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フラッシュ法によるフタロシアニン薄膜の光起電力特性

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(1)

  M 測 0塞 瑚 0尠 SAO ▲M1 】【N衂, 躍 U謄 隅OF 「陶 C駆 阿0払06V     Vo1

23

 No

14989 フ

ッ シ n

よ る

ロ シ

ニ ン

光 起

桜 井 勇 良

* ・

趙   木 根

* * ・

伊 藤

* * *

The

 

Photovoltaic

 

Characteristics

 of 

the

 

Flash

 

Evaporated

         

Phthalocyanine

 

Thin

 

Films

Yuryo

 

SAKuRAI

 

Muken

 

CHAo

 and  

Masatoshl

 

ITQ

   

Aphotovoltaic

 cell 

is

 

fabricated

 

by

 sandwiching  

Phthalocyanine

 thin film between  aluminum  and

silver electrodes

  The  e丘ects of 

fiash

 evaporation  and   polar polymer  

dopants

 on  the phthalocyani ロe

photovoltaic film are studied

   

The

 results  can be su 皿 marized  as follows:

    1) 

The

 structure  of the flash evaporated  filrn800°C

)is amorphous  but the original  chemical

st「uctu 「e is not  changed

    2)  The photocurrent  and  the conversion  emciency  of the 

flash

 evaporated  ce1且s are 

larger

 than

that

 of the resistive  heating  evaporated  cells

   

3

) 

The

 poly

vinyl 呈den

fiuoride dopant gives a larger photocurrent  and  a higer conversion  e丘

iciency

than 

poly・

N

vinylcarbazole  dopant

1。

は じ め に  

般に フタロ シ ア ニ ン いた光 電変換素子の 変 換 効 率は, 1% 以 下 と低い た め太陽電池 として実 用 化に至っ て い ない のが現 状である。  変換効率 が 低い原 因の主 な もの として, 電 極 と膜 との 界 面に存 在 する不 純 物 準 位や色 素 内 部に密 度の ト ラ ッ プが存 在 するこ と等 が 挙げら れてい る1) 。 そこで, 効 率 改善のた め種々 の 極 性ポ リマ

色 素混 合た り2)

フ ロ ン ト電 極の種 類を変えた り して3)特 性へ の 影響が 研 究 さ れてい る。 し か し, 薄膜の形 成は粒子分散 法に よ るものが多く

真 空 蒸 着法を用い た研究はあ まり 見 られ ない。  筆 者 らは

従来か ら極性ポ リ V

は 色素の光 電 変 換 特 性 を 改 善 す るド

パ ン トと考え

直空 蒸 着法に よ リポ リ マ

を 色 素に ド

プ し た色素ド

パ ン トの光 電 変換 素 子 を製 作し種々 の角 度か ら研究 を 行 なっ て い る4)

T) 。  し か し

真 空 蒸着法に よ り色 素 とド

パ ン トとを 同 時 * 電 気工 学 科 助手

* * 教 養 課 程 教 授

* * * 電 気  工学 科   教 授   昭 和

63

10

19

目受 付 蒸 着 した場 合, 色 素と ド

パ ン ト との蒸 気圧が異 な る た め

任意の混 合比で蒸 着膜を 形 成 させ るこ とは困難であ る。 そこ で

本研究では, 予め 色 素 とド

パ ン トを 混 合 させ て おいて, それを瞬間 的に蒸発さ せ るフ ラッ シ

法 を用い ることに した。 こ の方 法に よれ ば

原料の組 成に 近い蒸着 膜が 得られると考 え ら れ る。 また, 蒸発 源 温 度 が高 温で ある た め

蒸 着膜につ い て次の こと が 予 想 され る。

1

) 色 素と ド

パ γ トの分子 量

膜の結晶 化度が 変 化する。

2

) 色 素の粒 径が小 さ く な り, 色 素 粒 子 同志, ある い は 色素粒 子と ド

パ ン トとの接 触 面 積が増 加 し

キ ャ リア 発 生に寄 与する “ 場” 増 える。

3

) 熱 分 解 と 再 結 合に より色 素粒子 とド

パ ン ト粒子間に新たな化学 結 合が 生成 する, 等で ある。  これらの こ とが

フ ラッ シ

法で形 成 され た 膜の不 純 物準位

色 素 内 部の ト ラ ッ プに作 用し, その結 果太陽電 池の性に対して どの よ うな 影 響を及ぼすか を 検 討 する こ とは, 色 素系 薄膜 太 陽 電池の特性 改 善の手 掛か りを 得 る た めに必要で ある。  本 研 究で は, 色素と し て代表 的 なメ タル フ リ

