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(1)

民事紛争の解決規範

著者

三野 昌治

雑誌名

東洋法学

4

2

ページ

1-22

発行年

1961-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00007792/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

目 次 第 民法規範による紛争の解決 第 法律上の評価 第 評価規準の因子 一 利 益 評 価 二 正 義 の 理 念 三 紛 争 解 決 の 合 目 的 性 行 法 規 の 合 目 的 性 付 合 目 的 解 決 情 不 確 定 の 法 概 念

ω

不確定の法概念 倒 白 地 法 規 イ 法 規 に よ る 補 充 ロ 規 範 に よ る 補 充 民事紛争の解決規範

日 日

(3)

東 洋 法 学 ハ判断要素による補充 ニ 補 充 の 性 質 ホ 補 充 作 用 帥特別事情による判断 イ法規適用の補助手段 ロ 民 法 の 規 定 第

民法規範による紛争解決

一、規範による紛争の解決色町浮

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は裁判官により具体的事件において、確定 された事実に適合する規範から判決を抽出することである。すなわち規範の内容が紛争解決の内容を決定する。確定 された事実に適合する規範たる判決規範は、成文法又は慣習法から拍出せられる。ここに法規の検察と法規の審査が 行 わ れ る 。 判決規範たる法規が形式的もしくは実質的に有効であるか否かについて、裁判官は審査

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一 四 回 同 肖 民 ロ ロ

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内山内 W H 1

O a -ω 見 N ゆする。民主々義国家では行政も立法も直接又は間接に国民の意思によってなされるから、個人の自由のみなら ず、国民共同生活の福祉を立法による侵害から保護しておる、従って裁判官は法規が方式に従って定立したか、もし くは法規の内容が憲法に適合するかしないかを審査する権限がある。 この審査権を通常裁判所の権限とし。(憲法第八十一条)、又は独逸のごとくその一部又は全部の権限を憲法裁判所

(4)

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) ( 1 ) 二、裁判官の事実認定、判決規範の抽出、判決規範適用の階段の順序における裁判官の思考作用、ことに当事者の 事実上の主張に対する裁判官の自由心証の思考作用 ( 2 ) の形成は心理学的研究の問題に亙るが、判決は規範の支配を 受ける裁判官の思考作用である。 イザイ

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の説によれば、裁判は法感情問。。

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同記己によってなされる、法感情は評価の体現者たるべき個人 の意識と評価の体現者たるべき団体意識の綜合から生ずる感情である。裁判官の法感情と団体の法感情との一致が法 の健全性を決定する要素である。裁判官は法感情によって規範を審査し、規範が法感情と一致しない場合には規範を 適用しない権利がある

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この説は成文法および慣習法の規範を否定する思想を包含するのみならず、法律が突然廃止、変更された場合の如 く、裁判官の従来からの法感情からの明白なる変更を自ら意識することに困難が生じて裁判することができない不合 理を生ずる、又裁判官の法律適用の思考作用が、感情であるとすることは心理学的にも疑問であって一般の学説は、 ﹂れを賛同しない ( 4 ) O 裁判官の思考作用には意思的要素が含まれる、これはザウア

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が主張する如く、裁判官の裁判と歴史家、生 物学者、社会学者の記述的説明行為と区別すべきである

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この裁判官の思考作用の意思的要素は判決によってな される価値評価によって現われる。 註 1 出 。 山 口 止 の H H F M W E t -回 の 回 ・ k r ロ mO50 山 口 O 時 。 ロ ・ ∞ ・ ω ω ・ 民 事 紛 争 の 解 決 規 範

(5)

東 丘 ﹁ 、 v -法 学 四 2 裁判官の事実認定について自由心証主義が採用される(民事訴訟法第一八五条独第二八六条)、これによれば、裁判官が 経験法則に従って、証拠調の結果の価値を自由に評価し、評価された証拠調の結果と弁論の全趣旨によって、当事者の事実 上の主張を真実と認めるか否かは、裁判官が経験法則に従った思考作用で判断する、この判断によって、主張事実の真否に ついて確信が生れる。裁判官の知識経験を信頼し、裁判官の判断能力によって真実発見の目的を達せんとするものである。 司 門 官 一 色 吋 同 の FFO ロ F N 門 司 口 同 弓 O N O ω ω 吋 O O V F ∞ ・ H A H 0

