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鉄道会社における事業多角化に関する研究―減損会計を中心として― 利用統計を見る

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鉄道会社における事業多角化に関する研究―減損会

計を中心として―

著者

石川 順章

著者別名

ISHIKAWA Nobuaki

雑誌名

現代社会研究

14

ページ

127-133

発行年

2016

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00008514/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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鉄道会社における事業多角化に関する研究

―減損会計を中心として―

石 川 順 章

 鉄道事業は、明治時代に日本に導入され、大きく発展してきた。また大手民鉄を中心に、古くか ら経営多角化が盛んに行われている。一方、減損会計基準が導入されてから 10 年が経過した。減 損会計は想定外の事象が発生し、企業が保有する事業用資産の回収可能価額が簿価を下回った場合、 その差額を簿価から減額する会計処理であり、事業の見直し・縮小が反映される可能性がある。そ のため、減損会計の状況から、企業による事業多角化の動向および意思決定を読み取ることができ る。本研究では大手民鉄および JR を研究対象とし、検証を行った。  その結果、規制部門および非規制部門における減損処理、また各社に特徴的な減損の傾向がみら れた。しかし、事業計画の下方修正であるものの事業に対する投資は積極的に行われている場合も ある。より正確な分析を行うためには、減損処理を行った資産がその後どうなったかなどを含め、 他のデータと組み合わせて検討する必要がある。 keywords:鉄道事業、経営多角化、減損会計、規制部門、事業セグメント よると、多角化戦略は製品―市場マトリクスにお いて「拡大化」と区別され、企業が事業多角化を 行う理由について次の 4 点を指摘している。第 1 は、「拡大化」だけでは収益性目標を達成できそ うにない場合である。第 2 に、余剰資源の投資先 として多角化をすることがある。第 3 に、拡大化 で得られる収益性よりも多角化で得られる収益性 の方が大きい可能性が高い場合である。第 4 に、 拡大化と多角化では利用できる情報量が異なるた めに対比して判断することが難しい場合であるi 鉄道会社における経営の多角化は、その誘因ある いは必然性が高く、とりわけ民鉄における経営多 角化は歴史的にも古い。しかし、Rumelt(1974) が 指摘するように、経営多角化は関連する事業分野 にとどまっていた方が収益性が高く、行き過ぎた 経営多角化は失敗することもあるii。本研究では、 昨今の社会・経済環境の激変によって、戦略の転 換を迫られていると考えられる鉄道事業の経営多 角化に関するデータ分析と考察を行い、また公表 されている財務データを利用した、新たな分析手 法について検討するものである。 目   次 はじめに 1.本研究の目的と手法 2.減損会計の要旨とその意義 3.鉄道会社における減損会計の状況 3.1 東武グループの事業多角化 3.2 西武グループの事業多角化 3.3 JR東日本グループの事業多角化 4.データの分析と考察 おわりに はじめに 日本における鉄道事業は、明治時代に日本に導 入され、大きく発展した。導入期においては、民 営鉄道(民鉄)の役割が大きく、日本全国への鉄 道ネットワークを構築する際、民鉄によって敷設 された路線が多く存在した。また、戦後復興から 今日に至るまでの民鉄による交通サービスならび に周辺事業は、日本の経済発展および国民生活に とって重要な役割を果たしている。一方、日本国 有鉄道(旧国鉄)が分割・民営化して誕生したJ Rグループ各社も、民鉄と同様の経営多角化を積 極的に進めてきている。 経営戦略の父とも呼ばれる Ansoff(1965)に 査読付論文