タ Pt シア ニ ン

HtPc

パ ン トと して 極 性ポ リマ

るポ リ ビニ ル カル パ ゾ

PVK

と ポ リフ ッ 化 ビニ リ

(2)

相 模工 業 大 学 紀 要   第 23 巻   第 1 号 デン PVDF を そ れ ぞ れ用いた。 まず

これ ら を種々 の混 合 比で フラ ッ シ ュ 蒸発さ せ て膜を形 成 し

その構 造 を調べ た。 次に

アル ミニ ウ ム (

A1

)と銀 (

Ag

)を電 極 とし て用い てサ ン ドイ ッ チ型光 電 変換素子を製 作し

太 陽 電池特 性を 調べ た。 これ らの実験 結 果か らフ ラ ッ シ ュ 法の有 効性とド

パ ソ トの効につ い て 検討し たの で 告 する。

2

実 験 方 法  

2.

1

  真 空 蒸 着 装 置  図 1

i)に抵抗加熱 法に用いた装 置の 概 略を示 す。 ベ ル ジャ

内には蒸 発源

蒸発 源か ら約 20cm の とこ ろに基板ホ ル ダ

2 蒸 着膜の 蒸 着 速度と生 成膜 厚 とを 監 視 す る た め の 膜 厚 監 視 装 置 (日本 真 空 技術, CRTM

1A)の水晶 片セ ン シ ン グヘ

蒸発初 期の蒸 発原料か ら出る不 純 物の基 板へ の蒸着防 止 と 生 成 膜 厚 を 制 御 するた め の シ ッ タ

等が配 置さ れ てい る。 使 用 し た蒸発源は各蒸発原料別に併せ て示す。  図 1

−ii

)に フ ラ ッ シ ュ 法に 用 い た 装 置の概 略図を示 す。 この装 置の ベ ル ジ ャ

内に は

粉 末落下装 置を除い て, 抵 抗 加熱法の ベ ル ジ ャ

内と同 じものが 配置さ れ て い る。 但し

蒸発 源 と基 板ホ ル ダ

との距 離は約

15cm

である。  落 下 装 置は, 原 料 粉 末 を 入 れる ため の ホ ッパ , 落下 し た粉 末を蒸 発 源に くため の銅 筒

振 動させ る た めの 小型 直 流モ

6W

蒸発 源か ら銅筒へ の熱 伝 導 を 少なくする ため の碍 子

銅 筒 を 固 定 する ため の支 持 板 等で構成 されてい る。     ベ ルジヤ

       i) 抵 抗加 熱 法

a)Al用 (Ta)

0

bH2PcMo 「コ

c)PVK

 PVDF 用 (Mo

trd

)Ag用 (W) ベ ル ジヤ

粉 末 落下装 置の概 略 図   ii) フ ラッ シ ュ 法 図

1

蒸 着 装 置の略 図

(3)

フ ラ ッ シ

法に よ る フタ ロ シア ニ 薄 膜 光 起 電 力 特 性 井 勇 良

 木 根

俊 ) o マ ス ク aAlおよ びAg 蒸 着 用

b

)単

膜 お よび混合膜 蒸 満 用 図

2

基板ホ ル ダ

膜 お よ び混合 膜     AI 系 導 電   塗料 図

3

光電変 換 素子 の概 略 図  

2 .

2

光電変 換 素 予の製 作   図

3

に光 電 変 換 素 子の概 略 図 を 示 す。 素 子は 以 下の手 順に よ り製作 し た。   1} 抵 抗 加 熱用の ベ ル ジ ャ

内に

ア ル コ

ル 超 音波 洗 浄 し た光 電 変 換 素 子 用の ガ ラス 基 板

6

基 板ホル ダ

2

a

1

にセ ッ トする。 更に

Al の透 過 率測定用 の ガ ラス 基 板 を 基 板ホ ル ダ

の両 側に取 りつ 。 その 後

ベ ル ジャ

内を

10−

5Torr 台の真 空 度に保ち

フ ロ ン ト電 極となる

Al

0 .

02 〜O .