3 E 州 w u 同 o o H H Z H 5 H 1 B ロ ロ 品 開 H H Z の 伊 O 山 内 凶 M M H M M T ∞ -H H ∞ ・ N N A F ・ 4 イザイによれば、裁判官の法感情のみでいつも裁判がなされるものとは限らない、裁判官の実際的理性によってなされ、 又は理性と感情の結合した精神作用によってなされることもある。法規を適用してなされた裁判が、正義の原則に合致する か否かを決するものは法感情である。裁判官は法規が憲法に適合するか否か、法規が法感情と一致するか否かを審査する権 利をもっ、審査の結果法規が憲法又は法感情に適合しないと判断されたときは、法規は無効である。しかし裁判官の違憲立 法審査権については憲法上も学説も裁判官にその権限を認めておるから、連憲の法律は無効であるが、法感情と一致しない 法規を無効とする説には賛同することができない。 MM 何 回 ・ 出 。 。

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-問 。 ぬ 吋 目 白 ωEE ロ ロ ぬ ロ 白 血 同 H H Z H 1 0 ω m o ロ 山 口 止 ω ℃ H 1 g M M m w n p ω ・ N 日 也 ・ m g H O M -u E 丘 町 民 H O 開 ︼ O B O H M H m O F 同 1 0 一u g h E 一 W ∞ ・ ﹃ ・ 回 巴 0 4 ﹃" の O ω E N ロ ロ ぴ 出 向 。 H H H o g 自 F 同 ∞ ∞ 日 ・ 5 第 法律上の評価 一 、 法 律 上 の 評 価 仏

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江 戸 。 開 拓 国

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を 最 も 明 瞭 に 現 わ す も の は 、 具 体 的 事 件 に 適 用 さ れ 、 裁 判 の 内 容 を 与 え る 法 律 効 果 規 定 問

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口 角 岳 旨 ロ 聞 で あ る 。 民 法 の 各 個 の 規 定 の 怯 質 は 内 容 的 に も 効 力 的 に も 一 様 で は ‘ 、 、 d v 、 品 、 元 L b 一 般 的 か つ 本 質 的 な も の は 法 律 効 果 規 定 で あ る 口 民 法 は 人 の 生 活 関 係 を 規 定 す る 法 律 で あ る か ら 、 こ の 規 定 の 内 容 が 民 法 々 規 の 本 質 的 性 質 で あ り 、 他 の 規 定 例 え ば 任 意 規 定 に 属 す る 解 釈 規 定 、 補 充 規 定 は 法 律 効 果 規 定 の 補 充

(6)

的作用をもつに過ぎない。法律効果規定には強行法規 N ロ 耳 目 ロ

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と任意法規

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同 宮 町 民 属するものがあるが、法規が一般抽象的な法律要件を定め、この法律要件によって一定の法律上の効果の発生を規定 する。それ故に具体的事件における事実関係が或る法律要件に適合するときは、その規定の定める法律上の効果を発 生するものと概念的な推論によって裁判がなされる。 この概念的な推論と結論のうちに。法律による正義の解決が存在する、これが概念法学である。概念法学は法の発 展性を顧みない欠点はあるが。概念法学的方法

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・ 民 な 官 同 町 民 ω の

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宮 内 比 四 回 。 色 。 一 に よ る 裁 判 は 、 典 型 的 な 事 件 で は 簡 単に正しい解決が得られる。通常の法律生活の場合に迅速且つ正当な裁判が行われることは日常生活の紛争解決に最 も便利である ( 1 ) O 二、近代の立法技術によれば、法規は支配すべき生活関係を特質に従って定めた法律要件と法律がこの法律要件に 結合せしめる法律効果とから成立する。例えば故意又は過失で他人の権利を侵害したる者は、これに因りて生じた損 害を賠償する責任がある(民法第七

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九条)この規定の前段の権利の侵害は法律要件であり、後段の損害賠償責任は 法律効果である。法律の規定は文言上では法律要件と法律効果を規定しておるが、規定の内容は法律要件に該当する 生活関係の支配、すなわち生活関係の紛争の解決である D この規定の法律上の評価は、被害者の利益を考慮する加害 者の損害賠償の責任である。 動産のポ来の所有者と、その物を第三者から取得した善意取得者との紛争について。民法第百九十二条(独第九三 二条)は、平穏且公然に動産の占有を始めたる者が、善意にして且過失ないときは、即時にその動産の上に行使する 民 事 紛 争 の 解 決 規 範 五

(7)

