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たくあんにおける電気刺激による発光現象

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Academic year: 2021

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たくあんにおける電気刺激による発光現象

櫻 井 勇 良

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図1 実験セットの外観 1.研究の目的 漬物に電圧を印加させて発光させる実験は、筆者が テレビ番組の録画放映のための撮影において体験し た1),2)。その時、「二本の電極のうち、何故、片方の電 極付近で発光するのか」、「発光と電圧の極性は関係あ るのか」という疑問を抱いた。実験的検討を加えてこ れらの疑問を解くことが本研究の目的である。 2.実験・検討 身近にある様々な漬け物を用意し、交流(電圧調整 器、100 V,5 A)および直流(60 V,50 A)の電圧 を印加したときの発光観察を行う(図1参照)。二本 の金属の電極(Φ 1.5 mm、長さ:40 mm)を漬物の 表面に接触させるあるいは漬物の内部に差し込み、電 流計を見ながら断続的に電圧を増加させる。 種々の漬物について発光観測の実験を行った結果、 たくあんが最も強い発光を現すことが明らかになっ た。実験教材として、発光強度は弱いより強い方が適 していると思われるのでたくあんを試料とすることに

たくあんにおける電気刺激による発光現象

櫻 井 勇 良

Luminous phenomenon from electric stimulation in TAKUAN

Yuryo Sakurai* した。以下ではたくあんにおける発光現象について述 べる。また、直流より交流のほうが手軽に強い発光が 観察できたことから交流電圧を用いた時の結果につい て述べる。 * 電気電子工学科 准教授

In this paper, we describe light emission from electric stimulation of TAKUAN which is representative of the pickled Japanese radish. As a result of experiments on various pickled radish we confi rmed that strong light emission appeared in TAKUAN. Steam, along with a peculiar smell is observed when alternating current or direct current voltage is gradually applied in TAKUAN. The light emission, which is accompanied by a discharge phenomenon within the TAKUAN that is in contact with the electrode, appears after the generation of the steam. We conclude that fl ame reaction is associated with this light emission because black powder was formed after the light emission. This light emission was observed in the vicinity of the electrode and soon after the steam ends regardless of type of power supply and polarity. The emission process appears quickly after the generation of steam stops.

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図2 電圧の印加に伴う水蒸気の発生、電流の増加の様子 および発光の発生に関する概観図 図3 電圧値の変化に対する発光および電極付近の様子の 変化 2.1 実験結果および考察 2.1.1 発光の様子 たくあんにおける発光現象の観察結果を以下に示 す。たくあんに印加する電圧を徐々に変化させた結果、 電圧の大きさに応じて様子が変わる。発光が始まって から終わるまでの様子を観察した結果、三段階に大別 できることが分かったので以下にそれぞれにおける様 子の概観を述べる(図 2、図 3 参照)。 (1)発光が観測されるまでの様子 通電後、直ぐには何の変化も見られない。電圧を段 階的に上げた時、ある電圧値になると二本の電極のう ちどちらか片方の電極付近から独特の臭いを伴った水 蒸気が発生する。さらに電圧を上昇させると水蒸気の 発生が激しくなり、電圧を上げずに一定にしておくと 時間の経過と共に水蒸気の発生量は減少し、いずれは 無くなる。この間において通電電流の値及び変化の幅 が大きくなる(図 2 参照)。電流計の指針の動きと水 蒸気の発生の様子を比べた結果、時間に対する水蒸気 の発生量の変化と電流変化が類似していた。 両者の関係は次のように解釈できる。電極間に電流 が流れるとジュ - ル熱により電極が加熱される。たく あんには多くの水分が含まれているので、電極と接触 している部分では蒸発が起きる。それが水蒸気となっ て外部に放出される。水蒸気の生成に伴い電極間の電 気抵抗が減少し、電流が増えるのでジュ - ル熱による 電極の加熱はさらに進み、それに伴い水蒸気の発生量 も増加する。水蒸気の発生量は、ある時点でピ - クを 迎えて減衰する(図2⒝参照)。このように通電によ る電極の加熱現象が水蒸気の発生に関わっているため に電流の変化と水蒸気の発生量の変化の時間経過が類 似すると考えられる。この状態では、発光は観測され ない。 (2)発光出現初期・中期の様子 水蒸気の発生が終わるころを見計らって、電圧を少 し上昇させて固定すると、電極と接触しているたくあ んの外皮において点状の局所的な火花(放電)が出現 する。この規模は小さいので直ぐに終わってしまう。 湘南工科大学紀要 第45巻 第1号