04

 nm sec の蒸着速 度 で約 20nm 蒸着 する。  

フ ラ ッ シ

用の蒸着 装 置の ベ ル ジャ

内に粉末 落 下 装 置を取 りつ 。 ホ ッ パ 内に は適量の原料 粉 末を 入 れ

基板ホ ル ダ

[図

2

b

1

IR

スペ ク ト ル測 定 用 の

KBr

基 板 (φ

10 mm

 

X

ス ペ ク トル の ガ ラス 基板 15×15mm ) を 各

1

枚つつ 取 りて お く。  

2

) 抵 抗 加 熱 用の ベ ル ジ

内 を 大 気 圧に し て か ら, Al を蒸 着し た

6

枚の ガ ラス基板の うち 3 枚を速や か に 取り出 し

フ ラ ッ シ

用の基板ホル ダ

にセ ヅ トし

直 ちに両方の蒸着 装 置の ベ ル ジ

内 を 10

5Torr の真 空 度にる。 そ の後

粉末 落 下 装 置に よ り

蒸 発 源 (約

800

℃)に 原料粉末を落下さ せ

フ ラッ シ ュ法に よ り蒸 着 膜を形 成 する。 蒸発源温度 が室温 付 近に なっ て か ら基 板を取り出し, 残 りの

3

枚の ガ ラス基板につ い て 同様の 手順 で

別 の混合比の蒸 着膜 を形成 する。  こ の後

抵 抗 加 熱 用の ベ ル ジャ

内の 蒸発 源を Mo ボ

, パ ッ ク電 極 となる

Ag

が蒸着で きる よ う に

適 量の

Ag

粒 子を ボ

ト上に 乗せ て お く

 

3

1

)と

2

) とに よ り

Al1H

Pc

膜 あるい は混合 膜と蒸着された

6

枚の ガ ラス 基板を 基 板ホル ダ

にセ ッ トし

10

s Torr 真 空 度

 

Ag

0 .

1

nm sec の蒸着速 度で約

200

 nm 蒸 着 す 。 その後, そ れらを取り出し

銀系 導電 塗 料でそ れぞれの電 極に リ

ド線を取 りつ

シ ケ

タ 内 (湿度 20% 以下)で乾 燥 させ る。 最 後に

素子全体をエ ポ キシ樹脂で コ

ティ ン グ し て, サ ン ドイ ッ チ型 光 電 変 換 素 子を構築する。 な お

抵抗加熱法 に よ り

H2PC

膜の光 電 変 換 素 子 を 構築す る場 合は

,Al

蒸着 後

, 6

枚の ガ ラス 基 板ホル ダ

ご と空い たベ ル ジ ャ

内に移 し, 10

5 

Torr

空 度で保 管する。 その間

抵 抗 加 熱 用のベ ル ジ ャ

内を 色素が蒸 着できる ように準備し て お く。 保 管 して おい た

6

枚の ガ ラ ス基 板の うち 3枚を取り出し

基 板ホ ル ダ

にセ ッ トし た後

真 空 度 10

5Torr , 蒸 着 速 度 約

0.

1 nm sec の条 件で約

150

 nm 蒸 着する。 また

残 りの

3

枚に つ い て も同 様に して 光 電 変 換 素子 を製 作 する

(4)

詁模工 業 大 学 紀要  第 23 巻  第 1 号 熱線吸収フ ィル タ

キセノ ンランプ {500W ) 反 射 鏡 塩 化ビニ

ル パイプ

 夛

  ク メ ト 1囗 タ 凡 シャッタ

干 渉フィ ルタ

ランプハウス

    光 電変 換       素子 スイ ッチ

SWl

ス イッチ SW2 電 源 図 4 太陽電池特性の測定系  以 上の ように し て,

1

回の蒸 着 操作で

蒸 着 条 件 の サ ソ ドイ ッ チ型 光 電 変 換 素 子 が

3

枚 あるい は6枚製作 できる。

 2,

3

蒸 着膜の構 造と 太 陽電池特 性の 測 定

 

本研 究で は, 太 陽 電池特 性とし て負 荷 特性 を 測 定 し

光 電 流と変 換効 率の長特性を求め た。 ま た

蒸着 膜の 構 造は

IR

スペ ク ト ル と

X

線回 折スペ と を 測定す る こ と に よっ て調べ た。  

2 .

3 .