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『現代社会研究』14号 ― 128 ― 1.本研究の目的と手法 本研究では、鉄道事業の経営多角化の動向につ いて分析・考察することを目的とする。その際、 減損会計に着目する。固定資産の減損に係る会計 基準(以下、減損会計基準)が 2005 年 4 月 1 日 以後に開始する事業年度から適用されている。減 損は損益計算書の特別損失に計上され、上場会社 であれば一般に公開する義務がある。 減損会計基準の適用から約 10 年が経過してお り、ある程度の開示されたデータが利用可能であ る。また、セグメント会計基準において、固定資 産の減損損失に関する報告セグメント別情報の開 示が 2010 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度 及び事業年度から適用されており、それ以降は減 損会計のセグメント別のデータが入手可能であ る。 分析対象は上場している大手民鉄、およびJR とする。紙面と時間の都合から、大手民鉄からは 東武鉄道および西武鉄道、JRからはJR東日本 を取り上げる。なお、データ分析には開示されて いる決算資料を利用する。グループ全体としての 多角化経営を分析するため、連結決算書を利用し、 各事業別のデータを分析・考察するものとする。 2.減損会計の要旨とその意義 減損会計は、前述のとおり 2005 年 4 月 1 日以 後開始する事業年度から義務付けられているiii 減損会計は想定外の事象が発生し、企業が保有す る事業用資産の回収可能価額ivが簿価を下回った 場合、その差額を簿価から減額する会計処理であ る。したがって減損の計上には、事業の見直し・ 縮小が表れる可能性がある。減損処理は最終的に、 損益計算書の特別損失に計上される。なお税務上 は、減損損失は基本的に損金不算入である。 減損会計の対象となる資産は、事業用資産(有 形固定資産、無形固定資産)、および投資その他 の資産である。減損処理を行う際には、①資産の グルーピング、②減損の兆候の検討、③減損の認 識、④減損損失の測定、のフローで行い、最終的 には財務諸表に反映されるv 減損会計の意義としては、以下が挙げられる。 第一に、将来キャッシュフローの見積もりを将来 に繰り延べることなく、適時に反映される点であ る。第二に、固定資産の評価減が裁量的でなく、 一定の基準によって行われる点である。第三に、 国際会計基準とのコンバージェンスを図ることで ある。 3.鉄道会社における減損会計の状況 本研究において調査対象とした東武グループ、 西武グループ、JR 東日本グループの事業多角化 の状況、および減損損失の計上の状況について述 べる。 3.1 東武グループの事業多角化 東武鉄道株式会社は 1897 年に発足、1899 年に 運輸営業を開始している。同社は栃木県から東京 まで、関東一円にまたがる鉄道ネットワークと、 流通、不動産、レジャーの多岐にわたる多角化事 業を展開している(図 1 参照)。鉄道ネットワー クは現在 463.3 キロを有しており、その総延長は 大手民鉄 16 社のうち、近畿日本鉄道(近鉄)の 508.1 キロに次いで 2 番目に長いvi 同社は 2006 年 3 月期から減損会計基準を適用 している。適用初年度、および次年度の 2007 年 3 月期においては、それぞれ 15,010 百万円および 13,476 百万円と多額の減損を計上している。その 後、減損の計上は比較的低額で推移し、事業別で 減損会計に着目する。固定資産の減損に係る会計 基準(以下、減損会計基準)が2005 年 4 月 1 日 以後に開始する事業年度から適用されている。減 損は損益計算書の特別損失に計上され、上場会社 であれば一般に公開する義務がある。 減損会計基準の適用から約 10 年が経過してお り、ある程度の開示されたデータが利用可能であ る。また、セグメント会計基準において、固定資 産の減損損失に関する報告セグメント別情報の開 示が2010 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度 及び事業年度から適用されており、それ以降は減 損会計のセグメント別のデータが入手可能である。 分析対象は上場している大手民鉄、およびJR とする。紙面と時間の都合から、大手民鉄からは 東武グループおよび西武グループ、JRからは東 日本旅客鉄道(JR東日本グループ)を取り上げ る。なお、データ分析には開示されている決算資 料を利用する。グループ全体としての多角化経営 を分析するため、連結決算書を利用し、各事業別 のデータを分析・考察するものとする。 2. 減損会計の要旨とその意義 減損会計は、前述のとおり2005 年 4 月 1 日以 後開始する事業年度から義務付けられているiii。 減損会計は想定外の事象が発生し、企業が保有す る事業用資産の回収可能価額ivが簿価を下回った 場合、その差額を簿価から減額する会計処理であ る。したがって減損の計上には、事業の見直し・ 縮小が表れる可能性がある。減損処理は最終的に、 損益計算書の特別損失に計上される。なお税務上 は、減損損失は基本的に損金不算入である。 減損会計の対象となる資産は、事業用資産(有 形固定資産、無形固定資産)、および投資その他の 資産である。減損処理を行う際には、①資産のグ ルーピング、②減損の兆候の検討、③減損の認識、 ④減損損失の測定、のフローで行い、最終的には 財務諸表に反映されるv。 減損会計の意義としては、以下が挙げられる。 第一に、将来キャッシュフローの見積もりを将来 に繰り延べることなく、適時に反映される点であ る。第二に、固定資産の評価減が裁量的でなく、 一定の基準によって行われる点である。第三に、 国際会計基準とのコンバージェンスを図ることで ある。 3.鉄道会社における減損会計の状況 本研究において調査対象とした東武グループ、 西武グループ、JR 東日本グループの事業多角化 の状況、および減損損失の計上の状況について述 べる。 3.1 東武グループの事業多角化 東武鉄道株式会社は1897 年に発足、1899 年に 運輸営業を開始している。同社は栃木県から東京 まで、関東一円にまたがる鉄道ネットワークと、 流通、不動産、レジャーの多岐にわたる多角化事 業を展開している(図 1 参照)。鉄道ネットワー クは現在463.3 キロを有しており、その総延長は 大手民鉄 16 社のうち、近畿日本鉄道(近鉄)の 508.1 キロに次いで 2 番目に長いvi。 図1 東武グループにおける事業多角化の状況 出典)東武鉄道株式会社「有価証券報告書」2016 年 3 月期、より作成。 同社は 2006 年 3 月期から減損会計基準を適用 している。適用初年度、および次年度の2007 年 3 月期においては、それぞれ 15,010 百万円および 13,476 百万円と多額の減損を計上している。その 後、減損の計上は比較的低額で推移し、事業別で は主に不動産事業からの計上である。各年度の有 価証券報告書によれば、不動産事業の減損を認識 した経緯は継続的な地価の下落によるものである。 2013 年 3 月期にはレジャー事業からやや大きな 運輸 37% レ ジャ ー 13% 不動 産 7% 流通 34% その 他事 業 9% 営業収益計 574,334 (百万円) 運輸 事業 50% レ ジャ ー 10% 不動 産事 業 23% 流通 事業 6% その 他事 業 11% セグメント資産 計 1,814,218 (百万円)