東 洋 法 学 六 権利を取得すると規定する。法律効果規定には紛争において、相対立する利益の法的評価が存在する。この場合は本 来の所有者の所有権保有利益と取得者の所有権取得利益とが相対立する。利益の対立は財産上の利益えの欲望、例え ば所有権取得の欲望もあり、債務を免かれることの欲望もあり。身分上の地位の取得を欲する欲望もある。 三、個人の利益は法律により評価される場合の標準となり得るが、個人の利益そのものがすべて評価の規準となる ものでない。すなわち動産即時取得の規定によって評価の規準となるものは取引の安全の保護であって個人の利益で + h F ム 、 。 孔 町 中 J

U 私法ないし民法は主として個人の利益岳

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ロを保護する、この利益は法律関係を他 人の侵害から保護することを内容とする、この法律関係は法律事実に基き発生存続し、法律上の保護が与えられ、従 って権利の発生変更消滅の効果を生ずるところのものである。しかし法律上の保護は個人のみのためにせられるので はなく、社会のためになされるのであるから、いづれの場合にも社会的観点から離れることはできない。 社会の福祉と合致する個人の利益のみが、国民主権によって成立した法律で保護せられる。すなわち主とじて個人 の利益の保護をはかることを目的とする私法も、公共の福祉をはからねばならない ( 2 ) 0 四、法規範は個人の利益を他人の利益に優越さすこともできるし(民法第一九二条)、 当事者双方の利益の調整を 計ることもでき、又当事者の利益を社会の利益に連結させることもできる、例えば他人の物の加工者が加工物の所有 権を取得し、これにより損失を受けた者が償金請求権を取得する(民法第二四六条、二四八条)ことは当事者の利益 の調整であり、社団法人の設立運営は個人の利益と社会利益を連結さすものである。

(8)

法律効果規定は法律上の評価を現わすものであるが、常に明白に利益評価が現われておるとは限らないから、抽象 的な効果規定のうちに包含される利益評価を認識することが必要である。これを認識することは法学の任務であり、 裁判官の学識経験と社会事情に対する正確な理解と判断の能力が必要である。 ここにおいて法律を適用する裁判官の法律解釈の問題が重要となる。法律の解釈は法規のもつ法律上の評価の法則 を探究することである口その法則は個々の法規によって明示され、もしくは数個の法規によらなければ、認識できな い も の が あ る 、 さらには関連する法規の全体から推論して発見し得る法則すらもある。このために法律の解釈は法規 の文言解釈にはじまり、法規の内容の拡張、変更、縮小、補充および類推の方法が採られる。法の欠陥の問題は個々 の規定の解釈によっても、紛争を解決すべき評価の法則を認識することができない場合に論ぜられる。立法者は初め から存在し、もしくは後に発生した法の欠陥の補充を法学と裁判によって解決せしめようとする

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註 1 出 。 山 口 同 1 W F F M H ロ m o ・ p ・ M M

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宮 山 H E Z 含各 m w p ・ 5 8 w ω ・ 民 同 ・ 出 色 E -Z F F M W ロ 包 ・ 削 H・ P ・0 ・ 的 ・ ∞ 日 ・ 4 第 三 評 価 基 準 の 因 子 図 。 話 。 江 口 口 問 え

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件 。 M1 一、利益評価

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命 者 向 宮 口 問 民事紛争の解決規範 七

(9)

東 洋 法 学 八 利益評価は法律上の評価規準の因子ではあるが、利益評価のみで具体的事件における紛争は、解決せられるのでは ない。利益評価のみでなしたる裁判は社会生活の広い範囲において、有効に作用し、裁判の絶対命令として、当事者 を拘束する効力を有するけれども、人間の心理的内部関係において、不充分且不満足なものであるから、憲法や国民 感情が裁判に対して与える高い信頼と価値とを説明することはできない。 利益法学

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官民名

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は利益評価を以て、法律上の評価の本質とする学派 ( 1 ) であるが、利益の観念 が法律上の価値判断に重要なる因子たることは、否定できないけれども利益の観念が規範の解釈にとっても、決定的 であるほど重要性をもつものではない。 利益法学派の思想によれば、法律に規定せられた利益と解決せらるべき場合の利益状態の異同によって、法規が適 用せられ、もしくは適用が否定される。裁判官は歴史的な立法者の意志を考慮するのみならず、現在の事情に適合せ しめねばならない。かくして全体的又は部分的に矛盾せる各種の利益を考慮し、 一定の利益を保護するための意思に 従って、裁判せねばならないこととなる。しかし人類、が昔から最高の価値として認識しており、 かつ法の本質たる正 義の理念。

