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新営史料館開館十周年にあたって(史料館新営10周年記念号)

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Academic year: 2021

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新設史料館開館十周年にあたって

経済学部附属史料館長宇佐美 英 機  滋賀大学経済学部附属史料館は、周知のように、その母胎となりまし たのは彦根高等商業学校内に設けられた﹁近江商人研究室﹂でした。新 制大学へ移行後の昭和二十五年八月には、経済研究所内に史料館が設け られ、同二十七年十二月には博物館相当施設として認可されました。そ の後、何度かの改称を経て、同四十二年六月以来、現在の名称である経 済学部附属史料館となりました。そして、現在経済経営研究所があるフ ロアから移転して、独立した建物の施設として現在地に新営開館したの は平成七年秋のことでした。お蔭様で本年は、新営史料館開館十周年を 迎えることができました。これもひとえに、学内外の多くの方々のご高 配の賜物と感謝しております。  最初に﹁近江商人研究室﹂として発足したことから分かるように、こ の施設は近江商人の商業活動を明らかにするための史資料を収集し、研 究に供することに目的が置かれていました。爾来、本学が近江商人研究 分野において成果を上げ続けていることは自負できます。彦根高商時代 以来、本学に所属された教員による研究成果は、日本商業史研究史上に 金字塔として聾えているといっても過言ではありません。しかし、これ らの研究は、在野にあって近江商人や近江地域史の研究をしていた方々 の成果を吸収するものの、成果を社会へ還元するという点では、決して 十分ではありませんでした。収集した史資料は学外にも公開していたも 新営史料館開館十周年にあたって のの、研究のための研究に利用されるという側面が強いものであったと いわざるを得ません。もちろん、このことは特に近江商人研究が特殊事 例であるということではなく、戦前期日本のアカデミズム社会の一般的 特徴でもありました。  しかし、新制大学への移行とともに本館の史料収集は、たんに近江商 人研究のみにとどまることなく、近江国の地域史を明らかにするための 史資料の収集へと歩み始めました。それは何よりも博物館相当施設とし て認可されたことが大きいと思われます。しかも、それらの史資料の収 集は、購入史資料よりも圧倒的に個人や自治区からの寄託史資料が大部 分を占めています。そこにはさまざまな理由が考えられますが、何より も当時の在籍教員が足繁く湖東地域の町村を廻り、史料の発掘と寄託依 頼の努力をしたことは特筆しておく必要があります。個人や自治区で史 資料を保管し続けることは、決して容易なことではありません。中には ﹁家宝﹂のごとく意識されていた入々もおられたでしょう。そのような 人々に、史資料はたんに個人的なものではなく、広く市民の財産である ことを了解していただくには、困難がともなったものと推測されます。 もっとも、高度経済成長期の到来により、家屋の薪改築にともなって廃 棄処分されようとしていた史資料であったために、比較的容易に寄託に 同意された例もあったでしょう。  このように二十世紀における史料館は、滋賀県内に伝来した史料を購 入・寄託受入れすることにより散逸を防いだという点では、社会貢献の 一翼を担ったといえます。それのみならず、それらの史資料を整理し史 料目録を作成・公刊するという貢献を果たしてきました。すでに本館の ﹁史料目録﹂は、昭和四十一年八月の第一集刊行以来、絶えることなく

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滋賀大学経済学部附属史料館研究紀要 第三十九号 刊行を続けて参りました。ただ、これらの成果は史料館による社会、と りわけ学内外の研究者に向けた貢献ではありましたが、少なくとも、経 済学部における教育教材として史料仁保管史資料が充分に活用されたわ けではありませんでした。  そのような反省にたって、新営館の開館を契機に、毎年春期展示・秋 期企画展を定例化させることにいたしました。それは、前述のように研 究中心の史料館運営から教育・社会貢献も意識した運営の意思表示でも ありました。幸い学内外の多数の方々がこれらの展示のご観覧のために 来館され、ご好評を頂いていることは、何にもましてありがたいことで す。今後とも保管史資料を用いた研究成果を広く公開するという姿勢を 堅持していく所存です。  また、ここ二十年の問、滋賀県下では自治体史の編纂が進められてい ますが、そのほとんどの市町域にある多くの自治区の史料を史料館で保 管しているという実態は、地域の歴史を見直そうという事業を進める上 で、結果的に多大な貢献を果たしたことになっています。他の県下にお いては史料の散逸が進み、自治体育の編纂に苦慮する所も多いと聞きま すが、滋賀県はまれに見る史資料の伝来が多い地域です。そのような県 下の史資料の散逸を防いだという意味において、史料館はある程度の社 会貢献を果たしたものといえましょう。  二十世紀においては、史資料をお預かりし保管・整理・公開の作業を 通じて、教育と研究のためにこれらの史資料を活用して参りましたが、 肝腎の寄託者との情報交換を継続するという点では、必ずしも充分では ありませんでした。二十一世紀に入り、大学が法人化された現在、本史 料館は、﹁社会貢献﹂を一方的に実施してきたという姿勢を改め、﹁地域 二 連携﹂ということに意識的に取組む必要があると考えています。それは、 史料館と地域社会とが双方向で史資料の活用を行うということに尽きる ものです。滋賀県という﹁地域﹂に則した形で、史資料の寄託者ととも に豊かな歴史・文化に満たされた社会の創造に向けて連携を深めること が求められていると考えています。このさいに留意しておくべきことは、 現在も史料館には寄託史料が陸続と搬入されています。それは個人的な つながりで寄託依頼が寄せられる一方で、自治体史の編纂事業を通じて 発掘された史料も少なくありません。このような依頼は、これまでの史 料館の保管・整理・公開の姿勢が広く認められ評価されてきたことにも よると考えられます。行き場のない史資料を史料館がお預かりし、教 育・研究に活用するとともに、広く社会に公開するということは、施設 の設置以来、変わらぬ責務であると自覚しています。  ともあれ、歴史学からの﹁地域連携﹂の実例は、他大学でも試みられ ていますが、それらは文学部・人文学部などが主体となってなされてい ます。その点では、本館は経済学部に附属する施設だという独自性を有 しています。本館がその特性を生かし固有の手法によって活動すること は、﹁地域貢献﹂ないし﹁地域連携﹂の一つのモデルケースになりうる ものと自覚して、次の十年を歩みたいと考えています。今後とも史料館 に変わらぬご高配とご協力を賜りますようお願い申し上げる次第です。

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