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― 129 ― は主に不動産事業からの計上が多くなっている。 各年度の有価証券報告書によれば、不動産事業の 減損を認識した経緯は継続的な地価の下落による ものである。2013 年 3 月期にはレジャー事業か らやや大きな減損の計上があり、具体的な資産と しては主に北海道由仁町におけるゴルフ場施設を 減損したvii。その減損を認識した経緯は「当初想 定していた営業損益が見込めなくなった」とされ ている。 運輸事業は莫大な資産を有しているものの、減 損に至ったケースは比較的少額にとどまっている (図 2 参照)。 3.2 西武グループの事業多角化 西武グループは、1912 年に設立され 1915 年に 営業運転を開始した武蔵野鉄道株式会社などを前 身とする大手民鉄である。鉄道事業は西武鉄道株 式会社において、東京都北西部と埼玉県南西部に おいて 13 路線、営業キロ 179.8㎞の鉄道路線で、 旅客輸送を行っている。また西武グループは大手 民鉄のなかでもさまざまな周辺事業を営んできた ことで知られ、プリンスホテルを中心とするホテ ル・レジャー事業や、米国ハワイにおけるホテル 等の事業展開、その他事業に含まれるプロ野球の 西武ライオンズなど、特色ある経営多角化を展開 している。 一方、西武グループは度重なるグループ再編な ど、紆余曲折を経験してきている。例えば、西武 百貨店を中心とするセゾングループは、かつて西 武鉄道の兼業部門として誕生したがその後独立 し、バブル経済の崩壊後には採算が悪化し、いち 早くリストラを進めた結果、現在はグループ解体 に至っている。西武グループの決算書では、度重 なるグループ再編を経ていることもあり、連結の 範囲も頻繁に大幅な変更がなされている。なお、 2016 年 3 月期ではホテル・レジャー事業が売上 高ベースで 35% の規模であり、本業の都市交通・ 沿線事業を上回っている(図 3 参照)。 同社は東武鉄道と同様、2006 年 3 月期から減 損会計基準を適用している。適用初年度において は多額の減損を計上し、その後比較的少額の計上 が続く特徴は共通している。しかし、全体として の減損損失の規模は比較的大きいといえる。事業 別に見ると、ホテル・レジャー事業での計上が目 立っている。鉄道事業では 2016 年 3 月期に、安 減損の計上があり、具体的な資産としては主に北 海道由仁町におけるゴルフ場施設を減損したvii。 その減損を認識した経緯は「当初想定していた営 業損益が見込めなくなった」とされている。 運輸事業は莫大な資産を有しているものの、減 損に至ったケースは比較的少額にとどまっている (図2 参照)。 図2 東武グループにおける減損会計の状況 出典)各年度の、東武鉄道株式会社「有価証券報告書」より作成。 3.2 西武グループの経営多角化 西武グループは、1912 年に設立され 1915 年に 営業運転を開始した武蔵野鉄道株式会社などを前 身とする大手民鉄である。鉄道事業は西武鉄道株 式会社において、東京都北西部と埼玉県南西部に おいて13 路線、営業キロ 179.8 ㎞の鉄道路線で、 旅客輸送を行っている。また西武グループは大手 民鉄のなかでもさまざまな周辺事業を営んできた ことで知られ、プリンスホテルを中心とするホテ ル・レジャー事業や、米国ハワイにおけるホテル 等の事業展開、その他事業に含まれるプロ野球の 西武ライオンズなど、特色ある経営多角化を展開 している。 一方、西武グループは度重なるグループ再編な ど、紆余曲折を経験してきている。例えば、西武 百貨店を中心とするセゾングループは、かつて西 武鉄道の兼業部門として誕生したがその後独立し、 バブル経済の崩壊後には採算が悪化し、いち早く リストラを進めた結果、現在はグループ解体に至 っている。西武グループの決算書では、度重なる グループ再編を経ていることもあり、連結の範囲 も頻繁に大幅な変更がなされている。なお、20163 月期ではホテル・レジャー事業が売上高ベー スで35%の規模であり、本業の都市交通・沿線事 業を上回っている(図3 参照)。 同社は東武鉄道と同様、2006 年 3 月期から減 損会計基準を適用している。適用初年度において は多額の減損を計上し、その後比較的少額の計上 が続く特徴は共通している。しかし、全体として の減損損失の規模は比較的大きいといえる。事業 別に見ると、ホテル・レジャー事業での計上が目 立っている。鉄道事業では2016 年 3 月期に、安 比奈車両基地の整備計画を廃止したことによる減 損損失を計上した(図4 参照)。 図3 西武グループにおける事業多角化の状況 出典)西武ホールディングス株式会社「有価証券報告書」 2016 年 3 月期、より作成。 15,010 13,476 4,206 1,309 682 546 1,163 3,544 1,082 824 1,582 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 2006/3 2007/3 2008/3 2009/3 2010/3 2011/3 2012/3 2013/3 2014/3 2015/3 2016/3 減 損 損 失 額 事業年度 その他事業 流通事業 不動産事業 レジャー事業 運輸事業 (百万円) ・ゴルフ場施設 (北海道由仁町) 都市 交通・ 沿線 事業 29% ホテ ル・レ ジャ ー 35% 不動 産事 業9% 建設 事業 16% ハワ イ事 業4% その 他7% 営業収益計 508,081 (百万円) 都市 交 通・ 沿線 事業 34% ホテ ル・レ ジャ ー 35% 不動 産事 業 19% 建設 事業 4% ハワ イ事 業 4% その 他 4% セグメント資産 計 1,529,150 (百万円) 減損の計上があり、具体的な資産としては主に北 海道由仁町におけるゴルフ場施設を減損したvii。 その減損を認識した経緯は「当初想定していた営 業損益が見込めなくなった」とされている。 運輸事業は莫大な資産を有しているものの、減 損に至ったケースは比較的少額にとどまっている (図2 参照)。 図2 東武グループにおける減損会計の状況 出典)各年度の、東武鉄道株式会社「有価証券報告書」より作成。 3.2 西武グループの経営多角化 西武グループは、1912 年に設立され 1915 年に 営業運転を開始した武蔵野鉄道株式会社などを前 身とする大手民鉄である。鉄道事業は西武鉄道株 式会社において、東京都北西部と埼玉県南西部に おいて13 路線、営業キロ 179.8 ㎞の鉄道路線で、 旅客輸送を行っている。また西武グループは大手 民鉄のなかでもさまざまな周辺事業を営んできた ことで知られ、プリンスホテルを中心とするホテ ル・レジャー事業や、米国ハワイにおけるホテル 等の事業展開、その他事業に含まれるプロ野球の 西武ライオンズなど、特色ある経営多角化を展開 している。 一方、西武グループは度重なるグループ再編な ど、紆余曲折を経験してきている。例えば、西武 百貨店を中心とするセゾングループは、かつて西 武鉄道の兼業部門として誕生したがその後独立し、 バブル経済の崩壊後には採算が悪化し、いち早く リストラを進めた結果、現在はグループ解体に至 っている。西武グループの決算書では、度重なる グループ再編を経ていることもあり、連結の範囲 も頻繁に大幅な変更がなされている。なお、2016 年3 月期ではホテル・レジャー事業が売上高ベー スで35%の規模であり、本業の都市交通・沿線事 業を上回っている(図3 参照)。 同社は東武鉄道と同様、2006 年 3 月期から減 損会計基準を適用している。適用初年度において は多額の減損を計上し、その後比較的少額の計上 が続く特徴は共通している。しかし、全体として の減損損失の規模は比較的大きいといえる。事業 別に見ると、ホテル・レジャー事業での計上が目 立っている。鉄道事業では2016 年 3 月期に、安 比奈車両基地の整備計画を廃止したことによる減 損損失を計上した(図4 参照)。 図3 西武グループにおける事業多角化の状況 出典)西武ホールディングス株式会社「有価証券報告書」 2016 年 3 月期、より作成。 15,010 13,476 4,206 1,309 682 546 1,163 3,544 1,082 824 1,582 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 2006/3 2007/3 2008/3 2009/3 2010/3 2011/3 2012/3 2013/3 2014/3 2015/3 2016/3 減 損 損 失 額 事業年度 その他事業 流通事業 不動産事業 レジャー事業 運輸事業 (百万円) ・ゴルフ場施設 (北海道由仁町) 都市 交通・ 沿線 事業 29% ホテ ル・レ ジャ ー 35% 不動 産事 業9% 建設 事業 16% ハワ イ事 業4% その 他7% 営業収益計 508,081 (百万円) 都市 交 通・ 沿線 事業 34% ホテ ル・レ ジャ ー 35% 不動 産事 業 19% 建設 事業 4% ハワ イ事 業 4% その 他 4% セグメント資産 計 1,529,150 (百万円)