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図4 発光状態の想像図 そこで、さらに電圧を上げ固定すると、たくあんの外 側からも十分確認できるほどの規模の大きな発光がた くあんの内部で起こる(図3⒞参照)。発光の継続に 伴い、電極の周囲に炭化物が生成される(図3⒞、⒟ 参照)。このことから発光機構として、火花放電のほ かに高温の発生及びそれが関与した発光も含まれるこ とが推測できる。火花放電は、放電時に高温を発生す るのでその可能性は十分考えられる。つまり、火花放 電によって形成される高温領域に周辺の物質が混入す ることによりア−ク放電や炎色反応が誘発される。こ れが連鎖的に発生するため高温領域が拡大すると共に 発光も増えることが考えられる。したがって、周辺物 質の混入がある限り発光の発生・炭化物の生成が続く ものと考えられる。 発光の色は、単色ではなく肉眼で見る限り白色の部 分と橙黄色(595 nm ∼ 610 nm)の部分とが混在して いるように見える。白い光りがたくあんを通して橙黄 色に見える場合もある。発光色の中で、たくあんの色 と類似する橙黄色が漬物を作る際に添加する色素と類 似することやたくあんを作る時に使用した塩の主成分 である Na 原子(590 nm 付近)3)や窒素の原子(577 nm 付近)4),5)の発光ピ−クが橙黄色(595 nm ∼ 610 nm) の波長と類似することなどからこれらの関与が考えら れる。この他に、全体の発光に比べれば小さいながら も赤色系の発光なども含まれていたことから酸素や水 分などの関与も考えられる。さらには、上述したよ うな発光の状況から、これらの発光の他に火花放電、 アーク放電や Na 原子が関与する炎色反応6)の関与も 考えられる(図4参照)。 (3)発光終期の様子 電圧をさらに上昇させ、100 V 付近で固定すると再 び発光が現れ、時間が経つにつれて発光量が減少する。 この後、発光の出現が終了する場合と断続的に水蒸気 発生・発光発生が続く場合がある。この違いは、電極 の移動の有無である。 何故、電極が動く場合と動かない場合があるのかに ついて述べる。電極はたくあんに突き刺しただけで固 定はしていない。実験を始めるまでの電極は、たくあ んと密着しているが、発光が起きると電極付近のたく あんが黒色の粉上の物質に変化するために両者の密着 性が低下する。したがって、電極は小さな外力で容易 に動くようになる。 発光現象をじっくり観察した結果、電極の移動に及 ぼす影響は、重力よりも発光時に発生する気体の流れ に伴う力の影響の方が大きいことに気づいた。 発光が発生する場合、電極の周辺では、蒸気発生や 高温発生などが起きるためたくあんの外部より気圧が 瞬間的に上昇する。それに伴い、電極付近から外部に 向かって急激な気流が発生する。この気流による力が 電極を下方あるいは上方に動かし、発光に寄与しない 炭化物との接触状態から発光に寄与する新たな物質と の接触状態に移れば、再び発光が起きる。このような 電極の移動が断続的に続けば発光に寄与する物質が存 在する限り発光も断続的に起きる。電極に及ぼす爆風 の影響は、発光を継続させるように作用するとは限ら ず、爆風がたくあんの外部に吹き出る力が電極に強く 働いた場合は、爆風と共に電極が吹き飛ばされるよう にしてたくあんから抜ける場合があるので注意する必 要がある。 実験終了後、電極と黒色の粉を取り除くと洞窟のよ うな穴が観測できる(図3⒡参照)。また、この発光 は、電極とたくあんとの接触面積の大きさによって影 響されるので表面積の大きな電極(例えばフォ−ク) を使った場合は、発光の規模が大きくなり、穴の大き