1

蒸 漕 膜 の

IR

スペ ク トル とX 線 回折スペ ク ト        ル の測 定   IR ス ベ ク トル は赤 外分光 光 度 計 (島津 製 作所

 

IR−

435

400〜4000cm −

1

 

X

折ス ペ ク トル は

X

線回折 装 置 (理学 電 機

ミニ フ レッ クス )を用い て そ れ ぞ れ 測 定した。  

2 .

3.

2

光 電 変 換 繁 子の太 陽 電池特性 の 測定  図

4

に 測定 系を 示す。 測 定 系は光源として

Xe

ラ ン プ (

500W

分光用の干渉フ ィ ル

ー,

素 子を取 りつ ける た め の ホ ル ダ

付の暗箱

負荷抵 抗 と その両 端の電 圧 を 測 定 する た め の エ レ ク トロ メ

タ (タ ケ ダ理研

,TR −

8651で構 成 さ れて い る。 以 下の手 順に よ り

光 電流 と変 換 効率の波長特性を求め た。  

1

) A1 蒸着 済の ガ ラスを 取りつ けた パ

安 立

,ML −96B

)の セ ンサ

を暗箱の ホ ル ダ

の 中 央に取 りつ け る。 その 後, 干渉フ ィ ル タ

で分 光し た光 をセ ンサ

の 受 光 面 (φ諞

8mn

) 全 体に照 射さ せ

波 長 毎の入射 光 強 度

Pi

を 測定する。 な お, 

Pt

の単 位 面 積 当 りの光 強 度 Pie (W !cm2 は, セ ンサ

の感 度特性 と セ ン サ

の受 光 面積とに よ る 補 正で求める。  

2

)  負 荷 抵 抗 R. を無 限 大に し た状 態で 暗 箱に素子を セ ッ トし,

1

) と 同様に 分 光した光を 照射 する。 その状 態で

RL

を変 化 させ て

 

RL

γ 測 定

消費電 力 を (

1

)式よ り算 出 す る。 その結 果から最大消 費電 力

Pntax

を 求め る。                 

P

=  V2 !R .        (

1

)   Pmam の単 位面 積 当りの 消費 電 力

PPtaxs

(W !c皿2)は素 子の有 効 照 射 面 積で補 正 して 得 ら れ る。 変 換 効 率 ηは (

2

) 式よ り求め る。 ま た, 光 電 流

J

は Pm 。 。 に おける 電 圧と負荷 抵 抗とに よ り求め る。            η=

P

。、aXt !君8×

100

  (% )       (

2

)  以 上の こ とをそ れ ぞ れの 波 長につ い て行 ない ,

1

と η の波 長特性を求め る。

3

験結果

討  

3.

1

  蒸着 膜の構 造  図

5,

6

H2Pc 。

PVDF 膜と

H2Pc ・PVK

膜の

IR

ス ペ ク トル の測 定 例 をそ れ ぞれ示 す。 ま た

それ ら

X

の線 回 折ス ペ ク トル の測定例を 図 7, 図

8

に示 す。 図 中には

混 合 膜 と 比較す るた めに

に おける測定 例 を併せ て示 してあ る。  図 5に おける

IR

スペ ク トル の パ タ

γ 吸 収 強度の

(5)

フ ラ ッ シュ 法に よ る フ タ ロ シ ア ニ ン薄 膜の 光 起 電 力 特性 (桜井 勇 良

趙 木 根

伊 藤正 俊 )

(.

8

涯 ω 匚 匹 ト   H2Pc単

膜  (抵抗加熱 法

蒸着速 度 約 0

1nm/sec PVDF のド

ピング鑑 (wt %       30

生 成膜厚: ュ 法約 120

150nm         抵 抗 加 熱 法 約150nm フ ラ ッ シ ュ 法 1500       1000     

Wave

 number cm

1 図 5  蒸着膜の

IR

ス ペ ク トル

8

の ⊂ 匣 ト 1500       1000      Wa>e number cm

1

6

  蒸 着 膜の

IR

ス ペ ク トル 変化に は

次の よ う な特徴 が あ る。  まず

抵 抗 加 熱 法に よる

H2Pc

膜の ス ペ ク トル の パ タ

ン とフ ラ ッ シ ュ 法に よ る H2Pc 単

膜の パ タ

ン と は ほぼ 同

る。 次に

PVDF の ド

ピ ン グ量に よ るス ペ ク トル の パ

ソ と吸 収 強 度の 変 化を見 る と

ピ ソグ量 が増すにつれて

スペ ク ト ル の 吸 収強度は 減 少し

,PVDF

の 固 有 吸 収 波 数 帯と見ら れ る

800

 cm

1

1200cm

お よ び 1400 cm

工 付 近の 吸 収が現れ て, 全

(6)

相 模工業 大学紀要 第

23

巻 第 1 号

厘 2 = 5   10       15

2

θ

deg.