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『現代社会研究』14号 ― 130 ― 比奈車両基地の整備計画を廃止したことによる減 損損失を計上した(図 4 参照)。 3.3 JR東日本グループの事業多角化 東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)は 1987 年に設立され、日本国有鉄道(旧国鉄)の 事業等を引き継ぎ、鉄道事業などを開始した。そ の後、1993 年に東京、大阪、名古屋の各証券取 引所市場第一部および新潟証券取引所に株式を上 場し、現在は完全民営化されている。また、大手 民鉄と同様に積極的な事業多角化を展開してきて お り、2016 年 3 月 期 の 連 結 売 上 高 は 2,867,199 百万円である。鉄道ネットワークは主として関東 及び東北地方の 1 都 16 県にわたり、営業キロは 在来線と新幹線を合わせて 7457.3km(2016 年 3 月期)を有している。旧国鉄から莫大な資産を引 き継いでおり、資産の総額も運輸業を中心に巨大 である(図 5 参照)。 JR東日本では、2005 年 3 月期から減損会計 基準の早期適用を行っている。会計年度によって は事業セグメント別の減損会計の状況が不明な場 合もあるが、2011 年 3 月期以降は全て事業セグ メント別の情報が開示されている。年度別に見る と、早期適用の初年度に巨額の減損を計上してお り、その後は比較的小規模な計上を続けている。 事業別では、ショッピング・オフィス事業による 継続的な計上があり、運輸業から計上された場合 は巨額になるケースもある。2013 年 3 月期には、 主に運輸業において 30,028 百万円もの減損損失 を計上している。また、2015 年 3 月期の減損では、 東日本大震災とその復興に伴い、JR山田線の三 陸鉄道への経営移管が行われたことによるものが ある。山田線に限らず、JR 東日本の営業エリア では東日本大震災による被害が大きい地域も広く 含まれており、2011 年 3 月期には災害による特 別損失の計上とともに、運輸業において減損処理 も行われている。 他方、継続的に減損を計上しているショッピン グ・オフィス事業は、駅および駅周辺の用地を開 発し、ショッピングセンターの運営やオフィスビ ル等の貸付業を展開している。減損処理を行った 資産は、ショッピングセンターあるいは貸付用土 地などとなっており、なかでもショッピングセン ターはほぼ毎年計上されている。ショッピングセ ンターは現在、大きく成長している小売業態であ 図4 西武グループにおける減損会計の状況 出典)各年度の、西武ホールディングス株式会社「有価証券報告書」より作成。 3.3 JR東日本グループの経営多角化 東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)は1987 年に設立され、日本国有鉄道(旧国鉄)の事業等 を引き継ぎ、鉄道事業などを開始した。その後、 1993 年に東京、大阪、名古屋の各証券取引所市場 第一部および新潟証券取引所に株式を上場し、現 在は完全民営化されている。また、大手民鉄と同 様に積極的な事業多角化を展開してきており、 2016 年 3 月期の連結売上高は 2,867,199 百万円で ある。鉄道ネットワークは主として関東及び東北 地方の1 都 16 県にわたり、営業キロは在来線と 新幹線を合わせて7457.3km(2016 年 3 月期)を 有している。旧国鉄から莫大な資産を引き継いで おり、資産の総額も運輸業を中心に巨大である(図 5 参照)。 図5 JR 東日本における事業多角化の状況 出典)東日本旅客鉄道株式会社「有価証券報告書」2016 年3 月期、より作成。 JR東日本では、2005 年 3 月期から減損会計 基準の早期適用を行っている。会計年度によって は事業セグメント別の減損会計の状況が不明な場 合もあるが、2011 年 3 月期以降は全て事業セグメ ント別の情報が開示されている。年度別に見ると、 早期適用の初年度に巨額の減損を計上しており、 その後は比較的小規模な計上を続けている。事業 別では、ショッピング・オフィス事業による継続 的な計上があり、運輸業から計上された場合は巨 額になるケースもある。2013 年 3 月期には、主 に運輸業において 30,028 百万円もの減損損失を 計上している。また、2015 年 3 月期の減損では、 東日本大震災とその復興に伴い、JR山田線の三 陸鉄道への経営移管が行われたことによるものが ある。山田線に限らず、JR 東日本の営業エリア では東日本大震災による被害が大きい地域も広く 含まれており、2011 年 3 月期には災害による特別 損失の計上とともに、運輸業において減損処理も 行われている。 他方、継続的に減損を計上しているショッピン グ・オフィス事業は、駅および駅周辺の用地を開 発し、ショッピングセンターの運営やオフィスビ ル等の貸付業を展開している。