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環境配慮型水路における魚類相の変化

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Academic year: 2021

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Title

環境配慮型水路における魚類相の変化( 内容と審査の要旨

(Summary) )

Author(s)

森, 須美子

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(農学) 甲第610号

Issue Date

2013-09-10

Type

博士論文

Version

ETD

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/47821

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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[4] 氏 名(本(国)籍) 森 須美子(岐阜県) 学 位 の 種 類 博士(農学) 学 位 記 番 号 農博甲第610号 学 位 授 与 年 月 日 平成25年9月10日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第3条第1項該当 研 究 科 及 び 専 攻 連合農学研究科 生物環境科学専攻 研究指導を受けた大学 岐阜大学 学 位 論 文 題 目 環境配慮型水路における魚類相の変化 審 査 委 員 会 主査 岐阜大学 准教授 伊 藤 健 吾 副査 岐阜大学 教 授 千 家 正 照 副査 静岡大学 教 授 土 屋 智

論 文 の 内 容 の 要 旨

近年行われている圃場整備は,農業生産性の向上を目的としているため,用排水路の 分離や水田の汎用化,湿地帯の埋め立てなど水域の減少や連続性が減少を招いている. 特に汎用化水田では,畑作物の栽培がおこなわれるが,これにより水田および水路など の水域が時間的にも空間的にも減少することになり,水田生態系への影響が懸念される. 実際に,水田環境を代表する生物であるメダカは,環境省のレッドリスト種に指定され るほど減少しており,その原因として水田と水路の連続性が失われたために自由に移動 できなくなった環境が原因であることが報告されている. 改正土地改良法が施工され,圃場整備事業実施の際には環境へ配慮することが原則と され,水路内に魚道や植生帯を設けるなどされた環境配慮型水路の整備が進められてい る. そこで本研究では,環境配慮型水路の整備および水田の汎用化により,生物がどのよ うに移動し定着していくのかについて魚類を中心に調査を行い,今後どのような対策が 必要になるのかについて検討した. 調査地区の位置する岐阜県安八郡輪之内町は,揖斐川と長良川に囲まれた標高2.5m 程度の典型的な輪中地帯であり,水の流出入の経路が限られている.輪中内には堀田と 呼ばれる特有の環境が存在し,小型の淡水魚類をはじめとした多くの生物が生息してい た.しかし,農業生産性が悪く,昭和40 年代より圃場整備事業が行われ,近年では水 田の汎用化を目的とした整備が行われてきた.