図 7 蒸 着 膜 の X 線 回 折 ス ペ

ε 倉 。7 お 芒 5   102 θdeg 15 図 8 蒸着 膜の

X

線回 折ス ペ ク トル 体 的に

H2Pc

とPVDF との 成パ タ

ンに なっ て い る 図 6 につ い て も

,HtPc ・PVDF

膜の場 合 程で は ない が, ド

ピ ン グ量 を増 す と

, PVK

の 固有吸 収波数と見られ る

1250

 cmHl 付 近吸 収れ て

 H,Pc と PVK との 合 成パ タ

ン と なっ て い る。  これ らの結 果か ら

蒸 発源 温 度 800℃ 位で フ ラッ シ

蒸 着 して

蒸 着膜に お ける

H2Pc

, 

PVK

ある い は PVDF の分 子構 造は変化し ない と 言 え る。  

般に 有機 材料の製 膜 法には, 化 学 的なもの と物理 的 な もの とが あ り

前 者の合は

製膜 中に原 材料とは異 なる新たな 分子構 造が得 られるが

後 者ではそ れが見 ら れ ない と言われて い るS) 。

(7)

フ ラ ッ シ ュ 法 に よ る フタ ロ シ ァ ニ ン薄 膜 の 光起電 力 特性 (桜 井 勇 良

趙 木 根

伊 藤正俊 )  フ ラ ヅ シ

法 は

原 理 的に は後 者に 属して い る の で

こ の よ うな結 果に なっ たが 蒸 着 条 件に よっ て は前 述の よ うに

原 材 料と は異な る分 子構 造を有する蒸 着 膜が 得 られる と

え られ るの で

引 ぎ続 ぎ検 討する予 定で る。   次に 図 7

図 8 の X 線回折ス ペ ク トル につ い て 見る と

抵 抗 加 熱 法に よ り比較的 遅い蒸着 速 度 (約

0.

1nm / sec)で蒸着した場 合

回 折 角 2θ が 7 度と 13

5 度 付 近とに ピ

クが 現 れてい るが

フ ラ ッ シ

法で形 成 した 場 合は

ピ ン に 関係な くその よう な ピ

クは ほ とん ど現 れ ず

膜の結晶 化 度は著 しく低 下して い る こ と がわ か る。  

般に蒸 着過程に おいて

蒸 発 粒子 が 基板に到達する と

粒 子 間 相 互 作 用 と過 剰の熱エ ネル ギ

のた あに再 配 列 が 起 こ り

相互に安定な位置に近 づ く

粒子 が規 則正 しく再 配 列 して 結 晶 化度がで る た め に は

次 の蒸発粒 子が到 達 す る までの時 間

T

、が

こ の配 列に要 する時間 T, よ りも 長い こ と が 1つ の 条件と さ れ て い る9) 。 この ことか ら考え ると

フ ラッ シ ュ法で蒸着し た 場 合は

蒸発 源 温 度 が高い た め蒸 発速 度が高 くな り

粒 子の到達と再配 列に要 する時間 Tl と 乃 との大 きさ 関 係が T、く T, と な るQ そのため に再配 列が充 分 行な わ れ ない ま まに膜が形 成 さ れて しまい , 膜の結 晶 化 度が著 し く低 下し た と言 える。   3

2 太 陽 電 池特性  本実験で製 作した 素子に つ い て光 電 流 ノ と変 換 効 率 η の波長 特性 を 測定し た結 果

いずれに おい て も波長特性 の パ

が 類 似 し て 。 比 較しや す くす る ために次 の よ う なこ と を行なっ た

 

1

) そ れ ぞ れの ノ

η }こつ い て 全 波 長 域の平 均 値 ム

洗 を求め る。 こ こ で

X は ド

パ ン トの 重 量 %であ る

 

2

) 次式に よ り平 均 ド

ピ ン グ効 果 係 数

kx

め る。       kx 

Jx

  kxt= 謝 ウo      (

3

) こ こで

Jo

 

ijo

はフ ラ ッ シ ュ 法に よ り形 成した

H

Pc

お け る平均値である。

  3

 