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仏戸吉岡は法律上の評価因子として紛争 の解決に欠くことのできないものである ( 2 ) 白 註 1 利益法学はイエリングの思想に由来し、マックスショ l ラの研究により、学説として体系が立てられた。最近にいたり、 スタールが価値法学司巳

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と名づけられた。利益法学は自由法学派の主張に反対し、裁判官が自由法に よって裁判することを認めない。自由法学によれば裁判官が法規を不適当と思うときは、法規に反して裁判する権限をもつ の で あ る 。

(10)

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・ 0N ・ ニ、正義の理念 の め 円 。 。

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日 付 付法の理念を正義にもとめることは、古くから法哲学者の唱導したるところで、近代の法学思想においても認めら れる。正義の本質に関する研究は、ギリシャ哲学にはじまり、哲学乃至法哲学上の問題として、絶えず重要なる地位 と使命をもっておる。正義は人間共同生活の秩序を維持する根本観念 ( 1 ) たることは、異論なきも、道徳、習慣その 他人聞社会構成諸原理と密接な関係を有する原理であるから、 一定の概念のもとに把握することは、困難であるが、 正義は真、善、美と同様に絶対的な価値である。正義はそれ自体独立する価値であり、他の高い価値から拍き出され るものでない、その特質とするところは力の行使を背景とすることである。 正 義 の 核 心 は 平 等 の 目 。 宵 何 回 目

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けの観念である。正義はアリストテレス﹀立件。件。

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以来、二個の異る形式において 表現すると考えられた D すなわち正義の観念は、平均的正義

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片 片 手 足 町 内 凶 ) に 分 れ る 。 平 均 的 正 義 は 給 付 と 反 対 給 付 、 例えば商品と代価、損害と補償、犯罪と刑罰の絶対的平等を意味し、配分的正義は多数人の取扱において。関係的公 平を意味する。例えば差異ある支払能力の標準に従ってする差異ある課税、勤務年限と能力に応じてする昇級の如く 民事紛争の解決規範 九

(11)

東 洋 法 学

で あ る 。 平均的正義は相互に正しく平等の地位に置かれた二人の存在を前提とするも、配分的正義は負担を諜せられ、もし くは利益を与えられて上下の地位に置かれたところの、少くとも三名以上の存在を前提とする。私法は平等の地位の 人に関する法であり、公法は上と下の地位におる人に関する法と観察するならば、平均的正義は私法の正義であり、 配分的正義は公法の正義である ( 2 M O ゆ正義は法の理念であり、法規範の拘束力は正義の理念の具体化である。すべての紛争解決規範は正義の理念を内 包するから、法律上の評価は正義による価値判断である。法律が相対立する当事者の利益を評価する場合に、正義の 理念によって法律上の評価がなされる、例えば民法第百九十二条の動産即時取得の法則による評価は、取引が維持せ られる法的現象たる事実を当事者が誘引したことによって、動産所有権の取得が社会正義に適合するものとせられ、 又第千二十二条の遺言の取消は、受贈者の利益取得の欲望を否定し、遺贈者の主観的意思のみに評価の基準をおくこ とが正義に適合するものと考えられるのである。 正義は規範の客観的拘束力的内容であるが法規に明瞭に表現されておるものとは限らないから。法律の解釈によっ て正義の理念を認識せねばならない。判決規範から抽き出される裁判は、抽象的一般的な正義理念の具体化である。 裁判官が法律に拘束せられるとは、規範の内容たる正義理念に拘束せられることを意味するものである。 註 1 人の思考作用は自己を環境に適応せしむることを希求するから、思考の法則は利己的と利他的の衝動の一定の中庸、すな わち調和を要求する、そこで実際上はこの二個の衝動を外部的秩序に調和せしむる精神と、外部的秩序を維持する精神が生

(12)

れ る 。 こ の 秩 序 維 持 の 精 神 が 正 義 で あ る 。 の m 凶 同 1 0 E W 4 。自国 o m o 日目白 0 2 w O M H Z ︼ V W O 日 F J 5 0 ? の 白 色 ω l g ω o p m w -m ・

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窓口色。ωを考えねばならない。合目的性は解決の対象たる 権利又は法律関係の利用性であるから、正義の理念と区別せられる。 広義における一般規範の合目的性とは、平和をみだし、もしくは公共の福祉を害する行為について、当事者又は第 三者に対し、これを防止するために教育的もしくは畏嚇的な作用を示すものであるが、私法上の紛争解決規範の合目 的性は、個人の利益の保護が、これと共に公共の利益の保護に適合する作用をなさしめることである。 規範の合目的性は法規の性質によって、私益に関するものあり、叉公共性を強く要求するものもある。例えば民法 において強行規定 N 若宮