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調査方法は,サデ網,タモ網,カゴ網を使用して魚類を捕獲し,魚種や体調を計測し た後捕獲地点に放流した.また,水質計を用いて水温,pH,DO,EC を測定し,周辺 環境として水深や植生の有無および水田での作付状況を記録した.調査はいずれも,平 成18 年度から平成 19 年度にかけて月 1 回程度行った. 1.環境配慮型水路の整備による影響 前述したように,輪之内町内には堀田と呼ばれる特有の湿地環境が存在している.こ のような湿地帯を含む地区で汎用化水田への整備が行われた.事業の原則に従い,湿地 帯と連続する水域であった幹線排水路が植生帯や様々な工法の護岸,水路と連続する池 などを設け環境配慮型水路として整備された.水路内での調査は,上流から(1)土水路, (2)階段状護岸,(3)花いかだ,(4)ビオトープ池,(5)ソダ護岸の 5 箇所で行い,生整備前 の湿地帯における調査結果と比較し,生物の移動・生息状況を比較した.幹線排水路と 湿地帯は河川に合流する手前で連続しており,湿地帯から生物の人為的な移動は行わな かった. 調査の結果,土水路では調査期間中にコンクリート2 面張りの水路へと改修され,改 修後は著しく減少した.階段状護岸では,調査2 年目に実際の水深が計画水深を大きく 下回り,護岸に水際植生帯が形成されることがほとんどなく,魚数が減少した.花いか だでは,非灌漑期に仔稚魚を含む魚類が捕獲されたことから,水面が被覆されていたこ とにより避難場所となっていると推測される.しかし,花いかだを係留するロープにご みが漂着する,水中に伸びる植物根が捕食されることにより植物が枯死し,外来種が繁 茂するなどの欠点も確認された.ビオトープ池では,整備時に抽水植物帯を設けたが植 生帯が活着する前に水深があがり,植生帯が確保できなかったが,多くの魚種が仔稚魚 とともに確認された.水中に藻類が繁茂していたことが影響していると考えられる.ソ ダ護岸では,他の地点とは異なり,モツゴが優占種であることが確認された.モツゴが 選択的にこの地点に生息したと考えられるが,モツゴと同様の環境を好むブルーギルも 捕獲されているため,外来種による淘汰の可能性を考えなければならない.メダカやカ ワバタモロコといった遊泳魚は成魚・仔稚魚とも湿地帯と同じ種数が確認された.一方 で,ツチフキやドジョウなど底生魚類が著しく減少した.水路を整備してから湿地帯を 埋め立てるまでに2 年という期間を設けたが,この 2 年間でも底生魚類は移動していな いことになる.このことから,湿地帯と代替環境が連続していても底生魚類は人為的な 移動を行ったほうがよいことが示唆された. 2.水田の汎用化に伴う影響 水田が汎用化されることにより,排水路の水深はこれまでの60cm から 90cm に掘り 下げられ田面との連続性が希薄になることが予想された. 汎用化への整備は平成 17 年度の収穫後に行われた.整備後 1 年目となる平成 18 年 度には水田からの漏水を懸念し水深が水路の天端を超えて100cm となることもあり, 汎用化水田の水路でもメダカやカワバタモロコが仔稚魚とともに多く捕獲された.しか

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し,2 年目となる平成 19 年度には灌漑期でも水深が上がらず,捕獲数も減少したが特 に仔稚魚がほとんど確認できなかった.未整備の用排水兼用水路では魚類の生息に大き な変化がなかったことから,水路内の魚類の生息には水深および水深の変化に左右され ない植生帯の確保が重要であることが示唆された.また,中干しなどで落水がされると その後魚数が回復しなかったことから,落水時に水路内あるいは下流部に退避できる環 境や,その後再び取水した時に下流から遡上できる環境を整える必要があることがわか った. 魚類の生息や繁殖には植生帯が欠かせないが,整備された水路において水深や水深の 変化に左右されない植生帯の確保は,暗渠からの排水を阻害し,通水阻害にもなるため, 作付けに影響する.未整備の水路において,魚類の捕獲数と植生帯との距離を検討した 結果,植生帯から40m 以内に 50%以上の魚類が生息し,100mを越えるとほとんど捕 獲されなかった. 以上のことから,環境配慮型水路や汎用化水田の整備による水管理に伴う植生帯の有 無が魚類の生息に大きく影響していることが確認された.しかし,水路内に水深に影響 されない植生帯を設けることは,作付けにも影響し維持管理も必要であるため,作付け 農家の理解が必要となってくる.

審 査 結 果 の 要 旨

近年行われている圃場整備は,農業生産性の向上を目的としているため,用排水路の分 離や水田の汎用化,湿地帯の埋め立てなど水域の減少や連続性の減少を招いている.特に 汎用化水田では,水田および水路などの水域が時間的にも空間的にも減少し,水田生態系 への影響が懸念される.改正された現行の十地改良法では,圃場整備事業実施に際して環 境へ配慮することが原則とされ,水路内に魚道や植生帯を設けるなど環境配慮型水路の整 備が進められている.本研究では,環境配慮型水路の整備及び水田の汎用化により生物が どのように移動し定着していくのかについて魚類を中心に調査を行い,今後どのような対 策が必要になるのかについて検討した.内容は以下の2つに分けられる. Ⅰ.環境配慮型水路の整備による影響についての検討:輪之内町内には堀田と呼ばれる特 有の湿地環境が存在している.このような湿地帯を含む地区で汎用化水田への整備が行わ れた.事業の原則に従い,湿地帯と連続する水域であった幹線排水路が植生帯や様々な工 法の護岸,水路と連続する池などを設け環境配慮型水路として整備された.水路内での調 査は,上流から(1)土水路,(2)階段状護岸,(3)花いかだ,(4)ビオトープ池,(5)ソダ護岸の 5 箇所で行い,整備前の湿地帯における調査結果と比較し,生物の移動・生息状況を比較し た.その結果,明らかになったことは,(1)土水路では調査期間中にコンクリート 2 面張り の水路へと改修され,改修後は魚種・魚数ともに著しく減少した.(2)階段状護岸では,調 査2 年目に実際の水深が計画水深を大きく下回り,護岸に水際植生帯が形成されることが