,lext

で 各 素 子の 測 定値を割っ て, 光 電 流ム と 変 換 効 率 恥 と を求め る。  図

9

PVDF

を ド

ピ ン グ し た場合の

Jm

波長 特 性を示し

10

PVK

の 場 合 を 示 す。 図

9

よ り

PVDF

の ド

ピ ン グ量 を 増 や し ても

Jx

の波長特性の パ タ

ンは , ほ と んど変 化し ない こ とがわ か る。 この傾向 100       10

個 ∈ り ≧ 匸 モ 芒 Φ

9 。 産

100

     

10

°

畧 ≧ ⊆

Σ

§

§

歪 500         600          700        

Wave

 lengthλnm       図

9

光 電 流の 波 長 特 性 500       

600

       

70Q

     

Wave

 

b

  thλnm       図

10

光 電 流の波 長 特 性

(8)

相 模工 業 大 学 紀 要

 

第 23 巻

 

第 1 号

季 』

×

9

。 匸 。

望 Φ ≧

8

・ き 匹 1

9x

§

Φ ・ 。

8

に      Wave lengthλnm

11

変 換 効 率の 波 長 特性     

Wave

 lengthλRm 図 12 変 換 効 率の 波 長 特 性 蘭 2 1   O   Q   IO   20    30   40       Depant concentration (wt%

13

光 電 流に対 する ド

パ ン トの効果 3 2 1      O     O   10   20   30    40       

Dopant

 ooncentration wt % 図 14 変 換 効 率に対 する ド

パ ン トの効 果

(9)

フ ラッ シ ュ 法に よる フ タロ シア ニ ン薄膜の光起 電力 特 性 (桜 井 勇良

趙 木 根 ・伊 藤 正 俊 )

10

の PVK の場 合で も 同 様に見 られ る。  図 11, 図 12 に変 換 効 率の波 長 特性 を 示 す

 両図に つ いて も上述と同様の見 方をすると

やは りド

パ ン ト の ド

ピ ソグ量に よ らず

波長特性の パ タ

ン は ほぼ 同

で あるこ と が わ か る。  

般 に波長特 性は

膜の分 子構 造の変 化やフ ロ ト電 極 と 色 素 との界 面 近 傍に存 在 する

Active

領 域の大 きさ に よ り大 き く変 化 す る。 よっ て, こ の よ うに ド

ピソ グ 量を変化させ て も

波 長 特 性に お ける パ タ

γ 変 化 し なかっ たの は

,3.