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の定むるところは、公益に適合することを解決の目的とし て強く作用するのである。 民事紛争の解決規範

(13)

東 洋 法 川 字 民法規定は強行規定と任意規定

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。ロ。旨ぽに根拠をもつから、当事 者の利益に重点がおかれる。しかし各規定がいづれの性質のものであるかは、立法趣旨その他を考え解釈によって定 めるほかない F l J o

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斗 合目的解決 個々の場合における最も合目的な解決は裁判によらなければならない。立法者が解決の対象を社会的作用のために 公共的に重要なものと考えた場合には、 A 口自性は強く要求せられる。例えば民法第二百十条第二百十一条の四横地通 行権に関する規定等において理解することができる。 法律は特殊の評価規定によって、具体的場合における合目的な解決を裁判官に委ねる、この場合には所謂不確定な 注概念を採用し、又は裁判官に裁量権を委ねる、これ等の問題については後に研究する。 註 1 出 。 山 口 一 司 目 。 H H F υ ロ m o w m w -M W ・O

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門 戸 段 。 (1) 不確定の法概念 不確定の法概念は近代の法発展の特徴として認められる。例えば信義誠実吋月ロロロ色合

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目立。(独第一五七条第二四条) の如く、裁判官を拘

(14)

東する特殊の評価概念を法規が採用したことである、この規定は規範の内容となる評価を法律外の価値を以てするこ とを示しておる、この場合には法律は理想に従って

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一ケの解法のみが可能であると見ておるので ある、法の内容は効果的に明瞭に補充せられ、個々の場合に広く適合することを特徴とする。不確定の法概念を採用 する規定は、特殊の評価規定であって、裁判官がこの規定を適用することによって、裁判の動揺性は否定できないけ れどもその動揺は個々の場合における事実上の性質から生ずるもので、法律上の性質ではない。 不確定な法概念は裁判官を拘束し、法律の規定の限界で、具体的場合における正義を考慮し、その紛争において最 も適当な解決を探究することを命ずる。 不確定の法概念は法の正しい内容を補充するために、法律の採用する特別の手段である。フエニンガ毘

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ゆがある。この法則は制定法の一部となるから、これを無視するか、又は正当でない 適用は制定法自体に対する侵害である、かかる制定法の一部は法律の廃止変更という普通の方法によらないで作りあ げられ、又新しく作られる。このような制定法の間接的な一部は変転する社会則から、その内容を感受する ( 1 ) O 慣 習 ︿

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は民法第九十二条により、意思表示の解釈補充の効力を有するにすぎないものであるから、民 法上は不確定の法概念として法の内容を補充しない。しかるに独民法では、これと異り不確定の法概念である。独民 法第二百四十二条によれば慣習を考慮して債務の内容が決定せられるからである。 独学者は慣習の性質について意見を異にしており、或は、 慣習は法律の固有の構成部分ではないが、 補充的法源 民 事 紛 争 の 解 決 規 範

(15)

東 1手 法 旦4 寸‘ 四 。 H . m m 山 口 N O 品 。 問 。 。 伊 丹 ω m c o -であるとし、或は、慣習はその力を法律に負うものであるから、その範囲では、副法源

O W C 仏 邸 内 O 河 内 wの伊訪問ロ告であるとし、或は慣習は法規実現にあたり、その力を法律によって拍き出されるから、抽出 法 源 仰 げ 阿 巴 ゆ 芹 O M w o n F g m c o

であると説かれる。これ等はそれぞれクロ 1 メ の

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(16)

実定法的効力を有するから、補充法規が白地法規に補充されることによって、法規の一部となりはじめて実定法的効 力を取得するものでないから、法規の制定もしくは法律の効力発生に関して、疑問を生ずることはない。 白地法規と補充法規が同一法域内宮

