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鳴門教育大学学術研究コレクション

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Academic year: 2021

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− 317 − 食生活の実態と家庭科教育が担う役割 一和食を継承する力を育む授業開発一 教科・領域教育専攻 生活・健康系コース(家庭) 石 丸 千 代 1 研究の背景と目的 「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネス コ無形文化遺産に登録され、日本人が育んでき た食文化が世界に認められた。海外の日本食レ ストラン数も増加してしも。しかし、海外での 制面とは裏腹に、日本では和食の柄生感が薄れ つつあり、伝統的な食文化の継承を危倶する声 も多い。日本の子どもたちそ若者を取り巻く食 生活は急激に変化しており、日本の伝統的な食 文化の価値に気づく機会は少なく、家庭の食卓 も多様化している現状がある。 広く、国民全体に和食の調路の重要性を知ら せ、日本の食文化を受け継ぎ、次世代に伝えて いこうと意欲を持って行動で、きる子どもを育成 するためには、学校教育での学びが重要な役割 を担うことになり、中でも家庭科はその中核を 占める。しかし、家庭科の授業時間数は減少の 一途をたどっており、限られた時間の中で効果 的に学習する必要性が高まっている。 そこで、本研究は食生活の実態を調査し、こ れまでの家臨ヰの学びとの関連から課題を明ら かにして、「食文化の継承」を目指した、深い学 びをもたらす授業開発を行い、その効果を検証 することを目的とした。 2 研究の方法 まず、中学校家庭科における食生活領域の扱 いについて、新旧の中学校学習指導要領を比較 し整理することで、これからの家庭科教育に何 指 導 教 員 速 水 多 佳 子 が必要なのかを引き出す。また、新ヰ書に掲載 されている献立の推移から、和食や調理法の扱 いにつし、て分析する。 次に、大学生と中学生の食生活に関する実態 調査を行って分析し、授業開発に向けた課題を 探る。そして、その解決を目指した食生活に関 する授業実践を行い、その効果を事前鞘麦アン ケートから検証する。 3 中学校学習指導要領の改訂内容と教科書 に掲載されている献立の推移 平成

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年告示の学習指導要領は、日本の生 活文化に関する内容が充実された。食生活に関 しては、食文化の継承や、地域の食材を用いた 和食の調理を通して、食文化についての理解を 深めることを促す内容となっていた。 平成17年検定と平成27年検定の中学校家庭 科の教科書に掲載されている、献立の推移につ いて整理を行った。献立数が大幅に増えており、 エコクッキングや電子レンジ調理など、の手軽に できる調理方法が紹介されるようになっていた。 4 大学生と中学生の食生活の実態調査 大学生と中学生を対象として食生活の実態に ついて調査を行い、その結果について考察したO 調査内容は、「食生活に対する意靴、「食生活に 対する知識・技能」、「日常食の喫食状況」、「家 庭科とのかかわり」についてである。 大学生は、自立した食の担い手としての生活 がはじまることもあり、食生活向上への意欲が

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− 318 − 高く、調理技能向上への意欲も高かった。しか し、基礎的な調理技能(だしの取り方等)に関 しては、技能の不足が明らかとなり、基礎的な 知識の定着にも課題が見られた。 大学生に比べ中学生は、家族に頼った食生活 の状況であり、自分のこととして考えられてい ないためか、食生活を将来自分が担うという自 覚の乏しさが表れてし叱。食事の手伝し、として、 「テーブルの準備」や「後片付け」といった、 簡単で補助的な作業内容しかしておらず、食生 活向上への意欲が低かった。中学生のうちから 自立した食の担い手となれるよう将来を意識さ せ、主体的に学習に取り組ませる授業実践をす ることが重要である。 男女別に見ると、「一人で作ることができる料 理」については、差が大きかった。ほとんどの 料理で女子の方が、「一人で調理できる」と回答 した者が高い割合を示しており、大学生に比べ て中学生は、顕著に男女差が表れていた。大学 生では、基礎的な調理技能に男女差はあまり見 られなかったが、実際の生活の中では、男性は 外食が多く、女性の方がよく手作りの料理を食 べていた。 大学生と中学生が、身に付けたと考えている 食生活の知識や揃巨の学びの場については、多 くの項目において、家庭科と家庭の両方で相乗 的に学ぶことで深まりが見られ、豊かな食生活 へとつながることが表れる結果となった。家庭 だけでは受け取る情報が偏る場合があり、学校 教育の中の家庭科で正しい知識や技能について 学ぶことや、和食の継承への大切さについて考 えることが必要である。反対に家庭科だけの学 び、であっても不十分であり、各家庭における食 の伝承や、実践の繰り返しが不可欠である。 また、大学生への調査で、家庭科が好きだ、つ た人は、「自分の食生活を豊かにしていきたし、」 としづ意識が高いという結果も出ており、家庭 科で、の学びが食生活向上への意欲につながって いた。 5 食生活に関する授業実践 中学1年生を対象に「なぜ辛口食はユネスコ無 形文化遺産に登録されたのか」とし1うテーマで、 ジグソー活動を用いた授業を行った。テーマに ついては、生徒が授業に興味を持ち、深く考え る態度につながるよう慎重に決定した。ジグソ ー活動では、活発な意見交換が主体的になされ、 資料からの読み取りを生かした効果的な言語活 動の場面となっていた。また、生徒の思考を助 けるものとして準備した、実物の提示も補助資 料として効果的な様子で、あった。授業後のアン ケートには、和食への興味が高まり、一人の和 食の継承者として、深く考えることができたとい う内容が記されており、授業の効果が表れてい た。 今回の授業は、資料から自分で見つけ出した り、友達の意見から拾い出したりして主体的に 学ぶことができていた。教員からの一方向の授 業では得られないような、感動を伴し、生きた知 識として、子どもたち自身が学び取ることので きた授業実践となった。 6 今後の課題 今回の授業実践で得られた子どもたちの興 味・関心を、実際の調理行動や将来にわたる和 釧路への具榊怜働きかけへと繋げるために は、学校での調理実習や家庭で実際に体験させ ることが肝心である。学校と家庭とをどう繋い でいくか、家庭への働きかけや連携の在り方に ついて、今後さらに研究を進めていく必要があ る。

参照

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