1

で述べ た よ うに

ピ ン グ量に よ る膜の 分子構 造の変 化が ないため と推 測される。  図

13

に光 電流に対 する ド

パ ン トの影 響 を 示 す。  図 よ り

H2Pc

PVDF

を ド

プ し た場 合

ピ ソ グ 30wt 光電 流に対 する効 果は最 高 3

6 倍に 達 する。

PVK

を ド

プ し た 場 合 は

10 wt % の時に約 1

4 倍位 大きくな るもの の

そ れ以上 で は ド

プ し ない合に比べ て

光 電 流は小さ くな る。 こ の こ とか ら

パ ン トの種類に よ りそ れぞれ最適 ド

ピン グ量が存 在 す るこ とがわ か る。 ま た

抵 抗 加 熱 法に よ る H2Pc 単

膜 と フ ラ ッ シ ュ法 に よ る H,

Pc

膜 と を 比較する と

フ ラ ッ シ

法で 得ら れ る光 電 流の方 が

2

倍 位 大 きい こと が わ か る。   図 14 に換 効 率に対 する ド

パ ン トの 影響を 示 す。   図 よ り

PVDF

の ド

ピ ン グ量 を増すと

20

 wt % で

PVDF を ド

プしない場 合に 比べ て

変 換 効 率 は 2倍 程に な るが

そ れ 以 上で は ド

プ し ない場 合 よ りも小 さ くな る。 また

, PVK

を ド

プす る と

いず れに おい て も PVK を ド

い場 合 よ りも

変換効 率は小さく なる こ とがわ か る

  これ らの こ とか ら, PVK よ り も

PVDF

に ょ る ド

ピン グ の 方 が

H2Pc に対 する効 果 が 大 きい と 言 え る。

PVK , 色素に対して電 子供 与 性が強い ポ リマ

と されて い るが

色素との 仕 事 関 数の大 きさ関 係に よ っ て

その電 子 供 与の度 合は異な る 10) 。 す なわ ち

色 素 の仕 事関 数 ψ⊥ が

PVK

の仕 事 関 数 ψ2 より も大 きい時 は

色 素に対 する電 子 供与 性 は良 くな る が

ψ五くψ, の 時は

色 素粒子 が 励 起 状 態であっ て も, PVK 粒子か ら 電 子を移 動させ る た めに は

熱 的エ ルギ

が必 要と な  り

前 述の場 合に比べ て PVK の 電 子与の度 合は低く な る。

,PVDF

そ れ 自 身 大 きな 双

 ン トを有する た め に

色素 粒子 との界 面に おい て強い局 部電界 を 形 成 し

色 素 粒 子か ら励起し た電子を引 き抜 き

電 荷 分離を促進 させ るため

色素に対 して電子 受 容 性のい ポ リマ

と さい る2)

lt)D れ ら 考 える と

PVK の ド

パ ン トと して の効 果が小さか っ たの は

混合膜 中で接触 し てい る色 素 粒子 と

PVK

粒子 との局所 的 仕 事関数の大きさ関 係の違い の た め

,PVK

の電 子 供 与 性が有 効 的に発 揮 され なかっ た もの と推 測さ れ る

。一

,PVDF

の場 合は

前述したよ うに 色素 粒 子との界 面に強い 局 部電界を形 成し

電荷 分離を促 進 さ せ た た め に

パ ン トとし て の効 果 が 大 き く現 れる も の と推測さ れるQ  膜の結晶 化 度と素子の ゐ と% との関 係につ い て は

図 7

図 8 と図 13

図 14 と を 比較 し て わ か る よ うに, 抵 抗 加熱法に よ る結 晶化 度の比較 的 高い H2Pc 単

膜に 比べ て, フ ラ ッ シ ュ 法で蒸 着し た結 晶 化度の著しく低い

H

Pc

膜の方が

ηx の いずれ もが高い値を 示し て い る。   膜の 性 と結 晶 化 度の 関 係につ い て は 二

三 の研 究が あ る。 例 え ば

膜の結晶 部 分 が減 少 する と

その導 電 率 は増加する12) 。 あるい は

膜をア モ ル フ ァ ス 化すれ ば, その光 電 流 や変 換 効 率が 向上 する13)等が 報 告 さ れて い る

フ ラ ッ シ

法で蒸着した場合

蒸発粒子が ラ ソ ダム に配 列 する ため膜の結 晶 化 度は低 下 し, これに よっ て 色 素 粒子間に おける電 子 軌 道のな りが増え

電 子の移 動 が容 易に な り

キ ャ リ ア の発生が促進 されるこ と が考 え られ る。 よっ て

フ ラッ シュ 法で形 成 し た膜 を 用い た素 子の 光電 流と変換効 率が向上 し たもの と推 定 さ れる。

4.

お わ り に  本 研 究の結 果次の こ とが確め られた。  

1

) フ ラ ッ シ

法は極 性ポ リマ

を色 素に ド

ピ ング する方 法と し て有 効で ある。  

2

) 約

800

℃ の蒸発源 温 度で フ ラ ヅ シ ュ 蒸着し て も

蒸着膜に は新たなる分 子 搆 造の生 成は認めら れ ない。 し か し

膜の結 晶 化 度は著し く低 下 する。   3) フ ラ ッ シ

法で形 成 した膜 を 用い た素 子の光 電 流 は

抵 抗加熱 法に比べ て

2

変 換 効 率は

5

そ れ ぞ れ大き く な る。

 

4)

H2Pc

に 対 し て PVK よ りも

PVDF

の方が太 陽 電池特性 を改 善 する ため の ド

パ ソ トとし て 有 効 的で あ る。 ド

ピソ グ の量 に は最 適 値があ り

PVDF の場 合, 20wt % で 光 電 流は

3 .

6 倍

変換効 率は

2

そ れ ぞ れ 大 き くなる。

(10)

相模工大学紀 要 第

23

巻 第

1

号  以 上 の こ とか ら

本 研究で用い たフ ラ ッ シ

法は

色 素系薄膜太 陽 電 池の特 性 改 善のた め に有 効であるとい え る。  最 後に本実 験に協 力し た卒 研生の諸 氏に感 謝 する。 参 考 文 献 1  南   信 次: 電 子 写 真 学 会 誌, 第

22

巻, 第

2

   1984

 

13−

18

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参照

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