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図5 電極の刺し方が浅い方における発光出現の様子 さはさらに大きくなる。 最後に、この発光機構を考察するために、たくあん の母材である大根を用いて同じような実験を行った。 その結果、たくあんにおけるような強い発光が観測さ れなかった。このことから、たくあんにおける強烈な 発光の主要な起源は、大根がたくあんに変化する過程 で形成されるものであるといえる。 ここまでの観察をまとめると以下のようになる。 (1)たくあんに電圧(直流、交流)を徐々に増加させ ると、通電電流が増加し、ある値になると独特の 匂いを含んだ水蒸気が発生する。 (2)電圧を上げずにそのままにして置くと、通電電流 の減少と共に水蒸気の発生が減少する。そして再 度、電圧を増やすと破壊音を伴う放電と共に橙色 の発光が起きる。発光は、電極とたくあんとの接 触状態の変化に影響される。 以上のように、たくあんにおける電気的刺激による 発光には、その製造過程で試用される物質特に Na 原 子が深く関与したグロ−放電、火花放電および炎色反 応現象が深く関与していることが考えられる。 2.1.2 何故、発光が片方の電極で起きるのか (発光が起きる電極の条件)について この発光現象は、交流や直流の種類に関係なく二本 の電極のうち左右どちらの電極で発光が観測されるか は分からないが必ず片方の電極付近で発光が観測され る ( 図5参照 )。そこで、何故、片方の電極で発光が 起こるのか、発光が出現するための条件があるのか、 などの疑問について考察した結果を以下に述べる。 当初は、電気的な要因の関与を考え、等価回路など を描きながら種々検討を行ったが、有力な手がかりが 得られなかった。しかし、その過程で行った実験にお いて、刺し方が浅い方の電極で発光が起きていること に気づいた。 二本の電極におけるたくあんに刺す長さを意図的に 変えながら発光の生成状況を調べた結果、どちらの電 極で発光が起きるかは、電極自体に依存せず、たくあ んに刺す電極の長さの違いに依存することが確認でき た。つまり、たくあんに浅く刺した電極付近で発光が 必ず起きることが明らかになった。 次に、何故、刺し方が浅い電極の方で発光が観測さ れるのかについて述べる。発光機構の視点から検討を 行った結果、発光が早く始まるにはその前に起きる水 蒸気の発生が早く終わらなければならないことに気づ いた。したがって、刺し方が浅ければ深い方の電極に 比べてたくあんとの接触面積も少ないので水蒸気が発 生する時間も短くなり、発光過程に早く移行したもの と考えられる。したがって、刺し方が浅い電極におい て発光が観測されたものと考えられる。 最後に、電極をたくあんに刺さず表面に接触させた 場合にどのようなことが起きるかを確かめた。簡単な 方法として、数十V の交流電圧を印可しておいた二本 の電極を一本ずつ手で持ち、種々の条件(接触面積、 接触の時間的なずれ)下でたくあんの端面に瞬間的 に接触させ、発光の出現状況を調べた(図6⒜参照)。 その結果、二つのことが明らかになった。 一つ目は、ほぼ同時に二つの電極をたくあんに接触 させた場合は、両方の電極付近でほぼ同時に発光が観 測される。二つ目は、二本の電極を左右関係なく1本 ずつたくあんに接触させた場合は、先に接触させた方 では発光が起きず、後から接触させた電極付近で発光 が観測される。何故、後から接触させた電極付近で発 光が観測されるのかについては、絶縁破壊が関与して いることが考えられる。つまり、以下のようなことが 予想できる。 まず、二本の電極が共に無接触の状態では、電極間 に数十V の開放電圧が発生している。次に、無接触で あった二本の電極のうち片方の電極をたくあんに接触 させると、数十V の電圧は、無接触状態のもう片方の 電極とたくあんの端面との間に発生するようになる。 この状態で無接触の電極をたくあんに徐々に近づける と両者間の距離 ⒟ が短くなるにつれて両者間に形成 湘南工科大学紀要 第45巻 第1号

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図6 たくあんの端面に電極を接触させて発光の生成状況 を調べている様子 される電界強度(V/m)が強くなり、大気の絶縁耐 圧を超えた場合、放電(発光・発熱)が発生すること は容易に想像できる(図6 ⒝ 参照)。 以上のように、古くからある日本の代表的な漬け物 の一つであるたくあんに電圧(交流、直流)を印加す ることにより放電現象や炎色反応が混在した発光が観 測されることを明らかにした。また、この発光には、 たくあんと電極との接触状態が深く関与していること を実験的に明らかにした。 3.研究のまとめ たくあんが電気刺激により発光する実験を観察した 時、「なぜ片方の電極付近でしか発光しないのか、発 光と電圧の極性は関係あるのか」という二つの疑問を 抱き、それを解くために追実験を行った。その結果、 発光の出現には電源の極性は関係なく、たくあんに突 き刺した電極の長さに依存することすなわち突き刺し た長さが短い電極で発光が出現することを明らかにし た。また、発光の生成状況の観察結果から発光機構を 推論することができた。 引用・参考文献 1)http : //myfavorite-trivia.cocolog-nifty.com/blog/ 2006/06/post_d0e4. html 2)フジテレビ トリビア普及委員会:「トリビアの泉 ∼ へえの本 ∼」 第 18 巻(2006), pp. 38. 3)http://www.isc.meiji.ac.jp/~saiken/spectrum_abe.htm. 4)http://asahi-classroom.gi.alaska.edu/jsite/color_j.htm. 5)http://www.isigas.com/N2SpectralProfi le.html 6)野村裕次郎, 小林正光、「チャート式新化学」(1968) , pp. 248, 数研社.

参照

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