減損処理を行った 資産は、ショッピングセンターあるいは貸付用土 地などとなっており、なかでもショッピングセン ターはほぼ毎年計上されている。ショッピングセ ンターは現在、大きく成長している小売業態であ り、各社が積極的に出店している。さらに、最近 64,296 4,024 11,297 1,800 8,077 3,865 2,379 2,676 315 1,862 14,215 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 2006/32007/32008/32009/32010/32011/32012/32013/32014/32015/32016/3 減 損 損 失 額 事業年度 その他 ハワイ事業 建設事業 不動産事業 ホテル・レジャー事業 都市交通・沿線事業 (百万円) ・車両基地用地の整備計画を廃止 運輸 業 68% 駅ス ペー ス活 用 14% ショッ ピン グ・オ フィス 9% その 他9% 営業収益計 2,867,199 (百万円) 運輸 業 72% 駅ス ペー ス活 用事 業 2% ショッ ピン グ・オ フィス 事業 12% その 他 14% セグメント資産 計 8,340,563 (百万円) 図4 西武グループにおける減損会計の状況 出典)各年度の、西武ホールディングス株式会社「有価証券報告書」より作成。 3.3 JR東日本グループの経営多角化 東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)は1987 年に設立され、日本国有鉄道(旧国鉄)の事業等 を引き継ぎ、鉄道事業などを開始した。その後、 1993 年に東京、大阪、名古屋の各証券取引所市場 第一部および新潟証券取引所に株式を上場し、現 在は完全民営化されている。また、大手民鉄と同 様に積極的な事業多角化を展開してきており、 2016 年 3 月期の連結売上高は 2,867,199 百万円で ある。鉄道ネットワークは主として関東及び東北 地方の1 都 16 県にわたり、営業キロは在来線と 新幹線を合わせて7457.3km(2016 年 3 月期)を 有している。旧国鉄から莫大な資産を引き継いで おり、資産の総額も運輸業を中心に巨大である(図 5 参照)。 図5 JR 東日本における事業多角化の状況 出典)東日本旅客鉄道株式会社「有価証券報告書」2016 年3 月期、より作成。 JR東日本では、2005 年 3 月期から減損会計 基準の早期適用を行っている。会計年度によって は事業セグメント別の減損会計の状況が不明な場 合もあるが、2011 年 3 月期以降は全て事業セグメ ント別の情報が開示されている。年度別に見ると、 早期適用の初年度に巨額の減損を計上しており、 その後は比較的小規模な計上を続けている。事業 別では、ショッピング・オフィス事業による継続 的な計上があり、運輸業から計上された場合は巨 額になるケースもある。2013 年 3 月期には、主 に運輸業において 30,028 百万円もの減損損失を 計上している。また、2015 年 3 月期の減損では、 東日本大震災とその復興に伴い、JR山田線の三 陸鉄道への経営移管が行われたことによるものが ある。山田線に限らず、JR 東日本の営業エリア では東日本大震災による被害が大きい地域も広く 含まれており、2011 年 3 月期には災害による特別 損失の計上とともに、運輸業において減損処理も 行われている。 他方、継続的に減損を計上しているショッピン グ・オフィス事業は、駅および駅周辺の用地を開 発し、ショッピングセンターの運営やオフィスビ ル等の貸付業を展開している。減損処理を行った 資産は、ショッピングセンターあるいは貸付用土 地などとなっており、なかでもショッピングセン ターはほぼ毎年計上されている。ショッピングセ ンターは現在、大きく成長している小売業態であ り、各社が積極的に出店している。さらに、最近 64,296 4,024 11,297 1,800 8,077 3,865 2,379 2,676 315 1,862 14,215 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 2006/32007/32008/32009/32010/32011/32012/32013/32014/32015/32016/3 減 損 損 失 額 事業年度 その他 ハワイ事業 建設事業 不動産事業 ホテル・レジャー事業 都市交通・沿線事業 (百万円) ・車両基地用地の整備計画を廃止 運輸 業 68% 駅ス ペー ス活 用 14% ショッ ピン グ・オ フィス 9% その 他9% 営業収益計 2,867,199 (百万円) 運輸 業 72% 駅ス ペー ス活 用事 業 2% ショッ ピン グ・オ フィス 事業 12% その 他 14% セグメント資産 計 8,340,563 (百万円)