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岳山色に属する必要はない、例えば民法第百七十七条および第七 百三十九条は私法であるが、不動産登記法および戸籍法は公法に属する。独民法では売主の担保責任については、主 たる破滅と担保期間は命令によってさえ補充される(独第四八二条第二項)口 ロ 規範による補充 規範ではあるが、実定法的効力を有しない規範によって法規は補充される。例えば法例第三条は、人の能力は其本 国法によりて之を定むと規定する。外国法は規範ではあるが、わが国ではそれ自体実定法的効力あるものではない、 それ故に裁判官が外国法を適用されないことは勿論である口しかし法律において本国法なる概念をもって法規の内容 と定めるから、外国法は実定法的効力を生ずるのである、すなわち外国人については各国とも特殊の事情によりそれ ぞれ行為能力に関し年齢の差異がある、これを具体的に法規の内容とすることは立法技術上困難であり、かつ適当と しないから、所謂本国法なる概括的概念によって法規の内容を規定した、法規の内容となったら、この場合実定法的 効力を有し、内国において適用せられることとなる。 外国法規を補充規範とすることから考えても、 一般内国法以外の領域に属する規範を民法の補充規範とすることは 可 能 で あ り 、 かつ適当である。民法は公序良俗、信義誠実等の概念をもって白地法定の補充規範とした。 慣 習 ︿ R W O H H H 弘件。が補充概念となるか否か法律の規定によって定むべきである。これについて民法規定と独民法 民 事 紛 争 の 解 決 規 範 一 五

(17)

東 洋 法 学 一 六 規定と異るところがある。民法第九十二条は、慣習が当事者の意思表示を補充する効力あることを定めたに過ぎない から、法規を補充する効力はない、従って法規補充の概念とはならない、それ故に当事者は慣習の存在を知ることを 要するのである、独民法によれば、慣習は意思表示の内容を補充する効力(独第一五七条)と法規の内容を補充する 効力がある、法規の内容を補充する効力があるから、独民法では慣習は補充概念である。 ( 2 ) 0 補充概念を定めた規定は、法律効果規定であって法規の内容は弾力性を有し、内容の補充によって法規は適用性を もつこととなる。従って当事者は慣習の存在を知ることを要しない、この場合には慣習は法規の一部となるから、慣 習について誤解又は適用の誤りは、法則の解釈もしくは適用の違法となるから、上告の理由となる

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民法々規が他の法規の有効性を認めた場合には、認められた法規は、それにより実定法的効力を有するから、補充 概念とはならない、有効性を認めた法規と有効性を認められた法規は別個の内容をもっ二個の独立した規範が存在 し 一方の法規は他の法規の効力のために不可欠の条件を創造する、その条件 充たされると同時に、他の法規は独 立の方法において自己形成の内容を以て法的効力を有することとなる。この関係は民法規定と法人の定款において認 めることができる。 法人の定款は実定法的効力を有する規範ではあるが、民法規定の補充概念ではない、民法規定は定款の有効性を認 むるのみである。定款の有効性のために、民法規定は不可欠の条件を作るが、この条件の充たされると共に、独立の 方法において定款は自己形成の内容をもって法人の組織運営に関する秩序を法的に設定する。民法規定と定款とは内 容を異にするこ個の独立した規範である。民法規定により有効性を承認される限りにおいて、規範たる定款は形成さ

(18)

れるが、白地法定の場合のように民法規定の適用可能性のために、定款が要求されるものでない。 ノ、 判断要素による補充 山 口 ω ω め 同 一 円 め の 何 回 己 仙 の 四 回 。 切 m w g 同 件 。 山 i

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によって内容を定むべきことを規定する、例えば法規の内容に信義誠実叶

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の概念 法規はその内容を自ら定めないで、拠るべき一般的基準を示し、法以外の判断要素 を採用しておることである(民法第一条第二項、独法第二四二条)。 ﹂の場合には法内容が社会的観点によって定め られるから、法規の適用性のために、基準となる法の指図は不変更であるに拘らず、社会事情が発展変更すると共に、 法内容も発展変更することとなる、これは法規の命ずる一般基準性によって、法規の内容が補充せられ法律に弾力性 を与える、この法以外の判断要素が不確定の法概念と称せられる。 ー ー 補充の性質 判断要素∞

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の命ずるとこ石の規範は法規に補充せられて法規の一部となるも、この性質は法 の創造ではなく、法適用のためにする補充手段に過ぎない。法規の定める一般基準による判断要素の命ずる規範は、 法規を補充して、制定法的効力を生ずることとなるも、その規範は法源ではない、法源開

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は実定法を形 成するところの規範であることを本質とするが ( 4 ) これに反し、この規範は法規の内容を補充する性質を有するに過 ぎないからである。それがいかなる範囲で補充作用をするかは、規範自らの力によるのではなく、その基準を定めた 法律の規定にのみ繋っておる。 ホ 補充作用 民 事 紛 争 の 解 決 規 範 一 七

(19)