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ほとんどなく,魚数が減少した.(3)花いかだでは,非灌漑期に仔稚魚を含む魚類が捕獲さ れたことから,水面が被覆されていたことにより避難場所となっていると推測される.し かし,花いかだを係留するロープにごみが漂着する,水中に伸びる植物根が捕食されるこ とにより植物が枯死し,外来種が繁茂するなどの欠点も確認された.(4)ビオトープ池では, 整備時に抽水植物帯を設けたが植生帯が活着する前に水深があがり,植生帯が確保できな かったが,水中に藻類が繁茂していたことから多くの魚種が仔稚魚とともに確認された.(5) ソダ護岸では,他の地点とは異なり,モツゴが優占種であることが確認され,選択的にこ の地点に生息したと考えられる.モツゴと同様の環境を好むブルーギルも捕獲されている ため,外来種による淘汰の可能性を考慮する必要があることが示唆された. Ⅱ.水田の汎用化に伴う影響の検討:調査地である輪之内町内では,水田が汎用化される ことにより,排水路はこれまでの60cm から 90cm に掘り下げられ,田面との連続性が希 薄になることが予想された.平成17 年度の収穫後に汎用化のための整備が行われた.整備 後1 年目となる平成 18 年度には水田からの漏水を懸念し水深が水路の天端を超えて 100cm となることもあり,汎用化水田の水路でもメダカやカワバタモロコが仔稚魚ととも に多く捕獲された.しかし,2 年目となる平成 19 年度には灌漑期でも水深が上がらず,捕 獲数も減少したが特に仔稚魚がほとんど確認できなかった.未整備の用排水兼用水路では 魚類の生息に大きな変化がなかったことから,水路内の魚類の生息には水深の変化に左右 されない植生帯の確保が重要であることが示唆された.また,中干しなどで落水するとそ の後の魚数が回復しなかったことから,落水時に水路内あるいは下流部に退避できる環境 や,その後再び取水した時に下流から遡上できる環境を整える必要があることがわかった. 未整備の水路において,魚類の捕獲数と植生帯との距離を検討した結果,植生帯から40m 以内に50%以上の魚類が生息し,100mを越えるとほとんど捕獲されなかった.以上のこ とから,環境配慮型水路や汎用化水田の整備による水管理に伴う植生帯の有無が魚類の生 息に大きく影響していることが確認され,水路内の50m に少なくとも一箇所の植生帯を設 置すれば,魚類の生育環境が連続することを明らかにした.しかし,水路内に植生帯を設 けることは,作付けに影響するだけではなく水路の維持管理も必要であるため,作付け農 家の理解が必要となることに配慮しなければいけない. 以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学位論文 として十分価値あるものと認めた。 学位論文の基礎となる学術論文は以下の通りである. (1) 汎用化水田における水管理の変化が魚類の生息に及ぼす影響とそのミティゲーション について,森須美子・伊藤健吾・千家正照,雨水資源化システム学会誌17(2),35-41,2012 (2) 低平水田地帯における環境配慮型水路の施工による魚類相の変化,森須美子・伊藤健 吾・千家正照,雨水資源化システム学会誌17(2),43-49,2012

参照

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