は、委員会指針1)に準じて定めた。 なお、最上階の L 形柱梁接合部との構造形態の類似性より、最下階の L 形柱梁接合部への梁上 端筋の定着にも本工法を適用できる。 解図 9.2 定着スタブを設けた L 形柱梁接合部の配筋詳細
設計-27 9.3 壁式ラーメン壁柱・梁接合部 (1) 梁主筋の定着設計 壁柱への梁主筋の定着部は、7 章によって設計する。ただし、中壁柱への梁主筋定着長さlaは、 中壁柱のせいの 1/2 倍の 3/4 以上を基本とする。 (2) 壁柱・梁接合部のせん断終局耐力の算定 壁柱・梁接合部のせん断終局耐力 Vpuhは、下記の有効せい Djhを用い、式(6.1)より算定する。 (外壁柱の場合) Djh = la (中壁柱の場合) 上端筋・下端筋とも本工法の場合: Djh = la×2 上端筋が通し配筋、下端筋が本工法の場合: Djh = 壁柱せい/2 + la ただし、壁柱・梁接合部に設備用小開口を設ける場合には、下記の有効せい Djhを用いる。 (外壁柱の場合) Djh = la – φo (中壁柱の場合) 上端筋・下端筋とも本工法の場合: Djh = la×2–Σφo 上端筋が通し配筋、下端筋が本工法の場合: Djh = 壁柱せい/2+la–Σφo ここに、la:梁主筋の定着長さ、φo:開口直径 (3) 構造規定 壁柱・梁接合部および同接合部内に設ける設備用小開口部の配筋要領は、壁式ラーメン設計指 針に準拠する。設備用小開口部の配筋要領に関する構造規定は、表 9.1 および図 9.3 による。 表 9.1 壁柱・梁接合部における設備用小開口部に関する構造規定 中壁柱 外壁柱 開口直径 梁せいの1/4以下かつ壁柱せいの1/8以下 壁柱せいの1/5以下 開口数 2個以下 (開口中心間距離:開口直径の3倍以上) 1個 コーン状破壊面 内の開口 コーン状破壊面の内側には、原則として開口を設けない。やむを得ず設ける 場合には、開口直径を150mm以下、梁せいの1/4以下かつ壁柱せいの1/8以下 とし、定着板外面と開口外周面との距離を開口直径の2倍以上とする。 (垂直方向)梁上面と開口中心との距離は、梁せいDの1/3~1/2倍とする。 (水平方向)壁柱面と開口外周面との距離は、400mm以上とする。 開口位置 図 9.3 中壁柱・梁接合部内における設備用小開口部に関する構造規定
設計-28 【解説】 (1) 壁式ラーメン鉄筋コンクリート造の設計 壁式ラーメン鉄筋コンクリート造の設計は、国土交通省国土技術政策総合研究所・他「壁式ラ ーメン鉄筋コンクリート造設計施工指針(平成 15 年版)」(以下、「壁式ラーメン設計指針」)等に 準拠する。ただし、壁柱主筋および梁主筋の定着設計の設計は、本設計指針による。 壁式ラーメン設計指針によると、壁柱断面の偏平率(壁柱せい/壁柱幅)は、2 以上 5 以下(2 階 以上は 2 以上 8 以下)とし、終局時の靭性が確保されていれば、桁行方向外壁柱の偏平率を 2 未 満としてよいとしている。 (2) 梁主筋の定着設計 中壁柱への梁主筋の定着設計では、中壁柱せいの 1/2 を 1 本の仮想柱とみなし、同仮想柱に左 右梁主筋をそれぞれ定着させると考えている。 (3) 壁柱・梁接合部のせん断終局耐力 中壁柱・梁接合部のせん断終局耐力は、同接合部に開口が設けない場合、有効せい Djh が左右 梁主筋の定着長さlaの和に等しいとして算定することとした。同接合部に設備用小開口を設ける 場合には、有効せい Djhは、開口直径φoを減じることとした。 9.4 壁筋定着部 壁筋は、せん断補強筋で囲まれた柱、梁断面内に定着することを基本とし、壁筋の定着長さla は、式(7.1)による必要定着長さlao以上かつ 12db以上とする。 dbは壁筋の呼び名に用いる値を示す。 【解説】 柱および梁に定着される壁筋は、地震荷重時に塑性化を伴う引張力を受ける恐れがあるので、 ト形柱梁接合部における梁主筋と同様、壁筋の定着長さlaは、式(7.1)による必要定着長さlao以 上かつ 12db以上とした。
設計-29 10 章 配筋要領 本工法による配筋例を以下に示す。 図 10.3 段差梁付き十字形接合部 図 10.1 ト形接合部(1 段筋) 図 10.2 ト形接合部(2 段筋) 図 10.4 L 形接合部-1(最上階) (ベタ基礎、布基礎の場合) (独立基礎の場合) 図 10.5 L 形接合部-2(最下階)
設計-30 (a)中壁柱・梁接合部 (b)外壁柱・梁接合部 図 10.8 壁式ラーメン構造の壁柱・梁接合部 (d)外壁柱・梁接合部(小開口付き) (c)中壁柱・梁接合部(上端通し鉄筋) 図 10.6 T 形接合部-1(定着用スタブがある場合) (立面図) (平面図) 図 10.7 T 形接合部-2(定着用スタブがない場合)
設計-31 図 10.9 SRC 造ト形接合部 図 10.10 プレストレスト鉄筋コンクリート造柱梁接合部 PC 鋼材の定着具を接合部内に配置する場合、PC 鋼材の定着具と 定着金物による支圧力の影響に配慮して設計すること。 図 10.12 壁・直交壁(柱)接合部 図 10.11 壁・梁接合部
設計-32 参考文献 1) 日本建築総合試験所・機械式鉄筋定着工法研究委員会:機械式鉄筋定着工法設計指針、2006.1 2) 日本建築総合試験所・機械式鉄筋定着工法研究委員会:2003 年度報告(研究資料編)、2004.3 3) 日本建築学会:鉄筋コンクリート造建築物の靱性保証型耐震設計指針・同解説、8 章 柱梁接合部 の設計、pp.241-277, 1999 4) 日本建築学会:鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説、-許容応力度設計法-、15 条梁・柱お よび柱梁接合部のせん断補強、pp.133-169, 17 条定着、pp.189-202, 1999 5) 益尾、窪田:機械式定着工法によるRC 造ト形接合部の終局耐力に関する設計条件、日本建築 学会構造系論文集、第590 号、pp.87-94, 2005.4