東 洋 法 ~ ザー }¥ 民法の法律効果的規定の内容は、法律要件と、これに結合する法律効果である、法規の定める抽象的法律要件は、 一定の具体的事実自体を対象としておることがある、例えば人の出生の如くである、又具体的事実の存在についての 価値判断を対象とすることがある。例えば取引において要求せられる注意義務の悌怠の如きである。この場合におい て価値判断は社会的評価の問題であるから補充される法規の内容は社会事情に繋っており、従って社会的見解

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m o 口、が標準となって定められる。 法律要件が社会的評価によって決定せられるのみではない、法律要件と結合して発生した法律効果が価値判断の対 象となり、社会的評価によって決定せられる場合がある、例えば民法第一条第二項、独民法第二百四十二条の規定で ある。この規定によれば、発生したる権利義務は信義誠実の規範によって内容が制限せられる、信義誠実は社会的評 価の基準であり、この規準による社会的価値判断によって法規の内容は決定せられる。このように法律効果の内容が 社会的価値判断に繋っておる場合に、法律効果の内容の決定が無制限になされるか、又は一定の範囲内においてなさ れるかは、法規の定めるところによって異っておる。 法律が法規の内容の決定を法以外の判断要素に委ねた場合には、個々の事件について法律効果が著しく異ったもの となるし、その範囲において広狭の差を生ずることは、免かれないところである。かくて法規が不確定な法概念を法 律要件にも法律効果にも、採り入れることを拡張するならば、 遂には法律の内容は判断要素たる社会因子 m o a め ロ ω l 。 何 回 州 民 己 目 の 何 回 。 司 何 回 目 見 。 窓 口 に よ っ て 全 く 左 右 さ れ て 、 法 律 は 退 化 し 、 法 た る 性 質 を も 失 う こ と に な る 、 そ の 最 も 極 端 な 場 A 口を考えるならば、法律要件も法律効果も何等の制限なしに、具体的事件における個別的な判断によって法律の内容

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が補充せられる結果となる、その最も顕著な例として古代における有名な非行者所罰規定

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があ った。この法定の文言によれば、すべてのならず者の行為は、その非行の程度に応じて所罰されるのである、それ故 に所罰の権利は適用者の意思に無制限に委されておることとなる、 かかる規定は法律文化の発達したる近代の法思想 による立法からは顧みられる観念ではなく、もとより各国の現行法制では存在し得るものではない。 近代の法律においても、法内容の固定化は避けねばならない、それは法の発展に必要であるばかりでなく、法律の 合目的性にも適合するからである、この故に法規の内容に弾力性を与えるために不確定の法概念を採用することは、 近代立法技術の特色として認めねばならない。 註 ー ワ u 宅 - H o -- z o w w の 2 2 N I C 2 2 8 P 君 。 ロ 仏 E M 関 口 ω 4 q ・ ・ ∞ -S ・ 巧 -H M m 巳 。 。 ュ B M W B W H M O O H M g o E ロ ロ ロ m ロ ロ 仏 ︿ O 8 E 吋 ω

z w ω ・ ω S ・ m g z ・問 O B B O E R N ロ ゆ E P H H H ・ 4 法源をいかなる意味に解するかは、用語の問題であって本質的のものでないが、本文は通説の意味と用法に従った。しか L 多 く の 意 味 に 用 い ら れ て お る 。 法 源 河 内 u s z m g

o なる言葉は多くの意味に用いられ、或は国家はすべての法の源であると解し、或は法則の存在を認識 するに役立つ古文書その他の資料と解し、或は法の根源である国民の法的確信であると解する。

m w B O E l A 宅 g m o p m H ・P0 ・ ∞ ・ お 毘 ・ 法源は欧州文化国の全国民の法学研究の基礎となるロ l マ 法 で あ る 。 巴 ω 口 岡 崎 ロ 吋 m -H M m D 仏 。 附 件 。 ロ w 出 血 ・ H ∞ ・ ω ・ 通説によれば実定法の内容を形成する規範であり、これには制定法と慣習法とがある 0 0 0 2 B O E r p m W ・ O ・ ω ・ ω H P ' 3 民事紛争の解決規範 九

(21)

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によ否判断 イ 法規適用の補助手段 法律の弾力性ある規定は、内容がはじめに唯一度定められ、固定するような方法をやめて、個々の場合に法規適用 のために法以外の補助手段国民 ω

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を採用する。法規の内容に法概念を用いることは、この理由に基くものであ るが、これにより法規の内容が固定したるものと異り、内容的に基準となる因子司