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― 131 ― り、各社が積極的に出店している。さらに、最近 では郊外型から都市型へのシフトが進んでおり、 JR 東日本においてもショッピングセンターの施 設数、売上高ともに継続的に増加している(図 7)。 ショッピングセンターの開発・運営は同社が最も 力を入れている事業のひとつであり、2016 年 3 月期の新規開業、及びリニューアルなどへの設備 投資額は 969 億円にのぼるviii 4.データの分析と考察 分析対象とした 3 社では、初年度に多くの減損 損失が計上され、その後は比較的小規模な計上が 続いている。減損会計基準の適用当初は、多くの 企業がいっせいに多額の減損損失を計上してお り、この時期の計上では、その会計年度において 減損が認識されたケースに加えて、それ以前から 認識されうる減損も含まれているものと思われ る。減損会計基準が適用されて 2 年目以降につい では郊外型から都市型へのシフトが進んでおり、 JR 東日本においてもショッピングセンターの施 設数、売上高ともに継続的に増加している(図7)。 ショッピングセンターの開発・運営は同社が最も 力を入れている事業のひとつであり、2016 年 3 月期の新規開業、及びリニューアルなどへの設備 投資額は969 億円にのぼるviii。 図6 JR 東日本における減損会計の状況 出典)東日本旅客鉄道株式会社「有価証券報告書」各年度より作成。 図7 JR 東日本によるショッピングセンターの箇所数と売上高 出典)JR 東日本ホームページ(http://www.jreast.co.jp/life_service/shopping/)により作成。 4.データの分析と考察 分析対象とした3 社では、初年度に多くの減損 損失が計上され、その後は比較的小規模な計上が 続いている。減損会計基準の適用当初は、多くの 企業がいっせいに多額の減損損失を計上しており、 この時期の計上では、その会計年度において減損 が認識されたケースに加えて、それ以前から認識 されうる減損も含まれているものと思われる。減 損会計基準が適用されて 2 年目以降については、 その会計年度に認識された減損損失が適時に反映 されているものと思われる。 事業別では、各社によって異なる傾向があり、 東武鉄道では不動産事業、西武鉄道ではホテル・ 4,545 5,223  6,242  7,494  8,415  8,558  8,418  8,043  8,520  8,424  9,048  8,885 8,920  9,331 9,442  9,508 9,623 9,704 10,069  10,290  10,378  10,294  9,865  9,613  9,910 10,093  10,510  10,617  10,831  44 47 53 58 65 69 70 72 72 84 89 91 101 107 111 113 118 120 123 123 123 126 133 139 144 148 151 154 159 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 0 5,000 10,000 15,000 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 箇所数 売上高 (億円) 年度 売上高 箇所数

