− 185 − とりたて助詞「こそ」と「さえJの比較一置き換え条件を中心に-物ト領域教育専攻 言語系コース(国語) 尾 場 森 1.研究の目的 本研究は,現代日本語文法のとりたて助詞で ある「こそ」と「さえ」について,置き換え条 件を中心に比較苛院を行なった。 山中 (1995)は河野こそ最も議長にふさ わしし¥J としづ文の「こそJを「さえ」に置き 換えて作った「河野さえ最も議長にふさわしl.t¥J が容認不可能であることなどを根拠とし, ["こそ」 を「さえ」に置き換えることは不可能であると 論じている。しかし,例えば「口にこそ出さな かったが,内心は不満でいっぱし、た」の場合, 「こそ」を「さえJに置き換えて「口にさえ出 さなかったが,内心は不満でしりばし、たjとい う容認可能な文を作ることができる。このよう に, ["こそ」と「さえ」には置き換えが可能な場 合も少なからず相生する。そこで,本研究では, 「こそJと「さえJの聞には何らかの置き換え 条件があると考え,その条件を明らかにするこ とを目的とした。
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論文の構成 第1章 は じ め に 第2章 先 行 研 究 第3章研究方法及び考察 第4章 お わ り に 3.論文の概要 第 1章では,まず,とりたて助調の定義と, 指導教員 田中ブ調 とりたて助言司である「こそ」と「さえ」にはど のような用法があるのかを概観した。次に,研 究の目的・背景として, ["こそJと「さえjが主 節内にある文と,従属節内にある文の例を示し ながら,置き換えができる場合と置き換えがで きない場合とが混在していること,その分類や 置き換え条件に関する研究がこれまでなされて こなかったことを指摘したa 第 2章では,本研究に関わる先行研究を 4つ 挙伏先行研究に残された課題を提示した。尾 場 (2015)は「こそ」と「さえJの置き換えに 注目し,従属節に限定して置き換え条件として, (ア)譲歩の「こそJ,意外の「さえjであること, (イ)逆接の従属節「一{こそ・さえ}ーが,ー ない」であること, (ウ)当該の「こそJ["さえ」 を「すら」へ言い換えることができること, (エ) 随伴命題が想担できること,を提示している。 山中 (1995)は「こそjと「さえ」の従属節用 法における話し手の評価の度合いをスケーノLイ直 として視覚化し,そのスケーノLイ直が文内の否定 によって逆転することを指摘している。津田 (2007)は山中 (1995)で詳細に角批Lることが で、きなかったスケール値の作用を述べこそ」 と「さえJの持つスケール上の働きは真逆のも のであるため置き換えることは不可能であると 論じている。茂木 (2006)は従属節用法の「こ そ」と「さえ」に注目し,その意味解釈を行う 際には二つの意味に解釈することができる二義− 186 − 性が千切生していることを明らかにしている。 以上の先行研究に残された課題としては,置 き換えた際に容認不可能となる場合もあるが, 適切な状況を設定することによって置き換えた 際に意味が変わり,全く異なる意図になるとし ても,文として容認可能となる場合があること が挙げられる。本研究は,尾場 (2015)では触 れられなかった, Iこそ」と「さえJが主節内に ある場合の置き換え条件に加え,改めて, Iこそj と「さえ」が従属節内にある場合の置き換え条 件も再考した。 第3章では,本研究が「置き換え」というも のをどのように捉えているかを述べ, Iこそ」と 「さえ」がご強行内にある場合の置き換え,従属 節内にある場合の置き換えについて考察を行な った。主主行内で、の用例については書籍や作例か ら 58件収集し,従属節内で、の用例については IKotonoha現代日本語書き言葉詳繍