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宮ミは一層動的となり、法以外 の社会的観点で法の内容は決定される ( 1 ) 口 法律はさらに解決の合目的性のために他の補助手段を採用する、これは個々の場合の特別事情回

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司 色 目 。 ω の中に補助手段を見出したことである。この場合には法概念による判断と特別事情の提供する判断材料による判断と によって、紛争が解決されるが、特別事情による判断は一般法概念による判断よりも、 一層決定的内容をもつもので ある。しかし具体的事情が何等特別の判断材料を提供しない場合でも、紛争は法概念の適用によって解決せられる。 個別化された補助手段たる特別事情による判断は、客観的な補充概念による判断を妨げるものでなく、むしろ、とも にいずれも判断されて紛争は解決されねばならない。 ロ 法律の規定 民法第四百十八条および第七百二十二条第二項(独民第二五四条第一項)は所謂損害賠償に関する過失相殺の規定 である、損害の発生もしくは損害額の増大について被害者が共同責任ある場合には、損害賠償責任の有無および損害

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額の減少が考慮される。損害発生についての共同責任は、被害者が自己の責任ある行為で損害に共同原因自由仲良怠 l の 巴 向 。

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包件。ロを与えることを意味するから、被害者の共同原因たる行為が、 いかなる場合に過失的であるか という問題がある。 一般的にいえば、過失ある行為は法の要求に基き評価され、批難に値する行為である。取引上に おける注意を怠った行為で、他人の利益を危くすることはこの批難を受ける、 しかし自己の不注意によって自己の利 益を害する行為は、法の評価においては批難される価値はない、これは自己の軽卒の行為の結果に対しては自ら責任 を負うべきで、これを保護することは法の責務でないからである。自己の不注意に基く損害を他人に転嫁することは できない、泥酔しておる運転手たることを知って自動車に乗車した客は、法律上の義務違背をした者ではなく、自己 保存の注意を怠ったに過ぎない、彼が自動車事故によって損害を受けた場合、共同原因を与えた行為について自己の 責任の範囲において損害を負わねばならない、その損害までを運転手に転嫁することはできない。きれば被害者の過 失は一般の過失と異り、比喰的意味におい理解すべきである。 一般に過失とは注意義務の慌怠であると説明されてお る ( 2 ) 。自己に対する注意義務は法的には存在しないから、この場合乗客の不注意は所謂過失とは観念を異にしてお るが、しかし過失を広義に解し、他人又は自己を損害から保護するため必要な社会的注意を怠りたることとするなら ば、法規の正しい解釈であり、過失相殺の理論上の根拠を知ることができる。 コ i ザヲクの

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によれば自己の利 益に対する過失的侵害、すなわち自己自身に対する過大も法律生活において重要な関係をもっ、例えば段損しやすい 物を他人に寄託したときに、物の興損しやすいことを不注意で告げなかったならば、相手方の不注意による物の野損 と過失相殺はあり得る ( 3 ) O 民事紛争の解決規範

(23)

東 洋 法 学 被害者が損害の発生又は損害の増大につき共同責任ある場合には、その損害賠償義務ならびに損害の数額は被害者 の原因関係における事情が考慮されて、共同責任の標準に従って具体的場合において、具体的事情を材料とし、社会 的価値判断がなされ、加害者に損害賠償責任ありとし又はなしとせられ、もしくは損害賠償額が決定せられる ( 4 ) 0 法律が特別事情の考慮を命じたことは、法規の内容に弾力性をもたせ紛争解決を合目的ならしめるのである。特別 事情の考慮は法律が特殊の場合のみ、認めたもので一般の場合には許されない。 法律の命じたる特別事情の考慮は、法規の内容に不確定の法概念を採用したことと同じく、 一般法規の内容固定し たものと異り、内容的に基準となる因子烈持仲良は一層動的であり、時と場所と事情とによって発展変化するから、 社会生活の現象としての具体的事件の解決に適合する特質がある。 註 1 ラ l バンドによれば実定法的効力をもたない規範が法規に補充されることは、単に法内容を補充する作用をするに過ぎな い。いかなる範囲に作用するかば、国家の法命令 28goFO

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によってのみ定められるから、その補充規 範自体は法規の性質をもつことになるのではなく、他の法規適用のための補助手段となるに過ぎない、補充される法規は純 粋の国家命令であるが、法命令によって補充された法内容は、国家以外の社会的観点で決定される。 F m w σ M W 口 内 p m H m m w H m w

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