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『現代社会研究』14号 ― 132 ― ては、その会計年度に認識された減損損失が適時 に反映されているものと思われる。 事業別では、各社によって異なる傾向があり、 東武鉄道では不動産事業、西武鉄道ではホテル・ レジャー事業、JR 東日本ではショッピング・オ フィス事業が比較的多く計上されている。資産の 種類では、土地・建物・構築物がほとんどであり、 耐用年数が長く、他の用途に転用しにくい資産だ と減損を計上しやすいと考えられる。鉄道事業や、 他の公益事業には莫大な固定資産が必要となるこ とが多いため、減損損失の計上に至るケースも増 える可能性がある。減損損失を認識するに至った 経緯としては、当初想定していた営業損益が見込 めなくなった、あるいは継続的な地価の下落など が挙げられた。 鉄道会社の事業多角化においては近年、鉄道中 心、沿線中心の事業展開が行われる傾向にあり、 沿線を大きく離れたエリアでの展開は以前ほど積 極的には行われていない。そうしたエリアにおい てかつて開発した事業を縮小・売却する際、減損 処理を行っている可能性がある。したがって、減 損会計には事業多角化の見直し・縮小が表れてく るということができる。 他方、成長している分野においても減損処理が 行われている。JR 東日本によるショッピング・ オフィス事業では、当初想定していた営業損益が 見込めなくなったショッピングセンターなどの施 設に関しては減損損失を計上しているものの、事 業に対する積極的な投資は継続されている。また 他社もショッピングセンターを積極的に展開して おり、成長し変化に富む分野となっている。その ようなケースでは新規施設が頻繁に出店される一 方、当初の想定と異なってくる施設も多くなるも のと思われる。この場合は、リスクのある積極的 な多角化の推進に伴い、新たに投資した資産が減 損損失を計上する可能性がある。 本業の鉄道事業については、鉄道事業をはじめ とする公益事業はその初期投資および事業用資産 の膨大さ、資産の他の用途への転用の難しさ、と いった理由から競争市場において民間企業が規制 なく自由に運営することは好ましくないとされ、 古くから政府によって管理・運営されるケースも 多い。あるいは民間企業によって運営される場合 も自由な参入・退出や料金設定ができないなどの 規制を受けてきた。こうした「規制部門」の事業 が民営化、あるいは民間企業によって経営される 場合、その事業用資産の膨大さ、資産の他の用途 への転用の難しさ等のため、需要の低下などの要 因により減損損失の計上に至る可能性が高いと考 えられる。一方、JR 各社が旧国鉄から引き継い だ資産には多くの赤字路線なども含まれている。 その資産価値は過大に見積もられている可能性も あるが、駅及びターミナルについては再評価が行 われ、備忘価格とされているix 鉄道事業における多角化の誘因について、石井 (1995)は以下の 4 点を挙げている。第1は、企 業経営における不確実性の除去である。単一の事 業に対する需要や購買力は不安定であり、企業は 他の市場分野への多角化行動を通じて生産活動を 分散し、需要の不安定性を減少させリスクの軽減 を図ろうとする。第2は、収益性の確保である。 既に進出している分野に事業展開を集中するより も、新たな産業分野に生産活動を多角化した方が 高い収益性を得られる場合、企業はその産業への 参入を行う。第3は、企業や組織規模の拡大つま り成長である。企業は可能な限り成長しようとす るものであり、既に進出している産業分野での急 速な成長が、需要の制約、競争企業との関係、あ るいは他の外生的諸要因から困難である場合、企 業は他の産業分野への進出を図ることによって企 業規模の拡大を持続させようとする。第4は、事 業の多角化によって組織の活性化を図り、企業内 部に活力を与えることである 。例えば事業部制 の採用によって、将来の後継者に大きな権限を与 え、育成の場を設けることができるx また、鉄道事業は、鉄道事業法によって参入・ 退出・料金などについて規制されているため、運 賃などを自由に設定できず、大幅に収益性を向上 させることは難しい。対して、鉄道会社が兼業と して営む小売、不動産、サービス業などは、政府 による規制の対象とならない「非規制部門」と位 置付けられる。交通産業のなかでも鉄道事業、特 に民鉄においては古くから経営多角化が展開され てきている。したがって、鉄道事業を核としなが

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― 133 ― 引用・参考文献 石井晴夫 (1982)「鉄道業における経営多角化戦略」一橋大 学産業経営研究所『ビジネス・レビュー』第 32 巻第 3号、pp.37-51. 石井晴夫 (1993)『交通ネットワークの公共政策』中央経済 社. 石井晴夫 (1995)『交通産業の多角化戦略』交通新聞社. 石井晴夫・石堂正信 (2014)「国鉄分割民営化時の財務承継 ―国鉄閉止 BS と開始 BS の連続性について―」 小澤善哉・橘田万里惠 (2003)『総解説減損会計検討状況の 整理』東洋経済新報社 . 小澤善哉・橘田万里惠 (2004)『減損会計適用指針の実務』 東洋経済新報社 . 財務会計基準機構企業会計基準委員会事務局編 (2004)『詳 解減損会計適用指針』中央経済社 . 新日本有限責任監査法人編 (2013)『減損会計のしくみ』中 央経済社 . 広田寿亮訳、H. I. アンゾフ (1969)『企業戦略論』産業能率 短期大学出版部.(Ansoff,H. I Corporate Strategy, McGraw-Hill, 1965.)

持永勇一・山岸聡 (2004)『図解・設例でみる減損会計の完 全実務解説』財経詳報社 .

Rumelt,R.P. Strategy, Structure and Economic Performance, Harvard Business School, 1974.

i 広田訳、Ansoff, (1969) pp.161-163. を参照。 ii Rumelt,R.P. (1974) pp.80-81. を参照。 iii 減損会計基準は早期適用も可能であり、2004 年 3 月期か ら適用されているケースもある。 iv 回収可能価額とは、資産又は資産グループの正味売却価 額と使用価値のいずれか高い方の金額をいい、通常は 使用価値の方が高いと考えられる。持永・山岸 (2004)p. 108 を参照。 v 「固定資産の減損に係る会計基準」二による。 vi 日本民営鉄道局会に加盟している会社のうち、16 社が「大 手民鉄」と位置付けられている。 vii 「ユニ東武ゴルフクラブ」は 1995 年に会員制によって開 業し、その後一般へ開放されている。 viii 東日本旅客鉄道株式会社「有価証券報告書」2016 年 3 月期による。 ix 石井・石堂 (2014) p. 8 を参照。 x 石井 (1995) pp. 4-5. を参照。 らも、周辺分野に進出することで高い収益性を見 出すことができる。その一方、当初の事業計画通 りにいかないケースが増え、減損損失の計上につ ながっているものと考えられる。 おわりに 本研究では、減損会計処理に着目して鉄道会社 の経営多角化について分析・考察した。その結果、 分析対象 3 社について共通点及び異なる特徴が見 出された。各社の減損損失の状況をみることで、 経営多角化の動向さらには事業に関する意思決定 を知ることができる。しかし、より正確な分析を 行うためには、減損処理を行った資産がその後ど うなったかなどを含め、他のデータと組み合わせ て検討する必要がある。今後の課題としては、分 析対象をさらに広げることによって、この結果を 確かめていく必要があると考える。 減損会計基準が適用されてから 10 年が経過し、 各社とも基準を順調に運用しているものと思われ る。適用当初と比較すれば減少しているものの、 各社とも毎年相当額の減損損失を計上している。 これは各事業および資産に対するモニタリングが 正常に機能していると評価できる一方、事業計画 の正確な策定の困難さを示すものでもある。当然 ながら将来のことを完璧に予測することは不可能 であるが、大幅な事業計画の見直しともなれば、 グループ全体に対して影響が出る。鉄道会社にお いては公益性が高いという性質上、市民生活にも 影響が出る可能性があり、鉄道会社をはじめとす る公益事業における経営多角化では、より慎重か つ正確な予測に基づいた事業計画を策定すること が期待される。

参照

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